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- 10 - CEC(陽イオン交換容量)の診断 土壌の粘土や腐植等の有機物は、電気的にマイナスでカルシウム、マグネシウム、カリウム等 の陽イオンを吸着・保持します。この保持能力をCEC として測定し、各養分の量やバランスを診断 するための基礎データとします。 1)CEC(陽イオン交換容量)の測定 土壌粒子に吸着したアンモニアをナトリウムで置換し、出てきたアンモニアをホルマリンで酸 性化合物に変換して、アルカリ中和滴定で量を求める簡便法です(旧手引きの測定法と同様)。 <測定手順> ①供試土壌2gを50 mlの遠沈管にとり、1N酢酸アンモニウム25 mlを加える。 ②1時間浸とう後、遠心分離(3, 000 回転、5分)する。 ③上澄み液を捨てる(ろ過すれば交換性塩基の測定に使用可能)。 ④80 %エタノール20mlを加え、5分間浸とう後、遠心分離し上澄み液を捨てる。 ⑤④を3回繰り返す。 ⑥残渣に10 %食塩水25ml を加えて、1時間浸とう後、遠心分離する。 ⑦上澄み液20 mlをすぐに50 mlの三角フラスコに分取する。 ⑧ホルマリン(1:1)5 ml を加え、1% チモールブルー指示薬を2滴入れる(多めでもよい)。 ⑨0.1N 水酸化ナトリウムで滴定(黄色→淡青色)する(あらかじめ、10 %食塩水25ml のみを同様に 滴定してブランクとする)。 ★滴定はビューレット以外に秤を用いた重量変化から求めることもできます。 三角フラスコに指示薬を入れ回転子を入れて秤に載せてゼロ合わせします。 スターラーに載せ少しずつ0.1 NNaO Hを入れて変色点で再び重量を測定し 増加量g=ml としてもよい。 CEC(meq/乾土100 g)=0.1× 100 ÷2×(25+2)÷ 20×(測定値-ブランク)×F =6.75×(測定値-ブランク)×F CEC測定に必要な試薬 ○1:1 ホルマリン・・・ホルマリン1容量を水1容量に加える(使用の都度調整する)。 ○チモールブルー(T・B指示薬)・・・チモールブルー1.0gを 100 mlの水に溶かす。 ○10%食塩水・・・塩化ナトリウム100 gを水に溶かして1Lとし、塩酸または水酸化ナトリウム でpH7に調整する。 ○0.1N 水酸化ナトリウム・・・市販の1N水酸化ナトリウム標準液を10倍希釈し 0.1N 硫酸で摘定してファクターFを求めておく。 ○80 %エタノール・・・99%エタノール800 mlに水190 ml を加えて1L とし、酢酸(3:1) 2%水酸化ナリウムでpH 7に調整する。 ○1N酢酸アンモニウム・・・特級酢酸アンモニウム77.1gを水に溶 かして1Lとする。 酢酸(3:1)、 アンモニア水(1:3)で pH 7に調整する。 ⑦の抽出液中のアンモニアを全農式試薬で定量することで求めることもできます。 ⑧抽出液1ml をとり純水50 mlを加えて希釈する。 ⑨希釈した試料液0.5 ml を試験管にとる。 ⑩試料液の代わりに純水と標準液0.5 ml (3mg /L)も 以降同様に操作する。 ⑪すべてに純水2ml を加える。 ⑫発色試薬Aを1ml、発色試薬Bを1ml、を加え、軽く振り混ぜた後、20分間静置する。 ⑬分光光度計(波長610nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:2時間)。 標準液3mg /Lの 吸光度はCEC 13 .7に 相当します(13 .7=3× 51 ×25×50 ÷1000 ÷14 )。 CEC(meq/乾土100 g)=13.7÷標準液の吸光度×試料の吸光度

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4 CEC(陽イオン交換容量)の診断

土壌の粘土や腐植等の有機物は、電気的にマイナスでカルシウム、マグネシウム、カリウム等

の陽イオンを吸着・保持します。この保持能力をCECとして測定し、各養分の量やバランスを診断

するための基礎データとします。

1)CEC(陽イオン交換容量)の測定土壌粒子に吸着したアンモニアをナトリウムで置換し、出てきたアンモニアをホルマリンで酸

性化合物に変換して、アルカリ中和滴定で量を求める簡便法です(旧手引きの測定法と同様)。

<測定手順>①供試土壌2gを50mlの遠沈管にとり、1N酢酸アンモニウム25mlを加える。

②1時間浸とう後、遠心分離(3,000回転、5分)する。

③上澄み液を捨てる(ろ過すれば交換性塩基の測定に使用可能)。

④80%エタノール20mlを加え、5分間浸とう後、遠心分離し上澄み液を捨てる。

⑤④を3回繰り返す。

⑥残渣に10%食塩水25mlを加えて、1時間浸とう後、遠心分離する。

⑦上澄み液20mlをすぐに50mlの三角フラスコに分取する。

⑧ホルマリン(1:1)5mlを加え、1%チモールブルー指示薬を2滴入れる(多めでもよい)。

⑨0.1N水酸化ナトリウムで滴定(黄色→淡青色)する(あらかじめ、10%食塩水25mlのみを同様に

滴定してブランクとする)。

★滴定はビューレット以外に秤を用いた重量変化から求めることもできます。

三角フラスコに指示薬を入れ回転子を入れて秤に載せてゼロ合わせします。

スターラーに載せ少しずつ0.1NNaOHを入れて変色点で再び重量を測定し

増加量g=mlとしてもよい。

CEC(meq/乾土100g)=0.1×100÷2×(25+2)÷20×(測定値-ブランク)×F

=6.75×(測定値-ブランク)×F

CEC測定に必要な試薬

○1:1 ホルマリン・・・ホルマリン1容量を水1容量に加える(使用の都度調整する)。

○ チモールブルー(T・B指示薬)・・・チモールブルー1.0gを100mlの水に溶かす 。

○ 10%食塩水・・・塩化ナトリウム100gを水に溶かして1Lとし、塩酸または水酸化ナトリウム

でpH7に調整する。

○0.1N水酸化ナトリウム・・・市販の1N水酸化ナトリウム標準液を10倍希釈し

0.1N硫酸で摘定してファクターFを求めておく。

○80%エタノール・・・99%エタノール800mlに水190mlを加えて1Lとし、酢酸(3:1)

2%水酸化ナリウムでpH7 に調整する。

○1N酢酸アンモニウム・・・特級酢酸アンモニウム77.1gを水に溶かして1Lとする。

酢酸(3:1)、アンモニア水(1:3)でpH7に調整する。

★ ⑦の抽出液中のアンモニアを全農式試薬で定量することで求めることもできます。⑧抽出液1mlをとり純水50mlを加えて希釈する。

⑨希釈した試料液0.5mlを試験管にとる。

⑩試料液の代わりに純水と標準液0.5ml(3mg/L)も以降同様に操作する。

⑪すべてに純水2mlを加える。

⑫発色試薬Aを1ml、発色試薬Bを1ml、を加え、軽く振り混ぜた後、20分間静置する。

⑬分光光度計(波長610nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:2時間)。

標準液3mg/Lの吸光度はCEC13.7に相当します(13.7=3×51×25×50÷1000÷14)。

CEC(meq/乾土100g)=13.7÷標準液の吸光度×試料の吸光度

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2)養分吸着のしくみ土壌化学性診断には2mmのふるいを通した土壌試料を用います。2mm以上は礫(石ころ)であり2

mm以下を土壌として取り扱っています。2~0.02mm程度の砂粒は、通気性や排水性を高める働きは

ありますが、養分をくっつけることはできません。

ところが粒子が0.002mm以下の粘土になると表面にマイナスの荷電を帯びるようになります。養

分の多くはカリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)のように、水に溶けると

プラスの荷電を持ったイオンになります。マイナスの荷電を持った粘土粒子は、これらのプラス

荷電を持った養分をくっつけて保持できるようになります。

また、くっつき易さは養分の種類によって異なっており、プラスが一つのカリウムより二つの

カルシウムやマグネシウムの方が強く保持されます。新しい養分が入ってきた場合は、強く保持

される方が弱い方を追い出して入れ替わっていきます。土壌酸性化の原因となる水素イオンH+は

土壌にかなりくっつきやすいので、カルシウム等の養分を追い出して徐々に酸性化が進行するこ

とになります。

プラスイオンを保持する能力の大き

さを数値で表したものがCEC(陽イオ

ン交換容量)で、土壌100gあたりに保

持できる荷電量meqで示されます。CEC

は粘土の種類・量と同様に荷電を持つ

腐植の量によって決まります。堆肥を

連用すると腐植含量が多くなりCECも

徐々に高まってきますが、粘土の量は

土壌の種類によってほぼ決まっていま

す。県内の主要土壌のCECをみると、

粘土と腐植含量の多い黒ボク土が高く

25~38、ついで褐色森林土の18~24、

粘土含量が少ない灰色低地土は12~1

7、砂の多い砂丘未熟土は2~5となっ

ています。

2mm以上は石ころ土壌ではない

粒子間の隙間が大きく通気・排水をよくする

粘着性はないが小さいと吸着性あり

表面積が大きく養分の吸着・交換をする粘着性・凝集性がある

土壌粒子が小さくなると表面にマイナスの荷電ができプラスの養分が保持される

図 土壌の粒径区分と特性

図 CEC(陽イオン交換容量)

○粘土や腐植のコロイドの多少によって決まる○土壌の種類によってほぼ一定○堆肥施用によって増加する

陽イオンの吸着可能量

単位:土壌100gあたりmeq近年はcmol(+)kg-1

Mg2+ CECとは

Mg2+

Ca2+

Ca2+

NH4+

NH4+

K+

K+

H+

H+

K+

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5 リン酸の診断

土壌中のリン酸はカルシウム、鉄、アルミニウム等と結合しているので、作物に利用されやす

いものから利用されないものまで様々な形態があります。リン酸診断は土壌に存在するリン酸の

うち作物に吸収されやすい有効態リン酸(可給態)を測定しています。通常、薄い硫酸液(pH3)

で抽出するトルオーグ法が用いられ、鳥取県の有効態リン酸(P2O5mg/100g)の土壌診断基準もこれ

に基づいています。

1)有効態リン酸の測定(全農式)

<操作手順>①供試土壌0.2gを計って100mlのポリ瓶に入れる。

②抽出試薬40mlを加え、30分間振とうする。

③100mlの三角フラスコにロート(ろ紙№6)を取り付け、振り混ぜた液をろ過する。

④ろ液5mlを試験管にとる。

⑤ろ液の代わりに純水と標準液(5mg/L)を5m入れ以降同様に操作する。

⑥調整した発色試薬0.5mlを加え、軽く振り混ぜた後、10分間静置する。

⑦分光光度計(波長610nm)で吸光度を測定する。・・・・・・24時間安定

★分光光度計の測定は、ブランク(純水)を0に調整した後、標準液、試料を測定する。

標準液の吸光度は 土壌含量P2O5 100mg/100gに相当します

濃度計算

試料のP2O5含量(mg/100g)=100÷標準液P2O5の吸光度×試料の吸光度

標準液のつくり方

P2O5 5 mg/L:市販標準原液(P 1,000ppm)を1mlとり蒸留水457mlに混ぜる。

または、リン酸第一カリウムKH2PO4 1.917gを1Lに

溶かすとP2O51000mg/Lとなるので希釈して調製する。

2)リン酸のはたらき

リン酸は窒素、カリと並ぶ肥料三要素の一つで

不足すると、生育不良になったり、開花結実が悪

くなったり、果実の糖度が低下すると言われてい

ます。 吸収されたリン酸は成長の盛んな芽の部

分や根の先端、あるいは子実に移動して開花結実

等の細胞の増加に役立っています。一般的なリン

酸欠乏症状としては、葉の光沢が悪くなり暗紫色

から暗赤色となって小型化すると言われていま

す。野菜類では茎葉の伸長が抑制され、水稲では

分けつが悪くなるとされます。

リン酸過剰症としては、水稲では苗で旧葉の先

端が褐変する症状がでるとされ、野菜ではタマネ

ギで軟弱化が指摘されています。また、亜鉛、鉄

欠乏を誘発するとの報告もありますが、詳しいことはまだわかっていません。

カルシウムと結合したリン酸は比較的容易に溶けるので植物に利用されやすい有効態(可給態)

とされます。ところが、アルミニウムや鉄と結合したリン酸は難溶性または不溶性となり作物に

利用されなくなります。これを土壌のリン酸固定といい、黒ボク土は鉄やアルミニウムが多いこ

とからリン酸の効きにくい土壌とされています。これに対しては、作物根のから出る有機酸によ

って溶けるタイプの肥料を用いることで、リン酸固定を回避しながら効率的に吸収させることが

できます。

図 リン酸の固定

可給態リン酸

難溶態リン酸

固定

有効化

植物に吸収

リン酸イオン:H2PO4ー

Ca型>Fe型>Al型>難溶

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水稲の場合は

<土壌中の有効態リン酸含量の実態>

リン酸が固定されてしまうことから、これまでリン酸肥料がかなり多量に施用されてきました。

県内の有効態リン酸含量の実態をみると、土壌診断基準値を超えるほ場が大部分となっています。

特に普通畑や樹園地ではかなり多くなっています。

その原因としては?

○リン酸は過剰害が出にくいため継続施用

されている。

○土壌固定され吸収不足になる概念が定着

している。

○品質向上を期待して多めに施用する傾向

にある。

○溶脱しにくく過去に施用した成分が蓄積

している。

<土壌診断に基づいたリン酸の効果的施肥>鳥取県の有効態リン酸(P2O5mg/100g)の土壌診断基準は以下のようになっています。

水 田:10~30mg/100g

土壌診断基準 普通畑:黒ボク土は10~30mg/100g

樹園地 それ以外は20~40mg/100g

しかし、近年は大きく診断基準を超えるほ場が多くなっており、診断に基づいた施肥改善が求

められています。水稲では試験成績に基づいて減肥基準が設定されています。野菜、果樹は目安

を参考に減肥に取り組みましょう。

10mg以下 リン酸施肥10~12kg/10a

10~30mg リン酸施肥 5~7 kg/10a

30mg以上 リン酸施肥 0 kg/10a

有効態リン酸の変動

0

20

40

60

80

100

120

140

水田 普通畑 樹園地

有効態リン酸含量(mg/100g)

昭54~58年 昭59~63年 平1~5年 平6~10年 平11~15年

基準範囲

大部分の水田では、改良資材リン酸

を半分にしても施肥リン酸だけで大丈

夫です。野菜畑では、有効態リン酸が蓄

積し、基準の2~3倍もあるほ場があり

ます。

対象作物トルオーグリン酸含量(mg/100g)

リン酸施用法 備考

10未満 土壌改良材、施肥リン酸とも標準施用10~30 土壌改良材は無施用、施肥リン酸は標準施用30以上 土壌改良材、施肥リン酸ともに無施用30未満 土壌改良材は標準または5割増施用、施肥リン酸は標準施用30~75 土壌改良材は半量、施肥リン酸は標準施用75~120 土壌改良材は無施用、施肥リン酸は半量施用120以上 土壌改良材、施肥リン酸ともに無施用20未満 土壌改良材は標準または5割増施用、施肥リン酸は標準施用20~50 土壌改良材は半量、施肥リン酸は標準施用50~100 土壌改良材は無施用、施肥リン酸は半量施用100以上 土壌改良材、施肥リン酸ともに無施用10未満 土壌改良材は標準または5割増施用、施肥リン酸は標準施用10~40 土壌改良材は半量、施肥リン酸は標準施用40~70 土壌改良材は無施用、施肥リン酸は半量施用70以上 土壌改良材、施肥リン酸ともに無施用

果樹Ⅰ

水稲

ナシ、ブドウ、カキ

表 土壌診断による有効態リン酸含量に基づく減肥の目安

5年ごとに土壌診断を行う

スイカ、トマト、ブロッコリー

白ねぎ、ラッキョウ、ナガイモ

野菜Ⅰ

野菜Ⅱ

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6 可給態ケイ酸の診断

これまで用いられてきた酢酸緩衝液抽出法は、ケイ酸資材資材未施用ほ場に適しているものの、

資材施用ほ場では不可給態ケイ酸も溶出されるため異常値がでる欠点がありました。これに対し

て中性リン酸緩衝液による抽出法は、水稲の吸収量ともよく一致することから、新しいケイ酸測

定法として活用でき迅速測定も可能です。

1)可給態ケイ酸の測定(全農式:中性リン酸緩衝液迅速抽出法)

<測定操作>①供試土壌1gを試験管にとり、リン酸抽出液10mlを加え振り混ぜる。

②80℃の湯浴中に浸して2分後に、10回往復振とうし、30分間湯浴中に浸す。

(振とう後は80℃に設定した定温庫に入れてもよい)

③湯浴から取り出して、再び10回往復振とうして混ぜた後、ろ過(ろ紙№6)する。

④試験管に抽出ろ液0.5mlをとる。同様にブランク、標準液も0.5mlとる。

⑤純水4.5mLを加えて希釈する。

⑥ケイ酸発色試薬Aを0.5ml加え振り混ぜて5分静置する(時間厳守)。

⑦ケイ酸発色試薬Bを0.5ml加え振り混ぜて3分静置する(時間厳守)。

⑧ケイ酸発色試薬Cを薬さじ小で1杯加え振り混ぜて溶かし、5分静置する。

⑨波長610nmで吸光度を測定する。・・・・・・・・・・・・・・24時間安定★試験管のわずかな汚れで黄色沈殿を生ずるのでよく洗浄したものを用いる。

試薬のつくり方

抽出用リン酸緩衝液・・0.02Mリン酸一ナトリウム2水和物NaH2PO4・2H2O 3.12gを溶

かして1Lにしたものと、0.02Mリン酸二ナトリウム12水和物

Na2HPO4・12H2O 7.16gを溶かして1Lにしたものを等量混合

ケイ酸標準液(20mg/L)・市販のSi標準液1000mg/L(SiO2 2140mg/L)2mlに純水212mlを加える

濃度計算

まず、測定した計算濃度を求めます。標準液はSiO2 20mg/100gに相当します。

A:試料のケイ酸含量(SiO2mg/100g)=20÷標準液SiO2の吸光度×試料の吸光度

次に、簡易抽出による濃度補正をします

可給態ケイ酸(mg/100g)=0.99×A-0.35

図 中性リン酸緩衝液抽出によって測定したケイ酸量と水稲の茎葉ケイ酸含有率の関係 (土壌・施肥診断ベーシック読本:2002)

中性リン酸緩衝液抽出によって測定した可給態ケイ酸含量は、黒ボク土以外の土壌では

15mg/100mgまで、黒ボク土では25mg/100mgまで水稲の吸収増加が認められます。

黒ボク土以外は 15mg/100mgよって を基準に増施すると効果が期待できます!

黒ボク土は 25mg/100mg

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7 遊離酸化鉄の診断

老朽化した水田では作土から鉄が溶脱して減少し、硫化水素による根腐れ「秋落ち」の心配が

あります。遊離酸化鉄は有害な硫化水素と結合して無害化するため、0.8%以上あることが必要と

なっています。現場観察では、土壌の赤褐色の程度とほぼ対応しています。

1)遊離酸化鉄の測定

<測定操作>①供試土壌0.2gを100mLの三角フラスコにとる。

②抽出試薬A(ハイドロサルファイトナトリウム)0.3g(薬さじ小で1杯)を加える。

③調製した抽出試薬B(0.02M EDTA)10mlを加える。

④70℃の湯浴中に15分間浸す(加熱した抽出液を入れ直ちに70℃の定温庫に入れてもよい)。

⑤湯浴後、純水15mlを加えて希釈混合し、ろ過(ろ紙№6)する。

⑥試験管に抽出ろ液0.2mlをとる。同様にブランク、標準液(80mg/L)も0.2mlとる。

⑦純水4.8mLを加える。

⑧発色試薬を1ml加え振り混ぜて10分静置する。

⑨波長510nmで吸光度を測定する。・・・・・・・・・・・・・・24時間安定

濃度計算

標準液(80mg/L)の吸光度はFe2O3 1%に相当します

遊離酸化鉄Fe2O3含量(%)=1÷標準液Fe2O3の吸光度(0.38程度)×試料の吸光度

試薬のつくり方

0.02M EDTA液・・・EDTA粉末(EDTA-2Na塩)7.44gを純水1000mlに溶かす。

Fe2O3標準液(80mg/L)・市販のFe標準液1000mg/L(Fe2O3 1430mg/L)8mlに純水135mlを加える。

単位の話

国際基準としてSI単位系が用いられています

基本単位の前に接頭語を付けて表しています

モル濃度とは?

1Lに1molの物質が溶けている濃度で1Mとかく

0.5M塩酸=1Lに0.5M塩酸(36.46g×0.5=18.23g)

実際には濃塩酸が12Mなので希釈して調製

グラム等量とは?

グラム等量=原子量(g)/原子価

・・・・Caの場合は20.04=40.08/2

規定濃度は1Lに溶けている物質を等量で表したもの

現在はモル濃度(mol/L=M)のほうを用いる

pFとは?

土壌水分のpFは水柱表示の圧力を対数表示したもの

pF2.7=水柱501cm=49kPa=0.05MPa

量の種類 単位記号重さ kg(キログラム)体積 L(リットル)長さ m(メートル)時間 s(秒)

物質量 mol(モル)

圧力 Pa(パスカル)

基本単位

倍率 接頭語 単位記号例 備 考

10-12 p(ピコ) pg

10-9 n(ナノ) ng 波長の単位はnm

10-6 μ(マイクロ) μg μg/mL≒ppm μg/L≒ppb

10-3 m(ミリ) mg mg/L≒ppm

10-2 c(センチ) cm

10-1 d(デシ) dL

101 da(デカ) dag

102 h(ヘクト) hPa ha(ヘクタールは慣行的に併用)

103 k(キロ) kg

106 M(メガ) Mg t(トンは慣行的に併用)

109 G(ギガ) Gg

1012 T(テラ) Tg TB(テラバイトは情報量)

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8 窒素の診断

土壌中において窒素は様々な形態で存在しており、一部はアンモニアや硝酸の無機態の他、大

部分は有機態で存在しています。有機態窒素は、地温の上昇と共に一部が微生物によって無機化

され、アンモニアや硝酸となって有効化し作物に吸収されます。作物生育に影響の大きい窒素に

ついて診断するには、残存する無機態窒素量と有機態窒素が無機化する量(可給態窒素量)を知

る必要があります。

1)無機態窒素の測定全農式の方法に準じて行い、抽出は塩基類と同じ試薬と手順で行います。無機態窒素の量は作

物吸収の多少、温度、水分等によって大きく変動します。採土時の状態を知ることはできますが、

定まった診断基準はありません。

<抽出手順>①供試土壌1gを計って100mlのポリ瓶に入れる。

②塩基抽出試薬20ml(4倍に希釈して使用する)を加え、30分間振とうする。

③ろ過する(ろ紙NO6)。

(1)アンモニア態窒素(NH4-N)の測定

<測定手順>①抽出試料液0.5mlを試験管にとる。

②試料液の代わりに純水と標準液(3mg/L)をとったものを以降同様に操作する。

③純水2mlを加える。

④発色試薬Aを1ml、発色試薬Bを1ml、を加え、軽く振り混ぜた後、20分間静置する。

⑤分光光度計(波長610nm)で吸光度を測定する。・・・・2時間安定

濃度計算

標準液(3mg/L)の吸光度はNH4-N 6mg/100gに相当します

アンモニア態窒素NH4-N含量(mg/100g)=6÷標準液の吸光度(0.25程度)×試料の吸光度

(2)硝酸態窒素(NO3-N)の測定

<測定手順>①抽出試料液0.2mlを100mlのポリ瓶に入れる。

②同様にブランク(純水)と標準液100mg/Lも以降同じ操作をする。

③還元試薬Aを8mlと還元試薬Bを1g程度加え15分間振とうする。

④20分以内に還元上澄み液1mlを試験管にとる。純水5mlを加える。

⑤発色試薬0.5mlを加え、軽く振り混ぜた後、10分間静置する。

⑥分光光度計(波長530nm)で吸光度を測定する。・・・・5時間安定

濃度計算

標準液(100mg/L)の吸光度は NO3-N 200mg/100gに相当します

硝酸態窒素 NO3-N含量(mg/100g)=200÷標準液の吸光度(0.5程度)×試料の吸光度

標準液

NH4-N 3 mg/L:硫酸アンモニウム0.427gを溶かして1L。3mlとって純水97mlに混合。

NO3-N 100 mg/L:硝酸カリウム0.772gを溶かして1000mlとする。

有有機機態態NN NNHH44++

NNOO33--

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R = 0.85**

R = 0.90**

0

5

10

15

20

25

30

35

0.0 0.1 0.2 0.3

堆肥施用

堆肥無施用

図 堆肥施用履歴が異なる土壌での吸光度(420nm)と湛水培養窒素量との関係 (灰色低地土)

吸光度(420nm)

湛水

培養

窒素

量(m

g/100

g)

2)可給態窒素の測定

可給態窒素の測定は、30℃4週間の保温静置培養によって増加する窒素量を測るのが一般的でし

た。しかし、測定に長期間を要することもあり現場での迅速な対応には不向きでした。そこで、

水田土壌に対してはリン酸緩衝液抽出法、畑土壌には80℃16時間水抽出法による簡便法を適用し

て迅速化を図ります。

(1)水田土壌の可給態窒素の測定(リン酸緩衝液抽出法)リン酸緩衝液抽出法は、分解しやすいタンパク質等を抽出して、その濃度を波長420nmで測定し

ます。その後、静置培養法との換算式にあてはめて、窒素発現量を推定する方法です。ただし、

畑土壌には適合性が劣るため別途検討が必要です。

<測定手順>①試料風乾土5gを採取して50mlポリ遠沈管に入れる。

②抽出液25mlを入れ、フタをして1時間振とう機にかける。

③遠心分離する(3000回転、10分)。

④上澄み液をろ過する(ろ紙№6)。

⑤ろ液を5倍に希釈する(ろ液2mlに純水8mlを入れて混ぜる)。

⑥希釈液を420nmの波長で吸光度を測定する(ろ液が濁っていないこと)。

換算式

水田土壌の可給態窒素(mg/100g) Y = 76.2 X (吸光度)+4.18・・・堆肥なし

Y = 130.3 X(吸光度)+ 1.90・・・堆肥あり

(鳥取農試2007:灰色低地土のみ適用可能)

抽出液のつくり方

(pH7.0 リン酸緩衝液):リン酸一カリウム(KH2PO4)3.54gとリン酸二ナトリウム

(Na2HPO4・12H2O)14.57gを1,000mlに溶かす

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(2)畑土壌の可給態窒素の測定(80℃16時間水抽出法)

今まで多くの簡易推定法が提案されてきましたが、土壌の種類によっては使用できないことや、

高価な分析機器が必要であるなど、汎用性、利便性に問題がありました。そこで、土壌の種類の

違いや堆肥を連用した土壌にも適用でき、簡単に操作できる畑土壌可給態窒素の簡易判定法が開

発されました(2010中央農研:畑土壌可給態窒素の簡易・迅速評価マニュアル)。

<測定手順>①試料風乾土3gを採取して50mlポリ遠沈管に入れる(生土の場合は4g)。

②80℃の熱水50mlをポリ遠沈管に入れ、フタをして30秒間激しく振り混ぜる。

③遠沈管をビニール袋に入れ、袋ごとよく縛る(蒸発口をふさがないため)。

④電気ポットで80℃に保温した湯の中に袋毎入れ、16時間保温する。

⑤取り出してよく振り混ぜた後、ふたを取って冷ます。

⑥塩化カリウム0.3g(食卓塩でもよい)を加えて混ぜ、しばらく静置する。

⑦別のポリ遠沈管に折ったろ紙をのせ、上澄み液をろ過する。

⑧ろ液を5倍希釈する(別のポリ容器に10mlとり目盛りをみながら水40mlを加える)。

⑨COD簡易測定キットで酸素消費量(容易に分解する有機物の量)を測定する。

○チューブのひもを引き抜き、チューブの下半分をつまんで空気を追い出す。

○そのまま希釈した測定液につけ、つまみを緩めて、チューブの半分まで吸い込む。

○同時に時間測定を開始し、5~6回軽く振り混ぜる。

○液温が25℃の場合は、4分30秒後に標準色板と照合して数値を読み取る。

○緑色(数値13以上)になると、10倍希釈にして再度測定する。

⑩換算式にあてはめて可給態窒素量を推定する。

換算式

畑土壌の可給態窒素(mg/100g風乾土)=測定値×希釈倍率×(100/3)×(50/1000)×0.034

数値13で5倍希釈だと =13×5×0.057

≒4

注1)ポリ遠沈管の替わりに100ml三角フラスコを用いアルミ箔で蓋をし、通風乾燥機に

入れて80℃にしてもよい。

注2)電気ポットは4時間程度前に純水を入れて温度調節しておく。

注3)COD簡易測定キット(水質検定用パックテスト測定範囲0~100mg/Lを使用)

地力窒素の指標としては、普通畑で乾土100gあたり5mg以上が目標値となっています。可給態

窒素量の把握は、施肥窒素量の加減の目安や土づくりの計画作成に活用が期待できます。そ

のためには作物、地域、作型等と可給態窒素量との関係に基づいて基準を作成することが大

切です。

5倍 10倍 20倍0 0 0 02.5 1 2 35 2 3 67.5 2 5 910 3 6 1311.5 4 7 1413 4 8 1616.5 5 10 2120 6 13 25

注)風乾土の水分含量を10%として試算

抽出液の希釈倍率判定値

色判定値と可給態窒素量(mg/100g乾土)の関係

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9 腐植の診断

1)腐植の簡易測定土壌の腐植含量は、これまでチューリン法で測定した炭素含有率(%)の値を1.724倍したものを

用いてきました。しかし、試薬の調整や滴定に手間取る等の欠点がありました。本法はピロ燐酸ナト

リウムのアルカリ溶液で抽出した腐植の色を分光光度計で測定して換算式によって求めます。未分解

の泥炭を多く含む試料や多量の腐植を含む試料(12%以上)には適用できませんが迅速な方法です。

<測定手順>①試料風乾土2gを採取して100mlポリ瓶に入れる。

②抽出液20mlを入れる。

③フタをして3分間振とう機にかける。

④100mlの三角フラスコにロートをつけ№6の乾燥ろ紙を取り付け、抽出液をろ過する。

⑤ろ液1mlを試験管にとり、蒸留水11ml(黒ボク土は47ml:4倍希釈)を加えて混ぜる。

⑥希釈液を530nmの波長で吸光度を測定する。

換算式

腐植(%)=-0.974+46.141X(吸光度)・・非黒ボク土

2.5365+14.468X(吸光度)・・黒ボク土

(4倍希釈)

抽出液のつくり方

特級ピロ燐酸ナトリウム(Na4 P2O7・10H2O)22.3gを約400mlの水に溶かす。

特級NaOH 10gを約400mlの水に溶かし混合して1,000mlにする。

★地力増進法における腐植含量の改良目標値

水田の灰色低地土・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2%以上

普通畑・樹園地の灰色低地土、褐色森林土等・・・・・・・・3%以上

(黒ボク土はもともと腐植含量が高いので目標値設定なし)

★腐植含量増加には完熟した有機物を連用して土づくりに努めることが大切です。

土色明度 腐植含量(%)5~7 2以下4~5 2~52~3 5~101~2 10~20

土色明度と腐植量の関係(黒ボク土)

黒ボク土 非黒ボク土かなり高い 10以上 5以上

高い 7~10 3~5ふつう 4~7 2~3低い 2~4 1~2

かなり低い 2以下 1以下

腐植含量(%)生産力の評価

腐植量と生産力の評価

図 黒ボク土における吸光度と腐植含量との関係(鳥取県大山町野菜ほ場)

y = 14.468x + 2.5365

R2

= 0.9469

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

吸光度(530nm)

腐植

含量

(%)

土色明度とは土色帳

の縦の項目です

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10 堆肥の肥効診断

堆肥の窒素肥効は、含有する無機態窒素の量、緩効性の有機態窒素の無機化量、有機化の程度によって堆肥毎に異なります。従来は長期培養によって求めていましたが、簡易な化学分析によって短期間で窒素肥効の概算ができる新しい窒素肥効予測方法が開発されました。この方法では、化学肥料のようにすぐに無機化されて施用後1か月以内に肥効を発揮する速効性窒素成分(基肥に相当)と施用後1~3か月の間に無機化されて肥効を発揮する緩効性窒素成分(追肥に相当)が評価できます。

1)堆肥試料の採取・抽出・希釈

<試料の採取・調製>①堆肥は乾燥している表面を除いて数か所から分取し、よく混合してその一部を試料とする。②水分が多い場合(70%以上)は、風乾しほぐして均一にする。③窒素分析には、アンモニアの揮散があるので現物試料(水分40~50%)を用いるのがよい。④簡易デタージェント分析には風乾してミル等で粉砕した試料を用いる。

<水分の測定>①乾物あたりの肥料成分量を求めるため乾物率を測定する。②堆肥試料10~50g(均一な場合10g、通常30g、現物で不均一な場合50g)をアルミ皿等に入れ105℃で一夜乾燥させて重量変化を測定する。

乾物率(%)=乾燥重量÷未乾燥重量×100 水分(%)=100-乾物率(%)乾物重量(g) =試料重量×乾物率÷100 試料水分量(g) =試料重量-乾物重量

○水分補正値=(50+試料水分量)÷50×5÷乾物重量・・・・抽出液50mlの場合

<無機成分の抽出・希釈>牛糞と豚糞堆肥は簡便法として0.5M塩酸による抽出を行います。これにより、ほぼ全量のNO3-N、

P2O5、K2O、CaO MgOと可給態のNH4-Nが抽出できます。抽出窒素の総量は、30℃4週培養窒素量の代替として1か月以内に肥効のある可給態窒素量に相当します。

鶏糞堆肥はアンモニウムイオン、リン酸マグネシウムアンモニウム、尿酸アンモニウムが含まれます。0.5M塩酸抽出では尿酸アンモニウムはうまく抽出できないので、別途酢酸緩衝液抽出を行って下式で尿酸態窒素量を推定します(無機態窒素の総量は0.5M塩酸抽出アンモニア態窒素+推定尿酸態窒素量→鶏糞は硝酸態窒素はないので測定不要)。

尿酸態窒素 =(塩酸抽出アンモニア態窒素 - 酢酸緩衝液抽出アンモニア態窒素)× 4.7- 2

堆肥抽出液のつくり方

0.5M塩酸:濃塩酸43.5mlに水を加えて1Lとする。(市販の5M塩酸を10倍にしても良い)

酢酸緩衝液:水約800ml に酢酸(液体)20gを入れ、無水酢酸ナトリウム54.7g(または酢酸ナトリウム3水和物90.7g)を入れて溶かした後、1Lとする。

①堆肥試料5g(水分の多い場合は10g)を100mlのポリ瓶にとる。②0.5M塩酸を50ml加えて1時間振とうする(発泡する場合は15分ほど静置する)。③ろ過する(ろ紙№5B、6)。ろ液は5ml程度あればよい。④各測定成分に合わせて希釈する。

★鶏糞堆肥は0.5M塩酸に替えて酢酸緩衝液を入れたものも実施する。

全農式測定による希釈率の目安

測 定 成 分堆肥の種類

NH4-N NO3-N P2O5 K2O CaO MgO

牛糞堆肥 50倍 20倍 20倍 20倍 20倍 20倍

豚糞堆肥 100倍 20倍 20倍 20倍 20倍 20倍

鶏糞堆肥 100倍 測定不要 50倍 20倍 20倍 20倍

測定可能範囲(mg/l) 0~10 0~200 0~20 0~100 0~300 0~100

(希釈の例・・・20倍希釈:試料2mlに純水38mlを加える。50倍希釈:20倍希釈液8mlに純水12mlを加える。100倍希釈:20倍希釈液5mlに純水20mlを加える。)

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2)無機成分の測定(全農式)

<アンモニア態窒素( NH4-N)の測定>①希釈した試料液0.5mlを試験管にとる。②同様にブランク(純水)と標準液(3mg/L)も以降同様に操作する。③純水2mlを加える。④発色試薬Aを1ml、発色試薬Bを1ml、を加え、軽く振り混ぜた後、20分間静置する。⑤分光光度計(波長610nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:2時間)。

濃度計算

標準液(3mg/L)の吸光度は0.25程度アンモニア含量(NH4-Nmg/100g)=3÷標準液の吸光度×試料の吸光度×希釈率×水分補正値

<硝酸態窒素(NO3-N)の測定>①試料液0.2mlを100mlのポリ瓶に入れる。②同様にブランク(純水)と標準液(100mg/L)も以降同じ操作をする。③還元試薬Aを8mlと還元試薬Bを1g程度加え、15分間振とうする。④還元上澄み液1mlを試験管にとる。純水5mlを加える。⑤発色試薬0.5mlを加え、軽く振り混ぜた後、10分間静置する。⑥分光光度計(波長530nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:5時間)。

濃度計算

標準液(100mg/L)の吸光度は0.5程度硝酸含量(NO3-Nmg/100g)=100÷標準液の吸光度×試料の吸光度×希釈率×水分補正値

<リン酸(P2O5)の測定>①試料液0.5mlを試験管にとる。純水4.5mlを加える。②試料液の代わりに純水5mlと標準液(5mg/L)5mlを以降同様に操作する。③発色試薬0.5mlを加え、軽く振り混ぜた後、10分間静置する。④分光光度計(波長610nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:24時間)。

濃度計算

標準液(5mg/L)の吸光度は0.7程度リン酸含量(P2O5mg/100g)=50÷標準液の吸光度×試料の吸光度×希釈率×水分補正値

<カリ(K2O)の測定>①希釈試料液0.2mlを試験管にとる。同様にブランク、標準液用も純水を0.2mlとる。②試料、ブランクに純水1mlを加える。標準液は50mg/Lを1mlとる。③発色試薬Aを1mlを加えて混ぜた後、5分間静置する。④発色試薬Bを1mlを加えて混ぜた後、15分間静置する。⑤純水2mlを加えて混ぜる⑥すみやかに分光光度計(波長530nm)で吸光度を測定する(直ちに測定)。

濃度計算

標準液(50mg/L)の吸光度は0.75程度カリ含量(K2Omg/100g)=250÷標準液の吸光度×試料の吸光度×希釈率×水分補正値

<石灰(CaO)の測定>①発色試薬5mlを試験管にとる。②希釈試料液0.2mlを加える。③ブランク(ブランク用試薬)、標準液(150ppm)も同様にとる。④混ぜた後、5分間静置する。⑤分光光度計(波長530nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:2時間)。

濃度計算

標準液(150mg/L)の吸光度は0.3程度石灰含量(CaOmg/100g)=150÷標準液の吸光度×試料の吸光度×希釈率×水分補正値

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<苦土(MgO)の測定>①発色試薬5mlを試験管にとる。②希釈試料液0.2mlを加える。③ブランク(ブランク用試薬)、標準液(30ppm)も同様にとる。④混ぜた後、20分間静置する。⑤分光光度計(波長470nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:6時間)。

濃度計算

標準液(30mg/L)の吸光度は0.35程度苦土含量(MgOmg/100g)=30÷標準液の吸光度×試料の吸光度×希釈率×水分補正値

標準液のつくり方

NH4-N 3 mg/L:硫酸アンモニウム0.427gを溶かして1L。3mlとって純水97mlに混合。NO3-N 100 mg/L:硝酸カリウム0.772gを溶かして1Lとする。P2O5 5 mg/L:市販標準原液(P 1,000ppm)を1mlとり蒸留水457mlに混ぜる。K2O 50 mg/L:市販標準原液(K 1,000ppm)を10mlとり蒸留水231mlに混ぜる。CaO 150 mg/L:市販標準原液(Ca 1,000ppm)を3mlとり蒸留水25mlに混ぜる。MgO 30 mg/L:市販標準原液(Mg 1,000ppm)を2mlとり蒸留水109mlに混ぜる。

3)無機成分の測定(RQフレックス)

RQフレックスを用いても測定できます。ただし、測定範囲と成分表示方法が異なるので希釈率と成分換算に注意が必要です。なお、KとMgの測定はセルタイプのRQフレックスプラスです。

RQフレックス測定による希釈率の目安

測 定 成 分堆肥の種類

NH4 NO3 PO4 K Ca Mg

牛糞堆肥 2.5倍 20倍 50倍 200倍 100倍 20倍

豚糞堆肥 10倍 20倍 100倍 200倍 200倍 50倍

鶏糞堆肥 20倍 測定不要 200倍 200倍 200倍 50倍

測定可能範囲(mg/l) 20~100 5~225 5~120 1~25 2.5 ~45 5~45(25)

注1)RQフレックスによるK、Mgの測定はセル発色タイプのRQフレックスプラスで行う。LoまたはHi表示は希釈を見直す(Mgは5~25mg/lの範囲とする)。

注2)それぞれ成分表示が異なるので肥料成分への換算と常法への補正値は以下のようにする。NH4-N = NH4×0.777×1.1NO3-N = NO3×0.226×1.1P2O5 = PO4×0.747×1.1K2O = K ×1.205×0.85CaO = Ca ×1.399MgO = Mg ×1.658

濃度計算

成分含有量(mg/100g)=測定表示値×希釈率×水分補正値(kg/t乾物)=測定表示値×希釈率×水分補正値÷100(%) =測定表示値×希釈率×水分補正値÷1000

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4)緩効性窒素の分析

堆肥から有効化する窒素量を把握するには、長期間の培養を行い無機化窒素の増減を測って求めています。簡便法としていろいろな試薬で抽出する方法が開発されていますが、その中で簡易デタージェント分析(AD分析)は、比較的容易に測定でき、基肥や追肥窒素の調整に活用できる方法です。

AD分析は飼料分析を応用して、牛糞堆肥・豚糞堆肥を酸性デタージェント溶液で煮て、堆肥中の比較的分解し易い有機物であるAD可溶有機物含量(ADOM)を抽出・測定します。

その結果、AD可溶有機物含量が250mg/g未満の場合は、緩効性の窒素成分がほとんどないので、0.5N塩酸抽出で測定した無機態窒素含量をもって1か月以内に効く窒素量として基肥窒素の削減に活用します。

250mg/g以上の場合は、抽出液に含まれる窒素(AD可溶窒素=AD可溶有機物に含まれる窒素+無機態窒素)の量を測定し、1~3か月に効く窒素量を算出します。この量を参考にして追肥窒素の削減等に役立てます。

図 家畜糞堆肥の窒素評価法の概要(石岡ら,2009を一部改変)

<酸性デタージェント溶液での抽出>①風乾粉砕した堆肥試料1.5gをジャム瓶(広口 225mL・径80mm × 高さ 80mm程度、内

側の底に溝の無いもの) にとる。未風乾試料の場合は乾物1.5g相当量をとる。②0.2AD液150mlを加える。まず、50ml程度をジャム瓶に入れ、軽く混和する。(小型瓶の場合は堆肥試料0.75gに0.2AD液75mlでもよい)。③残りの0.2AD液をジャム瓶に加え、蓋をしっかり締めて、中敷きをした圧力鍋に入れる。④ジャム瓶の肩口くらいまで注水し、強火で加熱する。⑤蒸気が出始めたら、重りの動きが止まらない程度の弱火に落とし、30分間加熱する。⑥加熱終了後、10分程度放冷する(室温になるまで放置しても構わない)。⑦ジャム瓶を取り出し、10分程度放冷する。⑧三角フラスコにロートを取り付け、ろ過する(ろ紙№5B、6)。⑨ろ液20mL程度を保存用の蓋付き容器に取る。

抽出液のつくり方

酸性デタージェント溶液(0.2AD液):水973gに濃硫酸28mL、臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム4.0gを加えて溶かす(洗剤液のようなもので溶けにくい。常温保存可能)。

<AD可溶有機物量の推定>(CODパックテスト)

簡便法として水質検査のCOD測定に用いるパックテスト(低濃度用)で、有機物含量が250mg/g未満か以上かの判定を行う。

①希釈水は蒸留水を用いる(あらかじめ希釈に使う水のCODが0であることを確認しておく)。②100mlのビーカーに抽出液を0.1mlとる。③希釈水を入れよく混ぜる(乾物試料1.5gにつき750倍希釈になるように下式で量を算出する)。

希釈水の量=750×現物重×乾物率÷100÷1.5×0.1

④パックテストチューブ先端のラインを引き抜く。⑤ラインの抜けた穴を上にして指でチューブをつぶし、空気を抜く。⑥希釈液にチューブの穴のある側を浸し、チューブをつぶす力を緩める。⑦希釈液が吸い込まれる(液量は1.5mL程度)。同時にストップウォッチをスタートさせる。⑧軽く5~6回振り混ぜ、静置する。⑨測定待ち時間の途中、1回振り混ぜる(測定待ち時間4~6分間:説明書を参照)。⑩時間がきたら、パックテスト付属の標準色と比較しCODの値を求める(中間の色の場合、

中間の値を測定値とする)。

注)この方法は色の判別がやや難しいので、2連以上で行う。

CODが5以下の場合・・・・・AD可溶有機物量は250mg/g未満なので緩効性窒素量は無視よって、AD可溶窒素の測定は不要

CODが6以上の場合・・・・・AD可溶有機物量は乾物あたり250mg/g以上AD可溶窒素量を測定して緩効性窒素量を算出する。

牛糞・豚糞堆肥

AD可溶性有機物含量を測定

250mg/g未満 250mg/g以上

緩効性窒素は無視できる速効成分のみを測定

緩効性窒素は無視できない速効と緩効成分を測定

1か月以内に効く量を算出

基肥窒素の削減量がわかる

1~3月間に効く量を算出

追肥窒素の削減量がわかる

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<窒素有機化量の推定>パックテストの値を用い、窒素有機化量を求める。

CODの値と窒素有機化量

CODの値 窒素有機化量

5以下 なし

6, 7 3

8以上 5

(密閉縦型密閉豚ぷん堆肥) 6

<AD可溶窒素の測定>

AD可溶窒素は、0.2AD 液での抽出液にペルオキソ二硫酸カリウムを加えて加熱し、溶液に含まれる有機態窒素やアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変えた後に測定し定量します。0.2AD液自体にも窒素(臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム中の窒素)が含まれるので、0.2AD 液も同様に処理し、そこに含まれる窒素を差し引く必要があります。

ペルオキソ分解用溶液のつくり方

ホウ酸3.0g、水酸化ナトリウム1.5g を100mLの水に溶かした後、ペルオキソ二硫酸カリウム 5.0g を溶かす。1 試料に5.0mL使う。溶液は保存できないので必要な量を調製する。

①蓋付きガラス容器に0.2AD液による試料抽出液0.2mLとり、純水4.8mLを加える(25倍希釈)。②0.2AD液(試料を入れてないもの)0.2mLとり、純水4.8mLを加える(3反復)。③ブランクと標準液(硝酸態窒素100mg/L)を0と1mLとり、それぞれ純水5と4mLを加える(2反復)。④すべてにペルオキソ分解用溶液5.0mLを加える。⑤蓋をして立てたまま容器に入れ、圧力鍋に入れて液面くらいまで注水する。⑥強火で加熱し、蒸気が出始めたら、重りの動きが止まらない程度の弱火に落とし、10分間加熱する。⑦加熱終了後、10分程度放冷する(あらかじめ液面に印を付けておき液量が同じことを確認する)。

注)蓋付きガラス容器は市販のドリンク剤の空き容器で代用しても良い

<硝酸態窒素濃度の測定(RQフレックス)>

①試験紙(NO3低濃度タイプ3~90mg/L)を用いて分解液の硝酸濃度を測定する。②測定値から検量線を作成して関係式から試料分解液の窒素濃度を求める。

濃度計算

分解液のブランクB、標準液は濃度として0、N10mg/L(NO3 44.2mg/L)に相当する。0.2AD液の分解液はN3mg/L(NO3 13.3mg/L)に相当する。

抽出分解液の硝酸態窒素濃度(mg/L)=10÷(標準液の測定値-B)×(試料の測定値-B)

<硝酸態窒素濃度の測定(全農式)>

①分解液2mlを100mlのポリ瓶に入れる。・・・(注:無機態成分測定時の0.2mlでなく2ml)②還元試薬Aを8mlと還元試薬Bを1g程度加え、15分間振とうする。③還元上澄み液1mlを試験管にとる。純水5mlを加える。④発色試薬0.5mlを加え、軽く振り混ぜた後、10分間静置する。⑤分光光度計(波長530nm)で吸光度を測定する(発色安定時間:5時間)。

濃度計算

分解液のブランク、標準液は濃度として0、N10mg/L(NO3 44.2mg/L)に相当する。0.2AD液の分解液はN3mg/L(NO3 13.3mg/L)に相当する。

抽出分解液の硝酸態窒素濃度(mg/L)=10÷(標準液の測定値)×(試料の測定値)

AD可溶窒素の計算

AD可溶窒素量(kg/t乾物)=(抽出分解液の硝酸態窒素濃度-0.2AD液反応液の硝酸態窒素濃度)×2× 25 × 150 ÷(抽出に使った堆肥の重量 × 乾物率 × 1000)

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<速効性窒素と緩効性窒素の算出方法>

得られた分析結果を基に、堆肥の種類毎に下表に従って速効性窒素量と緩効性窒素量を算出する。なお、結果の利用にあたっては現物換算値を用いて施肥の増減の参考として活用する。

0.5M塩酸抽出の無機態窒素量から★ 最少窒素量とは

有機化量(パックテストによる数値)を引いた値

AD可溶窒素の半量から補正として2.5を引き、さらに最★30日目窒素無機化量とは 少窒素量を引いた値に、地域の時期別表から読み取った

30日の地温係数(鳥取の場合は0.36)を乗じたもの。

AD可溶窒素の半量から補正として2.5を引き、さらに最★90日目窒素無機化量とは 少窒素量を引いた値に、地域の時期別表から読み取った

90日の地温係数(鳥取の場合は0.89)を乗じたもの。

豚糞堆肥で速効性、緩効性の窒素量を推定する場合は

分析手順にそって測定結果を入力すると算出結果を表示する表計算シートもありますので活用してください

速効性窒素(1か月以内に放出される無機態窒素)

緩効性窒素(1~3か月に放出される無機態窒素)

AD可溶有機物<250 ㎎/g堆肥乾物 0.5M塩酸抽出無機態窒素 微量なので考慮しない

C/N比<18 0.5M塩酸抽出無機態窒素夏期は0.5×AD可溶窒素-2.5-速効性窒素 (㎏N/トン堆肥乾物) (地温で変化)

C/N比≧180.5M塩酸抽出無機態窒素-2

(㎏N/トン堆肥乾物) 微量なので考慮しない

0.5M塩酸抽出無機態窒素 微量なので考慮しない

最少窒素量(0.5M塩酸抽出無機態窒素-AD可溶有機物×0.02+3)+30日目窒素無機化量(30日目の地温係数×(0.5×AD可溶窒素-2.5-最少窒素量))

最少窒素量+90日目窒素無機化量(90日目の地温係数×(0.5×AD可溶窒素-2.5-最少窒素量))-30日目窒素無機化量

鶏ふん堆肥(副資材なし) 2 (㎏N/トン堆肥乾物)0.5M塩酸抽出と酢酸緩衝液抽出による

アンモニウム態窒素から推定

表 家畜ふん堆肥の速効性窒素と緩効性窒素の算出方法(マニュアル作成委員会、2009を改変)(中央農業研究センター 資源循環 ・溶脱低減研究チーム http://taihi.dc.affrc.go.jp/doc/より)

牛ふん堆肥

豚ぷん堆肥

AD可溶有機物≧250 ㎎/g堆肥乾物

AD可溶有機物<250 ㎎/g堆肥乾物

AD可溶有機物≧250 ㎎/g堆肥乾物

堆肥分類

地区

施用日 30日後 60日後 90日後

1/1 0.11 0.23 0.34

2/1 0.12 0.26 0.41

3/1 0.14 0.32 0.52

4/1 0.20 0.43 0.66

5/1 0.28 0.55 0.79

6/1 0.36 0.66 0.89

7/1 0.42 0.75 0.93

8/1 0.49 0.77 0.89

9/1 0.46 0.66 0.75

10/1 0.31 0.47 0.55

11/1 0.20 0.32 0.40

12/1 0.14 0.24 0.34

中国・近畿(広島県福山市)

地温係数の例

地温から算出された係数を使って計算する

(速効性は30日、緩効性は90日の係数を選ぶ)

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サンプル名: 種別 牛 C/N

分析者:

1-(2) 乾物率 g g

10.32 g g

5.87 g g

3-(1) 塩酸抽出 10 g 抽出液量: 50 mL

RQの場合は示度

測定反復がある場合に記入

3-(3) アンモニア測定 100 倍; 吸光度: 0.024

スタンダード(水) 0 ppm 吸光度: 0.000

スタンダード(NH4-N) 3 ppm 吸光度: 0.230

3-(4) 硝酸測定 20 倍; 吸光度: 38.7

(RQフレックスでも可) スタンダード(NO3-N) 12.5 ppm 吸光度: 52.0

3-(5) リン酸測定 20 倍; 吸光度: 1.084

スタンダード(P2O5) 5 ppm 吸光度: 0.644

3-(6) カリウム測定 20 倍; 吸光度: 0.201

スタンダード(K2O) 50 ppm 吸光度: 0.233

3-(7)カルシウム測定 20 倍; 吸光度: 0.429

スタンダード(CaO) 150 ppm 吸光度: 0.317

3-(8) マグネシウム測定 20 倍; 吸光度: 0.621

スタンダード(MgO) 30 ppm 吸光度: 0.350

4-(2) デタージェント抽出 3.00 g 乾物率(%) 56.9

4-(3) PAKテスト(COD(D)) 0.10 mL 読み: 4 4

85 mL

希釈倍率を別のシートで計算した場合、直接入力する

4-(5) AD可溶窒素(硝酸) 吸光度: 12.000 10.000

デタージェント溶液 吸光度: 3.000 4.000

(4反復) 3.000

スタンダード(NO3-N) 0 ppm 吸光度: 0.000 0.000

12.5 ppm 吸光度: 35.000 34.000

ppm 吸光度:

ppm 吸光度:

6以上の場合AD可溶窒素測定

風乾後に抽出した場合、風乾物の乾物率を入力する

容器重量(A):

容器+堆肥重量(B):

分析日: 2010 年11月 9

測定反復がある場合に記入

△△普及所 □□

(RQフレックスでも可)

サンプル

抽出液+水:

希釈倍率:

希釈倍率:

希釈倍率:

試料重量:

希釈倍率:

データ計算用シート(牛ふん堆肥専用)

試料重量:

抽出液:

希釈倍率:

容器+乾燥堆肥重量(C):

希釈倍率:

○○堆肥

乾物率の測定採取重量を入れる

通常は10g 50mL

ブランクは0とするか記入不要

ブランクは0とするか記入不要

希釈液量を入れる

2連用の入力セル未記入でもOK

希釈倍率と吸光度(RQの場合は示度)を入れる

わかるものは入力

NO3-N, ppm

抽出液中の窒素 3.99 2.78

0.2AD中の窒素 1.21

検量線

傾き 2.76 12.2

切片 0.00

corr 1.0000

抽出液中の窒素(AD分差し引き), NO3-N, ppm

AD可溶窒素, mg/g・乾物

検量線をもとに濃度計算します

サンプル名: 種別: 牛 C/N

分析者: 0

速効性 緩効性

(%)

43.1 1.2 0.0 9.1 23.4 22.1 5.8

緩効性窒素がマイナスになった場合は0にして下さい

速効性 緩効性

(%)

43.1 2.1 0.0 16.1 41.2 38.8 10.2

緩効性窒素がマイナスになった場合は0にして下さい

リン酸

--------- kg/ton 乾物 ---------

分析日: 2010 年11月 9日

石灰 苦土

現物あたりの肥料成分供給量

乾物あたりの肥料成分供給量

水分量窒素

△△普及所 □□

カリ

分析結果シート(牛ふん堆肥専用)

窒素

--------- kg/ton 現物 ---------

水分量 リン酸 カリ 石灰 苦土

○○堆肥

入力すると堆肥毎に

現物あたりと乾物あたりで

計算結果を自動表示します!

AD可溶性窒素量は

検量線から計算します!

牛糞、豚糞、鶏糞用の

専用シートがあります

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<測定結果からの算出例>

下表のような結果が出た場合の速効性窒素量と緩効性窒素量の算出方法は以下のようです。

測 定 結 果

NH4-N NO3-N 無機N パックテスト AD可溶性窒素量堆肥の種類 C/N

kg/t乾物 kg/t乾物 kg/t乾物 示度 mg/g乾物

牛糞堆肥A 23 0.14 1.43 1.57 4.5 -

牛糞堆肥B 15 0.05 0.37 0.42 6.0 11.3

牛糞堆肥C 33 3.41 0.52 3.93 5.5 8.8

豚糞堆肥 12 4.89 0.65 5.54 8以上 45.8

鶏糞堆肥 8 10.56 (8.23) 18.78 - -

牛糞堆肥Aは0.5M塩酸抽出窒素量が1.57kg/t乾物であった。パックテストは4.5となったのでAD可溶性有機物250mg未満で窒素の取り込みや放出に影響はないと予想される。よって、1か月以内に効く速効性窒素は、無機態窒素だけの1.57kg/t乾物と見込まれる。また、1~3か月に効く緩効性窒素量は考慮が不要なほど微量と予想される。

牛糞堆肥Bは0.5M塩酸抽出窒素量が0.42kg/t乾物であった。パックテストは6となったので、AD可溶性有機物が250mg以上で分解しやすい成分があると予想される。しかし、C/Nが15と低くいので有機化は考慮しなくてもよく0.5M塩酸抽出無機態窒素量の0.42kg/tが1か月以内に効く速効性窒素量として算出される。AD可溶性窒素量は11.3mg/g乾物だったので相当する換算式から、1~3か月に効く緩効性窒素量は2.73kg/t乾物(0.5×11.3-2.5-0.42)と見込まれる。

牛糞堆肥Cは0.5M塩酸抽出窒素量が3.93kg/t乾物であった。パックテストは5.5でAD可溶性有機物は250mg以上で分解しやすい成分が多少あると予想される。C/Nは33と高いので有機化を考慮して0.5M塩酸抽出無機態窒素量の3.93kg/tから2を引いた値の1.93kg/tが1か月以内に効く速効性窒素量と考えられる。また、1~3か月に効く緩効性窒素量は有機化により微量と予想される。ちなみにAD可溶性窒素量測定結果は8.8mg/g乾物だったので、相当する換算式から、-2.03kg/t乾物(0.5×8.8-2.5-3.93)となり、負となるので窒素発現は見込めない。

豚糞堆肥は0.5M塩酸抽出窒素量が5.54kg/t乾物であった。パックテストは8以上だったのでAD有機物含量が250mg以上と予想される。1か月以内に効く速効性窒素は、有機化等を考慮して推定式から算出する。最少窒素量は、パックテストから有機化量を5として0.54kg/t乾物(5.54-5)となる。さらに30日目窒素無機化量は地温係数を0.36として7.15kg/t乾物(0.36×(0.5×45.8-2.5-0.54))となり、合計7.69kg/t乾物が1か月以内に効く速効性窒素量と見込まれる。1~3か月に効く緩効性窒素量は、地温係数を0.89として17.7kg/t乾物(0.89×(0.5×45.8-2.5-0.54))と算出され、最少窒素量を加え30日目の無機化量を引いて11.1kg/t乾物(0.54+17.7-7.15)と見込まれる。

鶏糞堆肥(副資材なし)は無機態窒素として0.5M塩酸抽出窒素量のアンモニア態10.56kg/tと酢酸緩衝液抽出のアンモニア態窒素8.23kg/tから推定した尿酸態窒素8.95kg/t((10.56-8.23)× 4.7 - 2)の合計値18.78kg/tが1か月以内に効く速効性窒素と見込まれる(簡易的に全窒素(乾物%)×全窒素(乾物%)-2を便宜的に使っても良い)。また、1~3か月に効く緩効性窒素量は鶏糞の場合は一律2kg/tとして扱う。

算 出 結 果

速効性窒素量(kg/t乾物) 緩効性窒素量 (kg/t乾物)堆肥の種類

1か月以内に効く無機態窒素量 1~3か月に効く無機態窒素量

牛糞堆肥A 1.6 微量

牛糞堆肥B 0.4 2.7

牛糞堆肥C 1.9 微量

豚糞堆肥 7.7 11.1

鶏糞堆肥 18.9 2