LTE/W-CDMA共用高効率 電力増幅器 - fujitsu.com · 402 fujitsu. 62, 4( 07, 2011)...

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FUJITSU. 62, 4, p. 400-406 07, 2011400 あらまし 次世代移動通信システムとしてLTE Long Term Evolution)システムが注目されてお り,高速大容量化が進められている中,基地局に関しては,環境負荷低減や設置性の向上, 運用経費の低減のため,小型・低消費電力が求められている。また従来の3Gサービスから, 同一のアンテナを用いたW-CDMA/LTEのオーバレイサービスを実現し,導入コストを 抑えることが求められている。移動通信システムの無線基地局は,無線信号処理部と無 線部(高周波)から構成されており,従来はビル内に設置されていた。近年,この無線信 号処理部と無線部を分離して光ファイバで接続し,無線部を屋外筐体として構成するも のが増加している。光張出し無線装置と言われるこのような無線部は,一般的にはRRH Remote Radio Head),NTTドコモ様ではRRE Remote Radio Equipment)と呼ばれて いる。富士通では,W-CDMALTEの共用を可能とするRRENTTドコモ様向けに開発 した。開発においては,小型・低消費電力を実現するために,デジタル歪み補償を適用 するとともに,パワーアンプとしてGaNデバイスによるドハティ構成を採用しパワーア ンプの高効率化を図った。本稿では,その原理・方式特性,装置構成などについて述べる。 Abstract Long Term Evolution (LTE) systems are attracting attention as next-generation mobile communication systems. Such systems have come to have high-speed data rates, and so base stations have urgent requirements for devices that are friendlier to the environment, easier to install and cheaper to run. Further, there are needs to reduce capital expenses and this can be done with the overlay service of W-CDMA/LTE, which uses antennas that are employed in the conventional 3G service and thus allows system introduction costs to be reduced. Conventional mobile communication systems are composed of a baseband portion and a radio frequency (RF) portion installed in the same building. In recent systems, the RF portion of more and more devices is housed in an outdoor case separate from the baseband portion, and they are connected with an optical fiber. This type of RF unit is generally called a remote radio head (RRH) device, while NTT DOCOMO calls it remote radio equipment (RRE). Fujitsu has developed multimode technology RRE which supports W-CDMA and LTE for NTT DOCOMO. To achieve small devices with low power consumption, the efficiency of the power amplifier (PA) has been improved by adopting digital pre-distortion (DPD) and GaN Doherty PAs. This paper describes the principle, methods of operation, characteristics, and configurations of such devices. 熊谷佳晶   舟生康人   前田宏明 LTE/W-CDMA 共用高効率 電力増幅器 High Efficiency Power Amplifier for LTE/W-CDMA System

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あ ら ま し

次世代移動通信システムとしてLTE(Long Term Evolution)システムが注目されており,高速大容量化が進められている中,基地局に関しては,環境負荷低減や設置性の向上,

運用経費の低減のため,小型・低消費電力が求められている。また従来の3Gサービスから,同一のアンテナを用いたW-CDMA/LTEのオーバレイサービスを実現し,導入コストを抑えることが求められている。移動通信システムの無線基地局は,無線信号処理部と無

線部(高周波)から構成されており,従来はビル内に設置されていた。近年,この無線信

号処理部と無線部を分離して光ファイバで接続し,無線部を屋外筐体として構成するも

のが増加している。光張出し無線装置と言われるこのような無線部は,一般的にはRRH(Remote Radio Head),NTTドコモ様ではRRE(Remote Radio Equipment)と呼ばれている。富士通では,W-CDMAとLTEの共用を可能とするRREをNTTドコモ様向けに開発した。開発においては,小型・低消費電力を実現するために,デジタル歪み補償を適用

するとともに,パワーアンプとしてGaNデバイスによるドハティ構成を採用しパワーアンプの高効率化を図った。本稿では,その原理・方式特性,装置構成などについて述べる。

Abstract

Long Term Evolution (LTE) systems are attracting attention as next-generation mobile communication systems. Such systems have come to have high-speed data rates, and so base stations have urgent requirements for devices that are friendlier to the environment, easier to install and cheaper to run. Further, there are needs to reduce capital expenses and this can be done with the overlay service of W-CDMA/LTE, which uses antennas that are employed in the conventional 3G service and thus allows system introduction costs to be reduced. Conventional mobile communication systems are composed of a baseband portion and a radio frequency (RF) portion installed in the same building. In recent systems, the RF portion of more and more devices is housed in an outdoor case separate from the baseband portion, and they are connected with an optical fiber. This type of RF unit is generally called a remote radio head (RRH) device, while NTT DOCOMO calls it remote radio equipment (RRE). Fujitsu has developed multimode technology RRE which supports W-CDMA and LTE for NTT DOCOMO. To achieve small devices with low power consumption, the efficiency of the power amplifier (PA) has been improved by adopting digital pre-distortion (DPD) and GaN Doherty PAs. This paper describes the principle, methods of operation, characteristics, and configurations of such devices.

● 熊谷佳晶   ● 舟生康人   ● 前田宏明

LTE/W-CDMA共用高効率電力増幅器

High Efficiency Power Amplifier for LTE/W-CDMA System

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LTE/W-CDMA共用高効率電力増幅器

と無線部が同一の場所に設置されていた。RREは,この無線信号処理部と無線部を光ファイバで接続することで無線部を基地局本体から分離し,設置の自由度を高めるとともに,アンテナ近くに無線部を設置することで,ケーブルロスを低減し,基地局の消費電力を抑えるものである。

RREの装置構成を図-1に示す。装置はCPRI(Common Public Radio Interface)と呼ばれるインタフェース部,送信回路部,受信回路部に,PA,LNA(Low Noise Amplifi er),アンテナ共用器を組み合わせた構成となっている。また,無線制御部(REC:Radio Equipment Control)と無線部(RE:Radio Equipment)を接続するデジタルインタフェース部にはCPRI標準インタフェースを採用している。

CPRIの速度としてW-CDMAでは伝送速度1.2288 Gbps,LTE単独,W-CDMA/LTE共用構成では2.4576 Gbpsの2種の伝送速度に対応している。伝送速度は方式に応じて自動認識とすることで,W-CDMAからW-CDMA/LTEの共用サービスへの移行を可能としている。送信部にはデジタルプリディストーション方式を採用し,PAには窒化ガリウム(GaN)デバイスを用いたドハティ構成を適用している。受信部は20 MHz帯域の信号を一括で取り込み,

W-CDMA/LTEそれぞれのシステムに応じたフィルタ設定などを行うことでハードウェアの変更なしに,両システムに対応することを可能としており,個別に復調を行う方式に対して回路の小型化,低消費電力を実現している。主要諸元を表-1に,装置外観を図-2に示す。筐

ま え が き

移動通信システムの市場は拡大基調にあり,マルチメディアサービスの普及により,高速大容量化が進められている。日本ではNTTドコモ様がLTE(Long Term Evolution)方式のサービスを開始し,高速大容量化がますます加速されている。高速大容量化は基地局の消費電力の増加を招くため環境負荷低減,運用コスト低減に向け,電力の大半を占める無線部の低消費電力化が必要とされる。既存のサービスからのシームレスな移行を実現するため,端末の普及に合わせたLTE帯域の拡張,既存3Gシステムの設備の有効利用を進められるよう,無線部には既存システムとの共用が求められている。富士通では,このような要求を満たすため3Gサービスの一つであるW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)とLTEで共用を可能とする光張出し無線装置(RRE:Remote Radio Equipment)(1)を開発した。開発においては,小型・低消費電力を実現するためにW-CDMAで実績のあるデジタルプリディストーション方式(2)を適用するとともに,今回,新たに共用構成向けのピーク抑圧技術を開発し,パワーアンプ(PA:Power Amplifi er)の高効率化を図った。本稿では,その原理・方式特性,装置構成などについて述べる。

RREの装置構成

従来,移動体向け基地局装置は無線信号処理部

ま え が き

RREの装置構成

受信部

送信部

CPRI

アンテナ共用器

LNA

PA送信回路部

受信回路部

プロセッサ

CPRIインタフェース部

REC

RE

図-1 RREの装置構成Fig.1-Block diagram of RRE.

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新規に開発するとともに,歪補償部の性能改善を図った。デジタルプリディストーション方式を適用した送信部のブロック図を図-3に示す。デジタル部はキャリア合成部と歪補償部から構成される。(1) キャリア合成部キャリア合成部ではCPRI部で抜き出されたIQデータに対してW-CDMA,LTEそれぞれの信号に応じて所望のフィルタが適用され,波形整形される。移動通信システムの信号は平均電力とピーク電力の差が大きいため,飽和電力に対して平均電力を下げて使用する必要があり,PAの消費電力の増加につながる。飽和電力と実際の出力電力の差をバックオフと呼ぶが,キャリア合成部では,CFR(Crest Factor Reduction)回路により信号のピーク成分を低減することで,PAのバックオフ量を小さくし,消費電力の低減を図っている。一般にピーク成分を抑圧することにより,信号品質が劣化する。今回新たに,3G向けに実績のある回路をベースにW-CDMA/LTE共用向けにピーク抑圧技術を開発し,3GPP(3rd Generation Partnership Project)の信号品質スペックを満た

体は防水構造として,耐環境性を確保することで高信頼性を図っており,さらにファンレス構成とすることによりメンテナンスフリーを実現している。

RREの電力増幅器の高効率化技術

移動通信システムでは,高速大容量化が進み,基地局の消費電力が増加する。無線部は基地局消費電力の大半を占めており,基地局の低消費電力化には無線部の低消費化が重要となる。また,LTEでは周波数利用効率を上げるため適応変調が採用され,変調方式として,64QAM(Quadrature Amplitude Modulation) ま で 対 応 し て い る。64QAMでは,直交する搬送波の振幅にそれぞれ8種類の値を持たせ,それらの組合せによって,一度に64値(6ビット)のデータが伝送可能となっており,符号判定の許容誤差が小さいことから,高い信号品質が必要とされる。このように,無線部には低消費電力と高い線形性が必要とされるが,両者は電力増幅技術では一般的にトレードオフの関係にあり,その両立が課題となる。今回開発したRREでは,独自の歪補償技術と高効率パワーアンプ技術の採用により,低消費電力と低歪を実現した。以下,これらの技術の詳細を説明する。● デジタル歪補償技術富士通では,W-CDMA装置からデジタル歪補償を適用してきた実績を基に,今回新たに,W-CDMA/LTE共用装置向けに,キャリア合成部を

RREの電力増幅器の高効率化技術

表-1 RREの主要諸元項 目 諸 元

送信周波数帯 2130~ 2150 MHz受信周波数帯 1940~ 1960 MHz送信出力 20 W×2インタフェース CPRI(1.2288/2.4576 Gbps)入力電圧 -40.5 V~ -57 V消費電力 185 W体 積 19.4ℓ質 量 17.7 kgアンテナ構成 2Tx2Rx対応変調方式 QPSK,16QAM,64QAM

図-2 RREの外観Fig.2-Appearance of RRE.

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しながら,ピーク成分を抑圧している。(2) 歪補償部デジタルプリディストーション方式の歪補償は

PAで発生する非線形歪の逆特性を歪補償部においてあらかじめPAに入力することで,PA出力では線形な品質となるようにするもので,それ以前に採用されていたフィードフォワード方式と比較して出力ロスを低減でき,大幅に効率を改善できる。

PAの歪の逆特性は電力に応じて振幅・位相を補正する係数を乗算するものであり,係数は入力信号とPAからのフィードバック信号の誤差が最も小さくなるように状況に応じて制御される。この制御により周囲温度などの環境変化があった場合にも常に線形性を確保できるようになっている。

PAはメモリ効果と呼ばれる,過去の入力信号の状態に歪が依存する特性を持ち,より高い効率で動作させた場合,その影響が大きくなる。歪補償部はPAのメモリ効果を考慮した構成として,より効率の高い動作点で動作させることでPAの低消費電力化を図っている。● 高効率パワーアンプ技術(1) GaNデバイス

PAには,富士通研究所で開発し実用化に至ったGaN高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)(3),(4)を採用した。GaN-HEMTは,従来のシリコン・ハイパワートランジスタよりも低消費電力,高利得といった優れた性能を有している。本PAにはGaN-HEMTを駆動段と最終段増幅器に適用して低消費電力化を実

現している。(2) ドハティ増幅器最終段増幅器には,ドハティ増幅器を適用している。ドハティ増幅器は平均電力とピーク電力の差が大きい移動通信システム信号でも,大きな消費電力削減が可能である。ドハティ増幅器の構成を図-4に示す。ドハティ増幅器は,C級バイアスのピーク増幅器とAB級バイアスのキャリア増幅器で構成される。変調波信号の振幅レベルが小さい場合は,キャリア増幅器のみを増幅動作させ,ピーク増幅器は増幅動作させない。ピーク増幅器はバイアス電流を流さないC級バイアスに設定されているため,小振幅レベル領域で低消費電力化が図られている。振幅レベルが大きくなるに応じて,ピーク増幅器が徐々に増幅動作を行い,キャリア増幅器の増幅電力と合成されて出力される。さらに振幅レベルが増加し,最大振幅レベルが入力される領域では,

周波数変換部

直交変調器 PA

歪補償処理部

×

キャリア合成部DUC+CFR

3G

歪補償部

LTE

+ LUTCPRIIF

DUC :Digital Up ConvertersCFR :Crest Factor ReductionLUT :Look Up Table

入力

キャリア増幅器

ピーク増幅器

C級

AB級 出力

1/4波長インピーダンス変換器

1/4波長線路

図-3 送信部ブロック図Fig.3-Block diagram of transmitter.

図-4 ドハティ増幅器の構成Fig.4-Block diagram of Doherty amplifier.

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て伝送容量を上げるために変調方式として64QAMまで対応している。64QAM送信時のコンスタレーションを図-6に示す。W-CDMAのHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)システムでは16QAMまで適用されていたものに対し,64QAMでは信号点が多くなるためより厳しい特性が要求される。EVM(Error Vector Magnitude)は信号品質を表すもので,理想変調信号と測定変調信号の位置ずれを理想変調信号で正規化したものである。結果としてEVM規格8%以下を実現し,伝送容

ピーク増幅器とキャリア増幅器がともに飽和電力増幅し高効率で動作する。このようにドハティ増幅器は,時間ごとに振幅レベルが変化する信号に対し,振幅レベルに応じてキャリア増幅器とピーク増幅器がそれぞれ最適な増幅動作をすることにより低消費電力を実現している。なお,本PAはW-CDMA/LTEシステムの双方に対応し,ピーク抑圧動作とACLR特性(Adjacent Channel Leakage Ratio:送信帯域の変調波電力レベルと,増幅器の非線形性によって隣接チャネルに発生する不要波電力レベルとの比)を考慮した消費電力最適化を実施している。また,富士通独自のPAメモリ効果低減回路を増幅回路に適用することにより,デジタルプリディストーション回路への負荷を軽減し,良好な歪補償特性を実現している。

RREの特性

開発したRREの周波数スペクトラムを以下に示す。本装置はW-CDMA/LTE共用が可能であり,図-5はLTE信号を送信した場合のスペクトラムである。歪補償の適用により3GPPで要求されるACLR特性-45 dBc以下を満たしており,十分な歪補償特性効果が得られている。

LTEシステムでは,W-CDMAのシステムに対し

RREの特性

図-5 周波数スペクトラム LTE(20 MHz)Fig.5-Frequency Spectrum LTE (20 MHz).

図-6 コンスタレーション(64QAM)Fig.6-Constellation (64QAM).

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水構造とすることで,保守性および信頼性を高め,設置性の自由度を確保できた。また,W-CDMA/LTEでRREの共用を実現することで,W-CDMA向けに設置した装置をそのままLTEに適用することを可能とし,LTEシステムへシームレスに移行させることを可能とした。開発した装置は,周波数依存部分のみの変更で,

800 MHz~ 2 GHz帯域まで対応しており,今後のLTEの周波数展開を容易に実現するものである。今後も第4世代移動通信システム(IMT-A)に向け,継続的に無線増幅装置の低消費電力化を進め,環境負荷低減に貢献していく。

参 考 文 献

(1) 島津義嗣ほか:W-CDMA/LTEシステム共用の光張出し無線装置の開発.NTT DOCOMO テクニカル・ジャーナル,Vol.18,No.1,p.33-37(2010).

(2) 富士通:世界初! IMT-2000システム用に高効率の送信増幅器を開発,実用化.

http://pr.fujitsu.com/jp/news/2002/09/5.html(3) 富士通:世界最高性能のドレイン効率35% IMT-2000基地局システム向け窒化ガリウムHEMT増幅器の開発に成功.

http://pr.fujitsu.com/jp/news/2003/05/1.html(4) 吉川俊英ほか:GaN-HEMTを使用したW-CDMA

量の増加に対応する信号品質を実現している。W-CDMA/LTE共用時のスペクトラムを図-7に示す。同図は,W-CDMA 5 MHz×2キャリア+LTE10 MHzの場合の特性である。LTE単独と同様に歪補償を動作させることにより,必要となる3GPPのACLR規格を満足している。またW-CDMA/LTE共用時もそれぞれのシステムに,要求された特性を満足している。このときの装置消費電力は,送信出力20 W×

2,トータル送信出力40 Wで185 Wとなっている。消費電力は受信部を含めたトータルの消費電力となっている。従来のW-CDMAの光張出し装置と比較してより低消費電力となっており,厳しい無線特性を満たしながら体積19.4ℓ,質量17.7 kgを実現している。

む  す  び

本稿では,NTTドコモ様向けに開発した,RREについて,適用した増幅器の高効率技術であるデジタル歪補償,PAの構成や,装置の特性などを紹介した。高効率化技術の適用により従来のW-CDMAの光張出し装置より厳しい無線仕様を満たしながら,従来装置以下の消費電力を実現するとともに,小型・軽量化を図った。また装置はファンレス,防

む  す  び

図-7 周波数スペクトラム W-CDMA/LTE共用Fig.7-Frequency Spectrum W-CDMA/LTE shared.

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LTE/W-CDMA共用高効率電力増幅器

基地局用高出力増幅器.FUJITSU,Vol.56,No.4,p.319-325(2005).

熊谷佳晶(くまがい よしあき)

共通開発本部第一ハードウェア開発統括部 所属現在,LTEシステム向け基地局無線装置の開発に従事。

舟生康人(ふにゅう やすひと)

共通開発本部第一ハードウェア開発統括部 所属現在,基地局向けデジタルプリディストーションアンプの開発に従事。

前田宏明(まえだ ひろあき)

共通開発本部第一ハードウェア開発統括部 所属現在,基地局向け高効率送信増幅器の開発に従事。

著 者 紹 介