小動物獣医療の現状と今後の対応 - maff.go.jp<小動物診療獣医師数及び小動物診療施設数の推移> ③現在の獣医学生数及び就職状況にかんがみれば、
産業動物分野における 管理獣医師の役割産業動物分野における...
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産業動物分野における管理獣医師の役割
農場管理獣医師協会
事務局 大橋邦啓
農場管理獣医師協会ⒸFarm Management Veterinarians Association (FMVA)
資料1
1
畜産人の究極の使命
全ての国民に
• 安全な
• 畜産物を
• 十分量供給
※食の安心・安全と生産性の向上の両立
2
現場の臨床獣医師の活動
• 法令遵守
• 伝染病の侵入防止・まん延防止
• 農場HACCP構築・認証取得と衛生管理指導
• 家畜の健康管理(予防・治療)
農場に合わせたプログラム
• 飼育管理の指導(従事者教育)
• フードチェーンの中での一部門としての認識3
農家数の減少と飼育規模の拡大
• 獣医師による往診距離の延長
• 農場の求める要求の変化・高度化
• 農場従業員のいる時間内での診療
• 新規参入農場への対応
• 衛生管理の啓発
• 群に対応した衛生管理と個体治療
• 従事者教育
4
現状の認識
• 産業動物分野での獣医師不足
• 所得水準と労働時間
• 安い診療料金(NOSAI制度は農家の損失を減らす保険)
• 往診時間 タクシーの場合 実車(お客さんが乗車)1㎞300円1日100km実車の場合30000円
産業動物獣医師は1日100㎞運転しながら仕事をする
獣医師一人の持つ農場数に限界がある
※勤務時間内に運転する時間=獣医師の仕事外の勤務
一般診療のみでは限界がある→一般診療を減らしてそれ以外の収入を5
獣医師の所得を向上させる方法(保険診療に依存しない獣医療)
• 一般診療メインからの脱却(生産獣医療・予防獣医療)
• 専門性をもって農場をサポート
↓• 繁殖管理・乳房炎指導・衛生指導・飼料設計etc,
(緊急性はなく予定を立てた行動→休日・雇用の確保)
※NOSAI以外では25年前から徐々に増加
• 一般診療獣医師は必ず必要
6
繁殖管理(別途契約料金発生)
(開業獣医師の場合)
• 一般的に最低3万円/月から (月当たり1~2回の訪問)
• 多頭飼育では1頭700円/月100頭規模で月7万円+繁殖障害治療費
(飼料設計を絡めた契約が多いが飼料の分析は別途料金発生)
↓繁殖成績向上により生産性に寄与
7
乳房炎のコントロール(別途契約料金発生)
• (開業獣医師の場合)
• バルク乳の検査等による牛群の状況診断
• 乳房炎牛の早期摘発とそれに対する対応
↓• 乳房炎のコントロール(別途契約料金の発生)
+個体治療(保険点数内での対応または実費)
↓• 廃棄乳減少により生産性に寄与
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農場の衛生管理指導(別途料金発生)
• (開業獣医師の場合)
• 農場HACCPの推進
• 月2万円~の農場負担
• 毎月1~2回のHACCP構築に向けた農場訪問
• 総合的な生産性向上の見える化
• 農場データの検証
9
農場を管理する獣医師とは
• 農場との契約で
家畜の健康管理
• 獣医学的知識・技術で生産性に寄与
(繁殖管理、乳房炎のコントロール、飼料設計サーベイランス情報、各種検査、ワクチンプログラム、一般診療、指示書の発行etc・・)
• 遵法精神と指導(飼養衛生管理基準の遵守)10
高まる農場管理獣医師への要求
• 一獣医師が顧客農場の全ての部門に対応できなくなった
• 多頭飼育の場合、獣医師一人が常に常駐(酪農・肥育・繁殖)
常に農場を診る獣医師(管理獣医師)
(すべての中核となり、地元行政や指導機関と連携が取れ、
一般診療を通じて農場の状況を熟知する獣医師)
定期的に訪問する獣医師
(繁殖検診・乳房炎のコントロール・飼料設計・衛生指導・その他)
11
獣医師の連携の必要性
• 臨床獣医師は移動時間が長い(予定の立たない業務)
(診療に付随した指導・助言)
• 産業動物獣医師不在地域の出現(県境を越えた連携)
• 専門性に特化した獣医師数の増大(予定を立てた業務)
(繁殖管理や高度な衛生指導)
• 一般的な血液検査は農場近くの検査機関との連携
• 感染症や病理は家畜保健衛生所等検査指導機関と連携
12
獣医師の連携(大橋の試み)
• 肥育農場・一貫経営の繁殖検診以外の部門 大橋ほか
(ワクチネーション・一般診療・農場全体の把握)
農場に関するすべてに対応
• 繁殖農場・一貫経営の繁殖検診 専門性を持った獣医
• 衛生指導・農場HACCP導入 専門性を持った獣医師
(定年再雇用)
• 検査等は外部委託13
運営
• 肥育農場との管理獣医師契約
• 法令遵守・農場の衛生管理・家畜の健康管理
• 電子カルテの導入
(情報の一元管理による確実な記録と検証)
正社員・・・労使契約
非正規社員・・完全フレックスタイム制(出勤日・時間)
(定年再雇用獣医師・農場に合わせ働きたいときに働く)
外部委託・・・・雇い上げ+歩合 14
大規模化した農場への一貫した指導体制の要件
1. 各獣医師間で緊密な連携(連絡・報告・相談)
2. 管理獣医師が全ての中核(指導機関・行政等と農場の橋渡し役)
3. 各獣医師の報酬は自らが行う一般診療、ワクチン接種、授精、移植などとともに統合して管理獣医師が支払い
4. 農場へは管理獣医師が請求
5. 指示書発行等については中核となる管理獣医師によって行う
これらが機能しないと指導体制がバラバラになる 15
農場管理獣医師による農場のサポート体制
⇔
⇔
⇔
管理獣医師農場全体の
把握一般診療
A獣医師
B獣医師
農場HACCPの導入衛生指導(専門性に特化)
繁殖管理 (専門性に特化)家畜衛生(家畜保健衛生所)公衆衛生(食肉検査所)税理士弁護士行政(市町村・環境事務所)飼料会社動薬関係市場関係畜産団体消費者
C獣医師
D動物病院血液
生化学検査等
E獣医師グループ
広域での農場対応
受精卵の採卵(専門性に特化)
報告
報告
報告
報告
農場との管理契約32農場12700頭
対応
一例
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産業動物獣医療の今後をどうするかはNOSAI制度に関わる獣医師の今後である
• 開業・・・・・・・NOSAI制度外での活動が大きい
• 新規分野への進出・大規模農場への対応
• ※非加入農家にとって「獣医療は受益者負担」の考えが浸透
• NOSAI・・・・・NOSAI制度内での活動
• 活動の幅が狭い
• 待遇改善と魅力ある職場により雇用の確保
• 制度の改正で独立採算制に移行
• ※加入農家にとって「獣医療は保険加入の対価」である 17
NOSAI制度の今まで
• NOSAI獣医師は滅私奉公(すべては農家さんのために)
• 農家の意識・・・掛け金のみを予算化
• 治療費は保険加入の対価
• 保険(現物給付)で損害をカバー
• 保険点数残がある限り治療は目一杯やってほしい
• 有償無償の農家サービスを当然視
• 予防・事故防止意識の希薄化
• 結果・・・・・・獣医師が来てくれない。頼んでもすぐ来ない
治療点数がなくなると治療費が高いと感じる 18
過去の例
• NOSAI加入農家がNOSAI非加入農家になると
• 診療・往診回数は70%前後減少
• 診療費は50%前後を確保(手術等利益率の高いものが残る)
• 繁殖管理・予防衛生等の別途契約で生産性に寄与
• 結果・獣医師・・利益率の高いものが残り効率化が図れる
• 農家・・・・損失回避の経費の予算化により生産性が向上
(従来は損失を保険の補償で回避できたが、
それは損失の一部でしかなかった) 19
NOSAI非加入農場における獣医師の収入(内訳)
20年前 現在 10年後予想
治療費(30%)
治療費(40%)
治療費
(80%)
予防衛生その他に含まれるもの管理獣医師契約従事者教育コンサル業務データ解析
予防衛生に含まれるものワクチン接種除角・去勢など
生産獣医療授精・移植・去勢・除角など
農場ごとの多彩なメニュー
予防衛生予防衛生
その他 その他
農家数半減飼育規模2.5倍
生産獣医療
生産獣医療
生産獣医療
農場の要求に応じて変化
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NOSAI家畜診療所が独立採算制へ移行
• (売り上げ-仕入れ)÷総実働日数=40000円/一人あたり
• これが最低ラインである
• 正社員一人当たり(売り上げ-仕入れ)=100万円/月• を確保しないと経営できない
• 加入農家の意識改革
• 攻めの畜産へ
• B点のメニューを細分化
• 治療費の削減と生産性向上へ21
共済(事故の補償)に加入しない農家の言い分
• うちはそんなに事故がない=掛け金が高い
事故の多い農家は加入する
• 予防にたくさん経費を使っている=治療が少ない
事故の少ない農家は非加入
• 手続きが煩雑・・・・治療費1割農家負担で加入農家減少予想
NOSAI加入頭数が減少しているが、全体の資源頭数は減少していない 抜本的な見直しの時期
22
総合的な農場バックアップ体制の構築
• 家畜診療所内でのスペシャリストの育成
• (衛生指導・繁殖管理・乳房炎対策・飼料設計・など)
• 加入農場の一般診療も含めたバックアップ体制
• 農場の要求に応じて別途契約
• 契約メニューの細分化
• ↓ (個々の獣医師が診療のついでに行っていた繁殖検診などを
• 独立させ、より専門性を持たせた指導体制の構築)
• 保険診療以外での収入源の確保と農場生産性の向上
•23
期待される獣医療提供体制
NOSAI家畜診療所も主体となり提供す
る必要がある獣医療
1.家畜防疫指導(家畜伝染病対策)
9.産業動物臨床獣医師育成・指導
2.家畜衛生指導(一般疾病対策)
5.生産獣医療(生産性・収益性の向上対策)
8.農場HACCP及びJGAP認証のための指導
6.食の安全、安定供給のための指導
3.家畜診療・動物看護(診断・治療・看護)
4.損害防止活動(疾病予防対策)
7.食品衛生・薬剤耐性防止のための指示
専門獣医師によるスキル提供農場管理獣医師
農場経営者
行政関係機関関係団体
及び消費者
産業動物臨床獣医師(NOSAI家畜診療所)が主として従事している獣医療(家畜共済事業内)
NOSAI家畜診
療所がサービスとして実施している獣医療等
農場管理獣医師は、農場の必要なスキル・情報等を管理し、双方向(行政等及び
農場)に対し適切な指示を出す存在として位置付けられる。
24
産業動物臨床獣医師(NOSAI家畜診療所等)の新しい収入源の考え方
1.農場管理獣医師は、家畜防疫/家畜衛生面などを含む多角的視点で常日頃の農場と家畜の状況を把握し、適切な指示を農場に提示することが求められている。(農場管理獣医師の必要性については、平成27/28年度産業動物臨床・家畜共済委員会報告参照)
産業動物臨床獣医師(NOSAI家畜診療所等)は、農場へ往診頻度並びに農場の把握状況などから信頼性が高く、農場管理獣医師としての活動に適した存在である。
2.産業動物臨床獣医師(NOSAI家畜診療所等)は、求められた技術・情報に対し適切に提供・指導を行う。
技術・情報等の提供に際しては、適切な対価との交換となる。
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具体的な新しい収入源として・・・
4.損害防止活動(疾病予防対策)
5.生産獣医療(生産性・収益性の向上対策)
6.食の安全、安定供給のための指導
8.農場HACCP及びJGAP認証のための指導
9.産業動物臨床獣医師育成・指導
(例1)子牛感染症(呼吸器病、消化器病)予防のための哺乳管理指導、ワクチネーションプログラム(例2)乳房炎発生防止のための搾乳衛生・搾乳機器管理指導、乾乳牛管理対策の指導(例3)牛白血病蔓延防止対策・清浄化指導 ・・・・ など
(例1)乳牛の繁殖管理・栄養管理(飼料給与プログラム)・乳質管理等の指導(例2)受精卵移植等による優良家畜生産技術の提供 ・・・・など
(例1)農場HACCP認証システムの導入指導(HACCPシステム指導を含む)(例2)JGAP認証システム導入指導 ・・・・など
(例1)参加型臨床実習受け入れの正当な経費の受入(大学との契約の締結)・・・・など 26
飼料設計
一部有償
多くはサービス
農場管理契約費
繁殖管理費
衛生指導
・損害防止活動・生産獣医療・食品衛生・安全・安定供給
・獣医師育成(例)衛生指導
繁殖管理ワクチネーションプログラム策定飼料設計その他
NOSAI家畜診療所の業務と収入
診療(診断、治療、看護)
家畜共済の診療収入として
現在の業務 現在の収入
衛生指導
繁殖管理
ワクチネーション
飼料設計
その他
有償
適切な収入
27
方向性を現実に移行できるか
• 目的
1)無償のサービスを有償にし獣医師の所得を向上させる
2)畜産農家の事故率の低減
3)農家経営の安定
4)NOSAI加入率の向上
• 有料メニュー(別途料金)の発生にはかなりの抵抗が予想される
そこで・・・・・新たにお金をもらわない方法の模索28
管理獣医費
繁殖管理費
衛生指導
共済点数での治療費真に必要な治療走行距離の削減
共済点数での治療費
有償無償の農家サービスを全て内包
保険加入の対価で点数内ならいくらでも診療してもらえる
+無償のサービス衛生指導繁殖検診ワクチネーションプログラム策定飼料設計その他
現行
B点数
B点数内訳
→事故外診療を含む
(去勢・除角・採卵・移植・授精・オブシンクワクチン接種の多様化 etc)
→
→家畜診療所及び指定獣医師
または指定外獣医師
→家畜診療所及び指定獣医師
または指定外獣医師
→家畜診療所及び有資格者獣医師
(農場HACCP・GAP指導員)
→家畜診療所及び指定獣医師
または指定外獣医師
私が考える加入農家のB点数の行方メニューの細分化と攻めの経営への転換
掛け金を下げることが必要点数超過分は実費
NOSAI家畜診療所
指導内容等すべてを把握
NOSAI
受託
日報・月報報告書
支払い
細分化
ご提案
全ては農家のため 時代に即した獣医療の在り方 29
農場管理獣医師の責務
生産性の向上と食の安心・安全の追求
家畜の環境衛生管理・家畜の健康飼育
家畜の快適性に配慮した飼育
動物用医薬品の適正使用
確実な記録と検証
行政・指導機関との連携
フードチェーンの中での連携
※全ての農場に管理獣医師を ‼NOSAI こそは管理獣医師の要件を満たしている 30