世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野...

50
世界の獣医学教育の現状と課題 1、獣医学体系と分野 2、獣医関連分野の変遷 2.1:ライフサイエンス分野 2:2:公共獣医事分野 2.3:臨床獣医分野 3、獣医学教育の国際認証機関等の活動 3.1OIE(国際政府機関) 3.2EAEVE(欧州) 3.3AVMA(米国) 4、日本学術会議の提言 5、新しい獣医学教育の試み 2017106日、日本プレスセンタービル9階、農政ジャーナリストの会 千葉科学大学危機管理学部教授 吉川泰弘 1

Transcript of 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野...

Page 1: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

世界の獣医学教育の現状と課題

1、獣医学体系と分野2、獣医関連分野の変遷

2.1:ライフサイエンス分野2:2:公共獣医事分野2.3:臨床獣医分野

3、獣医学教育の国際認証機関等の活動3.1:OIE(国際政府機関)3.2:EAEVE(欧州)3.3:AVMA(米国)4、日本学術会議の提言5、新しい獣医学教育の試み

2017年10月6日、日本プレスセンタービル9階、農政ジャーナリストの会

千葉科学大学危機管理学部教授 吉川泰弘

1

Page 2: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

1、獣医学教育の体系と分野

2

Page 3: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医学教育の体系

動物の形態・機能

解剖・生理・遺伝・生化学(正常)

病理・生体防御・免疫(異常)

診断予防・治療

臨床(内科、外科、行動)薬理

有効性・安全性実験動物・毒性学病原体:微生物・寄生虫

動物個体

群れ(個体群)

疫学・動物衛生・家畜感染症・家禽疾病・魚病・野生動物

動物:倫理、福祉、法規 ヒト

公衆衛生食品衛生環境衛生人獣共通感染症

3

Page 4: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医教育分野・ライフサイエンス

ライフサイエンス分野・獣医学の特徴である動物個体の特性を生かした基礎生命科学研究領域。・特にニーズの高いヒトの創薬研究等においては、トランスレーショナル・リサーチ(遺伝子や細胞を用いた基礎研究の成果を、動物個体を用いて検証し、臨床研究に発展させる研究、基礎研究と臨床研究との間に実験動物など高等哺乳動物を用いる研究)を取り入れることにより、効率的な医薬品開発が期待されている。

・ヒトを含めた比較動物科学に基づく、ワクチン・診断薬・疾病予防・治療薬などの開発に寄与する研究分野である。

動物からヒトへ(トランスレーショナル・リサーチ)

4

Page 5: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医教育分野・公共獣医事

公共獣医事分野・国際社会のグローバル化の進展により、国境を越える人や物資の交流が盛んになり、家畜越境感染症・人獣共通感染症の増加に伴う発生防御、蔓延防止対策の策定等、危機管理が求められる。

・途上国の人口増加に対応する食料安定供給、畜水産品の品質保障、食の安全

確保、環境保全等が、この分野の喫緊の課題である。

調和のとれた国際基準の策定・グローバル対応

グローバルな対応のできる獣医師 輸出入品の品質保証・安全管理

5

Page 6: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医教育分野・獣医臨床分野

医獣連携獣医療分野・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの生活習慣病、加齢性疾患や慢性感染症などがヒト医療と伴侶動物医療で共通した新しい問題となりつつある。

・One Medicineといわれるように、両者の医学の予防・診断・治療などのツールやゴールは同一である。ヒトと共通の生活環境で過ごし、同様の疾病構造をもつ自然発症伴侶動物を用いて、医学部等と連携し、医薬品や新規医療技術開

発の臨床評価研究を進める。

医療は一つ:One Medicine

6

Page 7: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

2、獣医関連分野の変遷国際・国内

7

Page 8: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

1.1:ライフサイエンス研究の変遷1953年フリッツ・アルベルト・リップマン、ハンス・クレブス:解糖系、TCA回路(鳥類、哺乳類)1954年エンダース、ウェーラ、ロビンス:組織培養、ポリオ(サル、マウス)1955年ヒューゴ・テオレル:酸化酵素(馬)1956年A・クルナン、ディキソン・リチャーズ、ヴェルナ・フォルスマン:循環器、カテーテル1957年ダニエル・ボベット:クラーレ筋弛緩効果、神経伝達阻害剤(犬・兎)1958年J・ビードル、エドワード・タータム、ジョシュア・レダーバーグ:1遺伝子1酵素1959年セベロ・オチョア、アーサー・コーンバーグ:核酸合成酵素発見1960年マクファーレン・バーネット、ピーター・メダワー:免疫寛容(鶏、マウス)1961年ゲオルグ・フォン・ベケシ:内耳蝸牛構造(モルモット)1962年 ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンス:DNA二重螺旋1963年 ジョン・エクレス、ホジキン、アンドリュー・ハクスリー:(神経細胞・猫、蛙、イカ)1964年 コンラート・ブロッホ、フェオドル・リュネン:脂肪酸代謝(ラット)1965年 フランソワ・ジャコブ、アンドレ・ルウォフ、ジャック・モノー:オペロン、遺伝子発現調節1966年ペイトン・ラウス、チャールズ・ハギンズ:肉腫ウイルス(腫瘍ウイルス・兎、ラット、鶏)1967年 ラグナー・グラニト、ハルダン・ハートライン、ジョージ・ワルド:視覚・鶏、兎、蟹、魚)1968年 ロバート・ホリー、ハー・コラナ、マーシャル・ニーレンバーグ:コドン解読・ラット)1969年 マックス・デルブリュック、アルフレッド・ハーシー、サルバドール・ルリア:ファージ1970年 B・カッツ、ウルフ・オイラー、ジュリアス・アクセルロッド:神経伝達物質(猫、ラット)1971年 エール・サザランド:cAMP、セカンドメッセンジャー(哺乳類肝臓)1972年 エーデルマン、ロドニー・ポーター:抗体構造(兎、モルモット)1973年 ローレンツ、カール・フリッシュ、ティンバーゲン:動物行動学(蜂、鳥、魚)1974年 アルベルト・クラウデ、クリスチャン・デューブ、パラーデ:細胞小器官(鶏)1975年 ドゥルベッコ、ハワード・テミン、デビッド・ボルティモア:逆転写酵素(猿、鶏、鼠)

8

Page 9: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

1976年バルチ・ブランバーグ、ダニエル・ガジュセック:伝達性海綿状脳症(チンパンジー)1977年ギレミン、アンドリュー・シャリー、ロザリン・ヤロー:ペプチドホルモン(羊、豚)1978年ダニエル・ネイサンズ、ハミルトン・スミス、 ヴェルナー・アルバー:制限酵素

1979年 ゴッドフライ・ハウンスフィールド、アラン・コーマック:CT撮影法(豚、牛)1980年バルフ・ベナセラフ、スネル、ジャン・ドーセ:MHC、組織適合抗原(マウス)1981年スペリー、デビッド・フーベル、トルステン・ウィーセル:大脳半球、脳地図(猫、サル)1982年ベルイストレーム,サムエルソン、ジョン・ヴェイン:プロスタグランディン(兎、齧歯類)1983年バーバラ・マクリントック:トランスポゾン(可動遺伝子)1984年ニールス・イェルネ、ゲオルゲス・ケーラー、ケサー・ミルスタイン:

免疫ネットワーク、イディオタイプ、MoAb(マウス、兎)1985年マイケル・ブラウン、ゴールドスタイン:コレステロール代謝(マウス、ラット、兎)1986年リータ・モンタルチーニ、スタンリー・コーエン:細胞(神経)成長因子(マウス、鶏)1987年利根川進:抗体産生細胞(B細胞)遺伝子再編(マウス)1988年J・ブラック、ガートルード・エリオン、J・ヒッチングス:新規薬物療法(猿、犬、兎)1989年マイケル・ビショップ、ハロルド・ヴァーマス:プロトオンコジーン(前癌遺伝子・鶏)1990年ヨセフ・マレー、エドワード・ドナル・トーマス:臓器移植、細胞移植(犬)1991年 エルヴィン・ネーアー、ベルト・ザクマン:イオンチャンネル(カエル)1992年 エドモンド・フィッシャー、エドヴィン・クレープス:蛋白キナーゼ(ラット、兎)1993年 リチャード・ロバーツ、フィリップ・シャープ:RNAスプライシング(ラット、マウス)1994年 アルフレッド・ギルマン、マーティン・ロッドベル:G蛋白質の発見(兎、牛、ラット)1995年エドワード・ルイス、エリック・ヴィシャウス、フォルハルト:ショウジョウバエ発生1996年 P・ドハーティー、ツィンカーナーゲル:細胞性免疫(MHC I,II拘束・マウス)

1997年 スタンリー・B・プルシナー:プリオン説(羊、マウス、ハムスター)1998年 R・ファーチゴット、ルイ・イグナロ、フェリド・ムラド:NOの血管生理作用(兎)

9

Page 10: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

1999年ギュンター・ブローベル:輸送と定位のための蛋白マーカー機構(マウス、ラット)2000年カールソン、グリーンガード、エリック・カンデル:シナプス(アメフラシ、マウス)

2001年 ハートウェル、ティモシー・ハント、ポール・ナース:細胞周期(ウニ、カエル)2002年 シドニー・ブレナー、ロバート・ホロビッツ、ジョン・サルストン:アポトーシス(線虫)2003年 ポール・ラウターバー、ピーター・マンスフィールド:MRI開発(蛙、兎、ラット、犬)2004年 リチャード・アクセル、リンダ・バック:嗅覚受容体の解析(ラット、ショウジョウバエ)2005年 バリー・マーシャル、ロビン・ウォレン:ヘリコバクターピロリ菌と胃癌(豚)2006年 アンドリュー・ファイアー、クレイグ・メロー:iRNAによる遺伝子発現調節(線虫)2007年 マリオ・カペッキ、オリヴァー・スミティーズ、マーティン・エヴァンズ:マウスES細胞2008年H・ハウゼン、フランソワーズ・バレ、モンタニエ:HIV,パピローマ(齧歯類)2009年 ブラックバーン、キャロル・グライダー、ジャック・ショスタク:テロメア

(テトラヒメナ、蛙、マウス)2010年 ロバート・G・エドワーズ:体外受精(兎、マウス、ラット)2011年 ブルース・ボイトラー,ジュール・ホフマン、ラルフ・スタインマン:

樹状突起細胞、トール様受容体(昆虫、マウス)2012年 ジョン・ガードン、山中伸弥:iPS細胞(蛙、マウス)2013年 シェクマン、ジェームス・ロスマン、トーマス・スードフ:小胞輸送システム2014年 オキーフ、マイブリット・エドバルド・モーセル:脳内空間認知(ラット)2015年 ウィリアム・キャンベル、大村智、屠呦呦:線虫、原虫(マラリア)治療薬(線虫、犬)2016年大隅良典、オートファジー(酵母)

・ライフサイエンス研究は、生化学から分子生物学、遺伝子工学、ゲノム科学、ポストゲノムへと急速に進んだ

・ノーベル生理学・医学賞のほとんどは動物実験に基づく

10

Page 11: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

1.2:公共獣医事分野の変遷

・感染症の統御・撲滅は国際的利益と同時に、世代間(次世代)の利益・各国は相互依存しており、一国のミスは世界の危機につながる!

家畜感染症の統御

劇的な世界の人口増加 (x1.33)2025年、予想では、総人口は80億人主として、アジア、アフリカ、南米における人口増加

人口は増加する

飼養効率の良い家畜への依存(牛=1, 豚=1.6~1,9 , 鶏=3.2 ~3,4), 約1割増動物福祉、飼育環境改善による生産性向上、約1割増感染症統御:約2~3割増

どうやって食肉を増産するか?

家畜生産革命が必要?

2008年、210億頭の家畜が飼育され60億人の人口を養う2020年、途上国では動物性蛋白の需要は50%増加 (x1.5)2010年は3億トン、2040年は5億トンの消費(推定)

11

Page 12: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

OIEの国際家畜感染症リスト(A,B)

OIEリストB疾病(74種類):国内の社会経済、公衆衛生に重要な伝染病で、国際的な動物・畜産物の貿易に重要なもの

家畜全般:11、牛:15、羊・山羊:11、馬:15、豚:6、家禽:13、兎:3・炭疽、オーエスキー病、エキノコックス症、心水病、レプトスピラ症、Q熱、ウシバエ幼虫症、ヨーネ病、狂犬病、トリヒナ症、アナプラズマ症、バベシア症、ブルセラ症、牛条虫症、ウシキャンピロバクター症、牛海綿状脳症、ウシ結核、デルマトフィルス症、地方病性牛白血病、出血性敗血症、牛伝染性鼻気管支炎、悪性カタル熱、ピロプラズマ病、トリコモナス病、トリパノソーマ病、山羊関節炎・脳脊髄炎、伝染性無乳症、山羊伝染性胸膜肺炎、流行性羊流産、マエディ・ビスナ、ナイロビ羊熱、羊肺線腫症、サルモネラ症、スクレイピー、馬伝染性子宮炎、馬コウ疫、仮性皮疽、西部・東部馬脳炎、馬伝染性貧血、馬インフルエンザ、馬鼻肺炎、馬ウイルス性動脈炎、鼻疽、馬疥癬、馬痘、日本脳炎、ベネズエラ馬脳炎、豚委縮性鼻炎、豚エンテロウイルス性脳脊髄炎、豚包虫症、豚ブルセラ病、豚繁殖呼吸器障害症候群、伝染性胃腸炎、クラミジア病、伝染性気管支炎、伝染性喉頭気管炎、鶏マイコプラズマ病、鶏結核病、アヒルウイルス性腸炎、アヒル肝炎、家禽コレラ、鶏痘、鶏チフス、伝染性ファブリキウス嚢病、マレック病、ひな白痢、兎粘液腫症、兎ウイルス性出血病、野兎病 (蜜蜂:腐蛆病)

OIEリストA疾病(15種類):非常に深刻で、急速に広がり、国境に関係なく伝播し、社会経済・公衆衛生に深刻な影響を与える伝染病であり、家畜、畜産品の国際貿易(食料の安定供給)にとって脅威となる感染症

・水泡性口炎、口蹄疫、ブルータング病 牛疫 リフトバレー熱、牛肺疫、ランピースキン病、小反芻獣疫、羊痘・山羊痘、豚水疱病、アフリカ豚コレラ、豚コレラ、アフリカ馬疫、高病原性鳥インフルエンザ、ニューカッスル病

12

Page 13: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

口蹄疫の型と分布Asia1 & O

Asia1 & A

2010 (ミヤンマー)中国、香港・韓国、日本 O型

13

Page 14: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

高病原性鳥インフルエンザの近況

H5N1の流行が中東で拡大することを懸念 (FAO, 2016, 09. 26)。イラク、レバノンで発生、周辺国の政情不安等で流行の拡大の危険性あり。・H5N1 threat to Middle East

直近の世界食糧農業機関(FAO)の警告では、ロシアでの水禽のH5N8の流行が、カスピ海、黒海、西ヨーロッパに拡大する危険性を指摘(2016, 09.26)・Russian waterfowl finding prompts FAO warning about H5N8 spread

http://www.iatp.org/files/dale-blog-inside-1.png

高病原性鳥インフルエンザの流行は、2015年のマップ(OIE)から明らかなように、アジア、欧州、アフリカ、アメリカ、オーストラリアと、すべての大陸で発生。

14

Page 15: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

畜産・養鶏と水産の現状と需要

・2011年、食事は進化のマイルストーンに到達・史上初めて世界の養殖魚の生産が牛肉生産を

突破。2012年、6300万トンの牛肉の生産に対し、養殖魚は6600万トンとなった。

・2013年は捕獲魚よりも養殖魚を多く食べる最初の年かもしれない。

Lester brown, Earth Policy2012,June,12

15

Page 16: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

人獣共通感染症のアウトブレイク2000年代

以降

SARS:コウモリ、ブタ, MERS: ラクダ、コウモリ、ジカ熱 ; サル類

パンデミックインフルエンザ:H1N1、ブタ

1990年代 ヘンドラウイルス感染症:コウモリ、ウマ

二パウイルス感染症:コウモリ、ブタ

リッサウイルス感染症:コウモリ

ハンタウイルス肺症候群 (HPS):野生げっ歯類

高病原体鳥インフルエンザ (H5N1, H7N7):野鳥

変異型CJD:ウシ

1980年代 エイズ:サル類

ライム病:野生げっ歯類他

E型肝炎:ブタ、シカ、イノシシ

腸管出血性大腸菌症:ウシ

1970年代 エボラ出血熱:コウモリ、サル類

カンピロバクター症:ニワトリ(食中毒)

クリプトスポリジウム症:野生動物(水系感染)

1960年代 ラッサ熱:マストミス(野生げっ歯類)

マールブルグ病:コウモリ、サル類

16

Page 17: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

新興感染症と人獣共通感染症

/ 2001年、英国のテイラーらが感染症の論文を網羅的に解析、結果を公表した。

・病原体の総数は1,415、人獣共通感染症868(61%)、新興感染症175(12%)であった。

・感染症としては細菌感染症が多い、人獣共通感染症は寄生虫感染が多い。新興感染症はウイルス感染症が増加している。

・WHOは「新しく認識された感染症で、局地的にあるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症」をemerging disease (新興感染症)と定義した(1997年)。

/ この定義により過去20年間に30種類以上の新興感染症が出現したと報告

・新興・再興感染症(emerging re-emerging diseases)

「最近になって新たにヒトや動物の集団に出現した感染症、また以前から

存在していたものが急激に発生が増加して再出現した感染症」

17

Page 18: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

1.3:医獣連携獣医分野の変遷

It's estimated that 78 million dogs and 85.8 million cats are owned in the United States. Approximately 44% of all households in the United States have a dog, and 35% have a cat. (Source: American Pet Products Association 2015-2016 (APPA))米国では7,800万頭の犬、8,580万頭のネコが飼育されている。米国の家庭では約44%がイヌを、35%がネコを飼育している。米国の人口が3.2億人、伴侶動物の飼育数が1.6億匹

In France there are more than 31 million fish, over 11 million cats and over 7 million dogs.In France almost one in two households have a companion animal.

In the United Kingdom there are over 40 million fish, 8.5 million cats and another 8.5 million dogs. In the United Kingdom almost 1 in 2 households (46%) own a pet.

In Germany there are more than 8 million cats, over 5 million dogs and over 5 million small mammals. In Germany more than one third of households have a pet.

イヌ ネコ 魚・小型哺乳類 家庭動物飼育率

フランス >700万 >1100万 >3100万 50%の家庭が伴侶動物飼育

イギリス 850万 850万 >4000万 46%の家庭がペット所有

ドイツ >500万 > 800万 >500万の小型哺乳類

>33%の家庭がペット所有

Sources: FACCO (France), PFMA (United Kingdom) and IVH (Germany)

18

Page 19: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

伴侶動物の長寿命化

・イヌの平均寿命は、この30年くらいで確実に延びてきた。

・1980年のデータでは平均3.7歳、2008年には14.3歳で延び率は著しい。天寿を全うして亡くなる犬たちも少なくない。

寿命が延びた理由としては、①フィラリアの駆虫薬や混合ワクチンの普及②診断技術や治療方法の向上③ドッグフードの普及による栄養状態の安定④室内飼育の普及としつけの向上など

・猫の平均寿命は2000年で7.9歳、2015年では平均15歳・ペットに対する医療技術が大幅に発展した。・ペットも内視鏡検査やMRI検査を受けて病気を発見する時代となり、癌の放射線治療も行われる。

・病気の早期発見が容易になったことや、効果的な治療薬の開発により長生きできるようになった。

19

Page 20: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

国内:獣医学分野の変遷

①第二次大戦後、獣医師へのニーズは食糧増産のための畜産振興の支援からスタート。家畜衛生、主要な家畜感染症の統御、産業動物の個別診療技術の高度化などが求められた(新しい産業動物獣医学の確立)。

②その後、分子生物学・生命工学、ゲノムサイエンス等の著しい進展を受け、丸ごとの動物(動物個体)を扱う基礎獣医学へのニーズが急激に増加(基礎獣医学の拡大・発展)。

③高度経済成長期を経て少子化・核家族化が進行し、3世代の家族構成が崩壊した。家族の一員としての伴侶動物へのニーズが増大し、高度先端獣医療の提供が求められることになった(高度獣医療技術の推進)。

ワクチン開発疾病統御

分子生物学発生工学疾患モデル

高度獣医療

20

Page 21: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

国内:獣医学分野の変遷

④飽食時代を迎え、健康ブーム等を反映した食の安全性志向が強まり、食品安全のための適正なリスク評価の実行が求められた。国際貿易の拡大・食糧自給率の減少は、消費者の食へのリスク意識を一層高めることとなった。

⑤国際的な人獣共通感染症のアウトブレイクや国際家畜感染症の国内侵入は、感染症統御・危機管理に対応する新しい獣医師へのニーズを生んでいる(感染症・リスク分析・公衆衛生分野の充実の必要性)。

半世紀の間に獣医師に求められる社会的なニーズは、変化し、増加・拡大の一途をたどってきた!

BSE(2001) HPAI(2004, 11, 17) FMD(2000, 10)

21

Page 22: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

3.獣医学教育の国際認証機関等の活動OIE, EAEVE, AVMA

22

Page 23: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医と関連する国際機関

WTO

WHO

23

Page 24: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

食料・感染症にかかわる国際機関

WHO(世界保健機関)ヒトの感染症の統御

FAO(世界食糧農業機関)食糧の安定供給食の安全保障

WTO(世界貿易機関)関税、貿易障壁貿易促進

国際連合(国連)

OIE,WOAH(世界動物保健機関)動物疾病の統御畜産品安全基準

動物由来感染症調査

政府間機関

24

Page 25: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

3.1:OIE(国際政府機関)のコア・カリキュラム

OIEによる獣医教育改革の経緯

①2009年10月、世界92ヵ国の獣医系大学の学部長や各国の行政獣医官を一堂に集めた会議、「より安全な世界を形成するために進化する獣医学教育(Evolving Veterinary Education for Safer World)」をパリで開催(3日間)。

世界の獣医学教育の質を高め、動物感染症の制御、動物由来食品の安全、野生動物保全および動物福祉などOIEの関連分野を中心に国際的に通用する獣医学教育モデル・カリキュラムを作成することを表明。

②2011年5月、リヨンで「獣医学教育に関する国際会議」(Second Global Conference on Veterinary Education)を開催、各国の獣医系大学における獣医師養成の教育内容の質保証の重要性とその評価活動の必要性について言及。

③2013年12月、ブラジルで「第3回国際獣医学教育会議」開催。国際獣医学教育標準の可能性と役割について討議。2015年12月、加盟国の獣医学教育機関(Veterinary Education Establishment: VEE)のリストを公表。

④2016年6月、バンコクで開催された「第4回国際獣医学教育会議」では、各地域の獣医学教育機関における教育の現状とOIEが推奨する獣医学教育のコア・カリキュラム等の遂行状況や教育改善の手法が紹介され、加盟国は自国の獣医組織の質を高めるため、関連機関が連携してOIE標準の教育を遂行するよう勧告。

25

Page 26: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

OIEの獣医教育戦略

・OIEの事務局長は、「より安全な世界を形成するために進化する獣医学教育」を構築する上で基礎となる獣医師の教育(基礎・専門教育、卒後教育、社会人教育)の設定が重要である。

・これからの新しい教育で育った人材が、公共獣医事(Veterinary Service)を担う者として、「政策の監視、疫学調査、情報ネットワーク構築、官民のつなぎ役」などを果たすことが求められているとした。

Bernard Vallat

26

Page 27: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

OIEの獣医教育改善への提言

OIEの獣医学教育へのスタンス・OIEの指令は「全世界における動物衛生と動物福祉の向上」であり、OIEが勧告した獣医学教育の初期・生涯教育計画は、基本的任務を最小限達成できるよう、必要に応じ改善しなければならない。・「モデルコアカリキュラム」は獣医師に必須とされ、世界的に認知される適格性を得るための基本的な技術と知識を包括する。OIE勧告の実行に必要なコア教育とは別に、各地域・国はさらに対処すべき特別の必須事項および要件を抱えている(多様性は認める)

質の保証の基準と必要性 (国際的な調和)・獣医師の登録、認定、モニタリング手順の不一致、様々な地域・国における法定獣医組織に適用可能な法令の差、いくつかの国において公式の法定獣医組織 or 相当する機関が存在しないアンバランス(地域差、格差)。

・増加した地域統合と、その結果生じる獣医専門家の国境を超える移動(流動性)

・獣医事組織の評価のためのOIE手法(PVS手法)の一要素として、獣医師の初期・生涯教育の評価のための品質基準の確立に役立つ既存の教育評価手順・方法も適用する(多様性は残す)

27

Page 28: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

OIEのモデル・コア・カリキュラム

獣医当局などの役割・OIE基準と3R原則に従った適切な管理と獣医師の監督を条件に研究、試験、教育で生きている動物の継続的活用を支持する。(動物実験の是認)

・獣医法定組織は、高品質の教育計画(認定された教育認証組織によって認証された計画、or OIE勧告のモデル・コア・カリキュラムを満たす)を修了した獣医師のみを採用することで、認証された獣医師による国の獣医事組織の品質を向上させるよう奨励すること。(公務員獣医師)

モデル・コア・カリキュラムの内容と運営① 動物衛生、獣医疫学、公衆衛生(人獣共通感染症、食品の安全性、食の安全

保障)、生産、経済と貿易、社会的便益を提供する伴侶動物・競技・娯楽用動物獣医療、動物福祉や生物多様性保護等の社会的価値に関する分野の獣医学の初期教育・生涯教育。

② 獣医学士が科学の進歩、世界情勢と緊急的要請を理解できるようにするため関連する基礎科学分野の教育を維持・発展させる。公衆衛生、食料生産、生物多様性あるいは環境衛生に影響を及ぼす野生動物と水生動物の疾病、疾病制御方法、動物分類学に関する理解を教育に組込みこむ。

③ 動物薬および動物用ワクチンの適正使用に関する獣医師教育。

28

Page 29: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

④ モデルコアカリキュラムの中にコミュニケーション、専門分野を超えた協力ならびに協同作業訓練を組込み、リスク解析を含む技術的問題の複雑さを獣医師が素人用語で情報伝達できるようにする。

⑤ 獣医学教育機関は、必要に応じて、初期教育および生涯教育における遠隔教育のための新しい情報技術の活用を推進し実行する。

⑥ 中核的獣医師の十分な数が地方で働くために教育と援助を受けられるようにすること(地域偏在の防止)。

⑦ 先進国の獣医学教育機関は、発展途上国の教育機関を支援することの重要性を認識すること。また、関連する組織や援助資金供与者は、OIE指針に従ったそれらの計画に対して十分な資金援助を行わなければならない。

⑧ 経験を積んだ臨床家と接触する初期獣医学教育と訓練、畜主との関係を含む獣医師の日常活動の訓練のため業務管理を通した新たな学士のための規定を作成する(総合参加型臨床実習)。

OIEの役割・OIE、世界獣医師連盟、その他の国・地域・国際的な獣医団体は、獣医活動の社会全体における重要性について一般大衆の認識がどれだけ改善したかを調査し、「世界の公益(Global Public Good)」として獣医学の初期・生涯教育にもっと資金援助する必要性を政府・国際的援助資金供与者に納得させること。

29

Page 30: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

3.2:EAEVEの獣医学教育評価1988年、EU域内の獣医系大学は協調してヨーロッパの獣医学教育の質的向上と発展を目指すヨーロッパ獣医系大学協会(European Association of Establishments for Veterinary Education: EAEVE)が設立された。

・ヨーロッパにおけるEAEVEの役割は、欧州連合(EU)域内の獣医系大学における教育プログラムを評価して卒業生の獣医師としての技能を保証し、その大学の教育改善を促進させることにある。

・EAEVEによる評価方式は、① 認証レベルにあたる「Approved(是認)」② 最高評価レベルに相当する「Accredited(認証)」からなり(今後「Accredited」の一段階評価に改定の予定)

・2013年までに97の獣医系大学(EU域外も含む)がEAEVEによる評価を受けている。・EAEVEによる評価認証の目的は、EUの獣医師の技能を高め、EU諸国の畜産物に関するリスクを最小限に抑えることにある。

・EAEVE認証は、EU域内で自由に移動できるのは人やものだけではなく、このような評価組織の認証を受けた大学教育による資格もまた自由に移動できる。

・EAEVE は政治的な権限をもつ評価機構ではない。・評価を受けた獣医科大学に対して特定の獣医学教育の資格認証を与えるものではない。・各獣医大学における教育資格は国の権限で行うことを前提としている。・評価の結果は法的強制力をもたず、卒業した獣医師の公益業務を妨げるものではない。・ EAEVE 認証評価は、大学が自らの意思により任意で行うものである。

30

Page 31: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

EAEVEの教育評価内容

EU 加盟国における獣医学教育のミニマムリクワイアメント①最少 5 年のカリキュラム②基礎獣医学、臨床獣医学、公衆衛生、食品衛生、動物愛護教育の明確化③すべての家畜種等(牛、馬、豚、家禽、犬、猫)に対する臨床教育の実施④獣医卒業生が卒業時にもつべき技術と到達レベルの明確化全分野において新卒獣医師が備えるべき専門的資質能力(First Day Skills、EAEVE)(Day-One Competences, OIE)の修得を明示する教育内容

カリキュラムのチェックリスト概要 :全カリキュラムの決定根拠。教育年限 5 年の EU 指令への適合。・授与できる学位の種類。獣医師になる前に必要な条件。・臨床実習の充実度(夏季休暇中の研修や大人数の見学実習は含まない)。・カリキュラムのバランスと範囲、実習と理論の割合、実習と講義の割合、実習数。臨床実習数。選択科目。学外実習の実施状況。

基礎科目:化学、動植物生物学、物理学、生物統計、基礎科目は後半の科目に関連。・解剖・病理学で使用する死体数。大動物を処理する施設。学生の安全性確保。解剖学実習と病理学実習への適正な学生参加。 (自分の手を使った実習)・生理学、薬理学、毒性学、微生物学の実習数と内容。グループは大人数でない。

31

Page 32: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

動物生産:動物繁殖の実習ができる教育農場。家畜や馬を扱える導入教育。十分な教育(17 時間)。実習と理論教育とのバランス。動物栄養学などの農業関連科目。予防獣医学と統合。法令順守を伴う獣医学の教育(動物輸送証明等)。動物福祉学。食の安全教育。

臨床科目等:緊急獣医療が可能(学生の参加)。・移動できる診療車と学生参加。学外実習における保険。十分かつ適正な時間割り当て。理論教育と実習の統合。動物種のバランス。学生が参加できる臨床実習。・施設、環境、組織、診療取扱頭数。解剖検体数。・臨床教員数、サポーティングスタッフ数、分娩、第四胃変移、外傷性網膜剥離、乳熱、ケトージス等を学ぶ機会の有無。・全学生が 1 人で犬もしくは猫の子宮摘出が可能。・馬の内科・外科の教育。馬の診療取扱頭数。馬の緊急診療(24 時間対応)。疝痛治療。ほとんどの卒業学生が馬の去勢可能。・食品衛生学と公衆衛生学実習(屠畜場、調理した植物等)。食品衛生学は動物の生産、病理学、薬理学、毒性学と関連。薬物残留と休薬期間との関連。実習は学内、学外。ミルク、チーズ、魚、肉、家禽などの検査学習。全学生は屠畜検査実習を経験。屠畜検査実習は豚、牛、家禽。これらの科目(実習+講義) が全体に占める割合(>12%)・選択科目、その他科目のリスト、 コース編成

その他のチェック項目。教育方法、試験、施設と設備、臨床施設と病院組織(24h診療、ICU)、動物と動物組織の教育利用(教育牧場、病理解剖症例数、小動物と大動物の

比率)、図書室及び教育資源、入学(アドミッションポリシー)、教員スタッフとサポーティングスタッフ 、卒後教育の持続、大学院とレジデント教育、研究(国際協力研究)

32

Page 33: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

3.3:AVMAの獣医学教育評価

経緯・1892年、米国の全州にまたがる獣医師会組織の創設が求められ、米国獣医師会(American Veterinary Medical Association: AVMA)が設立。

AVMA設立の目的の1つは、各州で不統一であった獣医師資格試験に関して明確な統一基準を確立し、各州の獣医学校に示すこと。

・1921年、各獣医系大学が備えるべき教員組織、教育カリキュラムおよび教育施設・設備など、今後目指すべき詳細な教育基準リストを公開。

・1946年にAVMA内に獣医学教育審議会(Council on Education:COE)が設置された。

・1950年、獣医師国家試験委員会(National Board of Veterinary Medical Examiners)が設置され、米国のすべての州およびカナダにおける獣医師資格試験(North America Veterinary Licensing Examination)に関する統一基準が作成された。

・AVMA COEは、米国教育省の国家諮問委員会(National Advisory Committee for Institutional Quality and Integrity of the U.S. Department of Education)と協調して米国・カナダの獣医学教育基準を定め、教育カリキュラムや試験評価基準の検討、各獣医系大学の獣医学教育機関としての資格に関する認証評価を行っている。

・COEによる認証 (Accreditation) を受けた大学は認証大学(Fully Accredited University)と呼ばれ、卒業生の獣医師資格は両国において有効。

33

Page 34: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

AVMA・COEの教育評価内容

基準項目1:大学教育組織(Organization)基準項目2:財務(Finances)基準項目3:施設・設備(Physical Facilities and Equipment)基準項目4:臨床資源(Clinical Resources)基準項目5:図書館・情報資源(Library and Information Resources)基準項目6:学生基準(Students Standard)基準項目7:アドミッション(入学)基準(Admission Standard)基準項目8:学部基準(Faculty Standard)基準項目9: カリキュラム基準(Curriculum Standard)基準項目10:研究プログラム基準(Research Program Standard)基準項目11:アウトカム(成果)評価(Outcome Assessment)

認証の方策と手順

AVMA・COEによる、教育評価は以下の11項目に関して行われる。

評価を受ける大学は、各基準項目に対して以下の 3 点をまとめる①基準項目に記載された基準となる必要条件に対する供述書②必要条件に関する大学の自己点検で必要とした書類(データ)③それぞれの基準に対応した供述書

34

Page 35: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

評価書類の記述例

基準項目11:アウトカム(成果・結果)評価(Outcome Assessment)

①アウトカム評価の基準項目に記載された基準となる必要条件に対する供述

最終的な成果は、提出された大学の使命が果たされたかどうかで判定される。その評価結果は大学のプログラム改善に用いられる。

②必要条件に関する大学の自己点検で必要とした書類

学生の教育成果の記述:例えば、資格試験の点数、学生の退学率、学生の就職率、卒業生・同窓会員・獣医師の雇用者・教職員の満足度の判定、研究成果の記述。学生が直接的あるいは間接的に学んだ事項や臨床的な資質能力などの記述。

③それぞれの基準に対応した供述書

遵守(Compliance):大学が集め分析した成果データを提出。各基準に対する順守の評価は、大学から提出される自己点検報告書による教育プログラムの改善に利用していることを証明できるか否かで判断する。

35

Page 36: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

AVMA.COEの評価手順

1)それぞれの基準に対する順守の評価大学は自己点検報告書を提出する。訪問調査を行う前にこれを審査する。・COE は訪問団を任命し、訪問前にチームをトレーニングする。訪問団は訪問調査を行い、報告書の草案をつくる。

・訪問調査団の構成:COE が通常 7 名を指名(メンバーになるためには学部長の承認が必要)米国 COE メンバー、カナダ COE メンバー、州、地方の獣医師の代表、スタッフ・メンバー(AVMA の教育・研究部門)、大学人と臨床家。基礎と臨床のバランスをとる。

2)訪問調査団と COE との役割訪問調査団の現場における活動は、COE の目や耳となる存在。・自己点検報告の情報を、聞き取り調査により評価。さらなる情報を集め、疑問を明確に把握する。学部長あるいは大学の管理者に訪問調査の結論を言葉で告げる。

・認証の段階を推薦する報告書を COE に提出。 COE はこの報告書を受け、それぞれの基準に適合するかを検討し、認証の状態と期間等を投票で決定。

3)COE 認証の結果認証はアメリカの大学においては任意であるが、認証を受けることにより州政府からの借り入れが容易になる場合がある。

・認証を受けた大学の卒業生は州の獣医師免許あるいは連邦の業務の教育上の必須条件を満たす。

36

Page 37: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

米国の獣医大学と危機管理

米国の危機感: 獣医師の新しい役割の確認と人材育成、必要部署への配置 人獣共通感染症、家畜越境感染症(HPAI,口蹄疫など)対策 食の安全保障(食料安定供給)、食の安全、食の防衛対策 食料貿易の拡大(HACCP,安全管理と品質保証、トレーサビリティー) アグロテロ、バイオテロ対策

食の安全保障 食品貿易国際化対応 新興感染症統御 バイオテロ対応

❶ 大統領諮問:GAO(総合監査機関),USDA(米国農務省), FDA (食品医薬品局)等関係機関で協議 ⇒ 獣医師の新しいwork force 戦略を作成(最終報告2015):トップダウン式の決定

❷ 獣医師の増員計画: 3獣医大学を新設(30年ぶり、総数31大学体制へ改革)

❸ カンザス州にP4大規模施設を新設(5年計画)

❹ 感染症、バイオテロ等危機管理対応のため、不足州に獣医師の重点配備

❺ 連邦政府(国家)予算で州配備獣医学生に学費支援(2011年より実施)

37

Page 38: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

OIE, EAEVE, AVMA・COEの基準について

・OIEは、家畜感染症・人獣共通感染症の統御や食の安定供給・食の安全、畜水産品の貿易障壁の調整、動物福祉等に重要な役割を果たす獣医師の教育の質保証は国際的課題であるとして、獣医学教育の基準を提示しているが(公共獣医事分野)、他の分野の教育基準については明示していない。

・EAEVEの教育評価基準は、詳細に組まれており、EU内の格差を想定して基準化している点では、EU域外でも有効である。しかし、欧州の伝統獣医学を基準に置いており、産業動物特に馬学(産業動物臨床分野)等に関する評価に重点を置くなど、他の地域には適さない偏りがある。

・AVMA・COEの教育評価基準は、北米の獣医師資格試験の統一基準から発展した教育基準であるため、小動物臨床分野に重点を置いた評価基準になっている(卒業生の約半分は小動物臨床医)。

38

Page 39: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

4、日本学術会議の提言

39

Page 40: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

わが国の獣医学教育の現状と国際通用性獣医学分科会 2017年3月3日

40

Page 41: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

わが国の獣医学教育の現状と国際的通用性

1 背景

・日本の獣医学では欧米並みの規模の獣医学部を設置し、実務教育を充実しようという

構想・課題は依然として据え置かれている。

・一方、環太平洋戦略的経済連携協定の交渉過程でも明らかになったように、食料供給

の維持、食の安全性に関わる諸事項の規格化・統一化が以前にも増して求められるよ

うになり、これに深く関わる獣医師の国際的役割が大きくクローズアップされてきた。

・獣医学教育をグローバルな視点に立って行う必要性があることを背景に、今後の獣医

学教育改善について獣医学教育関係組織・機関等に以下の提言を行う。

2 提言の内容

(1) 社会的ニーズの再認識の重要性:国内外の社会情勢の著しい変化にともない人獣

共通感染症や家畜疾病対策、食品安全対策、野生動物の管理保護、(公共獣医事)、

伴侶動物への高度医療対応(医獣連携獣医療)、グローバルに展開する医薬品開発を

支える動物医学(ライフサイエンス研究)など、獣医学に求められる新たな社会的ニーズ

が生じた。獣医学教育現場では、これら多様な社会的ニーズに対応できる国際的レベル

の獣医学教育体制を早急に整える必要がある。

41

Page 42: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

2 提言の内容

(2) 社会的ニーズに対応した教育基準:国際的通用性を考慮した新しい教育基準の

策定が求められる。しかし、臨床獣医師の育成に重きを置く欧州や米国の獣医学教育基準

をそのまま採用することは適切ではない。OIEは、動物感染症制圧や食の安全に重要な役

割を果たす獣医師の教育の質保証が国際的な課題であるとして基準を提示している。これ

らの基準を参照しつつ、わが国独自の獣医学教育基準を作成することが望ましい。

(3) アジア の獣医学の特性と日本の役割:牧畜の発達した欧州・米国と異なり米作等、

農耕を主体に発展してきたアジアでは、獣医学教育の歴史、伝統も違う側面を有している。

食料の多くをアジアに依存し、動物感染症の蔓延するアジアに位置する日本は、リスクと

課題を共有するアジアを視野にいれて獣医師養成に取り組むべきである。

(4) 教育評価の仕組みの構築:評価の仕組みにはEAEVE)やAVMAの評価基準の基本

となる部分を参照し、国際的な通用性と、日本・アジアの実情に合う独自の教育基準作り

とこれを的確に評価できる人材育成を行うことが重要である。

(5) 評価結果に対応した実効ある改善:獣医学分野の評価を実効ある改善に繋げること

が求められる。2013年に開始された国立大学間の共同教育は獣医学教育におけるスケー

ルメリットを実現する有効な方法の一つであると評価できるが、組織体制を整備し教育内

容をさらに深化させるべきである。単独で改善を目指している他の大学では、自助努力等

で教育の組織・体制を整えるべきである。本課題は国立大学の組織の問題であるとともに、

私立、公立を含め、全獣医系大学にわたる教育体制の問題である。

42

Page 43: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

5、新しい獣医学教育の試み

43

Page 44: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

前獣医師会長 山根先生の提案第3回文科省獣医学教育改善・充実に関する研究調査協力者会議

平成24年8月より抜粋

・獣医師として最低限必要な基本的知識と各職域の専門知識は大学で身に着ける必要がある。

・コース別にして、より深い専門知識を教育するコースを作るべき。誰もが獣医師の6年間の教育で、小動物臨床、大動物臨床、公衆衛生、環境問題の全てを同じレベルで身に着ける必要はない。

・専門コースでなければ、実務が出来、応用能力のある人材は育成できない。現状では、日本の獣医師は、必ず社会に出てから再教育しなければならない。

・4年制から6年制教育になったが、獣医教育は充実しておらず間延びしただけ。4年で基礎的な教育をすべて終え、5年では臨床や公衆衛生を、6年では産業動物診療獣医師、小動物臨床獣医師、公衆衛生獣医師、製薬会社の研究者等職域ごとのエキスパートとなる教育を本人の希望に応じた形で教育する。

・卒業論文を書き6年生の1月、2月に国家試験の勉強をすれば十分クリアできる。・そうした教育体制を構築すべき

44

Page 45: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医学科のカリキュラム

学部共通導入科目

獣医師、獣医保健看護師の職域、社会貢献等の理解獣医の職務見学基礎科目

獣医学教育モデル・コア・カリキュラム

アドバンスト科目群(必修選択)・総合科目(卒業論文)

国際獣医事科目ライフサイエンス科目 臨床獣医科目

外国語教育科目

一般英語

総合参加型臨床実習共用試験

教養教育科目

動物関連キャリア概論:獣医事職域の見学

講座に配属

獣医キャリアスキルアップ研修

動物衛生学実習(畜産・水産・養蜂等)獣医公衆衛生学実習(保健所・家保等)

専門英語

ステップアップ教育

英語論文輪読会

2割の英語

動物とヒトの健康と福祉に貢献する専門獣医師国際対応

45

Page 46: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

獣医学科のアドバンスト教育科目

・ ライフサイエンス研究者や、国や県の中枢・機関の行政獣医師、公衆衛生獣医師等の不足に対応するため、5,6年にアドバンスト教育として、3分野に対応する分野別科目を設定し、高度専門獣医師養成のための独自のカリキュラムを設定。

a)ライフサイエンス分野 ≪動物からヒトへ≫ライフサイエンス分野に対応するために設定した<ライフサイエンス科目>では、創薬科学の専門家等を配置し、「トランスレーショナル・リサーチ」、「創薬科学」等を体系的に学ぶカリキュラムにより、実験動物を用いた基礎研究の成果をヒトの治療に繋げる教育研究を推進する(千葉科学大学薬学部と連携協定) 。・「トランスレーショナル・リサーチ」「創薬科学」「分子細胞腫瘍学」・「修復・再生医療科学」「国際ライフサイエンス産業政策論」・「比較動物機能科学」「発生工学」「獣医病態モデル学」など

46

Page 47: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

b)公共獣医事分野 ≪ローカル対応及びグローバル対応》

公共獣医事分野に対応するために設定した<国際獣医事科目>では、公衆衛生、獣医疫学、人獣共通感染症、水畜産の専門家等の専任教員を配置し、「国際動物疾病学」、「レギュラトリー科学」等のカリキュラムにより、国内外で対応できる教育研究を推進する。・「国際獣医事概論」「国際動物関連法規」「レギュラトリー科学」「国際動物疾病学」・「セキュリティー学」「グローバル食品管理科学」「国際生物資源学」「国際獣医法医学」「国際野生動物管理学」「医薬品・食品安全評価演習」「動物危機管理学」・「産業動物疾病予防管理学」「産業動物疾病診断病理学」など

C)医獣連携獣医分野 《One Medicine》

医獣連携獣医分野に対応するために設定した<臨床獣医科目>群では、医学部や薬学部で教育経験を積んだ教員を配置し、「抗菌薬バイオロジー」、「トランスレーショナル・ベテリナリーメディシン」等、医学と獣医学は共通であるという認識にたった医獣連携ができる獣医師の教育研究を推進する(愛媛大学医学部等と連携協定)。・「トランスレーショナル・ベテリナリーメディシン」「免疫関連疾病学」・「抗菌薬バイオロジー」「獣医高度臨床学」「分子疫学」「獣医疫学演習」・「チーム獣医療学」「エキゾチックアニマル学」「国際展示動物疾病学」など

47

Page 48: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

教育研究施設(1)講座室獣医学部棟に29室、獣医学教育病院棟に24室。全教員に講座室が与えられるよう整備。

(2)オープンラボ(784㎡ x 2 フロア)獣医学部棟5、6階に「オープンラボ」を設置。教員が実験等のため共同で使うスペース。中央部にディスカッションスペースを配置し、両側に実験スペースを設ける構造。大型機器類を共同で使用する共通機器室を整備した。病原体に関する教育研究のため、in vitro (試験管)実験用P2実験室を配置。さらに、感染症等に対応し、地域における水際対策の学術支援拠点としての役割を果たすために、BSL3レ実験室を配置し、臨床例からBSL3の病原体が分離されたときに対応する。

(3)実験動物センター(1998㎡)獣医学部棟1階にライフサイエンス研究用の動物実験、VPP実習等に利用する実験動物センターを配置。この施設はAAALAC(国際実験動物ケア評価認証協会)の認証を受ける予定。クリーン動物、遺伝子改変動物、SPF動物、感染実験動物飼育・実験区域を設置。サル、ブタ等の飼育エリアには屋外運動エリアを設置。四国の主要産業であり、獣医の職域と関連する水産養殖のための飼育区域を設置。

(4)形態解析室(96㎡)獣医学部棟1階の形態解析室に共同利用機器として、画像解析に使用する共焦点顕微鏡

やフローサイトメトリー等の大型解析装置や、組織標本作成室等を整備する。

48

Page 49: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

教育研究施設(5)国際獣医教育研究センター(14㎡)獣医学教育病院3階に設置。学内LANを用いて教育研究用に利用できるシステムを整備。アジアを中心に獣医学教育研究の情報拠点として、ネットワークを構築する。

(6)実習室獣医学部棟に5室設置し、両学科で共用する。90人収容可能、実習は2クラスに分けて行う。

獣医学教育病院棟に3室設置 (外科実習室、内科実習室、看護実習室)他に、大動物実習施設棟を設け、大動物臨床実習室、大動物解剖室、病理解剖室、隔離解剖室、大動物飼育舎を設置。

(7)獣医学教育病院棟(4階建て 3903 m2)二次診療施設としての役割を担い、1~2階は診察室、入院施設、手術室等の病院設備を整備。獣医学教育に必須の共用試験及び「総合参加型臨床実習」にも利用できる構造。動物診療及び実習設備として、X線CTやMRI等の高度診断装置を導入。放射線治療装置(リニアック)を導入。

(8)講義室、演習室、コンピューター室(125㎡)全講義室、演習室には、プロジェクター等の視聴覚設備及び無線LAN設備を設ける。スモールグループディスカッションなど行うことを想定し、演習室及び講義室の全室に稼働机を置く。ICT(情報通信技術)を用いた教育を充実させるため、コンピューター室を設ける。

49

Page 50: 世界の獣医学教育の現状と課題jaja.cside.ne.jp/kenkyukai/deta/171006.pdf獣医教育分野・獣医臨床分野 医獣連携獣医療分野 ・ヒトが超高齢社会に突入し、また伴侶動物の長寿命化が進んだため、多くの

御清聴ありがとうございました。

50