マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御...

9
マイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C 言語に よる制御プログラムを作製することにより,センサやスイッチからの入力信号に応じた発光ダイオードの点灯制 御,直流モータの回転制御のための信号処理を行い,マイコンによるディジタル制御について理解を深める. 2. 原理 2.1 組み込み機器用マイコン マイコンとはマイクロコンピュータ(またはマイクロコントローラ)の略語で電化製品などを制御するために 組み込まれている超小型のコンピュータのことである.パーソナルコンピュータとは異なり,特定の機能を実現 するためのコンピュータで,例として携帯電話,自動販売機,テレビ,炊飯器などの組み込みシステムとして使 用されている.これらのシステムは従来電気的・電子的なロジックを使用していたが,1980 年代以降のコンピュ ータの発達により,ソフトウェア的にシステムの機能拡張や修正が可能になり,コストを削減できることから急 速に普及した.マイコンは最終的な製品が多岐にいたるため,様々な用途別に多くの種類と数が出回っている. 代表的なものとして米国ザイログ社の Z80,米国マイクロチップテクノロジー社の PIC,米国アトメル社の AVR日本ルネサステクノロジ社の SuperH H8 等がある. 中でも PICPeripheral Interface Controller)は,コンピュータと周辺機器の インターフェース制御を行うために開発されたワンチップマイコンであり, 他のマイコンよりも機能を絞っているため構造はシンプルで、小型・安価と いった特徴がある.しかし 20MHz の高クロック周波数で動作するものや複数 AD コンバータやコンパレータを内蔵しているものなど高性能な製品も存 在し,小規模の組み込み機器用としては最適と考えられる. 2.2 PIC16F84A PIC で多く書籍や Web で取り上げられている型番は 16F84A である.16F84A は,アナログ入出力は使用できな いものの,プログラミング次第で電源として必要な 2 つの ピン以外の全てをディジタル入出力として使用できるため, 多くの組み込み機器に使用することができる.また動作ク ロックも最大 20MHz であり,高速動作が可能である.今 回は,ソフトウェア開発手順を簡略化するため,入出力ポ ート A を入力,B を出力として取り扱う. 2.3 制御プログラムの開発 PIC が正式にサポートしているソフトウェア作製方法はアセンブラによるプログラミングである.しかし,ア センブラを容易に習得することは難しい.そこで正式にはサポートされていないが,多くのサードパーティによ 18 17 16 14 15 13 11 12 10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 PIC16F84A-20P 0315025 RA1 RA0 CLK1 CLK2 VDD RB7 RB6 RB5 RB4 RB3 RB2 RB1 RB0 VSS CLR RA4 RA2 RA3 1 PIC16F84A-20/P の外観 1 PIC16F84A-20/P のピン仕様 ピン名称 ピン番号 用途 RA0~4 17,18,1,2,3 入出力ポート A RB0~7 6,7,8,9,10,11,12,13 入出力ポート B VDD 14 電源端子 VSS 5 GND 端子 CLR 4 クリア端子 CLK1,CLK2 15,16 クロック入力端子

Transcript of マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御...

Page 1: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 1 -

マイコンを用いた信号制御

1. 目的

 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C 言語に

よる制御プログラムを作製することにより,センサやスイッチからの入力信号に応じた発光ダイオードの点灯制

御,直流モータの回転制御のための信号処理を行い,マイコンによるディジタル制御について理解を深める.

2. 原理

2.1 組み込み機器用マイコン

 マイコンとはマイクロコンピュータ(またはマイクロコントローラ)の略語で電化製品などを制御するために

組み込まれている超小型のコンピュータのことである.パーソナルコンピュータとは異なり,特定の機能を実現

するためのコンピュータで,例として携帯電話,自動販売機,テレビ,炊飯器などの組み込みシステムとして使

用されている.これらのシステムは従来電気的・電子的なロジックを使用していたが,1980 年代以降のコンピュ

ータの発達により,ソフトウェア的にシステムの機能拡張や修正が可能になり,コストを削減できることから急

速に普及した.マイコンは最終的な製品が多岐にいたるため,様々な用途別に多くの種類と数が出回っている.

 代表的なものとして米国ザイログ社の Z80,米国マイクロチップテクノロジー社の PIC,米国アトメル社の AVR,

日本ルネサステクノロジ社の SuperHや H8等がある.

 中でも PIC(Peripheral Interface Controller)は,コンピュータと周辺機器の

インターフェース制御を行うために開発されたワンチップマイコンであり,

他のマイコンよりも機能を絞っているため構造はシンプルで、小型・安価と

いった特徴がある.しかし 20MHz の高クロック周波数で動作するものや複数

の AD コンバータやコンパレータを内蔵しているものなど高性能な製品も存

在し,小規模の組み込み機器用としては最適と考えられる.

2.2 PIC16F84A

 PIC で多く書籍や Web で取り上げられている型番は

16F84A である.16F84A は,アナログ入出力は使用できな

いものの,プログラミング次第で電源として必要な 2 つの

ピン以外の全てをディジタル入出力として使用できるため,

多くの組み込み機器に使用することができる.また動作ク

ロックも最大 20MHz であり,高速動作が可能である.今

回は,ソフトウェア開発手順を簡略化するため,入出力ポ

ート Aを入力,Bを出力として取り扱う.

2.3 制御プログラムの開発

 PIC が正式にサポートしているソフトウェア作製方法はアセンブラによるプログラミングである.しかし,ア

センブラを容易に習得することは難しい.そこで正式にはサポートされていないが,多くのサードパーティによ

18

17

16

14

15

13

11

12

10

1

2

3

4

5

6

7

8

9

PIC16F8

4A-20P

031502

5

RA1

RA0

CLK1

CLK2

VDD

RB7

RB6

RB5

RB4RB3

RB2

RB1

RB0

VSS

CLR

RA4

RA2

RA3

図 1 PIC16F84A-20/Pの外観

表 1 PIC16F84A-20/Pのピン仕様

ピン名称 ピン番号 用途

RA0~4 17,18,1,2,3 入出力ポート A

RB0~7 6,7,8,9,10,11,12,13 入出力ポート B

VDD 14 電源端子

VSS 5 GND端子

CLR 4 クリア端子

CLK1,CLK2 15,16 クロック入力端子

Page 2: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 2 -

り開発環境が提供されている C 言語を用いてソフトウェアを開発する.本実験では,PIC 製造元のプログラム統

合開発環境であるMPLAB IDEと Custom Compiler Service製のコンパイラ PIC C Compiler(PICC)を使用する.なお,

PICCは C++には完全対応していないので注意が必要である.

 MPLAB IDE では,ソースプログラムの作成とコンパイルを行う.以下に MPLAB IDE によるソフトウェアプ

ロジェクトの作製手順を示す.

(1) デスクトップのMPLAB IDEアイコンをダブルクリックして起動する.

(2) 「Project」→「Project Wizard」を選択し,Welcome!画面が表示されたら「次へ」を選択する.

(3) ステップ 1の「Device」選択画面で「PIC16F84A」を選択する.

(4) ステップ 2の「Active Toolsuite」から「CCS Compiler for PIC12/14/16/18」を選択する.

(5) ステップ 3 の「Project Name」に適当な名前をつけ,「Project Directory」からプロジェクトを作成する

場所を選択する.

ただし,Project Nameと Project Directoryには全角文字は使用できないので注意すること.

(6) ステップ 4では何も行わず「次へ」を選択する

(7) 「Summary」画面で作成したプロジェクトの詳細を確認し完了ボタンを押す.

(8) 「File」→「New」を選択すると空のテキスト入力画面が作成される.

(9) 「File」→「Save as」で空のテキストファイルを保存する

(10) 画面左上に表示されている「プロジェクト名.mcw」のリスト上で「Source Files」を右クリックし「Add

Files」を選択する.

(11) 手順(9)で保存した Cソースファイルを選択する.

 以上の手順で,MPLAB IDE 上でソフトウェアを開発する準備が整う.次回以降,これらの手順を省くために

「File」→「Save Workspace」でプロジェクトを保存しておく.

2.4 Cソースファイルの作成

 C 言語によるソフトウェア開発手順は,通常のプログラミング方法と変わりがない.ただし,ソースの始めに

PIC 専用のヘッダーファイルを読み込んだり,特殊な設定を行う必要がある.信号処理もあらかじめ用意された

関数群があるのでそれらを利用すればよく,特に新しいことを覚える必要はない.信号処理を行う際によく使う

関数一覧は付録に掲載している.

 以下に,サンプルコードを示す.PICの信号処理は一般的に無限ループの中で行う.

// Sample 1

#include <16F84A.h> // PIC16F84Aの設定ファイルを読み込み

#fuses HS, NOWDT,PUT,NOPROTECT // PIC16F84Aの動作設定

#use delay(CLOCK=4000000) //外付けセラミック発振子の発振周波数

// メイン関数

void main()

{

Page 3: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 3 -

// 出力ポートの初期化

set_tris_b(0x00);

// 出力ピンの初期化

output_b(0x00);

while(1)

{

// PICの信号処理は無限ループ内で行う.

output_b(0xFF); delay_ms(300);

output_b(0x00); delay_ms(300);

}

}

2.5 ソースコードのコンパイル

 C 言語による制御プログラムの作成に続き,PIC へ制御プログラムを書き込むにはソースコードのコンパイル

を行う必要がある.ソースコードのコンパイルは F10 キーを押すことで実行される.コンパイルの際にエラーコ

ードが表示される場合があるので,コンパイルエラーが出なくなるまでプログラムの修正を行う.

 また,コンパイル時の警告として,

Warning 203 "「プログラムソースの場所」" Line 「行数」(1,1): Condition always TRUE

の行数が while(1)の部分に出るのは無視して良い.その他の警告は全て表示させないようにプログラムの修正を

すること.

 ソースコードのコンパイルが終了するとプログラムを保存したフォルダに「ファイル名.HEX」という PIC 書き

込みファイルが作成される.

2.5 PICへの書き込み

 コンパイルして作成された HEX ファイルを PIC へ書き込む.PIC への書き込みは秋月電子通商製の PIC ライ

タと書き込み用ソフトウェア AE-PICプログラマ V4を使用する.

(1) PICライタの電源を入れ,AE-PIC プログラマ Ver 4を起動する.

(2) デバイス選択から「PIC16F84A」を選択して,ライタへ F84をセットする.

(3) ZIFソケットのレバー側に ICの 9番,10番ピンがくるように F84を取り付ける.

(4) 「Hexロード」で作成した HEXファイルを読み込む.

(5) 「プログラム」で PICにプログラムを書き込む.確認のメッセージが表示されたら上書きを行う.

(6) 正常終了を確認後,ZIFソケットのレバーを上げ,F84を PICライタから取り外す.

 以上の行程で,PIC へのプログラム書き込みが終了する.書き込んだ PIC は実験用ボードに取り付けて評価を

行う.

Page 4: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 4 -

3. 仕様器具

 PICプログラム開発環境

Microchip Technology製 PICマイコンプログラム統合開発環境 MPLAB IDE 6.60

Custom Compiler Service製 PIC C Compiler(PICC)PCM Version 3.182

 PICライタ

秋月電子通商製 PIC Programmer Ver 4.0

 PIC用 LEDボード

Microchip Technology 社製 PIC16F84A-20/P(以下,F86 図 1 と表 1 に外観とピン仕様を示す),4MHz

セラミック発振子,ピンヘッダ,DIPスイッチ,タクトスイッチ,LED等

 PIC自走車

東芝製 DC モータドライバ TA7257P(又は TA8429H)にマブチ製 RE-130 モータが接続されたものが 2

組.PICマイコンにより回転,停止を制御する.

4. 実験方法

4.1 PICを用いた LED制御

 F84 を用いて LED の点灯・点滅回路をプログラミングする.使用する LED ボードを図 2 に示す.また,入出

力ポートを以下のように設定する.

・ ポート A0,A1,A2,A3,A4⋯入力スイッチ 0,1,2,3,4に対応

・ ポート B0,B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7⋯LEDの 0,1,2,3,4,5,6,7に対応

 ポート A はスイッチを押した場合に HIGH 信号がそれぞれのピンに入力され,ポート B には HIGH 信号をセッ

トすることにより LEDが点灯する.これらの仕様をもとに以下の実験を行う.

 各実験においてどのような出力信号を発生させたか付録の表を使用してまとめる.

(1) 2~3 ページのサンプルソースコードを作成・コンパイルして,PIC に書き込む.サンプルプログラム

がどのような動作をしているか検証してみる.ソースコード内の関数は,付録 8を参考にすること.

(2) サンプルコードに,スイッチ 1 を押してから LED が光り始めるソースコードを追加してみる.入力ス

イッチを押したかどうかの判定は,input関数および C言語の if文などを用いる.

(3) サンプルコードを参考にして,スイッチ 2 を押すと LED0,1,6,7 と LED2,3,4,5 が 1 秒おきに交互に点滅

出力LED

リセットスイッチ

入力スイッチ

入力スイッチ電源LED

電源スイッチ

リセットLED

 

18

17

16

14

15

13

11

12

10

1

2

3

4

5

6

7

8

9

PIC16F84A

-20P0315025

RA1

RA0

CLK1

CLK2

VDD

RB7

RB6

RB5

RB4RB3

RB2

RB1

RB0

VSS

CLR

RA4

RA2

RA3

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ3.3kΩ

3.3kΩ

3.3kΩ

RESET

RA4

RA3

RA2

RA0

RA1

POWER

VDC 6V

CLOCK 4MHzLED(g)

LED(y0)

LED(y1)

LED(y2)

LED(y3)

LED(r4 )

LED(r5)

LED(r6)

LED(r7)

LED(r)

図 2 LEDボード

Page 5: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 5 -

するソースコードを作成してみる.

(4) スイッチ 3を押すと 0.2秒間隔で 2進数をカウントするソースコードを作成してみる.

output_x()関数の引数には 10進数を用いてもよいので,for文などをうまく利用するとよい.

(5) スイッチ 4 を押すと LED が端から端へ繰り返し流れるように点灯し続ける制御パターンを考えソース

コードを作成してみる.時間間隔は班員で相談して決定する.

(6) (5)の制御パターンに加え,スイッチ 0を押すと点灯制御が終了するソースコードを追加してみる.

(7) スイッチ 0 を押すと LED0,1,6,7 が暗く点灯し,LED2,3,4,5 が明るく点灯する制御コードを作成してみ

る.ただし,LED への印加電圧は PIC マイコンの仕様により VDD に加えた電圧(本実験では 6V)と

なっているため,LEDの明るさを調節するために,付録の PWM制御を用いる.

(8) スイッチ 0 と 1 を同時に押すと,LED0,1,2,3 と LED4,5,6,7 が違う時間間隔で点滅を繰り返す制御コー

ドを作成してみる.ただし,スイッチ 2 つを厳密に同時押しすることは難しいため,スイッチ 2 つを押

した状態でクリアスイッチを押すこと.

 思い通りに動かなかった場合はその理由を考えてレポートにまとめること.

4.2 PICを用いた直流モータ制御

 PIC を用いて模型用直流モータの回転制御を行う.PIC の出力端子からの信号では直流モータの回転制御を行

う直接行うことができないため,直流モータの回転制御に特化した H ブリッジ接続されたトランジスタが一つの

ICにパッケージングされたモータドライブ IC(東芝製 TA7257P,および TA8492H)を使用する.TA7572P,TA8429H

の制御端子 IN-1,IN-2および IN-3には表 2,3に示す信号を加えることでモータの動作が決定する.基板上の PIC

と TA7572Pおよび TA8429Hは表 4,5に対応するとおりに接続されている.

 図 6に実験で使用する PIC自走車の外観を示す.PIC自走車(小)には TA7257Pが,PIC自走車(大)には TA8429H

がモータドライバとして使用されている.

表 2 TA7257Pの動作

IN-1 IN-2 動作

L L ブレーキ動作

H L 時計方向回転

L H 反時計方向回転

H H ハイインピーダンス

表 4 TA7257Pと PICマイコンの対応表

PIC TA7257P

RB0 モータ 1 IN-1

RB1 モータ 1 IN-2

RB2 モータ 2 IN-1

RB3 モータ 2 IN-2

表 3 TA8429Hの動作

IN-1 IN-2 IN-3 動作

L L H ブレーキ動作

L H H 時計方向回転

H L H 反時計方向回転

H H H ハイインピーダンス

* * L ハイインピーダンス

表 5 TA8429Hと PICマイコンの対応表

PIC TA8429H

RB0 モータ 1 IN-3

RB1 モータ 1 IN-1

RB2 モータ 1 IN-2

RB4 モータ 2 IN-3

RB5 モータ 2 IN-2

RB6 モータ 2 IN-1

Page 6: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 6 -

 上記の TA7257P および TA8492H と PIC マイコンの出力ピン対応表をもとに,次のような動作を行う PIC 自走

車の制御プログラムを作成し,PIC自走車を走らせてみる.

 また,各実験においてどのような出力信号を発生させたか付録の表を使用してまとめる.

(1) 一定時間直進して停止し,元の位置まで戻ってくる

(2) 1m四方の正方形上を移動する

(3) ジグザグ走行する

(4) 一定時間経過後に 3段階でスピードが変化する

(5) 1mの半径で回転する

(6) 自分たちでオリジナルの走行パターンを考え,それを実現する

 思い通りに動かなかった場合はその理由を考えてレポートにまとめること.

5. 考察事項

 それぞれのディジタル信号処理をどのように行ったかをまとめよ.レポートにはプログラムをそのまま記述す

るのではなく,要点をまとめて簡潔に書くこと

6. 研究課題

(1) PIC以外の各種マイコンについてその特徴を調査せよ

(2) アセンブラ言語とはどのようなものか

(3) Hブリッジ回路を用いた直流モータ制御,およびモータドライバ ICについて調査せよ.

(4) PICがどのような機器・製品で使われているか調査せよ.

  

図 3 PIC自走車(左⋯小 右⋯大)

Page 7: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 7 -

7. 付録

7.1 16進数表記

7.2 組み込み関数

 C 言語を用いた PIC マイコンプログラミングでは,入出力や割り込みの設定などを簡単に行えるようにあらか

じめ組み込み関数が用意されている.

(1) ディレイ関数

 命令を実行する間隔を設定するための関数.ある出力と出力との間に一定時間を設けたい場合に使用する.

表 7 ディレイ関数

組み込み関数 書式 機能

delay_cycles( ) delay_cycles(int count) 指定命令のサイクル数の待ち時間を設定する

delay_ms( ) delay_ms(int time) msec単位の待ち時間を設定する

delay_us( ) delay_us(int time) µsec単位の待ち時間を設定する

(2) 入出力関数

 PIC マイコンの入出力ポートを使用するためには,入出力モードの設定を行い入出力ピンを制御する必要があ

る.入出力モードを設定するプリプロセッサは main関数の前に記述する.これらの設定は必須ではない.port は

A~Gのいずれかを指定する.

表 8 入出力モード設定プリプロセッサ

組み込み関数 書式 機能

#use standard_io( ) #use standard_io(port) 指定ポートの入出力を,その都度判定する

#use fast_io( ) #use fast_io(port)指定ポートの入出力は,その前のモードに従

う.(初期化が必須)

#use fixed_io( ) #use fixed_io(port_outputs=pin,pin,⋯) 指定ピンの入出力モードを固定する

表 6 入出力ポートと 8ビット表記の一例

RB7 RB6 RB5 RB4 RB3 RB2 RB1 RB0 上位 4 ビット 下位 4 ビット 8ビット表記

L L L L L L L L 0000 0000 0x00

H H H H H H H H 1111 1111 0xFF

L H L H H L H L 0101 1010 0x5A

H H L L L L H H 1100 0011 0xC3

Page 8: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 8 -

設定を行った各ポートには以下の関数で入出力を行う.xは aから eまでのポートを指定する.

表 9 入出力組み込み関数

書式組み込み関数

使用例機能

set_tris_x(int value)

valueは 8ビットset_tris_x( )

set_tris_b(0x00) 又は set_tris_b(0)

各ビットが各ピンに対応して初期化を

行う.

1が入力モード 0が出力モード

output_low(pin)

pinは指定されたピンoutput_low( )

output_low(PIN_B0)

指定ピンを LOW出力にする

output_high(pin)

pinは指定されたピンoutput_high( )

output_high(PIN_B0)

指定ピンを HIGH出力にする

output_float(pin)

pinは指定されたピンoutput_float( )

output_float(PIN_A0)

指定ピンを入力モードにする

output_bit(pin, int value)

pinは指定されたピン valueは 1か 0output_bit( )

output_bit(PIN_B0, 1)

指定ピンの出力を 0か 1にする

output_x(int value)

valueは 8ビットoutput_x( )

output_b(0x0F) 又は output_b(15)

指定ポートに 8 ビットデータを出力す

int value = input(pin)

valueは整数 pinは指定されたピンinput( )

int n = input(PIN_A1)

指定したピンの入力

LOW なら 0(FALSE) HIGH なら 1

(TRUE)

int value = input_x( ) valueは整数input_x( )

int n = input_a( )

指定ポートから 8 ビット同時に読み出

port_b_pullups(bool value)

valueは TRUEか FALSEport_b_pullups( )

port_b_pullups(FALSE)

PORTB のプルアップ抵抗を接続する

(TRUE)しない(FALSE)

8. 参考資料

(1) 後閑哲也 「C言語による PICプログラミング入門」 技術評論社 2002年

(2) Microchip Technology Inc. http://www.microchip.com/

(3) 電子工作の実験室 http://www.picfun.com/

(4) PICな日曜日 http://www.kimurass.co.jp/picindex.htm

2005年 3月 吉田作成

Page 9: マイコンを用いた信号制御shiba/jyugyou/E3ECW/2007/e4text.pdfマイコンを用いた信号制御 - 1 - マイコンを用いた信号制御 1. 目的 ディジタル信号処理や任意ディジタル波形の生成などに用いられる汎用マイコンの使用法を理解し,C言語に

マイコンを用いた信号制御

- 9 -

PICマイコン制御実験用 出力ピン設定表

実験項目 RB7 RB6 RB5 RB4 RB3 RB2 RB1 RB0 16進数表記 出力時間

0 0 0 0 1 1 1 1 0x0F 1000(msec)例(サンプル)

1 1 1 1 0 0 0 0 0xF0 1000(msec)繰り返し