Title サプライチェーン・マネジメントにおける3つの戦略 琉 ir.lib.u- ......

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  • Title サプライチェーン・マネジメントにおける3つの戦略

    Author(s) 知念, 肇

    Citation 琉球大学経済研究(80): 31-42

    Issue Date 2010-09

    URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/18608

    Rights

  • サプライチェーン・マネジメントにおける3つの戦略

    知念肇

    論文概要

    サプライチェーン゜マネジメント(SupplyChainManagement)の捉え方に

    は、様々なものがあるが、本稿においてはサプライチェーン。マネジメントが3つ

    の戦略を連動させたと考えている。すなわち、市場戦略としてのマス・カスタマイ

    ゼーション、製造戦略としてのモジュール化、物流戦略としてのポストポーンメン

    トである。それらが意味するところと、連動し同期化することの意味について考察

    した。

    :サプライチェーン。マネジメント。

    モジュール化、ヴィルウィプ効果

    キーワード マス゜カスタマイゼーション、

    -31-

  • 琉球大学・經濟研究(第80号)2010年9月

    1.はじめに

    サプライチェーン・マネジメント(以下SCM)が語られるようになってから30年余にな

    る。しかし、SCMとは何かと問われた場合、「これは私見ですが」と断ってから意見を述べ

    る場合が多い。これは例えばT型フォードの大量生産方式やトヨタのかんばん方式のように

    明確な発明者がいないことと、この30年、SCMが大変な勢いで発展変化してきたことによる。

    SCMは現在でも変化し続けており、その全貌をとらえるのは容易なことではない。筆者

    は、日本型の生産方式をベンチマークに経営改革を行った結果がSCMと考えていたが、そ

    れは多くのきっかけの一つにすぎなかった。本稿においては、複雑なSCMの根幹であるマ

    ス・カスタマイゼーション、モジュール化、ポストポーンメントについて考察する。

    2.SCMの定義

    SCMとは、研究対象となるのかさえ初めは定かではなかった。ロジスティクスの延長線

    上でとらえてよいかが問題となった。

    先ずCLM(CouncilofLogisticsManagement,1992)によるロジスティクスの定義を記 しておこう。

    「原材料、過程内の在庫、完成品、そして関連した情報の効率的でコスト効果のある流通

    と保管を計画し、実行し、統制する過程である。それらは始点から消費点まで流れており、

    顧客の要求に合致するという目的を持つものである。」])

    それに対してSCMの定義は次のようになる。

    「SCMとは顧客への価値を付加する製品、サービス、そして情報を提供するエンF・ユー

    ザーから最初のサプライヤーまでのビジネス・プロセスの統合である。」アメリカ競争力委

    員会(TheInternationalCenterforCompetitiveExcellence,1994)2)

    「SCMとはエンド・ユーザーから最初のサプライヤーまでの重要なビジネス.プロセス

    であり、それらは顧客と他の利害関係者に価値を付加する製品、サービスそして,情報を与え

    るものである。」(TheGlobalSupplyChainForum,1998)3)

    「伝統的なビジネス機能や戦術のシステマティックで戦略的調整であり、特定企業内にお

    けるビジネス機能やサプライチェーンにおける機能を横断したものである。それは個々の

    企業やサプライチェーン全体の長期的成果向上という目的をもってなされる。」(メンッアー

    ら)4)

    オペレーションレベルでは、SCMを上記とは違ったとらえ方をしている。

    「不確実性の高い市場変化にサプライチェーン全体を機敏(アジル)に対応させ、ダイナ

    ミックに最適化を図ること。」藤野直明5)

    SCMの優れた点は、在庫コストを最小にしたうえで売り逃しを回避できることである。

    例えば、①資材調達→②製造→③販売の3つの活動がサイロ的に独立していた場合、各々の

    効率のばらつきは、コスト増大となって跳ね返ってくる。さらに情報伝達の間違った方法

    は、ヴィルウィプ効果を発生させる。6)ヴイルウィプ効果とは、流通の川上に向うにつれて

    大きくなる情報劣化のことであり、不良在庫の原因と考えられている。①②③の活動がチェー

    ンとして連動したものがサプライチェーンであるが、基本的に情報は相互にオープンでチェー

    -32-

  • サプライチェーン・マネジメントにおける3つの戦略(知念肇)

    ン全体の最適化が重要視される。しかし、SCMはこれまで連動できなかった以下に述べる

    3つの戦略を連動させ、同期化を実現したところに評価すべき点がある。

    3.1980~90年代

    1980年代、市場は成熟し、消費者のニーズは多様となっていたが、それに対して従来の販

    売方法は限界に達していた。顧客満足を得るためにはどのような戦略が可能か企業の模索が

    始まった。買う意思があっても欲しいと思うような商品がないという課題が見つかっていた。

    様々な予測技法が開発されたのであるが、確実なのは不確実という事実だけといわれる現実

    の前には無力であった。

    そのような状況で、市場戦略における改革がマス・カスタマイゼーション、生産における

    改革がモジュール化であり、物流における改革がポストボーンメントであったと考える。図

    表1で見るようにマス・カスタマイゼーション、モジュール化、ポストポーンメントの3戦

    略は、同期化しベストな統合戦略を生み出すものであった。

    図表1戦略概念図

    市場戦略

    物流戦略 生産戦略

    顧客の注文に合わせて生産すれば売り逃しはなくなるが、コストが高くなる。 マス・カス

    夕マイゼーションは注文生産を大量生産と同じコストでおこなおうというものである。それ

    には、生産における改革と物流における改革が必要であった。SCMはサプライチェーンの中

    で参加企業が連動し、活動が同期化していたために有効となったのであるが、市場戦略、生

    産戦略、物流戦略の3つを情報化を軸に組織の壁を乗り越えて実現したと言える。

    -33-

  • 琉球大学・經濟研究(第80号)2010年9月

    4システム

    図表2主な生産管理システム

    開発年代

    図表2のような生産管理システムは、SCMにおおきく影響したが、その中でもウォルマー

    トのEDLP(everydayLawprice)という低価格戦略を成功させたのが有名である。ウォ

    ルマートの成功は、大量仕入れ、大量販売に加え、ロジスティクスの改善に特徴づけられる。

    「米国大手リテイラーの物流コストは3~5%であるが、ウオルマートはロジステイクス

    を重視し効率的な店舗展開で物流コストを2%以下に抑えることで低い粗利益率でも高い経

    常利益を得ることに成功している。」7)

    1983年には、2,400万ドルを投じて人工衛星を打ち上げ、迅速なデータ処理ができるよう

    にした。SCMの絶えざる進化に取り組んだのが同社飛躍の理由といわれるが、その特徴は

    取引をしているサプライヤーとの関係強化に表れている。例えば、同社とP&Gとの関係は

    次のように紹介されている。

    「P&Gとウォルマートは、商品受け渡しを行うだけの従来の取引関係をやめ、双方の経

    営資源、情報等の共有を通して協労することにした。」8)

    このような関係強化は、CPFRというシステム開発に結実している。CPFRとは、流通業

    者とメーカーが協力しながら(collaborative)、商品の計画(planning)、売上予測(forecas

    ting)、補充(replenishment)をおこなうビジネスプロセスである。それにより余分な在庫

    の削減と店頭での品切れ防止が可能となる。

    図表3を見てみると、予測発注作業は、次のように自動化されている。例えば、商品Aは、

    許容範囲100に対し、予測差異は60であるので、製造側は自動的に補充してよい。一方商品

    Bは、許容範囲1,000に対し予測差異は2,000であるので、この商品については協議をするこ

    とになる。

    図表3 商品発注の例

    出所:NCRホームページの資料に筆者加筆