複合金属酸化物触媒による高機能非イオン型 界面活 …6 3. 技術の概要(2)MEE(Methyl Ester Ethoxylates) ~脂肪酸メチルエステルへの直接EO付加型非イオン活性剤~
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金属イオンの決定
沈殿,濁りはろ過して除去
溶けているものはイオンになる
酸性か塩基性かを意識する
各陰イオンは何を沈殿させるのか
一つ一つ覚えるべき
金属イオンを確実に
右図のように色々な金属イオン Cu2+,Pb2+,Ag+,Na+,Ba2+,Zn2+,Fe3+が入っている絶対に飲用してはいけない
水溶液がある。何が入っているのかを見
分けるのがイオン分析であり,無機化学
の総合的な知識が要求される。様々な陰
イオンを加えてやり,沈殿物をろ過して
除去していく方法であり,入試でもある
程度はパターン化されている。
①まず塩酸を加える。Cl−と結合して沈殿するのは,PbCl2(白)とAgCl(白)である (たまに Hg2Cl2 も出ることが)。だからこの 2つが沈殿する。 ② AgCl,PbCl2 はともに白色沈殿で見分けがつかない。食べるわけにもいか
ない。ここで熱湯を加えてみると分かる。
PbCl2は水には溶解度が低いが,お湯に対する溶解度は高いため溶ける。
③鉛 (II)イオンは無色なのでこれを裏付けするためにクロム酸カリウム水溶液を加える。PbCrO4(黄色)が沈殿。他にクロム酸イオンで沈殿するものは,BaCrO4(黄色)と Ag2CrO4(暗赤色)がある。 ④上澄み水溶液に戻って硫化水素を加える。塩酸を加えたての酸性である。酸性のときに
沈殿する硫化物は Ag2S,PbS,CuS,CdSを思い出してもらいたい。ここでは CuS(黒)のみが沈殿する。ZnSや FeSは中性・塩基性でないと沈殿しない。 ⑤硫化水素には強力な還元力があるので,Fe3+が Fe2+になってしまっている。これを酸化して Fe3+に戻すべく,他の影響が少ない酸化剤として硝酸を加える。また煮沸して硫化水素を追い出す。そして濃アンモニア水を多量に加える。多くの金属イオンは塩基性水溶液
中では水酸化物沈殿を作るが,アルカリ金属,アルカリ土類金属と Ag,Cu,Zn,Niは濃アンモニア水では沈殿しない。ここでは Fe(OH)3(赤褐色)のみが沈殿する。 ⑥アンモニア水でやや塩基性になっているので,硫化水素を加えると ZnS(白)が沈殿。 ⑦炭酸で沈殿する金属はアルカリ土類金属である。BaCO3(白)が沈殿。そして最後の最後まで運良く生き残ったのは Na+。このようにアルカリ金属は沈殿することはない。Na+という証拠をつかむためには炎色反応がある。Na+は炎色反応で黄色を呈する。
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第1族の元素 (改訂 2.0)
H ヘンで
Li リッチ
Na な
K K子さんRb ルビー
Cs せしめて
Fr フランスへ
Li Na K炎色反応を起こす
電気陰性度が非常に低い
水と激しく反応し,水素を発生
水に溶けてアルカリ性
アルカリ金属
アルカリ金属は非常に反応性が高く,イオン化傾向が高い。また,電気陰性度が低く,陽
イオンになりやすい。単体は弱く,ハサミでも切れるくらい柔らかい金属である。水と激し
く反応し,水素を発生する。また,空気中のわずかな水分でも反応するため,アルカリ金属
は基本的に石油中で保存する。
2Na + 2H2O→ 2NaOH+H2 2K + 2H2O→ 2KOH +H2
ナトリウム
ナトリウムはアルカリ金属の代表格であり,ナトリウム化合物には化学工業上重要なもの
が多い。まずは言わずと知れた水酸化ナトリウム NaOHがある。水によく溶けて強塩基性を示すためあらゆる方面で利用される。また,炎色反応は黄色を示す。
●水酸化ナトリウム 塩化ナトリウム水溶液と水を電気分解す
る。陽極槽と陰極槽を陽イオン交換膜という,特殊な加工が施
されている膜で区切る。そして陽極側には塩化ナトリウム水溶
液を,陰極側には純水を入れる。
陽極側 塩化ナトリウムの Cl−が酸化される。2Cl− → Cl2 + 2e−
Cl2は排気口から出るので陽極側に Na+がたまり,それが溶イオン交換膜を通って陰極側へ移動する。
陰極側 水が電子を受け取る。
2H2O+ 2e− → 2OH− +H2H2は排気口から出るので,OH−
がたまる。
そして陽イオン交換膜を通過した Na+が陰極槽で OH−と出
合い,水酸化ナトリウムができる。
●アンモニア・ソーダ法 炭酸ナトリウム Na2CO3はガラスや医薬品の材料として用いられる。工業的に合成する方法をアンモニ
ア・ソーダ法またはソルベー法という。身近なものをかけ合わせ
るのである。その身近なものとは,塩化ナトリウム,アンモニア,
水,二酸化炭素と簡単に入手できるものばかりである。この 4つで炭酸水素ナトリウムを作り,それを加熱する方法である。
NaCl + NH3 +CO2 +H2O→ NH4Cl + NaHCO32NaHCO3 → Na2CO3 +H2O+CO2
炭酸水素ナトリウムを加熱すると炭酸ナトリウム,水,二酸化炭素に分解される。
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第2族の元素 (改訂 3.5)
Be 弁当
Mg マジ
Ca 辛くて
Sr スリッパ
Ba バ
Ra ラバラ
反応しやすい金属たち
アルカリ土類金属
Ca Sr Ba Raアルカリ金属と比較的似た性質
Be,Mgは少々性質が違うアルカリ金属に準ずる金属
2族であり,周期表の下にあるものは第一イオン化エネルギーが小さく,陽イオンになりやすい。Ca,Sr,Ba,Raをアルカリ土類金属といい,アルカリ金属と性質が似ている。受験で出てくるのは Ca,Baが主である。2族は最外殻電子が 2個あるので,この 2つ取れて2価の陽イオンになりやすい。少しの水で水素を発生し,強塩基性の水酸化物になる。また,酸化物も水を吸収して水酸化物になりやすい。次のカルシウムの反応式は書けるようにして
もらいたい。
Ca + 2H2O→ Ca(OH)2 +H2 ↑ CaO+H2O→ Ca(OH)2
ベリリウム・マグネシウム
2族の中の元素でも BeとMgは少々特徴が違うので注意が必要である。まず,アルカリ土類金属である Ca,Sr,Baは炎色反応を起こす,冷水に溶けて水素を発生する,硫酸塩と炭酸塩は水に溶け
にくいという性質が共通しているが,BeとMgはまるで正反対なので気をつけてもらいたい。
CaCO3, CaSO4, BaCO3, BaSO4, SrCO3, SrSO4はすべて水に溶けにくい白い沈殿であるが,MgCO3, MgSO4 などは沈殿しない。さらに,Be(OH)2やMg(OH)2は水に溶けにくくさらに液性は弱塩基性である。
イオン結合
アルカリ金属とは違い,化合物は難溶性のものが多い。硫酸カ
ルシウムCaSO4や炭酸バリウムBaCO3などは溶けにくい。バリウム,カルシウムともに硫酸塩も炭酸塩も非常に溶けにくい。ま
た,水溶液である Ba(OH)2 も溶解度はアルカリ金属の水酸化ナトリウムなどに比べるとそれほど積極的に溶けない。単体も Na,K,Liなどは石油中に保存しないと空気中の水分と反応してしまうが,アルカリ土類金属は比較的安定している。Caは空気中でもほとんど反応しない。しかし Baは石油中保存が必要である。 石灰水 (水酸化カルシウム水溶液)に二酸化炭素を吹き込むと白く濁るのは有名なことである。これは
Ca(OH)2 +CO2 → CaCO3 ↓ +H2Oという,強塩基と弱酸の中和反応によって炭酸カルシウムという難溶性の塩ができるからで
ある。このように溶液中の炭酸イオンや硫酸イオンを検出するためにアルカリ土類金属を使
うことが多い。
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カルシウム
カルシウム化合物の慣用名には
「石灰」のつくものが多い
Ca + 2H2O → Ca(OH)2 +H2 ↑Ca(OH)2 +CO2 → CaCO3 ↓ +H2OCaCO3 + 2HCl → CaCl2 +H2O+ CO2 ↑カルシウムの和名・慣用名
カルシウム化合物には非常に和名や慣用名が多い。
名称 化学式 慣用名 名称 化学式 慣用名
酸化カルシウム CaO 生石灰 硫酸カルシウム CaSO4 · 2H2O セッコウ
水酸化カルシウム Ca(OH)2 消石灰 硫酸カルシウム CaSO4 · 12H2O 焼セッコウ
〃 水溶液 Ca(OH)2 石灰水 炭化カルシウム CaC2 カーバイド
フッ化カルシウム CaF2 ホタル石 炭酸カルシウム CaCO3 石灰石
またこの他にさらし粉 CaCl(ClO) ·H2Oも覚えておくべきである。
相互的な反応
以下はよく出題される。
①石灰水に塩素→さらし粉 石灰水の水に塩素が溶解すると HClOと HClになる。それがカルシウム塩を作り,CaCl(ClO) ·H2Oさらし粉となる。次亜塩素酸イオン ClO−
を持つの
で酸化力が強い。
②石灰水に二酸化炭素→炭酸カルシウム この事実は小学校の理科から学んでいる通りなの
で周知のことだとは思うが,化学反応式を必ず覚えておくこと。またしつこく二酸化炭素を
加え続けると白い沈殿が溶解し,炭酸水素カルシウム水溶液になる。
Ca(OH)2 +CO2 → CaCO3 ↓ +H2O CaCO3 +H2O+CO2 → Ca(HCO3)2③石灰石に塩酸→二酸化炭素 これも非常に有名な反応である。
CaCO3 + 2HCl→ CaCl2 +H2O+CO2 ↑④カーバイドに水→アセチレン 有機でも学ぶが,カーバイドは CaC2である。
CaC2 + 2H2O→ Ca(OH)2 +C2H2 ↑
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第14族の元素 (改訂 1.0)
C タンスの
Si 下には
Ge 現金
Sn スズ
Pb なり
Cと Siは共有結合結晶
ケイ素の誘導体は
水ガラスとシリカゲル
スズ,鉛は 2価のイオンになる両性金属
炭 素
炭素 Cについて黒鉛,ダイヤモンド,フラーレンの 3つの同素体は必ず覚えておきたい。炭素の酸化物は COと CO2がある。COは水に溶けにくく有毒,CO2は少し水に溶けて酸性になる。有機分野と合わせて覚えたいのは次の通り。
ギ酸を脱水すると一酸化炭素,酢酸カルシウムを加熱するとア
セトンと二酸化炭素が出る。
HCOOH→ H2O+CO ↑Ca(CH3COO)2 �→CH3COCH3 +CaO+CO2 ↑
黒鉛は 4個の価電子のうち 3個が結合に使われて 1個が余っているため,電気伝導性がある。しかしダイヤモンドは 4個すべてが結合で使われているので電気伝導性はない。フラーレンは分子の
ため,電気伝導性がない。
ケ イ 素
ガラスや水晶の主成分である二酸化ケイ素 SiO2は石英ともよばれる。塩基性のものと一緒に加熱すると,溶けてケイ酸ナトリウムができる。
SiO2 +Na2CO3 → Na2SiO3 +CO2ここで生成したNa2SiO3は水ガラスとよばれる。液性を酸性にすれば,ケイ酸H2SiO3ができる。これは乾燥剤として有名なシリカゲルの主成分である。また,二酸化ケイ素を炭素で
還元すると単体のケイ素が得られる。このとき,温度の条件により,二酸化炭素ではなく,
一酸化炭素が発生することを必ず覚えてもらいたい。
SiO2 + 2C→ Si + 2CO
スズと鉛
スズ,鉛は典型元素の金属で両性金属である。2価の陽イオンになりやすい。塩基に溶けるときは錯イオンになるが,亜鉛やアルミニ
ウムほどは詳しく聞かれない。また,鉛は硫酸鉛 (II)PbSO4,塩化鉛(II)PbCl2はどちらも水に溶けにくい。そのため,鉛は水素よりイオン化傾向が高いにもかかわらず,硫酸や塩酸に溶けにくいのである。
硫酸や塩酸の中に入れても表面が硫酸鉛 (II)や塩化鉛 (II)の被膜で覆われるのである。塩化鉛 (II)は金属イオン分析で重要なのでよく覚えておきたい。塩化鉛 (II)は水には溶けにくいが,熱湯には溶ける。あと,スズは代表的な還元剤ということを覚えてもらいたい。
Sn2+ → Sn4+ + 2e−
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第15族の元素
N ニッ
P ポンの
As 朝は
Sb 酢豚と
Bi ビールで始まる
ハーバー・ボッシュ法 (触媒Fe3O4)でアンモニア
オストワルト法 (触媒Pt)で硝酸赤リン無害 黄リン危険物
リン酸H3PO4は中程度の酸
アンモニア
アンモニアを作る方法にはハーバー・ボッシュ法があり,四酸化三鉄 Fe3O4を触媒として反応させるとN2 + 3H2 → 2NH3のような反応が起こる。アンモニアはもちろん,水に溶けて NH3 +H2O→ NH+
4 +OH−と電離するので塩基性である。
硝 酸
アンモニアを酸化し,一酸化窒素,二酸化窒素,
硝酸と反応させていくもので,
4NH3 + 5O2 → 4NO+ 6H2O2NO+O2 → 2NO23NO2 +H2O→ 2HNO3 +NO
となる。まず,アンモニアと酸素で一酸化窒素ができるが,この式は「アンモニアと酸素で
一酸化炭素」と,文章で覚えておき,係数の 4,5,4,6を把握しておけば覚えやすい。その後,一酸化窒素を酸化し,二酸化窒素は水と反応させる。この流れをしっかり押さえても
らいたい。
第三式を見てもらえば分かると思うが,すべての二酸化窒素が硝酸になるわけではない。
硝酸になれる窒素は全体の 3分の 2であり,3分の 1は一酸化窒素に戻る。しかし,実際の工業では副生成物として出てきた一酸化窒素を再利用して,硝酸を合成する。
●一酸化窒素と二酸化窒素 一酸化窒素 NOは無色の水に難溶の気体である。二酸化窒素NO2は茶褐色の気体であり,水に溶ける。希硝酸が酸化剤としてはたらくと一酸化窒素,濃硝酸が酸化剤としてはたらくと二酸化窒素が発生する。
希硝酸 HNO3 + 3H+ + 3e− → NO+ 2H2O濃硝酸 HNO3 +H+ + e− → NO2 +H2O
リ ン
リンはマッチ棒などに使われている赤リンと,有毒で爆発しやすい黄リンがある。黄リン
P4は自然発火するので水の中で保存する。アルカリ金属が石油中保存なので,混同しないように。赤リンは比較的安定するが,あまり体にいいものではない。リンを酸化すると次の
ようになる。
4P + 5O2 → P4O10この酸化物である十酸化四リン (別名五酸化二リン)は白い化合物で,潮解性をもつ。これを水と反応させるとリン酸H3PO4になる。
P4O10 + 6H2O→ 4H3PO4リン酸は酢酸よりやや強めの酸である。リンの水素化合物 PH3(ホスフィン)は水に少し溶けてアルカリ性を示す。
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第16族の元素
O おお
S すごい
Se 西武
Te 鉄道の
Po ポイントカード
酸素とオゾンは同素体
硫化水素H2Sは有毒 腐卵臭 還元剤二酸化硫黄 SO2は刺激臭 酸化・還元剤濃硫酸は酸化・不揮発性・脱水・乾燥・弱酸性
などの性質をもつ
酸 素
酸素は水素と並んで非常に重要な元素である。酸素は過酸化水素の分解により発生する。
反応式は 2H2O2 → 2H2O+O2である。●オゾン オゾンO3は,特異臭をもつ淡青色の気体である。地上 20km~30kmの部分にはオゾン濃度の濃いオゾン層があり,紫外線を吸収している。オゾンには酸化力があり,
O3 + 2H+ + 2e− → O2 +H2Oのような半反応式が立つ。ヨウ化物イオン I−を還元し,ヨウ素になるという反応がよく出てくる。ヨウ化カリウムと反応し,デンプンを青紫色に染めるはたらきがある。
2KI + O3 +H2O→ 2KOH + I2 +O2 ちなみにレーザープリンタは印刷中に人体に害のない程度だがオゾンを発生させる。もし
も「特異臭」という怪しいにおいを知りたければ,レーザープリンタの印刷中ににおいを嗅
いでみればよい。
硫 黄
硫黄は単体,二酸化硫黄,硫酸,硫化水素が頻出であ
り,出題もバラエティに富んでいる。
●単体 斜方硫黄,単斜硫黄,ゴム状硫黄がある。斜方
硫黄と単斜硫黄は S8 の分子となり,分子結晶を形成する。斜方硫黄は安定している。
●二酸化硫黄 無色の刺激臭のある気体で,有毒,水に溶けて酸性,酸化力と還元力がある。
水に溶けると亜硫酸を作る SO2 +H2O H2SO3酸化剤としての半反応式 SO2 + 4H+ + 4e− → S + 2H2O還元剤としての半反応式 SO2 + 2H2O→ SO42− + 4H+ + 2e−
●硫化水素 無色で腐卵臭をもつ有毒の気体。水に溶けて酸性を示し,非常に強力な還元剤
である。2008年にはこの硫化水素を用いた自殺が流行したくらい有毒である。水に溶けると酸性になる H2S H+ +HS−(※)還元剤としての半反応式 H2S→ S + 2H+ + 2e−
(※)だけでなく, H2S 2H+ + S2−もあるが,非常に電離定数が低いためほとんど S 2−は存在し
ない。
●硫酸 濃硫酸と希硫酸があるが,性質は結構違う。希硫酸は普通の酸であるが,濃硫酸は
酸化力,不揮発性,弱酸,乾燥,脱水などの性質がある。
酸化剤としての半反応式 H2SO4 + 2H+ + 2e− → SO2 + 2H2O不揮発性酸としての塩化ナトリウムとの反応 H2SO4 +NaCl→ NaHSO4 +HCl(※)
(※)濃硫酸は電離度が低いため,H2SO4 H+ + HSO−
4 に電離している。
c59-7■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
酸 素
最重要な反応式は
2H2O2 → O2 + 2H2O酸素は生命にとって必要な物質だが,
オゾンは有毒な青いガス
酸素は当然酸化力が強い
酸 素
原子番号 8番,質量数は 16~18であり,単体の酸素 O2 は多くの生物の呼吸に必要不可欠な分子で,オゾンO3は酸化力の強い分子である。 化学で特に断りがなく「酸素」というときは,O2のことを指す。酸素の作り方として有名なのは過酸化水素の分解であり,触媒として酸化マンガン (IV)(二酸化マンガンともいう)を加える反応である。以下の反応は必ず覚えてもらいたい。
2H2O2 → O2 + 2H2O その他,塩素酸カリウムに酸化マンガン (IV)を加える方法もある。
2KClO3 → 3O2 + 2KClちなみに,HClO3が塩素酸,HClO4は過塩素酸,HClOは次亜塩素酸といい,それぞれオキソ酸である。
また,大量の酸素を得るには,その辺の空気を分留する方法がある。世の中には酸素工場
なるものが存在する。大きな通気口から空気を吸い込み,フィルターで不純物を除去して冷
却して液体空気にする。空気中の窒素と酸素は沸点が違うため,温度を調節すれば窒素と酸
素を分離できる。
オ ゾ ン
オゾンは地上より 20km~30kmの部分にあるオゾン層に多く含まれる。紫外線を吸収する性質がある。淡青色をし,
特異臭がある。作り方は空気中で無声放電する方法がある。
無声放電というのは,電圧をかけることと思ってもらいた
い。無声放電によって酸素がオゾンになる。
●オゾンの性質 酸化力が強い。有名な実験がこれである。
ヨウ化カリウムデンプン紙という,ヨウ化カリウムKIとデンプンを染み込ませて水にぬらした用紙にオゾンを当てる
と,KIの I−がオゾンで酸化されて I2になる。I2はデンプンと混ざると青紫色になるため,目で見て分かる。
2KI + O3 +H2O→ O2 + 2KOH + I2この反応式は書いて覚えるべきである。忘れてしまった場合,とりあえず「オゾンと I−が反応する。そしてデンプンを青紫に染めるということはヨウ素 I2が出来ている。K+
は,何
か陰イオンと結びつくが,これらの材料で思いつく陰イオンは OH−くらいしかない」と理
解しておけば,左辺に KIと O3,右辺に I2や KOHを書くことで反応式を導き出すことが出来るはず。
c3106-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
接 触 法
SO3 +H2O → H2SO4の反応は要注意「硫酸」には 2つの意味がある ①H2SO4分子そのもののこと ②H2SO4水溶液のこと硝酸も同様
接触法による硫酸製造
硫酸を作るには接触法という方法がとられる。触媒は酸化バナジウム (V)である。S + O2 → SO2 2SO2 +O2 → 2SO2 SO3 +H2O→ H2SO4
ここで 3番目の反応がやや曲者である。気体の三酸化硫黄を水に溶かしている反
応であるが,プロセスがやや複雑である。
まず気体の SO3を濃硫酸に吸収させると粘性が高く何やら怪しげな煙を発する液
体となる。これは発煙硫酸とよばれ,SO3が煙となっている。
SO3 を直接水に反応させるのが早い気がするかも知れないがこれはやっては
いけない。SO3が硫酸になる反応の反応熱が大きいため,水が沸騰してしまい,
H2SO4が外に飛ばされて硫酸ミストが発生する。それで開発されたのが上記の方
法で,発煙硫酸を希硫酸で希釈する方法
である。危険回避のためにこのようなメンドーなプロセスが必要になる。また余談 (といっても大切な話)ではあるが,濃硫酸を希釈する時にここに水を入れてはいけない。H2SO4分子の水への溶解熱が高いため,一度に反応する H2SO4分子のモル数を少なくしなければならない。そのために水に対して濃硫酸を加えるのが正解である。これも必ず覚えるように。
接触法で硫酸を作る時予め濃硫酸と希硫酸を準備する必要がある。
計算問題
接触法により硫黄 500molをすべて反応させた場合,98%硫酸は何 kgできるか有効数字 2桁で答えよ。■解答■ ここで「98%硫酸」の意味を理解しておくべきである。ここでいう「硫酸」はH2SO4のことではなく,H2SO4水溶液のことである。硫酸を x[kg]とおくと,1000x[g]となる。この 98%が H2SO4に該当するので 1000x× 98
100 [g]。これが 500molに相当するから,500× 98[g]。よって
1000x× 98100 = 500× 98 x = 50 50kg
図のように線分図を描いて考えると分かりやすいと思う。
c3107-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
第17族の元素 (改訂 1.0)
F フラれて
Cl 狂った
Br ばあちゃん
I 私に
At アタック
価電子 7個 不対電子 1個水素化合物を水に溶かすと強酸
(HFは除く)酸化力が強い
フッ素と塩素
17族の元素はハロゲンとよばれる。電気陰性度が強く,電子を奪う力が強い。そのためハロゲンの単体分子は酸化剤としてはた
らく。酸化力の強さは F2,Cl2,Br2,I2と,原子番号順である。●フッ素 フッ素は淡黄色の気体であり,全ての元素の中で電気
陰性度が最強である。電気陰性度の強い酸素ですらフッ素にはか
なわない。フッ素は水をも酸化する。
2F2 + 2H2O→ 4HF +O2 ←水が酸化されて酸素が発生フッ化水素の水溶液フッ化水素酸はガラス (二酸化ケイ素)を溶かして,ヘキサフルオロケイ酸 H2SiF6にしてしまう。
SiO2 + 6HF→ H2SiF6 + 2H2O ←丸々覚えて下さい。●塩素 黄緑色で刺激臭で毒。水道水の消毒薬としてほんのわず
かに入っている。フッ素ほどではないが化学反応にはやる気満々である。
水に溶かすと,強力な酸化剤で漂白作用のある次亜塩素酸 HClOを発生する。Cl2 +H2O HCl + HClO
このとき,塩素の酸化数は +1である。塩素はいつでも −1ではない。酸素の方が電気陰性度が強く,酸素に電子を奪われる。
ちなみに,亜塩素酸HClO2,塩素酸 HClO3,過塩素酸HClO4の順に酸性として強くなり,酸化剤としては弱くなる。
塩素を発生させる方法として最もメジャーな方法が二酸化マ
ンガンMnO2( 酸化マンガン (IV)とも)に濃塩酸を加える方法である。反応式は
MnO2 + 4HCl→ MnCl2 + 2H2O+Cl2二酸化マンガンは触媒として登場することが多いが,この反応では酸化剤としてはたらく。
塩素は空気より重くて水には比較的溶けるので下方置換法で捕集する。
臭素とヨウ素
フッ素,塩素と比べたら比較的酸化力が弱く,安定している。
●臭素 単体の Br2 は茶色で常温で液体であるレア物。もちろん有毒である。エチレンやアセチレンなどの二重結合や三重結合に付加する。
それにより茶色が消える。
●ヨウ素 黒紫色の固体で少し酸化力をもつ。I2はデンプンのらせん構造の中に入りこみ,鮮やかな青紫色を呈する。ヨウ素は昇華性がある。
水素化合物であるHBrとHIの水溶液はそれぞれ臭化水素酸,ヨウ化水素酸といい,どちらも強酸である。
c1238-3■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
第18族の元素
He ヘンな
Ne ネェちゃん
Ar 歩いて
Kr くるよ
Xe キセルくわえて
Rn ランランラン
18族は希ガス元素単原子分子
ほとんど化合物をつくらない
電気陰性度は弱く
イオン化エネルギーは非常に大きい
反応しにくい希ガス
第 18族の 6つの元素は 1つの原子で分子として存在する単原子分子である。最外殻電子はヘリウムが 2個,その他は 8個で非常に安定しているため,化学反応はほとんど起こさない。
そのため電子を引きつける度合である電気陰性度はとても弱
く,電子を奪うために必要なエネルギーである第一イオン化エ
ネルギーはとても大きい。
しかし化学反応はまったくしないわけではない。キセノンや
ラドンなど,原子半径の大きいものは最外殻電子が外れやす
い。つまりイオン化エネルギーも低いので,酸化されること
がある。フッ化キセノン (XeFn)などは作ることができるとわかっている。
原子半径と電子配置
安定したイオンの電子配置は希ガス型電子配置となる。よ
く出題されるのは原子半径,イオン半径の比較である。フッ
化物イオン,ネオン,ナトリウムイオンの半径の比較をし
てみたい。電子配置はすべて (K(2), L(8))であるが,原子核の引力は+11であるナトリウムイオンが最も強い。そのため電子が中心に引きつけられるから,ナトリウムイオンの半径は小さくなる。フッ化物イ
オンの半径はその逆で大きくなる。よって半径の大小は
F− > Ne > Na+
分圧と全圧
希ガスは基本的に化学反応しにくいので酸素,水素,メタンなどと混ぜて燃焼させても
反応しない。酸素 1mol,一酸化炭素 1mol,アルゴン 1mol を密閉容器に入れ,燃焼して1.0× 105Paに保ったときのアルゴンの分圧はどうなるだろうか。
2CO + O2 → 2CO2初期 1 1 0
反応量 −1 −0.50 +1反応後 0 0.50 1
反応は右の表のようになり,酸素が 0.50mol,二酸化炭素が 1.0mol残る。またアルゴンは 1.0molの状態で残る。そうすると反応後は 2.5molの気体が残るので,アルゴンの分圧は
PAr = 1.02.5 × 1.0× 105 = 4.0× 104Pa
c62-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
アルミニウムと亜鉛
典型元素の金属Al 13族 Zn 12族イオンはAl3+,Zn2+で無色どちらも両性金属
Al2O3,ZnO,Al(OH)3,Zn(OH)2,ZnS これらはすべて白色
両性金属
アルミニウム,亜鉛は共通点が多い。まずどちらも両性金属であり,酸にも塩基にも溶け
る。以下は塩酸に溶解する式である。
Zn + 2HCl→ ZnCl2 +H2 2Al + 6HCl→ 2AlCl3 + 3H2亜鉛は 2価,アルミニウムは 3価なので気をつけてほしい。次に水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えたらどうなるだろうか。亜鉛も
アルミニウムも酸化され,イオンになる。亜鉛やアルミニウムが手
放した電子を受け取るのはNa+でもOH−でもなく水である。水の
水素原子が電子を受け取るのである。だから水素が発生する。また
亜鉛,アルミニウムは錯イオンになる。
Zn + 2NaOH+ 2H2O→ Na2[Zn(OH)4] + H22Al + 2NaOH+ 6H2O→ 2Na[Al(OH)4] + 3H2
これらの式を丸々覚えるのは少々キツい。だから錯イオンの式と
発生する水素の量を覚えておくと便利である。つまりテトラヒドロ
キソ亜鉛酸イオン [Zn(OH)4]2− とテトラヒドロキソアルミン酸イオン [Al(OH)4]− を覚えて,Zn→ H2と 2Al→ 3H2のように発生する水素の量を覚えておけば反応式を自分で作ることもできる。また,亜鉛はアンモニア水にも溶けることを覚えておきたい。水酸化亜鉛
Zn(OH)2にアンモニア水を過剰に加えたら次のように溶ける。しかしアルミニウムはアンモニア水では溶けないので気をつけてもらいたい。
Zn(OH)2 + 4NH3 → [Zn(NH3)4]2+ + 2OH−
化 合 物
アルミニウムの鉱石はボーキサイトとよばれる。ボーキ
サイトは主として酸化アルミニウム Al2O3を含む。両性金属ということを利用して水酸化ナトリウム水溶液などを加
えて溶かす。酸化物も次のようになる。
Al2O3 + 2NaOH+ 3H2O→ 2Na[Al(OH)4]そして不純物をろ過などして除去し加熱すると,純粋な酸
化アルミニウムができる。これをアルミナという。
また,アルミニウムも亜鉛も化合物はすべて白色である。
水酸化アルミニウム Al(OH)3,酸化アルミニウム Al2O3,水酸化亜鉛 Zn(OH)2,酸化亜鉛ZnO,硫化亜鉛 ZnSすべて白色である。そして錯イオンはすべて無色である。これを覚えておけばラクである。しかし硫化亜鉛 ZnSは酸性溶液中では生成しない。詳しくは「硫化物沈殿」の項で取り扱う。
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気体の発生
基本的に水上置換法
CO,NO,H2,O2,N2水に溶けやすいものは分子量 (空気 28.8)で 下方置換か上方置換かを判断
とにかく反応式をたくさん覚えること
酸化還元反応
鉄,アルミニウム,亜鉛などイオン化傾向の高い金属に塩酸や希
硫酸を加えると水素が発生する。鉄,亜鉛は 2価,アルミニウムは3価のイオンになることを覚えてもらいたい。鉄は 3価のイオンにもなるが,水素が発生するときは 2価である。Zn + 2HCl→ ZnCl2 +H2 Zn + H2SO4 → ZnSO4 +H2Fe + 2HCl→ FeCl2 +H2 Fe + H2SO4 → FeSO4 +H2
2Al + 6HCl→ 2AlCl3 + 3H2 2Al + 3H2SO4 → Al2(SO4)3 + 3H2 その次に,銅や銀に酸化力のある酸,つまり希硝酸や濃硝酸,熱
濃硫酸を加える場合をしっかり覚えてほしい。発生する気体は金属
によって決まるのではなく,液体によって決まる。
●希硝酸・加熱不要 HNO3 + 3H+ + 3e− → NO+ 2H2O 一酸化窒素が発生する。銅と希硝酸の反応は覚えるべき。
3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO+ 4H2O●濃硝酸・加熱不要 HNO3 +H+ + e− → NO2 +H2O 半反応式の通り,二酸化窒素が発生する。銅との反応は次のよう
になる。希硝酸と合わせて覚えておきたいものである。
Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2NO2 + 2H2O●熱濃硫酸・要加熱 H2SO4 + 2H+ + 2e− → SO2 + 2H2O 二酸化硫黄が発生する。銅との反応は次のようになる。また,濃
硫酸を酸化剤として用いる時,加熱が必要である。
Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + SO2 + 2H2O
弱酸遊離・弱塩基遊離
金属単体に薬品を加えるのは酸化還元反応を利用しているが,その他としては中和反応や
弱酸遊離反応を利用しているものもある。
●硫化水素 硫化鉄 (II)に希塩酸や希硫酸を加えて発生させる。FeS + 2HCl→ FeCl2 +H2S(下方置換)
●アンモニア 塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混合して加熱。
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O+ 2NH3(上方置換)●二酸化硫黄 濃硫酸を使わずに発生させる方法もある。亜硫酸ナトリウムを弱酸遊離させ
る。亜硫酸というのは硫酸から酸素を 1個減らしたもので,2価の弱酸である。Na2SO3 +H2SO4 → Na2SO4 + SO2 +H2O(下方置換)
亜硫酸 H2SO3は不安定な分子であり,すぐに二酸化硫黄と水になる。
c2099-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
鉄 (改訂 1.0)
Fe2+ Fe 3+
淡緑 黄
Fe(OH)2 Fe(OH)3緑白色 赤褐色
FeO Fe2O3黒 赤褐色
鉄関連のイオン・化合物は様々な色
酸に溶けて水素を発生
アルカリにはとけない
中性・アルカリ性でFeS(黒)の沈殿濃硝酸・濃硫酸で不動態
様々に変化する色
鉄は身の回りに多く存在するが,純粋な鉄は少ない。鉄イオンや鉄の化合物には様々な色
がある。無機の決め手となる。まず Fe2+(淡緑)と,Fe3+(黄)は何よりも先に覚えてもらいたい。資料集などを毎日のように眺めて脳裏に焼き付けてほしい。
●塩基を加える 鉄は塩基には多少に関わらず溶けない。水酸化
物が沈殿するだけである。鉄イオンを覚えた後は水酸化物の色を
覚えてもらいたい。水酸化鉄 (II)と水酸化鉄 (III)は色が違う。Fe2+(淡緑) + 2OH− → Fe(OH)2 ↓(緑白色)Fe3+(黄) + 3OH− → Fe(OH)3 ↓(赤褐色)
●硫化水素を加える 酸性では沈殿しないが中性,アルカリ性で
沈殿する Fe2+は FeS(黒)になる。Fe3+も硫化水素の還元力により Fe2+になり,FeSをつくる。Fe2S3 などは考えないように。●酸化物 酸化鉄にも種類が多い。水酸化鉄を加熱しても水が抜けて酸化物が生成する。ま
ず,酸化鉄 (II)は FeOとなる。これは黒色である。酸化鉄 (III)は Fe2O3であり,赤褐色となる。また,鉄鉱石には Fe2O3の赤鉄鉱と Fe3O4の磁鉄鉱がある。磁鉄鉱の酸化数を求めようとすると分数になるが,これは Fe2+(Fe3+)2O4のように,2価と 3価の鉄が共存するのである。
ヘキサシアノ鉄 (II)・(III)酸イオン 鉄 (II)イオンと鉄 (III)イオンは色でも十分に判別できるが,ヘキサシアノ鉄酸イオンという錯イオンでも検出できる。CN−
が 6つと Fe2+または Fe3+が結合したものでヘキサシアノ鉄 (II)酸カリウム K4[Fe(CN)6]とヘキサシアノ鉄 (III)酸カリウム K3[Fe(CN)6]がある。Fe2+にヘキサシアノ鉄 (III)酸イオンで濃青色沈殿,Fe3+にヘキサシアノ鉄 (II)酸イオンで濃青色沈殿をつくる。つまり,Fe2+と (III), Fe3+と (II)で濃青色沈殿をつくる。要するに 2と 3,3と 2である。ちなみに沈殿は Fe3[Fe(CN)6]2,Fe4[Fe(CN)6]3 である。酸化数とカリウムの数が違っているので注意したい。
また,Fe3+だけであるが,チオシアン酸カリウム水溶液 (KSCN)を加えると,赤血色水溶液となる。必ず覚えてほしい。
c1244-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
銅
銅はイオン化傾向が低い
Cu2+(青) Cu(OH)2(青白)CuO(黒) Cu2O(赤褐色) CuS(黒)[Cu(NH3)4]2+テトラアンミン銅 (II)イオン (深青色) 炎色反応を起こす (青緑色)
酸化されにくい金属
単体銅はイオン化傾向が水素よりも低く水素を還元できないた
め,希酸には溶けない。すなわち× Cu + 2HCl→ CuCl2 +H2などとはしないでほしい。溶かすためには硝酸や濃硫酸などの酸化
力の強い酸が必要である。銅は還元剤となり,Cu→ Cu2+ + 2e−のような半反応式となる。またこのとき,水素は発生しない。
濃硝酸との反応 Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2NO2 + 2H2O熱濃硫酸との反応 Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + 2H2O+ SO2
銅イオンや銅の化合物
銅の電気陰性度は他の非金属元素と比べ,それほど大きくは
変わらない。そのため共有結合性が強くなり,水に溶けにくい
ものが多い,まず塩化銅水溶液などに塩基性の水溶液を加える
と,水酸化銅 (II)の青白色沈殿が生じる。ここにアンモニア水を多く加えると溶けて錯イオンであるテトラアンミン銅 (II)イオン [Cu(NH3)4]2+を生じる。この水溶液はシュバイツァー試薬ともよばれ,深青色となる。反応は次のとおり。
Cu(OH)2 + 4NH3 → [Cu(NH3)4]2+ + 2OH−
●硫化水素 銅イオンも硫化水素によって硫化物沈殿をつくる。沈殿
物は硫化銅 (II) CuSであり,黒色である。●硫酸銅 銅イオンの水溶液でメジャーなのは硫酸銅 (II)水溶液である。また,これを結晶にすると硫酸銅 (II)五水和物結晶CuSO4 · 5H2Oとなる。これは美しく青い結晶である。これを加熱すると結晶水が抜
けて硫酸銅 (II)になる。結晶水を持たない硫酸銅 (II)は無色の粉末である。
●酸化 水酸化銅 (II)は加熱することで酸化物となり,黒色となる。CuOは黒色であるが,1000℃以上で強熱すると酸化銅 (I)Cu2Oとなり,赤褐色になる。酸化銅 (II)が CuO,酸化銅 (I)が Cu2Oと若干紛らわしいので注意したい。
銅の合金
銅は合金にも用いられる。黄銅 Cu-Zn(金管楽器など),白銅 Cu-Ni(100円玉など),緑銅 Cu-Sn(銅像など) は結構出題されている。
c72-2■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
銀 (改訂 2.0)
イオン化傾向の低い金属
Ag+と [Ag(NH3)2]+は無色AgCl(白) AgBr(淡黄色) AgI(黄)Ag2S(黒) Ag2CrO4(暗赤色) Ag2O(暗褐色)銀は濃アンモニア水に溶ける
単体銀と銀イオン
銀 Agや銅 Cuなどのイオン化傾向が低い金属は希酸では酸化できない。金属が水素イオンを還元できないからである。酸化す
るには硝酸や熱濃硫酸などの酸化力のある酸が必要であり,気体
水素は発生しないので気をつけてもらいたい。
2Ag + 2H2SO4 → Ag2SO4 + SO2 + 2H2OAg + 2HNO3 → AgNO3 +NO2 +H2O
銀の単体は銀白色をしており,硝酸や熱濃硫酸などで銀 (I)イオンを作る。銀イオンに塩基性の水溶液を加えると,水酸化銀 (I)ではなく,酸化銀 (I)Ag2Oという暗褐色の沈殿が生成する。
2Ag+ + 2OH− → Ag2O+H2Oこの後,水酸化ナトリウム水溶液をどれだけ加えても沈殿が溶けることはないが,アンモニ
ア水を多量に加えると沈殿が溶解し,[Ag(NH3)2]+で表される錯イオンのジアンミン銀 (I)イオンが生成する。また,Ag+に硫化水素を加えると,Ag2Sの黒色沈殿を生じる。
2Ag+ + S2− → Ag2S Ag2O+ 2NH3 +H2O→ [Ag(NH3)2]+ + 2OH−
またクロム酸カリウム水溶液などを加え,銀 (I)イオンとクロム酸イオンと結びつくと暗赤色 (赤褐色)のクロム酸銀 (I)Ag2CrO4の沈殿を生じる。
ハロゲン化銀
ハロゲンイオンと銀は結びつきやすく,AgCl(白),AgBr(淡黄色),AgI(黄)はすべて水に溶けずに沈殿する。フッ化銀 (I)AgFはフッ素の電気陰性度が非常に高くてイオン結合性が強く,水に
溶ける。硝酸銀 (I)水溶液に塩化ナトリウム水溶液や塩酸などを加えると白濁する。これは AgClの沈殿である。 その他ハロゲン化銀には感光性がある。代表的なのは塩化銀 (I)と臭化銀 (I)であり,光を当てると次のような分解反応が起こる。
2AgCl→ 2Ag + Cl2また AgClは濃アンモニア水にも溶けて錯イオンになるが,反応式は次の通り。
AgCl + 2NH3 → [Ag(NH3)2]+ +Cl−基本的にハロゲン化銀の性質は次の通りなのでしっかりと覚えておきたい。ヨウ化銀 (I)はアンモニア水にも溶けないので確実に覚えておくべきである。
AgF AgCl AgBr AgI濃アンモニア水に溶けるか ○ ○ △ ×
水に溶けるか ○ × × ×
c2270-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
ク ロ ム
あらゆる色に変化する
バラエティに富んだクロム
Cr3+緑 CrO 4 2−黄色 Cr2O7
2−赤橙色
正確に覚えることが大切
硫酸酸性の二クロム酸カリウムは酸化剤
水溶液の色
クロム,鉄の難しいところは色が変わることである。予想外の色になることもあるので必
ず覚えておいてもらいたい。クロム単体は普通の金属で銀白色である。水溶液中でのクロム
のイオンはクロム (III)イオンであり,Cr3+。これは緑色である。次に CrO4 2−のクロム酸
イオンは黄色であるが,酸性にすると次のように二クロム酸イオンを生じる。どちらもクロ
ムの酸化数は 6である。Cr3+緑色 CrO42−黄色 Cr2O72−赤橙色
2CrO42− + 2H+ → Cr2O72− +H2O
沈殿の色
クロム酸イオンも他の金属イオンと結合して沈殿することが多
い。よく出るものとしてはクロム酸銀 Ag2CrO4(暗赤色)とクロム酸バリウム BaCrO4(黄),クロム酸鉛 PbCrO4(黄)がある。クロム酸銀の暗赤色は赤褐色でもよいが,やや不気味な色である。
Ag2CrO4 暗赤色 BaCrO4,PbCrO4 黄色 例えば鉛 (II)イオン,バリウムイオン,銀 (I)イオンのいずれかを含む水溶液にクロム酸イオンを加えて沈殿が生じた場合,暗赤色なら銀と確定できる。
また黄色になったらバリウムか鉛に絞り込むことができる。
酸 化 剤
硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液は酸化剤としてはたらく。
半反応式は
Cr2O72− + 14H+ + 6e− → 2Cr3+ + 7H2Oのようになる。滴定の終了はすべての二クロム酸イオンがクロム
(III)イオンになったときであり,溶液のオレンジ色が消えて緑色がかったときである。
また,マンガン Mn も覚えておきたい。過マンガン酸イオンMnO4−は酸性中では酸化剤となり,
MnO4− + 8H+ + 5e− → Mn2+ + 4H2Oのような半反応式となる。Mn2+はわずかに淡桃色を示す。またMnO4−は紫色を示す。酸化還元滴定の終点は色が消えなくなったときである。もともと過マンガン酸イオンは紫色を
しており,酸化剤としてはたらく,還元されるとMn2+ になる。これはほぼ無色に近いので色が消えたように見える。しかし還元されなくなると,その色のまま残るからである。
c49-3■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
両 性 金 属
Al Zn Sn Pbああ,すんなり (両性金属)
一般に,金属に塩基を加えると
水酸化物が沈殿する
しかし過剰に加えると
溶けるものがある
→両性金属
塩基に溶ける金属
無機分野の最頻出問題として,金属イオンの分析がある
が,その中でアンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液を加
えるものが出てくる。イオン化傾向がAl以下のものは少量の塩基で水酸化物が沈殿する。ただ,Ag+は例外的に
2Ag+ + 2OH− → Ag2O+H2Oのように酸化銀ができる。
その水酸化物,または酸化物に対し,さらに塩基を加え
ると錯イオンを作って溶ける。たとえば AlであればAl(OH)3 +OH− → [Al(OH)4]−
のようになる。過剰の強塩基により,錯イオンを作って溶
ける金属元素を覚えておくべきである。Al,Zn,Sn,Pbの 4つであるが,有名な語呂合せとして「嗚呼 (ああ),すんなり (両性に愛される)」というものがある。
アンモニアに溶ける金属
銅イオンを含む水溶液にアンモニアを少し加えると Cu2+ + 2OH− → Cu(OH)2 ↓ のように,水酸化物が沈殿するが,多量に加えると
Cu(OH)2 + 4NH3 → [Cu(NH3)4]2+ + 2OH−
のように錯イオンを作って溶けるものがある。アンモニアで溶けるものはこの 3つを覚えたい。Ag,Cu,Znで,銀メダルと銅メダルの和え物 (あえもの)は,あんまりという語呂で覚えられたら覚えたい。下の表にまとめておく。
Al3+ Zn2+ Fe2+ Fe3+少量の塩基 Al(OH)3 Zn(OH)2 Fe(OH)2 Fe(OH)3過剰の NaOH [Al(OH)4]− [Zn(OH)4]2− Fe(OH)2 Fe(OH)3過剰アンモニア Al(OH)3 [Zn(NH3)4]2+ Fe(OH)2 Fe(OH)3
Pb2+ Cu2+ Ag+少量の塩基 Pb(OH)2 Cu(OH)2 Ag2O過剰の NaOH [Pb(OH)4]2− Cu(OH)2 Ag2O過剰アンモニア Pb(OH)2 [Cu(NH3)4]2+ [Ag(NH3)2]+
Fe(OH)2淡緑色 Fe(OH)3赤褐色 [Cu(NH3)4]2+深青色水溶液
Cu(OH)2青白色 Ag2O暗褐色
c50-3■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
硫化物沈殿 (改訂 1.0)
硫化水素と金属イオンの結合で
酸性でも沈殿するものは
Ag2S PbS CuS(黒) CdS(黄)中性,アルカリ性で沈殿するものは
FeS(黒) ZnS(白) MnS(桃)硫化水素で沈殿するもの
硫化水素は腐乱臭というとんでもない臭いを発する無色の気体で,
水溶液中では H+,HS−,S2− のイオンに電離し,一部の金属イオン
とイオン結合をし,沈殿を作る。入試でよく問われるものとして次の
ものをがある。
Ag Pb Cu 黒色沈殿 Cd 黄色沈殿ゲンナマは どうも 黒いが 角は黄色
これらは酸性,中性,アルカリ性のいずれでも沈殿する。Ag+はAg2Sに,Pb2+は PbSに,Cu2+は CuSに,Cd2+ は CdSになる。これらはすべて沈殿する。しかし Feや Znは酸性の状態では沈殿しない。これも合わせて覚えてもらいたい。ちなみに中性,アルカリ性のみで沈
殿するものは FeS(黒)や ZnS(白),MnS(桃)の 3つを必ず覚えておきたい。まずはこの 7個を覚えておき,あとは少しずつ覚えればよい。 たとえば Fe2+,Cu2+,Ag+ に塩酸を加え,沈殿を除去したのち硫化水素を加えたとする。まず塩酸を加えると AgClが沈殿するので,ろ液には Fe2+と Cu2+ のみが残ることになる。次にその状況では塩酸により溶液が酸性になっているので,硫化水素を加えても FeSは沈殿しない。よって CuSが沈殿し,Fe2+は溶液中に残ることになる。
沈殿の理由
ここからは少々化学 IIの範囲を含むため,Iのみの人や,センターのみの人は読み飛ばしてもらってかまわない。
まず硫化水素であるが,H2S H+ +HS−,HS− H+ + S2−のように電離する。また金属イオンM2+
と硫化物イオン S2−の溶解度積をK とすると,
Ksp[mol2/�2] = [M2+][S2−] =一定値となる。酸性のときは平衡の移動により [S2−]が下がるので沈殿しにくい。Ag2S,PbS,CuS,CdSなどは溶解度積が小さいので,少量の S2− で沈殿する。ところが FeSや ZnSなどは溶解度積が大きく,酸性では溶けてしまい沈殿しない。逆に考えると,硫化
鉄,硫化亜鉛などは塩酸などの強酸に弱酸遊離反応のしくみで溶けて硫化水素を発生するこ
とも分かる。入試問題で溶解度積が出る場合,硫化物沈殿が題材に扱われることが多い。講
義ノートの溶解度積で硫化鉄を扱っているのでそちらも参照されたい。
c1242-2■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■
弱 酸 遊 離 (改訂 1.0)
弱酸由来の陰イオンが塩のとき
強酸に追い出される
石灰石に塩酸を加えて
二酸化炭素を発生させる反応もこの原理
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 +H2O+ CO2
結局は中和反応のようなもの
炭酸塩やリン酸塩に対し,それらよりも強力な酸を加えると,
そのイオンは反応する。習慣上,弱酸追い出し反応や弱酸遊離な
どという。小学校のときから親しんでいる石灰石と塩酸の反応も
これである。石灰石の主成分である炭酸カルシウムは弱酸である
炭酸イオンがカルシウムイオンと結びついたものである。ここに
塩酸を加えると,HClと CaCO3の陰イオンが入れ替わるものと思ってもらえばいい。この他,硫化鉄 FeSに硫酸を加えて硫化水素を発生させるものもそうである FeSは硫化水素H2Sと鉄 (II)イオンとでできた塩である。ここに強酸である硫酸 H2SO4 を加えると,硫酸イオンが硫化物イオン S2−を追い出す。
FeS + H2SO4 → FeSO4 +H2S また数は少ないが,弱塩基遊離反応もある。アンモニアの発生であるが,塩化アンモニウ
ムと水酸化カルシウムを反応させることである。
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O+ 2NH3これは弱塩基のアンモニアが塩となっている塩化アンモニウムの NH4+ を強塩基である水酸化カルシウムが追い出す反応である。
このように,弱酸,弱塩基遊離によって遊離された酸や塩基は気体となって外へ出たり,
水溶液中に残ったりするのは,塩の座を奪われるというイメージである。
応 用
炭酸イオン,硫酸イオン,硝酸イオンをいずれか含む A,B,Cの水溶液の中で炭酸を探す方法として,弱酸遊離を応用できる。まず,水酸化バリウム (または水酸化カルシウム)水溶液を加えてみる。すると,B,Cが白い沈殿を作った。その次にA~Cに塩酸を加えたら Bからのみ気体が発生した。 水酸化バリウムで沈殿するということは,Baと難溶性の塩を作ったといえる。Bと Cが炭酸バリウムBaCO3,硫酸バリウムBaSO4のいずれかということが分かる。塩酸を加えると,弱酸の塩である炭酸は追い出されて二酸化炭素を発生する。
BaCO3 + 2HCl→ BaCl2 +H2O+CO2となるので,気体の発生した Bが炭酸イオンをもつと分かる。ちなみに Cは硫酸イオンであり,Aは消去法により硝酸イオンと分かる。
c1239-1■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■