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2014.03 金属資源レポート 31 6 Ⅰ.はじめに 今回のプロセス編では、これまで、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、金のメジャーな鉱種の他に、PGM、レアアース、 モリブデンといったいわゆるレアメタルと称せられる鉱種にも焦点を当ててその製造法を述べてきた。ただし、実際 には開発や検討を行う対象鉱物は非常に裾野が広く、ベースメタルとしては他にもアルミニウムや錫があるし、レア メタルに至っては以下のように非常に種類も多く、案件ごとに確認していく必要がある。 最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6) ―タングステン、ニオブ、チタン― 中村 威一 金属資源技術部生産技術課 専門調査員 ベースメタルとレアメタル 亜鉛 アルミニウム ベースメタル レアメタル リチウム バナジウム ガリウム ジルコニウム パラジウム バリウム 白金 ベリリウム クロム ゲルマニウム ニオブ インジウム ハフニウム タリウム (希土類) コバルト ルビジウム ルテニウム テルル タングステン ホウ素 マンガン セレン モリブデン アンチモン タンタル ビスマス チタン ニッケル ストロンチウム ロジウム セシウム レニウム 希土類元素(レアアース)17種類 スカンジウム ネオジム テルビウム イッテルビウム イットリウム プロメチウム ジスプロシウム ルテチウム ランタン サマリウム ホルミウム セリウム ユウロピウム エルビウム プラセオジム ガドリニウム シリウム 今回はそれらの内、プロジェクトとして比較的深く関わったタングステン、ニオブ、チタンに関して論を進めるが、 レアメタルに共通していえるのは、産業上重要ではあるが、概して必要使用量が小さく、開発にあたっては貿易統計 表等を用いて市場規模等の調査を行っておく必要がある。JOGMEC でも「鉱物資源マテリアルフロー」を発行して おり、ウェブサイト(http://mric.jogmec.go.jp)からもダウンロードできるし、「金属のしおり」として40鉱種がそれ ぞれの鉱種ごとに見開きのページで生産地やその量、貿易統計量等をグラフ化した資料も希望者には配布しているの で、入手されることをお勧めする。特に、日本には中間産物で輸入されている鉱種も多く、鉱山サイトでどのように 加工されているかを知らない人も多いので、資源開発を行う上でも、輸入加工する上でも基本資料として利用するの がよい。 例えば、今回、対象とするタングステンを例に挙げると以下のように輸入される形はタングステンカーバイトの形 態で輸入される量が最も多く、タングステン酸化物、パラタングステン酸アンモニウム(APT)と続いており、精鉱 としての輸入は基本的にない。一方で新たにタングステン鉱山を開発する計画では精鉱としての生産を計画している プロジェクトも多い。このような状況では中国の一極集中を避ける目的で鉱山開発を計画しても得られた精鉱は基本 的に中国を通して加工するしかなく、何をしているのかわからなくなる状況にもなりかねない。このような場合はや はり、鉱山下あるいはプロジェクトの一環として APT プラントや他の加工品まで含めたプラントの建設を行うべき であろう。 また、レアメタルの主なる用途の一つとして特殊鋼の添加材が挙げられる。今回述べるタングステン、ニオブ、チ タンも先に述べたニッケル、モリブデン等とともに特殊鋼添加剤としての用途が多い。 567

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連載

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

Ⅰ.はじめに 今回のプロセス編では、これまで、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、金のメジャーな鉱種の他に、PGM、レアアース、モリブデンといったいわゆるレアメタルと称せられる鉱種にも焦点を当ててその製造法を述べてきた。ただし、実際には開発や検討を行う対象鉱物は非常に裾野が広く、ベースメタルとしては他にもアルミニウムや錫があるし、レアメタルに至っては以下のように非常に種類も多く、案件ごとに確認していく必要がある。

最新選鉱技術事情鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

中村 威一金属資源技術部生産技術課専門調査員

ベースメタルとレアメタル

亜鉛

アルミニウム

ベースメタル レアメタルリチウム

バナジウム

ガリウム

ジルコニウム

パラジウム

バリウム

白金

ベリリウム

クロム

ゲルマニウム

ニオブ

インジウム

ハフニウム

タリウム

(希土類)

コバルト

ルビジウム

ルテニウム

テルル

タングステン

ホウ素

マンガン

セレン

モリブデン

アンチモン

タンタル

ビスマス

チタン

ニッケル

ストロンチウム

ロジウム

セシウム

レニウム

希土類元素(レアアース)17種類

スカンジウム

ネオジム

テルビウム

イッテルビウム

イットリウム

プロメチウム

ジスプロシウム

ルテチウム

ランタン

サマリウム

ホルミウム

セリウム

ユウロピウム

エルビウム

プラセオジム

ガドリニウム

シリウム

 今回はそれらの内、プロジェクトとして比較的深く関わったタングステン、ニオブ、チタンに関して論を進めるが、レアメタルに共通していえるのは、産業上重要ではあるが、概して必要使用量が小さく、開発にあたっては貿易統計表等を用いて市場規模等の調査を行っておく必要がある。JOGMEC でも「鉱物資源マテリアルフロー」を発行しており、ウェブサイト(http://mric.jogmec.go.jp)からもダウンロードできるし、「金属のしおり」として 40 鉱種がそれぞれの鉱種ごとに見開きのページで生産地やその量、貿易統計量等をグラフ化した資料も希望者には配布しているので、入手されることをお勧めする。特に、日本には中間産物で輸入されている鉱種も多く、鉱山サイトでどのように加工されているかを知らない人も多いので、資源開発を行う上でも、輸入加工する上でも基本資料として利用するのがよい。 例えば、今回、対象とするタングステンを例に挙げると以下のように輸入される形はタングステンカーバイトの形態で輸入される量が最も多く、タングステン酸化物、パラタングステン酸アンモニウム(APT)と続いており、精鉱としての輸入は基本的にない。一方で新たにタングステン鉱山を開発する計画では精鉱としての生産を計画しているプロジェクトも多い。このような状況では中国の一極集中を避ける目的で鉱山開発を計画しても得られた精鉱は基本的に中国を通して加工するしかなく、何をしているのかわからなくなる状況にもなりかねない。このような場合はやはり、鉱山下あるいはプロジェクトの一環として APT プラントや他の加工品まで含めたプラントの建設を行うべきであろう。 また、レアメタルの主なる用途の一つとして特殊鋼の添加材が挙げられる。今回述べるタングステン、ニオブ、チタンも先に述べたニッケル、モリブデン等とともに特殊鋼添加剤としての用途が多い。

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

 タングステンは通常坑内掘りで採掘されるが、スペインの Los Santos 鉱山などでは鉱石品位 0.3%程度で露天掘り採掘もなされている。日本でもタングステンは埋蔵されており、かつては産出が行われており、京都府の鐘打鉱山(1982 年閉山)、兵庫県の大谷鉱山

(1983 年閉山)、茨城県の高取鉱山(1985 年閉山)、山口県の喜和田鉱山(きわだこうざん)と玖珂鉱山(1992年閉山)等にて生産が行われていたが、1980 年代以降のタングステン価格の下落に伴い、タングステン鉱山の閉山が相次いだ。その内、1992 年まで採掘された山口県岩国市二鹿にある喜和田鉱山では平均で 8 ないし 10%、最大では約 50%にも達したとされており、世界で最も高品位のタングステン鉱床の一つとして有名である(ちなみに、2007 年のタングステン市況に基づく、タングステン鉱山の採算ラインはおよそ含有率1%といわれていた)。 現在、西側諸国で主要なタングステン操業鉱山は

Ⅱ.タングステン 鉱物学において、タングステン酸塩からなる鉱物をタングステン酸塩鉱物(tungstate mineral)と呼ぶ。タングステン酸カルシウムである灰重石(CaWO4,Scheelite)、タングステン酸鉄である鉄重石(FeWO4,Ferberite)、タングステン酸マンガンであるマンガン重石(MnWO4,Hubnerite)などがある。鉄重石、マンガン重石は固溶体を作り、かつては鉄マンガン重石

((Fe,Mn)WO4、Wolframite)と呼んでいたが、固溶体のいわゆる「50%ルール」(E.H. Nickel, “Solid solu-tions in mineral nomenclature”, Canadian Mineralo-gist, Vol. 30, pp. 231-234, 1992)により、端成分の鉄重石とマンガン重石に整理された。 タングステンも産出地が偏在しており、その産出量は、中華人民共和国(以下、中国と略す)が 52,000 t で、世界の産出量の 83.7%を占めており、次いでロシア連邦、カナダ、豪州などで、多く産出される。

表 1.レアメタル元素とその働き

炭素(C)

シリコン(Si)

マンガン(Mn)

リン(P)

硫黄(S)

元々、鋼に含まれる5元素とその働き 左記以外でのレアメタル元素とその働き

炭素含有量が増加すれば、鋼は硬くなるが脆くなる。

鋼の耐熱性、強度、硬度を増加。

焼きがよく入り、強靱性を与える。

低温時では鋼を脆くさせる。

熱した時に鋼を脆くさせる。

元素 働き

ニッケル(Ni)

クロム(Cr)

バナジウム(V)

タングステン(W)

コバルト(Co)

低温でも鋼が脆くならない性質を強め、耐蝕性を向上。

耐摩耗性の改善。耐蝕性と高温強度を強める。

結晶粒を細かくし、靱性を高め、耐摩耗性を向上。

高温になっても軟化せず、硬い炭化物を形成。Moの2倍の効果を出せる。

鋼が高温に熱せられても軟化しない。

元素 働き

出典:“金属データブック”、“レアメタルハンドブック”“特殊鋼の知識”等から作成。

モリブデン(Mo) 焼きが鋼の奥底まで入り、高温での引っ張り強度が上昇。

ボロン(B)

チタン(Ti)

銅(Cu) 0.4%まで添加すると耐候性を発揮(空気中でさびにくい)それ以上は割れる。

微量添加(0.003%以下)で焼き入れ性が増大。

0.1%以下の添加で硬度、強度、耐蝕性が増加。

図 1. タングステン鉱石生産から製品まで

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

として生産されている。 選鉱法は灰重石では比重選鉱と浮選の組み合わせが多く、鉄重石、マンガン重石では比重選鉱と磁選の組み合わせを行うことが多い。選鉱精鉱は WO3 品位 65%の物が市場取引で扱われるが、現在は精鉱での市場取引はほとんど行われておらず、フェロタングステンかパラタングステン酸アンモニウム(APT)といわれる中間生成物を用いて取り引きされている。

Panasqueira、Los Santos、Pasta Bueno、Mittersillの 4 鉱山のみといわれており、それに加えて、現在休止中の Cantung が再開予定である。それらのタングステン品位は 0.23%~0.83%と非常に低く、選鉱が非常に重要視される。 一方、主要なタングステン生産国である中国でも、原鉱品位は低いが、その中心は大型鉄マンガン重石の大量処理か、他のビスマスや金等の他の鉱物の副産物

図 2. タングステン国別生産量

表 2. 主なタングステン鉱山(除く中国)

Output Concentrate Mine(Owner)\ W03 Mtu Throughput TPA

% Mine Grade

U ground Open Cut Comment

1. Panasqueira (Sojitz)

100,000Mtu 600,000 0.23 UG Purchased by Sojitz ~ US 50m$

2. Los Santos (Heemskirk)

90,000Mtu 400,000 0.30 OC Optimised and fully on stream in mid-2010

3. Pasta Bueno (Malaga)

58,000Mtu 89,500 0.83 OC Undergoing an expansion

4. Mittersill (Sandvik)

n/a UG Bought by Sandvik in 2008(price not disclosed)

・Only four western world mines of significance・Temporary closure of the Cantung mine (Canada) in late 2009 exacerbated the global mine supply deficit・No new significant production considered likely before 2013

Cantung * closed

(NA Tungsten)300,000Mtu 405,000 1.1 UG Suspended on care maintenance, currently

undertaking a capital raising

表 3. 中国のタングステン生産鉱山

Mine Name English t/d WO3 Pec 鉱物 プロセス

1 大吉山钨矿选矿厂

Dajishan tungsten ore concentrator

2,460 0.298 84.32 主要鉱石は石英中の wolframite 脈。その他の鉱物としてモリブデン、硫化ビスマス、ビスマス。脈石鉱物としては石英、黒雲母、方解石他。

3 段の閉回路による破砕。2 段階の手選とオアソーティング。4 段の比重テーブル等による比重選鉱。浮重選鉱尾鉱から浮選にて残留分を回収。

2 西华山钨矿选矿厂

West Mountain quartz tungsten ore dressing plant

2,250 0.253 83.5 大規模な鉱脈型の鉄マンガン重石鉱床。金属鉱物は主にスズ石、緑柱石、灰重石、鉄マンガン重石。脈石鉱物は、長石、雲母、蛍石、ガーネット、石英。

3 段の閉回路粉砕。2 段の手選とオアソーター、4 段の振動テーブル。比重選鉱尾鉱の浮選。産物は錫精鉱、モリブデン精鉱、ビスマス精鉱。

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

 Union Carbide Corporation LAVazquez と他の会社では“石灰石”浮選の方法が開発されている。この方法は特に蛍石存在下で効果を表す。浮選で大量の石灰石を加えるとカルシウムが蛍石、方解石、石英表面に吸着し、それらの表面電位(ゼーター電位)が負から正に代わるのに対し、灰重石では負のままになっている。スラリーを混合し、炭酸ソーダを添加すると石英、蛍石、方解石表面には炭酸カルシウムの沈殿が沈積される。それに水ガラスを加えると、カルシウムの浮遊性が阻害され、結果として灰重石の浮遊性が向上する。 せん断凝集浮選(Shear flocculation flotation)は間違いなく微細な粒度の灰重石の実収率を向上させる方法である。本方法は近年 Hematite の浮選で多く用いられてきている方法であるが、もともとは微細灰重石粒子を懸濁したオレイン酸ナトリウム水溶液を高速攪拌すると疎水化された粒子の凝集が起こる事象が元となっている。せん断凝集は、パルプ濃度が高いほど、また高速攪拌場になるほど起こることが報告されているが、高速攪拌場においてはせん断凝集のほかに、アトリッション(磨砕)による凝集体の破壊も同時に進行するので、鉱石や条件ごとに浮選速度を一番高くするような最適濃度が存在するとされている。通常の方法は浮選試薬を適切量添加し pH を調整した後に強力な攪拌条件下で疎水性粒子が数百集まって疑似凝集粒子を形成させる。この疑似凝集粒子が気泡に接しやすくなることにより実収率が向上する。 また、最近の報告では、“石灰石”浮選を用い、石鹸と酸化パラフィンを捕収剤とすることで常温浮選することで高品位精鉱(> 65% WO3)を高品位、高実収率で得られたという報告もある。

1.中国における灰重石選鉱プロセス 中国は世界のタングステンの85%を生産しており、現状ではレアアースと同様に選鉱生産技術は他国より進んでいるように思われる。中国ではそれらの技術情報も多数発信しているが、残念ながらそのほとんどは中国語で記されている。その中から灰重石の選鉱に関しては、以下のように述べられている。

 灰重石の鉱床はしばしば多種の硫化鉱物を随伴しており、最も一般的なものはモリブデンである。通常選鉱では先に硫化鉱物を浮遊させ、次いで灰重石を浮選して回収する。灰重石浮選ではpH は炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムで中性近辺のアルカリ側 pH 9~10.5 の間に調整され、分散剤として水ガラスが用いられる。Que-bracho や Lignin sulfonates が硫化物の抑制剤として、タンニンや天然ゴム、種々のリン酸塩が粘土の抑制剤として使用される。一般的な捕収剤としてはオレイン酸、オレイン酸ソーダ、トール油、酸化パラフィンワックス石鹸等が用いられる。これらは全て発泡作用があるので通常起泡剤は用いられない。灰重石は浮遊性が高くカルシウム存在下にあっては、本来脈石鉱物である方解石、蛍石、アパタイトも浮遊するので浮選条件は複雑になる。そのために多金属塩、例えば硫酸第Ⅰ鉄を水ガラスに添加して使用する方法は浮選の選択制を著しく向上させる。

 また、他にも中国からは以下のような試験報告もなされている(http://www.chinabaike.com/z/keji/ck/584353.html)。

 液温を上昇させることは灰重石浮選を向上させる。液温を 70~90℃に上昇させ、多量の水ガラスを使用すると、方解石表面の捕収剤が脱着し、灰重石との選択性が向上する。

3 盘古山钨矿选矿厂

Pangushan tungsten ore concentrator

0.326 87.03 石英脈型鉄マンガン重石の脈鉱床。金属鉱物は鉄マンガン重石、輝蒼鉛鉱、泡状ビスマス、黄鉄鉱。脈石鉱物は石英。

2 つのセクションの閉回路粉砕。4段の手選、5 段階のテーブル、尾鉱は再磨鉱し、遠心型比重選別機を利用。ビスマス鉱石品位 0.41%。

4 浒坑钨矿选矿厂

Hu pit tungsten mine concentrator

1,220 0.368 88 大規模な石英と鉄マンガン重石脈型鉱床。金属鉱物は鉄マンガン重石、輝蒼鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱。脈石はおもに石英。

2 段の閉回路破砕。3 段の手選。テーブルによる比重選鉱で粗粒の物は尾鉱を再磨鉱して再度比重選鉱。亜鉛濃縮物亜鉛精鉱とビスマス精鉱を回収。

5 瑶岗仙钨矿选矿厂

Yaogangxian large tungsten ore concentrator

1,300 0.3 84.1 石英脈型鉄マンガン重石鉱床。主要な金属鉱物の鉄マンガン重石、灰重石、閃亜鉛鉱、スズ石、黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱。脈石鉱物は石英。

2 段の閉回路粉砕。ステージグラインディングとテーブルによる比重選鉱。

6 荡坪钨矿宝山选矿厂

Dangping Baoshan concentrator

350 0.364/1.791

79.64/88.7

タングステンスカルン灰重石鉱床。金属鉱物としては灰重石、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱。脈石鉱物はカルシウムと鉄輝石、蛍石、石英、方解石、長石、アクチノライト、セリサイト。

2 段の閉回路による粉砕。粉砕粒度- 0.074mm60~65%。2 段 階 の 浮選、タングステンは鉛、亜鉛浮選回路の一部として回収。鉛精鉱、亜鉛精鉱。

7 湘西金矿沃溪选矿厂

Woxi Western Gold concentrator

800 0.183/1.67

72.73/96.96

スカルン灰重石鉱床。金属鉱物は主に灰重石、輝安鉱、自然金、黄鉄鉱、鉄マンガン重石。脈石鉱物は、方解石、アパタイト、セリサイト他。

2 段の閉回路による粉砕。1 段目はロッドミル。灰重石は浮遊選鉱―酸浸出により回収。アンチモン精鉱、金精鉱を回収。

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

方法で沈殿させ、不純物を低減させた後、濾過し、得られた濾液を煮詰めてタングステン酸アンモニウムを晶出させる方法も知られている。この場合は、タングステン酸アンモニウムが重合して得られた APT を酸化性雰囲気で加熱するだけで、アンモニウム分は簡単に窒素と水に分解して離脱するので、酸化タングステンを容易に得ることができる。この方法では、アンモニアが不純物として酸化タングステン中に残留することがないので、酸化タングステンの純度を容易に上げることができる優れた方法である。そして、該酸化タングステンを鉄と混合してテルミット反応させれば、フェロタングステンが得られる。また、水素還元によっても、タングステンを容易に得ることができる。 また、鉄マンガン重石を含む鉱石からは、該鉱石とアルカリ金属の塩化物、炭酸塩などを、500~800℃の温度で反応させ、水溶性のタングステン有価物を得、これから金属タングステンを抽出する方法が知られている。しかし、この方法は実収率が低く、抽出残渣を加熱して再反応させる問題がある。

Ⅲ.ニオブ ニオブの 2007 年の世界全体の年間生産量は約 6 万t。レアメタルの中でも特に産地が偏在している資源であり、ブラジルがニオブ生産量・埋蔵量ともに圧倒的シェアを持っている。ブラジル、カナダのニオブ生産量上位 2 か国で世界全体の約 99.9%を占める。 アフリカでは数か国からニオブが生産されているが、それぞれ生産量はごく僅かとなっている。

2.パラタングステン酸アンモニウム(APT)製造法 タングステンは以前は精鉱で取り引きされていたが、現在はそのほとんどが中間産物の形で取り引きされている。中間産物の代表的なものがタングステン酸ナトリウム(Na2WO4)やパラタングステン酸アンモニウム(5(NH4)2O・12WO3・5H2O:以下、APT とも称す)などのタングステン酸塩であり、APT を焙焼して酸化タングステンとし、さらに、水素還元することにより、金属タングステンを得ることができる。 タングステン酸ナトリウムを製造する方法としては、灰重石精鉱とソーダ灰溶液を高温高圧反応器であるオートクレーブに入れ、200~250℃、1.6~4.0MPaの条件で加熱加圧し、タングステン酸ナトリウムとして生成させる方法が知られている。しかしながら、この方法は、オートクレーブを使用するため、設備費が大きくなる問題、高圧下で反応するため、アルカリによる灰重石鉱石の脈石分の溶解が進み、溶液中に不純物としての珪素などが増加する問題がある。加えて、タングステン酸ナトリウムからナトリウムを脱離し、アンモニウムイオンと置換して APT を得る必要がある。ナトリウムを離脱するには、例えば、溶媒抽出工程が必要になり、工程数が多くなる問題がある。 または、灰重石鉱石を温塩酸中で 14 時間攪拌し、水溶性の塩化カルシウムと不溶性のタングステン酸

(H2WO4)を得、タングステン酸を濾過分離した後、沈殿物(タングステン酸)を温アンモニウム水中で 2 時間攪拌し、タングステン酸アンモニウムとして溶解させ、該溶液中の Ca、Fe、Si、Al イオンなどを種々の

図 3. ニオブ生産国別割合

 世界のニオブ生産のほとんどがブラジルで、その代表 的 な 鉱 山 が Companhia Brasileira de Niobio

(CBMM)社の Araxa 鉱山であり、CBMM 社のみで世界の生産量の約 80%を占めている。他には同じブラジルの Anglo American(Brazil)、カナダの IAM

Gold Niobec が操業中であり、マラウイの Kanyika が操業開始予定であるが、いずれも Araxa と比較すると規模が小さい。したがって、ニオブ生産においてAraxa の牙城は揺るぎそうにないが、旧ロシア領ではペグマタイト起源のニオブを回収しようとする試み

(571)

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

も散見される。 Araxa 鉱床は白亜紀に先カンブリア紀の珪岩および片岩中に貫入したアルカリ岩、カーボナイト複合岩体にニオブが胚胎し、直径 4km のドーム構造を形成している。CBMM が保有するニオブ鉱床は埋蔵量433 百万 t、平均品位(Nb2O3)が 2.5%である。この地帯はラテライト化作用を強く受け、厚さ 200m 以上にも及ぶ風化した台地が形成されニオブ鉱床はこの中に形成している。Araxa 鉱山はこの鉱床を露天掘りで採掘し、破砕、磨鉱、磁選、浮選を通じて Nb2O3 品位 60%のパイロクロア精鉱を作製し、その大部分はペレタイジング、焙焼の工程を経てフェロニオブ、酸化ニオブが、さらに酸化ニオブの一部はそれを原料として、金属ニオブや高純度ニオブまで生産される。選鉱フローを以下に示す。

CrushingGrinding

Magneticseparation

Cyclone381mm

Cyclone102mm

Cyclone25mm

Flotationtailing①

Flotationtailing②

Rougher②

Rougher①

<0.1mm

Non-mag

Fine

FineFroth

Coarse

Coarse

Froth

(REO?)(REO?)

(Fe3O4 REO?)

(REO?)

Coarse

Froth

Feed

Mag

Fine particle

Nb Conc.

Tailing pond(combined)

Cleaner②

Cleaner①

図 4. Araxa 選鉱フロー

パイロクロア採掘鉱石

(2.65% Nb2

O3

パイロクロア精鉱

(65% Nb2

O3

工業純度酸化ニオブ

(99.1% Nb2

O3

フェロニオブ

(63% Nb)

高純度酸化ニオブ

(99.9% Nb2

O3

高品位

フェロニオブ

ニッケルニオブ

粗金属ニオブ

(97% Nb)

金属ニオブ

(99% Nb)

Fe2

O3

Fe,Ni

微粉砕

磁気選鉱

浮遊選鉱

浸出(HCl)

溶媒抽出法

出典:金属時評

溶媒抽出法テルミット還元(Al)

塩化法

テルミット還元(Al) テルミット

還元(Al)

電子ビーム

溶解精製

図 5. 各ニオブ産物製造方法

 鉱山で採鉱された鉱石は、Ball Mill で磨鉱され、磁選される。磁化物は Magnetite であり、尾鉱として処理、非磁化物は次のデスライム工程に送付される。 デスライム工程は 3 段に分けられており、1 段目は381mm サイクロン、2 段目は 102mm サイクロン、そして最終段は 25mm サイクロンが用いられ、後になるほどに細粒の分級点で分級されるようになっている。それぞれの段は主分級、その粗粒をスクラバーを用いて洗浄、その洗浄物を同じ径のサイクロンで再分級を行うフローとなっており、主分級の細粒が次の段の分級に、そしてスクラバー後の粗粒が浮選系に送られる。なお、最終段の 25mm サイクロン分級ではス

クラバーは無く、後段サイクロンの粗粒も 1 段目、2段目の粗粒とは別系統の浮選に回されている。また、25mm サイクロン分級の細粒は最終スライムとして尾鉱として処理される。

fine Cyclone coarse

fine Cyclone coarse

Scrubber

Next Deslime Flotation

図 6. デスライム フロー

 デスライムに用いるサイクロンの台数は非常に多く、1 段 目 は(4+2 台)、2 段 目 が(45+18 台)、3 段 目では(200+200 台)となっている。 1 段目、2 段目で得られた粗粒は 8 台の 8.5m3 セルにより粗選され、その精鉱はシックナーで濃縮後、4段の精選が行われる。特に再磨鉱等は行われていない。 一方 3 段目の 25mm サイクロン粗粒は別に 4 台の4.8m3 セルで粗選され、濃縮されずに 8 台の 1.7m3 セルで精選されている。両系統の浮選精鉱は精鉱シックナーに送られ、濃縮された後、ディスクフィルターで脱水される。 本フローで特徴的なことは再磨鉱もなく磨鉱は一次ミルのみであること、デスライムに 469 台ものサイクロンを使っていること、スクラバーをいわばアトリッション(磨砕)として用いていることである。浮選条件

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(6)―タングステン、ニオブ、チタン―

ている。浮選法としては主として効率的なイルメナイトの捕収剤および脈石抑制剤の研究と、選択的凝集浮選法、キャリア浮選法、マイクロバブル浮選機などを適用する、従来技術と新規適用研究の両面から進められている。 浮選法の適用はイルメナイトだけではなく、ルチル鉱石の処理でも開発が進んできている。例えばチリで開発が計画されているルチルの鉱山では鉱山から鉱石を採掘し、それを粉砕して比重選鉱、浮選を組み合わせることでルチル品位 95%の精鉱を得、ルチルとし

は NaF を活性剤とし低 pH でアミン系捕収剤(アミンアセテート)を用いている。

Ⅳ.チタン チタン金属は耐腐食性と強度対重量比に優れている。チタンの約 95%は二酸化チタン(TiO2)のかたちで、塗料、紙、プラスチックの白色顔料に使用されており、その他、航空機、ロケット、電力・化学・海水淡水化プラント、自動車、自転車、金属製品、建材、医療、光触媒、形状記憶合金などに使用される。商業目的で製造される酸化チタン顔料は、アナターゼタイプまたはルチルタイプがあるが、これらはルチル鉱石から作られたかどうかに関わりなく、その結晶形に従って分類されている。アナターゼ顔料とルチル顔料はともに白色であるが、性質が異なるため、最終用途も異なる。例えば、ルチル顔料はアナターゼ顔料と比較して太陽光に暴露された場合でも塗料中のバインダーと反応しにくいため、屋外の塗装での使用に好まれる。それに対しアナターゼ顔料はルチル顔料よりも青みがかったいくらか柔らかい色調であるため、主に屋内の塗装と紙の製造に使用される。TiO2 顔料では、その製造法と最終的な仕上げに応じて、分散性、耐久性、乳白度、着色性といったさまざまな機能的特徴を持たせることができる。アナターゼ顔料は、現在は硫酸法のみで製造されている。一方、ルチル顔料は塩素法と硫酸法の両方で製造されている。どちらの方法を選択するべきかを決定するには、原料の入手性、輸送、および廃鉱処理費用など、非常に多数の要因が考慮される。 チタン(Ti)鉱物としてはイルメナイト(ilmenite)、ルチル(rutile)、白チタン石(leucoxene)、アナターゼ

(anatase)、ブルッカイト(brookite)、ぺロブスカイト(perovskite)、スフェーン(sphene)が挙げられるが、これらの鉱物のうち、イルメナイト、ルチルが経済的に重要である。2010 年の生産量を見るとイルメナイト生産量が 550 万 t を越えているのに対し、ルチル生産量はその 10 分の 1 にしかならない。主要生産国は南ア、豪州、カナダであり、最近では中国、インド、ベトナムでの生産も増加してきている。 チタン鉱石の採鉱は、通常、浚渫や乾式採鉱と重力スパイラルのような地表面での採掘手法を使用して実施される。 その選鉱プラントは多くの場合、移動式のものになっている。通常は 1 次破砕機としてジョークラッシャー、2 次破砕機としてコーンクラッシャーが選定され、特に鉄鉱石用に開発されたコーンクラッシャーはその高効率、高生産と低メインテナンスの観点から選択されることが多い。また、その精鉱品位を上昇させるために、磁力選鉱や静電選鉱を組み合わせることも広く行われている。また、近年はこれまで尾鉱として捨てられてきた微細部や低品位部の鉱石からイルメナイトを回収する方法として浮選法の開発が行われてき

図 7. イルメナイト生産量

図 8. ルチル生産量

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物をある程度ストックしておくことが可能である。さらに、硫酸法プラントは、必要な場合には、単純に 1基または複数の煆焼炉のスイッチを切ることで、処理能力の 60~80%で操業することが比較的容易である。ただし、工程は塩素法に比べて長く、より多くのエネルギーを消費する。また、硫酸鉄等の固形産業廃棄物は塩素法の 7 倍であり、廃硫酸は 80%以上は回収不能な廃溶液となり、そのため必要な公害対策設備費も増大する。 イルメナイトから鉄成分を除去することで、酸化チタンの含有量を少なくとも 90%まで濃縮すれば、合成ルチルを生成できる。これにより、イルメナイトを塩素法工程への供給原料にアップグレードし、ルチルの代用品として使用することができる。 一方、塩素法はルチル鉱や上記ルチル代用品とともに塩酸を反応させ四塩化チタンから二酸化チタンを製造する。ルチルを石油コークスの存在下で塩化してTiCl4 とし、TiCl4 を約 900℃で空気または酸素により

てそのまま販売するフローが開発されている。ここで行われる浮選は、鉱石を 100 メッシュまで粉砕した後、フルオロ珪酸およびシュウ酸を用い pH 3 に調整し、リン酸エステル系の捕収剤を主捕収剤として行われている。 選鉱で得られたイルメナイト精鉱は処理されて合成ルチルを生産することもしばしばある。その製造で使用可能な工程のうち最も広く利用されているのは、硫酸法と塩素法である。硫酸法はイルメナイト鉱石と硫酸を反応させ、酸化チタンの硫酸塩から二酸化チタンを製造する。イルメナイトまたはチタンスラグを硫酸と反応させ、次に、水酸化チタンが加水分解により析出し、濾過されて煆焼(かしょう)される。硫酸法は、約 20 段階の個別の処理から成る工程である。硫酸法の技術がおおむねバッチ処理であるため、硫酸処理プラントのある部分が保守のためシャットダウンしている間でも別の部分を稼働させることが可能である。また、後の下流工程における処理のために中間反応生成

図 9. チタン製造プロセス

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ったように思われる。ⅰ.儲からなければ資源ではないⅱ.5W1H による Planningⅲ.鉱山業、日本人としての誇り

 最初の「儲からなければ資源ではない」ということはもともと Resource と Reserve の違いに表されるように資源に従事する人間としては最も基本と考えるが、ビ ジ ネ ス プ ラ ン の 構 築 に し て も、Feasibility Study にしても、実際の Operation にしても常に根幹となる考えである。ただし、単純に儲からないからこいつは資源ではないというのではなく、どうすれば儲かるようにできるのかという風に考えていくことが大切である。そして、それを支えるツールとして筆者が今も最も有効と信じている方法が 5W1H である。Why do we need this job?(背景) Where do we want to go?(目標) When do we need to achieve it?(期限) How will we do it?(方針) What will we need for it?(必要項目) Who will do it?(担当者)を書き示す非常に単純なフォームであるが、意外と作成して見ると、本当は自分が何をしたいのかがわかっていないことがはっきりするものである。さらに、物事を解決するためには多くの人が係ることが必要なのだが、本フォームは関係者の意思を統一するのにも役に立つ。そして、それらのベースにあるのは誇りである。鉱山業は古くて汚い産業と思われているが、実際には公害は出さないという信念に基づき、地域、住民とともに発展していく誇りの持てる仕事である。地政学的にも重要な産業であり、世界の指導者に鉱山業出身者が多いのも頷ける話である。その中で日本は鉱山技術という面では世界標準からかなり遅れていると考えられるが、QC サークルに示される現場主義や、世界に誇れる良好な労使関係。仕事そのものを楽しむ理念など、他の国にはない非常に強い面も持つと考えられる。今後、このような強みを活かし、世界で活躍する日本の鉱山技術者が輩出されんことを心より祈っている。

以上(2014.3.3)

酸化させ、反応で生じた可能性のある残留塩素と塩酸を取り除くために TiO2 を煆焼する。さらに TiCl4 に塩化アルミニウムが添加されて、事実上すべてのチタンが確実に酸化されてルチル結晶構造になる。この塩素法は、概念的には単純であり、気相反応で工程が非常に短く設備もコンパクトで済むとされるが、900℃以上の高温下での塩素、酸化塩素、および四塩化チタンの強い腐食性により、化学技術上の大きな問題が多数伴うことになる。 また、チタン鉄鉱やルチルなどの、鉄分を含む鉱石から金属チタンを精錬する方法として知られているのはクロール法である。これは、まず炭素と一緒に熱して鉄を除いた後、さらに炭素と熱しながら塩素を通じて塩化チタン(IV)TiCl4(沸点 136℃)とし、蒸留して精製する方法である。

TiO2 + 2C + 2Cl2 → TiCl4 + 2CO チタンは高温で炭化物や窒化物を作りやすいので、アルゴン中約 900℃においてマグネシウムで還元した後、塩化マグネシウムを真空分離して多孔質の金属チタンを得る。

TiCl4 + 2Mg → Ti + 2MgCl2 こうして得られたチタンは多孔質であるため、スポンジチタンと呼ばれる。途中、真空分離された塩化マグネシウムは再び塩素とマグネシウムに分離され、再利用される。チタンの製造は、プロセスが複雑で鉄鋼のように連続生産ができないため、製鉄よりも費用が掛かり高価になる。 スポンジチタンはさらにアロイやスクラップとともに図 9 のような処理が行われ最終チタン製品として出荷される。

Ⅴ.おわりに 2 年にわたり連載してきた最新選鉱技術事情もいよいよ今回が最終稿となる。このような機会を与えていただいたことに深く感謝するとともに、一選鉱屋として日本の鉱山界に少しでもお役に立てたことを切に願ってやまない。 2 年を振り返って特に述べたい点は以下の 3 点であ

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