2 回OIE世界動物福祉会議要旨(大滝与三郎獣医師訳)

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2 回OIE世界動物福祉会議要旨(大滝与三郎獣医師訳)

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第 2回OIE世界動物福祉会議要旨(大滝与三郎獣医師訳)

①OIE加盟国における動物福祉基準の実施状況:異なった各国の現状 -Dr. Sarah Kahn (Head, International Trade Department , OIE)- この論文は、OIE 加盟 172か国からなるさまざまな国と地域が直面している問題点を含めた OIE国際動物福祉基準の実施状況に関する最新レポートである。OIEは一部の国が動物福祉基準の実施において深刻な問題に直面していることを認識しており、これは OIE指令に従って、これらの加盟国を支援する方法を特定する事を意味する。 2004年 2月 23日~25日まで開催された第 1回 OIE国際動物福祉会議で、加盟諸国間で大きな合意が得られ、2005年に地上輸送、海上輸送、航空輸送、食肉用動物のと殺及び疾病管理目的のための動物の淘汰をカバーする家畜福祉基準が採択された。この時から、OIEは当初基準の改訂作業を続け、家畜福祉基準の実施を奨励及び支援するために、加盟諸国

の代表(多くの場合、国の獣医当局の長)と連携している。 第 2回 OIE国際動物福祉会議(2008年 10月 20日~22日、カイロ)の主な目的の1つは、世界的に OIE動物福祉基準の実行経過を再検討し、これらの基準を満たすための加盟諸国支援の方法を特定することである。 家畜福祉ガイドラインの実行についてのアンケート調査が、正式な回答を提供するよう

に獣医当局に要望をつけて全加盟国に Eメールで送られた。調査内容の 17の質問を以下の如く 9 項目に区分した。1所轄官庁、2.法律制定、3.自主的な動物福祉計画、利害関係者の参画、4.教育、訓練、情報交換、5.家畜の輸送、6.食肉消費の家畜のと殺、

7.疾病管理のための動物の淘汰、8.主要な福祉の問題、必要性、方法及び9.将来の

OIE活動。 この要旨の作成時までに、172の OIE加盟国のうち 58か国が完全なかたちで調査報告書を送付してきた。5か所の OIE地域単位での回収率は、アフリカから 12%、アメリカから4%、アジア・極東・オセアニアから 21%、ヨーロッパから 54%及び中東から 9%となっている(講演時ではアフリカ 11/51(22%),アメリカ 6/29(21%), アジア・極東・オセアニア13/28(46%), ヨーロッパ 31/51(61%), 中東 5/13(38%))。 調査結果は獣医当局の権限及び動物福祉法制化への取り組みにおいて著しい違いを示し

ている。加盟諸国は将来の優先事項に家畜の生産システム、養殖魚及び実験動物の福祉ガ

イドラインを盛り込むことを報告してきた。また、一部の回答者は家畜福祉基準実施のた

めの公的な戦略の作成の必要性を考えていた。野良犬の人道的な管理の OIE ガイドラインも重要であると一部の加盟国によって指摘された。 OIE家畜福祉基準実施のためにOIEが加盟諸国をさらに支援する必要があることは明らかである。加盟諸国の家畜福祉基準法制化と特に獣医師の教育・訓練への支援が世界的に

は最優先事項である。(P19) ②動物福祉の世界的な改善のために陸生動物に関する規約がいかに生かされるか? -Dr. Alex Thiermann ( OIE陸生動物衛生基準委員会委員長)-

陸生動物衛生規約は OIE 内の陸生動物衛生の問題に関する国際基準の公式な管理書である。この規約は新しい科学的知見に基づき、そして 172 の加盟国の承認の後、毎年更新される。

OIEは 2001年に動物福祉基準の作成を 2001~2006年の戦略計画の一部としてOIEの作業計画に組み入れた。その後、OIEは動物福祉の問題について OIEに助言するための動物福祉作業部会を設置した。さらなる意義として、OIE はこの作業部会の支援を受けて動物福祉の原則と同時に動物の輸送、と殺及び病気の制御のための殺処分にかんする 5 つの基準を作成し、導入した。その他いくつかの基準案が作成されつつある。例えば、犬の個体

数の制御、実験動物、家禽における福祉の具体的な項目、同時に野生動物に関するもので

ある。 動物福祉は世界貿易機関(WTO)の拘束として特に取り組まれていないけれども、OIE基準の一部である動物福祉の取り組みは国際貿易社会によって速やかな承認を受けた。こ

れらの基準が最新の科学的知見に基づいて作成され、続いて、172の加盟国によるきわめて民主的な方法で承認されたという事実は動物福祉に関するこれらの基準をして動物衛生基

準に匹敵するほどの正当性を与えている。 動物福祉における基準のこの策定手順は今後も続けられる。信頼し得る基準策定機関と

して OIEが認識されていること、その透明性のある採択手順、そしてすべての国の代表者による熱心な参加によってこのプロセスが強力に進められることが期待される。公的ある

いは私的なすべての関係団体の献身的な参加が最重要であることに変わりはない。この参

加は基準策定過程だけではなく、より重要なのは各国によるこれらの基準の速やかに実施

においても必要とされる。(P20) ④OIE動物福祉基準の実施のための戦略 -Dr. Sarah Babcock (Veterinary and Animal Legal Services USA)- 世界中の動物の利益のため OIE動物福祉基準の広範な導入と実施を確実にするには、政府の政策と法律制定戦略が目的を達成する行動力と行政機構を利用可能にするために意図さ

れるべきであることが重要と考えられる。行政機構は環境と人権の世界基準の国際的な採

択にとってしばしば必要であることが分かっている。OIE 基準の国内実施は重要な意味を持ち、世界貿易機関(WTO)下の国際貿易指針に準拠した国内法の採用によって達成されるかもしれない。獣医専門家の科学的なリーダーシップは国の法律制定、国際間の条約締

結及び動物福祉のための OIE 指針の採用並びに実施を支援するその他の戦略作成のために必要不可欠である。 国の動物福祉法の作成と実施を支援するには多様な戦略的アプローチがある。域内貿易

協定、企業の適正実施基準、官民協調の構築の創造及びモデルとなる法律の草稿は OIE動物福祉基準の採用と実施をもたらすための有効な戦略的アプローチを提供するかもしれな

い。国際条約は OIE動物福祉指針の法的実施のためのひな形として役立たないこともない。

国際条約作成の過程には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」

が手本とすることができる。この条約は国内の法律制定だけでなく、法律を実施する国へ

の支援を与えることも要求している。多くの他の条約同様、条約の構成のなかには科学的

な勧告が役割をはたすべきであり、OIEと OIEの勧告に直接的関係を持つかもしれない。 動物福祉指針の作成のために科学的なアプローチを用いた OIE のプロセスはその指針の作成及びすべての加盟国がこれらの指針を受け入れる基盤を提供することができる。OIEによって採択された時点で、動物福祉指針は世界的なコンセンサスを導く協議目録となる。

WTO貿易体制はもし動物福祉の問題が衛生植物検疫措置(SPS)の適用及び貿易に関する技術的障害(TBT)協定の両方において及び関税と貿易に関する一般協定(GATT)条項20 のいくつかの例外条項下において衛生に関係するならば動物福祉の問題に対応するよう準備ができている。OIE 指針は WTO の議論の一部としてよく言及される可能性があり、OIE 指針は一国レベルの自己実現ではない。国内採用と実施過程には打開しなければならない課題があるけれども、国内の法律制定が OIE動物福祉指針を下支えする効果的な手段として役立つだろう。国際条約の構築は加盟国によって広く用いられる包括的事項として

役立つことができるかもしれない。そして最新の条約議定書は具体的な科学的根拠に基づ

いた成果に対応して作成することができる。加うるに、国際団体による行動規範の作成と

関与はこれらの基準を通常の営業業務へ採用するため契約上のメカニズムとして役立つ可

能性がある。(P21) ④発展途上国における動物福祉の法律制定 問題と機会-英語圏の国 -Dr. Hassan Aidaros (Professor of Hygiene and Preventive Medicine, Faculty of

Veterinary Medicine Banha University, Giza, Egypt)- 動物福祉は複雑で、多面的な公共政策問題である。それは重要な科学的、倫理的、経済的

及び政治的な要因を含む。社会におけるその重要性が増していることから、動物福祉は今

日、科学及び適当な法律制定の枠組みに基づいた方法で取り組まれなければならない。 動物福祉法の制定は動物福祉基準の実施を支えるために欠くことができない。そして、

結果として動物の健康と動物の生産が改善される。しかしながら、現時点では発展途上国

の多くは強制されない動物福祉法をもっているかまたは動物福祉法を持っていない。 この問題の対応には、早い時期に獣医当局、地域団体及び利害関係者の間で良好な意思

疎通および協力関係を構築しなければならない。動物福祉法の実施は訓練及び社会的認識

を高める上においてかなりの努力を要求する。さらに宗教的権威者の支援が確保されなけ

ればならず、市場への影響に関する調査が行われなければならない。 OIE 基準は各国の動物福祉計画のための重要な国際的な参照資料である。獣医当局の実績評価のための OIE手段(OIE PVS Tool )への動物福祉の算入は動物福祉に関するインフラ需要に対応するプログラムを構築する能力の開発のための機会を提供する。国際貿易

のために動物福祉を含めることは考慮に値するという WTO の動きはさらなる支援をあたえる可能性がある。(P22) ⑤発展途上国における動物福祉の法律制定 問題と機会-フランス語圏 -Dr. Martial Petitclerc (Project Manager, OIE)- 動物福祉という複雑で、広範な概念の一部としての「適正な取り扱い」というコンセプ

トは確認されている。その色々な特性、例えば栄養摂取、飼育条件とヘルスケア、輸送、

と殺及び実験などはそれらに関係した技術的、倫理的な考慮すべき事柄によってそして

OIE指針の枠組みの中で提起されている。 発展途上国は一般大衆が適切な人の福祉を欠いていると言う文脈で、この種の獣医学的

法律の作成と実施に困難さを経験しているけれども、これらのアプローチの支援において

説得力のある議論がある。法律制定と規制に関する幾つかの例が議論されそして当局が直

面している課題と機会の要点をまとめることにより現実との比較がなされている。動物福

祉の法律作成のための戦略に対する幾つかの要素が提案されている。(P23) ⑥動物福祉における文化的、宗教的問題 -Dr. Mohammed Chaudry(The Islamic Food and Nutrition Council of America, USA) この講演の目的は農場からと殺までの動物の取り扱いにおける文化的、宗教的な慣習を

明確にすることであり、動物福祉を強化する目的のために、その様な習慣を現在の科学的

な情報に基づいた国の規制と調和させることをめざすものである。 この仕事は関連する文化的、宗教的習慣の客観的な実態を示すために記録及び見聞され

たすべての有用なソースからの情報の収集と編集である。宗教的な要件は確立された動物

農業の要件を誓っている聖典、すなわちイスラム教とユダヤ教の聖典から選び取られた。

現在の習慣は色々な国から見識のある個人との私信と信頼できるソースを通じて集められ

た。 過去数十年、宗教団体によると殺時における動物の人道的扱いの問題は著しい関心を受

け、そして政府、動物権利の活動家及び宗教団体などの利害関係者団体において論争の焦

点となっている。この論文では客観的で先入観のない方法で、宗教的な要件と文化的な習

慣が述べられている。分析は宗教的要因のどれが時間の経過とともに変化あるいは変化し

ていないかに関して行われた。それぞれの国における文化的習慣が眺望され、それぞれの

国または宗教に広く行き渡った宗教的要件とこれらの習慣の相互作用に照らして分析され

た。我々はここに示された情報が動物福祉に関するあらゆるレベルにおける誤解を減ずる

ことを希望したい。このことは責任団体間の協調路線を客観的な情報に基づきさらに改善

するものであ。(P25)

⑦チリの獣医学部における動物福祉の教育 -Dr. Nestor Tadich(Dean, Faculty of Veterinary Medici, University of Valdivia, Chile) ラテンアメリカの国では動物福祉(AW)は最近の話題であり、動物の衛生と管理、国際貿易、産業コスト及び消費者の認知に対する影響のために重要な問題と考えられている。

ラテンアメリカの国では、メキシコ、パラグワイ、ウルグワイ、コロンビア及びチリが OIE動物福祉基準に基づいた法律をもっている。 ラテンアメリカでは、AW は主に大学と非政府組織(NGO)よって対応されている。しかしながら、AWに対しては獣医師が主たる促進者でなければならない。これを達成するために、獣医師は倫理、動物行動学、研究及び法律の制定における能力の獲得のために公式

な訓練をうける必要がある。チリでは過去5年の間、AWは獣医学のカリキュラムの中に組み込まれた。政府レベルでは、AWは2国間貿易協定の実施を通して促進されている。 専門知識を持った先生の不足が AW を教える上で重要な限界要素となっている。学生の

ニーズを満たすこと、教科を深く学習することを奨励すること、それを専門的な実践に応

用することあるいは関連する研究の関与させることをめざすならば専門分野に特化した教

師の AWの訓練が欠かせない。AWの教育内容、倫理及び動物行動学の強調並びにペット、野生または捕獲動物あるいは生産動物への焦点の当て方に関して獣医学部間で違いがある。 持続的な AW 教育のためには、関連研究プログラムがプログラムに付随している必要が

ある。これは学生に実践例と地域あるいは国レベルの問題に対する解決法を学習する機会

を与える。キーになる側面、例えば生理学的と行動学的変化、苦痛、恐怖など引き起こす

ある種の実践の効果の研究を奨励することが特に重要である。AW研究活動のための財政的支援を私的及び公的セクターから見つけ出す必要があるだろう。 在校生の基本的な訓練に加え、卒業生には任意方式で、より進んだコースを提供すべき

である。在校生のコースと同様に、その内容は標準化され、関連 AW 研究プログラムに付

随させるべきである。最終的には、各国がそれぞれの国の文化と経済環境に見合った AWを前進的に促進する法律を採択し、実施することが重要である。そうすれば各国の AW に

おける持続的な向上を達成するために訓練された獣医師及び他の専門家のための基盤を備

えることができる。(P26) ⑧動物福祉の遠隔地学習プログラムの実施 -Ms. Barbara Alessandrini(OIE AW Collaborating Centre Teramo, Italy)- 世界動物保健機構(OIE)、国連食料農業機構(FAO)及び欧州委員会(EC)のような国際的組織は動物福祉の強化に対し科学的見地に基づいたアプローチの採用を持続的に推進

している。利用しやすくそして質の高い内容、利害関係者及び受益者に対する妥当性並び

に柔軟性によって特徴づけられる訓練プログラムは世界の動物福祉基準を高めるためには

不可欠なものである。新しい情報とコミュニケーション技術は、動物福祉に関係のある獣

医師や他の専門家に低価格でのアクセスを保証しながら、世界中の動物福祉推進のために

決定的に重要な機会を提供している。一般的に電子学習(eLearning)と呼ばれるこのような訓練プログラムのインパクトは、学習の必要性の評価、受益国における技術へのアクセ

スの容易性、コースのための方法論の選択によって影響を受ける。 動物福祉の訓練に応用可能な種々のeLearningの方法論及び環境はコースの開発と作成、配信の管理、学習効果及びコスト面との関連性において検討された。共同学習を強化する

ためのコンピュータ・ネットワークの世界につくられた仮想社会の利用及びそれらの利便

性と限界はガイダンスと比較的短時間の内に安価な訓練アクセスに必要な教材の理解を提

供することにより評価された。輸送中及び失神並び屠殺における動物福祉基準のアプリケ

ーションが種々の eLearning のアプローチの効用性を評価する例として用いられた。科学的な原則と動物福祉基準の適用に関する公共部門の獣医師の訓練に基づき2つの事例研究

が自主学習環境のなかで実施され、広く利用しやすいウェブツールを使用した。学習プロ

セスに導入された戦略の効果と成果は個人インタビューと質疑応答を通して評価されなけ

ればならない。 動物福祉訓練プログラムはまだ一般に利用できず、テスト段階である。しかし、獣医学

的訓練や疫学、食品安全性や動物福祉のための OIE 協力研究センターのひとつであるIstituto Zooprofilattico Sperimetale dell’Abruzzo e del Molise によって作られたeLearningのコースはその学習環境を通じてアクセスできる(www.fad.izs/exact)。動物福祉の試験的な課題にアクセスするためのユーザー認証とパスワードは [email protected] で求める事が出来る。制作及び配信コストはどの方法を選択するかで違いがでる。合同学習に

よって特別に作られた学習教材の勉強と個人指導による援助を組み合わせた方法が最も効

果的である。しかし制作・配信の観点から最も高価である。 個人的に行われた特別の任務として表された既存の書物や法律の研究に基づいた自己学

習教材がより低いコストで制作され、配信される可能性があるだろう。しかし、プロフェ

ッショナルのための生涯教育プログラムという文脈においては、それらは学習の成果とい

う観点からはより効果的ではない可能性がある。 情報やコミュニケーション技術へのアクセス及び高品質のコースの制作に伴うコストは

学習の戦略及び的確な解決法の選択に影響を与える。予算の制約と技術限度は将来適切な

計画への着手の必要性が予見されるならば克服できる可能性がある。 国際機関は福祉関係者がアクセスできる訓練を提供するためのテクノロジーの利用を調

査すべきである。その恩恵は多種多様であり、全ての利害関係者に分配されるからである。

国際機関は彼らの専門家を活用し、書類やビデオなどのイメージ資料、ケーススタディや

課題などの教材を提供する事によりこれらの発展をサポートすることを迫られている。有

用な全教材を含んでいる共通のインターネットポータルサイトの利用が強く求められる。

(P27) ⑨OIE基準の実施における獣医専門家の役割

- Dr. Ron Dehaven( Executive Vice President American Veterinary Medical Association(AVMA), USA- 獣医師は彼らの患畜の備えることを宣誓すると同時に動物への責任ある利用法を通じて、

社会的利益を満たすことを確保している。従って、獣医師は彼らの宣誓に一致した実行目

標を持ちながら動物福祉基準の実施を支援するというユニークな立場にある。 動物ケア実践の推進と確実さにおける効果的な獣医学的なガイダンスは教育に始まる。

そのカリキュラムでは、獣医学部の学生は動物福祉評価に対し客観的なアプローチで教育

され、関連基準の理念と内容についての情報を提供され、そして指導者と共に常に基準を

満たす動物ケアの動きに役立たせるために実務の改善と手順変更を詳しく調査・研究する

よう奨励されなければならない。 卒業した獣医師がいったん実務に入ると、彼らは適切な動物ケアの実践において動物の

所有者、動物を世話する人及び一般の人の教育のために多様な機会を持つ。私立動物病院

または企業内獣医師はしばしばオーナーや動物を世話する補助者への支援を行い、動物ケ

ア実務の実践的な訓練とモニタリングを提供することで動物福祉を確実にすることに焦点

を当てている。コンサルタント業務あるいは動物ケア助言団体に属する獣医師は規格の作

成及び OIE 基準に沿った枠組みへの対応を支援するだろう。今までアメリカでは動物福祉の枠組みは一義的には自主的でありかつマーケット主導型である。このため、こうした活

動に従事している獣医師は動物福祉を伴った動物の世話(animal welfare-friendly animal care)システムをサポートするマーケットを構築するのに役立つ公教育を続けて行く責任がある。また、獣医師は関連の認証プログラムに高い資質を持った監査員の役目を果たすこ

とができる。最後に、公的機関に属する獣医師は立法や規制プロセスを通じて実施される

べき OIE対応の動物ケア基準を創出及び認証する任務を負っている。(P28) ⑩動物輸送時の OIE基準の実施 -Dr. Peter Thornber (Manager-Animal Welfare Branch Product Integrity Animal

and Plant Health Australian Government Department of Agriculture, Australia)- OIE は動物の陸・海での輸送時における動物福祉基準の作成のために国際的なリーダーシップを取ってきた。これは動物福祉での重要課題として動物輸送のプロファイルを立ち

上げ、そして OIE基準に合致し、危機を管理するための実施戦略の作成のために加盟国を支援してきた。 オーストラリアでの実施のアプローチは政府当局による基準の規制を含んでいる。それ

は産業ベースの品質保証プログラムを通じて畜産業によって共有されている規制によって

支持されている。オーストラリアは連邦ではあるが、イギリス連邦、州や地域の代表者が

動物福祉基準の作成、実施、強化のためには全国共通のアプローチの必要性で合意してい

る。 動物輸送は畜産生産者、代理店、輸送者、積み込み人、船主の共同責任を伴うチェーン

全体(whole of chain)のリスクマネジメントの取り組みを要求する。家畜は輸送前に適切な準備を施され、適切に設計された車両あるいは船で、優秀な運転手によって輸送され、

輸送終了時には適当な飼料、水及び休息が与えられなければならない。動物の取り扱いや

輸送において動物の取扱者の適格性を証明するという要求が高まっている。それゆえに、

教育と訓練は重要な要素である。 動物の適正な輸送方法は、家畜生産者にとって、結果的に商業的な利益をもたらすとい

う事実を普及することも必要である。非政府組織や地域共同体は国民の期待を考慮した協

議プロセスの役割を演ずる必要がある。また、行政は法令を遵守しない場合の帰結を伝達

し、基準を満たしていない場合は罰則を課すことを確保する必要がある。 オーストラリアは動物の取り扱い、運送方法及び福祉の成果の改善を支援するために貿

易相手国及び中東やアジア・オセアニア地区の OIE と共同作業を行ってきた。このアプローチは地域計画の作成を補助し、OIE福祉ガイドラインの実施のために OIE加盟国を支援するための技術協力を提供するためにある。(P29) ⑪国際金融公社/世界銀行の OIE動物福祉基準実施をサポートするための作業 -Dr. Robert John Hatton(Senior Industry Specialist, Agribusiness Department

International Finance Corporation, World Bank, USA)- ワールドバンクグループ(WBG)のメンバーの一つである国際金融公社(IFC)は現在、新興成長市場において民間部門最大の投資家である。2007 年 6 月 30 日現在、127 ヶ国に254億ドルのポートフォリオでもって、IFCは貧困の削減や、人々の生活の改善を援助するために新興国において持続可能な民間部門開発を推進している。 IFCは OIEの動物福祉構想と提携するという決断を下し、ロードマップの作成を支援するために国際動物福祉コンサルタント(IWAC)と契約を交わした。ここではその領域と成果を話題にする。 IFC は世界中で畜産・養殖水産プロジェクトに投資をしている。現在、12の畜産・水産プロジェクトが IFC ポートフォリオの一部となっている。IFCは異なった文化や環境下での動物福祉の経験をもっており、最近、適正動物福祉基準メモを作成した。IFC は顧客間で共通な適正福祉基準の作成及び適正福祉基準の市場全体への採用を促すよう委託されて

いる。生産成績や生産比率を用い、全プロジェクトは動物福祉基準を以下の分野で評価す

るために査定されている。 ・餌と水 ・飼育舎 ・動物の健康および畜産 ・輸送及び屠殺 ・スタッフと管理者 また、畜産投資の決断には社会的、環境影響力の評価が求められる。この知識と経験は

動物福祉の原則の活用を通じ、組織の生産性や効率性のレベルの向上をもたらした。この

論文はWBG内で動物福祉の原則を理解する事の重要性、WBGの情報資源を顧客に開示することの重要性を論じている。またプロジェクト評価方法やこのアプローチを支援するた

めの有用な技術支援についても論じる。(P30) ⑫実戦経験―ヨーロッパにおける病気制御を目的とした家畜の淘汰― -Dr. Debby J. Reynolds(Former Chief Veterinary Officer Department for Environment

Food and Rural Affairs DEFRA, UK)- 全ての獣医当局及び団体は伝染性疾病を制御するために動物が殺処分されるときには動

物福祉が適切に護られていることを保証する必要がある。優先事項は甚大な有事に対する

準備であり、それが政治的な合意、適切な人材によってバックアップされている計画であ

るということである。これらのプランでは人間の健康を守る必要性と効果的な病気の制御

のための必要要件とのバランスを取る一方で、動物福祉を維持しつつ野外作業の優先順位

のレイアウトを必要とする。 OIE ガイドラインは価値ある情報及び一般原則、組織構成、役割と責務、並びに専門家チームにおいて必要とされる権限に関するガイダンスを提供している。また、ガイドライ

ンは有事の際の人道的な殺処分を計画する際に考慮すべき事柄を概説している。 過去 10年間、イギリスとヨーロッパの国々では牛、羊、山羊及び豚の人道的淘汰に関係する豚コレラ、口蹄疫及びブルータング病の発生、同様に散発的に発生する炭疽並びに鶏、

七面鳥、カモ、あひる、鶉及びキジに関係する鶏インフルエンザに対し順調に対応してき

た。疾病統制手段として実施された移動制限は深刻な福祉課題を生み出す可能性があり、

感染した家畜の淘汰及び処分方法のためには取り決めが必要かもしれない。また、キーと

なる重要事項は人道的な殺処分のための効果的な扱い方、拘束及びシステムである。すべ

ての症例において、効果的な訓練及び計画が、痛み、苦しみ、非効果的なスタニングまた

は殺処分前の意識回復を回避するために並びに様々な施設、家畜の種類と年齢に対応する

ために必要不可欠である。OIE ガイドラインおける持続的な向上を可能にするためには、全ての取り決めには効果的なリスクコミュニケーション、利害関係者の関与した計画及び

教訓の徹底した評価が必要である。 研究は家禽類や小家畜のための新しいパーカッションガンを提供している。すなわちガ

スを入れたユニットを用いた家禽類の改良された屠殺システム並びに遠隔測定法の使用に

よって家禽類を屠殺するために鶏舎全体にガスを入れると言う人道主義の合意である。こ

の論文ではヨーロッパにおける実戦経験と技術協力の概説をする。(P31) ⑬実戦経験―中国における病気制御を目的とした家畜の淘汰― -Dr. Sun Ya(Deputy Director Division of Animal Inspection and Quarantine

Veterinary Bureau Ministry of Agriculture, China)-

淘汰は動物の病気を予防、制御及び撲滅するためには不可欠な手段である。 病気の制御を目的とした動物の殺処分は結果として恐怖、苦痛及び痛みを伴う可能性が

あることから、動物福祉の問題が取り上げられる必要がある。中国政府は動物福祉に重き

を置き、動物の福祉を促進かつ改善するための一連の効果的手段を採用している。 この発表では鳥インフルエンザの緊急対応における殺処分の実践の解説が動物の殺処分

の方法を含めて報告されている。 この論文では大きな家禽群と放し飼いの家禽の病気制御目的のために人道的な動物の殺

処分という制約のなかにおいて動物福祉が最大限にいかされた中国の経験を、動物を殺す

人への公式訓練の提供、監視の実施などを含めて紹介する。(P32) ⑭実践経験-食用に供するための動物のと殺 -Dr. Kerapetse Sehularo(Chief Veterinary Officer Department of Animal Health

and Production, Division of Meat Hygiene and Quality Control)- 1921 の創設以来、OIE は動物福祉に対して世界的に多大な貢献をしている。OIE の動物福祉計画は国際的な専門家による作業部会によって指導され、動物福祉指針の5つのセッ

トが 2005 年の OIE 総会で承認された。その中の一つに食用に供するための動物のと殺がある。 動物福祉は広い分野であると認識しているが、この論文は「食用に供するための動物の

と殺」を主題とし、特にこれらの指針の実施における実践的経験に限らせてもらう。食用

に供するためのと殺に関する OIE の指針の目的はと殺前、死ぬまでのと殺過程の食用動物福祉を保証する必要性に対処することである。 これらの指針は強制的ではないが、OIE 加盟国は、かれらの基準に指針を取り入れ、関連する規制を成立させ、そしてそれらを実施することを期待されている。最終的な動物福

祉の成果は、生産者、マーケット関係者、規制当局による指導、助言及び監督される技術

者と動物取扱者、獣医師並びに関係する専門家を含む利害関係者の関わり合いに依存して

いる。 このペーパーは食用に供するための動物のと殺の一般原則とそれらの現実における実践

についてレビューしたものである。特に、このペーパーでは幾つかのアフリカの国によっ

てなされたガイドラインの熟知度、実施及びガイドラインを実施するための法的手段に関

するガイドラインの実施状況の評価が提供されている。 このペーパーでは動物福祉を前進させるためにこの地域の OIE によって行われている進展事項を制度化するためのキーになる問題が提起されている。提起された問題には国に対

して動物福祉と食用のための動物のと殺に関する適切な法律制定、と殺前の取り扱いを含

めたと殺の研究、教育の促進と農業公共施設における動物福祉教科課程の算入を奨励する

卓越した研究拠点をそれぞれの OIE地域に設立することが盛り込まれている。(P33)

⑮実践経験-街上犬頭数制御の手段 -Dr. Malek Zrelli(Director General of the Veterinary Services Ministry of Agriculture,

Tunisia)- 1982年に農業省、内務省及び公衆衛生省の合同で開始された国の狂犬病予防計画はチュニジアにおける犬の狂犬病の発生を減少させた。本計画の基盤となる行動は:疫学的調査

及び無料の毎年の犬のマスワワクチネーション;一般大衆への健康教育および狂犬病感染

の危険にさらされた個人の無料の症例管理並びに街上犬の頭数の制御である。ここでは著

者らの推奨する街上犬の頭数の制御方法とその方法を25年間以上応用した成績を紹介す

る。 街上犬の頭数が推定された時点で、二つの統制方法-すなわち捕獲と不妊処置(去勢または卵巣摘出)並びに疾病予防を目的とした動物の射殺-が採択された。 外科的去勢は優れた街上犬頭数統制の1つの方法であることが証明された。しかしなが

ら、その大規模な応用はコストと組織化の困難さによって限界がある。倫理的な制限はあ

るが、病気予防のための殺処分はそれが行われたところではどこでも実質的に街上犬頭数

の制御をもたらすことに貢献した。しかしながら、管理構造、戦略、及び操作手順を規定

する際には、一貫した信頼性を保証にするため並びに動物が人道的にそして速やかに殺さ

れることを保証にするために、最大限の配慮がなされなければならない。 この方法は「街上犬」事象に対してはけっして妙薬として考えることはできない。それ

はペットである犬の役割と動物福祉の意識を高めるための広範囲な公衆衛生教育によって

裏付けられそして推奨されなければならない。そうすることにより、街上犬の源を減らす

ことができ、この事象がきっぱりと封じ込められる。(P34) ⑯OIE動物福祉基準を支援する非政府組織の作業 -Major General Peter Davies (Director General World Society for the Protection of

Animals(WSPA), UK)- 152 カ国の 880 以上の参加組織から成る世界動物保護協会(World Society for the

Protction of Animals,WSPA)は、世界の多くの国において OIE動物福祉基準の推進をサポートするためにほどよい位置にある。世界の最も大きな動物福祉関連組織の多くは

WSPA のメンバーであり、教育プログラムやキャンペーンを通して大きな影響を及ぼしている。 現時点におけるWSPAの優先事項の1つは先進国及び発展途上国において共通の動物福祉に関する世界宣言(Universal Declaration on Animal Welfare, UDAW)の促進をすることである。多くの国は動物福祉法の基本的な形を持っておらず、感覚のある動物は尊厳と動

物たちの福祉をもってとりあつかわれなければならないことを認識するために及び OIEの動物福祉基準の基調をなす骨組みを実施するために単純な動物福祉の原則の宣言は国に対

して法律制定の基盤を提供するだろう。このような宣言の重要性は 2007年 5月の OIE 総

会で承認された。WSPAの参加組織は OIE基準の実施を法律制定あるいは行動規範を通じて政府に奨励する役割を果たすつもりである。国連による UDAW承認を得ることと同時に世界中にOIE動物福祉基準実施を促進ことがWSPAや他の動物福祉NGOの意図するところである。(P35) ⑰肉・家畜産業の義務:家畜を保護し、福祉を確立するために -Dr. Nils Beaumond (INTERVEB International Meat Secretariat( IMS)

Representative)- 家畜の保護及び世話は食肉及び畜産を専門とする人にとっては通常の行為である。これ

らの人々は、その名の示す通り動物福祉において主要な役割を担う者である。重要な社会

的関心事として今提供されている問題、すなわち如何にして社会的関心を定義し、評価す

るかという問いであるが、人の進化と家畜の家畜化の長い歴史は古典的な「5つの自由」

に適合した実践及び作業方法に基づくということを人は忘れてはならない。福祉という曖

昧な言葉が広範囲に解釈されるならば、well-being(快適な状態)と welfare(福祉)の定義の明確な区別の確立にはより多くの時間を費やす必要があるように思える。 食肉及び畜産を専門とする人は、生産システムと消費者の要求事項(世界のほとんどの

人が優先事項として挙げる、利用しやすい値段で、安全な食肉製品を適度な量で供給され

る必要性)を調停するという困難な課題と常に向き合っている。OIE のガイドラインは近代的な生産システムと実践が動物福祉に適合しつづけることを保証する手助けになる。そ

して、食肉と畜産を専門とする人はそこから畜産、輸送及びと殺システムのための評価手

段を構築できるだろう。 動物福祉実践のための共通した国際的基盤を持つ必要性は経済関係者の願いではあるが

文化的・経済的な面、それ故の競売と競合の不均衡リスクを考えると非現実的である。IMSは競売のようなことを避けるために産業内で動物福祉において討論を促進し、食肉製品に

動物福祉に関係するラベルを貼ることに反対している。 IMS-OIE の共同作業は必然的に二つのタイプがある。すなわち、IMS はガイドラインに現実性を残すため本質的事項をインプットすること及び OIE の作業の普及を産業側にリレーすることである。(P36) ⑱酪農生産における適正動物福祉の指針 -Dr. Gwyneth Verkerk( International Dairy Federation(IDF) Representative Project

Group Leader, New Zealand)- 国際酪農連盟(International Dairy Federation,IDF)は現在の総乳生産の 82%を占める

53カ国の会員から成る世界酪農分野の代表である。IDFは乳製品の質向上のために常に最善の科学的知識及び技能を提供にするために模索している。FAOと IDFの合作で出版された適正酪農業基準(Good Dairy Farming Practice (2004))のフォローアップとして、IDF

は 2006 年に FAO・OIE の専門家とともに酪農の生産における適正家畜福祉指針の作成作業を始めた。IDFの作業は、IDFが積極的に参加している現在進行中の OIEの動物福祉に関する常設作業グループ( Permanent Working Group on Animal Welfare)の作業を補完するものである。 動物福祉は農場の家畜に対する合理的で繊細な畜産実践の応用である。動物福祉の適正

酪農基準は、動物の根本的なニーズを表現している「5つの自由(The Five Freedom)」に規定された枠組みによって裏打ちされる。 動物飼育において動物管理基準がめざさなければならないのは: ― 渇き、飢え及び栄養失調症からの自由 ― 不快からの自由 ― 苦痛、損傷及び病気からの自由 ― 恐怖からの自由、そして ― 動物が通常行動を出来ることの保証 酪農生産システムは世界中で異なるが、これらのシステムのなかでは、動物福祉の観点

から見た場合、動物のニーズは異ならない。一頭の牛から何千もの牛まで群には大小の差

があり、生産スタイルは放牧から牛舎にまで、そして飼料はよく調整された混合飼料から

粗飼料まで様々である。 IDF の指針は酪農家畜福祉による品質管理の改善、実施をする際の考慮すべき5つのキーになる活動分野を特定している。 ― 牧畜業者精神 ― 飼料と水 ― 物理的な環境 ― 牧畜の実践 ― 健康管理 それぞれの活動分野は最良管理基準を規定するために使用できる一般的な原則のセット

を持っている。 IDF の指針は酪農家が利用するために実用的な形式で書かれそして彼らのビジネスにとっては有益であるべきである。それはいかなる法的地位を持つものではなく、国家基準に

優先するものではない。(P37) ⑲OIE動物福祉基準の支援における農場経営者組織の作業 -Dr. Juan Jose Grigera Naon(Director Sociedad Rural Argentina International

Federation of Agricultural Producers(IFAP) Representative ) - 農家は家畜福祉に関する道徳的および倫理的な問題を自覚しており、そして彼らは家畜

の快適な飼育に対して責任を負うべきである。多くのケースで、適正福祉基準は結果とし

て、農場経営者の収益性を増大し、そして人間のための食料の浪費を防ぐ。

世界農業生産者連盟(International Federation Agricultual Producers,IFAP)は、基礎的な国際動物福祉基準は世界的に受け入れ可能な基準を保証することが基本であることそ

して動物福祉に関する問題が貿易の障壁になってはいけないことを保証しなければならな

いと主張している。 OIE は世界で国際貿易ルールを作成する際の準拠点として役目をはたすべき世界の家畜福祉のために科学的研究に基づいた最低限の基準を作成した。このようなルールは継続維

持が可能であり、期待される結果に基づいていなければならない。言い換えると、これは

地域社会全体、とりわけ業界、政府及び国際的パートナーにおける動物福祉の最新の成果

に基づいた十分な情報伝達戦略を要求する。これはまた、産業動物福祉基準へのより広い

理解を促進し、消費者の農産物への信頼を保つ手助けとなる。その好例がアルゼンチン牛

肉振興協会(Instituto de Promocion de la Carne Vacuna Argentina)の資金援助によってなされた研究である。その肯定的な結果は陸上運搬の OIE ガイドラインを含んだ適正動物福祉基準を牛肉処理場に導入することを促進した。

17,370 頭の屠殺データがアルゼンチンのブエノスアイレス州中央大学獣医学部(Faculted de Ciencias Veterinarias, Universidad del Centro de Provincia de Buenos Aires)の研究者により1ヶ月以上にわたり集められた。由来、性別、年齢、肥育方法及び食肉処理場までの距離が記録された。牛舎内での動物の取り扱いが観察され、損傷の度合

いが評価され、公認の国際的パラメーターによって分類された。 よりよい動物の取り扱いは結果的に 39%の損傷の減少となった。これは、国ベースにし

た場合、14,200トンもの余剰牛肉を生産することに値し、国際市場においては 28,000,000米ドルもの価値になることを意味している。(P38)

⑳動物福祉を適用させるための自発的な計画: ウルグアイの私企業の経験 -Dr. Marcelo Secco(Director Frigorifico Tacuarembo -Marfrig SA, Uruguay)- 牛肉や羊肉生産の 80%を輸出している国にとって、動物福祉基準に対して高まりつつある関心は市場動向に明らかなメッセージを与え、ウルグアイの食肉生産チェーン全体の発

展に影響を与えている。 4つの牛肉・羊肉処理場を持つウルグアイの Tacuarembo Marfig グループは企業計画の2つの戦略的事項において動物福祉基準の持続的な開発を取り入れた。 会社は市場において会社の生産物を差別化するための識別可能戦略を導入した。そのこ

とにより、我々をして小売り及び食品サービス部門において顧客を満足させ得る可能性が

ある。 平行して、会社は持続的な改善プロセスを恒久的に維持するために動物福祉基準を会社

の市場戦略及び付随するサービスに一致したかたちで取り入れた。この持続的な改善プロ

セスは産業レベルでの適正基準をサポートし、インテグレイドされた一次生産システムを

も強化する。

このように過去 10年間は、認定オーガニック製品の様なマーケット、マクドナルドのような特別な需要を持った企業といった市場部門をターゲットとして、動物福祉基準はそれ

らマーケットから得られる一定の評価および進歩に基づいてウルグアイの肉生産サイクル

に取り入れられていった。このように、外部から課せられた動物福祉基準のコンセプトは

今や過去のものとなっている。 ウルグアイの屋外生産システムは動物福祉基準を取り入れる上での理想的な骨組みを提

供していることは疑う余地がない。さらに、会社の持続的なフィードバックと情報交換の

プロセスは一次産品の生産元への市場のメッセージの還元に効果的である。 生産者と処理業者の教育と恒久的な情報の交換はウルグアイの生産システムが関連する

市場の各部門において最適な生産物の識別を達成することができると言う確かな保証を構

築する。(P39) (21)オランダでの鳥インフルエンザ発生時の実践的経験 -Mr. B. M. Dellaert(Product Boards for Livestock, Meat and Eggs(PVE) International

Egg Commission (IEC) Representative, The Netherlands)- 家畜、肉及び鶏卵生産者委員会(The Product Boards for Livestock, Meat and Eggs,

PVE) はオランダの肉、鶏卵および家畜産業の統括団体であり、家畜農家から小売りにまたがり活動している。PEV は家畜産業部門のために拘束力のある規則を策定する資格が与えられている。その活動の一つは動物の衛生と品質保証計画の改善及び管理で、その他家

禽産業につても活動している。 2003年、オランダの家禽産業部門はH7N7型の鳥インフルエンザ(AI)の発生に苦しんだ。西ヨーロッパにおいてこの病気に対する知識が比較的乏しかった時期である。病気を制御

するために家禽の大規模な摘発淘汰が行われて以来長い時間が経過した。当時オランダ政

府は、EU のガイドライン 92/40/EEC に従って病気予防対策を国家計画に取り入れ、さらに 72時間家禽及び特定の家禽生産物の国内の移動停止を課した。 2003 年の 2 月 28 日に病気が発生した時には課せられた対策手段は上に述べた方法よりきつくし、EU基準以上のものであった。これはこの病気に対して十分な知識がなかったためである。撲滅と予防的淘汰がコマーシャル農場及び例えば愛玩鳥を飼育する個人にも適

用された。輸送制限のために、福祉という観点から家禽を処分する必要があった。 AI は最も過密な家禽生産の2カ所で発生した。臨床症状はオランダの中心部で最初に確認され、次の南東部の生産地で確認され、132時間の2回目の移動停止命令の引き金になった。調査対象地域の健常な鳥からの食卵だけが同じ地域内の処理工場へ運ぶことはできた。

監視地域の孵化場は閉鎖された。ついで限定された区画内のみで生鳥の輸送が許された。 病気が沈静化してからは、関連 EU決定に従ってリストック(入雛の再開)が行われた。通常のリストッキングに先立って、AI が発生した農場におとり鶏が導入された。獣医師による週ごとの検査と21日後のサンプリングがリストッキングの根拠を提供した。2003年

の 8月 22日には全ての対策が解除された。 作業の直接コストの 2.7億ユーロで、EUやオランダ政府、農家で賄われた。養鶏産業の全体の損失は 5億ユーロ以上であった。

3~5月の間に、3億 700万羽の鳥が処分された。淘汰は、以前は HCNの散布をしてきたが、HCNの使用は 2003年に禁止され、大きな鶏群のための代替手段は開発されていなかった。 淘汰手段としていくつかの方法が用いられたが、コンテナや鶏舎内での二酸化炭素ガス

使用や水槽内での電気による移動屠殺などが行われた。そのような危機の間、新しい方法

が開発された。すなわち、二酸化炭素と酸素を1分間注入/失神、その後 80%の二酸化炭素と 20%の酸素・窒素を用いた 3分間安楽死の方法である。いくつかの研究プロジェクトが動物福祉という観点からこれらの方法を比較するために導入された。近年では、泡状のガ

スを使用した調査結果が報告されている。利点としては建物を覆う必要がない点である。

このような経験は今後の教訓として大いに役立つであろう。(P40) (22)OIE動物福祉基準の実施:ブラジルと中国におけるWSPAの人道的屠殺訓練プログラム -Dr. Rasto Kolesar(WSPA (World Society for the Protection of Animals) Farm

Animals Programme Manager ,UK)- 動物福祉の改善をするための屠殺及び屠殺前の技術及び食肉の品質並びに安全性は、適

切な情報、活用及び実施と同時に地域の人々の情報の所有によって左右される。世界動物

保護協会(WPSA)は人道的な屠殺プログラムの作成において地域の獣医師を訓練し、支援を行った。このプロトコルの第一目的はブラジルと中国での屠殺方法を3つのアプロー

チで改善することであった。 1)人道的な屠殺の訓練者になるための中核となるブラジル及び中国の獣医師の訓練 2)実践規則と法制定へのガイダンス 3)卒業前の獣医師候補生のための屠殺前及び屠殺の動物福祉カリキュラムの作成と実

施 国内のトレーニングの教材の作成は各国で導入されている訓練要求分析(Training

Needs Analysis)に基づいた。理解力の総合試験成績はキーになる当局者と利害関係者によって署名された。6人の中国人と4人のブラジル人がトレーニングを終了し、国家レベ

ルトレーナーになった。彼らはそれぞれの国で毎年 200 人の屠殺管理者と検査官を訓練することになっている。 OIEの福祉基準に基づいたガイドラインが中国で採択された。獣医教育カリキュラムの作成は両国で進んでいる。

WSPA はブラジルの農業省やジンバブエのヘナン農業大学、中国の研究活動とともにと殺前とと殺時の動物福祉の実施に向け訓練カリキュラムにおいて作業を続けている。(P41) (23)動物福祉教育と研究資源の Perdue大学-OIEのデータベース-

-(Dr. Ed Pajor Purdue University , USA)- OIE は科学的根拠に基づいた基準の作成に国際的なリーダーシップを発揮している。

2005年から OIEは動物福祉を OIE基準に含めている。さらに、OIEは動物福祉においては科学的根拠に基づいた知見の伝達の必要性を認識している。Purdue 大学と米国農務省(USDA)の行動部署(Behaviour Unit)は米国において最も大きな動物福祉学者の団体であり、動物福祉の研究、教育、支援活動において国際的な名声を確立している。動物福

祉における専門家及び訓練が要求されているという認識から、OIEと Perdue大学は動物福祉教育と研究資源のデータベースを作成に関し協調して取り組んでいる。 データベースための情報は様々な団体から現在集められている。公的部門の組織として

は獣医当局、国家機関、OIE 関連研究所、協力センター、さらに獣医と農業訓練機関が含まれている。私的な部門では、国際と地域の獣医科学的組織さらに、OIE と正式な契約を持っている団体とコンタクトしている。最後は、科学情報誌にレビューが掲載されるよう

な専門家と接触した。現在、ウェブベースでは3つのカテゴリーを調査することが出来る。

すなわち、1)個人的な専門家、2)訓練の機会、及び3)教材である。 個人的な専門家、かれらの詳細な連絡先、専門分野及び動物福祉の主題へのアドバイス

のために有用性が明らかにされるだろう。訓練のための機会としては遠距離教育コース

(distance education courses)、機関が提供するコースまたは動物福祉に関する様々な教育コース、機関が提供する動物福祉の卒後教育、同時に、実務研修及び特別休暇研究機関の

機会を確認するつもりである。最後に、教材の調査については科学雑誌、書物、CD 及びDVDに焦点を当てるつもりである。 このプロジェクトによって科学的根拠に基づいた知見を教育者、政府、獣医師及び世界

中の関係者に供給するための探索可能なデータベースを構築したい(P43)