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  • 04

    特 集

     近年、職場の「働き方改革」の推進がよく話題となっている。その背景には、

    労働力人口が減少する中、これまでの国内における通常と考えられてきた働き

    方が、生産性向上に必ずしもつながらず、経済成長を鈍化させ、また社会のあ

    り方に適応しきれないことが根底にあるといえる。

     そこで、本特集では「働き方改革」の背景と事業所が手始めに取り組める内

    容等を紹介し、働き方改革の本当の意義はどこにあるかを考えたい。

    働き方改革ってなんだろう

  • 05 Vol.8

    働き方改革の背景は?

    働き方改革は、人口減少社会となった中、わ

    が国の労働制度や働き方といった慣習が経済成

    長の妨げとなっていることから、それを取り払

    い、生産性向上の取り組みとあわせて行うこと

    で、経済成長を促そうとする狙いがある。

    しかしながら、その中身を見ると、育児や介

    護と仕事との両立の支援を始めとしたものや、

    同一労働同一賃金や罰則付き時間外労働の上限

    規制の導入等、中小・小規模の事業所にとって

    はその対応に迫られる内容も含まれ難しい状況

    にあるという認識も必要だ。

    そもそも国が「働き方改革」を進めようとす

    る背景には、①国内の人口が減少し、今後、労

    働力人口が一貫して減少し続けること、②国内

    では、長時間労働がなかなか改善されていない

    こと、③人手不足が懸念される中、今までの働

    き方では対応できないこと、④正規労働者と非

    正規労働者の処遇面での格差が生じていること

    などが上げられる。

    25

    20

    15

    10

    5

    02010 2015 2020 2025 2030 2035 2040万人

    年少人口 老齢人口生産年齢人口

    21.4

    14.8

    8.010.4

    4.62.8

    ■前橋市の人口予測

    (「日本の地域別将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)より作成)

    労働力不足という経営課題

    今後、進行する人口減少は、労働力不足、す

    なわち人手不足の発生を引き起こす。前橋市に

    おける15~64歳までの生産年齢人口は、国の予

    測によると、2010年の21・4万人から

    2040年には14・8万人へと約3割減少する

    とみられ、徐々に労働力人口が減っていく状況

    になることがわかる。

    現状、経営課題として人手不足はどう認識さ

    れているのか。(独)中小企業基盤整備機構が

    全国の商工会議所・商工会・中央会を通じて四

    半期毎に全国約1万9千社を対象に行っている

    「中小企業景況調査」がある。

    上のグラフは「産業別従業員数過不足DIの

    推移」というもので、「過剰」から「不足」を

    引いた数値を5つの業種別に示したもの。数値

    が0よりも少ないと人手不足と感じる企業の方

    が多いことを示す。2011年から数年をかけ

    て、どの業種でもマイナスに転じ、断続してそ

    の数値が悪化する傾向にある。また、調査では

    経営上の問題点を選択式で回答する項目があ

    り、今年に入って小売業を除いた建設業、製造

    業、卸売業、サービス業において、需要不足や

    ニーズ変化への対応に続く経営課題として、「従

    業員の確保難」が上がるようになった。

    このように、人手不足が経営上の課題として

    浮き彫りになっている。働き方改革ではまず人

    材の確保や定着を確実なものに、働きやすい環

    境を作っていくことが必要であろう。

    ■産業別従業員数過不足 DI(今期の水準)の推移(「過剰」-「不足」 今期の水準)

    (「第 148 回 中小企業景況調査」((独)中小企業基盤整備機構)より) ※ローマ数字は四半期をさす

  • 06

    また、共働き世帯の割合が6割を超える中、

    男性も子育てへの意識が高まっている。男性従

    業員に対する県の意識調査では約半数が育児休

    業を取得したいと回答している。

    多様な正社員制度

    育児休業を終えるなどして、子育てをしなが

    ら働く従業員が働きやすいよう、職務、勤務地、

    労働時間を限定した多様な正社員制度を整備す

    るのも一つの方法である。

    多様な正社員とは、育児や介護等でフルタイ

    ムの勤務や残業が難しい、転勤ができないなど

    の制約のある人材を正社員として確保し、離職

    の防止や定着を促進するための制度だ。

    仕事と介護の両立支援

    高齢化社会の進展に伴い、今後多くの人が介

    護をしながら働かなければならなくなる。こう

    した仕事と介護との両立を支援する制度とし

    て、育児・介護休業法に基づく介護休業が認め

    られている。

    「長時間労働の抑制」

    「早く帰れ」と言うだけでは、長時間労働は

    無くならないもの。社内の制度、仕事のやり方、

    経営者や上司の意識を一体的に見直すことが必

    要である。

    企業としての取組姿勢を明確化

    いくら制度を整えても、長時間労働の抑制の

    重要性を従業員全体が共有しなければ、状況は

    なかなか改善しないもの。企業として取組姿勢を

    明確化し、社内に浸透させることが必要である。

    どう働きやすい環境をつくるか

    群馬県が働き方改革の取り組みへの参考にし

    てもらうために作成した冊子「働き方改革実践

    ガイド」には、働き方改革に関する基本的事項

    や、さまざまな角度から働きやすい職場環境づ

    くりの参考となる情報が掲載されている。

    何から手をつけたら良いか悩んでしまいがち

    な、「働き方改革」の手始めになるように、分

    かりやすい取り組みの方法、実際に県内で取組

    を進めている実例を盛り込んだものだ。

    ここからは、その一部を紹介する。なお、こ

    の冊子は、群馬県のウェブサイトで見ることが

    できる(URLは下記参照)。

    「育児や介護と仕事との両立を支援」

    生涯仕事を続けたいという女性が増え、また

    高齢化社会により親などの介護が必要な従業員

    も増えていく現代では、男性・女性ともに育児

    や介護と仕事との両立が必要である。

    育児休業の取得促進

    育児と仕事の両立のためには、まずは育児休

    業を有効に活用することが第一歩。育児休業は

    育児・介護休業法で取得が認められているが、

    「育児休業を取得したい」と言いづらい雰囲気

    や状況があれば、育児休業を取得できず辞めて

    しまう従業員もいるかもしれない。制度を整え

    るだけでなく、実際に制度を利用しやすい雰囲

    気づくりも必要である。

    ■群馬県が作成した働き方改革実践ガイドの概要

    ○今なぜ『働き方改革』か

    ○育児や介護と仕事との両立を

    支援

    ○長時間労働の抑制

    ○女性従業員の活躍を応援

    ○社内の『意識』を変える

    ○自社の取組を PR する

    ○取組を進める県内事業所

     (優良企業取組事例)

    ○群馬県いきいき G カンパニー

    にご参加ください!

    ○各種相談窓口

    両立支援等助成金 厚生労働省が実施している、

    従業員の職業生活と家庭生活

    の両立支援や女性の活躍推進

    の取組をした事業主に対して

    支給する助成金です。中小企

    業の場合には、育児休業取得

    者の代替要員確保や職場復帰

    支援なども対象となります。

    まずは要件をチェック!

    相談は労働局雇用環境・均等

    室。

    URL http://www.pref.gunma.jp/06/g22g_00005.html

  • 07 Vol.8

    女性従業員の教育・

    モチベーション向上

    これまで管理職は

    男性がほとんどだっ

    たり、そもそも女性の

    正規従業員をほとん

    ど採用してこなかっ

    たという企業も多い

    のではないか。しかし、

    これから労働力人口は減少していく一方で、結

    婚・出産しても仕事を辞めず、一生仕事を続け

    たいと考える女性は増えている。こうした女性

    を戦力として活用しないのは「もったいない」

    と言える。

    女性に活躍してもらう際、課題となるのは、

    身近に女性同士で悩みなどを相談できる人や、

    お手本としたい人(ロールモデル)がいないと

    いう点。外部の研修会や交流会を積極的に活用

    するなどして、モチベーションの維持・向上を

    図るのも一つの方法である。

    女性活躍推進法

    平成28年4月、女性活躍推進法が本格施行と

    なった。

    国・地方公共団体、従業員が301人以上の

    大企業は、女性の活躍に関する行動計画の策定

    が義務づけられている(300人以下の中小企

    業は努力義務)。

    また、行動計画の届出を行い、女性の活躍推

    進に関する取組の実施状況が優良な企業につい

    ては、申請により、厚生労働大臣の認定(「え

    るぼし認定」)を受けることができる認定を受

    けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マーク

    を商品などに付することができる。

    「社内の「意識」を変える」

    両立支援や長時間労働の抑制のための様々な

    制度を作っても、従業員の業務をマネジメント

    する管理職の意識が変わらなければ、早く帰っ

    たり、休んだりしづらい雰囲気は変わらない。

    経営者・管理職の意識を変える

    「長時間働く社員が、頑張っている良い社員」

    「自分が若い頃は、休みなんて無かった」。こん

    な意識を持っている経営者・管理者は、意外と

    多いのではないだろうか?働き方改革を進める

    ことが、従業員のためにも、企業のためにも、

    これからは必要だというふうに意識を変える必

    要がある。

    企業や部署全体での取組

    「一斉退社日」を設定する、残業を原則何時

    までに制限する、残業する際には事前申請を必

    要とするなど、残業時間を制限するのが1つの

    方法である。労働時間について意識が高まり、

    仕事を早く終えようと効率化を図ることなどが

    期待できる。

    「女性従業員の活躍を応援」

    非正規社員から正社員への転換

    パートやアルバイトの女性が活躍している企

    業も多いのではないだろうか。貴重な戦力であ

    るこうした女性に長く貢献してもらうために、

    非正規社員から正社員化へと転換し、安定的な

    雇用の確保や従業員のモチベーションの向上に

    つなげている企業がある。

    多様な正社員の具体例・勤務地限定正社員

    転勤エリアの限定、または、転勤がないなど勤務

    地が限定されている社員

    ・勤務時間限定正社員所定労働時間が短い、残業が免除されるなど勤務

    時間が限定されている社員

    ・勤務限定正社員担当する職務内容や仕事の範囲が限定されている

    社員※育児・介護休業法に基づき、子が 3 歳に達するまで

    の短時間勤務及び所定外労働免除制度については、整備が義務づけられています。多様な正社員制度を導入する場合は、キャリアアップ助成金の対象となる場合があります。

    キャリアアップ助成金パートタイム労働者等から正

    社員への転換等を助成する

    制度です。お問い合わせ、お

    申し込みは、 お近くのハロー

    ワーク又は群馬労働局まで。

    いきいきGカンパニー認証制度群馬県では、従業員の育児・介護休業や女性の活躍、ワーク ・ライフ・バランスを推進し、人材の確保・定着を図ることを目的として、企業認証制度を実施しています。

    ぐんまのイクボス養成塾年に数回、群馬県が開催している「ぐんまのイクボス養成塾」では、専門の講師が部下のワーク・ライフ・バランスに配慮することの重要性やその手法について、講演やワークショップを通じてお伝えしています。

  • 0808

    現在、アベノミクス効果もあり大企業の売り

    上げが回復する中、地方の中小企業ではその恩

    恵が薄く、逆に人手不足が深刻化し先行き不透

    明感が増し、この時期に「働き方改革」を推進

    することは中小企業にとって大変厳しいと考え

    ている経営者も多い。

    しかし、こうしたギャップが存在する一方で、

    少子高齢化は加速度的に進んでおり、政府が目

    指す戦後最大のGDP600兆円、希望出生率

    1・8%、介護離職率ゼロに向かって誰もが生

    きがいを感じられる「一億総活躍社会」の実現

    の必要性も理解している。子育てや介護、それ

    ぞれの事情に応じて女性や高齢者など、様々な

    方が働ける環境を整備する、そういう社会をつ

    くり活力を生み出すことが大事であろう。

    戦後日本の高度経済成長を支えてきた中小企

    業。日本人特有の財産である「勤勉さ」で今の

    日本を作り上げてきた。がむしゃらに働くこと

    が美徳とされ、所得も上がり確かに日本は豊か

    になった。しかし、欧米に比べれば本当の意味

    での豊かさにはまだまだ及ばない。この「働き

    方改革」では、国はこうした中小企業がどのよ

    うに生産性を向上させ、従業員一人一人が本当

    に「幸せ」を感じられるかを第一に考えて対策

    を講じてもらうことはもちろん、今後の日本を

    担う若者に『働く』ことの大切さを教育の現場

    や社会全体で考える契機としていただきたい。

    そして現在懸命に働いているすべての人は、「何

    のために働くのか」「誰のために働くのか」と

    いう本質をぜひ再確認していただきたい。

    従業員の意識を変える

    忙しい中で頑張っている従業員に対して、早

    く帰れ、休めとはなかなか言いにくいもの。し

    かし、無理な長時間労働は会社にとって「コス

    ト」であり、体調を崩す「リスク」でもある。

    早く帰り、休みをとってプライベートが充実し、

    自己研鑽を行うことで、仕事の質もアップする

    こともある。

    従業員の意識を変えるためには、まずは経営

    者・管理職が意識を変え、従業員に対して定期

    的にメッセージを出すとともに、長時間働いた

    従業員が評価されるような状況を見直し、限ら

    れた時間の中で、生産性を高め、成果を出す従

    業員が評価されるように変えていく必要がある。

    業務のやり方を見直す

    従業員が一生懸命仕事をしているにも関わら

    ず、残業が恒常的になっているのは、どうして

    だろうか。長時間労働を根本から解決するには、

    社員アンケートやヒアリング等により長時間労

    働の原因を見つけ、見直しを行うことが不可欠

    である。

    「働き方改革」の本当の意義

    企業経営にとって「人」「物」「資金」「情報」

    をいかにうまく使うかが成功の鍵である。なか

    でも、「人」は、「人材=人財」と称されるほど

    企業にとって最も重要な基盤である。少子化が

    進展し労働力不足が懸念される中、企業として

    は人財をいかに定着させ、利益の向上と継続的

    発展につなげるかが課題となっている。

    経営者にとっては、従業員が健康でいきいき

    と安心して働ける環境をつくることで、生産性

    の高い良い仕事をし、利益を上げて企業の存続・

    発展に結び付けることができる。一方、従業員

    もやりがいを持って働くことで、賃金が良くな

    り、生活の質を上げることができれば、消費に

    お金が回り、地元経済の活性化に結びつく。そ

    して、税金として地域のインフラ整備や教育・

    福祉の向上などという理想的ともいえる良い連

    鎖が生まれる。この仕組みを作るためには、労

    使双方が権利と義務を理解し合い、働き方はも

    ちろん、休み方をしっかりと考えることが大切

    である。

    業務のやり方を見直す例

    課題 具体的手法

    会議が長い

    ○会議は勤務時間内に設定する(残業前提の会議時間を設定しない)

    ○会議の「ゴール」(=何を決めるための会議か)を明確に○会議の出席者数、時間、資料の量などを見直す

    業務量が多い

    ○業務を棚おろしし、優先順位を「見える化」する。必要でない仕事は思い切ってやめる

    ○緊急性の低い仕事を、終業間際や終業後に部下に指示しないようにする

    その人にしかできない仕事がある

    ○同じ業務を複数の人がこなせるよう、研修や引継ぎを定期的に行い、繁忙期や誰かが休みの際には業務を分け合って対応する

    取引先からの無理な要求

    ○取引先に対して、長時間労働の抑制に向けた取組を説明するとともに、発注時に納期等にかかる配慮について理解を求める

    ○著しい短納期等、長時間労働を誘発する発注については取引先に対して組織的な対応を検討する

    資料提供「働き方改革実践ガイド(群馬県)」