メキシコ及び中米諸国の鉱業の現状

平成25年12月2日 メキシコ事務所

縄田 俊之

平成25年度第7回金属資源関連成果報告会

目 次

１．中米諸国の鉱業の現状

２．メキシコの鉱業の現状

1

１．中米諸国の鉱業の現状

2

中米諸国の定義

狭義では、グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ及びパナマの7か国

広義では、上記7か国に、キューバ、ジャマイカ、ドミニカ共和国等カリブ海諸国を含む

3

中米諸国における鉱業の特色

狭義の中米諸国とカリブ海諸国とに大きく2つに分けると

狭義の中米諸国

ロッキー山脈からアンデス山脈に続くコルディレラ山系に位置し、火山が連なる地域 過去の内戦や政情不安等によ

り、鉱業開発が遅れている地域が多数存在 植生が多様かつ豊富であるが

故、探鉱開発が困難 先住民問題や環境問題に直面す

るケースが多く散見する 降水量が豊富

カリブ海諸国

地質構造は、石灰岩に造山活動が影響 過去の内戦や政情不安等により、

鉱業開発が遅れている地域が存在 地域によって植生が多様かつ豊

富であるが故、探鉱開発が困難 先住民問題が比較的少ない 環境問題に直面するケース有り 地域によって降水量に多寡有り

4

中米諸国の鉱山・鉱業プロジェクト

注：メキシコは鉱山のみ

5

先住民組織や環境NGOによる鉱山開発への反対運動が頻発

関係法令自体とその執行において不透明さが存在 法律に基づかないロイヤルティの引上げ

鉱業法上、探鉱段階での環境影響評価は不要にも拘わらず、環境天然資源省が要求（同省とエネルギー鉱山省との解釈の相違）

カナダ企業を主体とした開発プロジェクトや、探鉱プロジェクトが進展中

グアテマラ鉱業の現状

２００８年 ２００９年 ２０１０年 ２０１１年 ２０１２年

金 (t) 7.5 8.6 9.2 11.9 6.4

銀 (t) 88.3 129.3 194.7 273.1 204.7

鉛 (千t) 2.0 － 0.9 6.8 3.3

ニッケル (千t) － － － － 2.4

グアテマラの金属鉱石生産量 出典：World Metal Statistics Yearbook 2013

6

中西部に亜鉛・鉛鉱床等が賦存

東部Olancho県にポテンシャルが高いと思われる斑岩銅鉱床が確認

本年1月に鉱業法改正案がホンジュラス議会で承認 新規鉱業許可付与に関するモラトリアムの終了

非金属鉱物資源は2.5％、金属鉱物資源は4.5％のロイヤルティを導入

ホンジュラス鉱業の現状

２００８年 ２００９年 ２０１０年 ２０１１年 ２０１２年

金 (t) 1.8 1.9 2.2 1.9 1.8

銀 (t) 58.9 57.7 58.2 48.4 50.6

亜鉛 (千t) 28.5 36.4 33.8 10.0 26.0

鉛 (千t) 12.5 14.5 17.0 4.9 12.4

ホンジュラスの金属鉱石生産量 出典：World Metal Statistics Yearbook 2013

7

ニカラグアの鉱業の現状

金がコーヒー等農産物と共に主要輸出産品

近年水産業等と共に鉱業も産業として拡大傾向にあり、カナダ、米国等外国投資が見られる

鉱業ロイヤルティは3％（必要経費控除後）

２００８年 ２００９年 ２０１０年 ２０１１年 ２０１２年

金 (t) 3.0 2.6 4.9 6.4 6.9

銀 (t) 3.4 4.5 7.0 8.0 9.9

ニカラグアの金属鉱石生産量 出典：World Metal Statistics Yearbook 2013

8

コスタリカ鉱業の現状

山脈に沿って鉱化作用が確認されており、特に南西部に斑岩銅鉱床が存在（ただし、国立公園内） 地球上における生物多様性の3％を有する同国の主要国立公園内に

て、金採掘・採集のために坑道を掘削や、使用した有機化合物を河川へ放流するなどの違法行為により、河川の汚染や山腹の植生破壊等が深刻な状況に陥っていると共に、同国立公園内又は付近の住民に対しても健康や生活への被害が発生

2011年11月に鉱業法改正案が成立、露天掘による鉱山開発の禁止、シアン及び水銀の使用禁止 本年10月、鉱業法改正前に採掘権を取得したInfinito Gold社の

Las Crucitas金プロジェクトの採掘権取消しに関し、同社による憲法裁判所への提訴を棄却

9

パナマ鉱業の現状

南米から北米にかけて連なる斑岩銅鉱床ベルトに位置し、世界でも有数の未開発大規模銅鉱床が存在

Petaquilla銅・金プロジェクトから分離し、2010年1月に商業生産を開始したMolejon金鉱山が生産量を増加

開発段階としては、Mina de Cobre Panama銅プロジェクト及びCerro Quema金プロジェクト

2012年4月に「鉱物資源法改正法」が成立、主な改正点は以下のとおり 外国政府又は公的機関が間接的に投資することが可能

地表税及びロイヤルティを約2倍に引き上げ

無許可での探鉱、採鉱等に対する罰則を大幅に引き上げ

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ドミニカ共和国鉱業の現状

近年EUのODAにより地質構造図がほぼ完成、カナダ企業が主体となり塊状硫化物鉱床及びラテライト・ニッケル鉱床を対象とした探鉱活動が活発

一方、本年10月にGlencore Xstrata社がFalcondoニッケル鉱山を一時閉鎖にしたり、Barrick Gold社がPueblo Viejo金・銀鉱山に関し政府主導の内容による契約改正を強いられる等、大手鉱業企業ですら苦戦

２００８年 ２００９年 ２０１０年 ２０１１年 ２０１２年

金 (t) 0.0 0.4 0.5 0.5 1.2

銀 (t) 3.7 19.0 18.8 18.6 12.6

銅 (千t) 2.4 11.5 9.5 11.7 11.5

ニッケル (千t) 18.8 － － 13.5 15.2

ドミニカ共和国の金属鉱石生産量 出典：World Metal Statistics Yearbook 2013

11

ジャマイカの鉱業の現状

2012年に同国初の「国家鉱業政策」を国会に提出 国家鉱業政策には、鉱物資源の高付加価値化、雇用創出、環境管理

等が盛り込まれる

より多くの外貨獲得を目的として鉱物資源の付加価値を高めるため、ボーキサイトではなくアルミナでの輸出を目指すが、高い電力料金が課題

斑岩銅鉱床も賦存するが、山岳部のため探鉱に至らず

島中央部に所在する旧ボーキサイト鉱山の廃さいダムにおける鉱害問題が顕在化する可能性有り

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キューバの鉱業の現状

ニッケルの埋蔵量（世界第5位）、コバルト（同第3位）

ニッケル、コバルト、鉄を生産（一部生産量は非公表）

ニッケル等はCubaniquel社等、その他の金属は、Geominera社等との合弁

銅、亜鉛等のプロジェクトも多数存在

外国投資を歓迎

→投資を希望する企業には詳細なデータ提供

２００８年 ２００９年 ２０１０年 ２０１１年 ２０１２年

ニッケル (千t) 67.3 65.0 65.4 66.0 65.7

キューバの金属鉱石生産量 出典：World Metal Statistics Yearbook 2013

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最近の鉱業トピックス －グアテマラ－

新鉱業法の審議

政府は2012年10月に、①閉山に伴う企業の法的義務、②貴金属及びベースメタルに対するロイヤルティ3％の付加、③鉱業事業が所在する自治体に対しロイヤルティの55％を配分するための基金の形成、④憲法を踏まえた特別法により40％までの権益率を保有できる公社の創設等を柱とした新鉱業法案を議会へ提出、現在も審議中

Escobal多金属プロジェクトが本格稼働開始

本年10月にTahoe Resources Inc.のEscobal多金属プロジェクトが銀精鉱の出荷を開始、現在同国で唯一生産を行っているGoldcorp社のMarlin金銀鉱山とともに同国の主要鉱山として期待

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最近の鉱業トピックス －ホンジュラス－

鉱業法の改正

現在、鉱業プロジェクトに関し、事業の委託又は官民パートナーシップによる事業の実施へと移行するための鉱業法改正案が、ホンジュラス議会で審議中

鉱業投資の行方

本年11月に総選挙が予定、本総選挙の行方次第で同国への鉱業投資が左右されるため、今後の選挙結果に鉱業関係者等の注目が集中

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最近の鉱業トピックス －ドミニカ共和国－

エネルギー鉱山省の創設

本年2月にエネルギー鉱山省を創設する法案が議会に提出、7月に法案承認、大統領による公布

12月末までに予算案の策定、承認とともに、大臣、副大臣等の閣僚人事を行い、2014年1月に正式発足する見通し

鉱業法の改正

2008年に抜本的な見直しを行うべく検討が行われたが、議会への提出とはならず、今日に至る

2014年1月以降エネルギー鉱山省にて検討の予定

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最近の鉱業トピックス －ジャマイカ－

レアアースのパイロットプロジェクト開始

本年2月に赤色泥からレアアースを抽出するパイロットプラントを建設するプロジェクトが開始

← 日本企業がプラント建設受注

プラント稼働後、数ヶ月で商業生産の可能性を評価

レアアース輸出により外資獲得を期待

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２．メキシコの鉱業の現状

18

メキシコの金属資源ポテンシャル (1) 世界3位のビスマス、４位の銅、亜鉛等多くの鉱物資源が賦存 ＜埋蔵量：Reserve＞

鉱 種 ﾒｷｼｺ(A) 世界 (B) (A)／(B) ランク

銅 (千t) 38,000 680,000 5.6 % 4

鉛 (千t) 5,600 89,000 6.3 % 5

亜鉛 (千t) 16,000 250,000 6.4 % 4

金 (t) 1,400 52,000 2.7 % 12

銀 (t) 37,000 540,000 6.9 % 6

モリブデン (千t) 130 11,000 1.2 % 9

ビスマス (千t) 10 320 3.1% 3

マンガン (千t) 5,000 630,000 0.8% 8

鉄鉱石 (百万t) 700 170,000 0.4% 15

出典：Mineral Commodity Summaries 2013

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メキシコの金属資源ポテンシャル (2) 世界1位の銀、2位のビスマス、5位の鉛とモリブデンを筆頭に主要生産国

鉱 種 ﾒｷｼｺ (A) 世界 (B) (A)/(B) ランク

銅鉱石 (千t) 525.5 17,085.0 3.0 % 9

銅地金 (千t) 447.9 20,452.8 2.2 % 11

鉛鉱石 (千t) 237.5 5,296.5 4.5 % 5

鉛地金 (千t) 244.1 10,512.1 2.3 % 9

亜鉛鉱石 (千t) 643.7 13,361.3 4.8 % 6

亜鉛地金 (千t) 323.6 12,583.1 2.6 % 8

金鉱石 (t) 95.3 2,592.1 3.7 % 9

銀鉱石 (t) 5,045.5 2,4650.9 20.5 % 1

モリブデン鉱石 (千t) 11.2 264.7 4.2 % 5

ビスマス鉱石 (t) 871.0 3,546.2 24.6% 2

マンガン鉱石 (千t) 486.0 48,057.0 1.0% 12

＜生産量（201２年）＞

出典：World Metal Statistics Yearbook 2013

20

メキシコの鉱業投資動向

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年

(見込)

732 1,168

1,923 2,156

3,656 2,858

3,316

5,612

8,043 8,145

出典：メキシコ鉱業会議所（CAMIMEX）、経済省

百万US$

メキシコ国内の鉱業投資額は近年急速に増加 2012年に80億US$を超える

21

メキシコの非鉄金属探鉱費の推移

メキシコ（億US$） 世界計(億US$）

出典：Metals Economic Groupデータより作成

4.4

6.0

7.9

3.9

6.3

9.8

11.9

71.3

99.9

126

73.2

106.8

163.1

205.3

0

50

100

150

200

250

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年

メキシコ

世界計

探鉱費約12億US$は、カナダ、豪州、米国に次ぐ規模 カナダ企業を中心に600件を超えるプロジェクトが展開

22

メキシコの鉱物資源分布

出典：Servicio Geologico Mexicano

23

メキシコ主要鉱山・進捗開発プロジェクト

24

出典：メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年

21.8

30.3

39.0 43.7

50.8

62.4

79.4

88.7 95.3

メキシコにおける主な金属生産量(1) -金生産量の推移 (t)-

25

出典：メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)

メキシコにおける主な金属生産量(2) -銀生産量の推移 (t)-

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

5,500

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年

2,569

2,894 2,970 3,135 3,236

3,554

4,410

4,778 5,046

26

出典：メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)

メキシコにおける主な金属生産量(3) -銅生産量の推移 (千t)-

0

100

200

300

400

500

600

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年

368.6 390.9

312.1 337.5

246.6 240.6 270.1

443.6

525.5

27

出典：メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)

メキシコにおける主な金属生産量(4) -鉛生産量の推移 (千t)-

100.0

120.0

140.0

160.0

180.0

200.0

220.0

240.0

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年

118.5

134.4 135.0 137.1 141.2 143.8

192.0

223.7

237.5

28

出典：メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)

メキシコにおける主な金属生産量(5) -亜鉛生産量の推移 (千t)-

350

400

450

500

550

600

650

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年

426.4

476.3 478.4

452 453.6

489.8

570.0

631.9 643.7

29

最近の鉱業トピックス －鉱業に関する税制改革(1)－

本年10月末、所得税法、付加価値税（IVA）等の改正

とともに、鉱業に関する税制を含む連邦税法の改正等が盛り込まれた税制改革案がメキシコ議会で可決

→ 鉱業については大幅増税

30

最近の鉱業トピックス －鉱業に関する税制改革(2)－

＜背景＞

税制全般に関して

メキシコにおける国の歳入の約3割が石油収入

税収がOECD諸国等と比べても相当程度低い

国家財政の健全化を図りつつ、社会保障の充実等を実行するためには、歳入の確保が必要不可欠

鉱業に関して

鉱業活動によって得られた利益を当該鉱業活動地域の住民に対して還元

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最近の鉱業トピックス －鉱業に関する税制改革(3)－

＜改革概要①＞

①鉱業特別税（Derecho Especial sobre Minería）の創設

・鉱物を採掘又は抽出する鉱業企業又は個人に対し、当該鉱業企業又は個人におけるEBITDAに対する7.5％を課税

②貴金属鉱業特別税(Derecho Extraordinario a la Minería)の創設

・貴金属（金、銀及びプラチナ）を採掘又は抽出する鉱業企業又は個人に対し、売上に対する0.5％を課税（①鉱業特別税の他に、更に課税されることとなる）

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最近の鉱業トピックス －鉱業に関する税制改革(4)－

＜改革概要②＞

③鉱業コンセッション税（料金）の改正

・鉱業活動がない場合、2年以上9年以下は50％、10年以上は100％の鉱業コンセッション税（料金）の割り増し等

④鉱物輸出時における原産地証明書等の徹底

・鉱物輸出時の原産地証明書等の発行、携帯、提示等の徹底

⑤税額控除対象の改正

・従前の税額控除の対象が、殆ど税額控除の対象外

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