FET差動増幅回路を応用したヘッドホーン用アンプ …...
Transcript of FET差動増幅回路を応用したヘッドホーン用アンプ …...
2012
CDTL
回路設計ノウハウノート
file: FET 差動増幅応用ヘッドホーン
用アンプの設計ノウハウ
[FET 差動増幅回路を応用したヘッドホーン用アンプの設
計ノウハウ]
FET(2SK30A)差動増幅回路の応用と、トランジスタ出力のディスクリート回路によ
るヘッドホーン用アンプへの応用設計ノウハウ。
電子回路設計技術
回路理論
シミュレーション
回路設計
試作実験
検証
完成
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
1 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
FET 差動増幅回路の応用及びディスクリート部品によるヘッドホーン用アンプの設計
1. 概要
アナログ信号特に低周波帯域での増幅では、
低ノイズ・低歪と直流動作の安定が要求され
る。その要求を満たすため、差動増幅回路が
多用される。この差動増幅回路は、オーディ
オ・アンプのみならず、オペアンプを含め直
流から低周波帯域での増幅回路では基本とな
る回路である。
更に、ヘッドホーン用アンプとして、小電
力での電力増幅回路及び負帰還回路の安定性
など低周波アンプ設計としての基本的なノウハウを紹介する。
さらに、実際に試作機を組み立て事例を紹介し、性能評価の確認を行う。
2. 設計仕様
■電源:±DC12V 両電源
電源は、AC ラインからの整流及び定電圧化された、専用電源を使用する。
■入出力仕様:入力インピーダンス 50KΩ以上、入力感度 0.3V
入力回路は接合形 FET による差動増幅を使用し、入力インピーダンスは 50kΩ
とし、最大出力を得る入力電圧は 0.3V 程度とする。
■負荷インピーダンス:20Ω~300Ω
市販のヘッドホーンは十数Ωから数百Ωまでいろいろなものが販売されている。
今回、低電圧での動作を考慮し、20Ω~300Ωを想定しているが、測定では 50Ωを
中心に評価を行った。
■出力電力 : 100mW 以上(負荷 25Ω時)
低インピーダンスのヘドホーンでも十分な音量で、聞くことができるために、
25Ω負荷で 100mW 以上とした。
■周波数特性 : 20Hz~50KHz
周波数特性は、通常のオーディオ帯域を満足するものとする。
■歪率特性 : 0.1%以下
歪率特性は、一般のオーディオ・アンプとして使用出力範囲で 0.1%以下とする。
3. 回路設計
3-1.電源電圧の検討
電源電圧は、最初に出力電力及び負荷インピーダンスから検討する。また、電力増幅
部は、低インピーダンスのヘッドホーンを駆動するためにトランジスタによるSEPP
回路出力とする。
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
2 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
・負荷インピーダンス𝑅𝐿 = 300Ωの時、𝑃𝑜 =0.1W の出力を得るための、SEPP 回路の
電源電圧を考える。
𝑉𝑐𝑐 = √2 ∗ 𝑅𝐿 ∗ 𝑃𝑜
から、𝑉300 = 7.7V となる。
・負荷インピーダンスが 300Ω以下の場合は、前記𝑉300 = 7.7V より、小さな値であり、
電源電圧は約 8V 程度が必要と分かる。
・次に、電圧増幅部の電源と電力増幅部の電源を共通として考えると、電圧増幅回路は
電力増幅部を駆動するできる電圧を供給できなくてはならない。電圧増幅部での出力の
最大振幅は、回路構成にもよるが電源電圧から約 2V 程度少ない出力電圧となる。
したがって、余裕を見て電源電圧は±Vcc=12V とする。
3-2.出力段(電力増幅回路)の検討
図(a)は、電力増幅回路である。
抵抗 R7,R8 は電流帰還をかけ
Q4,Q8 の温度変化に対する変動を小
さくするものです。
抵抗 R5,R6 はトランジスタ Q4,Q5
の発振防止ためのものであるが、Q4
及び Q5 のℎ𝐹𝐸のアンバランスを補正
することもできる。
トランジスタ Q1 は、Q2 及び Q3
のベース・バイアス電圧を設定するた
めの定電圧回路である。可変抵抗器
VR を調整し、ベース・バイアス電圧を変化させ、Q2,Q3 及び Q4,Q6 に流れる電流を
設定する。
■最大出力及び最大コレクタ電流の検討
正弦波増幅時の最大出力は、最大電圧𝑉𝑜 =8V とすると、最大電流𝐼𝑚 =𝑉𝑜
𝑅𝐿、最大出力
𝑃𝑜 =𝑉𝑜
2
2𝑅𝐿から
𝑅𝐿=25Ω の時、𝐼𝑚 =0.32A、𝑃𝑜 =1.28W
𝑅𝐿=50Ω の時、𝐼𝑚 =0.16A、𝑃𝑜 =0.5W
𝑅𝐿=300Ω の時、𝐼𝑚 =0.026A、𝑃𝑜 =0.1W
となる。また、前項の電流帰還用抵抗及び電圧増幅回路でのロスにより、実際の出力電
力は少なくなる。
-Vcc
+Vcc
IN
IN
OUT
VR3
VR2SC1815
Q1
2SA1015
Q3
2SC1815
Q2
1K
R3
1K
R4
4.7K
R1
2SC34211Y
Q4
2SA1358Y
Q5
200ΩR5
200ΩR6
5Ω
R7
5Ω
R8
図(a)
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
3 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
SEPP 回路の出力トランジスタの消費電力は、
𝑃𝑐 =供給電力-出力電力𝑃𝑐 = 𝑉𝑐𝑐 ∗𝑉𝑜
𝑅𝐿∗2
𝜋− 𝑃𝑜
𝑅𝐿=25Ω の時、𝑃𝑐 = 1.17W
𝑅𝐿=50Ω の時、𝑃𝑐 = 0.723W
𝑅𝐿=300Ω の時、𝑃𝑐 = 0.104W
従って、SEPP の片側の最大消費電力は、1/2 の 0.6W 程度となり、出力トランジスタ
は、コレクタ損失 1.5W(10W 放熱器あり)の 2SC3421 及び 2SA1358 を使用する。
■アイドリング電流の検討
図(b)は、電源を
±12V ととし、図
(a)のQ1の代わり
に、電圧源を置き
SEPP 回路の前段、
後段のコレクタ
電流をシミュレ
ーションしたも
のである。
ここで、無信号時にながれる電流をアイドリング電流と言い、SEPP 回路を AB 級で
動作した場合の動作点である。また、B 級としての最大出力は、電源電圧で決定される
が、小レベルでの A 級動作としてみなせる出力範囲はアイドリング電流によって決まる。
なおアイドリング電流を 0.05A とすると、𝑅𝐿=50Ωでは 250mW、𝑅𝐿=25Ωでは
125mW までが、A 級動作の範囲となる。
図(c)から、アイドリング電流を 0.05A とするには、V4=3.7V が必要と分かる。
■電流帰還用抵抗の検討
図(d)は、アイドリング
電流 0.05A で入力に正
弦波を入力した場合の、
シミュレーションであ
る。
図(e)のように、入力電
圧に対して出力電圧が
少し小さくなっている
が、電流帰還用の抵抗 5
IPROBE2
IPROBE1
12
V2
200
R1
Q2
QA1015GR
50
R9
5
R6
Q4
Q2SA1358Y
1k
R3
1k
R2
Q3
Q2SC3421Y
5
R7
Q1
QC1815GR
200
R4
12
V1
3
V4
図(b) 図(c)
Probe1-NODE
1.85
V4
12
V1
200
R4
Q1
QC1815GR
5
R7
Q3
Q2SC3421Y
1k
R2
1k
R3
Q4
Q2SA1358Y
5
R6
50
R9
Q2
QA1015GR
200
R1
12
V2
1.85
V3
5 AC 1 0 Sine(0 8 1k 0 0)
V5
V4-neg
図(d) 図(e)
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
4 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
Ωの影響が大きい。このように、抵抗 R6,R7 を大きくすると、温度変化、電流増幅率
のバラツキなどによる影響が少なり、また出力をショートした場合の過負荷保護にもな
るが、出力のロスが大きくなるので注意を要する。経験的に、この抵抗は過負荷保護の
場合の電流検出抵抗ともなるので、最大電流時に電圧降下が 1V 程度になるように設定
する。(過負荷電圧保護用のトランジスタを動作できる 0.6V 以上必要)
■出力段ベースバイアス回路の検討
図(f)は、SEPP 回路のバイアス
電圧を設定する回路であり、シャ
ント・レギュレータと言われる定
電圧回路である。
ここでは R8 を可変することで、
コレクタ-エミッタ間電圧𝑉𝑠が調
整できる。
この𝑉𝑠は次式で与えられる。
𝑉𝑠 = 𝑉𝐵𝐸𝑅5 + 𝑅8
𝑅8
R5=4.7KΩ、R8=980Ω、𝑉𝐵𝐸 = 0.63[V]とすると、𝑉𝑠 = 0.63 ∗4700+980
980=3.65[V]となる。
また、この回路の、交流的なインピーダンスは図(g)のように、オーディオ周波数帯域
において 400Ωと成っている。
■電圧増幅回路の検討
差動増幅回路の入力回路でトランジスタを使用した場合、ベース電流による直流バラ
ンスの変動、また入力インピーダンスが大きくできないなどがあり、FET を入力回路
に使用するのが一般的である。
またFETには、接合形FETとMOS形FETがあるが、接合形FETが適してい
る。小電力MOS形FETはスイッチング動作に適したものは多くあるが、アナログ増
幅回路に適するものは非常に少ない。
3.64454
AC 1 0 Sine(0 1 1k 0 0)
V2
4.7k
R5
12
V1
Q5
QC1815GR
980
R8
1m
I1
C1
100u
図(f) 図(g)
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
5 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
図(a)は、接合形 FET(2SK30A)の差動増幅回路である。ここでドレイン電流は
2SK30A-Y のドレイン電流の特性から 1mA 程度とした。また、共通ソース抵抗の代わ
りに、定電流回路(カレント・ミラー)を使用して、同相利得を大きくし、差動増幅と
しての動作を向上させている。
図(a)の抵抗 R8を変更することで、Q1及び Q2 に流す電流を設定することができる。
この回路の利得は、図(b)のようになっており、差動利得𝐺1は計算上では、
𝐺1 = 𝑔𝑚 ∗ 𝑅𝐿 = 2 × 10−3 ∗ 1.8 × 103 = 3.6(11dB)
となり、約 11dB 程度であるが、抵抗 R2,R3 の電流帰還により、シミュレーションで
は 9.6dB 程度となっている。
負荷抵抗の R4 及び R5 の値を大きくすれば、利得は増加するが、次段の PNP トラン
ジスタによる差動増幅回路との接続を考えると、大きくできない。(この抵抗を大きく
すると、次段の差動増幅回路のエミッタ電位が低くなり、出力振幅が小さくなる。)
また、使用する FET の𝑔𝑚を大きなものに変更すると利得も大きくなるが、ヘッドホ
ーン・アンプとしてのノイズ特性を考慮すると、初段で大きな利得を得ることに大きな
意味は無い。
2 段目の増幅回路は、出力回路を駆動するに必要な振幅まで増幅することである。こ
こでは、初段の差動増幅回路の出力信号を有効的利用し、直流安定度の向上を考慮して
PNP トランジスタによる差動増幅回路とする。
図(a) file: 2SK30A_Differential_HD.sxsch 図(b)
V3
12k
R8
200
R6
12
V2
1.8k
R5
100
R3
100k
R1
Q3
QC1815GR
J2SK30ATM-Y
Q1
J2SK30ATM-Y
Q2
Q4
QC1815GR
100
R2
1.8k
R4
12
V1
200
R7
1K
R9
1.91915m
図(c) file: Voltage amplifier1_HD.sxsch 図(d)
-2.77929
1.12448m
dB
8.2k
R12
470
R10
Q5
QA1015GR
1.91915m
1K
R9
200
R7
12
V1
1.8k
R4
100
R2
Q4
QC1815GR
J2SK30ATM-Y
Q2
J2SK30ATM-Y
Q1
Q3
QC1815GR
100k
R1100
R3
1.8k
R5
12
V2200
R6
12k
R8
V3
Q6
QA1015GR
8.2k
R11
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
6 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
図(c)は、後段に PNP トランジスタ Q5,Q6(2SA1015)による差動増幅回路を構成した
例である。2SA1015GR のℎ𝐹𝐸 = 300, ℎ𝑖𝑒 = 8𝐾Ωとすると、差動利得𝐺2は、
𝐺2 =𝑓𝐹𝐸
ℎ𝑖𝑒𝑅𝐿 =
300∗8.2×103
8×103=308(49dB)
電圧増幅回路全体の利得𝐺𝑇は、
𝐺𝑇=初段利得(𝐺1)+2 段目利得(𝐺2-6dB)=52.6dB
となり、図(d)のシミュレーション結果と合っている。(前式の-6dB は、差動増幅の片側
から出力を取り出しているため)
◆負帰還による歪低減を考慮して、利得を大きくする。
(増幅回路の利得を大きくするにはアクディブ負荷を活用する。)
差動増幅回路の負荷として利得を大きくする方法として、定電流回路などによ
るアクティブ負荷回路があるが、アクティブ負荷を使用する場合の長所短所は次
のようである。
長所:直流的な動作電流を利得に関係なく設定できる。カレント・ミラー回路
を使用する場合、更に直流安定度も向上し、歪の改善効果もある。
短所:交流的な負荷が非常に大きくなり、利得が大きくなる半面、ミラー効果
により、高域の周波数特性が悪化する。
図(e)は、二段目の差動増幅回路の負荷としてカレント・ミラー回路を使用した
ものである。カレント・ミラー負荷の場合、交流的には非常に大きくなるので、
図(f)のようにトータルで約 80dB 近くの利得が得られるが、高域のカットオッフ周
波数は下がっている。
なお、抵抗 R12=920Ωを調節し、トランジスタ Q5 のコレクタ電位を 0V 付近
に設定している。
図(e) file: Voltage amplifier2_HD.sxsch 図(f)
dB
-2.25747m
Q7
QC1815GR
-382.076m
920
R12
470
R10
Q5
QA1015GR
1.91915m
1K
R9
200
R7
12
V1
1.8k
R4
100
R2
Q4
QC1815GR
J2SK30ATM-Y
Q2
J2SK30ATM-Y
Q1
Q3
QC1815GR
100k
R1100
R3
1.8k
R5
12
V2200
R6
12k
R8
V3
Q6
QA1015GR
1k
R11
-10.2645
Q8
QC1815GR
1.07728m
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
7 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
■アンプの負荷としてのヘッドホーンのインピーダンス特性と等価回路
ヘッドホーンのインピーダンスはスピーカーと比べて設計思想による差が大きい。今
回、手元にある、3 社のヘッドホーンのインピーダンスを測ってみると次のようであっ
た。また、シミュレーションにより推定した等価回路を示す。
(a) ソ ニ ー
MDR-Z1000
(b) ウルトラ
ゾ ー ン
Pro2900
(c) ゼンハイザ
ーHD600
C2
200p
50m
L2
C1
100u
5
R2
52u
L1
25
R1
MDR-Z1000 等価回路
C2
260p
50m
L2
C1
100u
22
R2
100u
L1
40
R1
Pro2900 等価回路
300
R1
821u
L1
200
R2
C1
7.5u
500m
L2
C2
860p
HD600 等価回路
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
8 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
4. 回路シミュレーションによる確認
図(a)は、負荷𝑅𝐿=50Ωの時の周波数特性をシミュレーションするもので、図(b)のように
高域周波数帯域は 1MHz を越えている。
■負荷を想定した全体の周波数応答
図(c)は、並列容量の多いヘッドホーン HD650 の負荷を想定して、等価回路を接続した場
合の回路でシミュレーションを行った。
ヘッドホーンでは、ケーブルにシール線などを使用いている場合があり、スピーカーと
違い容量負荷が大きい場合があり注意が必要である。この容量性負荷に対しては、出力に
インダクターを入れ、容量成分を打ち消す方法があるが、シミュレーションで確認した。
HD650 では実測の結果、860pF の容量が接続ケーブルにあり、それがヘッドホーンに並
列に接続させることになる。
そこで、回路図(c)のように、出力に L3(2μH)と R16(20Ω)を並列にしたものを入
れてシミュレーションを行った。
200
R16
12
V1
7.4771m
6.7k
R23
C1
10p
200
R22
5
R20
Q12
Q2SA1358Y
1.87548
50
R17
Q10
QA1015GR
4.7k
R15
1K
R13
Q6
QC1815GR
-2.25705m
820
R6
Q5
QC1815GR
-1.85928
Q8
QA1015GR
100k
R7
12k
R4
Q3
QC1815GR
100
R1
J2SK30ATM-Y
Q1
J2SK30ATM-Y
Q2
200
R3
1K
R8
AC 1 0 Sine(0 1.1 1k 0 0)
V3
100
R2
1.91915m
Q9
QA1015GR
470
R10
-10.3288
1.8k
R12
1.8k
R11
Q4
QC1815GR
1k
R5
Q7
QC1815GR
1K
R9
950
R14
Q11
Q2SC3421Y
5
R19
200
R21 57.3243m
dB
1.91224m
12
V2
Q13
QC1815GR1.01437m
図(a) file: Headphone_Amplifier_A.sxsch 図(b)
HD650
300
R25
C3
10n
200
R26
12
V1
dB
65.7793m
200
R215
R19
Q11
Q2SC3421Y
980
R14
1K
R9
Q7
QC1815GR
1k
R5
Q4
QC1815GR
1.8k
R11
1.8k
R12
470
R10
Q9
QA1015GR
100
R2
AC 1 0 Sine(0 500m 1k 0 0)
V3
1K
R8
200
R3
J2SK30ATM-Y
Q2
J2SK30ATM-Y
Q1
100
R1
Q3
QC1815GR
6.8k
R4
100k
R7
Q8
QA1015GR
Q5
QC1815GR
820
R6
Q6
QC1815GR
1K
R13
4.7k
R15
Q10
QA1015GR
Q12
Q2SA1358Y
5
R20
200
R22
C1
10p
6.7k
R23
12
V2
Q13
QC1815GR
300
R24
821u
L1
200
R18
C4
7.5u
500m
L2
C2
820p
20
R16
2u
L3
図(c) file: Headphone_Amplifer_A_HD650.sxsch
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
9 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
グラフに示すように、L3 が無い場合
10MHz にピークが発生するが、ある場合で
は素直な特性となることがわかる。
同様に、MDR-Z1000、Pro2900 の等価回路
を接続した場合の、シミュレーション結果が
図(e)である。利得は 17dB であり、周波数特
性も 1MHz 程度と十分な広帯域なヘッドホー
ン・アンプとなっている。
MZ-1000
図(b)
図(e)
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
10 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
■シミュレーションによる負帰還回路の安定性の確認
図(f)のように SIMtrix のボーデ・プローブを使用して、HD650 負荷時でのボーデ線図の
シミュレーションを行った。
次の図(g)は、シミュレーション
によるボーデ線図で、Gain(Y2)
が 0dB の時の、Phase(Y1)は
-120°と安定な領域にあること
がわかる。
=OUT/IN
IN OUT
AC 1
V4
2u
L320
R16
C2
820p
500m
L2
C4
7.5u
200
R18
821u
L1
300
R24
Q13
QC1815GR
12
V2
6.7k
R23
C1
10p
200
R22
5
R20
Q12
Q2SA1358Y
Q10
QA1015GR
4.7k
R15
1K
R13
Q6
QC1815GR
820
R6
Q5
QC1815GR
Q8
QA1015GR
100k
R7
6.8k
R4
Q3
QC1815GR
100
R1
J2SK30ATM-Y
Q1
J2SK30ATM-Y
Q2
200
R3
1K
R8
100
R2
Q9
QA1015GR
470
R101.8k
R12
1.8k
R11
Q4
QC1815GR
1k
R5
Q7
QC1815GR
1K
R9
980
R14
Q11
Q2SC3421Y
5
R19
200
R21 65.7788m
12
V1
200
R26
C3
10n
300
R25
LAP2
-1
図(f) file: Headphone_Amplifer_A_HD650.sxsch
図(g)
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
11 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
5. 試作機の特性
■ヘッドホーン用アンプの試作基板
図(a)はディスクリート部品を用いてオペンプの回
路構成を実験する基板 ACE-1C を活用して、ヘッド
ホーン用アンプを組み立てたものである。
図(a)のように、出力用トランジスタには放熱器を
取り付けている。
𝑅𝐿=25Ωの時トランジスタの最大消費電力は 0.6W
程度であるので、必要な放熱器の熱抵抗は 170[℃/W]
程度(周囲温度40℃)であるが、実験で A 級動作
範囲を広げたりすることを考え、安全を見て 29[℃/W]の放熱器を付けている。
■試作機の電源回路
図(b)のように、シリーズ・レギュレータ実験 kit
の REG-1B 基板を利用し、±12V デユアル電圧の定
電圧回路を製作した。
また、AC100V からトロイダル・トランスによりス
テップダウンし、ブリッジ整流により、DC 電圧を得
ている。
図(c)は、試作した電源部の回路図である。
図(a)ヘッドホーン用アンプ基板
3300uC5
3300uC6
220uC13
220uC14
DIODED6
DIODED7
DIODED9
DIODED8
HZ5B1-ED10
HZ5B1-ED12
HZ5B1-ED13
HZ5B1-ED11
1uC9
1uC7
1uC3
1uC10
1uC8
1uC4
50p
C11
50p
C12
20KR2
560R4
560
R5
0.5ΩR7
0.5Ω
R6
10KR8
10KR9
10KR10
10KR11
P13
P16
1 2
FUSEF1P1
P2
PSWS
POWER_TRANS3
T
123
2SA1015
Q10
2SA1015
Q6
2SC1815
Q9
2SC1815
Q5
2SC1815
Q11
2K VR1
2K VR2
2SK30A-Y
Q42SK30A-Y
Q2
2SK30A-Y
Q1
2SK30A-Y
Q3
2SD2012Q7
2SB1375Q8
2SA1015Q12
2SC1815
2SA101520K
R3
+OUT
GND
-OUT
AC100V
AC100V
+12V
-12V
図(c)電源部
図(b)定電圧回路基板
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
12 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
■周波数特性
図)d)のグラフは、利得-周波数特性で、抵抗
負荷時の特性である。シミュレーション結果
と同様にカットオフ周波数約 1MHz と広帯域
になっている。
■歪率特性
図は、歪率特性である。
300Ω負荷では、最大出力が
0.1W と予想通りであるが、実際
のヒアリングで音量の不足は感
じられない。
実際に使用するには数十mW
で十分であろう。
■出力インピーダンス特性
図(f)は、出力インピーダンス-周波数特
性である。高域でインピーダンスが増加し
ているが、これは高域で負帰還量が減少す
ることによる。
図(d)
図(e)
図(f)
FET 差動増幅応用ヘドホーン用アンプの設計ノウハウ
13 2012-9
Ⓒ2012 Cdtlab
6.音質について
今回製作したヘッドホーン用アンプの音の評価は、使用するヘッドホーンによって多
少変わってしまうが、従来から使用していたメーカ製(Luxman)の P-200 を基準に比
較することとした。
また音源は、ヤマハ:ネットワーク・プレーヤーNP-S2000 を使用し、NAS(LAN Disk
A35DF)にリッピングしてある CD 音源を中心に行った。
■P-200 と比較して、歪感が少ない透明度の良い音、色づけが少ない率直な音に感じる。特
に、バイオリンや女性ボーカルの艶やかさはよく表現されているようだ。
■ヘッドホーンの音質
今回、使用したヘッドホーン自体の音質としては、個人の好みで大きく分かれるところ
であるが、次のような感じを持った。またアンプの音質自体を評価するには Pro2900 が良
いかと思う。
●SONY MDR-Z1000:中音が前に出てくる明るく元気な音だが、音の解像度では
Pro2900 に劣る。
●Pro2900:音の解像度は非常にいいいが、高音と低音にエネルギーが多く、悪く言えばド
ンシャリであるが、一番歪感の少ない音である。
●HD650:音の解像度は Pro2900 と比べて劣るが、全体にバランスは良く落ち着いて聞け
る音、長く音楽に浸るには良い。
CDTLab (Circuit Design Technology Laboratory)
http://www.cdtlab.jp