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4.図上シミュレーション訓練 (ロールプレイング方式の図上訓練)

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4.図上シミュレーション訓練

(ロールプレイング方式の図上訓練)

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4.図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式の図上訓練)

(1)訓練の概要

ア 訓練の基本形式

図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式の図上訓練)は、災

害時に予想される事案・状況等を記述したシナリオ(文章)を、進行管理

者(「コントローラー」ともいう。)から訓練参加者(「プレイヤー」ともい

う。)に付与し、それに対し(あるいは、それを前提に)訓練参加者が行う

べき意思決定・役割行動を回答することにより訓練を進行させる訓練であ

る。 基本形式は、進行管理者がまず「状況付与票」等により訓練参加者に状

況付与し、訓練参加者が付与された状況に対する意思決定・役割行動を決

定した上で、進行管理者に適宜報告し、これを繰り返すことにより訓練を

進行させる。

実際行われている図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式の

図上訓練)は、この基本形式を多数の関係機関を対象にした訓練に発展さ

せたものである。

状況付与に用いるシナリオの例を以下に示す。

〔例1〕地震の揺れのおさまった直後の意思決定、役割行動を問うシナリオの例 ○○年○月○○日△曜日、午前10時半頃。あなたは自分の席で執務中である。 そのとき突然目の前が傾いたかと思うと大きな揺れが襲ってきた。室内のロ

ッカー やファイルケースが大きな音をたてて次々と倒れ、あちこちで女子職員

の悲鳴が聞こえる。 揺れがおさまって室内を見回すと、コンクリートの壁や柱は崩れ落ち、鉄筋は

むき出 しとなっていた。また、倒れたロッカーやファイルケース、落下した蛍

光灯、散乱した書類等で足のふみ場もないありさまだった。

〔例2〕 死傷者への対応を問う状況シナリオ △△駅構内で地震による電車の脱線・転覆のため多数の死傷者が発生してい

る模様である。

〔例3〕 避難者への対応を問う状況シナリオ

○○小学校に100名の被災者が避難している。避難者の中にはけが人もいる。

避難者が今も続々と到着している。

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イ 状況付与、対応行動の報告

状況付与の手段としては、電話、無線、FAXなどを使わずに(使えな

い場合と、使わないで訓練したい場合とがある)状況付与票(カード)で

行う場合と、電話、FAX、電子メール、館内放送等の実際の場面で用いる手

段で行う場合とがある。また、訓練参加者が行った意思決定・対応行動、

連絡・報告事項等についても災害対応記録票や災害対応連絡票等の連絡票

(カード)で行う場合と電話、FAX、電子メールなどを使う場合とがある。

(状況に応じて、口頭伝達や内部協議も可能とする。具体的な「状況付与

票」と「連絡票」の作成方法や訓練実施時の活用方法は後述する)。 電話、FAX、電子メール、館内放送等を用いる場合、臨場感が発揮できる

分、状況付与形式が多種・多様になり、それに応じた準備と当日の対応が

必要となる。

ウ 訓練方法の簡略化の必要性

図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式の図上訓練)は、進

行管理者と訓練参加者間のやりとりだけでなく、訓練参加機関相互間のや

りとりを行うことで、訓練にふくらみを持たせている。この特徴から、こ

れらの訓練企画には相当の専門知識とそれなりの準備が必要になり、進行

管理者も複数の人員で対応することが普通となる。特に、国や都道府県な

ど、多くの防災機関が加わる図上シミュレーション訓練では、進行管理者

側の要員を多数必要とすることが多い。 今後市町村において実施するにはさらに訓練に係る準備作業や当日の訓

練の実施要領を簡略化する必要がある。その際、特に次の点に留意する必

要がある。 ・事前打ち合わせは必要最小限とし、そのための準備作業の時間がかか

らないようにする。 ・「状況付与シナリオ」や地震・被害の「想定」等に関する資料の作成に

必要以上に時間をかけず、既存資料を最大限活用する。 ・評価・検証に時間をかける事例が少ないことから、既存の評価・検証

素材(ツール)を活用することで、訓練参加者が多数容易に参加でき、

効果的な評価・検証ができるようにする。

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以下、図4.1に、図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式

の図上訓練)の事前準備、当日の実施から評価・検証までの全体フロー

を例示する。

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図4.1 図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)のフロー

① 事前準備・企画 (訓練企画者・進行管理者・運営担当)

② 訓練実施 (進行管理者・運営担当)

(進行管理者・運営担当) (訓練参加者)

③ 評価・検証 (進行管理者・運営担当)

(訓練参加者)

訓 練 目 標 の 設 定

訓練課題・内容などの設定

状況付与の設定

状況付与票の作成

会場準備

被害および状況の想定

小道具・地図などの準備 司会・進行管理の準備

総括・講評(全体討議・とりまとめ)

作戦会議

グループごとの評価・検証開始指示

状況付与

グループ別報告

オリエンテーション

応急対策・対応のシミュレーション

グループ内評価

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(2)事前に訓練をどのように準備するとよいか

図4.2に図上シミュレーション訓練の企画・事前準備から実施に至る

までの全体手順の例を示す。

図4.2 図上シミュレーション訓練の事前準備手順

(進行管理者・運営担当)

訓 練 目 的 の 設 定

訓練課題の設定

全体被害・社会的状況の設定

参加者のグループ分け 対象地区別地図の作成

地区別被害・社会的状況の設定

状況付与表の作成

会場準備(机の配置など)

訓練参加者特性に応じた訓練内容の決定

前提条件の決定(派生時刻、季節、地震の規模等)

時間別状況推移の設定 個別グループ別設定

司会・進行管理の準備 小道具の準備

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1) 訓練企画者(進行管理者、訓練評価者等と適宜連携)

ア 訓練目的を明確化し、方針を決定する

訓練企画者は、進行管理者、訓練評価者、運営スタッフ等と適宜と調

整・連携し図上訓練を準備する。図上シミュレーション訓練の企画・準

備段階では、訓練目標・課題を設定し、内容を具体化していくことにな

るが、実は、その過程そのものが現時点で当該地域や組織が抱えている

防災上の課題の明確化、優先順位の付与、課題の絞り込みに繋がる。し

かしながら、訓練の「突発性」を維持し、疑似体験させるには、訓練企

画者が事前準備を進める過程で、訓練参加者に詳細な内容をあえて知ら

せないようにする必要がある。そこで、 初の企画・構想段階では、多

くの関係者を交えた会議形式で検討するものの、その後次第に少人数の

訓練企画者、訓練評価者等で準備を進める方法とすることが妥当である。

① 訓練目的(習得目標)の具体化

訓練企画者等は、地震を想定した図上シミュレーション訓練に先立ち、

まずどのような訓練を行い、何を検討したいか、どのような対応を徹底

したいかという訓練目的(習得目標)を具体的に検討する。

例えば、様々な市町村職員が一堂に会して行う研修では、地震発生時

の状況をイメージし、職員が実施すべき対策や役割を認識することが主

な目的となる。また、個々の市町村や複数の市町村等が合同で連携訓練

を行う場合は、対策内容の習得やマニュアルの検証等が目的となる。

訓練の習得目標の例を、表4.1に示すので、当該市町村の実情やニ

ーズに合った訓練目的を選定し、具体化する。

表4.1 図上シミュレーション訓練の習得目標(訓練実施の目的)の例

① 災害のイメージを形成する

② 災害時の情報収集の仕方、収集された情報の整理・分析方法、他機関への

情報伝達・共有化、誤報の確認等

③ 情報に基づく迅速かつ適切な意思決定(適切な判断、対応、対策の実施)

④ 適切な体制の構築・役割の決定(対応する中での修正)防災計画や対応マニ

ュアルを超えた体制・連携づくり

⑤ 防災計画・マニュアル、地図・資料等の有効な活用方法の習得

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② 訓練の課題の設定

訓練企画者等は、さらに、訓練目的に応じて訓練の課題を特定し、災

害の種類、被害の程度、重点を置くべき個別課題を設定する。この際、

重点を置いて検討する項目や状況、対応を徹底したい項目などを決定す

る。図上シミュレーション訓練による検討項目を、表4.2に例示する。

表4.2 図上シミュレーション訓練による検討項目の例

区 分 検 討 項 目

都市直下の地震(大都市、中小規模都市が被災)

農山村での地震(農村や山間部が被災)

海溝型の地震(揺れによる被害・大規模な津波が発生)

孤立地区対応地震(特定の地区へのアクセスが不可能)

地震の発生場所や

地域性による対応

平日昼間発災(勤務時間中の発災)

夜間・休日発災(自宅や外出中、出勤・帰宅途中の発災)

季節(春・夏・秋・冬の発災)

発災時の条件によ

る対応

天候

災害対策本部運営(情報収集・伝達・分析・確認、参集、

本部機能が損なわれた時の対応など)

避難誘導(消火活動を含む)

救出活動

医療救護活動

緊急輸送

避難所運営

災害弱者支援

ボランティア対応

広報・マスコミ対応

滞留者(帰宅困難者・観光客)対応

応急対策別の対応

孤立地区への対応

③ 参加者の特性に応じた訓練内容の決定

訓練参加者の特性に応じた訓練内容を決定する。参加者の所属部署、

図上訓練の慣れの程度、災害対策の経験等を踏まえ、訓練レベルに配慮

し、図上シミュレーション訓練の方針及び内容を決定する。

例えば、市町村等の災害対策本部要員や各部局の要員を対象とした図

上シミュレーション訓練は、本来の組織の役割で訓練を行う。一方、様々

な地方公共団体や機関の職員を対象とする研修などで図上シミュレー

ション訓練を行う場合は、参加人数により都道府県、市町村や部署(防

災担当、土木担当、医療担当など)、関係機関(消防、警察、ライフライ

ンなど)を決め、必要に応じて、応援側の市町村や機関などを設定する。

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イ 訓練要綱を作成、訓練参加者のグループを決定する

① 訓練要綱(スケジュール表含む)の作成

訓練の目的(目標)と方針が定まったら、訓練参加者に訓練の目標、

趣旨、内容及び手順(全体スケジュール)を徹底するため、関係者と

協議のうえ訓練要綱を作成し、関係者に配布する。原則として関係者

を一堂に集めた事前説明を行うのではなく、それに代わる事前配布方

式をとるものとする。

訓練要綱の例を表4.3に例示する。図上訓練の内容の詳細を知ら

せることが目的ではないため、詳細にわたり記載する必要はない。

表4.3 訓練要綱の例

< 訓 練 要 綱 >

① 目的 : 大規模地震発生を想定し、その初動期における災害対策本部員

会議メンバー及び災害対策本部事務局員等が行うべき意思決

定と役割行動の確認及び応急対策活動上の課題の把握

② 日時 : 9月1日 10時30分~17時00分

10:30 開会

10:35 訓練についての説明(オリエンテーション)

11:00 フェーズⅠの訓練実施、報告・確認

12:00 (休憩)

13:00 フェーズⅡ, Ⅲの訓練実施、報告・確認

16:00 総括・講評:全体討議及びとりまとめ

17:00 訓練終了(閉会)

③ 場所 : 大会議室

④ 対象 : 災害対策本部員会議メンバー及び災害対策本部事務局メンバー

⑤ 方法 : 関係部局と関係機関を対象とした図上シミュレーション訓練

⑥ 用具 : 筆記用具(鉛筆又はシャープペンシル、消しゴム)をご持参く

ださい。

⑦ その他:地域防災計画、活動マニュアル等の資料の持ち込みは自由です。

② 訓練参加機関・職員数の設定、グループ分け

参加機関や人数が多い場合、機関名や人数を把握し、適正な規模で

グループ分けし、名簿化する。このとき、情報収集・分析、情報の共

有化、応急対応の議論、情報発信までを行うとすると、1グループあ

たり7~10人程度が 適である。訓練参加者の本来の所属組織や役割

と同じ役割を遂行できるようにグループ分けをすることが望ましい。

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ウ 被害、対応に関する資料(状況付与シナリオ等)を作成する

訓練のおおまかな方針が決まったら、次に、具体的な被害状況や社会

的な状況などについて、実施項目ごとに設定し、状況付与シナリオ「状

況付与票(状況付与配布スケジュール含む)」を作成する。状況付与シナ

リオ(状況付与票)の例を図4.3に示す(参考資料2も参考のこと。)。

① 訓練の前提条件の設定

訓練で設定する地震の震源、規模、発生時刻、季節等の前提条件を

設定する。その際、当該市町村を対象に実施された既存の地震被害想

定調査報告書等のほか、「日本の地震活動」(地震調査研究推進本部

地震調査委員会)などの過去の地震に関する資料を参考にして、訓練

で想定する地震の規模等のイメージを明確にする。

② 全体の被害状況、社会的状況の設定

上記の前提条件に沿って、全体の被害状況を設定する。この被害状

況をもとに過去の災害時の関係機関や住民等の対応に関する資料を

加味し、当該市町村/地域において想定される社会的状況を設定する。

設定にあたっては、基本的な被害の他に、アの②の訓練項目で特に

対象にしようとした項目について、より詳細な設定を行う。また、主

に応援を行う地方公共団体や機関を設定した場合は、それらの地域の

被害や状況を別途設定しておく必要がある。主な応急対策ごとの設定

項目と、被害及び状況設定の例を表4.4に示す。

表4.4 応急対策ごとの設定項目

応急対策項目 設 定 項 目

医療救護(患者

搬送を含む)

負傷者数(症状別)、病院の被害・機能支障、周辺地域

の災害拠点病院、緊急輸送(道路、ヘリ)など

避難所運営 避難者数(地区別)、避難所の被害(地区別)、ライフラ

イン支障・復旧、地元自治会などの状況、備蓄状況、

緊急輸送(道路、ヘリ)、周辺地域の応援可能性など

災害救助、緊急

輸送(主に物

資)

避難者数、ライフライン支障・復旧、備蓄状況、緊急

輸送(道路、ヘリ)、輸送拠点、周辺地域の応援可能性

など

救出活動 救出箇所数・人数(地区別・程度別)、消防の対応状況、

警察の対応状況、自衛隊の対応状況、自主防災組織の

対応状況、資機材の調達可能性など

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③ 時間経過に応じた状況の推移の設定

全体の被害と社会的状況が固まったら、発災直後からの時間経過に

応じた被害状況と社会的状況の推移を大まかに時系列表に整理する。

④ 「状況付与票」の内容、フェーズ別の状況付与方法の検討

全体の状況を基に、参加者のグループごとに、付与する具体的な情

報内容を時間経過に沿って設定する(図4.3の「状況付与票」及び

表4.5の「状況付与票配布スケジュール」の例を参照)。

訓練の進行時間に合わせ、フェーズ(時間経過に応じた時期区分)の

区切り方や、どのようなタイミングで状況付与票を配布するかを検討

し、おおよその配布スケジュールを決めておく。

被災規模や訓練の重点項目により、フェーズ区分は異なる。例えば、

参集と発災直後の体制確立などに重点がある場合は、発災後数時間ま

で、災害救助に重点を置く場合は、発災後の初動期(発災~数時間)、

緊急期(数時間後~1日後)、救援期(2日後以降)などに分けて行うが、

特定の時期(12時間~数日後など)に重点をおいて行うこともある。

[フェーズ設定:フェーズの区分とシミュレーションの進度の設定例]

合計5時間に及ぶシミュレーションの場合

・フェーズⅠ: 発災~1時間後 実時間の1時間でシミュレーション

・フェーズⅡ: 1~12 時間後 5~6 倍速の2時間でシミュレーション

・フェーズⅢ: 12~24 時間後 5~6 倍速の2時間でシミュレーション

⑤ 評価・検証用素材の作成

図上訓練で設定された目標に照応して、訓練後チェックすべき項目を

整理したチェックシートやアンケート票を作成しておく。(これらの資

料は、評価・検証用としてだけでなく、新たな状況付与シナリオの作成

時にも活用可能となる。表4.12、表4.13を参照のこと。)。 これまでの図上訓練では、適切に評価・検証を行なえる職員が少ない

ことが指摘されていることから、経験の浅いスタッフであってもある程

度の水準の評価・検証を行えるよう参考資料3に示す評価・検証素材(ツ

ール)の例をもとにチェックシート等を作成しておく。

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図4.3 状 況 付 与 票(例)

No. 1 付 与 先 ○○消防本部、△△警察署 付 与 時 刻 11:00 想定時刻 12:30 発 信 元 災害対策本部 付与方法 手渡し 件 名 地震発生

付 与 事 項(シナリオ) 12月17日(金曜日)の12時30分頃、○○地域で大きな地震が発生しました。地震の規模はマ

グニチュード7.5と推定されます。あなたは、自席にいます。

表4.5 状況付与票配布スケジュール(例) № 付与先 付 与

時 刻

想 定

時 刻

発信元 付与方法 件名及び付与事項(シナリオ)

1 全員 11:00 12:30 災害対策本部 手渡し [地震発生]

12月17日(金曜日)の12時30分頃、

○○地域で大きな地震が発生しました。地

震の規模はマグニチュード7.5と推定さ

れます。あなたは、自席にいます。

2 災害対策

本部を除

く全員

11:15 12:45 災害対策本部 手渡し [震度分布]

震度3以上の震度を観測した箇所図(東海

地震を想定した訓練時の震度分布図があ

ればそれを使用する。)

3 出先に招

集指示さ

れた部課

の職員

11:25 12:55 災害対策本部 手渡し [初動活動] あなたは、指示された招集場所にいる。招

集場所には、他部課職員も集結してきてい

る。 災害対策本部からの情報によると、詳細は

不明だが、市内で多数の火災が発生し延焼

中、また、多数の家屋が倒壊している模様

である。海沿いの地域では津波により被害

が出ている模様である。他地域でも停電し

ている模様であり、水道も断水状態が続い

ている。その他のライフラインにも被害が

出ている模様。余震は、なお続いている。

4

: :

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エ 訓練会場、施設、資機材等を確保する

① 会場、施設・機材等の確保

訓練規模に見合った広さの会議室・体育館等の屋内会場を早めに

手配し、参加部署ごとにスペースを割り当て、机・イス、マイク・

スピーカ、プロジェクタ、スクリーン等必要機材を設営する。

② 各種小道具等の確保

事前に準備しておくべき小道具類は、表4.6のとおり。これらは、

図上訓練に用いる地図や状況付与票・報告票のほか、情報管理等の

災害対応に必須な事務用機器、情報整理ツール等である。

表4.6 図上シミュレーション訓練で使用する小道具類

○ 対象地区の地図(被害等を記入するための鉄道・道路等を簡略化した地図、

市販地図でも可)

○ 対象地方自治体等の防災計画、応急対応マニュアル等

○ ホワイトボード(時刻表示用、各グループ用)、ホワイトボード用マーカー

○ 模造紙(各グループ2~3枚)、対応記入用紙(罫線紙)

○ 多色マジックペン、多色サインペン、多色蛍光ペン

○ のり、セロテープ、メンディングテープ

○ ステイプラー、クリップ

○ 電卓、定規、はさみ

○ パソコン、プリンタ

○ メールボックス(書類受け)

○ 参加者名札、グループ名を記載した名札立て

○ コピー機(グループ共通。複数台数ある方が便利)

○ 状況付与票、問合わせ・連絡・回答・報告票

オ 図上訓練のスムーズな運営体制等を準備する

訓練当日、スムーズに訓練を運営できるよう、以下の準備を行う。 a 企画担当者、進行管理者のもとで編成される運営スタッフ(「統制

班」ともいう)の役割分担表(統括係、状況付与係、訓練時間管理係、

情報記録・整理係、運営補助係を割り振る)と担当者名一覧表の作成 b オリエンテーション用資料(訓練要綱など)の参加者数分のコピー c 訓練の進行スケジュール、フェーズ区分の確認 d 状況付与票や災害対応連絡票等の配布時期、タイミング等の検討 e その他不測の事態への対処方法

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2)進行管理者(訓練評価担当者)の事前準備事項

図上訓練の種類を問わず、進行管理者は、訓練内容を評価しつつ、図上

訓練を進行管理する重要な役割を負うため、訓練企画者、訓練評価担当者

及び運営スタッフ等と連携・分担し、訓練を準備する。

進行管理者にはベテランの防災担当者を配することも多いが、その場合

であっても過去に大規模地震災害の経験がなかったり、訓練の役割分担や

進行に不慣れのため、訓練の効果を大きく低下させるケースも見られる。

そのため、進行管理者は事前に訓練の概要を把握しておき、以下の点に

ついて吟味しておくなどの準備を徹底しておくものとする。

a 図上訓練の手法・仕組みと進行スケジュール

b 災害想定や訓練シナリオ(状況付与票)の内容

c 各種資料(特に、状況付与票)の配布タイミング、配布順序

d 評価・検証用資料の活用方法等

e その他不測の事態への対処方法

3)訓練参加者自身の事前準備事項

訓練参加者に図上シミュレーション訓練の詳細を事前に知らせる必要は

ないが、訓練参加者が有する災害イメージや活動イメージの水準が図上訓

練の水準を左右することはよく指摘されるところである。そこで、訓練参

加者は、次のように事前準備をしたうえで、訓練に臨む。

a 事前説明会の説明内容、訓練要綱の再確認(訓練の趣旨や方法等)

b 地域防災計画、防災マニュアル等の読み込み(事務分掌、関連計画)

c VTR、写真、災害記録等の教材閲覧(訓練企画者が用意している場合)

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(3)訓練をどのように実施するとよいか

図上シミュレーション訓練当日の実施手順を、図4.4に例示する。訓

練当日、進行管理者及び運営担当は、オリエンテーションから訓練実施、

報告・評価・講評へと進行する。

図4.4 訓練当日の実施手順

(進行管理者・運営担当)

(訓練参加者)

オリエンテーション

状況付与票の配布

対 応 検 討

総括・講評 へ

シミュレーション開始告知

グループ内での情報読み上げ

他グループとの情報交換

←オリエンテーション→

作戦会議

シミュレーションの実施

報告・評価・講評

作戦会議

フェーズⅠ

Ⅲを繰り返す

・図上シミュレーション訓練のグループ構成 ・実施手順と構成 ・進行時間 ・ルール

対 応 決 定

グループごとの評価・検証

グループ別の対応報告(発表) シミュレーション終了告知

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写真4.1 図上シミュレーション訓練の実施状況-日本赤十字社の実施例*1

統制班(進行管理者)による状況付与票の付与準備

現在時刻を掲示する

状況付与票を配る

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付与された状況を読み上げる

収集した情報を基に状況を確認する ホワイトボードに情報を書き込む

災害基本データブックで関係機関の情報 小道具を使いながら情報をまとめる

を収集する

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統制班(進行管理者)に情報を 地図を使いながら対応を協議する

問い合わせる

状況を確認しながらグループ別の報告をする 対応報告

訓練終了後の各グループ別の評価

訓練後の講評 *1 日本赤十字社:災害救助図上シミュレーション訓練実施マニュアル~図上演習の実施

方法とその効果~, 2001 年3月.

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写真4.2 ロールプレイング訓練の実施状況(消防庁における実施例)

消防庁地震災害危機管理演習の模様 参謀(参謀班)

状況付与(状況付与班) 情報収集(情報集約班)

情報整理(情報整理班) 各班への指示

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表4.7に、図上シミュレーション訓練の時間配分の例を示す。

この事例では、訓練参加者に図上シミュレーション訓練の経験者が少な

く、実施方法の理解度を確認したり、状況付与への対応状況を把握しやす

くするため、実施フェーズを3段階に区切り、時間配分を工夫している。

表4.7 図上シミュレーション訓練の時間配分の例

ア 関係者への直前オリエンテーション(事前説明)を行う

訓練参加者に、当日実施する訓練についてオリエンテーションを行う。

このオリエンテーションは、訓練の趣旨や訓練のルールを簡潔に説明し、

周知・徹底を図るために行う。このとき、事前に作成した訓練要綱を活

用するが、訓練の趣旨・特徴を説明することに重点を置けばよく、訓練

内容を詳細に説明する必要はない。

① 各グループの役割の説明

図上シミュレーション訓練は、次に示す役割をもったグループで構成さ

れることを説明する。

a 「統制班」:進行管理者によるスケジュール管理、状況付与のほか、

設定されたグループ以外の関係機関(ダミーグループ)の役割を担う。

b 訓練参加者で構成される「グループ」:訓練参加者は特定の役割を

もったグループ(7~10人程度の班で構成することが適当)に区分する。

それぞれのグループは行政の災害対策本部、病院、民間企業など特性

が異なる組織毎に構成されること、それぞれのグループの所属組織の

名称、地理的特性、人員数、保有資機材などについても説明する。

1) シミュレーション実施方法の説明 (30 分間)

2) 作戦会議・フェーズⅠ(発災後1時間程度まで)における対応の検討 (40 分間)

3) フェーズⅠの報告・確認、シミュレーション実施方法の再確認 (20 分間)

4) フェーズⅡ緊急期(発災後約 12 時間後まで)の情報収集・伝達・対応 (60 分間)

5) 各グループがフェーズⅡで収集した情報と対応の発表 (30 分間)

(各グループから、付与された情報と対応結果を代表者が報告。全体調整。)

-休憩- (10 分間)

6) フェーズⅢ救援期(発災後約 12 時間後以降)の情報収集・伝達・対応 (50 分間)

7) 各グループがフェーズⅢで収集した情報と対応の発表 (20 分間)

8) 各グループの対応確認と評価 (40 分間)

9) 総括・講評:全体討議およびとりまとめ

(20 分間)

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96

図上シミュレーションの実施にあたって、各グループの中に、グループ

を統制する「リーダー(班長)」、各時点でグループごとに付与された情

報を共有化するための「情報読み上げ係」、対応経過を記録する「記録

係」、対応経過を報告する「発表係」を必ず決める。また、「情報分析

係」、他のグループヘの「連絡員」、「広報係」などを設けることで、

スムーズに対応できるようなら、適宜自由に役割分担しておくと良い。

② 図上シミュレーション訓練の時間設定とフェーズの説明

図上訓練のおおよその進行時間とフェーズの区切り方(時間配分)、

訓練上の現在時刻の掲示方法(ホワイトボード上に適宜記載・表示する)

を説明する。

③ 図上シミュレーション訓練の進行、ルールの説明

図上訓練を以下のルールのもとで進行させることについて徹底する。

a 実施した対応などは、各グループ(班)に配布してある「災害対応

記録票」に、グループ(班)ごとに記録する。記入方法は自由とする。

b 訓練途中での各グループ間の問い合わせ、回答、報告、要請などの

連絡や情報の受伝達は、グループ(班)員の誰でも、どのグループに対

しても実施できる。また、グループ間協議も可能であり、他のどのグル

ープと直接情報を聞いたり、対策の要請をしたり、その場で相談をした

りすることもできるが、そのやりとりは、原則として「災害対応連絡票」

等の使用を基本とする。その際、必ず、情報発信元と伝達先、現在時刻、

内容を記載して手持ち保管用と伝達先用の複数分コピーをとり、メール

ボックスに入れるか、手渡すことを徹底する。

c 訓練参加者は、状況付与票に示された以外の状況については統制班

(進行管理者)に問い合わせるものとし、付与された以外の被害や状況

を独断で設定してはならない。

d 事前に設定した以外の組織に対する問い合わせ・連絡等は、すべて

統制班(進行管理者)に対して行う。また、各組織内の対応結果や被害

状況の問い合わせも統制班(進行管理者)に対して行う。

統制班(進行管理者)は、被害の詳細問い合わせに対して、その時点

でわからないものについては回答しないが、訓練実施上必要があるもの

などについて回答する。

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e グループに配布してある小道具類、地域防災計画や応急対応マニュア

ル、防災資源等のデータ、地図などは、自由に使うことができる。

④「災害対策本部」の役割の説明

災害対策本部設置などをほとんど経験したことのない訓練参加者が多

数を占める場合、災害対策本部とは、災害が起きたときに何をするとこ

ろなのか、過去の災害時にどのようなことが問題になったかなどについ

ても説明する必要がある。

イ 作戦会議を実施する

初めて顔を合わせる参加者が多い場合などは特に、図上シミュレーシ

ョン訓練を開始する前に、短時間でも良いので、グループごとの作戦会

議を開く。作戦会議では、以下の点を検討・確認する。

a 参加者相互の自己紹介

b 情報の交換方法などの確認

c 地図の貼り付け、小道具の準備、点検

d 訓練要領についての疑問点・不明な事項の確認

e 訓練設定の推定とこれに基づくリーダー等の役割分担(ア⑤を参照)

ウ 図上シミュレーション訓練を実施・展開する

① 図上シミュレーション訓練開始の合図

進行管理・運営担当スタッフのうち、統制班(進行管理者)が、事前

に設定しておいた災害(M7級の直下地震など)が発生したという前提で、

シミュレーションを開始するよう合図する。このとき、例えば、発災後

に各メンバーが現場にいたと仮定して、体制を整えるところからスター

トする。

統制班(進行管理者)は、開始の合図と共に、現在時刻をホワイトボ

ードなどに掲示し、 初の状況付与票を各グループのメールボックスに

配布する。 図上シミュレーションは、事前に準備しておいた「状況付与票」(図

4.3,7の例参照)、配布スケジュール表(表4.5の例参照)にも

とづき、図4.8に例示するような流れのもとで実施、展開する。

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98

② 「状況付与票」の読み上げ-災害発生の覚知

各グループの「情報読み上げ係」は、配布された状況付与票を読み上

げる。この時点で初めて参加者は、発災時刻や被害の状況などを知るこ

とになる。被害状況については、状況付与票に地点別の震度等を記入し

た地図や震度分布一覧表を添付したものが手渡されることもある。

③ 「状況付与票」に対する対応の検討

統制班(進行管理者)が各グループにそれぞれの時間ごとに「状況付

与票」を提示すると、各グループでは、その時点ごとに付与された情報

に基づき、被害状況を分析・推定し、グループとしての対応を検討し、

その経過を記録(状況が許せば、判断材料・根拠等も)する。また、他

グループから得られた情報の収集と整理、他機関への報告・要請の要否

などの判断を行う。

このとき対応の記録は、罫紙や模造紙等へ自由に記録するのでもよい

が、対応経過を後ほど実施する評価・検証の際に効果的に活用するには、

図4.9に例示する「災害対応記録票」に適宜記録するのが適当である。

また、地図に被害発生箇所別の被害状況を書き込んだり、ホワイトボー

ドに経過をまとめて参加者間の共有を図る。

これらを経て、決定した対策をグループ内で報告・発表することで、

効率的な情報の整理・分析方法や即時的な意思決定方法などを習得する。

④ 「災害対応連絡票」等による問い合わせ

各グループは、関係機関に報告・指示・要請(照会)等を行う必要が

ある場合、即ち関係機関相互間でのやりとりを行なう場合、図4.10

に例示する「災害対応連絡票」を用いる。 このとき、災害対応連絡票を使ってどのグループに何を聞いても構わ

ないが、設定されているグループ以外への連絡は、すべて「統制班(進

行管理者)」に対して行う。災害対応連絡票の記載方法の誤り、記入漏

れなどがあれば、発信者に災害対応連絡票又は口頭で確認する。

⑤ 「統制班(進行管理者)」による確認行動

統制班(進行管理者)は、それぞれの対応や進め方について、多少の

アドバイスをすることはあっても、グループのあくまでも役割分担、運

営方法など)や進行は訓練参加者に任せることが望ましい。

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但し、被害状況を把握できなかったり、他のグループとスムーズに情

報交換できず、図上シミュレーションが停滞したり、予想外の事態で混

乱することもありうるため、統制班(進行管理者)は時々各グループに

出向き、グループの進行状況、進め方でわからないことや進行上の遺漏

がないかなどを確認し、アドバイスすることも必要となる。

⑥ 図上シミュレーション訓練終了の合図

統制班(進行管理者)は、各フェーズ毎に、①から⑤までの流れに沿

った訓練を繰り返し、一巡したら、訓練の終了を合図する。このとき、

予定の終了時間が近づいたら適宜予告し(5分前、1分前など)、各グルー

プの様子を見ながら、予定の終了時間が来た時点でシミュレーションを

終了する。

表4.8 訓練の進行についての説明(オリエンテーション)

1.みなさんおはようございます。

本日の訓練の統制班(進行管理者)の○○です。よろしくお願いいたします。

訓練に先立ちまして、本日の訓練の進め方を説明します。

2.まず、お手元に配布されている資料をご覧ください。

配布されている資料は、以下のとおりです。ご確認ください。

一番上にあるのが、「図上訓練次第」(※「表4.9 図上訓練次第(例)」

参照)です。

その下の資料は、「図上訓練実施要領」(※「表4.10 図上訓練実施要領

(例)」参照)です。本図上訓練の実施方法の説明資料です。その次は、「訓練

会場レイアウト図」(※「図4.5 訓練会場レイアウト図(例)」参照)です。

これらのほかに、配布を予定している資料として「状況付与票」があります

が、これは図上訓練の開始を合図した後で、はじめてお配りするものです。

後に「災害対応記録票」(※「図4.9 災害対応記録票(例)」参照)と

「災害対応連絡票」(※「図4.10 災害対応連絡票(例)」を参照)です。 それぞれ複数枚配布されているはずです。これらは、本日の図上訓練の中で用

いるものです。 後ほど「図上訓練実施要領」の説明の中で詳しく説明させていただきます。

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3.資料の欠落はないようですので、それではお手元にお配りした「図上訓練

次第」に基づき、本日の図上訓練の進め方を説明させていただきます。

(表4.9 図上訓練次第」に基づき説明)

第1部(3~5)は、図上シミュレーション訓練そのもので、午前中と午後

に分けて、各フェーズ別に行います。およそ4時間程度と考えています。

第2部(6~7)は、ご記入いただいた内容の検討会(評価・検証)です。

フェーズ別の訓練終了後に行います。およそ1時間程度と考えています。

4.次に、本日、皆さん方にご参加いただきます「図上訓練」がどのようなも

のかをご説明申し上げます。「図上訓練実施要領」をご覧ください。

(表4.10 図上訓練実施要領」に基づき説明)

図上訓練は「状況付与の有無」により分類することができます。本来、図

上訓練とは管内図等を用いて行う訓練を言いますが、ここでいう図上訓練は、

実働訓練とは異なり、意思決定のあり方に重点をおいたものをいいます。本

日の訓練は、状況付与型図上訓練の一つである「図上シミュレーション訓練」

で行います。一般には、「図上シミュレーション訓練」は、「ロールプレイン

グ訓練」と言われることもありますが、状況付与を行う点では共通です。

「図上シミュレーション訓練」では、統制班(進行管理者)が地震と被害

の発生状況等を文章で記したシナリオ(「状況付与票」と呼ぶ。)を配布し、

これに対して訓練参加者の方々が記入した「災害対応記録票」や「災害対応

連絡票」をやりとりすることで訓練が進行しますので、ご承知おき下さい。

5.ところで、本日、ご参加の皆様方は、災害発生時には、災害対策本部長、

副本部長、本部員並びに本部事務局要員を務められる方々が中心となっており

ますのでご紹介します。(参考資料の参加者リストの該当箇所を読み上げる)

6.それでは、午前11時00分となりましたら、地震発生直後の対応を問う

フェーズⅠの段階から図上訓練を始めますので、その場で待機願います。

統制班(進行管理者)の配布する状況付与票がお手元に届いたら、各グル

ープの「情報読み上げ係」の方は、その内容をグループの皆さんに聞こえるよ

う、読み上げて下さい。それが、図上訓練開始の合図です。

(この流れで、フェーズⅠからフェーズⅡ、Ⅲへと図上訓練を進める)

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表4.9 訓練次第の例

図上シミュレーション訓練次第

日時:平成 1X 年 XX 月 XX 日

10:30~17:00

場所:大会議室

1.開会(10:30)

2.訓練実施手順等の説明(オリエンテーション)(10:35~11:00)

3.フェーズⅠの訓練実施、報告・確認(11:00~12:00)

4.昼食・休憩(12:00~13:00)

5.フェーズⅡ、Ⅲの訓練実施、報告・確認(13:00~16:00)

6.各グループの対応確認と評価(16:00~16:40)

7.総括・講評:全体討議及びとりまとめ(16:40~17:00)

8.訓練終了、閉会(17:00)

< 配 布 資 料 >

資料1 図上訓練実施要領

資料2 訓練会場レイアウト図

資料3 状況付与票(途中配布、訓練後回収)

資料4 災害対応記録票

資料5 災害対応連絡票

資料6 図上訓練の詳細評価項目一覧表又は全体討議レジュメ(途中配布)

参考資料 訓練参加者(機関)リスト

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表4.10 図上訓練実施要領(例)

図 上 訓 練 実 施 要 領

1.訓練目的

大規模地震発生を想定した場合の状況判断(意思決定)及び初動活動の対

応能力等の向上を目的とする。

2.訓練日時・場所 日時:平成○○年9月1日(○曜日) 10:30~17:00 場所:○○合同庁舎大会議室

3.主催、参加機関 主 催:○○○、○○○、○○○ 参加機関:○○○、○○○、○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

4.災害想定

午前9時頃、 大震度7の地震が発生。 5.訓練実施方法 (1)訓練の実施体制

体制区分 主 な 役 割

統制班 (進行管理者)

○ 訓練の進行管理 ・進行シナリオを管理し状況付与を行う。 ・時々プレーヤーの進行状況や進め方を点検し、進

行上の遺漏がないかなどを確認する。

○ 訓練参加者からの確認事項への対応 ○ 対応状況のチェックと評価

訓練参加者 (市町村職員以外

の関係機関が参加

する場合も含む)

○ 付与された状況への対応 各機関の災害時所掌業務に係る状況判断・意思 決定等

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(2)訓練の進め方 ①状況付与 ②対応検討・決定 ③指示・伝達等 ④対応検討・決定

災害対応記録票 災害対応記録票

状況付与票 災害対応連絡票 ① 統制班(進行管理者)から随時、「状況付与票」により被害状況等が訓練参

加機関に対し与えられる。 ② 付与された状況に対する対応策を各機関において検討・決定する。それを

受け実施した対応の内容をその都度「災害対応記録票」に記入しておく。 ③ 状況に応じて他機関に対し、問合せ、報告、伝達、指示、要請等が必要な

場合は「災害対応連絡票」を用いて行う。訓練参加機関以外の機関等に対す

る問合せ、報告、伝達、指示、要請等などは、すべて統制班(進行管理者)

に対して行う。 ④ 「災害対応連絡票」により、問合せ、報告、伝達、指示、要請等が伝達さ

れた統制班(進行管理者)を含む機関は、それへの対応策を検討・決定する。

それを受け実施した対応の内容をその都度「災害対応記録票」に記入する。 <留意点> ア.「災害対応記録票」、「災害対応連絡票」が不足した場合、コピー機で複写

すること。 イ.対応を記録した「災害対応記録票」、「災害対応連絡票」は、必ず複写し統

制班(進行管理者)へ1部提出する。また、「災害対応連絡票」については

2部複写し、1部は自らの控えとすること。 ウ.原則として、統制班(進行管理者)からの情報及びエで得られる情報のみ

で対応を検討・決定するものとする。ただし、図上訓練上必須と思われる情

報については統制班に問合せること。なお、統制班への問合せについては、

その時点でわからないものについて統制班は回答せず、訓練実施上必要と判

断されるものなどについてのみ統制班(進行管理者)から指摘する。

エ.初期状況の推定については、簡易型地震被害想定システム(参考1)及

び「被災地の状況判明率等の推移(例)」(参考2)を活用する。

オ.その他の疑問点は、統制班(進行管理者)に問い合わせる。

統 制 班 訓練参加機関 訓練参加機関

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(参考1)簡易型地震被害想定システムによる初期被害状況の推定

(参考2)訓練で使用する被災地の状況判明率等の推移(例)(数字は%)

発震後の

経過時間 1h 6h 12h 24h 36h 48h 72h

死者数 3 12 25 30 45 60 75

負傷者数 1 5 10 15 30 40 55

要救出現場

3 12 25 30 45 60 75

火災件数 15 30 50 80 95 100 100

建物被害数 0.5 1 2 5 8 10 20

道路被害数 3 20 40 70 85 95 100

(3)訓練フェーズ(場面)について

訓練は、以下の3つのフェーズ(場面)を想定して実施します。

フェーズ1 地震発生直後(~1時間後まで)の対応

フェーズ2 緊急期(地震発生12時間後まで)の対応

フェーズ3 緊急期(地震発生12時間以降)の対応

(4)訓練想定時刻について

訓練上の必要から、訓練においては原則として実際の時刻と訓練上の時刻

は異なる。また、時間の進行速度を速めることもある。そのため、訓練参加

機関においては、統制班(進行管理者)がホワイトボードに掲示する訓練想

定時刻を常に念頭に置きながら対応すること。

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図4.5 図上シミュレーション訓練会場レイアウト図

写真4.3 オリエンテーション

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【参考1】消防庁におけるロールプレイング訓練の概要と改善点

●訓練の目的

①適切な情報収集

②関係機関への情報発信

③緊急消防援助隊の運用

●想定災害:東海地震(突発型) 演習時の

●演習時期: 平成 16 年 3 月 16 日 レイアウト

(約 3 時間)

●演習場所: 合同庁舎2号館 総務省3階

※演習方法(ロールプレイング方式)

●演習結果

実践的かつ活気ある訓練で心構えを共有

課題が抽出され、改善策の措置に繋がった

●演習結果を踏まえ改善した点

① 危機管理センターのレイアウトを改善

② 大規模災害時等の初動対応体制と情報の流れを改善

演習後のレイアウト

図4.6 消防庁におけるロールプレイング訓練会場レイアウト図

危機管理センターのレイアウト変更

【 平成15年度の配置】 【現在(平成16年度)の配置】·スクリーン スクリーン

○ ○ ○

図○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○幹部対策会議

○ ○ ○ ○

調 総 通○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ 添付の配置図を貼り付け整 務 信

班 班 連○

本部長 絡○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○

広報班

指導班 指導班 広域応

援班

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107

図4.7 状 況 付 与 票 (記入例)

№ 1 付 与 先 全員 付 与 時 刻 9:00:00 想 定 時 刻 9:02:00 発 信 元 統制班(消防庁、テレビ・

ラジオ局、県、震度情報

ネットワーク等の役)

付 与 方 法 手渡し

件 名 地震発生(初期情報覚知) 1.あなたは、職場の自席にいて強い揺れを感じました。

2.気象庁から以下のような震度速報が発表されました。

9月1日午前9時00分頃、地震による強い揺れを感じました。

現在、震度3以上が観測されている地域は次のとおりです。

震度7 ○○○、○○○

震度6強 ○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

震度6弱 ○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

震度5強 ○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

震度5弱 ○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

震度4 ○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

震度3 ○○○、○○○、○○○、○○○、○○○

3.この地震により、各地で気象庁震度階級関連解説表に示す被害が出ている

模様です(「資料6 気象庁震度階級関連解説表」(p.48)参照)。

4.天候(午前9時現在)

○天気 曇り ○気温 27度 ○風速 5m/s

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108

図4.8 状況付与票のフェーズ別配布例

状況付与先 ○○市 状況付与先 ○○市

発 信 元 職員 発 信 元 見回りをした職員

手 段 現場・目視 手 段 現場・口頭

日 時 12:00 日 時 12:20

件 名 地震発生・部屋の様子 件 名 庁舎の状況

内 容 突然、立っていられず、動くことが 内 容 災害対策本部室のある階は無事だが、

できないような激しい揺れ。書棚や 一部の天井が落ちたり、壁や階段の

OA機器の多くが転倒したり、移動 一部が崩れている。余震があれば、

する。机や棚の上のものがほとんど さらに崩れる危険がある。

落下する。 職員と来客10名が負傷した。けがの

一瞬、部屋の照明が消えるが、直ぐ 程度は不明。

に非常灯が点灯する。 防災無線、災害時優先電話などの通

信設備にも被害があり、一部の市町

村と通信が確保できない。復旧には

時間がかかるようだ。

状況付与先 ○○市 状況付与先 ○○市

発 信 元 職員 発 信 元 テレビ、ラジオ

手 段 現場・口頭 手 段 テレビ、ラジオ

日 時 12:02 日 時 12:30

件 名 建物の状況 件 名 (報道)被害の一報

内 容 水道が止まっている。一般の電話は 内 容 震度6強を「C県」南部、「A県」東

つながらない。 部で観測しています。

庁内の震度計は震度7を表示。 C県内各地で大きな被害が発生して

建物内の別の階では、大きな被害が いるようです。屋上のカメラからは、

発生している模様。現在確認中。 「C県」南部や「X市」方面にかけて

伺本も黒煙がのぼっているのが見え、

一部で火災が発生している模様です。

状況付与先 ○○市 首都圏の広い範圏で停電しているよ

発 信 元 気象庁 うです。鉄道機関はすべて運行停止し

手 段 専用FAX ているようですが、詳しいことは

日 時 12:05 わかりません。

件 名 震度情報・地震情報・津波情報 震度6強を記録した「A県」でも大き

内 容 「A県」東部直下でM7.0の地震発生。 な被害が発生しているようですが、

「B県」南部、「C県」東部で震度6 連絡が取れないため詳しいことはわ

を観測した。各地の震度は次の通り。 かりません。

震度6強:A県南部、B県横川市

震度6弱:C県東部、C県中央部、

C県中西部、A県東部、

A県半島部、B県西部、

B県中部

震度5強:C県西部、A県西部、

B県南東部、B県南部、

B県北東部、D県の南部

津波の危険はありません。

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109

図4.9 災 害 対 応 記 録 票 (例)

記入者 所 属 氏 名 № 他機関から(他機関名) 対応決定時刻

対 応

* 「№」欄には「状況付与票」の№を記入してください。なお、他機関からの対応伝達票に対して回答する

場合は当該対応伝達票に記載されている№を記入してください。その場合、「他機関から」欄には、当該機関

名を記載してください。 * 「対応決定時刻」欄には、「対応」欄に記載された対応を決定された時点での統制班(進行管理者)が掲示して

いる訓練想定時刻を記入してください。 * 「対応」欄には状況付与票(又は他機関からの対応伝達票)の付与状況に対しとられた対応を記載す

るとともに、その判断の根拠等を記入してください。

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110

図4.10 災 害 対 応 連 絡 票 (例)

記入者 所 属 氏 名

伝達時刻 時 分 № 状況区分 報告・指示・要請 機 関 名 氏 名

相 手 方

内 容

※ 「伝達時刻」欄には、統制班(進行管理者)が掲示している訓練想定時刻を記入してください。 ※ 「№」欄には、状況付与票の№を記入してください。なお、他機関からの対応伝達票に対して回答する場合は

当該対応伝達票に記載されている№を記入してください。 ※ 「相手方」欄には、伝達先の機関名と相手方担当者氏名を記載します。複数の機関に伝達する場合は、機関

ごとに本票を作成してください。 ※ 「内容」欄には、伝達等の内容をわかりやすく簡潔に記載してください。

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111

(進行管理者・運営担当)

(4)訓練をどのように評価・検証するとよいか

図上シミュレーション実施後の評価・検証の手順を、図4.11に例示

する。統制班(進行管理者及び運営担当者)は、訓練終了後、以下の手順

により、参加者グループごとの対応確認、評価を行うよう指示するととも

に、全員参加の総括・講評(全体討議及びとりまとめ)を進行する。 図4.11 評価・検証フロー

(訓練参加者)

ア グループ内における評価

図上シミュレーション訓練を実施したことによって、どのようなことが

確認され、課題となったかを、訓練が終了した直後に評価、確認すること

が重要である。

そのため、図上シミュレーション訓練では、各フェーズごとに、グルー

プ別に収集・確認できた情報と対応状況のまとめなどを報告(発表)する

仕組みとしているが、各フェーズごとの訓練が終了した時点で、あらため

て各グループがシミュレーション訓練においてとった一連の対応の確認

と自己評価を行う。

報告の後の評価・検証方法としては、訓練参加者による「討論方式」、

「チェックリスト方式」、「アンケート方式」等がある。「チェックリス

ト方式」及び「アンケート方式」は、共通のフォーマットで参加者の評価

を収集・確認できるが、集計・分析に時間を要するなどの点で難がある。

総括・講評(全体討議・とりまとめ)

グループごとの評価・検証の開始を指示

グループ別対応の確認

グループ内自己評価

終 了

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112

評価・検証結果を早く得て、参加者の共有化を図りたい場合は、その場

での「討論方式」が適する。当該市町村の訓練目的等に照らして適切と思

われる方式を採用する(訓練準備段階で決定した方式にのっとり、評価・

検証を進める。)。

当日の検討会の進め方に決まりきったものはないが、フェーズごとに複

数の訓練参加機関に重要と感じた問題点・課題を簡潔に発表させ、それを

きっかけにして率直な意見交換を行うのが実際的な方法と思われる。

図上シミュレーション訓練では、検討会(評価・検証)を効果的に行う

ことができるよう、訓練で使用した「災害対応記録票」や「災害対応伝達

票」に、その時点の対応や伝達・報告内容を記録することとしている。こ

の欄を大きくとっておけば、対応や伝達・報告の内容に加え、その時点で

気付いたことや対応行動及び意思決定上の「問題点・課題」をメモ風に記

入することも可能となる。検討会(評価・検証)は、これらの記入事項を

素材に行うと良い。

なお、本マニュアルで示した図上訓練のスケジュールでは、当日の検討

会(評価・検証)には1時間程度しか充てることができない。当然、論点

を絞った検討会にならざるを得ないため、当日の議論とは別に図上訓練に

対する参加者の意見を後日文書で提出してもらうことが大切である。

イ 総括・講評(全体討議及びとりまとめ)

訓練の評価を個々のグループ内だけで行うと、訓練の全容を把握しない

まま、グループ内の情報だけを基に評価してしまうことになり、評価が甘

くなる傾向がある。

そのため、各グループの実施結果の報告を基に、対応の適否に関する討

議や講評を訓練参加者全体で行うことが望ましい。

時には、大規模災害時の防災活動に通じている消防・防災機関等の外部

の専門家・コメンテータを交え、独自の立場からの発言を求め、職員を外

部からアドバイザーとして招き、検討会に加わっていただくとより内容の

充実した会議になると思われる。

なお、後日検討会を開催して評価・検証する場合は、事前に提出いただ

いた意見を統制班(進行管理者及び訓練企画者等)側で整理し、資料とし

て提出する必要がある。意見の整理は図上訓練の目的に照らしフェーズ別

に行うことを基本とし、その資料をもとに各機関との意見交換を行うと良

い。

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表4.11 図上訓練当日の評価・検証の進行例

1.それでは、これから評価・検証のための検討会を開始いたします。

2.検討会では、本日の訓練時に「災害対応記録票」、「災害対応連絡票」に記入

されました内容をもとに、災害対応上の「問題点・課題」について評価・検証

を行っていきたいと思います。

なお、本検討会では、「質問は自由、批判は厳禁。批判の替わりに代案を」

をルールとして進行します。

また、発言に際しては、所属とお名前をお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

3.早速、フェーズⅠについてのご発言を求めます。どなたでもご自由にどうぞ。

(発言がなければ、司会が複数人を指名します。)

発表は5分以内でお願いします。

それでは、まず、◎◎さん、お願いします。

(◎◎さん発表)

続きまして、△△さん、ご発表をお願いします。

(△△さん発表)

4.お二人からのご発表が終わりましたので、以下ではご発表いただいた内容を

素材に、評価・検証を行っていきたいと思います。

評価・検証の方法は、ただいまの発表内容に対して、訓練に参加された皆さ

ん方、司会、アドバイザーの方々から、質疑応答、代案の提示等により進めた

いと思います。

どなたからでも、かまいません。どうぞ、ご自由にご発言ください。

※(会場の雰囲気が硬い場合は)司会者から「まず、私から口火を切らして

いただきます。」という。

(司会者において、議事進行を行う。)

5.さて、そろそろこの時間帯での議論の残り時間が少なくなってきました。こ

こで、これまでの議論を整理しておきましょう。

(司会においてここまでの議論を簡単に整理する)

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6.次に、フェーズⅡに移ります。

以下、フェーズⅠと同様に進行する。

7.(フェーズⅢまで終了後)以上でフェーズごとの検討を終わります。

それでは全体を振り返って、何かご意見や疑問がありましたらお願いしま

す。

(意見がなければ、司会において全体に共通する問題点・課題などを提起する。

例えば、地震発生時期が厳冬期であった場合、津波が広範囲に及び外部からの

応援機関(自衛隊、緊急消防援助隊等)が到着できない事態が続出した場合な

ど)

8.(専門家にアドバイザーを依頼している場合)意見等も概ね出尽くしたよう

ですので、ここで全体の講評をアドバイザーの◎◎さんにお願いいたします。

(アドバイザーがコメント)

9.◎◎さんには、訓練関係者だけの検討ではつい見過ごしがちな重要なポイン

トを分かりやすくご指摘いただき、大変ありがとうございました。

以上で本日の検討会を終了します。

なお、本日の検討会では時間の関係で皆さん方の疑問やご意見を網羅できま

せんでした。お帰りになりましたら、皆さん方のお手元にお配りしましたアン

ケート票に率直なご意見をいただきたいと思います。

訓練の進め方、訓練を通じて感じた問題点や課題、対策の改善意見などどん

な意見でも結構です。1週間以内に主催者側にご提出ください。主催者側では

その意見をまとめ、対策に生かすとともに、必要があれば再度検討会を開催し

たいと考えています。その節はよろしくお願いいたします。

10 以上を持ちまして、本日の訓練は終了となります。皆さん、ご協力ありが

とうございました。

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【参考2】図上シミュレーション訓練の評価・検証項目の例

図上シミュレーション訓練における評価・検証項目と内容は、単一の組

織の職員を対象とした訓練か、それとも様々な組織から集まった職員を対

象とした訓練か、図上訓練を行ったグループはどのような特性を有してい

るのかなどにより異なる。訓練参加者規模等に応じた評価項目を例示する。

① 広域にわたる行政職員を対象とした図上訓練の場合

国や都道府県が主催する図上訓練に参加する場合は、参加の所属する

地域が広域に跨り、訓練対象地域を絞りにくいため、防災に関心を持っ

たり、防災に取り組む必要性を感じ取れたか、自組織で図上訓練を取り

入れるために実施方法を理解したり、他組織の人との交流が図れたか、

などが主な評価項目となる(表4.12参照。)。

表4.12 国や都道府県が主催する図上訓練などでの評価項目例

1 訓練自体の進行について

・参加者が興味を持って研修に参加できたか(面白さ、楽しさ、災害救助

に関心が深まったかなど)

・訓練の実施方法が理解できたか

・統制班(進行管理者)との情報交換、コミュニケーションに支障はなか

ったか

2 参加者の対応の確認

・ 個々の状況付与の処理(特に重要案件は想定どおり処理できたか)

・ 個々の状況付与案件の中で、処理できなかったものの内容

・ 必要な情報は、関係者が共有できたか

・ 参加者が協力して状況付与の処理ができたか

・ 防災対策上、参考となる知識が得られたか

3 総合的な評価

・ 参加者同士の交流、チームワークの醸成が促進できたか

・ 他地区・他組織の情報交換が促進できたか

・ 状況付与に対する処理(関係者への伝達で齟齬が生じていないか)

② 単独の組織や同一地域の職員等を対象とする図上訓練の場合

単独の組織や同一地域の行政職員等を対象とする図上訓練では、計画

の実効性・実現可能性の検証に力点が置かれるなど、訓練の実戦性や個

別項目、連携の適否等に関する詳細な評価が主となる(表4.13参照。)。

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表4.13 詳細な評価項目の例

(注)

出典1 坂本朗一・高梨成子,防災&情報研究所:防災行政職員を対象とした図上シミ

ュレーション訓練の実施による効果,消防研修第 74 号,2003 年 10 月. 出典2 日本赤十字社:災害救助図上シミュレーション訓練実施マニュアル~図上演習

の実施方法とその効果~, 2001 年3月.

① 対策本部の設置、職員招集・配置を実施したか。

1 組織運用・役割分担に

関する項目

② 担当者の役割分担や、組織の運用はうまくいったか。

① 情報がうまく収集・分析、伝達できたか。

② 他機関に伝達されていた情報の収集・確認は、スムー

ズにできたか。

③ 被災現場や、被害項目ごとに情報を収集・分析、伝達

できたか。

(1) 国、他の地方自治体

(2) 消防機関、警察機関、自衛隊

(3) 他の防災関係機関

2 情報収集・分析・伝達

に関する項目

④ 他機関への

応援要請は、

迅速かつ適切

にできたか (4) その他 (1) 死傷者数、避難者数、罹災者数

(2) 津波による被害

(3) 火災による被害

① 発災数時間

後の被害から、

その後の被害

を予測したか (4) 救出現場

3 災害イメージの形成

② 予測値は適切だったか。

① 全般

(1) 避難指示・勧告

(2) 救出対応

(3) 救出と道路啓開への資源配分

(4) 緊急医療の対応(医療救護班の派

遣・受入、医療搬送など)

(5) 火災への対応

(6) 避難所開設・運営、災害弱者対応

(7) マスコミ対応

(8) 住民などへの広報

4 応急対応の適切性

(災害時の実現可能性

も含む)

② 項目ごとの

対応評価

(9) その他

5 職員などの対応習熟・徹底

① 被災現場ごとの被害状況確認のための地図の活用

② 参考文献・資料の活用

6 参考資料・文献、小道

具類の活用

③ 防災計画・対応マニュアルの活用

① 訓練により、災害時の対応上の問題は発見できたか 7 計画へのフィードバッ

② 優先課題が発見できたか