まちづくり過程としての -...

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まちづくり過程としての 「つくばスタイルフェスタ2005」 筑波大学助教授 渡和由 (筑波大学大学院人間総合科学研究科 芸術学系) 「売れるつくば」ワークショップ2002 茨城県と都市機構、つくば市、守 谷市、伊奈町、谷和原村が主催した 「つくばスタイルフェスタ2005」の 特徴のひとつは自主的な市民との協 働による計画の親交的デザイン過程 にあると考えている。本年度赴任し て参画した都市機構のスタッフは、 「いろいろな市民や大学の方々が参 画していてびっくりした」と言う。 この体制づくりには3年の前段がある。 筑波大学のキャンパスリニューア ルで「自ら企画して自らデザインし て自ら造る」プロジェクトを体験し た私は、対立的ではなく親交的に関 係者が協働で行うビジョンづくり、 場所づくりの可能性を感じていた。 そのキャンパスリニューアルが終 了した記念イベントの日に、別の会 合で知り合った市民有志と大学との 協働で、市民や学生がそれぞれ考え ていることを出し合うイベント「売 れるつくば」ワークショップを2002 年の秋に行った。ニューアーバニズ ムなどの計画過程で行われている 「シャレット」の短期版として3日間 連続で企画した。その特徴である 図1「つくばスタイルフユ:スタ2005」会場全体図 「必ず図化する」ことを徹底して参 加者全員に「欲しい場所/欲しいこ と」のアイデアを描いてもらった。 参加者約30名により1日で264枚の 絵ができあがった。A4用紙に絵と キャッチコピーと解説により構成さ れたアイデアシートはまちづくりの ための「パタン・ランゲージ」をつ くる意図もあった。3日目にはそれ らのランゲージを集約して15の提案 集をつくった。 成果のパンフレットづくりは地元 企業である㈱カスミの神林会長の助 言と賛同により実現し、関係各所に 市民有志の思いとして出前して回っ た。その主旨は現在も変わらず参加 者の原動力となっており、茨城県や 都市機構と協働ビジョン構築を行う 体制づくりのきっかけとなった。 「売れる」の意味は「つくばの売 り」、既存資源と新資源をつくる可 能性を探ることにあった。また「売 れるまち」の商品化にはユーザーの 視点が不可欠であり、多くの関係者 を引きつけるキャッチーなタイトル を考えた。アイデアは、個々の欲望 から発するもので良く、自発性を誘 発し、多くの個が集合するコレクテ 48 家とまちなみ53〈2006.3>

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まちづくり過程としての

「つくばスタイルフェスタ2005」

筑波大学助教授

渡和由(筑波大学大学院人間総合科学研究科 芸術学系)

「売れるつくば」ワークショップ2002

 茨城県と都市機構、つくば市、守

谷市、伊奈町、谷和原村が主催した

「つくばスタイルフェスタ2005」の

特徴のひとつは自主的な市民との協

働による計画の親交的デザイン過程

にあると考えている。本年度赴任し

て参画した都市機構のスタッフは、

「いろいろな市民や大学の方々が参

画していてびっくりした」と言う。

この体制づくりには3年の前段がある。

 筑波大学のキャンパスリニューア

ルで「自ら企画して自らデザインし

て自ら造る」プロジェクトを体験し

た私は、対立的ではなく親交的に関

係者が協働で行うビジョンづくり、

場所づくりの可能性を感じていた。

 そのキャンパスリニューアルが終

了した記念イベントの日に、別の会

合で知り合った市民有志と大学との

協働で、市民や学生がそれぞれ考え

ていることを出し合うイベント「売

れるつくば」ワークショップを2002

年の秋に行った。ニューアーバニズ

ムなどの計画過程で行われている

「シャレット」の短期版として3日間

連続で企画した。その特徴である

図1「つくばスタイルフユ:スタ2005」会場全体図

「必ず図化する」ことを徹底して参

加者全員に「欲しい場所/欲しいこ

と」のアイデアを描いてもらった。

参加者約30名により1日で264枚の

絵ができあがった。A4用紙に絵と

キャッチコピーと解説により構成さ

れたアイデアシートはまちづくりの

ための「パタン・ランゲージ」をつ

くる意図もあった。3日目にはそれ

らのランゲージを集約して15の提案

集をつくった。

 成果のパンフレットづくりは地元

企業である㈱カスミの神林会長の助

言と賛同により実現し、関係各所に

市民有志の思いとして出前して回っ

た。その主旨は現在も変わらず参加

者の原動力となっており、茨城県や

都市機構と協働ビジョン構築を行う

体制づくりのきっかけとなった。

 「売れる」の意味は「つくばの売

り」、既存資源と新資源をつくる可

能性を探ることにあった。また「売

れるまち」の商品化にはユーザーの

視点が不可欠であり、多くの関係者

を引きつけるキャッチーなタイトル

を考えた。アイデアは、個々の欲望

から発するもので良く、自発性を誘

発し、多くの個が集合するコレクテ

48 家とまちなみ53〈2006.3>

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写真1「売れるつくば」の提案の一つ「ぼくらの駅には森がある」イメ

ージ。画像合成で描かれている内容は「つくばスタイルフェスタ2005」

で全て実現した。

写真2古民家の背景に広がる隣地である民有緑地と残された森。円形のベ

ンチは伐採した森の木を利用したもの。

イブ・アイデアとなる。それらが、

文化となりビジネスモデルや商品と

して実業に結びつくことによって、

景観化し、継続と地域のブランドを

つくる可能性があると考えた。絵に

する意味は、形にしてみることによ

りビジョンを共有し易くするためで

ある。そのわかりやすさが協働体制

を拡げていこうとする人々を引きつ

けた。その後、生活者の視点による

マーチャンダイジングとデザインの

過程を、つくばエクスプレス沿線開

発のチームに少なからずもたらすこ

とになった。

「まちつくリアイデア提供ワークショ

ップ」2003

「もっと多くの地域資源情報とアイ

デアを集め、議論を拡げていく」と

「売れるつくば」の展開目標は、次

年度2003年に茨城県や都市機構の支

援により「つくばエクスプレス沿線

まちづくり.アイデア提供ワークショ

ップ」として実現した。地域にゆか

りのある環境・都市・建築デザイン

の専門家、学生、市民グループ、行

政、商工会、JA、地元建築家の参

加による断続的「シャレット」を行

った。住宅地、まちづくり系で4つ、

賑わい系で2つ、コミュニティサポ

ート系で1つのワークショップを設

け、計30回を超える検討会を行っ

た。いままでに例のない方式で日頃

同席することのない顔合わせのなか、

自由に出し合った提案は多岐に渡っ

た。4つの住宅地の計画案や2つの駅

前商業エリアの大学院生による賑わ

いアイデア提案、ウエルカム・アソ

シエイション提案などがまとまった。

その成果の「ステキ暮らしつくばエ

クスプレスまちづくりアイデア発表

会」(2004年1月31日)には800名

を超える参加者が集まり、つくばの

まちづくりへの興味の強さを実感し

た。

 住宅地提案(渡、ベイカー、温井

による)の一つは「パセオコモンズ」

として研究学園駅前の住宅地計画に

活かされ建設中である。また里山の

ライフスタイルを活かした農のある

民家型住宅地の提案(筑波大学安藤

研究室)は、古民家移築と建設体験

イベントやそば畑・キッチンガーデ

ンの試作実現に結びついた。賑わい

系の提案(県、都市機構、商工会、

JA、渡、ベイカー、石田、太田、学

生、茨城県建築士会らによる)はそ

の後の市民活動の方向イメージを先

取りするものであった。さらに市民

グループ(井口、島袋、糠川ら)に

よるウエルカム・アソシエイション

の提案は、発表会でのギャラリー・

カフェづくり、コミュニティビジネ

スとしての会社設立、地域情報コン

テンツづくりと情報誌のサポート、

各種案内・イベントツアー、ワーク

ショップの継続、インフォメーショ

ンセンター立ち上げの支援などにつ

ながっている。

「つくばスタイル」とPR戦略会議

2004 つくばエクスプレスの開業が間近

になった2004年、沿線開発事業体と

もなる茨城県と都市機構は、引き続

き大学を含む市民グループと協力し

ながらPR戦略の体制をつくること

になった。新しくつくばに住まいを

求めてくる方々をいかにウエルカム

な情報提供と環境で迎えることがで

きるか、ということに主眼をおいた

市民の目線での協働的なPR戦略イ

ベントづくりが始まった。専門家で

ある大手広告代理店(博報堂)も参

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写真3森の木を活用した入口のゲートフェンス。ゆるくデザインされた地

面はいたるところで子供たちの遊び場となった。写真4竹を利用した森の中のワークショップ。

加した会議では市民や学生のアイデ

アを対等に出し合い議論を重ねた結

果、「つくばスタイル」という言葉

がPR戦略キャッチコピーとして定

着していった。

 ワーキンググループの考え方が行

政組織内で合意を得るのは容易でな

かったが、「つくばスタイル」をビ

ジョンとしたPR戦略が開始された

のである。「~スタイル」という言

い方は新しくはないが、行政の開発

キャッチコピーにした例はないと思

われる。つくばエクスプレスの沿線

開発事業体ともなる茨城県と都市機

構は、沿線および筑波山が見える範

囲のエリアの市町村を「リージョナ

ル・シティ」ととらえ、ライフスタ

イルを含むゆるやかなコンセプトが

採用されたことは画期的である。

 大手広告代理店のメディアによる

プロデュースとともに、地域のコン

テンツは地域のコミュニティビジネ

ス組織や市民グループがつくる体制

が生まれ、相互にうまく役割を補完

しあう関係となった。その協働作業

の一つが、軽井沢や湘南などの地域

別スタイル誌を刊行する出版社との

協働によって生まれた「つくばスタ

イル』(エイ出版社)という質の高

いムック誌である。2004年12月に1

号が発刊され、とくに、つくば住民

に好評であった。単なる情報誌とし

てではなく、ニュータウンが醸成し

て一一つの特色ある地域としてプロデ

ュースされ、アイデンティティを持

つことになったつくばを内発的に盛

り上げるためのコンセプチュアル・

メディアとして効果があったと考え

ている。また開発プロジェクト目標

キーワードとしての「つくばスタイ

ル」と直接関連はしないものの、先

導メディアとしての役割を担うもの

であった。さまざまな方法と媒体に

よる「つくばスタイル」という緩や

かな言葉を源にしたメディアミック

スのPRは、イベントとして一つの

節目を迎えることとなった。

 「つくばスタイル」というコンセプ

トは、スタイルという言葉の中にア

ートや美を含んでいる。捉え方の違

いを許容し、特定の定義を持たず、

いろいろなイメージを導き、考える

機会を与えるエンビジョン(envi-

sion:将来の出来事を想像・予見す

る/開かれた構造的な未来展望)づ

くりのためのキーワードと方法であ

ると考えている。身近なファション

や個々の欲望の充足から住環境とし

てのまちや景観への美の探求に至る

まで、環境への哲学を持つきっかけ

にもなるという思いがあった。また、

「分かるようで分からない」のが狙

いである。そのため、提案から現在

に至るまでさまざまなところで「つ

くばスタイル」についての議論は絶

えることがない。その意味で、提案

者としては、成功したと考えている。

「つくばスタイルフェスタ2005」

 「つくば住まいと暮らし博:」という

仮称で呼ばれていた1ヶ月間のPRイ

ベントは、「つくばスタイルフェスタ

2005」と改名された。市民やまちの

利用者のための自発的で身近な祭で

あり、一過性のイベントではないこ

とを含む命名となったと考えている。

具体的な計画は、2004年から茨城

県、都市機構、周辺4市町村と市民

グループによって進められた。

 会場は一、二、三番街として3つ

の会場をつなぐかたちで催された。

三番街(葛城地区)はイメージリー

ダー街区として環境共生型の住宅が

メーカーやビルダーから提案され販

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写真5 トラックによるモバイル型森のレストラン「つくばカフェ」。「カ

フェやショップに囲まれた公園」として大人たちの居場所も提供した。

写真6「筑波山の見えるスカイガーデンカフェ」はありそうで少ない。

売された(本誌別稿で報告あり)。

 会場計画にあたってのコンセプト

は、同様に「開発と再生」の試みを

行うことであり、下記のような資源

の再活用やリユースの提案を含むも

のであった。

・森をできるだけ残す(二番街)

・伐採した樹木は、そのまま柵、ベ

 ンチなどに活用する

・農業用資材を利用する(ベンチ座

 面など)

・伐採した樹木は、ウッドチップとし

 て林床や敷地内に敷く

・園路や歩路は、土舗装とする

・民家を再生して「手づくり古民家再

 生住宅」パビリオンとして活用する

・古民家を今後公園に移築して再々

活用する

・県産材による離れの小屋を大学に

 移築して再活用する

・セキスイハイムの再生ユニットフレ

 ームを活用して展示ブースとする

・ブースは茨城県建築士会の設計に

 より地産の竹と農業用シート使用

・同ユニットのフレームを今後大学に

移築して再々活用する

・コンペ一等案のコンセプト住宅は、

現場の土を利用してつくった「版築」

である

・つくばらしいガス・ライフを提案

 したガスパビリオンは、継続活用

 される

・男の隠れ家を提案した鶴太郎アー

 トハウスは、継続活用される

・つくばカフェでは森を活かす車両

によるモバイル型商業施設を提示

 した

・クラインガルテンつくばでは農森型

 トレーラーハウス住宅地を提示した

・ウエルカムカフェでは駅前交通広場

で車両モービル型商業施設を提示

 した

 ボケモンキッズガーデンでは森を

活かした低負荷な遊具の提示をし

・地産の石と地元職人技術を活かし

た石のベンチや灯籠の展示をした

・市民活動ブースはリースコンテナに

環境メッセージ装飾を仮設した

 つくば産の食材を活かしたテナン

 トがっくばフードコートなどで活躍

 した

・NPOつくばアーバンガーデニング

によるキッチンガーデンの提示があ

 つた

・バナーには関連4市町村の木、花、

 鳥の環境モチーフを配した

 このような会場デザインの成果は、

「つくばスタイル」の緩やかなコン

セプトのもとに連携した、県、都市

機構、関連4市町村、大学、市民グ

ループと博報堂、プレイスメイキン

グ研究所などのコミュニティビジネ

ス会社の協働によって成立したもの

である。

参画型まちづくりと運営

 「つくばスタイルフェスタ2005」に

は、開学30周年記念行事や教育の一

環としても筑波大学芸術学系の教

員・学生が引き続き計画と運営の一

部に協力することになった。大学で

は芸術学群の演習によるキャンパス

リニューアルや地域への貢献が認め

られ、文部科学省の「特色ある大学

教育支援プログラム」に採択された

こともあり、学生の教育フィールド

にも活用した。安藤邦廣教授指導に

よる古民家移築にともなう茅の刈り

取り、茅葺き、壁塗りなどの体験サ

ポート、民家のふすま絵や壁画制作、

写真の展示、そばの種まきや収穫。

木村浩助教授指導による会場の撮影

記録。貝島桃代研究室と地元工務店

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写真7 ウエルカムストリートの市民活動ブー

スの装飾と担当学生

 藩.

環灘

碗講雑夢 ノ

写真8 セキスイハイム再利用フレームを活用したPRブース

連合体による県産材を使った古民家

の現代的な離れの建設。私の担当と

しては、会場計画提案のほか、学生

チームの企画デザインによる演出バ

ナーや市民団体ブースコンテナの環

境メッセージ装飾デザインなどを主

催者や博報堂との協働で行った。

 主催者と大学のチームによって主

に進められた会場のランドスケープ

計画は、工事が進行中の造成地を使

った予算的にも「スロー」な計画方

針と現実的風景をふまえて、施設で

はなく「アクティビティをデザイン

する」ことを前提に、まず「森を残

す」ことから始まった。メイン会場

の二番街では現地で樹木一本一本を

選定しながら、できるだけ多くの既

存樹木を残した。地域の資源であり、

風景でもあった森を残すことにより、

「売れるつくば」でも提案された「ぼ

くらの駅には森がある」のイメージ

が実現された(写真1)。結果として森

や林の醸し出す神聖な雰囲気が感じ

取れ、古民家の背景にはライフスタ

イルを支えてきた森が景観的にも不

可欠であることが分かった。都市機

構の金岡部長は、フェスタを経験し

てみて「本物が大切であることが分

かった」と語った(写真2)。

 現実的風景をふまえて、箱施設で

はなく「ゆるさ」と「アクティビテ

ィ」をデザインすることを前提にグ

ランドのデザインを行った。入口の

2つの小山や森の木を使ったベンチ

やゲートが子供たちの遊び場になり、

コンペ一等案のコンセプト住宅も記

せずして子供達の遊び場となった。

催しのあるアクティブな森は、幼児

のいるお母さんたちの居場所も確保

して「カフェやショップに囲まれた

公園」(売れるつくば提案)として

平日から賑わったという。会場奥に

設置されたっくばフードコートは意

外と市内にはない「筑波山の見える

スカイガーデンカフェ」(売れるつ

くば提案)をイメージさせるもので

あった(写真3~6)。

 駅前の交通広場から造成地を抜け

る一番街は、市民活動団体のブース

が並ぶ通りとなり、筑波山を眺める

スローな会場である。造成地には花

(コスモス)を植えることとなった。

 会場で店を開いた方々は、「あの

場で試してみた。何がアピールする

か分かった」と言う。県や都市機構

の担当者も「大学や市民との協働が

勉強になった」「若い人が自発的に

なった」「今後のまちづくりの種を

まけた」などの当事者コメントを残

している(写真7、8)。

 私が最も評価したい取り組みの一

つは、「駅から見える花とカフェの

ある公園」(売れるつくば提案)の

実現である。研究学園駅前の交通広

場にあるロータリーを来場者のため

の芝生広場としてステージをつくり、

NPOつくばアーバンガーデニングに

よる花のウェルカムガーデニング、

地元企業の木内酒造によるモバイル

型ビールバーとカスミのキオスクに

よる賑わい支援、商工会の市民ワー

クショップ団体「まちかど音楽市場」

とその登録音楽家による週末駅前コ

ンサートを行った。このイベントは

一ヶ月限りのイベントではあったが、

感激した市民の評価と要望もあり、

予定されていたキスアンドライド用

の駐車スペースとならず、芝生ステ

ージ広;場として残されることになっ

た。駅前の「交通広場」の中心が

人々の「交流広場」として残される

ことになった。今後の課題は広場運

営である(写真9)。

 また、単なる参加に終わらない

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写真9研究学園駅前の芝生広場ウエルカムカフェでのコンサート

「参画」の意識を持ち続けられるエ

ンビジョン型まちづくり過程が必要

であろう。

「つくばスタイルフェスタ」の今後

 「つくばスタイルフェスタ2005」

は、市民ワークショップの一環でも

あり、キックオフであると位置づけ

られた。協働チームとしても、具現

化や実現のための議論はこれからさ

らに継続させていくつもりである。

また、地権者や「立地企業懇話会」

との連携などの可能性も探りたい。

その機運が減速しないように今後の

「つくばスタイル」コンセプトの運

営が必要であると考えている。そこ

で協働チームは仮称「つくばスタイ

ル塾」というインタープリティブ・

ワークショップや小規模だが多発的

で断続的なイベント「つくばスタイ

ルフェスタ2006」の企画を練り始め

た。ムック誌「つくばスタイル』は

4月に第3号発行が予定され、出版

メディアによるまちづくりへの関与

も定着しようとしている。

 ここに述べたつくばでの計画実行

過程は特殊解ではあるが、まちを使

う、または、これから使うユーザー

の視点から取り組み、協働という意

味で一般論としての再現可能性を含

んでいると考えている。機会があれ

ば、改めてレポートをお届けしたい。

渡和由(わたり・かずよし)

1957年群馬県生まれ。筑波大学大学院人

間総合科学研究科助教授。筑波大学芸術

専門学群卒業および同大学院修了。82年

GK設計、90年渡米、現地事務所、ザ・ランドスケープ・アーキテクツ・コラボ

レイティブのディレクターとして日米協

働プロジェクトに携わる。96年よりKTGY社のプロジェクト・ディレクターを務め、主に米国内の住宅地プランニン

グを担当。

写真10 コンセプト住宅「版築」、ガスパビリオン、いばらぎ建築家ネットワーク展会場な

どの各展示施設

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