脳梗塞に対する 外科的治療について ·...
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脳梗塞に対する外科的治療について
2012.7.28 市民講座 「脳梗塞は怖くない」
東邦大学医療センター佐倉病院 脳神経外科
羽賀大輔
脳梗塞治療における脳神経外科の役割
脳梗塞の治療主役はあくまでも内科的治療
(内服薬、点滴治療)と、
それに続くリハビリテーション
最も重要なことは予防!(食事制限、禁煙、運動など)1
脳外科医の出番はごく一部○ 内服加療を行っているが、今後大きな脳梗塞を発症する可能性が高そう‥
○ 発症数時間以内の重症脳梗塞!でも点滴治療が効かない‥ などなど
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脳梗塞になるまで
脳外科医の出番
脳梗塞に対する外科的治療
あくまでも治療の目的は
脳血流の改善による脳梗塞の予防
○ 頚部の頚動脈狭窄症に対する治療1. 内頚動脈内膜剥離術(CEA)2. 内頚動脈ステント(CAS)
○ 主な動脈閉塞症(内頚動脈など)に対する治療3.浅側頭-中大脳動脈吻合術(STA-MCAバイパス)
○ 超急性期脳梗塞に対するカテーテル治療
4.経動脈的血栓溶解療法
1.内頚動脈内膜剥離術(CEA)
○頚部の内頚動脈に狭窄がある場合、厚く
なった内膜(プラーク)を剥離、摘出する手術。
①虚血発作がある場合は50%以上の狭窄
②症状がない場合は60%以上の狭窄
に対してはこの手術を行うことにより、
内服薬だけで治療した症例より再発が少ない
ことが証明されている。
内頚動脈内膜剥離術(CEA)
手術合併症率(3~6%)脳梗塞、周囲神経障害(嚥下障害、呂律障害)過灌流症候群など
1
23
1:総頚動脈2:内頚動脈3:外頚動脈
1
32
CEA
症例:70歳男性
症例:70歳男性
内頚動脈内膜剥離術(CEA)
摘出されたプラーク
術後頚部3DCTA
2.頚部内頚動脈ステント(CAS)• 大腿部からカテーテルを挿入して狭窄部に到達させる。狭窄部の脳側にはステント拡張した時に血栓が脳に飛んでいかないようにする傘状や風船状のプロテクティブデバイスという器材で血栓を捕獲する。
• 狭窄部ではステントを拡張させ狭窄部を拡張する。
ステント フィルターデバイス
頚部内頚動脈ステント(CAS)
合併症:脳梗塞血圧低下、徐脈(頚動脈洞反射による)過灌流症候群 など
症例:75歳男性
当院での頚動脈手術件数
15
31
9
1413
12
0
35
23
4
0
2
4
6
8
10
12
14
16
2007 2008 2009 2010 2011 2012
CEA CAS
ステント治療認可
(6月まで)
当院での頚動脈治療症例
CEA(手術) CAS(ステント)症例数 49例 (74%) 17例 (26%)
年齢 52-79 歳(平均 69.0歳)
45-74 歳(平均66.3歳)
性別 男性39例/女性7例 男性9例/女性7例
手術側 右 25例/左 21例 右 8例/左 8例
症候性/無症候性 14例/32例(30.4%) 6例/10例(37.5%)
狭窄率 症候性(NASCET) 無症候性
50-99% (平均 71.4%)58-90% (平均 68.5%)
64-99% (平均 82.8%)60-95% (平均 72.2%)
潰瘍形成 症候性無症候性
8例/14例 (57.1%)15例/32例 (46.9%)
3例/6例 (50.0%)1例/10例 (10.0%)
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頚動脈狭窄に対する外科的治療法
CEA → 狭窄率を0%にすることが可能
血栓源を除去することができる
CAS → 短時間、静脈麻酔 (やや合併症が多い?)
⇒CEA が困難な場合に行う治療
無症候性に対しては、CEA手術成績において合併症率が3%以下であることが必要と施設の手術成績が限定されている。
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頚動脈狭窄症における術後合併症
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CEA 全49例・ 症候性脳梗塞 0例・ 口角部の軽度麻痺 1例
CAS 全17例・症候性脳梗塞 1例
重度合併症率 0 % 重度合併症率 5.9 %
Total 1例/66例 (1.52%)
頚動脈手術患者の既往歴
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CEA(手術) CAS(ステント)
高血圧 36例(78.3%) 12例(75.0%)
糖尿病 32例(69.6%) 11例(68.8%)
高脂血症 32例(69.6%) 7例(43.8%)
狭心症 23例(50.0%) 9例(56.3%)
心筋梗塞 9例(19.6%) 2例(12.5%)
下肢動脈硬化症 9例(19.6%) 5例(31.3%)
喫煙 35例(76.1%) 9例(56.3%)
こういった生活習慣病を複数お持ちの方は、
頚動脈エコー(超音波)検査を受けられることをお勧めします。
3.血管吻合術(STA-MCAバイパス)
閉塞した脳血管(内頚動脈、中大脳動脈)のさらに先の血管に浅側頭動脈(頭皮を走る血管 STA)を剥離して直接吻合する手術。
吻合した血管から血流が新たに確保できるため再発を抑えることができる。最近日本で行われた研究でその有用性(再発予防)が証明。(JET study Japanese EC-IC bypass trial study)合併症: 脳梗塞、術後出血、過灌流症候群
頭蓋内および創部感染症(皮膚の血流低下のため)
STA
血管吻合術(STA-MCAバイパス)
STA
閉塞
吻合
症例:67歳男性
動脈がうつっていない
症例:67歳男性
内頚動脈が閉塞
STA
血管吻合術(STA-MCAバイパス)
バイパス術後 脳血管撮影
つないだ血管を介して脳の血管が造影されている
当院でのバイパス手術成績
2008年4月以降(2012年6月まで)
手術症例総数 32例右側:17例、左側:15例(もやもや病:4例)
バイパス開存率:31/32例 (96.9%)
術後合併症
遅発性(手術翌日)の脳内出血 1例 (約3.1%)
脳梗塞再発 1例(術後約1年経過時)
脳卒中ガイドラインによる超急性期治療
●発症から3時間以内
血栓溶解療法(経静脈内投与)
(グレードA:強く勧める) 発症から3時間以内でCTスキャンで梗塞所見がまだ出ていない場合にt-PAを静脈注射し血栓を溶かす。
●6時間以内
血栓溶解療法(経動脈的投与)
(グレードB:やった方が良い) 発症から6時間以内に
治療が開始でき、CTで梗塞所見が認められない例で血管内にカテーテルを入れ薬剤による血栓溶解を行う。
4.血栓溶解療法(血管内動注)
• 3~6時間以内に発症した症例でCT検査でも梗塞
がはっきり出ていない症例に限り適応。マイクロカテーテルを閉塞部まで進め、そこ から血栓溶解剤を注入する。
• このように動脈内に直接注入する方法では血栓溶解剤はウロキナーゼを用いる。
• t-PAが使用されるようになってからは症例数は低下傾向にあり、t-PAが使用できない症例、無効例に対する治療としての意味づけが強い。
血栓溶解療法(血管内動注)
ウロキナーゼ動注+バルーンによる血栓破砕
こういった治療が出来るのはあくまでもごく一部の限られた症例です。
最後に‥
脳梗塞の治療主役はあくまでも内科的治療
(内服薬、点滴治療)と、
それに続くリハビリテーション
最も重要なことは予防!(食事制限、禁煙、運動など)32
皆様の日々の節制、努力によって脳外科医の出番がなくなること
期待しています!ご清聴ありがとうございました。
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