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寺さんのもっと健康セミナー25 健康長寿の秘訣

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ライフアカデミー研究所 寺本正文

はじめに

新しい仕事を始めると、IBM 時代のことが意識から遠ざかって、親鴨会への投稿も疎遠になってしま

いました。 でも別の組織で健康セミナーを開いているため、そこで発表した資料を親鴨会の皆さんに

も公開しましょう。

今回は、健康寿命を失う最大の原因は、ロコモティブシンドロームで、これを予防

する材料のグルコサミンという物質に焦点を当てました。

マスコミではグルコサミンという名前が頻繁に出てきますが、これがどういうものかを知ることはあり

ません。 名前と膝関節症に効くという程度しか知ってないという方がほとんどと思います。

グルコサミンとそれから生合成される物質は軟骨だけでなく、実に多くの臓器で使われています。

グルコサミンがなければ1日も生きることはできません。

講演会の発表資料をワードにしただけなので、行間を埋めていませんが、おおざっぱには理解していた

だけると思います。

女性に役立つ肌の健康に関することも書いているので、奥さんにプリントアウトしたものを渡していた

だくと、喜ばれると思います。

健康長寿の秘訣

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1.人に頼らないと生きていけない期間

健康寿命 要支援・要介護期間 平均寿命

男性: 71.2 歳 9 年 80.2 歳

女性: 74.2 歳 12.4 年 86.6 歳

日本人は寿命が長くなったが、要支援・要介護の期間は先進国の中で、最も長い。

医学の進歩で寿命は伸ばせたが、健康を保つという予防医学はそれほど進んでいない。

2.要支援・要介護になる理由

足腰に異常をきたす人が最も多い。 続いて脳梗塞、脳出血。

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3.今回のテーマ 目、消化管、皮膚、血液・血管、関節の老化防止

グルコサミンに焦点を合わせ、グルコサミンが活躍している臓器を順番に説明する。

最後は運動器障害となる膝関節症の対策を述べる。

4.グルコサミンとは?

炭水化物(グルコース)とアミノ酸の一種であるグルタミンから体内合成される。

グルコサミンという名前はグルコースとグルタミンを合わせて作られた。

生合成の順番はヘパリン、ヘパラン硫酸が真っ先になっている。 これらは血液や血管の材

料となっており、グリコサミノグリカンの中では生きるために一番重要となっている。

材料が余ればヒアルロン酸、ケラタン硫酸が作られ、関節や皮膚、眼球などに使われる。

さらに材料が余ればコンドロイチン硫酸やテレマタン硫酸が作られる。

軟骨に必要なコンドロイチン硫酸は、生命にとって重要度が低いということが言える。

こういう反応工程は生命の進化の結果であって、人が考えて作った工程ではない。

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5.グルコサミンは体内のどこにあるのか?

グルコサミンは下図の臓器や結合組織にあって、各器官の強度、柔軟性、弾力性に寄与している。

グルコサミンから作られるもの

目の粘液

唾 液

胃・腸の粘液

皮 膚のうるおい

血漿の水分、血管のぬるぬるした内膜

骨・軟骨・腱

6.結合組織

① 細胞や臓器の支持安定、保護作用

② 代謝に必要な物質の運搬と貯蔵

③ 細胞や臓器の修復と防御作用

摂取した栄養素は結合組織に貯蔵され、需要に応じて細胞に送り込まれる。

結合組織の主成分であるグリコサミノグリカンが欠乏すると、総合的な栄養欠損を招き、

細胞の劣化につながる。

7.グルコサミンが作り出す物質

グルコサミンから合成される物質は、グリコサミノグリカンと呼ばれる「ねばねば物質」である。

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グリコサミノグリカン 使われている場所

ヘパリン 血液

ヘパラン硫酸 皮膚、血管

ヒアルロン酸 硝子体、皮膚、関節、結合組織

ケラタン硫酸 角膜、軟骨、結合組織

コンドロイチン硫酸 骨、軟骨、皮膚、腱、角膜、血管、粘膜

テレマタン硫酸 結合組織

8.眼の機能に関わる

眼の衰えを感じると、老化を実感する人は多い。

ドライアイ(角膜の水分が減る)

物が見にくくなる(水晶体が固くなる)

飛蚊症(硝子体が縮んで網膜の血管が引っ張られる)

(白内障は水晶体のたん白質が紫外線により白濁すること)

グルコサミン、コンドロイチン硫酸で改善する

9.消化器官

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消化器官はすべて「ねばねば物質」で守られている。

「ねばねば物質」はグルコサミンから作られる。

ねばねば物質の役割:

⇒ 粘膜を保護し、乾燥を防ぐ

⇒ 唾液や消化液となる

よく噛むことが大切

⇒ 食べ物の流れをよくする

粘液(唾液、胃液、腸液)で潤っている消化管は、栄養の消化・吸収をスムーズに

するだけでなく、外からの異物(病原菌やウイルス)の侵入も抑制する。

10.皮膚の構造とグルコサミン

グリコサミノグリカンとコアたん白が結合したものをプロテオグリカンという。

皮膚組織にはプロテオグリカンが豊富に存在し、皮膚機能の維持を行っている。

結局、皮膚の維持はグルコサミンで行われていることになる。

表皮の下にある基底層はどんなものも通さない。(ステロイド以外)

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従って皮膚の表面から化粧品をつけても、表皮の下の真皮には届かない。

もし真皮に届くとすれば、細菌やウイルスも入ってくることになり、命が脅かされる。

真皮(シワ、肌の弾力性)を改善するには、内部(食事)から栄養を与えるしかない。

コラーゲンを食べてもアミノ酸に分解されて、吸収されるため、望み通りのコラーゲンが

できるとは限らない。

⇒ 基質(プロテオグリカン)を作るグルコサミン

⇒ コラーゲン、エラスチンの基になるたん白質

11.グルコサミンの美肌効果

グルコサミン摂取によりグリコサミノグリカンの生成が促進されるため、

6週間続けると、シワの数と幅が少なくなる。

乾燥の度合いがさほど下がらなかったのは、グルコサミンが表皮を改善しないためである。

乾燥は皮膚の外から保湿剤で防ぐしかないことを示している。

12. 血流をスムーズにする

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年齢と共に血漿に含まれている水分が減ってくる。(脱水)

グルコサミンが多ければ水分を保持できるので、血漿の水分が減らず血流がよくなる。

脱水状態の血液検査では、値が高めに出て異常があっても正常値に入ることが

あるため、検査結果を鵜のみにできない。

13.血管壁

血液が流れるため、血管は常に伸縮している。

そのため血管には弾力性と柔軟性が求められる。

この弾力性と柔軟性に欠かせないのが、

グルコサミンやコンドロイチン硫酸である。

14.ロコモティブシンドローム

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ロコモティブシンドロームは、関節や筋肉などの障害から、要介護の状態になったり、

寝たきりになったりする危険性が高い状態である。

15.関節症

高齢者に多いのは変形性膝関節症である。

関節軟骨の組成

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軟骨は コラーゲン と、コアたん白 と グリコサミノグリカン (ヒアルロン酸、コンド

ロイチン硫酸)からできるプロテオグリカン、水分でできている。

軟骨には血管が来てないため、古い医学では軟骨の再生はできないと言われていた。

実際には滑液を通して養分を補給しているため、再生可能である。

関節を動かすことにより、滑液が軟骨まで循環して、栄養補給ができる。

つまり、歩くことで、軟骨の再生がしやすくなる。

軟骨再生には コラーゲン(たん白質+鉄+ビタミン C)

グルコサミン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)

16.コラーゲンとは

“(グリシン)―(アミノ酸X)―(アミノ酸Y)―”が連なって1本の線維が作られ

それが位相をずらして3本がねじれてコラーゲン線維ができる。

アミノ酸 X やアミノ酸 Y は、グリシンを始め、ヒドロキシプロリンや

ヒドロキシリジンからできている。 これらは細胞内の小胞体と

いう小器官で形成されるが、この時「ビタミンC」と「鉄」を必要とする。

コラーゲンを食べても、アミノ酸に分解された後、吸収されるため、

必ずしも体内でコラーゲンになるとは言えない。

17.グルコサミンと関節疾患

グルコサミンは1日にどれだけ摂ればいいのか?

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1日当たり 1500mg 必要ということ。

18.まとめ

運動器官の障害を予防: グルコサミン+コンドロイチン硫酸 ⇐ たん白質(グルタミン)

たん白質+ビタミン C+鉄 (コラーゲンの材料)

グルコサミン+コンドロイチン硫酸 のもとになるたん白質をとることが必須である。

ただ高齢者にとっては食事からだけでは不足するため、

補助食品で補うのが予防策になります。

グルコサミンから作られるグリコサミノグリカンが増えれば、

運動器官だけでなく 眼、消化管、皮膚、血液・血管 など全身の機能が改善される。

19.グルコサミンで寿命が延びる?

アメリカの医学雑誌「Cell」(Nature, Science に並ぶ科学誌)の 2014 年 3 月の発表記事

「グルコサミンが加齢に伴う病気の引き金となる、たん白質の劣化を抑制し、寿命を延ばした。」

解説

これは線虫とマウスを使った実験による発表である。 生物の寿命を延ばす化学物質は長年追い

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求められてきたが、人が安心して使用できると考えられている物質は非常に少ない。

アミノ糖の一種であるグルコサミンをマウスに投与することによって、人に相当するなら寿命を

8年延ばすことができたというのが、この実験の発表内容である。 グルコサミンが人の健康寿命

だけでなく、寿命まで延ばす方法として、手軽に利用できるようになる可能性がある。

過去には長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化させる「レスベラトロール」が話題となったが、

条件が限られるため実用には至っていない。

同じ目的で NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)の臨床試験が始まっているが、

実用になるかどうかは分からない。


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