秋田県内の在宅医療の現状把握のためのアンケート調査 - Akita...

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秋田県内の在宅医療の現状把握のためのアンケート調査 秋田県における在宅人工呼吸器管理の現状調査 秋田県の小児在宅医療を支える訪問看護の現状と課題についてのアンケート調査 平成 29 3 文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラム 秋田大学「重症児の在宅支援を担う医師等養成」推進事業

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秋田県内の在宅医療の現状把握のためのアンケート調査

秋田県における在宅人工呼吸器管理の現状調査

秋田県の小児在宅医療を支える訪問看護の現状と課題についてのアンケート調査

平成 29年 3月

文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラム

秋田大学「重症児の在宅支援を担う医師等養成」推進事業

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目 次

Ⅰ.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ.報告書概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅲ.研究要旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

Ⅳ.調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

1.調査方法2.調査対象3.倫理面への配慮4.調査期間

Ⅴ.アンケート調査の結果

1.回収率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32.県内の重症心身障害児者に関わる現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

(1)医療機関と小児在宅医療の関わり(2)訪問看護ステーションと小児在宅医療の関わり(3)福祉施設と重症心身障害児の関わり(4)在宅医療を行っている患者と家族の現状

3.利用可能な資源の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10(1)医療機関における資源の提供状況①医療的ケアを必要とする障害児者の家庭医に関して

②医療的ケアが必要な障害児者の家庭医として関わるために必要なこと

③「秋田県内における在宅人工呼吸器管理の現状調査」結果

(2)訪問看護ステーションにおける資源の提供状況①小児訪問看護の実施に関する状況

②小児訪問看護への今後の対応について

③「秋田県内の小児在宅医療を支える訪問看護の現状と課題についてのアンケート調査」結果

(3)家族の資源利用状況①在宅医療資源の利用状況

②福祉サービスの利用状況

4.レスパイト利用に関する現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22(1)医療機関の現状(2)家族の状況

Ⅵ.考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

1.基本情報に関する考察2.利用可能な資源に関する考察3.レスパイト利用に関する考察

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Ⅰ.はじめに

医療の進歩により救命される新生児が増えている一方で、脳や呼吸器に障害を抱える児が増えていま

す。これらの重症児は、必要な医療行為が高度であるため入院が長期化し、新生児集中治療室(NICU)ベッド確保困難の一因となっており、近年、社会問題となっています。酸素投与や人工呼吸器、経管栄

養などの医療を常時必要とする重症児が退院するためには自宅での医療行為が不可欠ですが、医療行為

が高度であることや在宅医療を支援する体制が未整備なため、重症児が家族と安心して暮らせる地域社

会の実現が求められています。

秋田県においても在宅医療を必要とする重症児者が増え、それを支援する医療者の養成や医療体制、

福祉体制の整備が必要です。今回、文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラム秋田大学「重症

児の在宅支援を担う医師等養成」推進事業の一環として、秋田県の小児在宅医療の現状把握を目的とす

るアンケート調査を行い、今後の課題について検討しました。本アンケート調査が在宅医療に関わるす

べての方々のために少しでもお役に立つことを願っております。

ご協力いただきました関係機関、ならびに患者様のご家族の方々に厚く御礼申し上げます。

平成 29年 3月秋田大学「重症児の在宅支援を担う医師等養成」推進事業

委員長 髙橋 勉 (秋田大学医学部附属病院 小児科 教授)

アンケート調査担当 矢野 珠巨 (秋田大学医学部附属病院 小児科 講師)

豊野 美幸 (秋田県立医療療育センター 小児科長)

寺松 諒子 (秋田大学医学部附属病院 小児科 臨床心理士)

Ⅱ.報告書概要

三つのアンケート調査結果をもとに内容をまとめた。

A.秋田県内の在宅医療の現状把握のためのアンケート調査 調査期間:2016年 1月~4月 調査対象:秋田県内で小児科医療に関わる医療機関 71機関 秋田県内の訪問看護ステーション 55機関 福祉施設 9機関 在宅医療が必要な障害児者を抱える家族

B.秋田県における小児在宅人工呼吸器管理の現状調査 調査期間:2014年 6月 調査対象:秋田県内の 2次・3次病院の小児科医 25名

C.秋田県の小児在宅医療を支える訪問看護の現状と課題についてのアンケート調査 調査期間:2015年 8月 調査対象:秋田県内の訪問看護ステーション 37機関

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Ⅲ.研究要旨

目的:周産期医療の進歩により救命される新生児の増加に伴い、呼吸器管理や経管栄養などの医療的

ケアを必要とする重症心身障害児も増えている。しかし、重症児者の地域での生活を支える支援体制は

十分とはいえず、秋田県内においても小児在宅医療の支援制度を整備していく必要がある。本研究では、

文部科学省高度医療人材養成プログラム秋田大学「重症児の在宅支援を担う医師等養成」推進事業の一

環として、秋田県内の小児在宅医療の現状を把握し、今後の課題を抽出・検討することを目的としたア

ンケート調査を行った。

調査方法:小児科医療に関わる医療機関、県内の訪問看護ステーション、福祉施設、在宅医療が必要

な障害児者を抱える家族に「秋田県内の在宅医療の現状把握のためのアンケート調査」を行った。また、

県内の 2次・3次病院の小児科医師には「秋田県における在宅人工呼吸器管理の現状調査」、訪問看護ステーションには「秋田県の小児在宅医療を支える訪問看護の現状と課題についてのアンケート調査」も

加えて実施した。

アンケート項目は、医療機関、訪問看護ステーション、福祉施設に対して、重症心身障害児者の診療

や訪問看護などの実施状況、今後新たな受け入れの可能性について尋ね、家族には医療資源や福祉サー

ビスの利用状況、在宅医療を行う上での困難感について尋ねた。

結果:患者の年齢割合は 19歳を境として半数ずつであり、主な介護者の年齢は 30歳代が 30.4%と最も多く、次に 60 歳代が 25%と多かった。また、資源や福祉サービスの利用を希望していても、受け入れ可能な施設が少ないため利用できないと感じていることが明らかとなった。医療機関では、医療的ケ

アが必要な障害児者の家庭医として、総合病院の 57.1%が関わることができると回答し、個人病院では「時間がない」「診療に不安がある」の理由で 76.5%が関われないと回答していた。訪問看護ステーションでは、小児に対応していても現在は利用者がいない施設があり、資源を活かしきれていない現状が明

らかとなった。

考察:小児を対象としている医療機関や福祉施設が限られているうえ、家族と施設の連携が不十分な

ため、小児に対応できる施設をうまく利用できていない状態が示唆された。情報共有が未整備なために

情報を得難い現状の中、介護の負担を抱えている家族が情報収集までも行わなければならない大変さが

うかがわれた。今後、秋田県内での小児在宅医療に携わる施設を増やしていくために、現在成人を対象

にしている施設が小児も受け入れられる体制を整えることや、小児にも対応できる相談支援専門員を育

成するなど、現在ある資源を活用することが重要である。また、利用できる施設の情報を関係者で共有

し、家族への情報提供がスムーズに行えるように整備していくことが必要である。そのためには、医療

者同士の情報交換、地域連携を強化すること、小児にも対応できる人材育成のための教育を推進してい

くことが必要と考えられた。

2

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Ⅳ.調査概要

1.調査方法 秋田県内の医療機関、訪問看護ステーション、福祉施設にアンケートを配布し、郵送での回収を行っ

た。また、在宅医療患者を抱える家族へは、アンケートを配布した施設を通して調査への協力を募り、

郵送での回収を行った。調査はすべて匿名で行った。

2.調査対象 秋田県内で小児科医療に関わる医療機関 71 機関、秋田県内の訪問看護ステーション 55 機関、福祉施設 9機関(※)、在宅医療が必要な障害児者を抱える家族

3.倫理面への配慮 本研究は、秋田大学医学研究審査委員会の倫理審査で承認を得ている(受付番号 1392)。

4.調査期間 2016年 1月~2016年 4月

Ⅴ.アンケート調査の結果

1.回収率 医療機関は調査対象 71機関のうち、39機関(総合病院 14、個人病院 17、その他 8)からの回答があり、回収率は 54.9%であった。訪問看護ステーションは 55 機関のうち、18 機関から回答があり、回収率は 32.7%であった。福祉施設は調査対象 9機関のうち、5機関から回答があり、回収率は 55.6%だった。家族からは 63名の回答があった。

3

※福祉施設について

秋田県内の既存の福祉施設の中で小児を対象としている施設は、知的障害や発達障害を対象としている

施設が多く、医療的ケアを必要とする障害児者を対象としている施設は少ない。そのため、既存の施設に

対して、今後は重症心身障害児者も対象とすることへの意識を調べることを目的として、日中一時支援や

放課後デイサービスを行っている施設に協力をお願いした。

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5.9%11.8%

82.4%

図3.個人病院

1 現在診療している

2 過去に経験あり

3 診療していない

2.県内の重症心身障害児者に関わる現状

(1)医療機関と小児在宅医療の関わり39機関のうち、現在医療的ケアが必要な障害児者の診療を行っている機関は 35.9%、過去に経験がある機関が 17.9%、診療を行っていない機関が 46.2%であった(図 1、表 1)。

病院の形態別で見てみると、総合病院では 64.3%が現在診療を行っており、21.4%が過去に診療の経験があった。これまで診療を行ったことのない総合病院は 14.3%だった(図 2、図 2)。 個人病院では 5.9%で現在診療を行っており、過去に経験があると回答した個人病院は 11.8%で、これまでに診療経験のない個人病院は 82.4%であった(図 3、表 3)。 その他の医療機関(療育センター、診療所など)では 50%で現在診療を行っており、過去に経験があると回答した機関は 25%であった(図 4、表 4)。

4

表 1.障害児者の診療について

回答数 割合(%)

現在診療している 14 35.9

過去に経験あり 7 17.9

診療していない 18 46.2

合計 39 100.0

表 2.総合病院の診療状況

回答数 割合(%)

現在診療している 9 64.3

過去に経験あり 3 21.4

診療していない 2 14.3

合計 14 100.0

表 3.個人病院の診療状況

回答数 割合(%)

現在診療している 1 5.9

過去に経験あり 2 11.8

診療していない 14 82.4

合計 17 100.0

35.9%

17.9%

46.2%

図1.医療的ケアを要する障害児者の診療

1 現在診療している2 過去に経験あり3 診療していない

64.3%21.4%

14.3%

図2.総合病院

1 現在診療している

2 過去に経験あり

3 診療していない

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(2)訪問看護ステーションと小児在宅医療との関わり18機関の運営組織の種類については表 5、勤務形態については表 6に記した。

小児訪問看護の実施の有無については、現在実施しているのは 44.4%、過去に経験があるのは 16.7%、実施していないのは 38.9%であった。55.6%は現在実施していないことになる(図 7、表 7)。

5

表 4.その他医療機関の診療状況

回答数 割合(%)

現在診療している 4 50.0

過去に経験あり 2 25.0

診療していない 2 25.0

合計 8 100.0

表 5.運営組織の種類

運営組織の種類 件数

医療法人 3

社会福祉法人 1

社団・財団法人 3

株式会社・有限会社 3

その他 8

表 6.勤務形態

勤務形態 あり なし

24 時間連絡体制加算届出 16 2

定期夜間訪問看護体制 2 16

緊急時の訪問看護体制 18 0

日・祝日の訪問看護体制 9 9

表 7.小児訪問看護の実施状況

件数 割合(%)

現在実施している 8 44.4

過去に経験あり 3 16.7

実施していない 7 38.9

合計 18 100.0

44.4%

16.7%

38.9%

図7.小児訪問看護の実施

1 現在実施している

2 過去に経験あり

3 実施していない

50.0%25.0%

25.0%

図4.その他医療機関

1 現在診療している

2 過去に経験あり

3 診療していない

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(3)福祉施設と重症心身障害児者の関わり

5機関それぞれの各施設のサービス内容は表 8に記した。

表 8.各施設のサービス内容

施設 1 放課後デイサービス

施設 2 放課後デイサービス

施設 3 放課後デイサービス

施設 4 児童発達支援センター、放課後デイサービス

施設 5 相談支援、短期入所、児童発達支援センター、医療型児童発達支援センター

重症心身障害児者を受け入れた経験がある施設は3件、受け入れた経験がない施設は2件だった(表9)。障害児者の受け入れ経験がある 3 施設のうち、医療的ケアが必要な障害児者を受け入れた経験がある施設は 2施設だった(表 10)。それぞれの対応可能な医療的ケアを表 11に記す。重症心身障害児者を受け入れるにあたっての困難さや大変さを尋ねたところ、「医療機器の操作」「医療機関との連携」「制度面」

が挙げられた。

表 9.重症心身障害児者の

受け入れ 件数

受け入れたことがある 3

受け入れたことがない 2

今後、医療的ケアのある重症心身障害児者に支援をしていきたいか尋ねた結果、「支援したい」が 1件、「できれば支援したい」が 2件、「わからない」が 3件だった(表 12)。

6

表 10.医療的ケアが必要な

障害児者の受け入れ件数

受け入れたことがある 2

受け入れたことがない 1

表 11.医療的ケアが必要な障害児者を受け入れた経験のある 2 施設で

対応可能な医療的ケア

施設 1 経管栄養、導尿

施設 2 吸引、吸入、気管カニューレ、在宅酸素、呼吸器、経管栄養、導尿

表 12.今後の支援 件数

支援したい 1

できれば支援したい 1

わからない 3

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(4)在宅医療を行っている患者と家族の現状 家族へのアンケート協力は、成人も対象としている訪問看護ステーションを通しての配布も行ってい

るため、データとして集まった患者には小児期発症でないケースも含まれている可能性がある。

居住地域は秋田中央地域に 44.4%と最も多く、次に仙北平鹿地域が 28.6%であった(図 8、表 13)。

年齢については、18歳以下の年齢層が 48.4%。19歳以上は 51.6%であった。19歳以上の患者の中には、小児科からキャリーオーバーした患者も含まれていると推察される(図 9、表 14)。

7

表 13.居住地域

回答数 割合(%)

能代山本 5 7.9

北秋田鹿角 3 4.8

秋田中央 28 44.4

仙北平鹿 18 28.6

本荘由利 3 4.8

湯沢雄勝 6 9.5

合計 63 100.0

表 14.患者の年齢

回答数 割合(%)

5 歳以下 9 14.5

6~18 歳 21 33.9

19~29 歳 12 19.4

30~39 歳 9 14.5

40~49 歳 6 9.7

50~59 歳 1 1.6

60 歳以上 4 6.5

合計 62 100.0

7.9 4.8

44.4

28.6

4.89.5

0.010.020.030.040.050.0

図8.居住地域

14.5

33.9

19.4

14.5

9.7

1.6

6.5

5歳以下

6~18歳

19~29歳

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60歳以上

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0

図9.年齢

(%)

(%)

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必要な医療的ケアの内容について、該当するものすべての回答を求めた。医療的ケアを必要としない

患者は 18.6%で、81.4%の患者は何らかの医療的ケアを受けていた(図 10、表 15)。

表 15.患者に必要な医療的ケアの内容

医療的ケアの内容 人数 割合(%) 医療的ケアの内容 人数 割合(%)

口腔内・鼻腔内吸引 33 55.9 経口摂取介助 5 8.5

在宅酸素 24 40.7 十二指腸チューブ 4 6.8

気管カニューレ 24 40.7 定期導尿 4 6.8

体位変換 22 37.3 その他 3 5.1

胃ろうチューブ 21 35.6 膀胱ろう 2 3.4

吸入 20 33.9 非侵襲的人工呼吸器 1 1.7

人工呼吸器 15 25.4 経鼻エアウェイ 1 1.7

経鼻胃チューブ 15 25.4 ケアなし 11 18.6

8

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

図10.患者に必要な医療的ケアの内容(%)

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家族における主な介護者は母親が 91.1%であり、介護の中心を母親が担っている(表 16)。また、主な介護者の年齢については、30歳代が 30.4%、60歳代が 25%と多く、患者である子どもの成長に伴って介護者の高齢化が伺える(図 11)。

自由記述欄では、以下の 3点の内容が挙げられた。A.家族の負担 「障害をもつ子どもの親が働ける環境が整っていない」「自分の自由な時間が取れない」など介護者の

望む生活スタイルが叶わない内容や、「親(本人の祖母)の介護もあるため疲れる」など自分の親と子ど

も両方の介護に追われる内容があった。

B.情報収集の場の少なさ 「初めて在宅医療に移行するときに、どこで情報を手に入れられるのかわからず不安だった」「成長に

あわせて新たな課題が出て、その時々でどこで相談したり、情報をもらえたりするのかわからない」な

ど家族が初めて直面する問題に備えての情報収集の難しさが挙げられた。また、「災害時にどう行動する

とよいのか、避難させられる場所はあるのかわからない」「震災時の電源確保がわからない」など医療的

ケアを必要とする家族ならではの不安が見受けられた。

C.将来への不安 「学校を卒業した後の進路がなく不安」「子どもの体が大きくなるにつれて自分たちだけでは対応でき

なくなる」など子どもの成長に伴っての不安や、「親(自分たち)がいなくなったときに誰がみてくれる

のか」など介護者自身が亡くなった後のことに対する不安が挙げられた。

9

表 16.主な介護者

回答数 割合(%)

母 51 91.1

父 1 1.8

姉 2 3.6

妹 1 1.8

祖母 1 1.8

5.4

30.4

17.9 17.925.0

1.80.05.010.015.020.025.030.035.0

図11.介護者の年齢(%)

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3.利用可能な資源の状況

(1)医療機関における資源の提供状況①医療的ケアを必要とする障害児者の家庭医に関して

在宅で医療的ケアを必要とする障害児者の家庭医として関わることができるかに対して、38.5%が関わることができる、61.5%が関わることができないと回答していた。病院の形態別では、家庭医として関わることができると回答したのは、総合病院が 57.1%、個人病院が 23.5%、その他医療機関(療育センター、診療所等)が 37.5%で、個人病院の比率が低かった(表 17)。

表 17.家庭医としての関わり

関われる 関われない

回答数 割合(%) 回答数 割合(%)

総合病院 8 57.1 6 42.9

個人病院 4 23.5 13 76.5

その他医療機関 3 37.5 5 62.5

全体 15 38.5 24 61.5

家庭医として関われない理由としては、表 18の内容が挙げられた(複数回答可)。「時間がない」が最も多く、家庭医として関わることができないと答えた医療機関のほぼ全てが理由として挙げており、普

段の業務との両立の難しさが伺える。

10

表 18.家庭医として関われない理由

総合病院 個人病院その他

医療機関全体

時間がない 5 10 2 17

不安がある 2 3 1 6

診療報酬上損失が出る 1 0 0 1

その他 1 1 2 4

無回答 3

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②医療的ケアが必要な障害児者の家庭医として関わるために必要なこと

医療的ケアが必要な障害児者の家庭医として関わるために必要なことに関して、a.患者情報、b.診療体制、c.設備・研修会等の 3点の分野について回答を求めた。(いずれも複数回答可)

a.患者情報 患者情報の内容について表 19に記した。ほぼすべての項目で 80%以上の医師が必要と回答していた。その他として、「保護者の情報」「面識のない医師が家庭医になることへの理解があるか」など、患者の

家族に関する内容が挙げられていた。

入院が必要と判断されるバイタルの目安(「入院が必要なバイタル」)でも 8 割近くが必要と答えており、個々の入院適応の基準を明確にしておくことが診療の安心度につながることが伺えた。

b.診療体制 診療体制に関しては、処方や医療的ケア内容の変更など患者に関する基本的な内容の情報提供や、入

院は主治医のいる病院が必ず受け入れるという緊急時への対応が、8割近い回答だった。また、主治医や訪問看護師などとの定期的なカンファレンスも 41%が必要と考えており、患者に関しての情報共有が求められていた(表 20)。

11

表 19.家庭医として関わるために必要な患者情報

項目 回答数 割合(%)

疾患名 38 97.4

医的ケアの内容 38 97.4

定期内服薬の内容 38 97.4

アレルギーの有無 35 89.7

基礎疾患から考えられる禁忌薬の有無 35 89.7

予想される体調不良とそのときの対応方法(処方内容含む) 33 84.6

入院が必要と判断されるバイタルの目安 30 76.9

先生の病院を患者さんが受診された場合、隔離(逆隔離)の必要性があるか 18 46.2

その他 3 7.7

表 20.家庭医として関わるために必要な診療体制

項目 回答数 割合(%)

処方内容や医療的ケアの内容が変更になったときに速やかに情報提供があること 32 82.1

主治医のいる病院が入院が必要なときに必ず受け入れること 31 79.5

主治医や訪問看護師などとの定期的なカンファレンス 16 41.0

障害児者医療に慣れている医師(大学病院や総合療育センターの医師)が

患者の診察に同行する 7 17.9

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c.設備・研修会等設備・研修会等に関しては、医療的ケアが必要な障害児者に関する研修会・講習会を求める回答が半数

以上あり、障害児者への対応を学ぶ機会が求められていることがわかった。

その他として、「医療材料の供給がスムーズにできること」「診療報酬が費やす時間に見合っているこ

と」が挙げられた(表 21)。

③「秋田県における在宅人工呼吸器管理の現状調査」結果

本アンケート調査とは別に 2014年 6月、秋田県内の第二次、第三次病院の小児科医を対象に、在宅人工呼吸器管理の現状把握のためのアンケート調査を行っているので、併せて報告する。18病院、25名の小児科医を対象とし、22名から回答があった(回収率 88%)。

a.在宅人工呼吸器管理患者に関わる小児科医の現状 現在、主治医として在宅人工呼吸器管理を行っている患者に関わっているか尋ねた結果、8名が関わっており、14名が関わっていなかった(図 12、表 22)。 在宅人工呼吸器管理を行っている患者が自身の外来受診をすることがあるか尋ねた結果、9 名がある、13名がないと答えた(図 13、表 23)。

12

表 21.家庭医として関わるために設備・研修会等

項目 回答数 割合(%)

医療的ケアが必要な障害児者に関する研修会・講演会 21 53.8

ご自身の病院のバリアフリー化や車いすが入るスペースの確保 14 35.9

その他 2 5.1

表 22.主治医として関わる

在宅人工呼吸器管理の患者の有無

項目 回答数 割合(%)

関わっている 8 36.4

関わっていない 14 63.6

合計 22 100.0

表 23.在宅人工呼吸器管理患者の外来受診

項目 回答数 割合(%)

あり 9 40.9

なし 13 59.1

合計 22 100.0

36.4%63.6%

図12.主治医として関わる在宅

人工呼吸器管理の患者

いる

いない

40.9%59.1%

図13.在宅人工呼吸器管理患者

の外来受診の有無

あり

なし

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往診は 3名が行っており、19名が行っていなかった(図 14、表 24)。ショートステイやレスパイト入院を行っていると回答したのは 1名のみだった(図 15、表 25)。

b.在宅人工呼吸器管理の患者の現状 今回の回答で集まった人工呼吸器管理の患者について検討を行った。病院や療育センターに入所して

いる人数は 18名、在宅管理を行っている人数は 30名だった。計 48名の人工呼吸器管理患者のうち、62.5%が在宅で生活を送っていた。在宅生活を送っている 30名について、分析した結果を報告する。性別は男性 14名、女性 16名で、男女比は男性 46.7%、女性 53.3%だった(図 16、表 26)。

13

表 24.往診の有無

項目 回答数 割合(%)

行っている 3 13.6

行っていない 19 86.4

合計 22 100.0

表 25.ショートステイやレスパイト入院

項目 回答数 割合(%)

行っている 1 4.5

行っていない 21 95.5

合計 22 100.0

表 26.男女比

項目 人数 割合(%)

男性 14 46.7

女性 16 53.3

合計 30 100.0

13.6%

86.4%

図14.往診の有無

行っている

行っていない

4.5%

95.5%

図15.ショートステイや

レスパイト入院の実施の有無

行っている

行っていない

46.7%53.3%

図16.在宅人工呼吸器

管理患者の男女比

男性

女性

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年齢は 0歳~38歳で、20歳以上が三分の一を占めていた(図 17、表 27)。

在宅人工呼吸器の装着方法は 22名が気管切開、8名が鼻・口鼻マスクだった(図 18、表 28)。

診断内訳は以下の通りである。

気管切開例

診断名 人数

気管・気管支軟化症 2

ピエールロバン症候群 1

ネマリンミオパチー 1

先天性筋ジストロフィー 1

脊髄性筋萎縮症 1型 1

ニューマンピック病 C型 1

低酸素性脳症 4

脳炎後遺症 2

亜急性硬化性全脳炎 1

重症心身障害 8

(脳奇形、脳性麻痺、代謝異常など)

合計 22

14

表 27.患者の年齢分布

年齢 人数

0~5 歳 5

6~10 歳 8

11~19 歳 7

20~29 歳 7

30~39 歳 3

合計 30

表 28.在宅人工呼吸器の装着方法

人数 割合(%)

鼻・口鼻マスク 8 26.7

気管切開 22 73.3

合計 30 100.0

鼻・口鼻マスク例

診断名 人数

Duchenne 型 2

筋ジストロフィー

福山型先天性 2

筋ジストロフィー

ミオパチー 1

ハンター症候群 1

皮質形成異常 1

脳性麻痺+ 1

てんかん

合計 8

5

87 7

3

0123456789

0~5歳 6~10歳 11~19歳 20~29歳 30~39歳

図17.患者の年齢分布(人)

26.7%

73.3%

図18.装着方法

鼻・口鼻マスク

気管切開

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在宅人工呼吸器の装着時間は常時使用が 14名、夜間のみ使用が 16名だった(図 19、表 29)。常時使用患者 14名全員が訪問看護を利用し、夜間のみ使用 16名のうち、7名が訪問看護を利用していた(図20、表 30)。

患者の居住地域は表 31に記す。約半数が秋田市に住んでいる。

15

表 29.装着時間

人数 割合(%)

常時 14 46.7

夜間のみ 16 53.3

合計 30 100.0

表 30.夜間のみ使用患者の

訪問看護利用

人数 割合(%)

利用あり 7 43.8

利用なし 9 56.3

合計 16 100.0

表31.患者の居住地域

地域 人数

秋田市 16

能代市 2

北秋田市 1

潟上市 1

大仙市 3

横手市 3

湯沢市 3

岩手県 1

43.8%56.3%

図20.夜間のみ人工呼吸器使用

患者の訪問看護の利用

利用あり

利用なし

46.7%53.3%

図19.装着時間

常時

夜間のみ

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c.在宅人工呼吸器管理患者を支える上での課題 秋田県で小児科医が行っている在宅人工呼吸器管理の患者は 30名であり、20歳未満が 20名、20歳以上が 10名だった。20歳以上の患者が三分の一を占めており、小児期から診療しているキャリーオーバー症例が増えていた。

人工呼吸器管理の患者の 62.5%が在宅生活を送っていることに加え、在宅患者の 73.3%が気管切開を行っているため、高度な医療技術が必要な患者も在宅での生活を送っていることが伺える。

(2)訪問看護ステーションにおける資源の提供状況①小児訪問看護の実施に関する状況

現在小児訪問看護を実施していると回答した 8訪問看護ステーションにおいて、平成 27年 4月 1日現在の利用者数の状況は 1名が 3件、2名が 3件、3名が 1件、10名以上が 1件だった(表 32)。利用期間は 3年以上の利用が 5件と最も多かった(表 33)。1週間での利用回数は、1回もしくは 3回で、週 1回の利用が 5件であった(表 34)。

現在は小児訪問看護を実施していないステーションであっても、

過去に経験のある 3ステーションにおいては、現在も小児訪問看護の経験のある看護師が働いていることが明らかとなった。「小児訪

問看護の経験のある看護師の人数」を尋ねた結果は、現在も実施し

ている8ステーションと過去に経験のある3ステーションから回答が得られた(無回答 1 件)。2 名が最も多く、次いで 3 名となっていた。5名以上、10名以上と小児訪問看護の経験のある看護師が多数いるステーションも見受けられた(表 35)。

16

表 32.利用者数 件数

1 名 3

2 名 3

3 名 1

10 名以上 1

表 33.利用期間 件数

1 年以内 1

1 年~3 年以内 2

3 年以上 5

表 34.週間利用回数 件数

1 回 5

3 回 3

表 35.小児訪問看護の

経験がある看護師数 件数

2 名 6

3 名 2

5 名以上 1

10 名以上 1

無回答 1 件

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②小児訪問看護への今後の対応について

小児訪問看護を実施していない 8機関のうち、「今後、小児訪問看護の依頼があれば対応しようと思いますか」と尋ねた結果、「対応する」と回答したのは 4件、「対応できない」と回答したのは 3件だった。(無回答 1件)

a.「対応する」と答えた理由 対応できる理由は表 36の通りである。対応可能な 4件すべてにおいて、訪問看護ステーションとしての義

務と考えられており、育児経験や小児科経験のあるス

タッフがいること、小児訪問看護の必要性も半数以上

が理由として挙げていた。

連携や体制の整備、設備や人数確保ができていると

回答した機関もあったが、実施可能であるにも関わら

ず、現在は実施していない機関もあり、利用を希望す

る患者・家族との連携が不十分である可能性も示唆さ

れた(表 36)。

b.「対応できない」と答えた理由 対応できない理由は表 37 の通りである。小児看護の経験がないことが 3件すべてで挙げられており、他、人員不足や医師との連携への不安など実施に関する

問題、専門が異なることや小児訪問看護の必要性を感

じないといった小児訪問看護への理解に関する内容

もあった(表 37)。

c.今後対応するために必要な条件 対応できないと回答した機関に対し、「どのような

環境、支援があれば、小児訪問看護の依頼に対応でき

ますか。」と尋ねたところ、表 28の回答が得られた。 研修の場や実際の経験に関する内容が 3件すべてから得られ、小児訪問看護の実際や、担当する児の医療

的ケアの実際を知ることが求められていた。また、児

の家族との面談や他職種とのカンファレンスなど、事

前の情報共有の必要性の高さも伺える結果だった(表

38)。

17

表 36.対応する理由 件数

訪問看護ステーションとしての義務がある 4

育児経験のあるスタッフがいる 3

小児科の経験のあるスタッフがいる 2

必要性を感じる 2

母体病院や小児科との連携がとれる 1

体制が整っている 1

設備や人数の準備ができている 1

その他

・前勤務先での経験はある

・受け入れのための研修や指導等は必要

2

表 37.対応できない理由 件数

スタッフの小児看護の経験がない 3

対応したことがない 3

スタッフの人数に余裕がない 1

近隣に小児科がない 1

専門が違う 1

必要性を感じない 1

その他

・緊急時の医師との連携に不安がある 1

表 38.今後対応するために必要な内容 件数

小児訪問看護についての研修会の場 3

児の入院時から医療的処置やケアを経験する 3

対象の児の家族との事前面談 2

児を取り巻く他職種との事前カンファレンス 2

スタッフの充実 1

対象の児の状態を事前に見学する 1

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③「秋田県の小児在宅医療を支える訪問看護の現状と課題についてのアンケート調査」結果

本アンケート調査とは別に 2015年 8月、秋田県内の訪問看護ステーションを対象にアンケート調査を実施しているので、併せて報告する。37施設を対象とし、25施設から回答があった(回収率 67.6%)。

a.小児訪問看護の実施状況小児(0歳~18歳未満)訪問看護を実施しているか、小児期発症の病気などのために 18歳以降になっても小児科からの指示書に基づいて訪問看護を実施しているかを尋ねた結果、小児のみ実施している施

設が 7件、18歳以上のみ実施している施設が 2件、どちらも実施している施設が 2件、いずれも実施していない施設が 14件だった(表 39)。このうち、小児訪問看護を実施している 9施設(小児のみ実施している 7施設、小児と 18歳以上どちらも実施している 2 施設)の各施設の患者数を表 40 に記す。小児訪問看護の受け入れは行っているが、現在は利用者がいない施設が 1件あった。

小児訪問看護を実施している 9施設で、対応している患者の合計は 31名だった。各患者の診断名を表41に記す。

表 41.患者の診断名

診断名 人数 診断名 人数

脳性麻痺 5 亜急性硬化症全脳炎 1

低酸素性虚血性脳症 4 喉頭軟化症 1

ウェルドニッヒホフマン病 2 先天性気管狭窄症 1

ダウン症候群 1 進行性ジストニア、低酸素性脳症 1

アペール症候群 1 虚血性脳障害 1

高プロリン血症 1 重症心身障害児、発達遅滞 1

肺動脈高血圧症 1 脊髄髄膜瘤 1

13 トリソミー症候群 1 大血管転位症、虚血性低酸素脳症 1

ネマリンミオパチー 1 末梢神経障害、慢性呼吸不全 1

先天性筋ジストロフィー 1 ピエール・ロバン症候群 1

筋緊張性ジストロフィー 1 脳炎後遺症、てんかん 1

無酸素性脳症 1

18

表 40.小児の患者数

該当施設 人数 該当施設 人数

施設 1 11 施設 6 1

施設 2 3 施設 7 1

施設 3 3 施設 8 1

施設 4 3 施設 9 0

施設 5 2

表 39.訪問看護実施内容

内容 回答数

小児のみ 7

18 歳以上のみ 2

小児と 18 歳以上 2

行っていない 14

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患者の呼吸器の使用、気管切開、酸素投与の有無について複数回答を求めた結果が表 42である。医療的ケアをすべて行っている患者は 31名中 13名、いずれも行っていない患者は 4名だった。また訪問頻度を表 43に、訪問看護内容を表 44に記す。訪問頻度は週 1回が 12件と最も多かった(表 43)。

19

表 43.訪問頻度

頻度 件数

週 1 回 12

週 2 回 6

週 3 回 3

月 2 回 3

月 1 回 2

2 週間に 1 回 2

不定期 2

月 3 回 1

表 42.医療的ケアの内容

内容 人数

呼吸器 使用している 18

使用していない 13

気管切開 あり 24

なし 7

酸素投与 あり 19

なし 12

表 44.訪問看護の内容

内容 人数 内容 人数

状態観察 29 人工呼吸器管理(回路交換) 2

吸引 21 清拭 2

入浴介助 11 洗浄 2

栄養注入 7 排便処置 2

リハビリ 5 口腔ケア 1

留守番 5 移乗介助 1

相談対応 4 フォーレ交換 1

介護者支援 3 胃瘻管理 1

遊び 2 食事介助 1

カニューレ交換 2

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b.小児訪問看護を実施していない理由小児の訪問看護を行っていない理由は、「依頼がない」が 7件となっていた(表 45)。さらに、今後小児の訪問看護依頼があった場合の受け入れに対しては、16件が可能であると回答していた(表 36)。

c.小児訪問看護を進める上で必要な条件 全施設に対し、小児訪問看護を進める上で今後必要と思われる条件を複数回答で求めた(表 47)。「主治医(小児科医)との連携」が最も多く、その他の内容においても他職種や家族との連携が必要と挙げ

られていた。小児訪問看護に関する意見・要望を自由記述欄でも、医師や関係機関との連携の必要性が

挙げられていた(表 48)。

20

表 45.実施していない理由

項目 回答数

依頼がない 7

依頼がなく、受け入れ困難 3

受け入れ困難 2

無回答 3

表 46.今後の受け入れの不可

項目 回答数

可能 16

不可能 9

表 47.小児訪問看護を進める上で必要な条件

項目 回答数

主治医(小児科医)との連携 21

小児に関する知識豊富な看護師 19

定期的な研修会や情報交換会 19

その他 7

・家族や他職種との連携

・医療、行政、保育、学校などの連携

・家族や他職種との連携社会資源や

福祉サービスの情報を知る機会

・呼吸器の管理ができる看護師

・家族との信頼関係

表 48.小児訪問看護に関しての意見・要望

・研修に参加し、知識や技能の習得が大切

・受け入れのための研修と医師との十分な連携が必要

・医師の理解や医師から患者家族への提案も必要

・小児に特化したステーションがあるといい

・往診してくれる地域の小児科医が必要

・呼吸器装着児のフォローが難しい

・母とのコミュニケーションを良好に築くことが難しい

・レスパイト受け入れ機関の整備

・行政、福祉関係者の理解

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(3)家族の資源利用状況①在宅医療資源の利用状況

在宅医療資源(訪問診療、訪問看護、訪問リハビリ、

訪問薬剤師)の利用について尋ねたところ、利用してい

る家族は55.6%、利用していない家族は44.4%だった(表49)。在宅医療資源を利用している家族から、利用内容につ

いて複数回答を求めたところ、訪問看護は 49.2%の利用があるが、訪問診療は 22.2%にとどまっていた(表 50)。自由記述欄では、「医療機関が遠いため、子どもの成長に

伴い年々大変になる」「小児科の往診の充実」など訪問診

療を望む内容が見られた。

②福祉サービスの利用状況

福祉サービス(短期入所、訪問介護、訪問入浴、日中一時支援、生活介護、放課後デイサービス)の

利用状況を尋ねた結果は、利用している家族は 75.8%、利用していない家族は 24.2%と、福祉サービスの利用状況は在宅医療資源の利用状況を上回っていた(表 51)。福祉サービスを利用している家族から、利用内容について複数回答を求めたところ、最も利用されて

いる短期入所が 38.7%、次いで訪問介護が 32.3%であり、その他の項目は 30%未満の利用にとどまっていた(表 52)。自由記述欄からは、「受け入れてもらえる施設が近くにない」「定員が少ないため利用できない」など、

利用希望はあるものの受け入れ可能な施設が限られているため、利用が制限されていることが伺えた。

また、「親族のみで対応できる」「現状で間に合っている」など現在対応に困っていないと感じるために、

サービスの利用を考えていないという回答も見られた。

21

表 49.在宅医療資源の利用の有無

項目 件数 割合(%)

利用あり 35 55.6

利用なし 28 44.4

合計 63 100.0

表 50.利用内容

項目 件数 割合(%)

訪問看護 31 49.2

訪問リハビリ 16 25.4

訪問診療 14 22.2

訪問薬剤師 4 6.3

表 51.福祉サービスの利用の有無

項目 件数 割合(%)

利用あり 47 75.8

利用なし 15 24.2

合計 62 100.0

無回答 1

表 52.利用内容

項目 件数 割合(%)

短期入所 24 38.7

訪問介護 20 32.3

訪問入浴 16 25.8

日中一時支援 13 21.0

生活介護 11 17.7

放課後デイサービス 4 6.5

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4.レスパイト利用に関する現状

(1)医療機関の現状①レスパイト実施の有無

現在、レスパイトを行っているか尋ねた結果、15.2%(5機関)がレスパイトを行っており、84.8%(28機関)がレスパイトを行っていないと回答していた(無回答 6件)(図 21、表 53)。これよりレスパイトを行っている医療機関は一部に限られていることが伺える。

②レスパイトの実施状況

利用状況は各機関で異なっており、「月 1回」「年数回」と限られた利用である場合と、「空床利用で 7床利用可能。平日は 2~4床、週末は 5~7床の利用」と定期的に利用されている場合があった。また、「過去に 2 回利用があったが、現在は該当者がいないため利用されていない」との回答もあり、設備としては整っているが、利用者がいない状況も伺えた。

③レスパイトを行う上での課題や困難

レスパイト実施の上での課題や困難として以下の内容が挙げられた(自由記載)。

病児保育室のみの実施であり、それ以上のスタッフ確保は困難。

適当な病名をつけて入院させているが診療報酬上、大丈夫か心配。

レスパイト利用中の方が体調不良や急変した際、必ずしも小児科医が院内にいない時がある。

紹介患者の場合、保護者のキャラクター、要求度が把握できずにトラブルとなることが多い。また、

その情報は申し送りで伝えきれないことが多い。

④レスパイトを行っていない理由

現在、レスパイトを行っていない理由として、

表 54の回答が挙げられた。(複数回答可) スタッフの人数や質の確保の困難、日業業務と

の両立が困難など、レスパイト運営上の課題が中

心となっている一方で、該当する患者がいないと

いった、利用者の不在も回答数が多かった。

22

表 53.医療機関でのレスパイト実施の有無

項目 件数 割合(%)

行っている 5 15.2

行っていない 28 84.8

合計 33 100.0

無回答 6

表 54.レスパイト実施不可の理由

項目 回答数

該当する患者がいない 14

必要なスタッフの人数と質の確保が困難 11

日常業務との両立が困難 10

患者側が求める水準通りのサービス提供が困難 9

適切な診療報酬が得られない 4

その他 1

15.2%

84.8%

図21.レスパイト実施の有無

1 行っている

2 行っていない

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(2)家族の状況①レスパイトの利用状況

これまでレスパイトを利用した経験があるのは、27.8%であり、72.2%の家庭がレスパイトの利用経験がなかった(図 22、表 55)。

今後のレスパイトの希望について尋ねたところ、83.7%が今後のレスパイト利用を希望していた(図23、表 56)。その一方で、16.3%でレスパイト利用を希望しない回答があった。その理由として、「利用したいが遠方にある」、「現在の状況で問題がない」、「レスパイト実施体制への不信感」が挙げられた(表

57)。

23

表 55.レスパイト経験の有無

項目 回答数 割合(%)

利用したことがある 15 27.8

利用したことがない 39 72.2

合計 54 100.0

無回答 9

表 56.今後のレスパイト利用希望

項目 回答数 割合(%)

希望する 41 83.7

希望しない 8 16.3

合計 49 100.0

無回答 14

表 57.レスパイトを希望しない理由

利用したいが遠方にある ・近くに希望する体制での受け入れ先がない

・遠方のため移動が大変

現在の状況で問題がない ・ショートステイを利用している

・身内の協力で間に合っている

レスパイト実施体制への不信感 ・医療スタッフのケアが満足できない内容を聞いた

ことがあり、そんなところに預ける勇気はない

・安心して預けることができない

・入院すると一日中寝たばかりだと思うので、本人

のストレスになるから

27.8%

72.2%

図22.レスパイトの利用経験

1 あり

2 なし

83.7%

16.3%

図23.今後のレスパイト利用希望

1 あり2 なし

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Ⅵ.考察

1.基本情報に関する考察(1)回収率について 医療機関からは 50%以上の回収が得られ、小児在宅医療に対する問題意識の高さが伺えた。また、家族から 63件の回答が得られたが、「在宅医療の現状を知ってほしい」という内容もいくつか見られ、家族自身も問題意識をもっていることが伺えた。

訪問看護ステーションからの回収率は 32%と低かったが、小児中心の調査内容だったため、成人を中心としているステーションでは調査対象外と判断された可能性が考えられる。成人へのサービスが中心

で、これまで小児訪問看護を実施していないステーションであっても、記入しやすい内容を工夫するこ

とが反省点として挙げられた。

(2)家族の状況と医療体制の比較2007年の 8都道府県を対象とした調査において、在宅で重症心身障害児を介護しているのは 94%が母親であることが明らかとなっている(日本小児科学倫理委員会調査,2007)。これと同じ傾向が秋田県でも認められ、今回の調査でも 90%以上の家庭で母親が介護の中心となっており、母親を中心とした家族の疲労は非常に大きいと考えられる。さらに、子どもが成長するにつれて介護が大変になるだけでなく、

介護者の親の介護と重なる場合もあることが自由記述欄から明らかとなった。今回の結果では、19歳を境とした患者の割合は約半数となっており、子どもの成長とともに介護者の高齢化が進み、家族への負

担はますます増えていくことが懸念される。また、81.4%の患者が何らかの医療的ケアを必要としており、「秋田県における在宅人工呼吸器管理の現状調査」の結果から、人工呼吸器管理の 62.5%が在宅で過ごしていること、在宅患者の 73.3%が気管切開を行っていることを踏まえると、高度な医療的ケアを必要とする患者を高齢となった親が介護していかなければならないと考えられる。

一方で、患者の受け入れ可能な施設は限られていることが明らかとなった。医療的ケアが必要な障害

児者の診療を行っている医療機関や、小児を対象とした訪問看護はいずれも約半数にとどまっており、

限られた利用施設を家族が探さなければならないが、現状では利用可能な施設や情報を、介護で手いっ

ぱいの家族が得ることは困難である。

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2.利用可能な資源に関する考察(1)医療機関同士の連携 医療機関において、医療的ケアが必要な障害児者の家庭医として関わることができると回答したのは、

全体の 38.5%であり、形態別でみると、関わることができると回答したほとんどが総合病院で、個人病院の 76.5%が関われないとの回答だった。そのため、患者家族が利用できる病院は限られてしまい、遠方の病院への受診が余儀なくされることが明らかとなった。関われない理由として、時間がないことが

最も多かったが、診療への不安も次いでみられている。在宅医療が必要な重症心身障害児者は、複数の

疾患を抱えていることが多いため、各疾患を診療する複数の医師の関わりが必要となる。以上の点から

総合病院の医師が主治医となる場合が多くなると考えられる。

家庭医として関わるために必要な条件として、「入院時には主治医のいる病院が必ず受け入れること」

といった緊急時への対応も 8割近くが回答しており、体調不良時の受け入れ先の確保が求められている。患者の体調不良時、家庭医は家族がやらなければいけない介護がさらに増える等、家族の負担も考慮し

て入院の必要性を判断すると考えられるが、主治医のいる総合病院では、患者の病状に基づいて入院の

必要性を判断する傾向があると考えられる。その結果、家庭医と主治医のいる病院との間に、入院適応

の決定に関するズレが生じる可能性が懸念される。

医療機関、訪問看護ステーションのどちらにおいても、研修会や講演会などの機会を望む声が挙げら

れており、障害児者への対応を学ぶ機会が求められていることが明らかとなった。このような機会を設

けることで、小児在宅医療への理解を深めたり、参加者同士のつながりが増えることによって、小児在

宅医療に関わる医療機関や訪問看護ステーションが増えることが期待される。現在も小児在宅医療に携

わっている機関のみならず、現在は成人中心で行っている機関に対して、小児の受け入れを日頃から依

頼していくためにも、主治医のいる総合病院と地域の個人病院が日頃から“顔の見える関係性”でいる

ことが必要となる。

(2)サービス提供側である施設と利用者のマッチング 訪問看護ステーションにおいて、現在は小児を実施していないステーションであっても過去に受け入

れの経験があり、経験のある看護師もいるステーションがあるにも関わらず、利用者とステーションが

うまくマッチングしていない可能性が示唆された。家族としては、利用を望むがどこで受け入れてもら

えるのか、その情報がどこで得られるのかがわからない可能性がある。また、訪問看護ステーションに

おいても、小児訪問看護サービスが提供できることを利用希望者に知ってもらう機会が少ない可能性が

ある。この状況を改善するために、家族と施設をつなぐ役割のコーディネーターが必要不可欠な存在に

なる。現在、相談支援専門員がこの役割を担っているが、その数は少なく、その結果として、家族、主

に母親自身がその役割も担わなければいけない状況である。しかし、情報収集が難しいために利用可能

な機関を見つけられずにいる可能性がある。患者が在宅医療へと移行するときから、家族が相談できる

窓口が明確で、家族と施設の仲介をスムーズに行うことができれば、マッチングが促進されると期待さ

れる。また、窓口となる機関が一か所から情報を共有できる方法、例えば、インターネット上などで各

施設の受け入れ情報を公開するシステムを整備することで、家族や支援者が必要なときに必要な情報を

得られやすくなると期待される。

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(3)現在の資源を活用した地域連携の重要性今回の結果から、医療的ケアを必要とする障害児者の家族が希望する内容と、実際に提供されている

医療資源や福祉サービスとの間には差があることが明らかとなった。今後小児在宅医療の診療に特化し

た医療機関や訪問看護ステーションを新たに開設していくことは非現実的である。小児への対応が可能

である施設が、利用者とのマッチングが成り立っていないために活用されていない点も明らかになった

ことから、現在の資源を活用して小児在宅医療を進めていくことが重要になると考えられる。現在成人

を対象としている医療機関や訪問看護ステーションが小児の受け入れを実施しやすくするための関係機

関での連携や、日頃からの研修会等教育の機会を設けることが今後の課題である。また、現状の成人を

対象とした介護保険法やケアマネージャー等の制度のように、小児に関しても同様の制度が整備される

ことが望まれる。現在その役割に当たる職種は相談支援専門員であるが、小児在宅医療に対応可能な人

材は限られている。今後は家族と各連携機関との仲介となる相談窓口の役割として、小児も手掛けるコ

ーディネーターの育成や、現状の制度を小児も含めた内容に幅を広げていく等の行政との連携も必要で

ある。

3.レスパイト利用に関する考察 家族の回答から「レスパイト実施体制への不信感」が明らかとなり、在宅で家族が介護しているから

こその家族の医療的ケアスキルの高さも伺える。医療機関の回答では、保護者のキャラクターや要求度

の把握の必要性が挙げられており、レスパイト実施においては患者本人の情報のみでなく、家族の情報

も重要である。しかし、紹介患者などの普段から利用していない患者・家族の場合では、それらの情報

が共有されにくく、医療者側と利用者側でレスパイトの実施内容でトラブルになる可能性が考えられる。

また、レスパイト実施のための設備が整っていても利用者不在のため実施されていない施設もあり、訪

問看護ステーションの利用状況でも伺えたように、利用者と施設の連携がうまくいっていない可能性も

示唆された。

以上の問題点の改善のために、関係者同士の連携が必要である。患者本人に関する情報に加え、レス

パイトに対して家族がどのような希望をもっているかなど家族の気持ちも含めた詳細な情報共有ができ

るシステムを整備していくことが求められる。

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