東京スクエアガーデン(TOKYO SQUARE GARDEN)の空調...
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── 実 施 例 ──
ヒートポンプとその応用 2013.10.No.86─ 11 ─
■キーワード/複合施設・環境計画・省エネルギー・冷凍機・性能評価
清水建設㈱ 設計本部 設備設計部2部 小 坂 千 里
東京スクエアガーデン(TOKYO SQUARE GARDEN)の空調設備計画
2.建築概要建築名称 東京スクエアガーデン所 在 地 東京都中央区京橋3丁目建 築 主 京橋開発特定目的会社 第一生命保険㈱ 片倉工業㈱ 清水地所㈱ 京橋三丁目特定目的会社 ジェイアンドエス保険サービス㈱プロジェクトマネージメント業務受託会社 東京建物㈱
敷地面積 8,131.39㎡建築面積 5,627.56㎡延床面積 117,460.96㎡階 数 地上24階,地下4階,塔屋2階構 造 鉄骨造用 途 事務所,店舗,診療所,集会所, 展示場工 期 平成22年9月〜平成25年3月都市計画・基本設計・監修: 日建設計・日本設計委託業務共同企業体実施設計・監理: 清水・大成(仮称)京橋3-1 プロジェクト設計監理共同企業体施工:清水・大成(仮称)京橋3-1 プロジェクト新築工事共同企業体 フロア構成として,高層7階〜24階がオフィスである。低層6階は建築・設備にかかわる環境技術を有する企業等最新の省CO2技術を展示し,一般の見学者や団体に公開する環境ステーションと中央区の環境情報施設を配置している。5階は貸会議室,4階はクリニック,3階には子育て支援施設,また地下1階〜3階には飲食・物販を兼ね備えた商業施設という構成である。(写真-1・図-1)
1.はじめに 東京スクエアガーデンは,東京駅からほど近い中央通りと鍛冶橋通りの交差点に位置する計画地に,都市再生特別地区の都市計画決定を受け計画した。この地域の新しいランドマークとなる大規模複合ビルである。 本プロジェクトのテーマは地域全体を含めたCO2削減推進であり,都市における多面的な環境対策として,「京橋の丘」,「京橋環境ステーション」,「CO2削減モデルビル」を整備し都市再生への貢献に取り組んでいる。 本報では,環境モデルビル実現のための取り組みと空調設備計画について報告する。
写真-1 建物外観
ヒートポンプとその応用 2013.10.No.86─ 12 ─
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などである。 省CO2先導事業の対象として採択された技術項目について記載する(図-1)。さらに本建物では,エネルギーの運用管理を重点項目に置いたエネルギーの見える化・BEMSの拡充により,運用時を念頭に置いた建物としてのさらなる省CO2をめざした計画としている。図-2にそのプロセスを記述する。
3.環境モデルビルとしての取り組み 本建物は東京都の都市再生特別地区の都市計画決定を採択するとともに国土交通省「平成22年第1回住宅・建築物省CO2先導事業」として採択を受けた。東京駅に隣接した京橋3丁目地域の省CO2モデルビルとして地域の拠点であるとともに,まるごと省CO2ビルをめざしている。 事業全体のCO2排出削減率は補助金申請時,建屋全体として42%,オフィスは45%となっている。 具体的取り組みとして,A:京橋環境ステーションの整備① 環境ショールーム・環境技術の展示・公開による啓蒙・見える化② 中央区と連携した省CO2普及の啓発B:省CO2テナントモデルビルとしての整備① ハイブリッド外装② 省CO2型熱源・設備システム③ 再生可能エネルギーシステム④ インターフェースを用いたテナント連鎖型省CO2排出量管理サービス
C:京橋の丘整備等大規模緑化システムによるクールスポットの形成
BEMS(ビル管理システム)の導入
断熱・遮熱性の高い外装
太陽光システムの採用
自然通風・外気冷房システム
LED照明の採用
温度成層型蓄熱システム蓄熱槽
貫通通路
京橋の丘
外装自然換気
排気ボイド
外気導入口
大屁・Low-eガラス
太陽光発電システム 太陽光発電システム
排気ボイドを利用した自然換気システム
屋上緑化
京橋環境ステーション
高効率設備機器
設備システムにおける省CO2技術・ファン・ポンプのインバータ制御・高効率,IPMモーターの採用・事務所のCO2濃度による外気導入量 制御・VVVF制御,往返温度の大温度差・駐車場のインバータ制御
環境指標CASBEE(簡易版)Sランク(2008年版)
東京都建築物環境計画書制度 段階3相当
約49.9%(事務所)
約46.2%(建物全体)CO2削減予測量
まるごと省CO2モデルビル
PAL:169MJ/㎡・年
Low-eガラス
太陽光追尾電動ブラインド
大庇1.8m
地中熱(自然エネルギー)利用システムの採用
高効率熱源の採用(インバータターボ冷凍機)
省CO2先導事業において補助事業の対象として評価された項目
・テナントサービス機能の採用による 意識付け,啓蒙活動
・事務所の空調課金システム (熱計量による課金)
図-1 省CO2モデルビルとしての整備
給気ボイド
BEMS(ビル管理システム)の導入
断熱・遮熱性の高い外装
太陽光システムの採用
自然通風・外気冷房システム
LED照明の採用
温度成層型蓄熱システム蓄熱槽
貫通通路
京橋の丘
外装自然換気
排気ボイド
外気導入口
大屁・Low-eガラス
太陽光発電システム 太陽光発電システム
排気ボイドを利用した自然換気システム
屋上緑化
京橋環境ステーション
高効率設備機器
設備システムにおける省CO2技術・ファン・ポンプのインバータ制御・高効率,IPMモーターの採用・事務所のCO2濃度による外気導入量 制御・VVVF制御,往返温度の大温度差・駐車場のインバータ制御
環境指標
CASBEE(簡易版)Sランク(2008年版)
東京都建築物環境計画書制度 段階3相当
約49.9%(事務所)
約46.2%(建物全体)CO2削減予測量
まるごと省CO2モデルビル
PAL:169MJ/㎡・年
Low-eガラス
太陽光追尾電動ブラインド
大庇1.8m
地中熱(自然エネルギー)利用システムの採用
高効率熱源の採用(インバータターボ冷凍機)
省CO2先導事業において補助事業の対象として評価された項目
・テナントサービス機能の採用による 意識付け,啓蒙活動
・事務所の空調課金システム (熱計量による課金)
給気ボイド
図-1 省CO2モデルビルとしての整備
BEMS
空調 電力 照明
京橋3丁目
省CO2モデルビルとして地域の拠点
京橋3丁目の特性にあったスマートエネルギー・ピークカット
技術の導入
パッシブ手法
⦆自然エネルギー再生利用エネルギー
省CO2設備技術の導入
図-2 省CO2半減へのフロー
テナントへのインターフェースの構築(見える化および学習機能による情報提供)
インターフェース機能 テナントへのインターフェース中央監視システム
テナント管理者
ビルユーザA
ビルユーザB
ビルユーザC
インターネット
フィードバック・性能検証
・設定温度・運転モード
・環境情報(自然換気の可否・降雨 表示等)
・エネルギー消費量
・ベンチマークに対する テナントへの意識づけ 機能
・お知らせ(イベント機能)
テナントサービスサーバ
図-2 さらなる省CO2への取り組みフロー
ヒートポンプとその応用 2013.10.No.86─ 13 ─
── 実 施 例 ──
熱源側冷水 5℃〜15℃,温水45℃〜35℃ 2次側冷水 7℃〜17℃,温水43℃〜33℃ 熱源と水蓄熱槽は1対1の組み合わせとし,蓄熱槽以降の2次側は低層系統(地下4階〜6階)と高層系統(7階〜24階)に分け各々熱交換器を設置し,負荷側に送水している。また蓄熱槽のメンテナンス時および緊急時対応として蓄熱槽を介さずに負荷側に送水可能な直送回路を設置している。 改良もぐり堰を利用した水蓄熱槽は1/16の縮尺による模型を作製し,温度成層状況,デイストリビュータ形状による死水域の確認を実験により行った。(写真-2)
水蓄熱槽の効率は計量による放熱量/製造熱量をデータとしてモニタリングできるようBEMSにより管理可能なようにしている。 地中熱ヒートポンプは蓄熱槽を介さず,長時間の運転が予想される低層部(商業系統)のプレクール・プレヒートを目的に利用し,再生エネルギーシステムとしてのメリットを引き出す計画としている。 地中熱利用採熱チューブ打設位置は,南面・南西面にSMW壁打設に併せてUチューブを平面上約4mのピッチで24系列・深度100mを建屋周囲に配置し建屋根切前に先行打設を行った。(図-4,写真-3・4) Uチューブは地盤面約2.5mの深さを横引きし,地下熱源機械室に導き地中熱交換用チラーに接続している。 設計時地中熱による採熱量は,建屋深度30mまでは30W/m,深度30mから100mまではおおむね60W/mを見込んでいた。
4.空調設備計画 計画・設計にあたり,① 地域性≪エコシテイー中央区の実現≫に向けた活動支援② 環境条件→水脈の豊富さ・超高層の特性を生かす③ 複合用途である建築形態のため→大型かつ高効率機器導入を行いやすいを前提とし,個々の省CO2技術の導入をシミュレーションによる解析や模型実験などにより検証を行った。下記に概要と併せて紹介する。4-1 熱源システム・搬送システム 本建物の熱源は全電化方式を採用しており,① 高効率熱源の採用(インバータターボ冷凍機の採用)② 改良もぐり堰型を利用した温度成層型水蓄熱槽の採用③ 地中熱利用による再生エネルギー熱源システム④ 搬送系統ポンプの変流量方式(インバータ制御)⑤ 搬送系統ポンプのIPMモータの採用⑥ 冷水・温水の往・返り温度の大温度差(10℃)等を採用している。図-3に熱源フローを示す。
主要機器 冷 熱 源 インバータターボ冷凍機
500USRT×2台 冷 温 熱 源 水熱源ヒートポンプスクリューチラー 662USRT×2台 水 蓄 熱 槽 改良もぐり堰型躯体ピット利用 1,150㎡×4 合計有効容量 4,600㎡ 地中熱利用 冷温採熱用Uチューブ24系列
×深度100m 地中熱利用ヒートポンプチラー
130kW×1台
冷却塔
冷却水
熱源水
地中熱コイル
冷却塔
<凡例>
ヒーティングタワー
ヒーティングタワー
熱源水
インバータターボ冷凍機(500RT)
インバータターボ冷凍機(500RT)
水冷ヒートポンプスクリューチラー(662RT)
水冷ヒートポンプスクリューチラー(662RT)
地中熱利用ヒートポンプチラー
冷却水熱源水冷水温水冷温水
冷水槽①1,150m3
冷水槽②1,150m3
冷温水槽①1,150m3
冷温水槽②1,150m3
以降,低層系統の2次側へ接続
高層系統熱交換器
低層系統熱交換器
図-3 熱源フロー図図-3 熱源フロー図
①
高温槽
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
スチロール板 10㎜ ディストリピューター
第1槽
900㎜
450㎜
第2槽 低温槽
写真-2 水蓄熱槽模型実験(1/16模型相似側は無視)
ヒートポンプとその応用 2013.10.No.86─ 14 ─
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合24年と試算している。 また地中熱利用空調は地中熱温度をUチューブの打設深度ごとに表示・データとして蓄積するとともに冷却水温度の計測を行うことにより,システムCOP値としてBEMS上に管理・評価ができるように性能評価シートとして作成している。 この評価を行うことにより地中熱の回復率,利用による効果を運用段階にて評価・チューニングしていく予定である。4-2 オフィスゾーンの空調設備計画 7階〜24階のオフィスゾーンは1フロアあたり専有部で約3,500㎡,共用部を併せると約4,500㎡と広大な面積を要する空間である。 テナント設定区画は6ゾーン/フロアであり,ゾーニングに併せて空調機を6台/フロア設置している。(図-6)
建築的(パッシブ的)省エネルギー手法としては外周全面に大庇(約1.8m)を配置し,窓ガラスはLow-Eガラスを採用している。さらに太陽光追尾ブラインドを設置とともに高断熱化等いわゆるハイブリッド外装とすることでペリメータの熱負荷軽減に大きく寄与し,試算上PAL値:169MJ/㎡・年(事務所基準値:300MJ/㎡・年)を得た。 また自然エネルギー利用として外周部に手動の換気ホッパーを設置し,自然換気用の外気取入を行っている。空調方式はインテリアユニット+ペリメーターユニットで1台の空調機の構成となっており冷水・温水4管式である。またインテリアはVAVによりゾーンごとに制御されておりVAVの受持制御面積は約50㎡強(一部約100㎡)ときめ細かいゾーニングとしている。
性能検証のため,建物建設中に打設したチューブの地下熱物性値と地中熱交換量の把握のため,サーマルレスポンス試験(TRT)を行った。 試験では敷地の地下水脈にも恵まれ熱交換量として約80W/m程度の交換量が見込まれる結果を得て,試算を上回る結果となった。(図-5) 地中熱利用設備による回収年数は補助金を考慮した場
SA
SA
SA
EA EA
SA
SA
SA
65,6007,200
:OAボイド(6カ所):EAボイド
空調ゾーニング:6ゾーン 空調機:6台
ペリメータ 3ゾーンインテリア 11ゾーン
ペリメータ 1ゾーンインテリア 9ゾーン
インテリアVAV面積50㎡程度
ペリメータ 2ゾーンインテリア 9ゾーン
68,400
7,200
図-7 オフィスゾーンの空調設備計画図-6 オフィスゾーンの空調設備計画
:地中熱チューブ打設位置
敷地南面配置本数:100m×10本
敷地南面配置本数:100m×14本
※地中熱交換器設置工事施工時GLは-2.5m
図-5 地中熱チューブ配置図
地中熱ヘッダ位置
図-4 地中熱チューブ配置図
写真-3 地中熱用架橋 ポリエチレン管
写真-4 地中熱ロッド 打設状況
平均して80W/mの熱交換量が期待される
温水循環試験結果(地中熱交換量)
地中熱交換量
10
9
8
7
6
5
4
3
23/30:00
3/40:00
3/50:00
3/60:00
200
180
160
140
120
100
80
60
40
地中熱交換量
単位深度あたり熱交換量
単位深度あたり地中熱交換量
図-6 サーマルレスポンス試験結果(地中熱交換量)
(kW) (W/m)
図-5 サーマルレスポンス試験結果(地中熱交換量)
ヒートポンプとその応用 2013.10.No.86─ 15 ─
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建築プラン上排気をセンターボイドから行った理由は,高層階における外周部の影響を受けさせない配慮と自然換気時のボイドによるベンチュリー効果による浮力の向上を狙いとしている。 シミュレーションでは排気ボイドの高さによる通風力を敷地状況と周辺気象データを加味しながら風圧係数を与えて解析を行った。 ボイド排気口高さは,屋上レベルと建物冠壁と同じ高さまで立ち上げた場合とを比較検証すると,冠壁まで立ち上げた方が最上階でのボイド内でも負圧が確保されるシミュレーション結果が得られるため,排気(EA)ボイド高さは屋上フロアレベル+11m程度まで立ち上げている。(図-8) また省CO2実現のために前述の自然換気を含めて外気冷房・ナイトパージシステムを導入し,一般空調時と併せて内部負荷・外気温度の状況により各モードが切り替えられるシステムを構築している。 外気冷房時は通常外気取入量(6㎥/㎡・h)の2倍の外気(12㎥/㎡・h)を導入している。 ペリメータ空調については,窓際の執務環境の改善をめざし,吹出方式の検討を基本計画段階より検証を行った。 冷暖房負荷計算結果とシミュレーション検証の結果,冷房時は天井面とペリカウンターの双方から送風,暖房時はペリカウンターのみからの送風を行うこととし,暖房時のコールドドラフトが解消されるように計画した。冷房時と暖房時の送風は,ダクト内のMD(モータダンパ)により切り替えを行っている。(図-9)
また空調機のファンおよび外気取入系統送風機にはIPMモータを採用している。 また一般空調時の外気取り入れは事務室内CO2濃度による外気取入制御を行っている。 外気取入は屋上から各フロアの空調機に合わせてコア部分に設けた6カ所の給気(OA)ボイドから取り入れている。排気はコア中央部に排気(EA)ボイドを形成し,屋上から排気を行っている。 自然換気時の取入外気は天井内レターンを利用し,事務所専有部から廊下へと流入させ,最終的には同じく排気(EA)ボイドから排気される仕組みである。(図-7)
▽4F
EAボイドを通じて屋上より排気
廊下
廊下
廊下
廊下事務室
事務室
事務室
事務室廊下
廊下
廊下
廊下 事務室
EAボイド
事務室
事務室
事務室
図-8 自然換気(外部からEAボイドへの空気の流れ)
MD(モーターダンパにて開閉可能ー中央監視より)
③吹抜を立ち上げ,ベンチュリー効果により通風力UP
②建物中性体の状況により,上階は強制排気も考慮
①手動開放換気口
図-7 自然換気(外部からEAボイドへの空気の流れ)
S
NNW
ボイドの高さによる通風力の解析
PFLレベル
冠壁まで立ち上げ
ボイド上部 SHORT
ボイド上部 LONG
S
NNW
風圧係数1.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10.0-0.1-0.2-0.3-0.4-0.5-0.6-0.7-0.8-0.9-1.0
風圧係数1.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10.0-0.1-0.2-0.3-0.4-0.5-0.6-0.7-0.8-0.9-1.0
図-9 自然換気シミュレーション予測図-8 自然換気シミュレーション予測
冬期のペリメータの温熱環境シミュレーション
温熱環境シミュレーション
温度
18.0 23.0 28.0
負荷に対応した吹出方式の選定
<冷房時>・夏期は天井吹き出しをメインとし, ペリメータの冷房負荷に対応する
<暖房時>・冬はコールドドラフト防止のため,ペリカウンター より吹き出す (ペリカウンターの吹き出しは,暖房負荷に対応した 風量とする:△t=15℃)
ペリカウンターのみの吹き出し
冷房時のエアフロー 暖房時のエアフロー
図-10 ペリメータの空調システム
温度
18.0 23.0 28.0
天井からの吹き出しのみ
図-9 ペリメータの空調システム
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── 実 施 例 ──
テナント入居者にはインターネット通信サービスよりユーザー階層権限(管理者,一般ユーザー1,2)を与えて各種操作設定をしていただくことになる。 機能としては,A:環境情報(外気温度・湿度・降雨情報) 自然換気の有効・無効判断,自然換気有効時の開閉時間,換気口閉め忘れ表示B:温度・照度の設定(基準温度の設定幅±3℃,照度50LX単位からの設定)C:空調運転時間の設定と履歴管理D:エネルギーグラフの表示(熱量・電力)E:ダイジェスト機能と順位づけである。(図-13) このうち入居されているテナント区画内のエネルギー消費量はオフィス全体の中で何位かという位置づけまで表示できるシステムとなっている。(任意選択機能) 特に省CO2技術の自然換気,温度・照度のチューニングをテナント利用者自体に許可させることとエネルギー使用量が自席で見える化することを対で行うことが狙いである。
4-3 エネルギーの見える化と省CO2の意識づけ 本建物ではさまざまな省CO2技術を計画段階から導入しているが,これらの効果を最大限に生かすためには運用・管理段階でのさらなる努力が必要不可欠である。 これには建物を運用するサイドと建物を利用するサイドの双方が結束していかないと成立しないと考える。 本建物では上記を主眼として,運用・管理する側としての中央監視設備によるBEMS機能の拡充と利用する側としてテナントサービス機能という新しいシステム・概念を導入した。中央監視のシステム構成図を記す。(図-10)
① BEMSの拡充 従来のBEMSの概念では「エネルギーの使用状況を一元的に把握し,時々の需要予測に基づいた最適な運転計画を素早く立案・実行でき,きめ細やかな監視制御により人手をかけることなく建物全体のエネルギー消費を最小化する」ことと要約されるが,本建物のように複合かつ大規模となるとデータが膨大であり,実際データの分析・改善・実行も煩雑となる可能性がある。 上記を解決するため,まず採用した省CO2技術をダイジェスト機能として特化した性能評価シートとしてまとめた(図-11)。さらに複合用途であることを加味し,エネルギー種別ごと・用途(フロア)ごとのエネルギー消費量またエネルギー種別のコスト状況をダイジェスト機能としてまとめることとし,一元管理のさらなる徹底と管理側での使いやすいBEMS機能とした。(図-12)② テナントサービス機能 本建物ではオフィステナント入居者自らが入居段階において省CO2・省エネルギーへの意識づけと実感を感じていただくため,テナントサービスシステムという新しい概念を導入して,エネルギーの見える化に留まらず,さらに一歩踏み込んで,自らが各種設定を変更することを可能とした。
熱源性能評価シート(ターボ冷凍機)
図-13 CO2技術性能評価シート
VWV(変流量)制御導入効果評価シート
蓄熱性能評価結果シート
基準階 電力量/冷水熱量低減評価シート
図-12 CO2技術性能評価シート
インターネット
大画面表示
ファイヤーウォール
FW別途工事
各オフィステナント
監視装置2台
BEMS装置2台
通常データの流れバックアップデータの流れ
S-HUB
各所
空調 受変電 照明 防犯
図-11 中央監視システム構成図
①データ サーバ
②中央監視装置
■監視機能■制御機能■データ管理機能
■日常保全管理機能■監視装置保全管理機能■テナント管理支援■エネルギー管理機能■データ出力機能
⑤テナントサーバ
ファイヤーウォール
⑤テナントサーバ③,④BEMS装置(機能統合)
■エネルギーの見える化■操作・設定■環境情報■履歴管理■お知らせ機能
図-10 中央監視システム構成図
エネルギー一覧
図-12 BEMS ダイジェスト機能
設備種別ごとのエネルギー消費一覧
用途ごと・フロアごとのエネルギー消費一覧
エネルギー一覧・コスト一覧
図-11 BEMSダイジェスト機能
ヒートポンプとその応用 2013.10.No.86─ 17 ─
── 実 施 例 ──
5.おわりに 今後運転状況によるBEMS性能評価シートの検証は自明の事,4-3で記載したインターフェース機能の妥当性について検証していく予定である。 さらなるCO2削減にはビルを使用する運用者・入居者の意識が取り組みの鍵となるからであると考えるからである。 最後に本建物を建設するにあたり,ご理解,ご指導,ご協力をいただきました関係者の皆さまへ,誌面をお借りし厚くお礼申しあげます。
ダイジェスト機能による意識づけ
通常
通常
有効中
降雨中 ◆テナントサービス画面
環境情報
・自然換気の開閉状況の確認・閉め忘れ防止機能
自然換気有効判断・降雨中 屋外で雨が降ると表示
・自然換気有効 自然換気が有効になると表示
自然換気ホッパー形状
自然換気ホッパー(開)
温度・照度の設定
環境情報の常時表示
テナントユーザにより温度・照度設定が可能
意識づけの表示
エネルギー消費量の表示
昨年度のデータ
本年度のデータ
ベンチマーク45%削減
ベンチマークに対する増減量
図-14 テナントサービス機能図-13 テナントサービス機能