現場で可能なトマト灰色かび病菌の薬剤感受性簡易 …15~20...

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現場で可能なトマト灰色かび病菌の薬剤感受性簡易検定法 の開発 誌名 誌名 山口県農林総合技術センター研究報告 ISSN ISSN 21850437 巻/号 巻/号 6 掲載ページ 掲載ページ p. 33-37 発行年月 発行年月 2015年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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現場で可能なトマト灰色かび病菌の薬剤感受性簡易検定法の開発

誌名誌名 山口県農林総合技術センター研究報告

ISSNISSN 21850437

巻/号巻/号 6

掲載ページ掲載ページ p. 33-37

発行年月発行年月 2015年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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山口農林総技セ研報(Bul1. Yamag山 hiAgri. & For. Gen. Tech. Ctr.) 6 : 33-37. 2015.

現場で可能なトマト灰色かび構躍の薬剤感受性簡易検定法の開発

吉原茂昭*.唐津達彦・本体和之

Development of Simple On-Site Methods for 時onitoring

Fungicide Sens誌ivityof Botiytis cinθ'l'a

ShigeakiYo位置弘RA,’fatsuhiko KARA.TSU沼 idKazuyuki MURAMOTO

Abstract: T¥vo simple methods for monitoring the五rngicide田 nsitivi句rof Botiyb注cinθI問 weredeveloped.

For the first method, a slice of daikon radish treated with五mgicideand a cotton swab inoculated with

Botiytis cinenθa were placed on an inverted paper cup topped with a plastic cup. Sensitivi匂rwas

determined by the spread of the fungus初 thedaikon and paper cup. For the second method, fungicide

treated toothpicks were stuck directly into the lesions of a晶 ctedtoma加es.Sensitivity was determined by

五mgalgrowth on the toothpicks.τ'he conventional method requires Bo白ァti診 cinθ•rea 加 be isolated and

cultured in specialized facilities, but both of these simple methods can be done without叩ecializedfacilities

and expertise. The new methodsぽ equick and inexpensive, and should prove practi回 1for farmers when

choosinge佐ctivefungicides.

Key Words : daikon radish, paper cup, toothpick

キーワード:ダイコン、紙コップ、爪楊枝

緒言

近年、 トマト灰色か明丙では、チオファネートメチ

ル斉iJやフ。ロシミドン剤等の耐性菌が多く発生し、問題

となっている。

そのため、灰色か例丙の効果的な防除を戴留するに

は、薬剤感受性検定を実施し、耐性菌の発生状況を確

認する必要がある。

しかし、従来の薬剤惑受性検定法は、発病果等から

灰色かひ端菌の分高齢培養を行い、検定培地上で菌叢

生育等を確認するため、クリーンベンチ等の無菌操作

を行うための設備や専門的な技術が必要である。また、

2~3週間の長い言E犠期間を要するため、実擦に必要

な時期の防除対策には検定結果が反映されにくい。

菌芸{特免における灰色かひ噺蕗の薬剤憾受性簡易検

定法については、既lこしてつかの報告がある。爪楊枝

※現在:農業振興課

を使用して接種する方法(佐藤ら, 1997)では、早期

に判別可能であるが、選択培地が必要である。また、

薬液浸潰した果実に接種する方法(手塚ら, 1976)では、

健全果や病源菌の前培養が必要とされる。

そこで、 2011年から 2013年の 3年間、現場の生産

者自身が実施しやすい検定法の確立を目的として誠実

を実施し、紙コップや爪楊枝を用いた、従来の方法に

比べ簡易な薬剤感受性検定法を開発したので報告する。

材料および方法

1 ダイコン、紙コップ、ブラカップ、 PDAを含

む綿棒を用いた薬剤感受性簡易検定法の確立

1)慣行法による薬剤感受性検定と醤株の選抜

2012年 10月、県内トマト主要産地から灰色かひ精

菌50菌株を分離し、供試菌とした。

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現場で可能なトマト灰生かび病菌の薬剤j感受性館易検定法の開発

PD A平板培地により20°Cで3詞開培養した供試

菌の先端をコルクポーラーで、直径4mmのデ、イスクに打

抜き、チオファネートメチルlOOppm、プロシミドン5

ppm、ジエトフェンカノレブ'' lOppmを添加したPD A平板

培地及び薬剤無評却PDA平板培地(無処理区)に菌

叢面を下にして置床した。暗条件下、 20°Cで2日間培

養後、菌叢生育の有無等により各薬剤に対する感受性

を検定した。

また、薬剤感受性簡易検定のため、異なる薬剤j感受

性を示す2菌株を選抜した。

2)ダイコンを使用した薬剤感受性笥易検定法

(1)ダイコンの適用性及び境行法との比較

上記慣行法による薬剤感受性検定で選抜した2菌

株を供試菌株とした。

灰色かび病菌の培養にダイコンが利用可能かどう

かを確認するため、ダイコンを上、中、下3音町立に分

け、市販のスライサーや型抜きを利用して産径25翻 l、

1幽 d事のデ、イスク(以下、ダイコンディスク)を作成し、

チオファネートメチノレ水和剤 1500倍、ブρロシミドン

水和剤 1,000倍、チオフネートメチノレ・ジエトフェン

カノレブ水和剤 1,000倍に調製した事ぎ夜と水道水(無処

理毘)の中に1分間浸演した後、直ちに伏せた紙コッ

プの成面中央にのせた。その後、 PDA平板培地によ

り20℃で7日間培養した2菌株の各龍叢に、すみやか

にPDAを染ませた綿棒(片方の綿部は切り落とす)

の先端を軽く角虫れ、ダイコンデ?イスクおよひ守正コッフ。

の中央に開けた穴に、綿部を上にして差し込み、プラ

カッフ。で、ふたをした。

15~20℃の実験室内で 10日間培養後、ダイコンデ

ィスク及。清正コップo上への茜叢生育の有無により各薬

剤に対する感受性を検定し、慣行法による薬斉i憾受性

検定結果と比較した。

(2)培養条件が判定に与える景建

ダイコンディスクを水道水の中に 1分間浸潰した

後、直ちに伏せた紙コッフ。の底面中央にのせた。

PDA平板培地により 20℃で7日間培養した灰色病

菌の菌叢に、すみやかにPDAを染み込ませた綿棒(片

方の綿部は切り落とす)の先端を軽く角封1 タγコン

ディスク及ひ常兵コップ。の中央に開けた穴に綿部を上に

して差し込んだ。

その後、 10°C、15°C、20℃、 25°C、30°Cの5段階に

設定したインキュベーター内(暗条件下)で5~12日

間培養し、ダイコンディスク及ひ清氏コッフ。上への灰色

かひ病菌の菌叢生育の有無を調査した。

(3)接種麗が判定に与える景5響2014年1月、山口市のトマトほ場から採取したトマ

ト灰色かひ精躍病果、葉、茎の菌叢にPDAを染ませ

た綿棒(片方の綿部は切り落とす)の先端を軽く角献も、

水道水に 1分間浸漬処理したダイコンディスクの中央

及。唱氏コップの中央に聞けた穴に、綿部を上にして差

し込み、プラカップ。で、ふたをした。

15~20℃の実験室内で7日間培養後、ダイコンディ

スク及ひ漁民コッフ。上への灰色かひ病菌の菌叢生育の有

無を調査した。

2 爪楊枝を便用した薬剤感受性検定法

1) I慣行法による薬剤感受性検定

2014弔問、山口市のトマト耕音ほ場から採取した

トマト灰色かひ明,躍病巣16果から16菌株を分離し、供

試菌株とした。

PDA平板培地により 20℃で3日間培養した供試

菌の先端をコノレクポーラーで、直佳4mmのディスクに

打ち抜き、チオファネートメチル lOOppm、プロシミド

ン5ppm、フノレジオキソニル0,2ppmを添加したPDA

平板培地及び薬剤無添拍PDA平板培地(無処理的

に菌叢面を下にして置床した。暗条件下、 20°Cで213

間培養後、菌叢生育の有無等により各薬剤に対する感

受性を検定した。

2)爪楊枝を使用した薬剤感受性検定とt麗行法の上国交

上記慣行法による薬剤感受性検定の菌株分離に用

いたトマト灰色かひ場予罷病果 16果をプラカップ01こ入

れて、チオファネートメチル水和剤 1,500倍、プロシ

ミドン水和剤1,000倍、フルジオキソニル水和剤1,000

倍に調整した各薬i夜に爪楊枝を約5分間浸演し、爪楊

枝の表面が乾く手型支に数分間思乾した後、菌叢周辺の

褐I変部に 15~20mm突き刺した。

その後、カッフ。全体をポリ袋で覆い、 20℃のインキ

ュベーター内(明条件下)に4日間静遣し、爪楊+支上

方への灰色かW丙菌の菌叢伸長により各薬剤に対する

感受性を検定した。また、噴行法による薬剤感受性検

定結果と比較した。

3)爪楊枝突き刺し後の蘭叢生育

トマト灰色かび病躍病果5果をプラカッフ。に入れ、

チオファネートメチル水和斉lj1, 500倍、プロシミドン

水和剤 1,000倍、フルジオキソニノレ水和剤 1,000倍に

調製した各薬液に爪楊枝を約5分間浸漬後、表記が乾

く程度に数分間風乾し、菌叢周辺の?皆変部分に 15~20

m突き刺した。

カッフ。全体をポリ袋で覆い、 20℃のインキュベータ

ー内(明条件下)に7日開静置し、灰色かひ病菌の爪

楊枝上方への菌叢伸長を調査した。

結果

1 ダイコン、紙コップ、プラカップ、 PD Aを含む

綿棒を用いた薬剤感受性簡易検定法

1)横行法による薬剤感受性検定と蓋株の選抜

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本県のトマト主要産地における灰色かび病菌の薬

剤感受性検定では、チオファネートメチル水和剤、プ

ロシミドン水和剤、ジエトフェンカルブ水和剤のJI慎で

多くの耐性菌が認められた(第1表) 。

また、チオファネートメチル水和剤、プロシミドン

水和剤、ジエトフェンカルブ水和剤の複合耐性菌が多

く認められた(第2表) 。

なお、本試験により、チオファネートメチル感受性

(S) 、プロシミドン而十性(R)、ジエトフェンカノレブ、

耐性(R)に分類される菌株ト-4 (SRR)及びチオフ

ァネートメチル耐性(R)、 プロシミドン感受性(S)、

ジエトフェンカルブ感受性(S)に分類される菌株ト-

6 (RSS)の2菌株を得た。

第 1表 トマ ト灰色かび病 菌の 慣行 法に よる 薬剤 感受性検定結果

耐性菌率%

採取場所 I街株数チオファヰートメチノレ フーロシミドン ジエトフェンカノレプ

水和剤l 水和剤| 水和剤l

S'

山口市 26 15.4 84.6 30.8 69.2 84.6 15.4

萩市 24 12.5 87.5 50.0 50.0 87.5 12.5

平均 14.0 86.J 40.4 59.6 86.l 14.0

'sは感受性菌、 Rは耐柑菌

第 2表 トマト 灰 色 か び病菌の各薬剤に対する感受性による分類

採取場所各薬剤lに対する感受性による分類a %

SRR RSS RRS

山口市 15. 4 30. 8 53. 8

萩布 12. 5 50. 0 37. 5

平均 14.0 40.4 45.7

aチオファネート メチノレホ和剤、 プロシミドン水和剤、ジエトフェンカルプホ和Y刊の順に、3剤に対してト7 ト灰色かび病菌が示す感受性を 3文字表記したもので、Sは感受性関、 Rは耐性箇

2)ダイコンを使用した薬剤感受性簡易検定法

(1)ダイコンの適用性及び横行法との比較

ダイコン上部、中部を用いた場合、トー4菌株では、

無処理区及び、フ。ロシミド、ン水和剤区で、ト- 6菌株で

は、無処理区及びチオファネートメチル水和剤区で、ダ

イコンディスク及ひ常兵コッフ。上への菌叢生育が認めら

れた。これらは、慣行法のPDA平板培地上で菌叢生

育が認められ、而折主菌と判定した結果と一致した。

また、ト-4菌株では、チオファネートメチル水和

剤区及びチオファネートメチル・ジエトフェンカルブ

水和剤区で、ト- 6菌株では、プロシミドン水和剤区

及びチオファネートメチル ・ジエトフェンカノレブ、水和

剤区でダイコンディスク及。守兵コッフ。上への菌叢生育

が認められなかった。これらは、慣行法のPDA平板

培地上で菌叢生育が認められず、感受性菌と判定した

結果と一致した。

以上の結果から、本法は、慣行の薬剤憾受性検定と

同様の結果が得られることがわかった。

しかし、ダイコン下部を用いた場合は、ダイコンデ

ィスクのほとんどが腐敗し、薬剤憾受性の判定が出来

なかった(第3表、第1図)。

第 3表 簡易検定法においてダイコンの部位が薬剤感受性検定に与える影響

菌検

簡易検定法で使用するダイコンの鮒位

上部(有:馳締) 中郷 onよ郷) 下郷(恨下部) 慣行法h検定薬剤・

E復 I 2 3 I 2 3 I 2 3

無処理 +c + + + + + 店店腐 +

チオファネートメチル木和剤 腐腐腐ト 4

プロシミドン木和剤 +++ + + + 腐腐腐 +

チオファネートメチル府 - - J省腐ジエトフェンカルプ水和剤

'"'処 理 +++ ++ 腐 腐 腐 腐 +

チオファネートメチルホ和剤 +++ + + + 腐 腐一 +

卜 6 プロシミドン水和剤 一- I書店腐腐

チオファネートメチル一一一一一一 席一緒ジエトフェンカルプ水狗剤

‘簡易検定訟は、チオファネートメチノレI,500吾、プロシミドン水和剤I,000倍、チオファネートメチル ージエトフエンカルプ水和剤I,000{昔、慣行法は、チオファネートメチノレ水和剤IOOp凹 プロシミドン水和剤 5pp問、ジエトフエンカルプ ! Opp•で実施

b慣行法で、ジエトフェンカノレプで耐性(+)かつチオファネートメチル感受性(ー)、またはジエトフェンカルプ感受性( )かっチオファネートメチノレ耐性(+)の場合は、チオファネートメチノレ ジエトフェンカノレプ水和剤の評価を感受性(ー)とした

'+ 薗草壁生育が認められる、ー 薗叢生育が;gめられない、腐 グイコ yが腐敗し、菌難生育の判定不能

15℃で管理

第 1図 感受性菌と耐性菌の判定

(2)培養条件が判定に与える景簿

灰色かび病菌のダイコンディスク及び紙コップ上

への菌叢生育は、 気温が高いほど早く、20℃では5日

目に、 15°Cでは7日目に、 10°Cでは 10日目に認められ

た。しかし、気温25℃以上では、早期からダイコンデ

ィスク上に雑菌の繁殖が認められ、菌叢生育の判定が

困難で、あった。

また、灰色かひ精菌の菌叢生育が認められたダイコ

ンディスク上でも、 気温が高いほど早い時期から雑菌

の繁殖が認められた。

以上から、本法は、気温15~20°c、培養日数7~10

日の培養条件が適していた(第4表)。

第4表 気温 ・培養 日数の迷いが簡易検定法における薗殺生育に与える影響

培養回数気温a

15℃ 20℃ 25℃ 30℃

+ 判定不能 判定不能

+ +(雑) 判定不能 判定不能

+ 判定不能 判定不能 判定不能

+(維) 判定不能 判定不能 判定不能

10℃

5日

7日

10日+

13日+

aインキュベ-?1ーにて、終日 定気温、 暗黒下で管理

b+ 菌叢生育が認められる、ー 箇叢生育が認められない、 (雑)判定不能 雑菌の繁殖により酪叢生育の判定不能

雑菌繁殖、

Fhu

qd

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現場で可能なトマト灰色かび病菌の薬剤感受性簡易検定法の開発

3)接tli原が判定に与える影響

トマト灰色かひ精に擢病した果実、葉、奮のいずれ

を用いても、全てダイコンディスク及ひ靖氏コッフ。上に

灰色かひ病菌の菌叢生育が認められ、判定可能で、あっ

た。しかし、茎を用いた場合は、灰色かひ病菌の菌叢

生育率が69.2%であり、一部の検体は、検定に不向き

で、あった(第5表)。

第5表 簡易薬剤感受性検定 aにおいて接種源が菌叢生育に与える影響

接種源 ダイコン ・紙コップ上の菌叢生育 箇叢生育ヰ3

部位 検体数 生育あり 生育なし %

果実 18 18 100

茎 13 69. 2

葉 10 10 100

菅 100

計 44 40 90. 9

aダイコン、紙コップ、プラカップ、PDAを含む綿棒を用いた薬剤感受性検定

2 爪楊枝を使用した薬剤感受性検定法

1)慣行法による薬剤感受性検定

山口市のほ場から分離したトマト灰色かひ病菌 16

菌株は、チオファネートメチル水和剤に対しては、全

て耐性菌で、あった。また、プロシミド、ン水和剤、フル

ジオキソニル水和剤の両剤に対しては、全て感受性菌

で、あった(第6表) 。

第6表 トマ ト灰色かび病菌の慣行法に よ る薬剤l感受性検定結果

耐性菌率%

チオファネートメチル プロシミドン採取場所簡抹数

水和剤 水和剤

プノレジオキソニノレ

水和舟l

S'

山口市 16 100 100 100

. sは感受性菌、 Rは耐性菌

2)爪楊枝を使用した薬剤感受性検定と慣行法の比較

無処理区及びチオファネートメチル水和剤区では、

16菌株全てに爪楊枝上方への灰色かひ病菌の菌叢伸

長が認められた。これらは、慣行法のPDA平板培地

上で灰色かひ病菌の菌叢生育が認められ、耐性菌と判

定した結果と一致した。

一方、プロシミドン水和剤区及び、フルジオキソニノレ

水和剤区で、は、 16菌株とも爪楊枝上方への灰色かひ病

菌の菌叢伸長は認められなかった。これらは、慣行法

のPDA平板培地上で灰色かひ病菌の菌叢生育が認め

られず、感受性菌と判定した検定結果と一致した。

以上から、本法は、慣行の薬剤憾受性検定と同様の

結果が得られることがわかった(第7表)。

第7表爪楊枝を使用 した薬剤j感 受 性 検 定 と 慣 行 法 の 比 較a

耐性苗率引{爪掛枝上の平地面輩畏またはPD A培地上の平均面置直径回)

検体数

無処理チオプァヰートメチル プロシミドン フルジオキソニル

水和剤 水和剤 水和剤

爪楊枝を使16 100 (33. 2') JOO (33. 0) 0 (0) 。(0)

用した方法

慣行法 16 100 (46. 6') 100 (38. 8) 0 (0) 日(0)

a山U市の同一ほ場から採集したトマト灰色かび病権病果を用い、爪楊枝を使用した薬剤感受性簡易検定とその確病果から分隊した16菌株を用いたPD A培地による慣行の薬剤感受性検定の結果を比較した

b接種4Fl詮に果実上から爪楊枝上方へ伸長した灰色かび病菌の平均菌叢長(皿)

c接種2円桂のPD A培地上の灰色かび病菌の平均菌叢直径(醐)

3)爪楊枝突き刺し後の菌叢生育

無処理区及びチオファネートメチル水和剤区で、は、

トマト果実に爪楊枝を突き刺して2日後から爪楊枝上

方への灰色かひ病菌の菌叢伸長が認められ、 4日後ま

でゆるやかに上昇した。しかし、それ以降は、爪楊枝

上方への灰色かひ病菌の菌叢伸長はほとんど認められ

なかった。

これに対し、プロシミド、ン水和剤区及びフルジオキ

ソニル水和剤区で、は、誤験期間中、爪楊枝上方への灰

色かひ病菌の菌叢伸長は全く認められなかった(第2

図)。

40 ←一一一一一ー一一一一一一一一一一一一一一

o

o

o

o

qd

nL

14

(自)出走籍組Q〈h円斗詳拘禁足

A ,・--------・__ .. -・-・ニー_ ..’F ー+ー無処理--, ,

一,J ,一

一.’ 一一-・四 千オファネートメチノレ

『炉プロシミドン

-ーフノレジオキソニノレ

2日 3日 4日 7日

薬剤処理した爪楊枝 の突き刺 し後の 回数

第2図 爪楊枝上への トマト灰色かび病菌の 箇 叢 伸 長

以上から、本法では、爪楊枝突き刺し2~3日後の

爪楊枝上方への灰色かひ精菌の菌叢伸長の有無で、薬

斉|感受性検定が可能であった(第3図)。

第3図 爪楊枝上方へ伸長した灰色かび病菌の菌叢

※矢印は、果実上から爪楊枝上方に伸長した菌叢

nhu

qJ

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山口農林総技セ研報(Bull. Yamaguchi Agri. & For. Gen. Tech. Ctr.) 6 : 33-37. 2015.

考察

園芸作物における灰色かひ病菌の薬剤感受性簡易検

定法については、無菌操作等の必要がなく、生産者自

身でも実施しやすし、検定法が求められている。

このたび、開発した、ダイコン、紙コップ、プラカッ

プ、 PDAを含む綿棒を用いた薬剤感受性検定法(以

下、ダイコン ・カッフ。検定法) (第4図)、爪楊枝を

使用した薬剤憾受性検定法(以下、爪楊枝スティック

法) (第5図)とも、実験室内での専門的操作の必要

がなく、生産者自身が現場で実施できる簡易な検定方

法と考える。特に、爪楊枝スティック法は、生きた植

物体を用いることもなく、薬剤処理した爪楊枝を灰色

か明丙擢病果の菌叢周辺に突き刺して検定するため、

より簡易な薬剤感受性検定法である。

また、これらの検定法は1回当たりの検定が10円程

度で実施可能であり、コストパフォーマンスにも優れ

ているため、簡易で安価な現場向きの検定手法である。

今後、他薬剤の適用性を確認することで、これらの

薬剤感受性簡易検定法の利用価値がさらに高まるもの

と期待する。

① ② ③

φ ,/法入\ +人 J

薬液に 1分間浸潰したダイコンディスクを紙コップにのせ綿棒を差し込む

プラカップで蓋をし、 15~20℃の室内に置き、 7~10日後判定

PD Aを染ませた綿棒で菌叢に軽く触れる

第4図 ダイコン・カップ法

m=~·~型~·⑩@噛V噛ポリ袋で覆い20'Cで管理 2~3日後に判定

第5図爪楊枝スティック法

摘要

トマト灰色かひ精について、現場で実施可能な、簡

易薬剤憾受性検定方法を開発した。

ダイコン・カッフ。検定法、爪楊枝スティック法とも、

慣行法に比べ簡易でありながら、慣行法と同様の検定

結果が得られた。また、これらの方法は、従来の薬剤

感受性検定で必要とされていた菌の分離や培養など

の無菌操作や専門的な設備は必要なく、簡易かつ安価

であることから、灰色かひ滴菌の簡易な薬剤憾受性検

定法として現場農家レベルで役立つものと期待する。

引用文献

佐藤充通.山田正和・中津靖彦・堀江博道.1997.関

東東山病害虫研究会年報.44 : 97-101.

手塚信夫 ・木曾陪. 1976. 日本農薬学会誌. 1 :

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日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会. 1998.植

物病原菌の薬剤感受性検定マニュアル I.日本植

物防疫協会.東京.p. 28-33.

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