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29 斑岩システムの探鉱に関する最近の話題 —Society of Economic Geologists 2012年次大会 参加報告— 資源探査部探査第1課 課長代理 探査第2課 探査第3課 サンティアゴ事務所 副所長 長江 晋 大鹿 淳也 鶴岡 昴 縫部 保徳 1. はじめに 2012年9月23日~26日、ペルー共和国リマにおいてSociety of Economic Geologists SEG)の2012年次大会が開催され た。SEGは金属資源の地質・探鉱をテーマとする主要学会の一つで、隔年毎の大会は今回が初の南米開催となる。大 会参加者数は約1,700名(同時開催のペルー地質学会大会参加者900名を含む)と盛況であった。今般、同大会に参加す る機会を得たので概要を報告する。 2. プログラム構成 テーマ別セッションでの講演及び大会講演として計 39件の発表が行われた。セッションは南米での開催を 反映したAndeanAndean Porphyry及びLatin America3テーマに、Discovery及びWorldセッションを加えた 計5セッションから構成され、大会講演はそれぞれ元 CODELCO探鉱部長を務めたFrancisco Camus 氏から 「チリ北部及びペルー南部海岸山地のメタロジェニ ー」、地質コンサルタントのRichard Sillitoe氏から「斑 岩銅鉱床区」及びNewcrest Mining探鉱本部長などを歴 任したDan Wood氏から「深部鉱体発見へのチャレン ジ」と題した発表が行われた。以下、各セッションの 講演タイトル一覧を示すと共に、幾つかのタイトルを ピックアップして簡単に講演内容を紹介する。 3. 講演内容紹介 3-1. Andeanセッション(表1) 兵土 大輔 探査第1課 タイトル 演者 所属 ペルー・アンデスの地質と鉱床 M. Cardozo A. Bustamante Alturas Minerals, (大会委員長) EXPLOANDES ペルー鉱床の大規模構造規制 V. Carlotto INGEMMET(広域地質部長) Yanacocha火山岩の角閃石組成:金鉱化に 関連した多起源マグマ性揮発物質の証拠 I. Chambefort J.H. Dilles A.A. Longo オレゴン州立大, GNS Science (NZ) オレゴン州立大 オレゴン州立大, ネバダ大 ペルー北部La Libertad州Lagnas Norte鉱床: 大規模高硫化系浅熱水金鉱床のメタロジェニ ック・セッティング A.T. Montgomery, A.H. Clark, T.K. Kyser, J.K.W. Lee C. McEwan クイーンズ大(加) Barrick Australia Pacific 斑岩システムのベースメタル累帯鉱化:ペル ー・Morococha地域における鉱液の起源と 進化 H. Catchpole, K. Kouzmanov, A. Bendezú, L. Fontboté B. Putlitz J.H. Seo ジュネーブ大 ローザンヌ大(スイス) チューリッヒ工科大 石英カソード・ルミネッセンス及び流体包有 物地質温度計が示すEscondida斑岩銅鉱床に おける熱水流体の進化と初成鉱化作用規制 K. Riveros, E. Campos J. Wilkinson A. Kearsley 北カトリカ大(チリ) インペリアル・カレッジ, 英国自然史博物館 英国自然史博物館 探査ツールとしての緑簾石微量元素組成:El Teniente斑岩銅-モリブデン鉱床での事例 M.J. Baker, D.R. Cooke P.N. Hollings J.J. Wilkinson, C. Wilkinson タスマニア大 レイクヘッド大(加) インペリアル・カレッジ ペルー、始新世Coroccohuayco及びTintaya 斑岩-スカルン銅鉱床:テクトニクス-マグマ 進化がもたらした5Maの好条件 C. Chelle-Michou, M. Chiaradia, M. Ovtcharova A. Ulianov G.E.V. Durand ジュネーブ大 ローザンヌ大(スイス) Xstrata Tintaya 表1. Andeanセッションの講演タイトル、演者と所属 3932012.11 金属資源レポート Society of Economic Geologists 2012

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斑岩システムの探鉱に関する最近の話題—Society of Economic Geologists 2012年次大会 参加報告—

資源探査部探査第1課課長代理

探査第2課

探査第3課 サンティアゴ事務所副所長

長江 晋 大鹿 淳也鶴岡 昴 縫部 保徳

1. はじめに2012年9月23日~26日、ペルー共和国リマにおいてSociety of Economic Geologists(SEG)の2012年次大会が開催された。SEGは金属資源の地質・探鉱をテーマとする主要学会の一つで、隔年毎の大会は今回が初の南米開催となる。大会参加者数は約1,700名(同時開催のペルー地質学会大会参加者900名を含む)と盛況であった。今般、同大会に参加する機会を得たので概要を報告する。

2. プログラム構成テーマ別セッションでの講演及び大会講演として計39件の発表が行われた。セッションは南米での開催を反映したAndean、Andean Porphyry及びLatin Americaの3テーマに、Discovery及びWorldセッションを加えた計5セッションから構成され、大会講演はそれぞれ元CODELCO探鉱部長を務めたFrancisco Camus氏から

「チリ北部及びペルー南部海岸山地のメタロジェニー」、地質コンサルタントのRichard Sillitoe氏から「斑岩銅鉱床区」及びNewcrest Mining探鉱本部長などを歴任したDan Wood氏から「深部鉱体発見へのチャレンジ」と題した発表が行われた。以下、各セッションの講演タイトル一覧を示すと共に、幾つかのタイトルをピックアップして簡単に講演内容を紹介する。

3. 講演内容紹介3-1. Andeanセッション(表1)

兵土 大輔探査第1課

タイトル 演者 所属

ペルー・アンデスの地質と鉱床 M. CardozoA. Bustamante

Alturas Minerals, (大会委員長)EXPLOANDES

ペルー鉱床の大規模構造規制 V. Carlotto INGEMMET(広域地質部長)

Yanacocha火山岩の角閃石組成:金鉱化に関連した多起源マグマ性揮発物質の証拠

I. ChambefortJ.H. DillesA.A. Longo

オレゴン州立大, GNS Science (NZ)オレゴン州立大オレゴン州立大, ネバダ大

ペルー北部La Libertad州Lagnas Norte鉱床:大規模高硫化系浅熱水金鉱床のメタロジェニック・セッティング

A.T. Montgomery, A.H. Clark, T.K. Kyser, J.K.W. LeeC. McEwan

クイーンズ大(加)Barrick Australia Pacific

斑岩システムのベースメタル累帯鉱化:ペルー・Morococha地域における鉱液の起源と進化

H. Catchpole, K. Kouzmanov, A. Bendezú, L. FontbotéB. PutlitzJ.H. Seo

ジュネーブ大ローザンヌ大(スイス)チューリッヒ工科大

石英カソード・ルミネッセンス及び流体包有物地質温度計が示すEscondida斑岩銅鉱床における熱水流体の進化と初成鉱化作用規制

K. Riveros, E. CamposJ. WilkinsonA. Kearsley

北カトリカ大(チリ)インペリアル・カレッジ, 英国自然史博物館英国自然史博物館

探査ツールとしての緑簾石微量元素組成:El Teniente斑岩銅-モリブデン鉱床での事例

M.J. Baker, D.R. CookeP.N. HollingsJ.J. Wilkinson, C. Wilkinson

タスマニア大レイクヘッド大(加)インペリアル・カレッジ

ペルー、始新世Coroccohuayco及びTintaya斑岩-スカルン銅鉱床:テクトニクス-マグマ進化がもたらした5Maの好条件

C . C h e l l e - M i c h o u , M . Chiaradia, M. OvtcharovaA. UlianovG.E.V. Durand

ジュネーブ大ローザンヌ大(スイス)Xstrata Tintaya

表1. Andeanセッションの講演タイトル、演者と所属

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【ペルー・アンデスの地質と鉱床】今回のSEG2012大会委員長(Conference Coordinator)

を務めるCardozo氏による講演で、ペルー・アンデスに産する鉱床の時空分布が概観された。主要鉱床タイ

プとして斑岩型、浅熱水性及びスカルン・交代型鉱床を取り上げ、ペルー・アンデスの全体地質を整理した総合柱状図(図1)上で、各鉱床群を胚胎層準にプロットすると共に、主要鉱床の鉱量と品位が紹介された。

ペルー・アンデスにおける斑岩型鉱床の形成は中新世北部斑岩銅金帯(代表的鉱床:La Granja 2,[email protected]%Cu, 0.11%Zn;Michiquillay [email protected]%Cu, 2-4g/t Agなど)、暁新世南部斑岩銅帯(同:Cerro

Verde 3,[email protected]%Cu, 0.01%Mo;Toquepala 3,300 [email protected]%Cu, 0.02%Moなど)及び始新世-漸新世のアプリマック斑岩-スカルン帯(同:Las Bambas 1,710Mt

@0.6%Cu, 0.018%Mo;Antapaccay 1,[email protected]%Cu,

0.12%Auなど)の各鉱床区に主として生じており、いずれも大規模なバソリスに関連して形成された(図2)。斑岩鉱床の形成には、厚い大陸地殻と、恐らくは地殻との相互作用を経て進化したマグマの存在が重要であること、構造規制要素として一義的には地殻深部の大規模断裂系が重要だが、個々の大鉱床の配置は島弧方向に斜交する断層群に規制されているとの指摘がなされた。

浅熱水性鉱床は新生代火山帯の主として変質火山岩類を母岩に生じており、地理的にはペルー・アンデスの高標高地帯が胚胎場となっている(図3)。鉱床区はYanacocha帯(代表的鉱床:Yanacocha +[email protected]/t

Auなど)、Pierina帯(同:Pierina +[email protected]/t Auなど)及び南部金 -銀帯(同:Chucapaca [email protected]/t Au,

10.8g/t Agなど)に区分される(図3ではこれら鉱床区は識別されない)。鉱床形成に構造規制が強く効いており、大規模な地殻構造から派生した二次、三次構造が重要な役割を果たしているとの指摘がなされた。ペルー・アンデスはまた鉛、亜鉛及び銀資源に富み、

中部多金属鉱床区(代表的鉱床:Cerro de Pasco +[email protected] % Zn, 2.3 %Pb, 100g/t Ag;Toromocho 2,150 Mt@>7%Zn、など)を中心に、三畳紀から新生代の堆積岩類を母岩とするスカルン及び交代鉱床が発達する(図4)。炭酸塩岩とマグマ性流体によるメタソマテ

図1. ペルー・アンデスの総合地質柱状図(Cardozo & Bustamante, 2012)

図2. ペルー・アンデスの地質と斑岩型鉱床分布(Cardozo & Bustamante, 2012)

図3. ペルー・アンデスの地質と浅熱水性鉱床分布(Cardozo & Bustamante, 2012)

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ィックな交代作用のため、膨大な種類の鉱物産状を示すことが特徴である。そうした熱水は、その大半が中新世に形成された主にカルクアルカリ組成の貫入岩体または火山岩類から供給された。

上記3種の鉱床タイプ以外のものも含めたペルー・アンデス全域の鉱床区区分及び模式的東西断面をそれぞれ図5、図6に示す。

【斑岩システムのベースメタル累帯鉱化:ペルー・Morococha地域における鉱液の起源と進化】現SEG会長であるジュネーブ大学Luis Fontboté教授らのグループによる発表で、Morococha鉱床を例に斑岩システムの熱水進化とベースメタルの累帯沈殿が議論された。

Morococha鉱床では、後期中新世の斑岩類貫入に伴う銅-モリブデン鉱化と共にベースメタル脈及び交代鉱床(コルディレラ型多金属鉱化と呼ばれる)が発達する。コルディレラ型亜鉛-鉛-銀-銅脈は、全体として周辺に向かい銅→亜鉛・鉛→銀のメタル・ゾーニングを示す(図7)。同鉱床地域の流体包有物の微小地質温度解析とLA-ICP-MSによる微小領域分析、及び脈石鉱物の安定同位体分析の結果、以下の特徴が明らかとなった。・より早期(高温)のコルディレラ型ベースメタル脈群

から得られた流体(図8:黄色い丸印の右側部分)は低塩濃度:2-5wt% NaCl equiv.、低CO2含有量:3-10 mol%、均質化温度:340-380℃を示し、やや低温であるほか斑岩型石英脈中の流体(図8:橙色の菱形)の特徴と類似する。・流体包有物中の金属濃度は、銅については斑岩型由来及びコルディレラ型由来の両者を通じて温度低下に伴い漸減する傾向を(図9)、亜鉛、鉛、マンガンについては斑岩型由来と早期のコルディレラ型由来の両者がほぼ同じ値を示す(図10)。・斑岩型及びコルディレラ型鉱化に伴う脈石鉱物の安定同位体分析結果は両者が同様にマグマ起源であり、マンガン鉱物沈殿が生じた最末期に天水混合による希釈が進行したにすぎないことを示す。

図4. ペルー・アンデスの地質とスカルン・多金属交代鉱床分布(Cardozo & Bustamante, 2012)

図5. ペルー・アンデスの鉱床区(Cardozo & Bustamante, 2012)

図6. ペルーの模式的地質断面と鉱床分布(Cardozo & Bustamante, 2012)

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図7. Morococha地域の地質とメタル・ゾーニング(Catchpole et al., 2012)

図8. Morococha地域の流体包有物塩濃度及び均質化温度(Catchpole et al., 2012)

図9. Morococha地域の流体包有物中の銅濃度(Catchpole et al., 2012)

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以上の事実より、コルディレラ型ベースメタル鉱化をもたらした流体は、斑岩型流体の冷却進化により形成されたと解釈され、以下の熱水進化モデルが提示された。このモデルは、斑岩システムに出現するベースメタル鉱化を説明する一般的な回答になり得る。・起源流体となるマグマ性の低塩濃度斑岩型流体は冷却過程において静岩圧領域から高温の静水圧領域に移行する。減圧により流体は沸騰し、CO2の大部分

を失うとともに塩濃度が中程度:~16wt% NaCl

equiv.;最大34.7wt% NaCl equiv.に上昇する。・マグマ性流体は引き続き開放系の状態において冷却し、その間に硫砒銅鉱、砒四面銅鉱-四面銅鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱及び方鉛鉱を順次沈殿する(この過程でメタル・ゾーニングが形成される)。・流体が270℃以下に冷却し、天水との混合が進むと大量の菱マンガン鉱と石英が沈殿する。

3-2. Andean Porphyryセッション(表2)

図10. Morococha地域の流体包有物中の亜鉛、鉛、マンガン、硫黄濃度(Catchpole et al., 2012)

表2. Andean Porphyryセッションの講演タイトル、演者と所属

タイトル 演者 所属Taca Taca銅プロジェクトの岩石年代、変質及び鉱化、Salta、アルゼンチン G. Almandoz Corriente Argentina, Lumina Copper

ペルー・La Granja Cu-Mo-Ag-Znシステム:地質と鉱量 D. Wilkinson, A. Paredes Rio Tinto Minera Peru

ペルー・Las Bambas鉱床の地質的特徴と鉱量評価

F. Guillen, J. Miranda, R.R. Roco Xstrata Copper

ペルー・La Tapada及びTia Maria斑岩銅鉱床のメタロジェニー F.N. Chavez, E.C. Aguilar Southern Copper

浅熱水性堆積岩胚胎金鉱床と斑岩銅-金(-モリブデン)鉱床の空間的及び成因的関連:La Arena、La Libertad州、ペルー

E. GarayJ. Valdivia, J. RiveraG. CorbettI. Sangay

Rio Alto MiningLa ArenaCorbett Geological ServicesAnglo Peruana Terra

Encuentro鉱床:Centinela地区における銅-金-モリブデン斑岩鉱床、チリ T. Swaneck Antofagasta Minerals

Chimborazo プ ロ ジ ェ ク ト の 地 質、Escondida地区、アントファガスタ、チリ C. Wong Minera Escondida

Relincho斑岩銅-モリブデン鉱床、アタカマ州、チリ

P.J. Johnston, F. Figueroa, G. LopezG. Hernandez, O. Cortes

Teck Exploraciones Mineras ChileMinera Relincho Copper

El Teniente銅-モリブデン鉱床地区の新たな地質年代データと探鉱ポテンシャル、中央アンデス、チリ

R.P. Cáceres, P.K. Villarroe Exploracioones Mineras Andes

Los Sulfatos斑岩銅-モリブデン鉱床の地質、Los Bronces-Río Blanco地区、チリ中部

J.C. Toro, J. Zamorano, M. Pablo, E. Tristram Anglo American Exploration Chile

La Americana鉱床とCerro Negro鉱床の発見と地質:Andina鉱山における新たな深部斑岩銅-モリブデン型鉱化、Rio Blanco – Los Bronces地区、チリ中部

S.L. RiveraP. CuadraE. Wettke

Exploracioones Mineras AndesCodelcoExploracioones Mineras Andes

Conchi斑岩銅-モリブデン鉱床の初成変質と鉱化作用

J. Perelló, G. Saldías, M. Gonzalez, R. Henríquez, S. Giglio

Antofagasta Minerals

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【ペルー・La Granja 銅-モリブデン-銀-亜鉛システム:地質と鉱量】

Cajamarca県中西部に位置するLa Granja鉱床は、銅-

モリブデン-銀-亜鉛鉱化を伴う斑岩/熱水角礫及びスカルン・システムで、銅そして潜在的には銀、モリブデン、亜鉛についてもワールドクラスの巨大鉱床である。Rio TintoのWilkinson地質技師より同鉱床の地質と最新の探鉱状況が紹介された。

La Granja銅-モリブデン-銀-亜鉛 斑岩-角礫岩コンプレックスは、デイサイト~閃緑岩組成で大量の熱水角礫岩相を伴う複数の巨大な中新統斑岩ストックから構成され、域内の主に2地区:東部のCerro Paja Blanca

(CPB) 帯及び西部のMirador帯に貫入中心を持つ。これらのストック・コンプレックスは緩く東傾斜し

て、基盤の前期白亜系-暁新統の基盤堆積岩及び火山岩類中に貫入している。基盤岩の一部を構成する石灰質岩との貫入境界付近には相当量の銅-亜鉛鉱化を伴う緑泥石及び緑簾石に富むスカルンが発達する。ストック・コンプレックスの上部岩石は強度のフィ

リック変質を被っており、セリサイト-黄鉄鉱化が著しい。フィリック変質帯の下部には広範囲にカリ変質

【Encuentro鉱床:チリ・Centinela地区における銅-金-モリブデン斑岩鉱床】

Antofagasta州のアンデス山麓に位置するCentinela地区には延長50kmに亘って斑岩銅-モリブデン-金鉱床及びエキゾチック銅鉱床が配列し、操業中のEsperanza、Tesoro NE及びMiradorの露天掘鉱山が含まれる(図12)。Encuentroにおける銅-金-モリブデン斑岩鉱化は2007年後半に発見され、現在フィージビリティ・スタディを実施中である。同鉱床の地質について、Antofagasta MineralsのSwaneck地質技師より報告がなされた。2006年、Antofagasta Mineralsは既存コア約35,000mの再ロギングを含む探鉱プログラムに着手し、中新統礫層被覆下の基盤岩地質図を作成した。地質調査はIP

プロファイルにより補完された。2007年9月、最初の試錐孔が深度300mで熱水システムの黄鉄鉱ハローを

帯が発達する。初成銅の最高品位部はカリ変質帯に発達し、一方スーパージーンの銅鉱化はほぼ全てフィリック変質帯に存在する。初成銅鉱化は黄鉄鉱を伴う大量の黄銅鉱を主体とし、少量の斑銅鉱、方輝銅鉱、砒四面銅鉱-四面銅鉱及び硫砒銅鉱を伴う。銅-砒素硫化物の鉱化は後期の石英脈に伴われて鉱化システム上部に産し、より後期の、浅熱水的な鉱化によりもたらされたと考えられる。二次富化帯は深部まで浸透しており、輝銅鉱と少量の銅藍を伴う。鉱化斑岩、角礫岩及び関連するスカルンからなる全体システムは、東西3.5km、南北2.5kmの広がりを有するが、地表下2,000mより深部はなおオープンである。2006年後半に試錐を開始して以降、Rio Tintoは

Cambior/BHP Billitonによる既存鉱量を著しく拡大させてきたが(図11)、これには西部のMirador斑岩システムの発見も含まれる。Rio Tintoは2011年11月、La

Granja鉱床の予測鉱物資源量として36億t @0.51% Cu

(カットオフ0.3% Cu)を報告したが、これまでの6年間の探鉱により、0.5%Cu以上の鉱化岩100億t以上が識別されており、今後の試錐とモデリングにより前期報告値は飛躍的に増大する見込みである。

2800 L

2400 L

2000 L

1600 L

1200 L

800 L

400 L

Cerro Paja BlancaMiradorCuT

低い

高い

Mirador Cerro Paja Blanca2800 L

2400 L

2000 L

1600 L

1200 L

800 L

400 L

図11. La Granja鉱床の鉱量拡大状況(Wilkinson & Paredes, 2012を元に作成)左:既知鉱量、右:Rio Tinto探鉱結果

図12. Encuentro鉱床の周辺鉱床と構造(Swaneck, 2012) 中央赤丸がEncuentro鉱床

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捕捉、鉱化システムの中心部を狙った第2孔がディスカバリー・ホールとなった。鉱床は、本地区の他の鉱床と同様、最大層厚120m

に達するポスト・ミネラルの礫層に覆われ、鉱体はドメイコ断層系の派生断層に強く規制されている。現時点の知見によれば、斑岩システムの広がりは延長方向1,500m×幅600mで、鉛直方向1,000mに亘り鉱化が発達する。鉱化は全般的に、安山岩質主体の火山岩砕屑岩層序に貫入する北東トレンド・南東落ちのデイサイト岩脈群に関連して生じている(図13)。斑岩岩脈の年代は中期始新世(41.2±0.6Ma; ジルコンのU/Pb年代)を示し、Encuentro鉱床の北12kmに位置するEsperanza銅-

金-モリブデン斑岩鉱床と類似する。

熱水性黒雲母、カリ長石及び磁鉄鉱を伴うカリウム変質が卓越し、部分的に緑泥石-セリサイト変質にオーバープリントされるほか、局所的な熱水角礫岩が石英-セリサイト変質を伴う。深部では、母岩は黒雲母

ホルンフェルス及びスカルンが発達する接触変成を被っている(図14)。初成銅鉱化はカリ変質帯の変質中心に調和的に発達し、様々な程度のカリ長石、黒雲母、燐灰石及び硬石膏を伴い、A脈及びB脈に対比される早期の石英脈中に黄銅鉱、斑銅鉱及び輝水鉛鉱を産する。鉱体上部は被覆礫層直下に位置し、初成硫化鉱の現地性酸化とフラクチャーを充填する局所的な異地性酸化銅から成る最大厚さ250mの酸化帯が発達する。酸化帯の上部では珪孔雀石が卓越し、少量の黒色含銅-マンガン鉱物様物質を伴う。酸化帯下には輝銅鉱、銅藍、赤銅鉱及び自然銅から成る酸化-還元混合鉱化帯がブランケット状に弱く発達する。2012年8月までに238,000mのRC及びコア試錐が実施され、鉱量1,033百万t@0.44%Cu、0.16ppm Au及び131ppm Mo(カットオフ0.15%Cu)を計上している(表3)。

図13. Encuentro鉱床の岩相区分断面図(Swaneck, 2012)

図14. Encuentro鉱床の変質分帯断面図(Swaneck, 2012)

表3. Encuentro鉱床の最新鉱量(2011年10月の計算モデル、Swaneck, 2012を元に作成)

カテゴリ 鉱量(t) Cu(%) CuS(%) Au(g/t) Mo(ppm) 銅量(t)

可溶性鉱(Cutoff: 0.15%Cu)

精測 47,830,979 0.51 0.35 0.2 106 242,659概測 158,184,106 0.38 0.22 0.11 106 596,997予測 25,646,540 0.28 0.13 0.09 59 71,832

小計 231,661,624 0.39 0.24 0.12 101 911,489

硫化鉱(Cutoff: 0.15%Cu)

精測 381,073,503 0.54 0 0.21 154 2,064,303概測 364,462,074 0.38 0 0.15 137 1,381,074予測 55,557,620 0.31 0 0.15 74 174,247

小計 801,093,197 0.45 0 0.17 140 3,619,624総計

(Cutoff: 0.15%CuT) 1,033(百万t) 0.44 0.16 131

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3-3. Discoveryセッション(表4)

【高硫化系浅熱水性鉱床:探査手法に関する最近の発展】高硫化系(HS)浅熱水性鉱床の上方広範囲に発達す

るリソキャップは識別が容易なため、鉱床発見の有力な手掛かりとなり得るが、リソキャップ自体は不毛でかつ鉱物学的、組織的及び地化学的な内部構造に乏しいため、以降の探鉱が困難となる場合がある。この問題を解決するために開発された探査ツールについて、Jeffrey Hedenquist博士をメンバーに含むグループから、研究代表者のジェームスクック大学Zhaoshan

Chang講師による発表がなされた。フィリピンのLepanto HS-Far Southeast(FSE)斑岩型

銅金鉱化システムにおいて、リソキャップ中の鉱物と母岩の組成パラメータがFSE斑岩からの距離に応じて次のようにシステマティックに変化することを見出した。・FSEに接近するにつれ、赤外分光法による明ばん石の1,480nm吸収位置が高い値にシフトする(図15)。この傾向は、明ばん石生成温度の上昇に伴いNa/

[Na+K]比が増大する性質に起因する。・高カルシック明ばん石は貫入中心への近接を示す(図16)。・明ばん石の鉛含有量は貫入中心に向かって減少する一方、ストロンチウム、ランタン、Sr/Pb比及びLa/

Pb比は顕著に増加する(図17)。・非鉱化(Cu<0.1wt%及びAu<0.1ppm)で、かつ明ばん石を含む岩石にのみ適用可能だが、全岩組成の鉛、水銀、銀及びAg/Au比は貫入中心に向かって減少し、La/Pb比及びSr/Pb比は増大する(図18)。

表4. Discoveryセッションの講演タイトル、演者と所属

タイトル 演者 所属チリ斑岩銅鉱床のライフタイム F. Barra チリ大Joaquin銀銅プロジェクトの地質-Santa Cruz, アルゼンチン C. Romo, A. Cruzat, D.J. Birak Coeur d’Alene Minesゴールドラッシュ鉱床:ネバダでの新大規模カーリン型金鉱床発見 A.L. Ly Barrick Gold

ペルー・Ollacheaオロジェニック金鉱床:発見と到達点 C. Chamberlain, D. McIver Minera IRLICP-MS・SWIRデータから見た熱水系の地化学的・鉱物学的足跡 S. Halley Mineral Mapping

高硫化系浅熱水性鉱床:探査手法に関する最近の進歩Z. ChangJ.W. Hedenquist, N.C. WhiteD.R. Cooke

ジェームス・クック大(豪)

タスマニア大ウラン-REE鉱床起源としてのフッ素に富む花崗岩中のせん断帯と探査への適用

M. McGloin, A.G. Tomkins, R. Weinberg モナッシュ大(豪)

WitwatersrandベーズンのCarbon Leader Reef:論争決着に向けた新データ

R.R. Large, L. Danyushevsky, S. Meffre, R. BurnettS. Bull, S. Gilbert

タスマニア大

AngloGold Ashantiタスマニア大

図15. Lepanto-FSEシステムにおける明ばん石の1,480nm赤外吸収(Chang et al., 2011)

図16. Lepanto-FSEシステムにおける明ばん石の カルシウム含有量(Chang et al., 2011)

(400)2012.11 金属資源レポート

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斑岩システムの探鉱に関する最近の話題─S

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37

以上のトレンドは基本的には火成岩への近接に伴う温度上昇に関連した現象であり、探査ツールとして広く適用可能である。温度中心を指すベクトルが必ずし

も鉱化中心を向いているとは限らないが、斑岩型鉱化が関係火成岩に近接して産し、高硫化型鉱化もまた同様の傾向を示すことから、鉱化ポテンシャルの高いエリアを抽出するうえで有用である。また、高硫化型鉱体は典型的に塊状の珪質岩に胚胎するが、すべての珪質岩が鉱化に関連するわけではなく、鉱化に関係する珪質岩を見極めることが重要である。Lepantoの珪質岩を対象にカソードルミネッセンスを用いた研究の結果、鉱化関連の塊状珪質岩とされていた岩石が、実際はより後期の石英によって空隙を充填されたvuggy石英であることが明らかになった(図19)。このことを利用して、鉱化関連の珪質岩を識別することができる。塊状珪質岩はおそらく物理探査により比較的容易に高比抵抗アノマリとして抽出され得ることから、適切なカソードルミネッセンス分析によるフォローアップを実施することで探鉱の成功確率を高めることができる。

3-4. Worldセッション(表5)

図17. Lepanto-FSEシステムにおける明ばん石の Sr/Pb比(Chang et al., 2011)

図18. Lepanto-FSEシステムにおける非鉱化岩全岩組成のSr/Pb比(Chang et al., 2011)

図19. 塊状珪質岩のカソードルミネッセンス画像(Chang et al., 2011)白色石英は空隙を充填 し成長した産状を示す

表5. Worldセッションの講演タイトル、演者と所属

タイトル 演者 所属

南西アラスカ・Pebble斑岩銅-金-モリブデン鉱床における物理探査研究:広域探査への適用

E.D. AndersonM.W. Hitzman, T. MoneckeP.A. Bedrosian, A.K. Shah, K.D. Kelley

USGS, コロラド鉱山大コロラド鉱山大

USGS

チベット・Gangdese帯における始新世から中新世にかけてのマグマ水の増加と斑岩銅±モリブデン±金鉱化作用との関連

R. Wang, J.P. RichardsZ. Hou, Z. YangS.A. DuFrane

アルバータ大(加)中国地質科学アカデミーアルバータ大(加)

セネガル-マリせん断帯:西アフリカ・ビリミアン(2.1Ga)の非典型的オロジェニック金鉱床の流体経路

J.S. Lambert-Smith, P.J. Treloar, D.M. Lawrence, A. RankinA. BoyceP. Harbidge

キングストン大(英)SUERCRandgold Recources

カラジャス鉱床区南部銅ベルト、IOCG鉱床を胚胎する始生界の地質セッティングと地化学的特徴

M.A. Delinardo da SilvaL.V. Soares MonteiroC.P.N. Moreto, G.H.C. Melo, R.P. Xavier, D.F.M. Sousa, R.C. Benedetti

カンピーナス大(伯)サンパウロ大

カンピーナス大(伯)

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【南西アラスカPebble斑岩銅-金-モリブデン鉱床の物理探査研究:広域探査への適用】1989年に南西アラスカで発見されたPebble斑岩銅-

金-モリブデン鉱床は世界最大の銅金鉱床の一つである(鉱量108億t, 36.5Mt Cu, 2.5Mt Mo, 3,400t Au)。鉱床は若い時代の火山岩堆積岩ユニットと氷河堆積物に広く被覆されており、周辺地域の探鉱には物理探査の適用が期待される。USGSとコロラド鉱山大学のグループから、同地域における、鉱床スケールから広域スケールに至る物理探査データの解釈について報告がなされた。地域地質スケールでは、高解像度空中磁気データを

用いて、ジュラ紀から第三紀に至る多様な火山岩類を識別可能である(図20)。ジュラ紀から白亜紀にかけての玄武岩及び斑レイ岩ユニット及び後期白亜紀の黒雲母輝岩は強い高磁気を、鉱化に関連した後期白亜紀の花崗閃緑岩バソリスとストックは中程度振幅・高磁気を示す。これらに対して始新世のモンゾニ岩ユニットは低磁気に関連する。Pebble地域において中生代深成岩と新生代深成岩がそのように識別されるのは、両火

成作用のテクトニック・セッティングの違いを反映したものと考えられ、酸化的で磁鉄鉱系列に属する前者が高磁気として、還元的でイルメナイト系列に属する後者が低磁気を示すものと考えられる。なお、磁鉄鉱に富むPebble鉱床の熱水システムそのものを示すデータは得られていない。鉱床スケールではCSAMTデータから、Pebble鉱体は、高比抵抗を示す上位の第三系被覆層と、より変質の弱い下位の火成岩に挟まれた低比抵抗帯として明瞭に識別される(図21)。広域スケールの空中磁気データは複雑な磁気パターンを示す(図22)。Pebble鉱床は高磁気異常クラスター内に位置し、Iliamna、Kijik及びNeacola斑岩銅鉱化帯も同様に高磁気を示す。それらはLake Clark広域断層に平行するコリドー沿いに北東トレンドで配列する。アラスカ型の超塩基性岩コンプレックスであるKemuk

岩体は高振幅・短~中波長異常に関連する。金鉱化を伴うShotgun貫入岩体は中振幅・短波長の高磁気に取り囲まれた中振幅、中波長の低磁気に関連し、同様の磁気パターンがBonanza Hills鉱徴地の含金貫入岩にも

図20. Pebble鉱床の周辺地質と空中磁気図(Anderson et al.,2012)

図21. Pebble鉱床のCSAMTデータ(Anderson et al.,2012)

図22. アラスカ南西部広域地質と空中磁気図(Anderson et al.,2012)

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39

認められる。広域スケールの空中磁気データを10kmの上方接続

(upward continuation)処理すると、約20~60kmの間隔に配列した北東トレンドの線状高磁気アノマリが識別される。これらは空間的にIliamna、Pebble、Kijik及びNeacolaの各斑岩銅鉱床に関連する(図23)。この北東トレンドの直交方向で取得した広域MTデータでは、地殻の中深度に大規模な低比抵抗帯が出現する。地域地質スケールの検討により、Pebble鉱床地区周辺の高磁気異常及び低比抵抗帯は鉱化関連の花崗閃緑岩バソリスに起因することが明らかとなっている(図24)。Lake Clark断層コリドーに沿った高磁気アノマリは、後期白亜紀の火成弧に形成された磁鉄鉱系列岩石から構成されたバソリスを反映したものと解釈される。アノマリの間隔と線状のトレンドはチリ北部の斑岩銅鉱

床群が示すパターン・規模と類似しており、南西アラスカにおける更なる後期白亜紀斑岩銅鉱床の発見を期待させる。

3-5. Latin Americaセッション(表6)

【コロンビア・パナマのメタロジェネシス】中米地域を中心に活動する地質コンサルタントの

Stewart Redwood氏から、コロンビア-パナマ地域の複雑な地史、テクトニック・イベントに対応させつつ、同地域の鉱化作用の変遷を辿る試みが紹介された(図25)。ジュラ紀から白亜紀のコロンビア中央山脈では、原

生界-古生界からなる大陸縁辺に沿って沈み込み弧が形成され、銅スカルンを伴う斑岩銅-モリブデン鉱床(Mocoa, 1.1Mt Cu)が生じた。中央山脈の北部では中熱水性脈型金鉱床がジュラ紀のSegoviaバソリス中(Segovia, 6.9Moz Au)、白亜紀のAntioquiaバソリス中

(Gramalote, 3.9Moz Au)に、関連する砂金鉱床(11Moz

Au)と共に形成された。ジュラ系San Lucas山地には浅熱水性金鉱床が生じている。後期白亜紀以降、カリブ海洋地殻及び島弧からなる

一連のテレーンがコロンビア西部山脈及びパナマの一部に付加し、この際生じたオフィオライトかんらん岩からニッケル・ラテライト鉱床が形成された(Cerro

Matoso)。Cañas Gordas海洋テレーンは塩基性火山活動起源の銅-金塊状硫化鉱(El Roble, Dovio, Anza, Viento

Frio)及び白亜系-漸新統の玄武岩・堆積岩中に海底噴気性マンガン鉱床(Vallesi, Nombre de Dios)を胚胎する。パナマ・テレーンは、漸新統-始新統のMandé-

図23. 10km上方接続処理した広域空中磁気図(Anderson et al.,2012)

図24. アラスカ南西部における広域MTデータ(Anderson et al.,2012)

表6. Latin Americaセッションの講演タイトル、演者と所属

タイトル 演者 所属コロンビア・パナマのメタロジェネシス S.D. Redwood 地質コンサルタントCalifornia-Vetas金鉱業区のマグマ史と鉱化作用及びそのメタロジェネティックな重要性(サンタンデール地塊、東部山脈、コロンビア)

L.C.M. FigueroaT. Bissig, A.L. Rodríguez Madrid, C.J.R. Hart

サンタンデール工科大(コロンビア)

ブリティッシュ・コロンビア大

Rio Falso断層の熱水進化、Quimsacocha高硫化系金-銀-銅鉱床区、Azuay州、エクアドル

P.J. MacDonald, T. Bissig, C.J.R. HartJ. Barreno, F. Viera, G.K MantillaJ. Rogers

ブリティッシュ・コロンビア大IAMGOLD EcuadorIAMGOLD

Pueblo Viejo浅熱水性鉱床のRe-Os年代、ドミニカ共和国

S.E. KeslerJ.D. Kirk, J. Ruiz

ミシガン大アリゾナ大

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(403)2012.11 金属資源レポート

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San Blasバソリスに関連して、始新世の斑岩銅-金鉱床、及び金-白金漂砂鉱床(Choco, 10Moz Au)を胚胎する。後期白亜紀から現在にかけて、カリブ海台後縁において中央アメリカ弧が発達してきた。漸新世から現世のパナマ中央山地では浅熱水性金鉱床(Santa Rosa,

0.8Moz; Molejon, 0.9Moz Au)が、パナマ西部では斑岩銅 鉱 床 が 漸 新 世(Cobre Panama, 7.9Gt; 23.4Mt Cu,

13.8Moz Au, 289Moz Ag, 394kt Mo)及び後期中新世(Cerro Colorado, 11.1Mt Cu; Chorcha 1.0Mt Cu, 0.45Moz

Au)に形成された。後期中新世の西パナマの浅熱水性金鉱床-深部相の斑岩銅鉱床を伴う-はココス海嶺衝突に伴う上昇テクトニクスに関連して形成された。15Ma以降、南アメリカの衝突に伴う沈み込みの停止のためマグマ活動は休止した。中央アメリカ弧が北西コロンビアに連続する部分で後期中新世のMiddle Cauca産金帯が形成され、斑岩型(La Colosa, 24.1Moz; Quinchia, 6.1Moz; La Mina,

1.0Moz; Titiribi, 8.3Moz Au 0.5Mt Cu)、中間硫化系浅熱水 性(Marmato, 13.0Moz+2Moz採 掘 済 ; El Zancudo,

2Moz採掘済 ; Buritica, 3.1Moz)、角礫型(Miraflores,

2.0Moz)の各鉱床に計60Moz以上の金を産する。このうちの2鉱床は世界最大規模の未開発鉱床にランクさ

れる。このほか、原生-中生界Santander地塊縁辺の東方500kmには、後期中新世のVetas-California高硫化系浅熱水性金 -銀 -銅鉱床区が孤立して発達する(Angostura, 11.0Moz; La Bodega, 3.5Moz)。

引用文献(SEG2012講演資料を除く)Chang, Z., Hedenquist, J.W., White, N.C., Cooke, D.R.,

Roach, M., Deyell, C.L., Garcia, J. Jr., Gemmell, J.B.,

McKnight, S., and Cuison, A.L., 2011, Exploration

tools for linked porphyry and epithermal deposits:

Example from the Mankayan intrusion-centered Cu-

Au district, Luzon, Philippines: Economic Geology, p.

1365-1398.French, C. D., and Schenk, C.J., compilers, 2004, Map

Showing Geology, Oil and Gas Fields, and Geologic

Provinces of the Caribbean Region: U.S. Geological

Survey Open-File Report 97-470-K, http://pubs.usgs.

gov/of/1997/ofr-97-470/OF97-470K/

Leal-Mejía, H., Melgarejo i Draper, J.C. and Shaw, R.P.,

2011, Phanerozoic gold metallogeny in the Colombian

Andes: SGA 2011 conference abstract, 3p.

(2012.10.22)

図25. パナマ-コロンビアの主な鉱床と火成活動(パナマ:French et al., 2004及びコロンビア:Leal-Mejía et al., 2011を元に作成)

(404)2012.11 金属資源レポート

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