一般口演13 座長:林原 博 国立病院機構 一般演題・口 O2-016 O2 … ·...

1
210 The 65th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health 15 16 15 16 一般口演 13 健康教育 座長:林原  博 国立病院機構 米子医療センター 小児科 O2-016 保育所(園)・こども園におけるアナフィラキ シー初期対応シミュレーション訓練の効果 阿久澤 智恵子 1 、青柳 千春 2 、金泉 志保美 3 松崎 奈々子 3 、今井 彩 4 、佐光 恵子 3 1 埼玉医科大学保健医療学部 2 高崎健康福祉大学保健医療学部 3 群馬大学大学院保健学研究科 4 富岡看護専門学校 【目的】 保育施設のアナフィラキシー救急処置体制の改善を目的に 実施したシミュレーション訓練の効果を報告する。 【研究方法】 保育所(園)・こども園7施設の職員145名に対して、食物 アレルギーに関する講義およびエピペントレーナーを使用 した実技訓練後、食物アレルギーを有する乳幼児のアナ フィラキシーショック発現を想定したシミュレーション 訓練を加えた研修を実施した。その後デブリーフィングを 行い、自施設での救急処置体制について気づいた改善すべ き点、また、訓練実施 6 か月後に、救急処置体制について 改善を行った具体的な内容について自由記述をしてもらっ た。1文に1つの意味・内容の記録単位とし、内容分析の 手法を用いて分析を行った。 【結果】 自由記述に回答した141名の記述を有効回答とした。救急 処置体制の改善点として、271記録単位から30のコード、 12のサブカテゴリーが抽出され≪職員全体のアナフィラ キシー対応の知識・技術・意識を向上させる≫≪施設独自 のアクションプランを作成する≫≪マニュアルの内容の見 直し・修正を行う≫≪保育所(園)内の設備・体制の整備 を行う≫≪アナフィラキシー対応中の子どもへの配慮を 行う≫の5つのカテゴリーが形成された。また、訓練終了 6 か月後は、94 名の記述を有効回答とした。救急処置体制 を改善した点については、151記録単位から22コード、7 サブカテゴリーが抽出され≪施設独自のマニュアルの整備 に着手した≫≪事故予防策の強化を行っている≫≪園内・ 園外との連携・協働を強化するようになった≫≪食物アレ ルギー児への人権・権利を守る配慮をするようになった≫ の4 つのカテゴリーが形成された。 【考察】 デブリーフィングは、「シミュレーション終了後に学習者 が自己評価したり誤りを修正したりする内省を促すこと」 と定義されている。シミュレーション訓練により保育所職 員の危機管理意識が高まり、各施設の救急処置体制を整え ていくべき具体的内容が明らかとなった。また、訓練 6 か 月後には、各施設で整えていくべき組織や物理的環境につ いて、実施可能な部分から改善するという行動変容がみら れた。講義、実技訓練に、シミュレーション訓練を加えた 一連の研修プログラムにより、アナフィラキシー初期対応 の具体的なイメージが可能となり、各施設の救急処置体制 の具体的な改善に繋がった。本研究は、JSPS科研費基盤 研究(C)(課題番号17K01908)の助成により行った研究 の一部である。 O2-017 児童参加型のイノベーティブな傷害予防プ ログラムの実施 大野 美喜子 1,2 、西田 佳史 1,2 、北村 光司 1,2 山中 龍宏 2,3 1 産業技術総合研究所 人工知能研究センター 2 Safe Kids Japan 3 緑園こどもクリニック 【目的】 本研究では、子ども自身が傷害予防の3E(法制化: Enforcement、 善:Environment、 育: Education)を学び、「予防」の視点を獲得することを目的 に、東京都豊島区立富士見台小学校と連携し、学校安全の ための安全学習カリキュラムを実施した。 【方法】 小学 5 年生 44 名を対象に、7 時間(45 分 7 コマ)の安全学習 授業を実施した。前半の2時間は座学、後半の5時間はワー クショップ形式で行った。前半の座学では、予防の考え方 および校内・校外の安全について学習した。後半のワーク ショップでは、まず、子どもに校舎内にある危険な場所の 写真を撮ってきてもらい、どこが危険か、どうしたらその 事故を予防できるかを話し合った。また、小学校で取り 組んでいる傷害サーベイランスのデータに基づき実際に起 こっている校内の事故について学び、自分達が撮ってきた 写真と照らし合わせながら認識している危険と実際の事故 とのギャップについて議論した。最後に、予防を可能とす る製品のデザイン(キッズデザイン)を考案し発表し合っ た。 【結果】 生徒は、階段が9枚、教室内が29枚、廊下が62枚の計100 枚の写真を撮影し、ワークショップに取り組んだ。写真に は、階段を段飛ばしで駆け降りる姿を模擬した様子、階段 の途中にある死角、棚の上に積み上げられた荷物、フック に沢山の物がかけられ通行の邪魔になっている様子など が収められていた。生徒が発表したキッズデザインのアイ ディアには、画鋲が掲示板から落ちた時に、針が引っ込む 仕組みのあるもの、ある程度の衝撃がかかるとエアバッグ が作動する階段、画鋲は使用せず、トカゲかヤモリの足の 成分を活用して紙を貼ったりはがしたりする掲示板、埋め 込み式のエントランスマット、掃除用具と掃除用具入れの 両方に磁石をつけ、用具を投げ入れてもきちんと収まる掃 除用具など、ユニークで面白いアイディアが多くでた。最 後に、先生や傷害予防の専門家と協議しながら、生徒が発 表したキッズデザインのアイディアから特に優れたものを 7 つ選び、専門家からの評価ポイントを発表して生徒への フィードバックを行った。 【考察】 本研究では、傷害予防でもっとも優先的に取り組むべきと されている環境改善の視点で自分達の身の回りにある危険 を考え予防策を考えることができた。この学習をとおして、 子どもが安全な環境をデザインする視点を獲得し、将来の 安全な社会づくりに貢献してくれることに期待したい。 Presented by Medical*Online

Transcript of 一般口演13 座長:林原 博 国立病院機構 一般演題・口 O2-016 O2 … ·...

Page 1: 一般口演13 座長:林原 博 国立病院機構 一般演題・口 O2-016 O2 … · れた。講義、実技訓練に、シミュレーション訓練を加えた 一連の研修プログラムにより、アナフィラキシー初期対応

210 The 65th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health

一般演題・口 

演 

6月15日㊎

一般演題・口 

演 

6月16日㊏

一般演題・ポスター 

6月15日㊎

一般演題・ポスター 

6月16日㊏

一般口演 13 健康教育座長:林原  博   国立病院機構米子医療センター小児科

O2-016保育所(園)・こども園におけるアナフィラキシー初期対応シミュレーション訓練の効果

阿久澤智恵子1、青柳千春2、金泉志保美3、松崎奈々子3、今井彩4、佐光恵子3

1埼玉医科大学保健医療学部2高崎健康福祉大学保健医療学部3群馬大学大学院保健学研究科4富岡看護専門学校

【目的】保育施設のアナフィラキシー救急処置体制の改善を目的に実施したシミュレーション訓練の効果を報告する。

【研究方法】保育所(園)・こども園7施設の職員145名に対して、食物アレルギーに関する講義およびエピペントレーナーを使用した実技訓練後、食物アレルギーを有する乳幼児のアナフィラキシーショック発現を想定したシミュレーション訓練を加えた研修を実施した。その後デブリーフィングを行い、自施設での救急処置体制について気づいた改善すべき点、また、訓練実施6か月後に、救急処置体制について改善を行った具体的な内容について自由記述をしてもらった。1文に1つの意味・内容の記録単位とし、内容分析の手法を用いて分析を行った。

【結果】自由記述に回答した141名の記述を有効回答とした。救急処置体制の改善点として、271記録単位から30のコード、12のサブカテゴリーが抽出され≪職員全体のアナフィラキシー対応の知識・技術・意識を向上させる≫≪施設独自のアクションプランを作成する≫≪マニュアルの内容の見直し・修正を行う≫≪保育所(園)内の設備・体制の整備を行う≫≪アナフィラキシー対応中の子どもへの配慮を行う≫の5つのカテゴリーが形成された。また、訓練終了6か月後は、94名の記述を有効回答とした。救急処置体制を改善した点については、151記録単位から22コード、7サブカテゴリーが抽出され≪施設独自のマニュアルの整備に着手した≫≪事故予防策の強化を行っている≫≪園内・園外との連携・協働を強化するようになった≫≪食物アレルギー児への人権・権利を守る配慮をするようになった≫の4つのカテゴリーが形成された。

【考察】デブリーフィングは、「シミュレーション終了後に学習者が自己評価したり誤りを修正したりする内省を促すこと」と定義されている。シミュレーション訓練により保育所職員の危機管理意識が高まり、各施設の救急処置体制を整えていくべき具体的内容が明らかとなった。また、訓練6か月後には、各施設で整えていくべき組織や物理的環境について、実施可能な部分から改善するという行動変容がみられた。講義、実技訓練に、シミュレーション訓練を加えた一連の研修プログラムにより、アナフィラキシー初期対応の具体的なイメージが可能となり、各施設の救急処置体制の具体的な改善に繋がった。本研究は、JSPS科研費基盤研究(C)(課題番号17K01908)の助成により行った研究の一部である。

O2-017児童参加型のイノベーティブな傷害予防プログラムの実施

大野美喜子1,2、西田佳史1,2、北村光司1,2、山中龍宏2,3

1産業技術総合研究所人工知能研究センター2SafeKidsJapan3緑園こどもクリニック

【目的】本 研 究 で は、 子 ど も 自 身 が 傷 害 予 防 の3E( 法 制 化:Enforcement、 環 境 改 善:Environment、 教 育:Education)を学び、「予防」の視点を獲得することを目的に、東京都豊島区立富士見台小学校と連携し、学校安全のための安全学習カリキュラムを実施した。

【方法】小学5年生44名を対象に、7時間(45分7コマ)の安全学習授業を実施した。前半の2時間は座学、後半の5時間はワークショップ形式で行った。前半の座学では、予防の考え方および校内・校外の安全について学習した。後半のワークショップでは、まず、子どもに校舎内にある危険な場所の写真を撮ってきてもらい、どこが危険か、どうしたらその事故を予防できるかを話し合った。また、小学校で取り組んでいる傷害サーベイランスのデータに基づき実際に起こっている校内の事故について学び、自分達が撮ってきた写真と照らし合わせながら認識している危険と実際の事故とのギャップについて議論した。最後に、予防を可能とする製品のデザイン(キッズデザイン)を考案し発表し合った。

【結果】生徒は、階段が9枚、教室内が29枚、廊下が62枚の計100枚の写真を撮影し、ワークショップに取り組んだ。写真には、階段を段飛ばしで駆け降りる姿を模擬した様子、階段の途中にある死角、棚の上に積み上げられた荷物、フックに沢山の物がかけられ通行の邪魔になっている様子などが収められていた。生徒が発表したキッズデザインのアイディアには、画鋲が掲示板から落ちた時に、針が引っ込む仕組みのあるもの、ある程度の衝撃がかかるとエアバッグが作動する階段、画鋲は使用せず、トカゲかヤモリの足の成分を活用して紙を貼ったりはがしたりする掲示板、埋め込み式のエントランスマット、掃除用具と掃除用具入れの両方に磁石をつけ、用具を投げ入れてもきちんと収まる掃除用具など、ユニークで面白いアイディアが多くでた。最後に、先生や傷害予防の専門家と協議しながら、生徒が発表したキッズデザインのアイディアから特に優れたものを7つ選び、専門家からの評価ポイントを発表して生徒へのフィードバックを行った。

【考察】本研究では、傷害予防でもっとも優先的に取り組むべきとされている環境改善の視点で自分達の身の回りにある危険を考え予防策を考えることができた。この学習をとおして、子どもが安全な環境をデザインする視点を獲得し、将来の安全な社会づくりに貢献してくれることに期待したい。

Presented by Medical*Online