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財政学14地方財政(2)地方税 2015122日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授) 1

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財政学Ⅱ 第14回 地方財政(2)地方税 2015年1月22日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授)

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地方自治体の歳入構造(1)

地方自治体の財源は、大きく一般財源と特定財源に分けられる(スライド3)。 一般財源:使途が特定されておらず、地方自治体が自由に使うことのできる財源。

地方税、地方交付税など。

特定財源:使途が特定されている財源。

国庫支出金、地方債など。

ただし、使途が特定されない地方債もある。

歳入構造の特徴 地方税が占める割合は3割台。

「3割自治」と揶揄される所以。

地方税以外では、地方交付税、国庫支出金、地方債が主な財源となっている。

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地方自治体の歳入構造(2) 3 地方財政の歳入決算額(2013年度) (単位:百万円,%)

金額 割合 金額 割合 金額 割合地方税 16,809,190 32.6 18,565,095 32.6 35,374,285 35.0地方譲与税 2,136,827 4.1 422,015 0.7 2,558,842 2.5地方特例交付金 50,209 0.1 75,313 0.1 125,522 0.1地方交付税 8,848,887 17.2 8,746,566 15.3 17,595,454 17.4市町村たばこ税都道府県交付金 1,535 0.0 - - - -利子割交付金 - - 59,084 0.1 - -配当割交付金 - - 76,186 0.1 - -株式等譲渡所得割交付金 - - 120,911 0.2 - -地方消費税交付金 - - 1,254,712 2.2 - -ゴルフ場利用税交付金 - - 35,020 0.1 - -特別地方消費税交付金 - - 1 0.0 - -自動車取得税交付金 - - 137,363 0.2 - -軽油引取税交付金 - - 128,004 0.2 - -小 計 (一般財源) 27,846,648 54.0 29,620,270 51.9 55,654,103 55.0分担金、負担金 283,819 0.6 677,000 1.2 608,727 0.6使用料、手数料 632,383 1.2 1,383,314 2.4 2,015,698 2.0国庫支出金 7,342,456 14.2 9,104,565 16.0 16,447,021 16.3交通安全対策特別交付金 37,479 0.1 27,285 0.0 64,764 0.1都道府県支出金 - - 3,514,972 6.2 - -財産収入 241,845 0.5 373,331 0.7 615,176 0.6寄附金 46,215 0.1 69,389 0.1 115,521 0.1繰入金 1,975,620 3.8 1,555,733 2.7 3,531,353 3.5繰越金 1,434,039 2.8 1,756,383 3.1 3,190,422 3.2諸収入 4,951,097 9.6 2,484,206 4.4 6,572,202 6.5地方債 6,781,018 13.1 5,525,970 9.7 12,284,850 12.2特別区財政調整交付金 - - 936,101 1.6 - -歳入合計 51,572,618 100.0 57,028,520 100.0 101,099,835 100.0出所:総務省『平成27年版地方財政白書』

区分都道府県 市町村 純計額

地方自治体の歳入構造(3) 4

地方財政の歳入決算額の推移 (単位:百万円,%)

金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額 割合地方税 39,558,526 42.9 35,182,954 35.8 34,316,330 35.2 34,171,416 34.1 34,460,760 34.5 35,374,285 35.0地方譲与税 678,826 0.7 1,296,551 1.3 2,069,189 2.1 2,169,911 2.2 2,271,480 2.3 2,558,842 2.5地方特例交付金 539,108 0.6 462,011 0.5 383,165 0.4 364,020 0.4 127,467 0.1 125,522 0.1地方交付税 15,406,082 16.7 15,820,237 16.1 17,193,551 17.6 18,752,268 18.7 18,289,826 18.3 17,595,454 17.4小計(一般財源) 56,182,542 60.9 52,761,753 53.6 53,962,235 55.3 55,457,615 55.4 55,149,533 55.2 55,654,103 55.0分担金、負担金 525,091 0.6 551,112 0.6 532,709 0.5 577,386 0.6 597,815 0.6 608,727 0.6使用料、手数料 2,338,657 2.5 2,306,841 2.3 2,035,765 2.1 2,008,751 2.0 2,015,466 2.0 2,015,698 2.0国庫支出金 11,689,000 12.7 16,839,119 17.1 14,305,191 14.7 16,030,396 16.0 15,527,112 15.6 16,511,785 16.3繰入金 2,000,841 2.2 2,772,873 2.8 3,328,352 3.4 3,420,824 3.4 3,672,500 3.7 3,531,353 3.5繰越金 1,926,621 2.1 2,398,888 2.4 2,067,379 2.1 2,497,658 2.5 2,809,649 2.8 3,190,422 3.2地方債 9,922,067 10.8 12,396,036 12.6 12,969,520 13.3 11,760,270 11.8 12,337,932 12.4 12,284,850 12.2その他 7,628,641 8.3 8,339,073 8.5 8,310,350 8.5 8,316,746 8.3 7,732,875 7.7 7,302,897 7.2歳入合計 92,213,459 100.0 98,365,695 100.0 97,511,501 100.0 100,069,646 100.0 99,842,882 100.0 101,099,835 100.0出所:総務省『平成27年版地方財政白書』

区分2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度

地方税の課税形態

地方税は国税との関係で、独立税、付加税、共通税に分類可能。 独立税:国税とは異なる租税を、地方税として課税(分離方式)。

付加税:国税と同じ租税を、地方税として重複して課税(重複方式)。

共通税:同一の租税収入を、中央政府と地方政府で分け合う(共同方式)。

共同税:同一の租税を、中央政府と地方政府で共同で課税。

この場合、中央政府と地方政府の共同意思決定機関が必要となる。

分賦税:地方政府が課税し、税収の一部あるいは全部を中央政府に上納。

分与税:中央政府が課税し、税収の一部あるいは全部を地方政府に分配。

地方交付税と地方譲与税がこれに該当。

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地方税の原則(1) 地方税固有の原則は「応益性」「安定性」「普遍性」「負担分任」「自主性」からなる。

応益性:住民は、地方政府が提供する公共サービスからの受益に応じて地方税を負担する。 中央政府は所得再分配機能や経済安定化機能を担っているため、国税は応能原則に基づくことが望ましい。これに対して地方政府は、基本的にその地域の住民を対象とした公共サービスを提供する資源配分機能を担っているため、地方税は応益原則に基づくことが望ましい。

安定性:税収が景気変動に左右されることが少なく、安定していることが望ましい。 地方政府が提供する公共サービスは住民の日常生活に密着したものが多く、景気変動によってそれらの提供が安定的に行われなくなることは望ましくないため。

普遍性:どの地域においても、税源(租税客体)が普遍的に存在することが望ましい。 中央政府であれば、税源の偏在は問題にならない。

法人関係税は偏在性が高く、普遍性が低いのに対して、地方消費税は偏在性が低く、普遍性が高い(スライド6)。

負担分任:住民が地方自治に参加するための「会費」として地方税を負担する。 住民全体がなるべく平等に負担する。

究極の形態は人頭税。しかし、こうした税の負担が重くなり過ぎると、納税者の反乱を招く可能性も。

自主性:地方税の課税標準と税率の決定については、地方政府に自主性が認められるべきである。

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地方税の原則(2) 7

出所:総務省『平成27年版地方財政白書』

地方税の体系(1) 地方税は大きく道府県税と市町村税、さらに普通税と目的税に分類される(スライド9)。

道府県税とは、都道府県税の決算額から、東京都が徴収した市町村税相当額を除いた額。

東京都は特別区において、本来は市町村である地方税を徴収しているため。

普通税は一般経費に充てられる租税で、目的税は特定の費用に充てられる租税。

地方税法に定められている地方税は法定税と呼ばれ、それ以外に地方自治体が条例によって新設する地方税は法定外税と呼ばれる。

法定税と法定外税それぞれに、普通税と目的税がある。

地方税の税目別収入状況(スライド10) 道府県税、市町村税ともに、住民税(道府県民税、市町村民税)が最も大きな割合を占める。

住民税のうち、個人に課される部分は個人住民税、法人に課される部分は法人住民税と呼ばれる(スライド11)。

道府県税では道府県民税に続いて、事業税、地方消費税が大きな割合を占める。

事業税の個人分は個人事業税、法人分は法人事業税と呼ばれる。

市町村税では固定資産税が市町村民税とほぼ同じ割合を占め、両税で税収の8割以上を占める。

日本の地方税は事実上、国税の付加税が中心。 住民税は所得税および法人税の、地方消費税は消費税の、事業税は法人税の、それぞれ事実上の付加税。

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地方税の体系(2) 9

出所:総務省ホームページ

地方税の体系(3) 10 地方税の税目別収入額(2013年度) (単位:百万円,%)

道府県民税 5,943,248 40.2 市町村民税 9,171,988 44.5 個人均等割 79,920 0.5  個人均等割 181,813 0.9 所得割 4,561,214 30.9  所得割 6,832,817 33.2 法人均等割 148,176 1.0  法人均等割 416,669 2.0 法人税割 692,118 4.7  法人税割 1,740,690 8.4 利子割 114,943 0.8 固定資産税 8,652,577 42.0 配当割 130,083 0.9  土地 3,373,994 16.4 株式等譲渡所得割 216,794 1.5  家屋 3,648,443 17.7事業税 2,855,220 19.3  償却資産 1,539,964 7.5 (個人分) 181,344 1.2  交付金 90,176 0.4 (法人分) 2,673,876 18.1 軽自動車税 189,193 0.9地方消費税 2,649,639 17.9 市町村たばこ税 983,229 4.8不動産取得税 356,954 2.4 鉱産税 1,947 0.0道府県たばこ税 172,537 1.2 特別土地保有税 1,067 0.0ゴルフ場利用税 49,316 0.3 法定外普通税 1,918 0.0自動車取得税 193,426 1.3 旧法による税 0 0.0軽油引取税 943,273 6.4 入湯税 22,062 0.1自動車税 1,574,379 10.7 事業所税 348,399 1.7鉱区税 346 0.0 都市計画税 1,226,719 6.0法定外普通税 24,170 0.2 水利地益税 29 0.0道府県固定資産税 1,689 0.0 共同施設税 - -旧法による税 2 0.0 法定外目的税 1,305 0.0狩猟税 1,579 0.0 計 20,600,433 100.0法定外目的税 8,074 0.1

計 14,773,853 100.0出所:総務省自治税務局『平成27年度 地方税に関する参考計数資料』

道府県税 市町村税

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住民税の区分道府県民税 市町村民税

 個人均等割  個人均等割 所得割  所得割 利子割 配当割 株式等譲渡所得割

 法人均等割  法人均等割 法人税割  法人税割

個人分

個人住民税

法人分

法人住民税

地方税の体系(4)

地方税の自主性 中央政府は、国税の税源の利用可能性が地方税によって浸食されないために、課税否認と課税制限を通じて、地方税に関する地方政府の自主性を制限。 課税否認:地方政府に課税標準の自己決定権を認めないこと。

課税制限:地方政府の税率の自己決定権を制限すること。

日本では課税否認を二段階で実施。 第一段階:地方自治体が地方税として課税するべき租税を、国が地方税法に制限列挙する(法定税)。

第二段階:地方自治体が法定外税を創設する際に、国と協議して同意を必要とすることとする。

日本では法定税に対する課税制限を、標準税率、制限税率、一定税率に基づいて実施。 標準税率:通常依るべき税率。

標準税率とは異なる税率の設定も可能。標準税率を超えて課税することは超過課税と呼ばれる。

制限税率:それを超えては課税できない税率。

超過課税の上限。

一定税率:それ以外では課税できない税率。

最も厳しい課税制限。

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