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SFC Culture Language SFC らしさを表す言葉たち Ver. 0.25 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス

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SFC Culture LanguageSFC らしさを表す言葉たち

Ver. 0.25

慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス

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 “SFC らしい ” という言葉は、学内でも学外でもしばしば耳にします。学生や教員、

卒業生を見て「SFC らしいなぁ」と思うこともあれば、研究や活動に対して「実に SFC

らしいねぇ」と言われることもあります。SFC で学び、SFC に関わり、SFC に触れた人

が感じる “SFC らしさ ”、それは一体何なのでしょうか。

 これまで 25 年間ずっとあり続け、育ってきた “SFC らしさ ”。これは、とてもひとこ

とでは言い表せないものです。あいまいさを含み、多義的で、また未来の可能性にひら

かれています。それゆえ、「SFC らしさとは、◯◯である」とひとことで定義すること

はとてもできそうにありません。しかも、そう定義してしまうと、“SFC らしさ ” とい

うものの本質がスルっとこぼれ落ちてしまうような気がします。

 しかしながら、それはまったく把握不可能なものなのでしょうか。私たちがたしかに

感じているこの “SFC らしさ ” の感覚をなんとか表現し、共有することはできないので

しょうか。

 そこで、本書では、“SFC らしさ ” をひとことで定義するのではなく、“SFC らしさ ”

を構成するたくさんの言葉で表してみることにしました。教職員や学生にインタビュー

を行い、独自の形式でまとめる形をとっています。これらは、多様性をもち、変わり続け、

未来をつくろうとする SFC の「らしさ」を表現するためのキーワードです。私たちは、

この “SFC らしさ ” を表す言葉たちを「SFC Culture Language」と呼ぶことにしました。

 卒業生や関係者の方は、ぜひご自身の SFC での経験を思いながら読んでみてください。

在校生や教職員のみなさんも、自分たちがいるキャンパスについて今いちど考えてみて

ください。そして、受験生やそのご家族を含め、SFC に興味を持っていただいているみ

なさんも、ぜひこれらの言葉をきっかけに、SFC についてのイメージを膨らませていた

だければと思います。そして、「このカルチャー・ワード、たしかに!」と思うものが

あれば、その具体的エピソード・実体験を私たちのところへお寄せいただければと思い

ます。

 さらに、SFC らしくあるために。 本書『SFC Culture Language』によって、多くの人

が SFC らしさを再認識し、SFC について語り合い、未来を切り拓く実践をますます進

められることを期待します。

総合政策学部准教授

SFC 卒業生 (4 期生 )

井庭 崇

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SFC Culture Language とは

  本書では、“SFC らしさ ” を「カルチャー・ランゲージ」(Culture Language)と

いう手法で言語化しています。“SFC らしさ ” を表すこの「SFC Culture Language」は、

27 個の「カルチャー・ワード」でまとめられています。個々のカルチャー・ワードに

示された特徴が、複雑に絡み合いながら全体として醸し出されるのが、“SFC らしさ ”。

逆にいえば、“SFC らしさ ” がどのような要素でつくられているのかは、個々のカルチ

ャー・ワードに記述されている、という関係となるように概念を体系立て、構成してい

ます。

 一つひとつのカルチャー・ワードには、SFC でよく観察される現象(特徴的な活動、

様子、状態)と、その背景、そして、それがさらにどのような現象につながっているの

かを記述しています。個々のカルチャー・ワードだけを見れば、他の組織・コミュニテ

ィでも見られる特性もあるでしょう。ですが、文化は単純にひとつの要素から成り立つ

わけではありません。この 27 個すべてが関係しながら編み上げられ、表現される現象は、

まさしく “SFC らしい ” ものであるということが、SFC Culture Language の考え方なの

です。

 カルチャー・ランゲージは、その組織・コミュニティに属する人へのインタビューを

もとにつくられます。この SFC Culture Language も、SFC の学生と教職員、卒業生約

50 人へのインタビューと、プロジェクト・メンバーの経験、そして、開設当時から現

在までにあった出来事のエピソードにもとづいてつくられています。彼ら・彼女らが語

った “SFC らしさ ” の要素をボトムアップに整理・分類し、抽象化して記述し、体系化

しました。どのカルチャー・ワードも、その根っこは、SFC で実際に起こった、もしく

は今も起こっていることに紐づいています。

 27 個のカルチャー・ワードは、「多様性」「変わり続ける」「未来をつくる」の 3 つの

グループに分かれています。そして、3 つのグループにはそれぞれ 9 つのカルチャー・

ワードが含まれています。

 カルチャー・ワード一つひとつには、その内容を端的に表した言葉が「名前」として

つけられています。この「名前」を使うことで、その特性を認識し、他の人と話し合っ

たり、説明したりすることができるようになります。例えば、「メディアセンターに 3D

プリンターをいち早く導入するという《思い切った実験》をしたのは、SFC らしいねぇ」

「昨年の秋祭の企画がスムーズに進んだのは《得意の持ち寄り》がうまくできていたか

らかもね」「じゃあ今年は…」などと話すことで、より “SFC らしさ ” を形づくっていく

ことにもなるでしょう。

 このように文化を言葉にすることで、その文化を共有している人は、自分らしくその

文化を体現できるようになり、経験していない人はその情報を得て、参照することがで

きるようになります。また、その文化についてのコミュニケーションが生まれるきっか

けにも、見直すための材料ともとなり得ます。ぜひ、学生も教職員も、卒業生も関係者

のみなさんも、これから仲間になろうとするみなさんも、それぞれの視点で読んで、自

分のルーツを振り返ったり、語り合ったりしていただければと思います。

多様性(カオスと協調)

未来をつくる(創造と実践)

変わり続ける(成長と進化)

新しいリテラシー

言語の眼鏡

仕組みをつくる

未来の先取り

動かしながらつくる

徹底した話し合い

新しい学問をつくる

新しい地図を描く

情熱の共鳴

斬新な組み合わせ

それぞれの学び

いろんな人

さまざまな活躍

模索の時間

地道なつくり込み

世に問う

最先端に飛び込む

自分の形づくり

実際の問題解決

夢を語る

開拓スピリット

リスペクト&フラット

多様なプロジェクト

得意の持ち寄り枠に

とらわれない

SFC

数足のわらじ

思い切った実験

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カルチャー・ランゲージという方法

 世の中には、校風や社風という言葉があるように、何らかのコミュニティに流れる独

特の雰囲気というものが、たしかにあります。けれど、それがどういった特徴から醸し

出されているのかを把握し、それを言葉で言い表すことはなかなか難しいものです。カ

ルチャー・ランゲージは、その「文化を語るための言葉をつくる」ことに挑戦する新し

い研究です。

 文化を表す言葉をつくるということは、人々が扱うことができる形にするということ

です。こうすることによって、その特徴を他の人と同じ形として認識し、語ることがで

きるようになります。よいところをさらに伸ばすように努力したり、なぜそのような文

化が形成されたかを考えることで、変えていったりすることもできるでしょう。文化を

見える形に記述することは、SFC のような教育機関はもちろん、企業や自治体などの多

くの組織にとっても、組織力を高め、その強みをさらに活かしていくための基盤となる

と考えられます。

 本書では、そのカルチャー・ランゲージの初めての試みとして、“SFC らしい ” とい

う質感を生み出す要素を言語化しました。この方法には、私たち井庭崇研究室がふだん

行っている「パターン・ランゲージ」研究における「複数の事象の本質をつかみ、それ

を抽象化して記述し、覚えやすく魅力的な言葉を与える」ための独自の手法を応用して

います。※

 本書のカルチャー・ランゲージでは、SFC では何がよいとされているのか・観察され

るのか、それはどのような仕組みや考え方で生み出されているのか、そして、それはど

のようなことにつながっていくのか、という構成で、一つひとつのカルチャー・ワード

を表現しました。これも、パターン・ランゲージで暗黙的な実践知を言語化するときの

表記方法をアレンジしてつくられています。

 「カルチャー・ランゲージ」は、これまで世界で研究されてきた「パターン・ランゲージ」

から派生した新しい方法です。本書の「SFC Culture Language」は、世界で初めてのカ

ルチャー・ランゲージの実例ということになります。ぜひ、最先端の研究の成果として

も、本書をご覧いただければと思います。

※パターン・ランゲージついては、巻末の井庭研究室の紹介をご参照ください。

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多様性Diversity

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No.

Mix of People

いろんな人

学生にも教職員にも、

とにかくいろんな人がいる。

No.1

ひとつのキャンパスに、多種多様な人がいる。

社会問題を解決したい人、新しい技術を駆使して何かをつくりたい人、ビジネス

を興したい人、異文化をつなぎたい人、最先端の科学研究に取り組みたい人、よ

い作品をつくりたい人、地域を元気にさせたい人…。SFC には多様な興味・関心

をもつ人がいる。ベンチャーの社長やモデル、デザイナーなど学外でも活躍して

いる学生もいるし、海外で長く暮らしていたり、特殊な経験を積んでいる人もいる。

謎の感性や能力、一般的ではない興味・関心を持っている人もいて、自分のなか

での常識を覆されるほど、多様な人と触れあうことになる。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC では、1990 年のキャンパス開設当初から AO 入試を実施しており、個性・輝

きをもつ多様な学生を受け入れ続け、また教員の採用においても独自性を重視し

てきた。そのため、多様な人が混在するということが、文化形成の当初から当た

り前の状況であった。また、昔ながらの 9 月入学の制度に加え、近年では英語

で行われる授業だけで卒業ができる GIGA (Global Information and Governance

Academic) プログラムも始まり、いろいろな国から学生が集まって、ますます多

様化は進んでいる。教員も既存の《枠にとらわれない》考え方で、自由な発想の

研究・教育をしている人が多く、それは望ましいことだという空気がある。

▼それゆえ

多様性を認めながら、自分の中の独自性を強めることができる。

自分とは異なる視点を持っていたり、自分からは考えられないような活動をして

いる人と出会ったりするなかで、人のもつ個性や多様性に気づき、また、自分の

強みや弱みも発見していく。自分が自信をもってできることや独自の視点がはっ

きりし、それに根ざした活動を始めてみることで、その個性が強化され、ますま

す自分らしいあり方や、自分のもつ力が見えてくる。

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No.

Variation in Learning

それぞれの学び

同じ学部であっても、

ひとりひとりが違う学びをしている。

No.2

それぞれが自分の成長に必要なものを見極めて、学ぶ内容やスタイルを選んでいる。

自分で学びたい・必要だと感じたものを学び、もう十分だと思えば次のことへと

移っていく。得意なことを伸ばすのも、基礎を固めるのも自由だし、今の自分の

専門や専門分野の常識にもとらわれず、学ぶ内容をいつも自分で選択し続けてい

る。それにより、専門や所属研究会を変えることがあったり、他キャンパスで勉

強することもあったりするが、紆余曲折を経ながらも、自分が学びたいと思い、

納得できる学びを積み上げていく。

▲それを生み出す仕組みや考え方

固定的で一様な学びのプログラムはなく、学年や学部に関わらず、すべての授業

科目を履修することができるカリキュラムとなっている。研究会も学部1年生の

ときから履修することができ、学びたいテーマの《最先端に飛びこむ》ことがで

きる環境が整っている。また、教員も同様で、専門を変えていくことを妨げるも

のはなく、研究成果の方向性や時勢に応じて研究テーマは変わっていく。教員も

また、それぞれに学び続けるのである。

▼それゆえ

学ぶ楽しさを知り、自分なりの学びを自分でデザインし続けることができる。

自分の興味・関心に従い、また学ぶ必要性を感じることで、主体的に学ぶように

なり、その学びを自分の力にする楽しさを味わうことができる。次第に、自分の

学びのペースやスタイルも見つかり、《自分の形づくり》につながっていく。そう

することで、必要な知識や学習法を考え、自分で自分の学びを積み上げていくこ

とができるようになる。さらに、一人ひとりがそれぞれの学びを深めることで、

キャンパスに飛び交う知に多様性が生まれ、新しいことが生まれる土壌となる。

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No.

Divergent Fields

さまざまな活躍

各方面で躍進する仲間に力をもらう。

No.3

多岐にわたる活躍が見られ、互いに応援・刺激し合っている。

何かを発明する人、研究成果を世界に向けて発信する人、起業する人、作品を発

表する人、賞を取る人…。学生も教員もそれぞれのフィールドで活躍し、そのニ

ュースが日々飛び込んできている。それぞれに異なる学び・成長の道筋がある分、

その成果の出方も多様となるため、それらは単純に優劣の視点で比べられること

はなく、互いに刺激しあい、高め合う力となっている。

▲それを生み出す仕組みや考え方

研究や活動に本気で取り組み、これまでに先行者がいないような領域を切り拓く

ため、突き抜けた活躍をする人や社会的に目立つ人も多い。そのような活躍をす

る人が多いのは、《最先端に飛び込む》ことで身につけた知識やスキルを活かし、《実

際の問題解決》に取り組んだり、《仕組みをつくる》ことを実践しているからであ

ろう。また、日々異分野の考え方に触れることで、《枠にとらわれない》自由な発

想をしたり、複数の分野の知見を合わせて考えたりしていることもあるだろう。

▼それゆえ

多様な成果軸を知り、認め、刺激を受けながら、自分の目指す方向に向けてがんばる。

他の人の活躍を聞くことが、焦りにつながるのではなく、ポジティブな刺激とな

っていく。それは、ここに集う人たちが《それぞれの学び》をし、それぞれの道

を進んでいるがために、成果や活躍を同じ指標で捉えて比べることがないためだ

ろう。それゆえ、その活躍を自分軸に取り入れるとどうなるかを考え、成果に向

けてのヒントにしたり、仲間の喜びを自分の活動のエネルギーにすることができ

る。例えば、誰かが新聞に載ったのを見れば、自分だったらどこにどんな価値が

発信できるだろうかと考える。誰かが事業で成功すれば、その活躍に学び、自分

のスキルを活かしてどのような成果が出せるかを考えたりするのである。

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Flat with Respect

リスペクト&フラット

個性や経験の違いを尊重しながら、

目的に向けては対等な目線でいる。

No.4

お互いを尊重しながらも、年齢や肩書きにとらわれず、意見し合う。

年齢、専門分野、経験などが異なる人が集まって共同作業を行うときにも、誰も

が自分の意見を発し、臆さず議論に参加する。教職員と学生の垣根も低く、「教え

る/教わる」「決める/決まったことをする」という関係ではなく、ともに考え、

問題を解決していくパートナーという関係に近い。授業のグループワークでは、

学年を超えての活発な議論を経て、全員でひとつのものをつくっていくし、教員

会議でも若手教員がベテラン教員に意見することはよくある光景である。

▲それを生み出す仕組みや考え方

キャンパスの設計時から、学生が教員と交流・共同作業をすることが重視されて

おり、それらが起きやすい建物や部屋の配置になっている。学生と教員が SNS 上

でお互いをフォローし合っていたり、食事に行って研究の相談をしたりするなど、

キャンパス以外での距離も近い。学生同士の関係においても、授業が特定の学年

向けに開講されているわけではないので、異なる学年の人とグループを組むこと

になる。そのような経験から、次第に年齢や肩書きを気にすることなく、相手の

個性やスキルを尊重し合いながら、議論や共同作業することに慣れていく。

▼それゆえ

多様な視点が反映された自由闊達な議論が生まれる。

お互いに個性やもつ力を知り、認め合ったうえで構築されたフラットなつながり

があれば、素直に自分の意見を言い、相手と意見とぶつけ合うことができる。そ

のような活動のなかで、より経験豊かな人のレベルの高い世界を垣間見ることが

できたり、逆にフレッシュな視点に触れることで新たな見方を得たりすることが

できる。よりよいものをつくるために《徹底した話し合い》や《地道なつくり込み》

をともにした仲間は、信頼もより深まり、かけがえのない関係となる。

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Potluck of Talents

得意の持ち寄り

それぞれの得意な力を出し合うことで、

大きなことを成し遂げる。

No.5

持っている技や知識を出し合って、ひとつのことを成し遂げる。

ひとりひとり異なる専門を持っているため、何かの目的を達成しようと人が集ま

ると、自然とそれぞれの持つ興味分野や特技を出し合おうとする。誰が何を得意

とするかも何となく共有されており、何かの活動を始めるときには、その力をも

つ人を誘い入れ、呼ばれた人は喜んで参加していくことが多い。ひとりひとりが

自分の才能を資源として持ち寄ることで、学生のプロジェクトであっても精緻に

つくりこまれていたり、総合的にパフォーマンスの高い活動になったりすること

も多い。

▲それを生み出す仕組みや考え方

十人集まれば十通りの専門があることが普通であり、ひとりひとりが異なるもの

の見方、知識、スキルをもっている。また、《思い切った実験》として最新技術や

最新理論がキャンパスに持ち込まれていることが多いため、特異なスキルや突き

抜けた才能をもつ人が少なからずおり、そういった尖った人たちをつなぎながら

うまく立ち回ることに長けた人もいる。こうして、一人では実現できないような

成果を生み出すことが可能になる。

▼それゆえ

自分が活動の一端を担っているという責任感が生まれ、やる気と誇りをもちながら活動に注力する。

自分ができないことを他の人がしてくれていて、自分は自分にしかできないこと

をしている。そのような環境のなかでは、自然と自分の担当分野への責任感もう

まれ、お互いに尊重し合う関係となる。また、その活動に自分の専門領域をいか

に活かすかが自分にかかっているという感覚が生まれ、真剣に取り組んでいく。

そのようななかでは、もっと自分の領域を深めて役立てるようになりたい、常に

その分野における第一人者でいなければ、という思いも生まれ、さらに専門を極め、

知識や技術を最新に保ち続けることにもつながっていく。

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Unexpected Combinations

斬新な組み合わせ

まさかのタッグが、新しさを生み出す。

No.6

普通ではあり得ないような組み合わせで、一緒に活動している。

お互いにまったく違う専門分野に属する人たちが一緒に研究をしたり、志をとも

にして活動していたりする。たとえば、インターネットと経済政策、建築と社会

学というような異なる組み合わせの人がともに活動をしていたり、「健康」をキー

ワードとして、バイオ、脳科学、薬学、身体、コミュニケーション、政策の専門

家のコラボレーションが起こったりする。このように、SFC は、専門が分散した

人たちが一緒に活動することで、進化している。

▲それを生み出す仕組みや考え方

教員の専門分野は同種といえる人がほぼいないほどに多様であり、異分野の知識

交流は日常的に行われている。また学生も、《それぞれの学び》をしている人同士

が、授業のグループワークで出会い、一緒に課題に取り組むという経験を多くし

ている。日常でそのような知の交流がある環境のなかで、何かのきっかけから斬

新な組み合わせが誕生し、《リスペクト&フラット》な関係のなかで《得意の持ち

寄り》をしながら、ともに研究・活動することになる。

▼それゆえ

世の中でも新しい切り口の研究や活動が生まれる。

異なる専門の人が関わることによって、取り組んでいる問題に対して、多面的な

分析や理解ができたり、総合的・包括的な解決策を生み出したりすることができる。

また、複数の分野がより深く融合し、まったく新しいものが生み出されることも

ある。たとえば、財政学と言語学の教員がともに学び、議論した結果、SFC 発の「意

味づけ論」という研究に発展している。

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Ambition Talk

夢を語る

何をしたいのか、どうなりたいのか。

未来について熱く語り、それを聞く仲間がいる。

No.7

キラキラした瞳で、それぞれの夢を語る。

「こうしたい」「こうなりたい」「こんな社会をつくりたい」。《いろんな人》がいる

SFC では、いろんな夢がある。授業のなかでも自分の目指すことや、専門をどの

ように未来に活かすのかを考え、語る機会が多いこともあってか、自分がどうあ

りたいか、どんなことをなし遂げたいのかを、情熱的に語り合う姿は日常的に見

られる。熱くまじめに未来を語ることに気恥ずかしさはなく、語る側も聞く側も、

ワクワクしながら楽しんでいる。

▲それを生み出す仕組みや考え方

皆がそれぞれ異なる研究テーマをもっているので、「何を学んでいるの?それは何

の役に立つの?」という会話は頻繁に発生する。それを説明し、その魅力を人に

伝えようとするなかで、自分がそれをなぜ大切だと思っているか、なぜその研究

が社会に必要なのかを考え、言葉にするようになっていく。また、教職員も夢を

語る。ひとりひとりが新領域を切り拓いているため、熱く語りながらビジョンや

定義、その価値を示していく。

▼それゆえ

夢を語るパワーが伝わって、周りが元気に前向きになり、キャンパス全体に活気が広がる。

夢を語る人は熱量を持っていて、輝いている。そのパワーによって、聞いた人が「自

分も頑張ろう」と奮起したり、自分の夢を考えるきっかけとなったりし、キャン

パス全体が未来に向けた明るい志向に満ちていく。また、語られた誰かの夢の実

現に向けて、それぞれの専門の観点から意見を出して《徹底した話し合い》したり、

《情熱の共鳴》が起きて、新しいプロジェクトが始まったりすることもある。

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Resonance of Passion

情熱の共鳴

熱い想いが、こだまする。

No.8

研究や夢を語る人の熱量やパッションが伝播し、共感が湧き起こる。

《夢を語る》人や、研究や活動について熱く語る人、また《さまざまな活躍》の話

を聞くうちに、自分のなかにある興味・関心が強く引き出され、一緒に何かをや

ろうという気持ちが起こり、盛り上がっていく。そして、それぞれの情熱が互い

に感化しあい、意気投合し、さらなる夢や具体的な話につながっていく。

▲それを生み出す仕組みや考え方

キャンパスには、AO 入試で入学した人などをはじめとして、やりたいことを強く

もっていたり、すでに突出した成果を出していたりする人が多くいる。また、そ

うでない人も、キャンパスで《いろんな人》の多様な生き方や考え方に触れるこ

とで、《枠にとらわれない》で柔軟に考えるようになってくる。さらに、授業や研

究会などで、プロジェクトの経験を積むことで、物事を起こし、成し遂げる感覚

を養っているので、意義のあることや面白いことに出会うと、その想いに共鳴し、

一緒にやろうという気運が高まりやすい。

▼それゆえ

共鳴した仲間同士で、新しい活動が始まることがある。

興味・関心の共鳴が湧き起こると、わかり合える仲間に出会えた嬉しさや、さら

に話が広がる知的・創造活動の楽しさを味わうことができる。そして、実際にそ

こから一緒に研究や活動に取り組むことになることも多い。そうやって、世の中

にとって、これまでにない新しい切り口の研究や活動の成果が生まれることにつ

ながっていく。

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Diverse Projects

多様なプロジェクト

いつもどこかで、何かが始まる。

No.9

たくさんの多様なプロジェクトが動いている。

教員はそれぞれに研究のプロジェクトを立ち上げ、進めている。学生も同様に、

やりたいことがあれば自分たちでプロジェクトを立ち上げるので、キャンパスで

はいつも多様なプロジェクトが動いている。ときには、異分野を融合したプロジ

ェクトが立ち上がることもある。例えば、SBC (Student Build Campus) では、さ

まざまな分野の教員や学生が一緒になってその取り組みを進めている。

▲それを生み出す仕組みや考え方

異なる専門分野の教員が、それぞれにいくつかの研究プロジェクトを立ち上げる

ため、SFC で研究されているテーマがとても多様になる。また、《実際の問題解決》

に関わる実践的な研究が、学生も参加するプロジェクトとして実施されることも

多い。このようなプロジェクトは学期中だけでなく、夏休みや春休みに行われる

こともあり、そういった長期休暇中のプロジェクト活動も正規と履修単位として

認められるようになっている。

▼それゆえ

いつでも実践的な研究や学びに飛び込むことができる。

キャンパスではいつでも多様なプロジェクトが動いているので、興味のあるもの

に出会いやすく、容易に実践的な研究・学びの場に参加することができる。また、

多くの活動が同時に進行し、受賞したり報道されたりするなどの《さまざまな活躍》

があちこちで起こるため、よい刺激が得られてキャンパス全体に活気が生まれて

いる。学生たちは、授業のグループワークや研究などでプロジェクトの経験を積

んでいき、ひとつの活動に思いっきり没頭して成果をあげ、解散してまた別のチ

ームを組むことを繰り返すことで、多様な人間関係が築かれ、複雑に絡み合う人

的ネットワークが形成されていく。

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変わり続けるEver Changing

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Learning at the Frontier

最先端に飛び込む

最先端に立って、世界に触れる。

No.10

基礎がないからと躊躇するのではなく、思い切って最先端の技術・環境に浸かってみる。

最先端の物事に触れられる機会があれば、尻込みせずに踏み込んでみる。例えば、

学外ではなかなか触れられないような最新のテクノロジーを日常の生活のなかで

使ったり、1 年生から最先端の研究を行う研究会に参加したり、学部生のうちか

ら国際学会で発表してみたりしている。最先端にはわからないこと・見えないこ

ともたくさんあるが、まずはチャレンジし、それによって得られる経験や気づき

から、次なる学びをデザインしていく。

▲それを生み出す仕組みや考え方

キャンパスには、世の中の最先端が集まっている。そうだと知らずに使っている

技術が驚くほど新しいものであったり、教員に連れられて参加した会合や学会が

世界の先端グループであったりする。一般的には下積みの期間や肩書きを気にす

るような場であっても、学生を連れて行って経験させたり、自分で世界に出てい

こうとする学生をサポートする制度も準備されていたりする。教職員も、SFC が

最先端に触れられる環境にすることには余念がない。

▼それゆえ

世の中の進歩を自分事として感じ、未来は自分たちでつくっていくものであるという感覚をもつことができる。

世の中でもまだ珍しいような最新の環境に身を置くことで、世に先駆けて実践し、

社会に与える影響や可能性を検証したり、その分野を自分たちの手で発展させて

いったりする経験ができる。そして、未来をつくっていくのは誰かが進めてくれ

るのではなく、自分も関わることができるものだと感じ、主体的に先進的な研究

に取り組むようになる。そのようななかで、自分が得意なことを見つけたり、逆

に自分の力不足を強く感じたりすることで、さらに学ぶべきものを特定でき、強

い意欲を持って技術や知識の習得を進めることができる。

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A New Literacy

新しいリテラシー

これからの「読み・書き・そろばん」に

当たるものは何だろう?

No.11 これから必要となるであろうスキルや技法を見つけ出し、日常の様々な場面で身近に使ってみている。

かつては「読み・書き・そろばん」が必須のリテラシーと言われてきたが、いま

やそれだけでは価値を出していく人材にはなりえない。SFC では、これからの基

本リテラシーは何かを考え、触れ、習得することを重視している。キャンパス開

設当初は、人工言語、自然言語、三技法(社会調査法・モデルシミュレーション

技法・多変量解析)が大きく掲げられ、その後もデザイン言語やナレッジスキル、

データ・サイエンスなどがカリキュラムにおける重要な要素と位置づけられてき

た。最近では、最先端のデジタル・ファブリケーションのスキルを身につける環

境も整備されている。時代とともに重視されるリテラシーは変化するが、それら

はいつもカリキュラムのなかで重視され続け、学ぶ環境が整えられているのであ

る。

▲それを生み出す仕組みや考え方

先端領域の知識を得るだけでなく、創造や実践のスキルに対する教育・研究も、

SFC の特徴のひとつである。カリキュラムづくりにおいては、それぞれの教員が

自分の立場から SFC らしい教育とは何かを考え、必要な科目を提案し、それらを

協議会・委員会で練り上げていくスタイルを取っている。キャンパスの環境や設

備についても同様である。学生はそれらのスキルを授業で学んだのちに、授業の

SA (Student Assistant) やメディアセンターのコンサルタントとして教える側に立

って関わり続け、さらに腕に磨きをかけることもできる。

▼それゆえ

新しい技法やスキルを使いこなせるようになることで、自分ができることの発想を広げていく。

技法やスキルを「知る」だけではなく、様々な場面での思考や実践で「使いこな

せる」ようになることで、自分の思考や感覚を拡張していくことができる。たと

えば、ファブの技術を自由自在に使いこなせるようになることで、ある問題を見

たときに、「こういうものなら、あれをこう使えば、こう改善できる」「こういう

ものなら、数日でつくることができる」と発想でき、解決に向かうことができる

だろう。これは、単に知識として知っているだけでは難しいことである。このよ

うに、時代に合ったリテラシーを習得していくことで、どのように世界に働きか

けられるかの発想力、実践力を高めることができる。

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Lens of Words

言語の眼鏡

言語を身につけると、

世界の見え方が変わる。

No.12

外国語を学び、その文化の考え方や世界観に触れる。

新しい言語を学ぶのは、単にその言語でコミュニケーションができるようになる

ためだけではない。言語を身につけるということは、その文化を味わい、自分が

慣れ親しんでいる世界とは異なる視点や考え方に触れ、多様な価値観があること

を知ることでもある。SFC では現在、マレー・インドネシア語、アラビア語、朝鮮語、

中国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語・ロシア語、英語、日

本語が開講されており、海外研修でその文化に浸かる経験をしたり、それらの言

語を用いて研究活動をしたりしている人も多い。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC では、外国語の授業を担当している教員は、外国語教育以外で自分の研究分

野をもっている。そのため、外国語の授業、例えばスペイン語やアラビア語を習

得することと、それを使って行っている研究との関係性が見えやすく、外国語の

授業から研究会に入ったり、研究のための必要性から言語の授業を取ったりする

ことがある。

▼それゆえ

自分が慣れ親しんだものの見方とは異なる視点で世界を捉えられるようになり、社会を深く理解することにつながっていく。

言語を話せるだけではなく、その文化を理解することで、その国で起こっている

事象の背景や人々の気持ちなどが理解できるようになる。それらの文化圏から見

た自分たちの姿を見ることができるようにもなり、社会を捉える視座が増え、物

事の理解が厚みを増していく。また、言語を一通り真剣に学ぶことは、その言語

のシステムや、それが示す概念体系を学ぶことにもなるため、新しい世界観を示

すひとつの体系を獲得する感覚をつかむことができ、新概念を学び、受け取る力

にもつながっていく。

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Time to Explore

模索の時間

迷うことにも価値がある。

いろいろと試してみるから、道が見えてくる。

No.13

様々な活動を通じて、自分を知り、世界を知り、迷いながら自分の進むべき道を模索している。

自分が本当にやりたいことは何か、自分が何に向いているのか、どのコミュニテ

ィが自分がいるべきところなのか……研究・活動のテーマや場を選ぶ前も、どこ

かに飛び込んで始めてみたあとも、このような問いが頭をよぎる人は多い。たとえ、

入学前に「これをやりたい!」と思って入っていても、これまで以上に新しい情

報を得て、最先端に触れる環境のなかでは、迷いが生じることもある。このよう

に迷い、自問自答を繰り返して時間が過ぎていくこともあるが、そのように考え、

考え抜くことも、プロセスの大切な一部だと捉えられている。

▲それを生み出す仕組みや考え方

そもそも SFC は、学部名からもわかるように、何か個別科学の専門を身につける

という発想でつくられてはいない。しかも、近年のカリキュラムは非常に自由度

が高く、一部の選択必修(科目群のなかから選ぶタイプの必修)があるだけで、

学年に関係なく、あらゆる授業をとることができる。研究会のテーマもかなり多

岐に渡り、《多様なプロジェクト》がたくさん走っている。研究会も学期ごとの履

修なので、学期ごとに変えたり、複数入ることも可能になっている。つまり、自

ら考え、デザインするように設計されているのである。学生だけでなく、教員も

研究や教育のテーマについての自由度が高く、それゆえ迷い、模索する時期がある。

▼それゆえ

判断基準が与えられない現実の状況においても、自分で考え抜くことができるようになる。

多様性に溢れ、変化する環境のなかでは、模索し、試し、考えることが不可欠で

ある。つまり、模索することは重要なステップなのである。そして、その経験を

積むことで、それは異常な事態ではなく、常態であると知ることができる。また、

模索の仕方もうまくなり、深くもなり、いろいろな状況において、自分で考え抜

くことがきるようになる。

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Multiple Hats

数足のわらじ

多様な経験をするから見えることがある。

No.14

いろんなところに所属して、いろんな種類の活動をしている。

学内でいろいろな役割を担っている人もいれば、学内と実社会での活動を並行し

ている人もいる。学業や職務といった本業の合間にいくつもの活動をしていると、

昼夜なく何かをしているような状況にもなるが、不思議と楽しそうに動いている。

さらに魅力ある活動に新たに出会ってしまったときは、両立できるかどうかとい

う心配はいったん置いておき、3 足目、4 足目のわらじとして活動を始めてみる人

も多い。

▲それを生み出す仕組みや考え方

幅広い分野のことに触れ、いろいろな活動が動いている環境にいると、おもしろ

そう、興味があると感じることにいくつも出会う。また、自分の何らかのスキル

を求められ、《得意の持ち寄り》を持ちかけられてチーム入ることもある。複数の

研究会に同時に入ることができたり、学生が自分たちでプロジェクトを立ち上げ

ることも多い。《数足のわらじ》を履いて学内外で活躍している人は、忙しそうで

はあるが、充実して輝いているように見え、それに勇気づけられ、《数足のわらじ》

を履く文化が継承されていく。

▼それゆえ

興味があることを次々に実践していくことで、自分を理解していく。

一つひとつの活動には表面的なつながりはなくても、強く惹かれるという気持ち

を頼りに身を投じ、実際に経験してみることで、自分のなかでのつながりが見つ

かっていく。また、複数の活動を同時に進めることで、異なる文脈の活動・思考

を並行させる力もついていく。それにより、いろいろな異なる事象から共通項を

見出したり、抽象化する力もつく。そして、これらの諸活動の経験から、《自分の

形づくり》がなされていく。

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Composing Uniqueness

自分の形づくり

変化のなかで、自分が何者なのかを問い続ける。

No.15

自分が何者なのか、どのような存在でありたいのかを、自ら問いかけ、探求し続ける。

さまざまな活動や経験によって自分も変化し、また世の中も変わり続けるなかで、

自分らしく意味のある進化をし続けるために、自らの核を常に確認し、自分を理

解しようとし続ける。軽いフットワークで専門や活動を変えながらも、同時にそ

れらを統合して自分にとっての意味を編成し、確固とした軸をつくっていく。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC にいるだけで、あるひとつの専門が身につくということはなく、自分の専門

が何であるかは、常に一人ひとりが考え、説明をしていかねばならない。自分の

方向性を決めてくれるものは自分以外に何もなく、主体は常に自分自身となる。

今の行動にも、未来の道筋にも、決められた型がないこの環境では、自分で自分

を見出す努力を続けなければならない。

▼それゆえ

自分を構成する要素を意識し、それらを育てることで、自分らしさを形成していく。

自分にとって興味の湧くことや快適なこと、自分が力を発揮できることなどの手

応えを重ねていくことで、社会のなかでの自分の立つべき位置をつかむことがで

きる。それを意識しながらたくさんの経験をし、自己の振り返りを重ねることで、

多種多様なことが起こる日常での経験を、自分の成長に効果的に拾い上げ、活か

すことができるようになっていく。これはやがて、自分らしさを大切にしながら、

世の中とつながり貢献していく、つまり自分らしく価値をつくっていく生き方を

見つけることにつながっていく。

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Radical Experiments

思い切った実験

自分たちが先行事例となる。

No.16

最新の技術や理論を、まずは自分たちで試してみる。

最新の技術や理論の場合、その効果が確実なものとして検証されていないことも

あり、そもそもそのような検証が困難・不可能であることもある。しかし、それ

を取り入れてみるべきだと信じる仲間がいるならば、実験的に取り入れてみるこ

とがしばしばある。教職員も同じで、教育体制や設備、授業の方法などにおいて

も実験的なことが日々なされている。SFC 開設時のインターネット環境やノート

型パソコンの共同購入、AO 入試、また最近であれば、メディアセンターへの 3D

プリンターの設置などがそのわかりやすい例である。また、全1年生 900 人に対

して、学びのパターンを用いて対話する必修授業なども、SFC で生まれ、世界に

波及しつつある例である。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC はフロンティアを切り拓き、《未来の先取り》をして、その知見を社会に提供

していくキャンパスであり、世界に先駆けて先行事例をつくっていく立場である

と自分たちを位置づけている。そのため、《開拓スピリット》があり、価値がある

と信じられるものであれば、《動かしながらつくる》ことも厭わない。やると決め

れば、《いろんな人》が《得意の持ち寄り》をしながら、実験が成功するように全

力で取り組む。

▼それゆえ

最新の技術や理論の新しい可能性に触れ、その体験から学び、その知見を世の中に出すことで、未来を先導する役割を担う。

新しいものに対し、誰かがその使い道をつくるのを待つのではなく、自分たちが

自分たちのやり方で試していくことで、可能性や限界を自分たちで判断すること

ができるようになる。今の最先端に触れることで、次の最先端へとつながってい

くことも大切である。また、SFC での実験的取り組みが他に参照されることも多く、

SFC での先進的な実践は、社会においても価値をもつことがある。

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Thinking on the Run

動かしながらつくる

やるべきだからやる。

やり方は、やりながら考える。

No.17

やるべきだと思ったら、すばやく実行に移し、やりながら調整していく。

「こうすべきじゃないか」「これをやってみたい」という案があったら、準備に長

い時間をかけたり、リスクを読み切ってから動こうとしたりするのではなく、ま

ずは始めてみる。そして、始めてみて問題やリスクが生じそうだとわかれば、そ

れを潰しながら動かし続けていく。多少、思い通りにいかないことがあっても、

それは実際に動いたからこそ得られた学びであると捉え、それを活かしていく。

▲それを生み出す仕組みや考え方

《未来の先取り》をするときには、未知なることが多く、事前に結果の予想が立て

られないことが多い。そのようなときは、さまざまに浮かぶ懸念よりも、この試

みを SFC がやるべきであるならば、まずは動かしてみることに意味があると考え

ている。動かしているなかで問題やリスクがわかったら、自分で対処するか、周

りにいる《いろんな人》のなかで解決できそうな人に手伝ってもらうことになる。

▼それゆえ

先が読み切れないような複雑なことでも、思い切って前に進めることができる。

何が起こるのかが想定できないような、世の中でも新しく、規模の大きなチャレ

ンジであれば、始める前に計画し切ることは難しいし、たとえできたとしても相

当長い時間がかかってしまう。まず始めてみることで、出てきた良い点を強め、

見えた問題を解決しながら、スピーディに新しい試みを進めていくことができる。

すでに動いているからこそ、起こった問題をみんなが理解しやすく、対処も手早

く進むというメリットもある。

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Drawing New Maps

新しい地図を描く

自分たちの研究・活動の領域を捉え、示す。

No.18

既存の枠に収まらない研究・活動が、全体としてどのような範囲まで広がり、周囲と関係しているのかを、他の人にも認識できるように示す。

既存領域にまたがった研究テーマや、自分のしている取り組みなどを定義し、名

前をつけたりする。そうしなければ、ただ何かが変化しただけであったり、いろ

いろな分野を寄せ集めているだけに見えてしまい、他者にその価値や存在を認識

してもらい、ともに議論したり検証したりすることができなくなってしまう。ど

ういう領域といえるのかを自ら定義することで、自分の立ち位置を明確にすると

ともに、関係する仲間や、後続者たちが参加しやすいフィールドをつくることが

できる。

▲それを生み出す仕組みや考え方

学部のアイデンティティがすでに定義された一個別科学ではないので、自分が何

をやっているのかを自己定義し、語ることが絶えず求められる。そのときには、個々

の内容をバラバラと伝えるのではなく、「ひとことでまとめると○○だ」と語る必

要が出てくる。また、SFC は最先端の研究を取り入れたりする《思い切った実験》

を行うが、それを教育として行い、深めていくためには、その新しい試みをひと

つのまとまりをもった体系として考え、議論し、示す必要がある。

▼それゆえ

変化を意味のある形にしながら前進し、《新しい学問をつくる》ことにつなげていくことができる。

変化を続けるなかで、それが独りよがりのものになってしまうと、意味のある定

義ができなかったり、また定義が他者に受け入れられなかったりする。新しいも

のをつくったときに、それがどのような領域に関わるどのようなことなのかを示

しながら進み、他者と認識をあわせていくことで、社会に要される意味のある進

化を歩んでいくことができる。また、これを繰り返すことで、新しい活動・動向

に対して意味づけをし、世の中に新しい視点・捉え方を提供できるようにもなる。

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未来をつくるCreating the Future

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Out of the Frame

枠にとらわれない

今、当たり前のことも、

いつかどこかでつくられたものである。

No.19

既存の名前やカテゴリーで説明できない研究や活動をしている。

「君は文系なの?理系なの?」「それは社会学なの?心理学なの?」など、世間一

般で使われているような区分があまり使われない。それは、どちらにも属してい

たり、既存の定義とは少し異質であったりするために、当てはめると本質が失わ

れることが多いためである。そもそも、事象を既存の区分を元に考えていないと

もいえる。また、「そんなことが研究になるの?」「そのツールをそう使うの?」

など、アカデミックな常識や手順、また一般的な想定から外れたことを行い、新

しい研究として成立させたりしている。

▲それを生み出す仕組みや考え方

既存学部では扱いにくい問題を扱うために生まれたキャンパスであるため、既存

概念からすると新しいアプローチをとることが多い。それが SFC では普通であり、

価値があると考えられていることでもある。教育内容も既存学問で説明できない

ものも多く、キャンパス内では、今の社会での枠組みを元に考える、という習慣

があまりないともいえる。また、活動や成果の評価も、「SFC らしい」というその

ときどきで意味の異なる軸で測られることが多く、枠にとらわれない発想や活動

が強化されていく。

▼それゆえ

それを表す適切な言葉がまだない物事について考え、取り組むことができる。

新しいムーブメントや新しい概念は、発生当初や萌芽といえる時期には、まだ名

前がついていない。また、それらにどのような学問が関連するのか、どの分野に

落ち着くのかもわからない、という状態がしばらく続くが、そのような座りの悪

い状態でも、起こっている事象について議論し、考えることができる。そして、

それが《新しい地図を描く》ことにつながっていく。

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Thorough Discussions

徹底した話し合い

難問に取り組んでいるのだから、

そんなに簡単には話は収まらない。

No.20

延長しても徹夜しても、とことん考え抜き、深める。

授業時間が終わっても延長して議論をしていたり、キャンパスに泊まり込んで夜

通し議論を続けていたりする。また、授業での学びだけでなく、学生主催のイベ

ントやサークル運営などについても、同じような光景が見られる。《リスペクト&

フラット》なスタイルによって、みんなが納得する着地点が見えるまで意見を出

し合い続ける。これは教員たちも同じで、大切な議論がある会議は終わりなく続き、

そのため合宿形式で行われることもある。

▲それを生み出す仕組みや考え方

《実際の問題解決》に取り組んだり、答えや前例のない問題を扱ったりしているの

で、簡単に議論が収束することはない。しかも、《いろんな人》がいて《さまざま

な学び》をしていることから、同じ学部にいるといっても多種多様な知識や視点

があり、議論はなかなか収束せず、議論の土台が覆るようなこともしばしばある。

また、《開拓スピリット》があるため、過去を踏襲するという考えはあまり取られ

ず、常に前に進もうとする傾向も拍車をかけている。環境面でも、SFC は開設当

初から「24 時間キャンパス」を掲げ、研究室や教室に残り、エンドレスの議論を

することができるようになっている。

▼それゆえ

多角的な視野をもったチームで真剣に取り組むことで、本質に近づくことができる。

《実際の問題解決》を目指したり、新しいことを始めようとしたりするときには、

絶対的な正解などはなく、常に考えながら最善な手をつくり出すことが必要にな

る。ひとつの物事を決めるためにいろいろな知恵を持ちより、様々な視野から眺

めて議論をすることで、より深く、納得のいく結論に行きつくことができる。また、

このような徹底した議論の経験により、知的な楽しさやコラボレーションの力を

知ることができ、研究・活動や学びの地盤をつくっていくことになる。

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Elaborate Crafting

地道なつくり込み

華やかに見える成果の裏には、

地道な作業の積み重ねがある。

No.21

納得のいくものになるまで、努力をコツコツと続けていく。

SFC では実際につくってみることを大切にしているが、その過程では、時間をか

けてでもコツコツとつくり込んでいくことに強く価値を見出している。授業のグ

ループワークや課題などでも何十時間もかけてつくり込むことが多く、キャンパ

スに寝袋を持ち込み、泊まり込みながら行うこともある。最近では SBC (Student

Build Campus) として、学生と教職員がともに話し合い、学びの場の設計と施工

を行うというプロジェクトが進んでおり、そこでは、地道な土木作業にも学生や

教職員が参加している。本書『SFC Culture Language』の内容・文章もイラストも、

長時間の《地道なつくり込み》によって、できている。

▲それを生み出す仕組みや考え方

実践的な活動を重視する SFC では、ものづくり精神があり、実際につくってアウ

トプットし、検証していくことが大切にされている。そのため、つくるためのス

キルを学べる授業も、何かをつくることが課題になる授業も多い。また、研究では、

《実際の問題解決》をしたり、《世に問う》たりするためには、プロジェクトの成

果は中途半端なものであってはならない。現実を変えるためには、《地道なつくり

込み》が重要なのである。

▼それゆえ

徹底的にクオリティを高めるためには、その裏側に膨大で地道な作業があることを知る。

実際に使ってもらえるような完成度で、ひとつのものをつくり上げるには、本気

の熱意がこもった粘りある膨大な作業量が求められる。あるものをつくり込むた

めに身を粉にし、それができあがったものに投影されているという経験をするこ

とで、ものづくりの現実を体験することができる。これが自分の実体験、労働と

紐づくことによって、世の中の物事をリアルに感じ取る力がついていく。

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Solving Real-World Problems

実際の問題解決

現実の問題を解決するための研究・活動。

No.22

実社会の問題を解決することを目指した研究・活動に取り組んでいる。

現在、社会で起きている問題や、これから起こるであろう問題を解決するために、

研究・活動をしている人が多い。かつてマイケル・ギボンズは『現代社会と知の創造』

のなかで、知識生産の様式として、従来の個別科学的な「モード 1」と、実社会

での問題解決に重きを置く学際的・超領域的な「モード 2」という区分を示したが、

この捉え方で言うならば、SFC ではモード 2 に力点を置いている人が多いと言え

るだろう。

▲それを生み出す仕組みや考え方

学部設立の理念が、複雑で流動的な時代において問題発見・問題解決ができる人

材を育てることにあるため、実際の問題を解決していくための教育・実践は、開

設当時から現在まで、通底して流れている重要なものである。授業・カリキュラ

ムでは、問題発見・解決のための知識とともに、それを実現するためのスキルの

習得にも力を入れている。教員も学問を学問として追求することを主とするので

はなく、実社会に役立てるための研究テーマを設定している人が多い。このことは、

福澤諭吉先生の実学の考え方にも通じるものがある。

▼それゆえ

それをやらなければならない理由と、その成果に求められるクオリティが明確になり、自然と本気のプロジェクトになる。

研究の結果がどのように社会に還元されるのかが学生たちにもわかりやすく、期

限内にしっかりとした成果をあげることの意義を感じる。また、問題解決を実現

するために必要なクオリティに到達すべく、妥協せず、《地道なつくり込み》を続

けることになる。

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Implementing Systems

仕組みをつくる

批判や意見だけでは、変わらない。

No.23

問題の解決策を実現する具体的な仕組みをつくり、動かす。

何かに対して問題だと感じたときに、それについて批判をしたり、意見を言った

りするだけでは、その問題が解決することはあまり期待できない。SFC では、何

か支障があれば、問題が解決されるルールやシステムなどの新しい仕組みをつく

り、解決に向けて実際に動かしていく。キャンパス内のルールについても、学生

の発案からできた制度や、変化したルールは数知れない。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC では《実際の問題解決》を行う研究・活動が重視されており、実際に問題が

解決するためには、具体的に《仕組みをつくる》ことまでが必要であると考えら

れている。また、学内の制度・ルールについても、学生と教職員とでともにキャ

ンパスの仕組みをつくってきたという経緯があるが、これは開設当初にいろいろ

なものが未完成だったため、自分たちでつくる必要があったことから生まれてい

る。学生と教職員の関係も、教職員同士も、《リスペクト&フラット》な関係であ

ることから、思ったことを伝えやすい雰囲気がある。

▼それゆえ

実際にその問題が解決するとともに、自分が動くと何かが変わるという感覚を持つことができる。

仕組みが実現されることで、問題の解決が具体的に進む。そして変化が実際に起

こると、その仕組みやその効果は評価・検証されるため、仕組みをつくったこと

やその内容について振り返り、改善のサイクルを回していくことができる。また、

問題に対して自分が動くことで、何かが解決された経験を積み重ねることで、効

果のある仕組みをつくることに対する感覚が養われ、自分の効力感をもつことに

もつながる。今後何か困ったことが起きたら、解決・改善に向けて自分ができる

ことをし、状況を変えていこうと考えられるようにもなるだろう。

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High-Impact Communication

世に問う

研究・活動の成果は、

インパクトのあるかたちで提示する。

No.24

自分たちの研究成果や意見は、多くの人に響くように工夫をして発表し、ムーブメントを生み出す。

例えば、実際の政策主体として要職に就いたり、話題性をもたせながら効果的に

伝えたりして、各種メディア上で発信していく。毎年 11 月下旬には、研究成果の

発表と、話題性の高いテーマについての議論をするイベント ORF (Open Research

Forum) を実施しており、多くの教員・学生が発表や登壇をしている。このような

場を活用し、研究の認知度を高め、理解してもらい、関係者を巻き込んでいく。また、

個別事例での成功を、その一例を超えてより多くの事例に活かしてもらうために

も、単にその成果を示すだけでなく、その研究の可能性を熱く語り、メッセージ

を投げかける人も多い。

▲それを生み出す仕組みや考え方

ORF のような大規模なイベントは、その準備・実施のためにかなりの労力がかか

っているが、それは世の中にしっかりと発信していくことの重要性が共有されて

いるからこそ可能となるものである。国内においても海外に対しても、自分なり

のユニークな軸を築き、インパクトのある存在であることが、各教員に求められ

ている。学生も、授業や研究会で発表をする機会が多く、また学外に向けて自分

たちの活動について語る機会も多い。

▼それゆえ

大学内での研究や実践にとどまらず、その成果を世の中にも役立て、かつ、さらに大きな展開へとつなげることができる。

インパクトを生むように成果を発信することで、反響も大きくなり、多くの方面

の多くの人から反応が得られるようになる。そのフィードバックを受けることで、

解決策や研究をより洗練させていくことができる。また、そのような経験を積ん

だ学生は、自分たちも努力次第で世の中にインパクトのある発信をすることがで

きるということを体験的に学ぶことができる。さらに、このように《世に問う》

ことから、研究成果のクオリティを高くする必要性を感じ、研究過程でのこだわ

りや粘りを強化することにつながる。

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Pioneer Spirit

開拓スピリット

いつでも未知なる領域に挑んでいく。

No.25

誰もまだ足を踏み入れていない領域、成し遂げていないことに挑戦している。

研究とはそもそも未知なる領域を開拓し、フロンティアを広げるという活動であ

る。SFC ではそれに加えて、《実際の問題解決》に本格的に取り組んだり、《枠に

とらわれない》で考えたりするため、しばしば、これまでにはなかった領域や方

向を開拓することになる。また教育面でも、これまでにない新しい仕組みを多数

導入し、学生たちも最先端を開拓する研究に取り組んだり、新しい領域で活躍し

たりしている。野心的な構想や《思い切った実験》も歓迎される。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC は自らを、既存の学問や制度には収まらないことを実践するためにあると位

置づけている。そのため、《実際の問題解決》や《枠にとらわれない》研究をして

いる人が多い。大学院生や教員だけでなく、学部生も 1 年次から研究会に所属す

ることができ、《最先端に飛びこむ》ことができる。また、複数の研究会に所属す

ることもできるため、複数の領域との相互作用やコラボレーションによって、こ

れまでにない発想が生まれやすい。

▼それゆえ

フロンティアを開拓する面白さを味わい、挑戦を続けることができる。

フロンティアを切り拓くのはとても大変なことではあるが、成し遂げたときの達

成感やそれに至る過程の醍醐味を知ると、さらに挑み続けたいという意欲が湧い

てくる。既存分野の研究や活動ではないために、発表する学会がなかったり、既

存の評価軸で評価できないとリジェクトされたりすることもあるが、新領域を切

り拓いているという自負から、あきらめずに挑戦し続けることができる。

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Prototypes of the Future

未来の先取り

たとえ今は「異端」だと言われても、

「未来はここにある」という自負がある。

No.26

今は異端だと言われても、将来的には主流となると信じて、研究や教育に取り組んでいる人たちが多い。

SFC では、既存の研究分野やよく知られたアプローチではなく、まだそれを語る

言葉がないような新しいことに取り組んでいることが多い。それらは、説明する

ことが難しいことも相まって、理解がされにくかったり、異端だと思われたりす

ることがあり、苦労することもある。しかし、自分たちの活動はどんどん広まり、

いずれ主流となると信じ、独自の研究を続けている。教育においても、学生たち

を「未来からの留学生」と呼んだことからもわかるように、未来志向の新しい内容・

方法の授業が多く、学生たちがそれらの新しい分野を組み合わせた新しいアイデ

アを生み出すことも多い。

▲それを生み出す仕組みや考え方

教員は、既存の《枠にとらわれない》 新しい研究をすることが推奨されている。

また、《思い切った実験》をすることを理解・許容し、導入してきた。そして、そ

れらの実践について魅力的に語ることができる場が多くある。領域は違っても、

同じように新しい方向に突き進んでいる人や、面白がってくれる仲間が多いので、

お互いに刺激しあい、続けることができる。

▼それゆえ

既存のものとは異なる新しい研究・教育を進め、世の中に対し、新しい価値を提供することができる。

実際に《未来の先取り》として進めてきた研究が、その後広く世の役に立ち、主

流になっていった例も少なくない。例えば、インターネットなどはまさにその好

例である。また、このような場で学ぶ学生は、未来の新しい領域について詳しく

なり、また実践した経験をもつことから、卒業後、社会に出て先導的な立場で活

躍する人も多い。そのような新しい教育・研究を受けた人が社会に増えるにつれ、

その新しい考え方や実践はより広く波及していくことになる。

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Establishing New Paradigms

新しい学問をつくる

これまでにない新しい学問の

方法・体系をつくる。

No.27新しい学問の構築を視野に入れながら、これまでにない新しい方法や体系を生み出している。

《実際の問題解決》のために新しい《仕組みをつくる》実践的な研究をしながら、

それを単なる社会実践として終わらせるのではなく、新しい方法論として整備し、

学問として体系立てることを目指している。現在当たり前だと思っている学問分

野の構成も、人類の歴史のなかでは最近とも言える数世紀前に形づくられたもの

である。例えば、経済学、社会学、政治学などがそれぞれ固有の分野に分かれた

のは、十九世紀になってからのことである。これまでの学問の歴史を踏まえれば、

時代・社会が変わり、知の探究が進むことで、学問分野の新設や再編が起きると

いうことは十分あり得ることであり、SFC の研究ではその可能性が念頭に置かれ

ていることが多い。

▲それを生み出す仕組みや考え方

SFC は、既存の学問を体系立てて教える学部ではない。教員も、これまでの学問

の延長ではなく、新しい自分なりの新しい学問分野をつくるということが推奨さ

れている。実際、既存の《枠にとらわれない》研究をしていると、その研究は何

なのかを説明できるように定義し、語る必要があるが、それらには新しい学問分

野に向かう地図が視野に入れられている。また、まったく異なる領域を専門とし

ていた教員同士が、近い問題意識や方法に行き着き、コラボレーションによって

新領域を見出していくことは珍しくない。学生も、複数の研究会に所属し、それ

らをつないだ自分なりの新しい研究をすることができるので、教員も思いつかな

いような新しい発想を生み出すことがある。

▼それゆえ

SFC では、《未来の先取り》をした、新しい学問分野の研究・教育が行われる。

そして、《新しい学問をつくる》という意識でなければ到底なしえないと思われる

ほどの革新的な発展を築いていく。それらは、技術の開発、方法の進化、歴史の把握、

多様な文化の理解、政策・経営の実践などを含む、SFC ならではの知的環境のな

かで育まれていく。SFC は、現在の《実際の問題解決》を進めながらも、《開拓ス

ピリット》をもって《新しい学問をつくる》ことでも、未来をつくることに貢献

していく。

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SFC25周年にあたる2015年、学生と教職員が一緒に新しい

学びの場を設計・構築する「未来創造塾 SBC (Student Build

Campus) 」が始まりました。その一環で、どのような場に

するのかについて ”カンカンガクガク” 議論するための建物

が、キャンパスの中心 、福澤先生像の前に建設されまし

た。家具は2015年春学期のものづくりの授業のなかで学生

によって製作され、建物も2015年夏に学生が参加し、施工

されました。

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謝辞

 本書をまとめるにあたり、さまざまな方にお世話になりました。まず、次の方々には

インタビューをさせていただき、また有益なコメントをいただきました。秋山美紀先

生、飯盛義徳先生、小川克彦先生、奥田敦先生、小澤太郎先生、河添健先生、國枝孝弘

先生、國領二郎先生、佐野ひとみ先生、清水唯一朗先生、高汐一紀先生、高野仁SFC事

務長、土屋大洋先生、中澤仁先生、濱田庸子先生、廣瀬陽子先生、水野大二郎先生。そ

して、赤土由真さん、浅上あゆみさん、飯森寛子さん、緒方亮介さん、奥野寛明さん、

小幡理沙さん、窪田哲朗さん、小出真莉子さん、佐久間ニコラス建誠さん、鈴木伶奈さ

ん、スゲング・リオさん、玉木祥子さん、タン・ジート・チさん、陳本元さん、千世栄

さん、鄭泰千さん、土肥梨恵子さん、豊間友佳子さん、原島裕志さん、町田道誠さん、

松尾賢明さん、ミタル・クナールさん、文彩栄さん、我妻里咲さん、渡辺琴千さん、そ

して授業でお話を伺った井上英之先生、今井むつみ先生、加藤文俊先生、熊坂賢次先

生、小林博人先生、田中浩也先生、David J. Freedman先生、松川昌平先生、村井純先

生、どうもありがとうございました。また、英語化を手伝ってくれた伊作太一さん、イ

ラストの収録を手伝ってくれた金子智紀さん、「Culture Language」の考え方を一緒に

模索したgood old future プロジェクトのメンバー、そして応援してくれた井庭研究室

のメンバーにも感謝します。

 最後に、SFC25周年式典での配布に関して、秋山美紀先生と徳増美栄さんにもご協

力・ご支援いただきましたことに感謝いたします。

 みなさま、どうもありがとうございました。

井庭崇研究室 / Iba Laboratory

 井庭崇研究室では、創造活動支援の研究として、さまざまな分野の「パターン・ラン

ゲージ」の作成・実践に取り組んでいます。パターン・ランゲージとは、よいデザイン

(設計)に繰り返し現れる要素の関係性(パターン)を、言語化(ランゲージ)する方

法です。もともとは建築の分野で提唱されたのですが、現在ではソフトウェア開発や、

創造活動一般を支援する方法として広がっています。

 2009年に井庭研究室で作成した、「創造的な学び」の秘訣をまとめたパターン・ラ

ンゲージ「ラーニング・パターン」は、毎年、総合政策学部と環境情報学部の新入生に

配布され、自分なりの学びをデザインすることの支援に活用されています。2011年か

らは、ラーニング・パターンを用いた「対話のワークショップ」が、「総合政策学」と

「環境情報学」の授業において全1年生(約900人)を対象に実施されており、SFCの新

しい風物詩となっています。

 井庭研究室では、このほかにもプレゼンテーションやコラボレーション、防災、認知

症とともに生きる秘訣など、多岐にわたるテーマでパターン・ランゲージを作成してい

ます。それらが、方法論としてのイノベーションでもあることから、国内外で先導的な

立場の研究・実践として位置づけられ始めました。研究成果を出版した書籍『プレゼン

テーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』では2013年度グッドデザイン

賞受賞、『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』では、オレンジ

アクト認知症フレンドリーアワード2015 大賞、および2015年度グッドデザイン賞を受

賞しています。

• 『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』(井庭崇+井庭研究室, 慶

應義塾大学出版会, 2013)

• 『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』(井庭崇, 岡田誠 編著, 慶應義

塾大学 井庭崇研究室, 認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ 著, 丸善出版, 2015)

• 『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』(井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩

一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)

• 『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』(井庭 崇 編著, 宮台 真司, 熊坂 賢次,

公文 俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)

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SFC Culture Language

【多様性】

1   いろんな人2   それぞれの学び3   さまざまな活躍

4   リスペクト&フラット5   得意の持ち寄り 6   斬新な組み合わせ

7   夢を語る8   情熱の共鳴9   多様なプロジェクト

【変わり続ける】

10  最先端に飛び込む11  新しいリテラシー12  言語の眼鏡

13  模索の時間14  数足のわらじ15  自分の形づくり

16  思い切った実験17  動かしながらつくる18  新しい地図を描く

【未来をつくる】

19  枠にとらわれない20  徹底した話し合い21  地道なつくり込み

22  実際の問題解決23  仕組みをつくる24  世に問う

25  開拓スピリット26  未来の先取り27  新しい学問をつくる

井庭崇研究室 Culture Language Project

◎ 制作メンバー

井庭 崇 / Takashi Iba(総合政策学部准教授 , SFC4 期生)

大井 智水 / Satomi Oi(総合政策学部 4 年)

洪 齊嬉 / Jei-Hee Hong(環境情報学部 4 年)

尾郷 彩葉 / Iroha Ogo(総合政策学部 2 年)

森本 優 / Yu Tiffany Morimoto(環境情報学部 2 年)

◎ イラスト作成

大井 智水 , 井庭 崇 , 櫻庭 里嘉(環境情報学部 4 年)

◎ 表紙デザイン

宮崎 夏実(環境情報学部 4 年)

◎ 制作協力

株式会社クリエイティブシフト

http://creativeshift.co.jp/

※本書の感想や、各カルチャー・ワードの体験談を募

集しています。[email protected] までご連絡くだ

さい。また最新情報は、http://culture.sfc.keio.ac.jp/ を

ご覧ください。

SFC Culture LanguageSFC らしさを表す言葉たち (Ver. 0.25)

 〒 252-0882 神奈川県藤沢市遠藤 5322

 慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部

 井庭崇研究室 Culture Language Project

 Home Page : http://culture.sfc.keio.ac.jp/

 E-Mail : [email protected]

2015 年(平成 27 年)10 月 10 日

慶應義塾大学 井庭崇研究室

発 行 日

制 作