地域・都市計画 第2回 都市の存在理由と都市規模の理論 N6章:なぜ...

52
都市と交通のシステム 都市の存在理由と都市規模 都市群のシミュレーション 奥村

Transcript of 地域・都市計画 第2回 都市の存在理由と都市規模の理論 N6章:なぜ...

都市と交通のシステム

都市の存在理由と都市規模 都市群のシミュレーション

奥村 誠

Q:なぜ都市は存在しているのか 都市とは?

– 人々が集中して日常生活を営む場⇔多自然地域

– 人口の集中,商工業,業務的土地利用,交通

– 都市地域(Urban Area)⇔行政区域としての「市」

• 都市圏を単位とする把握 – 米国の都市圏(標準大都市統計圏…)

– 日本の都市圏(総務庁統計局)

– 朝日新聞社【民力】における都市圏

– 金本・徳岡(2002)都市雇用圏(UEA) 278 • 中心都市:DID人口が1万人以上

• 通勤圏 :中心都市への通勤率10%以上

日本の都市圏の現状

都市の形成要因把握の必要性

• なぜ,小規模な都市圏から,大規模な都市圏まで,様々な規模の都市が存在するのか?

• 政府の国土政策の評価

– 大都市の人口集中を抑制し,地方都市を育成する施策を実施 • 新産業都市,工業整備特別地域(1960年代)

• テクノポリス法,頭脳立地法(1980年代)

• 地方都市拠点法(1990年代)

– 政府(公共部門)が政策的に「都市をつくる」ことが可能なのか?

6-1 都市の形成要因

• 経済学における形成要因

– 資源の不均等分布

– 交通費用の存在

– 規模の経済

– 集積の経済

• 相互に関連して作用する

(1)資源の不均等分布

• 移動不可能な資源が不均等に存在する場合

– 鉱山自体は移動できない→鉱山町

– 宗教上特定の地位にある寺社→門前町

– 移動できない政治的資源→政治都市

• 都市ができるきっかけになる

– これだけでは大きな都市になるとは限らない

– 生産拠点が立地するかどうか?:交通費用

(2)交通費用の存在 • 原材料の産出地と製品の消費地

– 場所により生産コストが変わらない場合

– ウエイトルージング産業(製鉄・石油精製・製材)

輸入港

(2)交通費用の存在 • 原材料の産出地と製品の消費地

– 場所により生産コストが変わらない場合

– ウエイトゲイニング産業(ビール,組立産業)

輸入港

(2)交通費用の存在

– 交通結節点

(3)規模の経済

• 費用逓減的生産技術 – 平均費用が生産量に応じて低下 – 企業は生産拠点を集約して立地させると有利 – CF:なぜ2つ以上の都市が存在するのか?の説明

(4)集積の経済 一企業を超えた集積がもたらす効果

• 地域特化の経済

– 関連性の深い複数の企業が集中すると,交通費や取引費用が節約できる.

• 都市化の経済

– 直接つながりのない企業であっても,多種多様な産業や人材が集中することによりもたらされるメリットがある

– より仕事の内容にあった人材が確保できるなど

(4)集積の経済 地域特化の経済

– 関連性の深い複数の企業が集中すると,交通費や取引費用が節約できる.

(4)集積の経済 都市化の経済

• 直接つながりのない企業であっても,多種多様な産業や人材が集中することによりもたらされるメリットがある. – 多様な人材の集中:専門性の高い人材の確保

– 消費市場の大きさ:多品種少量生産

– 消費者は,より多くの商品バラエティ

– 多様な産業の集中:景気変動リスクの分散

• Jacobs(1961) 人々の交流によるアイデア,技術の開発可能性を指摘

• 集積は自動的には達成されない

14

産業・人を引きつける吸引力

• 産業にとって

– 市場,情報,専門サービス,高度な労働

都市の魅力にはどんなものがあるか?

良循環ができると,

どんどん強まる。

産業集積

人口集積

雇用 商品 市場 労働力

人口にとって

–職の多様性,商品・サービスの多様性

(4)集積の経済 集積の外部性:囚人のジレンマ

– 集積の外部性は,自動的には達成されない

B移動 B不動

A移動 +25,+25 -25,+50

A不動 +50,-25 +0, +0

6-2.地方都市整備政策

(1)19世紀型都市の形成メカニズム

• 交通費用が高い産業

– 交通インフラの位置を中心に立地

• 交通インフラの整備+立地税制による誘導

– 新産業都市,工業整備特別地域

– 生産拠点の地方分散にある程度の効果

6-2.地方都市整備政策

(2)現代の都市の形成メカニズム

• モノに対する交通費用の低下 – 商品の高付加価値化

– 高速道路の整備とモータリゼーションの進展

• モノの輸送の少ない第3次産業の比重上昇 – 都市化の経済の重要性が増す.

– 公共部門によるコントロールが困難に

– 人材の集積,企業の集積を直接コントロールできない

6-2.地方都市整備政策

(3)集積の不経済

– 消費者・企業の集積→環境汚染・混雑

– 一つの大都市が他を飲み込んで成長しない理由は?

都市規模の理論 • 都市規模を決める2つの外部性

– 集積の経済 • 人や諸機能の空間的な集中

→取引費用の節約,情報交換の機会増大

– 集積の不経済 • →混雑現象

20

集中の限界の原因(排斥力)

• 通勤距離の増加

• 混雑や公害

• 自然の減少

• 地代・家賃の上昇

なぜ全ての人が一つの都市に集まらないのか?

0

1 0

2 0

3 0

4 0

5 0

6 0

7 0

0 5 0 0 1 0 0 0

他 道 県

東 京 圏

関 西 圏

東 京

神 奈 川 埼 玉

千 葉

奈 良

滋 賀 京 都

大 阪

北 海 道

兵 庫

愛 知

男 性 の 平 均 通 勤 時 間 ( 分 )

都 道 府 県 の 人 口 ( 万 人 )

21

吸引力と排斥力のバランス

都市を発展させるには?

都市間の交通整備(新幹線)による発展を考えよう

産業集積

人口集積 通勤コストの増大

都市間交通

雇用 商品 市場 労働力

22

都市間交通と万有引力

• 大きい都市の間の交通は多い

人口i・人口j 距離α

交通量 ij ∝

近い都市との間 の交通は多い

ニュートンの

万有引力の法則と似た形

No.23

No.23

「対数」を使って、「重力モデル」の あてはまりを確認しよう

• 両辺の対数(log)をとると、一次関数になって

人口i・人口j 距離α

交通量 ij ∝

交通量 ij 人口j ∝人口i/距離α =定数×距離-α

交通量 ij 人口j =log定数-α log距離 log log所要時間、 log運賃

log一般化費用

なども 試してみる。

時間と運賃を合わせたもの

No.24

No.24

東京都・他県間の 仕事・観光目的交通量(2005年)

一般化費用(運賃+時間×37円/分)

北新

長静

-4

-3.5

-3

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

1000 10000 100000

一般化費用(円)

業務

交通

量/

人口

の対

北海道東北

関東

中部

近畿

中四国

九州

宮秋

岩青

北新

長静

-4.5

-4

-3.5

-3

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

1000 10000 100000

一般化費用(円)

観光

交通

量/

人口

の対

北海道東北

関東

中部

近畿

中四国

九州

仕事目的 観光目的

秋田・青森に比べ、

福島・宮城・山形が少ない

No.25

No.25

宮城県・他県間の 仕事目的交通量(2005年) 形 福 岩

秋 青

北栃

茨群

千埼新

-7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

10 100 1000 10000

距離(km)

業務

交通

量/

人口

の対

北海道東北

関東

中部

近畿

中四国

九州

1

青秋

岩福

埼千

群茨

栃新

-7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

10 100 1000

所要時間(分)

業務

交通

量/

人口

の対

北海道東北

関東

中部

近畿

中四国

九州

青秋

岩福形

千神

群茨

栃 新

-7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

1000 10000 100000

一般化費用(円)

業務

交通

量/

人口

の対

北海道東北

関東

中部

近畿

中四国

九州

一般化費用(運賃+時間×37円/分)

所要時間より一般化費用の影響が強い

→所要時間が短縮しても高ければ使わない

26

業務交通と生産活動

• 企業が業務交通を行う理由を考えると?

–他の地域との交通により,知識を獲得

• 労働の生産性は知識量に依存する

企業が交通量を効率的に決めると,

重力モデル

27

都市内の通勤と地代

• 都市は円形で全住宅地は一定面積と仮定

• 自由に居住地を決めて良いとすると…

通勤費

通勤費の安い都心 の近くの人気が高まる

地代が上昇する

どの場所も通勤費+地代は一定となる

地代

28

都市内交通と定積分

• 都心から距離(x~x+ dx)の土地面積2πxdx

L

dx

x

総地代は,

総通勤費用は,

総面積=人口より,

総通勤費用は

29

各都市の実質所得

• 各都市での企業の利潤と,地代収入を住民で等しく配分し,通勤費と地代を差し引く.

若干の計算により,

30

所得格差と人々の移動

• 人が自由に移動すると

所得格差がなくなる

31

以上を数式にしてまとめると

総効用水準 1806

総通勤距離 11643 12147

1903

企業の生産額に応じ、

従業者の賃金が変化

人口が都市間を移動

各都市には他都市との

コミュニケーション(人流)、

都市内を通勤する従業者により

生産活動を行う企業が存在

既存の都市群システムモデル

このモデルを利用して

整備過程をシミュレーション

1

①経済性ルール型の整備過程

3 経済性ルール

(1) (2) (3) (4) :新しく整備し たリンク

:既に整備が終 了したリンク

1リンク整備が終了する毎に

次の整備の経済性を評価し、

その中で経済性が最大となるリンクを順に整備

中心部から整備が行われていく

戦略的ルールの7パターン

4

②大環状型

⑧首都型 ⑦地方都市型 ⑥放射・環状型

⑤放射状型 ④小環状型 ③中環状型

戦略的ルール

整備の初期段階で経済性によらず整備リンクを選択

:戦略的ルール による整備

これ以降は経済性ルールを用いて整備

1700

1800

1900

2000

2100

2200

2300

0 4 8 12 16 20 24 28

�® �õ �����N ��

�À�¿���ø�p����

20リンク

2181

2190

2186

総効用水準と整備可能リンク数 5

①経済性ルール型 ③中環状型

⑦地方都市型

16リンク

3(20)リンク

リンクの整備がマイナスの影響を与える場面

⑥放射・環状型

5(27)リンク 2171

中期的③中環状型・⑦地方都市型で望ましい結果

初期的①経済性ルール型

1700

1800

1900

2000

2100

2200

2300

11000 12000 13000 14000 15000

���Ê �Î ���£

�À�¿���ø�p����

環境負荷への影響 6

中期的

⑦地方都市型

長期的

⑥放射・環状型

①経済性ルール型

③中環状型

(環境負荷)

(経済性)

大きい 小さい

大きい

小さい

中期的⑦地方都市型・ 長期的⑥放射・環状型で望ましい結果

地球環境にも望ましい国土構造は?

• 都市の人口が増えると住宅地が郊外に広がるため,通勤距離が伸びる.

毎日の通勤の車が出すCO2が増える.

• 少数の大都市に人口が集中する一極集中型ほど, 地球環境には不利.

国土計画の力・限界と地球環境への影響を確かめながら,慎重に交通網の整備方針を考える必要がある

結論

適切な事業採択ルールの選択

今後の課題

物流の考慮

実際のデータを用いた分析

7

戦略的ルールの中には効果があるものがある

効果を期待する時期

何を重要視するか(効用水準,環境負荷)

により望ましい整備パターンは異なる

現代の国土に残る秘密とは?

• 誰も仕組んでいないのに,法則性がある

都市圏人口2000

0

500000

1000000

1500000

2000000

2500000

3000000

3500000

4000000

0 200 400 600 800

人口の順位

順位 都市圏 2000年人口

1 横浜都市圏 3426651

2 大阪都市圏 2598774

3 名古屋都市圏 2522805

4 札幌都市圏 1843146

5 福岡都市圏 1582295

6 神戸都市圏 1509030

7 京都都市圏 1496782

8 広島都市圏 1306696

9 川崎都市圏 1249905

10 仙台都市圏 1176362

11 北九州都市圏 1144251

12 さいたま都市圏 1024053

13 熊本都市圏 963084

14 千葉都市圏 934200

15 堺都市圏 829636

法則性を見るために両対数をとると

都市圏人口2000

10000

100000

1000000

10000000

1 10 100 1000

人口の順位(対数)

都市

圏の

人口

(対

数)

Zipfの法則

中国東部地域の都市

日本の2000年の都市圏人口

Zipf の法則(単語の出現頻度Dickens)

九州産業大学国際文化学部「物理教室セミナー」HP(2005.2.26)より

http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/J/nagai/seminar/hijikuro2.ppt

自然界におけるZipfの法則

グーテンベルグ=リヒターの法則

Zipfの法則

Web サイトへの通信量の分布

Distribution of traffic referred to useit.com from other websites in a 3-month period.

Blue dots are referrals from search engines; gray dots are all other referrals; red line is

best-fit Zipf curve

Note use of a double-logarithmic scale. Jakob Nielsen‘s Website

九州産業大学国際文化学部「物理教室セミナー」HP(2005.2.26)より

http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/J/nagai/seminar/hijikuro2.ppt

Zipfの法則

都市人口分布が決まっているなら

東京へ人口がどの程度集中するか,

100万人の人口を持てる大都市の個数,

10万人の人口を確保できる都市の数 などは,Zipfの法則で決まっているなら・・

「国土計画」で地方都市を活性化しようとするのは,無駄な努力なのでは?

国土計画は無駄な努力か?

地理情報システムMANDARA HP

http://www.mandara-gis.net/

1985年から1995年の市町村別人口の増減率

人口増加には高速道路が必要?

人口増加率 98

年/75

国土交通省:http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha01/15/150621/150621_03.pdf

いすの大きさと数は決まっているが,誰が座るかは未決定. 高速道路は「いす」を確保するための条件かも・・・・・

中心都市から高速道路ICまでの所要時間(分)

人口増加には高速道路が必要?

• 高速道路ができたから,人口が増えたのか?

• 人口が増えそうで,利用者が増えそうなところに高速道路を作っただけか?

因果関係のチェックが必要

・利用者の多い場所にしか

高速道路(新幹線)を作れない場合

・好きなところを選んで

高速道路(新幹線)を作れる場合

出来上がる国土構造(都市配置)の違いを調べる

(2)都市規模の決定 • 都市とその他の地域の均衡

1都市と地方部との均衡(A,A‘), 均衡の安定性

(2)都市規模の決定 • 複数都市による都市規模の均衡

1都市よりも2都市にした方が,高い効用水準→過大都市

(3)遷都政策 • 都市規模に関する自動調整機能→2都市の条件

新都市の規模が P”より小さいP1である場合. →都市1から都市0への人口移動→都市1の消滅

(3)遷都政策 • 新都市の都市規模への介入の効果

新都市の規模が P”より大きいP2である場合. →都市0から都市2への人口移動→2都市の形成→地方との調整