第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海...

13
第 103 回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集 【特別発表】 東シナ海・黄海が日本の気象に及ぼす影響 万田 敦昌(長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科) 【調査・研究発表】 唐津湾における定置網へのサワラの入網と海況の関係 2015 年 1 月 23 日のサワラの大量入網について 伊藤 毅史・寺田 雅彦(佐賀県玄海水産振興センター) 卵稚仔調査の残渣を活用した動物プランクトンの分布研究 北島  聡・西内  耕(西海区水産研究所) 山口県日本海沿岸域における春季の流れ藻とそれに付随する稚魚の種組成 國森 拓也(山口県水産研究センター) 平衡石をもちいたケンサキイカのふ化場所と移動経路の推定 山口 忠則(佐賀県玄海水産振興センター) 本報告は、平成 27 年 10 月 21・22 日に長崎県長崎市において開催された「第 103 回対馬暖流系アジ・ サバ・イワシ長期漁況海況予報会議」での特別発表及び調査・研究発表の講演要旨を収録したもので あり、上記所属は発表時点のものである。

Transcript of 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海...

Page 1: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

第 103 回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

【特別発表】 東シナ海・黄海が日本の気象に及ぼす影響

万田 敦昌(長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科)

【調査・研究発表】 唐津湾における定置網へのサワラの入網と海況の関係   — 2015 年 1 月 23 日のサワラの大量入網について —

 伊藤 毅史・寺田 雅彦(佐賀県玄海水産振興センター)

 卵稚仔調査の残渣を活用した動物プランクトンの分布研究                    北島  聡・西内  耕(西海区水産研究所)

 山口県日本海沿岸域における春季の流れ藻とそれに付随する稚魚の種組成                    國森 拓也(山口県水産研究センター)

 平衡石をもちいたケンサキイカのふ化場所と移動経路の推定                    山口 忠則(佐賀県玄海水産振興センター)

本報告は、平成 27 年 10 月 21・22 日に長崎県長崎市において開催された「第 103 回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議」での特別発表及び調査・研究発表の講演要旨を収録したものであり、上記所属は発表時点のものである。

Page 2: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

第 103 回 特別発表

東シナ海・黄海が日本の気象に及ぼす影響万 田 敦 昌 1*

はじめに

日本を含む中緯度帯は熱帯と比べ水温が低く、温帯低気圧などの総観スケールの気象擾乱が卓越することもあり、 海洋が大気に与える影響は小さく、海洋は大気に対して隷属的に変化すると考えられてきた。ところが、近年の観測技術とシミュレーション技術の向上によって得られた最新の研究成果は、そのような見方に修正が必要なことを示している。本講演では、 黄海・東シナ海という東アジアに独特な大陸縁辺海が、梅雨期の気象に及ぼす影響を明らかにした我々の最近の成果を紹介する。梅雨は東アジアの降水量・降水分布を規定する主要因の一つであり、この地域における最も重要な気候学的現象と言える (Sampe and Xie, 2010)。

黄海が梅雨前線帯の季節変動に及ぼす影響

集中豪雨が発生しやすい入梅から梅雨明けまでの梅雨前線帯の南北移動(季節進行)は、現在の天気予報システムにおいてまだ誤差が大きく、基本的メカニズムの究明が強く求められている。この研究では、これまで見過ごされてきた初夏の黄海の冷たい海水温で冷却されて発生する高気圧を新たに黄海高気圧と名付け、梅雨前線の季節進行との対応を明らかにした(Moteki and Manda, 2013)。黄海の水温は、5 月下旬まで 21 度以下で 26 度以上ある黒潮との水温差が大きくなり、黒潮前線の構造が明瞭になるが、6 月以降は、南から徐々に暖まり、水温の南北温度傾度は不明瞭になっている。これに対応して黄海高気圧の寒気も 10 日前後の変動を伴いながら 6 月以降に北へ縮退している。この黄海高気圧の縮退は東シナ海上での梅雨前線の北上とよく対応する。

東シナ海が初夏の集中豪雨に及ぼす影響

九州地方における旬平均雨量は梅雨期中頃の 6 月に最大値を示すのに対し、日雨量が 250mm を超えるような集中豪雨は旬平均雨量のピークとは時期がずれ、梅雨明け直前の 7 月中・下旬に起こることが多い。この研究では、東シナ海の特徴的な海面水温の変化が、集中豪雨の発生時期に極めて大きな影響を及ぼすことを明らかにした (Manda et al., 2014)。7 月以降の東シナ海における海面水温の急激な上昇によって、熱帯から流入する温暖湿潤な気塊の対流不安定性が維持されるようになる。これが豪雨の発生時期を制御する要因の一つであることを示した。さらに、地球温暖化に伴う水温上昇が他の海域と比較して大きい海域である東シナ海の水温上昇が降水に及ぼす影響を調べ、今世紀末には集中豪雨の発生時期が現在よりも早まり、6 月に現在気候の 7 月に匹敵する豪雨が発生する可能性、さらには 7 月に発生する集中豪雨では現状よりも大幅に雨量が増加する可能性を示した。

1 長崎大学 大学院 水産・環境科学総合研究科 * 現 三重大学生物資源学部

Page 3: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

東シナ海黒潮が大気境界層に及ぼす影響

日本における夏季モンスーン期の現場観測によるアプローチとしては、梅雨前線の降水系観測を中心に数多く行われてきた。例えば、1999 年、2000 年、2001 年に実施された X-BAIU プロジェクトでは、東シナ海上で気象庁の観測船や複数の大学が参加して構築した総合的な観測網によって多くの降水系の内部構造が明らかにされた。しかし、そうした過去の大規模観測では、もっぱら大気場の 3 次元観測に重きが置かれる場合が多く、海洋と大気のそれぞれの混合層における相互作用を観測する試みは、ほとんどなされてこなかった。

そのような中、長崎大学水産学部の練習船・長崎丸を用いた大気・海洋同時観測を行った。東シナ海上の梅雨前線と黒潮前線を縦断しながら、高頻度(1 時間)・高解像度(20 km)の大気海洋同時観測を 5 月と 6 月にそれぞれ実施した。その結果、梅雨前線とその北側に形成された下層収束線に伴う2 本の降水帯に九州西方の暖水渦が及ぼす影響を明らかにした(Kunoki, Manda et al., 2015)。最大のポイントは、海面水温の影響による梅雨前線帯内の大気境界層の詳細な構造変化を観測したことである。九州西方の黒潮の北側に存在した暖水塊と大陸棚上の冷水との境界に生じる海洋前線の影響により、大気境界層内において風向・風速の変化がより顕著になることが示された。この海洋前線の空間スケールは数十 km であり、梅雨前線帯の内部の数十 km スケールの大気構造に大きな影響を与えうることが示された。対流圏下層において、梅雨前線の南端に向かう温暖湿潤な気塊の流入が観測されたが、この気塊の水蒸気供給に黒潮からの蒸発が極めて大きな役割を果たしていることを示した。また、気象庁メソスケール解析が、梅雨前線帯全体の定性的な表現は整合的であったものの、海洋前線に応答した詳細な大気混合層の構造の表現は十分でなく、複数の降水帯をより正確に表現するためには、海洋の取り扱いが重要であることを明らかにしている。

また、黒潮上では高い水温によって、周囲より蒸発が強化されている。黒潮上を通過した気塊は、この黒潮上での蒸発によって下層の相当温位が高くなる。こうして黒潮上で対流不安定が強まり、梅雨期に卓越する強い南西風によって降水システムに流入することができる。このような黒潮上での蒸発が降水強化の要因となっていることを現地観測によって示した (Sato, Manda et al., 2015)。

文  献

Kunoki S., A. Manda, Y. Kodama, S. Iizuka, K. Sato, I. Fathrio, T. Mitsui, H. Seko, Q. Moteki, S. Minobe and Y. Tachibana (2015) Oceanic influence on the Baiu frontal zone in the East China Sea. J. Geophys. Res., 120 : 449-463.

Manda A., H. Nakamura, N. Asano, S. Iizuka, T. Miyama, Q. Moteki, M.K. Yoshioka, K. Nishii and T. Miyasaka (2014) Impacts of a warming marginal sea on torrential rainfall organized under the Asian summer monsoon. Sci. Rep. 4, Article number: 5741.

Moteki Q. and A. Manda (2013) Seasonal Migration of the Baiu Frontal Zone over the East China Sea: Sea Surface Temperature Effect. SOLA, 9 : 19-22.

Sampe T. and S.-P. Xie (2010) Large-Scale Dynamics of the Meiyu-Baiu Rainband: Environmental Forcing by the Westerly Jet. J. Climate., 23.1 : 113-134.

Sato K., A. Manda, Q. Moteki, K.K. Komatsu, K. Ogata, H. Nishikawa, M. Oshika, Y. Otomi, S. Kunoki, H. Kanehara, T. Aoshima, K. Shimizu, J. Uchida, M. Shimoda, M. Yagi, S. Minobe, and Y. Tachibana

(2015) Influence of the Kuroshio on Mesoscale Convective Systems in the Baiu Frontal Zone over the East China Sea. Mon. Wea. Rev., doi: 10.1175/MWR-D-15-0139.1.

Page 4: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

唐津湾における定置網へのサワラの入網と海況の関係— 2015 年 1 月 23 日のサワラの大量入網について—

伊 藤 毅 史 1・寺 田 雅 彦 1*

はじめに

佐賀県玄海海域沿岸では、総延長 259 km の海岸線に大小 54 統の定置網が敷設され漁業が営まれており、当県玄海海域沿岸における定置網漁獲量のうち、大泊、宮岬、村張および高島の 4 ヶ統(以下、主要定置網)が大部分を占めている。それらの定置網では、イワシ類、アジ類、サバ類をはじめ、多様な魚種が多数漁獲されている(寺田 , 2013)。その中でも、サワラは近年漁獲量の増加がみられており、漁獲の動向が注視されている魚種の一つである(寺田 , 2013)。佐賀県玄海水産振興センターが行った調査によると、サワラは当県玄海海域では主に定置網、刺網、釣り等で漁獲されており、特に定置網における漁獲量が多くなっている。

主要定置網の一つである村張大敷(以下、対象定置網)において、2015 年 1 月 23 日にサワラの大量入網がみられ、その漁獲量は約 15 t あった。これは 2014 年の主要定置網におけるサワラ漁獲量(34 t)の約 44% に相当する量であり、特異的な現象であった。その時期、対象定置網には基礎的な知見の収集のため流向流速計を設置し(1 月 14 日 ~2 月 23 日)、流れの観測を行っていた。

そこで今回は、2015 年 1 月 23 日におけるサワラの大量入網と海況との関係(特に流況)について解析を行った。

材料と方法

対象定置網は、唐津湾の北西部に位置する神集島の東側に位置し、約 500 m 沖合の水深約 30 mに敷設されている(図 1)。

同漁場の流況を測定するために、身網から約20 m 離れた位置にある浮標の水面下 5 m に電磁流速計(ACM-8M; JFE アドバンテック社製)を設置した。流向、流速および水温は、30 分間隔で測定を行った。

サワラの漁獲量については、対象定置網で漁獲された漁獲物はすべて佐賀玄海漁業協同組合の魚市場に水揚げされることから、漁協魚市場の水揚伝票に記載されているサワラの漁獲量の集計を行った。

1 佐賀県玄海水産振興センター* 現 佐賀県生産振興部水産課

第 103 回 調

はじめに

佐賀県玄海

り、当県玄海

要定置網)

魚種が多数漁

漁獲の動向

調査による

おける漁獲量

主要定置網

入網がみられ

の約 44%に

のため流向流

そこで今回

析を行った。

材料と方法

対象定置

の東側に位置

されている

同漁場の流

離れた位置

(ACM-8M;

流向、流速お

サワラの

れた漁獲物

に水揚げさ

記載されてい

1 佐賀県玄海水

* 現 佐賀県

調査・研究発

海海域沿岸で

海海域沿岸に

が大部分を

漁獲されて

が注視され

と、サワラは

量が多くなっ

網の一つであ

れ、その漁獲

に相当する量

流速計を設置

回は、2015

置網は、唐津

置し、約 50

(図 1)。

流況を測定す

置にある浮標

; JFE アドバ

および水温は

の漁獲量につ

はすべて佐

れることか

いるサワラの

水産振興セン

生産振興部水

発表

唐津湾にお

-2015 年

では、総延長

における定置

占めている。

いる(寺田,

ている魚種

は当県玄海海

っている。

ある村張大敷

獲量は約 15

量であり、特

置し(1 月 1

年 1 月 23

津湾の北西部

0 m 沖合の水

するために、

標の水面下 5

バンテック社

は、30 分間

ついては、対

佐賀玄海漁業

から、漁協魚

の漁獲量の集

ター

水産課

おける定置網

年 1 月 23 日

藤 毅 史

長 259 km の

置網漁獲量の

。それらの定

, 2013)。そ

の一つである

海域では主に

敷(以下、対

t あった。こ

異的な現象で

14 日~2 月 2

日における

部に位置する

水深約 30 m

身網から約

5 m に電磁

社製)を設置

間隔で測定を

対象定置網で

協同組合の

市場の水揚

集計を行った

- 23 -

網へのサワ

のサワラの

史 1・寺

の海岸線に大

のうち、大泊

定置網では、

その中でも、

る(寺田, 2

に定置網、刺

対象定置網)

これは 2014

であった。そ

23 日)、流れ

サワラの大量

神集島

に敷設

約 20 m

磁流速計

置した。

を行った。

で漁獲さ

魚市場

揚伝票に

た。

ワラの入網

の大量入網

田 雅 彦

大小 54 統の定

泊、宮岬、村

イワシ類、

サワラは近

2013)。佐賀

刺網、釣り等

において、

年の主要定

その時期、対

れの観測を行

量入網と海況

図1 主要定

と海況の関

網について-

彦 1*

定置網が敷設

村張および高

アジ類、サ

近年漁獲量の

賀県玄海水産

等で漁獲され

2015 年 1 月

置網におけ

対象定置網に

行っていた。

況との関係

定置網の操業

関係

設され漁業が

高島の 4 ヶ統

サバ類をはじ

の増加がみら

産振興センタ

れており、特

月 23 日にサ

るサワラ漁獲

には基礎的な

(特に流況)

位置

が営まれてお

統(以下、主

じめ、多様な

られており、

ターが行った

特に定置網に

サワラの大量

獲量(34 t)

な知見の収集

について解

第 103 回 調査・研究発表

Page 5: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

結果と考察

サワラの日別の漁獲量を図 2 に示す。1 月 14 日から 2 月 23 日の間で、サワラはほぼ毎日漁獲されており、1 月 23 日の漁獲量は約 15 t であった。次に、2015 年 1 月 23 日前後の流向と流速の観測結果を図 3 に示す。サワラの大量入網がみられる前の 1 月 20 日未明から翌 21 日にかけて北向きの流れが強まり、20 日 2 時には流速は 30.4 cm/s を示した。その期間、南風が卓越しており、最大風速は 3.6 m/s であった。

唐津湾の恒流を概観すると、湾中央部では時計回りの流れが形成され、対象定置網がある唐津湾西部では北向きの流れとなっている(海上保安庁 , 1980)。流速データから潮汐成分を除いた結果によると(図示せず)、サワラが大量に入網した時期は北向きの強い流れが現れていたため、風などにより恒流が強化されたと考えられる。対象定置網の網の開き口は南側であることから、北向きの流れが卓越するときに漁獲が多くなるものと考えられる。したがって、1 月 23 日にみられたサワラの大量入網は、北向きの恒流が強まり、サワラが対象定置網に大量入網した可能性がある。

佐賀県玄海海域において、多くの魚種で漁獲量の減少傾向がみられているなか、サワラは増加傾向がみられている魚種のひとつである(大隈・金丸 , 2008)。当県玄海海域においては、定置網の漁獲量と気象・海象との関係を調査した例は少なく、今後、他魚種を含めた解析を引き続き行っていく必要がある。

結果と考察

サワラの

おり、1 月 2

3 に示す。サ

20 日 2 時に

唐津湾の恒

では北向き

(図示せず)

が強化され

ときに漁獲が

きの恒流が強

佐賀県玄

がみられて

と気象・海象

ある。

日別の漁獲量

23 日の漁獲

サワラの大量

には流速は 30

恒流を概観す

の流れとな

)、サワラが

たと考えられ

が多くなるも

強まり、サワ

玄海海域にお

いる魚種の

象との関係

0

1

2

漁獲量(t)

15

1/14

量を図 2 に示

獲量は約 15 t

量入網がみら

0.4 cm/s を示

すると、湾中

っている(海

が大量に入網

れる。対象定

ものと考えら

ワラが対象定

おいて、多く

ひとつであ

を調査した例

図2 対

1/19 1

示す。1 月 1

であった。

られる前の 1

示した。その

中央部では時

海上保安庁,

網した時期は

定置網の網の

られる。した

定置網に大量

くの魚種で漁

る(大隈・金

例は少なく、

対象定置網に

図3

1/23 1/28

- 24 -

14 日から 2

次に、2015

1 月 20 日未

の期間、南風

時計回りの流

, 1980)。流

は北向きの強

の開き口は南

たがって、1

量入網した可

漁獲量の減少

金丸, 2008)

、今後、他魚

におけるサワ

3 流向と流

8 2/1

月 23 日の間

年 1 月 23

未明から翌 2

風が卓越して

流れが形成さ

流速データか

強い流れが現

南側であるこ

月 23 日にみ

可能性がある

少傾向がみら

。当県玄海

魚種を含めた

ラの日別漁

流速の変化

2/5 2/9

間で、サワラ

日前後の流向

1 日にかけて

おり、最大風

され、対象定

から潮汐成分

現れていたた

ことから、北

みられたサワ

る。

られているな

海海域におい

た解析を引き

獲量の変化

2/14

ラはほぼ毎日

向と流速の観

て北向きの流

風速は 3.6 m

定置網がある

分を除いた結

ため、風など

北向きの流れ

ワラの大量入

なか、サワラ

いては、定置

き続き行って

2/20

日漁獲されて

観測結果を図

流れが強まり

m/s であった

る唐津湾西部

結果によると

どにより恒流

れが卓越する

入網は、北向

ラは増加傾向

置網の漁獲量

ていく必要が

り、

た。

結果と考察

サワラの

おり、1 月 2

3 に示す。サ

20 日 2 時に

唐津湾の恒

では北向き

(図示せず)

が強化され

ときに漁獲が

きの恒流が強

佐賀県玄

がみられて

と気象・海象

ある。

日別の漁獲量

23 日の漁獲

サワラの大量

には流速は 30

恒流を概観す

の流れとな

)、サワラが

たと考えられ

が多くなるも

強まり、サワ

玄海海域にお

いる魚種の

象との関係

0

1

2

漁獲量(t)

15

1/14

量を図 2 に示

獲量は約 15 t

量入網がみら

0.4 cm/s を示

すると、湾中

っている(海

が大量に入網

れる。対象定

ものと考えら

ワラが対象定

おいて、多く

ひとつであ

を調査した例

図2 対

1/19 1

示す。1 月 1

であった。

られる前の 1

示した。その

中央部では時

海上保安庁,

網した時期は

定置網の網の

られる。した

定置網に大量

くの魚種で漁

る(大隈・金

例は少なく、

対象定置網に

図3

1/23 1/28

- 24 -

14 日から 2

次に、2015

1 月 20 日未

の期間、南風

時計回りの流

, 1980)。流

は北向きの強

の開き口は南

たがって、1

量入網した可

漁獲量の減少

金丸, 2008)

、今後、他魚

におけるサワ

3 流向と流

8 2/1

月 23 日の間

年 1 月 23

未明から翌 2

風が卓越して

流れが形成さ

流速データか

強い流れが現

南側であるこ

月 23 日にみ

可能性がある

少傾向がみら

。当県玄海

魚種を含めた

ラの日別漁

流速の変化

2/5 2/9

間で、サワラ

日前後の流向

1 日にかけて

おり、最大風

され、対象定

から潮汐成分

現れていたた

ことから、北

みられたサワ

る。

られているな

海海域におい

た解析を引き

獲量の変化

2/14

ラはほぼ毎日

向と流速の観

て北向きの流

風速は 3.6 m

定置網がある

分を除いた結

ため、風など

北向きの流れ

ワラの大量入

なか、サワラ

いては、定置

き続き行って

2/20

日漁獲されて

観測結果を図

流れが強まり

m/s であった

る唐津湾西部

結果によると

どにより恒流

れが卓越する

入網は、北向

ラは増加傾向

置網の漁獲量

ていく必要が

り、

た。

Page 6: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

文  献

海上保安庁水路部 (1980) 九州北岸唐津湾及び付近の流況 .大隈 斉・金丸彦一郎 (2008) 佐賀県玄海海域の水温と主要定置網におけるサワラ水揚げ量との関係

について . 西海ブロック漁海況調査研究報告 , 16 : 19-22.寺田雅彦 (2013) 佐賀県玄海海域における主要定置網に関する考察Ⅰ - 漁獲量の長期変動と海洋環境 -.

佐賀県玄海水産振興センター研究報告 , 6 : 71-79.

Page 7: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

第 103 回 調査・研究発表

卵稚仔調査の残渣を活用した動物プランクトンの分布研究

北 島  聡 1*・西 内 耕 1*

はじめに

魚類の再生産良否には物理場と餌料量の変化が強く影響する。このうち物理場の変化については、船舶観測の他、人工衛星観測、数値モデル、ブイ・フロートなどを用いることで、現況が迅速かつ簡便にわかるようになってきた。だが餌料量、特にプランクトンの個体数変動に対しては、未だ物理場のような画期的なツールがないため、できるだけ多くの測点で高頻度のプランクトンネットによる採集を行い、顕微鏡等で地道な観察を続けなければならない。とはいえ、このような調査・観察には多大な労力とコストを必要とするため、広範かつ長期間にわたって試料採集・分析が行われている例は極めて限られる。

卵稚仔調査では、西海ブロックだけでも 88 定点を毎月、ないし数か月に一回観測している。この調査で得られた試料のうち、卵稚仔を抜き出した後の残渣試料については、湿重量を測定する他には事業内で分析の必要が無いことから廃棄処分されることもあった。しかし、この残渣試料は動物プランクトン研究の側面からみると、継続して広域で採集が行われている貴重な試料である。

そこで西海区水産研究所(西水研)では、2011 年から西海ブロックの卵稚仔調査サンプルの残渣物を保管・管理しながら、卵稚仔以外の動物プランクトンについて分析する取り組みを行っている2。本講演ではこの取り組みから、検鏡観察で明らかになった西海ブロックの動物プランクトンの分布の特徴、大量の試料を効率的に分析するために導入した自動分析装置の概要と、今後の展望について述べる。

検鏡観察

2011 年 4 月・6 月・10 月、2012 年 3 月に得られた試料を検鏡観察し、カイアシ類の種ごとの季節変化を調べた。ここではマアジ着底稚魚の重要な餌料である Calanus sinicus の季節変化を示す(図 1)。本種は従来、主に春 ~ 初夏に中国沿岸由来の低塩分水に沿って高密度に出現すると考えられていたが、今回の観察では、春季に対馬海峡の九州近傍でも高密度に出現することが明らかとなった。このような局所的な好適な餌料環境の出現は、マアジ稚魚の再生産良否の鍵となることが示唆される。

自動分析装置

検鏡観察では詳細な種組成の情報が得られるが、1 年間に約 1000 検体と膨大な卵稚仔調査の試料を全て観察するのは現実的ではない。そこで、自動分析装置(ベンチトップ型ビジュアルプランクトンレコーダー [B-VPR])を導入し、1 検体あたり約 2~3 時間程度で解析可能なシステムを構築した(図 2)。

1 国立研究開発法人水産総合研究センター 西海区水産研究所

* 現 国立研究開発法人水産研究・教育機構 西海区水産研究所2 2015 年 10 月時点では全てのサンプルを西海区水研で保管しているが , 将来的には他ブロックの試料 とともに、東北区水産研究所で管理・保管する予定 .

Page 8: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

本システムではカイアシ類・尾虫類・貝形類・枝角類について、検鏡観察と遜色なく個体数を測定できることが確認できており、現在は春季の試料を中心に、分析・解析を進めている段階にある。

今後の展望

以上の取り組みにより、卵稚仔調査の残渣試料で、九州西方の餌料生物の分布が簡便かつ迅速に解析できるようになりつつある。このように卵稚仔調査の残渣試料を収集・分析する取り組みは他のブロックでも進行中である。他ブロックの資試料と併せることで、日本周辺の餌料環境の詳細な時空間変化を明らかにできると見込まれる。

今後の資試料の利活用については、各県の卵稚仔・海況担当者で興味を持たれる方とも意見交換・議論をしながら進めていきたい。また、保管試料の利用、分析結果の照会、B-VPR の利用申請についても気軽にご相談頂き、当該海域の餌料環境把握の取り組みを最大限に活用して頂ければ有り難い。

- 27 -

図1 Calanus sinicus 成体の分布

ることが確認できており、現在は春季の試料を中心

に、分析・解析を進めている段階にある。

検鏡観察では詳細な種組成の情報が得られるが、

1 年間に約 1000 検体と膨大な卵稚仔調査の試料を全

て観察するのは現実的ではない。そこで、自動分析

装置(ベンチトップ型ビジュアルプランクトンレコ

ーダー [B-VPR])を導入し、1 検体あたり約 2~3 時

間程度で解析可能なシステムを構築した(図 2)。

本システムではカイアシ類・尾虫類・貝形類・枝角

類について、検鏡観察と遜色なく個体数を測定でき

ることが確認できており、現在は春季の試料を中心

に、分析・解析を進めている段階にある。

今後の展望

以上の取り組みにより、卵稚仔調査の残渣試料で、

九州西方の餌料生物の分布が簡便かつ迅速に解析で

きるようになりつつある。このように卵稚仔調査の

残渣試料を収集・分析する取り組みは他のブロック

でも進行中である。他ブロックの資試料と併せるこ

とで、日本周辺の餌料環境の詳細な時空間変化を明

らかにできると見込まれる。

今後の資試料の利活用については、各県の卵稚

仔・海況担当者で興味を持たれる方とも意見交換・

議論をしながら進めていきたい。また、保管試料の

利用、分析結果の照会、B-VPR の利用申請について

も気軽にご相談頂き、当該海域の餌料環境把握の取

り組みを最大限に活用して頂ければ有り難い。

図2 ベンチトップ型ビジュアルプランク

トンレコーダー(B-VPR)(上)と

撮影される画像の例(下)

- 27 -

図1 Calanus sinicus 成体の分布

ることが確認できており、現在は春季の試料を中心

に、分析・解析を進めている段階にある。

検鏡観察では詳細な種組成の情報が得られるが、

1 年間に約 1000 検体と膨大な卵稚仔調査の試料を全

て観察するのは現実的ではない。そこで、自動分析

装置(ベンチトップ型ビジュアルプランクトンレコ

ーダー [B-VPR])を導入し、1 検体あたり約 2~3 時

間程度で解析可能なシステムを構築した(図 2)。

本システムではカイアシ類・尾虫類・貝形類・枝角

類について、検鏡観察と遜色なく個体数を測定でき

ることが確認できており、現在は春季の試料を中心

に、分析・解析を進めている段階にある。

今後の展望

以上の取り組みにより、卵稚仔調査の残渣試料で、

九州西方の餌料生物の分布が簡便かつ迅速に解析で

きるようになりつつある。このように卵稚仔調査の

残渣試料を収集・分析する取り組みは他のブロック

でも進行中である。他ブロックの資試料と併せるこ

とで、日本周辺の餌料環境の詳細な時空間変化を明

らかにできると見込まれる。

今後の資試料の利活用については、各県の卵稚

仔・海況担当者で興味を持たれる方とも意見交換・

議論をしながら進めていきたい。また、保管試料の

利用、分析結果の照会、B-VPR の利用申請について

も気軽にご相談頂き、当該海域の餌料環境把握の取

り組みを最大限に活用して頂ければ有り難い。

図2 ベンチトップ型ビジュアルプランク

トンレコーダー(B-VPR)(上)と 撮影される画像の例(下)

Page 9: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

第 103 回 調査・研究発表

山口県日本海沿岸域における春季の流れ藻とそれに付随する稚魚の種組成

國 森 拓 也 1

はじめに

流れ藻は主として春季にブリ稚魚等を伴って山口県日本海沿岸域に出現する。山口県水産研究センターでは毎年、ブリ養殖業者が計画的にブリ稚魚を採捕できるよう、流れ藻の分布とブリ稚魚の来遊量を調査し、関係者へ報告してきた。ブリをはじめカワハギ類やメバル類など、流れ藻に付随する魚類は水産上重要な種も多く、これらの稚魚の出現特性や、利用する流れ藻の多寡、種組成などを把握することは、今後これらの水産資源を有効に活用するための重要な知見となり得る。そこで本研究では一定の調査ラインを設定して行った調査データ 6 年分(2010 年から 2015 年)をとりまとめ、流れ藻とそれに付随する稚魚の種組成を明らかにした。

材料と方法

2010 年から 2015 年の 5 月および 6月(2012 年は 5、6、7 月)に年 4 回、6 年間で計 24 回、山口県漁業調査船第 2 くろしお(16 トン)により、山口県日本海沿岸域に設定した調査ライン(図 1)上の流れ藻を目視により計数、各測点間で 2~3 個の流れ藻を任意で選択し、モジャコ掬い網により採集した。採集した流れ藻と魚類は研究室に持ち帰り、それぞれ種の査定を行った後、流れ藻は湿重量を、魚類は全長と体重を測定した。各測点および流れ藻採集点では、バケツ採水により表層水温を測定した。

結果

流れ藻の構成種流れ藻を構成していた種は合計 21 種であった。重量割合が大きいものを月別にみると、5 月には

アカモク(63%)、ジョロモク(15%)、6 月にはアカモク(44%)、マメタワラ(23%)、ジョロモク(10%)、

1 山口県水産研究センター 外海研究部

第 10

はじめ

産研究

分布

バル類

利用す

用す

た調査

の種組

材料

20

(201

間で計

しお

岸域に

れ藻

3個

掬い

と魚類

の査

魚類

よび

り表層

結果

流れ藻

5 月

1 山口

03 回 調査

山口県日本海

めに

流れ藻は主と

究センターで

とブリ稚魚の

類など、流れ

する流れ藻の

るための重要

査データ 6

組成を明らか

と方法

010 年から 2

12 年は 5、

計 24 回、山

(16 トン)

に設定した調

を目視によ

の流れ藻を

網により採

類は研究室

定を行った

は全長と体

流れ藻採集

層水温を測定

藻の構成種

流れ藻を構成

にはアカモク

口県水産研究セ

・研究発表

海沿岸域に

して春季に

では毎年、ブ

の来遊量を調

れ藻に付随す

の多寡、種組

要な知見とな

年分(2010

かにした。

2015 年の 5

6、7 月)に

山口県漁業調

により、山

調査ライン

り計数、各

任意で選択

採集した。採

室に持ち帰り

後、流れ藻

体重を測定し

集点では、バ

定した。

成していた種

ク(63%)、

センター 外海研

における春季

ブリ稚魚等

ブリ養殖業者

調査し、関係

する魚類は水

組成などを把

なり得る。そ

年から 201

月および 6

に年 4 回、6

調査船第2く

山口県日本海

(図 1)上の

各測点間で2

択し、モジャ

採集した流れ

、それぞれ

藻は湿重量を

した。各測点

バケツ採水に

は合計 21 種

、ジョロモク

研究部

- 28 -

季の流れ藻

森 拓

を伴って山

者が計画的に

係者へ報告し

水産上重要な

把握すること

そこで本研究

15 年)をと

6 月

くろ

海沿

の流

2~

ャコ

れ藻

れ種

を、

点お

によ

種であった。

ク(15%)、

藻とそれに

也 1

口県日本海沿

にブリ稚魚を

してきた。ブ

な種も多く、

とは、今後こ

究では一定の

りまとめ、流

。重量割合が

6 月にはア

図1 調査海

付随する稚

沿岸域に出現

を採捕できる

ブリをはじめ

これらの稚

これらの水産

の調査ライン

流れ藻とそれ

が大きいもの

アカモク(4

海域図

稚魚の種組

現する。山口

るよう、流れ

めカワハギ類

稚魚の出現特

産資源を有効

ンを設定して

れに付随する

のを月別にみ

44%)、マメ

組成

口県水

れ藻の

類やメ

特性や、

効に活

て行っ

る稚魚

みると、

メタワ

図1 調査海域図

Page 10: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

7 月にはヤツマタモク(60%)、マメタワラ(40%)であった(図 2)。また、2013 年 5 月には南方系ホンダワラ類のツクシモクが確認された。

魚類の出現種流れ藻に付随して採捕された魚類は合計で 25 種、27,341 尾であった(表 1)。月別に個体数割合を

みると、5 月にはブリおよびウスメバル、6 月にはブリおよびウマヅラハギ、7 月にはブリおよびカワハギが多く採捕された(図 3)。

ラ(2

であっ

魚類の

個体数

7 月に

ハナオコウスメバクロメバメバル類クジメアイナメシイラマアジカイワリブリイシダイイシガキノトイスズカゴガキメジナメジナ類メダイギンポギンポ類ニジギンクロホシサバ類アミメハギウマヅラカワハギカワハギハリセン

23%)、ジ

った(図 2)

の出現種

流れ藻に付随

数割合をみる

にはブリおよ

最コゼバルバル類

イキダイズミ

キダイ

類ンポシマンジュウダイ

ギラハギギギ類ンボン

魚種名

図2 流れ

ョロモク(1

。また、2

随して採捕さ

ると、5 月に

よびカワハギ

表1 採

最大 最小82.4 18.066.3 16.855.4 40.254.7 31.5

122.9 46.059.6 59.6

223.0 223.079.1 24.151.4 51.4

186.6 21.051.9 23.5

123.2 17.7149.3 42.729.1 29.172.9 14.838.0 19.9

213.0 25.9222.0 22.7124.4 63.271.3 17.881.9 54.448.8 48.848.2 20.064.4 10.2

136.4 9.938.6 14.3

121.9 121.9

全長(m

れ藻構成種

10%)、7 月

013 年 5 月

れた魚類は合

にはブリおよ

ギが多く採捕

採集した魚類

平均 標準偏差38.5 19.034.7 5.747.5 4.738.4 5.3

100.8 26.559.6 0.0

223.0 0.046.2 12.151.4 0.063.5 20.731.8 7.456.1 24.8

108.9 36.429.1 0.028.3 5.729.8 3.296.1 31.8

102.8 41.786.7 14.830.4 15.068.8 11.348.8 0.031.3 6.233.6 9.426.7 9.624.2 5.4

121.9 0.0計

mm)

種の月別重量

- 29 -

月にはヤツマ

には南方系

合計で 25 種

よびウスメバ

捕された(図

の全長および

2010 20115 3

290 292

165

2

1522 2650

17 44

1000 34106

105 662 81 1

436 50215 1

計 3607 2913

量割

マタモク(6

ホンダワラ類

種、27,341 尾

バル、6 月には

図 3)。

び年別・月別

2012 2013 201

2173 57

21

117 2

1477 575 17221 12

942 185 2

6 661

7 7112

5756 4480 1 356 22

10951 868 29

年別採集個体数

図3 稚

60%)、マメ

類のツクシモ

尾であった

はブリおよび

別採捕個体数

4 2015 53 3 4

52 56 25787261

1 37 271

795 3212 5504

1 411 1

287 955 214

14 3 6911 7 13

102

11 1

57459 1331309 403

221

992 6010 8465

稚魚の出現個

メタワラ(4

モクが確認さ

(表 1)。月

びウマヅラハ

6 74 108 277 22 1661

17 22

14 5218 509

224 19 1

6 114 3140 49

1069 1313 120 142 11

31

578015 171088 321

2 561

5 17945 931

別採集個体数

個体数割合

0%)

された。

月別に

ハギ、

142605

918611

491

11231222471

340310620025241331

5780321409

781

27341

合計(尾)

図 3  稚魚の出現個体数割合図2 流れ藻構成種の月別重量割合

Page 11: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

第 103 回 調査・研究発表

平衡石をもちいたケンサキイカのふ化場所と移動経路の推定

山 口 忠 則 1

はじめに

ケンサキイカ Uroteuthis edulis は、日本海中部以南から東シナ海、東南アジア諸国周辺およびオーストラリア北部に至る海域に分布し(Jereb and Roper 2010)、日本では、日本海に面する本州南部の沿岸海域と対馬東水道周辺で、釣りと底びき網によって冬季を除きほぼ周年漁獲されている。日本で漁獲されるケンサキイカは、体型や成熟サイズが極めて多様で(Okutani 2005)、たとえば対馬東水道では、春には胴部の細長い産卵群が、夏には比較的小型で成熟している個体群が、秋には胴部が太く、多くのメスが未成熟の個体群が見られる(山田ら 1986)。これらの季節群のなかには、以前は別種と分類されたものがあったが、遺伝子分析の結界、現在では全て同一種とされている(Takemoto and Yamashita 2012)。しかし、季節ごとに異なった体型や成熟度の個体群が現れる原因は分かっていない。また、これまで、海底の卵塊調査(荒巻ら 2005)や標識放流による移動経路の調査(小川ら 1983)が行われてきたが、年間漁獲量約 1 万トン(依田・福若 2015)の資源量を合理的に説明できるふ化場所や、漁場に加入するまでの移動経路はほとんど分かっていない。

ケンサキイカの平衡石に刻まれる輪紋はほぼ 1 日 1 本形成されることが知られ、これによって日齢が分かり、孵化日を推定することができる(Natsukari et al. 1988)。また近年、水産生物の炭酸カルシウム硬組織における Sr/Ca がサンゴ(Smith et al. 1979)や二枚貝(Masuda 1976)、魚類(Gauldie et al. 1986, Arai et al. 1996) において、環境水温や塩分と相関があると報告されており、イカ類 (Yatsu et al. 1998,Ikeda et al. 2003) でも平衡石の Sr/Ca 比の変動と移動・回遊との関係が研究されている。Yamaguchi et al (2015a, 2015b)は、ケンサキイカの平衡石から得られたデータと、ふ化から成長・成熟期の水温や海流の情報をもとに、対馬東水道において主要な漁獲対象となる典型的な 3 つの季節群、つまり、春、夏および秋の来遊群のふ化場所と移動経路を推定したので紹介する。

研究内容

Yamaguchi et al (2015a)は室内飼育試験によって、水温 16~22℃では平衡石の Sr/Ca 比と水温は負の相関関係にあり、Sr/Ca 比 0.001 の増加は経験水温約 3.6℃の低下にあたることを示した。また、30~34.5‰の範囲では塩分の変化による Sr/Ca 比に有意な変化は見られなかった。

対馬東水道で春に漁獲される大型のケンサキイカ(市場では 2 段〜2 段半として分類)は、平衡石の輪紋分析の結果、前年の秋から冬にふ化していた。また、Sr/Ca 比分析の結果、ふ化直後と漁獲時の経験水温は約 18℃であったのに対し、成長の途中(2 月頃)で 20~22℃の水温を経験していた。これは黒潮による影響であると推測される。また、春に東シナ海北部の大陸棚で漁獲されたケンサキイカには黒潮の影響が見られる個体があった一方、東シナ海南部大陸棚で漁獲された個体には見られな

1 佐賀県玄海水産振興センター

Page 12: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

かった。これらのことから、対馬東水道の春群や東シナ海北部大陸棚で漁獲されるケンサキイカの一部は、東シナ海南部の大陸棚でふ化したと推定される(Yamaguchi et al 2015a)。

対馬東水道で夏に漁獲されるケンサキイカ(市場では 2 段〜2 段半として分類)は、すべて冬にふ化していた。ふ化から漁獲まで Sr/Ca 比がほとんど変化していないことから、経験水温は 22℃前後でほぼ一定していたと考えられる。よって、ふ化場所は春の来遊群と同様に東シナ海南部である可能性が高い。春と夏の来遊群は、ほぼ同じ経路で東シナ海南部から東シナ海北部へと移動し、対馬東水道に達したと考えられるが、異なるのは、春群が東シナ海北部へ移動してくる時は当該海域の海水温が低いのに対し、夏群が移動してくる時にはすでに上昇していることであろう(Yamaguchi et al 2015a)。

また、Yamaguchi et al (2015b)によると、対馬東水道で秋に漁獲されるケンサキイカ(市場では2 段〜2 段半として分類)は、冬から春にふ化していた。Sr/Ca 比はふ化から約 50 日までに大きく減少し、その後は漁獲までほぼ一定であった。経験水温を推定すると、ふ化直後は 16~18℃で、約 50日以降は 20~22℃であった。これらのことから、ふ化場所は東シナ海の南部から中部にかけての大陸棚縁辺部であると考えられる。秋来遊群の漁獲が日本海沿岸から対馬東水道に広がるという経験則を考慮すると、この季節群は日本海で夏を過ごしたことになる。その経験水温が 20 〜22℃であるとすれば、夏を過ごす場所は、東西対馬水道から日本海に流れ込む海流の狭間にあたる海域の、20~22℃の水温躍層帯が該当する。躍層は秋には崩壊するので、それが引き金になって周辺海域へ拡散するのかもしれない。

文  献Arai N, Sakamoto W, Maeda K (1996) Correlation between ambient seawater temperature and

strontium-calcium concentration ratios in otoliths of red sea bream Pagrus major . Fish Svi 62 : 652-653.荒巻裕 , 野田進治 , 鷲尾真佐人 , 藤﨑博 , 柴山雅洋(2005)佐賀県玄海域におけるケンサキイカの生態

- Ⅱ . 佐賀玄水研報 3 : 9-15.Gauldie RW, Fournier DA, Dunlop DE (1986) Atomic emission and proton microprobe studies of

the ion content of otoliths of Chinook salmon aimed at recovering the temperature life history of individuals. Comp Biochem Physiol A 84 : 607-615.

Ikeda Y, Arai N, Kidokoro H, Sakamoto W (2003) Strontium:calcium ratios in statoliths of Japanese common squid Todarodes pacificus (Cephalopoda: Ommastrephidae) as indicators of migratory behavior. Mar Ecol Prog Ser 251 : 169-179.

Jereb P, Roper CFE (2010) Cephalopods of the world. An annotated and illustrated catalogue of cephalopod species known to date. Myopsid and Oegopsid squids. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes, No. 4, Vol 2. FAO, Rome.

Masuda F (1976) Can the elemental contents in skeletal carbonates be used as paleothermometer? J Geo Soc Jpn 82 : 565-572.

Natsukari Y, Nakanose T, Oda K (1988) Age and growth of the lolinigid squid Photololigo edulis (Hoyle, 1885). J Exp Mar Biol Ecol 116 : 177-190.

小川嘉彦 , 森脇晋平 , 山田英明 , 岡島義和(1983)4 県共同標識放流調査から推定される日本海南西部における “ シロイカ ” の回遊 . 日本海南西部海域に生息する “ シロイカ ”(ケンサキイカ・ブドウイカ)に関する共同研究報告書 ,1 : 65-95.

Page 13: 第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海 …snf.fra.affrc.go.jp/seika/103tushimadanryu.pdf第103回対馬暖流系アジ・サバ・イワシ長期漁況海況予報会議講演要旨集

Okutani T (2005) Past, present and future studies on cephalopod diversity in tropical West Pacific. Phuket Mar Biol Cent Res Bull (Sun Chiwawitthaya Thang Thale Phuket) 66 : 39-50.

Smith SV, Buddermeier RW, Redalje RC, Houck JE (1979) Strontium-calcium thermometry in coral skeletons. Science 204 : 404-407.

Takemoto K, Yamashita M (2012) Complete nucleotide sequences of mitochondrial DNA of long-finned squid Loligo edulis. Fish Sci 78 : 1031-1039.

山田英明 , 河野光久 , 森脇晋平 , 堀豊 , 武田雷介(1986)日本海西部沿岸域に出現する “ シロイカ ”(Loligo edulis)の生活グループ . 日本海南西部海域に生息する “ シロイカ ”(ケンサキイカ・ブドウイカ)に関する共同研究報告書 , 1 : 29-50.

Yamaguchi T, Kawakami Y, Matsuyama M (2015a) Migratory routes of the swordtip squid Uroteuthis

edulis inferred from statolith analysis. Aquat Biol 24 : 53-60.Yamaguchi T, Kawakami Y, Matsuyama M (2015b) Migratory routes of the autumn group of

swordtip squid Uroteuthis edulis inferred from statolith analysis. Submitted to Aquat Biol.Yatsu A, Mochioka N, Morishita K, Toh H (1998) Strontium/calcium ratios in statoliths of the neon

flying squid, Ommastrephes bartrami (Cephalopoda), in the North Pacific Ocean. Mar Biol 131 : 275-282.

依田真里 , 福若雅章(2015)平成 26(2014)年度ケンサキイカ日本海・東シナ海系群の資源評価 . 平成 26 年度我が国周辺水域の漁業資源評価 , 水産庁・水産総合研究センター , 1788-1802.

Calanus sinicus