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平成 20 年度 円借款案件形成等調査 「アンゴラ・ナミベ港開発計画調査」 (アンゴラ) 報告書要約 平成 21 3 株式会社日本港湾コンサルタント 豊田通商株式会社

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平成 20 年度

円借款案件形成等調査

「アンゴラ・ナミベ港開発計画調査」

(アンゴラ)

報告書要約

平成 21 年 3 月

株式会社日本港湾コンサルタント

豊田通商株式会社

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第1章 相手国、セクターの概要

(1)アンゴラ国の地勢・社会的背景

アンゴラは約 125万平方キロの国土でアフリカの南西に位置し、大西洋に面する海岸は

1,600 kmに及ぶ。人口は約 1,600万人と推計され、そのうちの 34%は首都圏のルアンダに

居住している。人口規模ではサハラ以南のアフリカの国の中では、コンゴ民主共和国とス

ーダンに次いで大きな国である。構成人口の特徴は若年層が厚いことであり、それゆえ人

口増加率は 2.9%と高い。

アンゴラはかつて農業が盛んで、サブサハラでは食料輸出国として世界に知られていた。

2002年の内戦終結後マクロ経済の安定化とインフラの復興に力を入れてきた。しかし経済

の中心は依然として石油の産出に依存しており、これにダイヤモンドが加わると GDPの約

3分の 2、総輸出額の 92%、税収の 80%近くを石油・資源関連産業が占める状況にある。

アンゴラの実質 GDP平均成長率は近年 27% で、一方インフレは内戦終結の翌年には 300%

を越える水準にまで上昇したものが、2006年には 12.2%にまで下がり、マクロ経済が安定

化してきている。 マクロ経済政策とともに、貧困対策もアンゴラの重要な課題である。一

人当たり GDP は 2007年に約 3,767ドルであるが、都市部の人口の 3分の 2は貧困ライン

である一日あたり収入 1.07ドル以下、うち 28%相当の人口は絶対貧困ラインである 0.7ド

ル以下の生活である。

(2)プロジェクトの対象セクター:港湾海運の概要

アフリカを対象としたコンテナ貨物は近年大幅な成長を見せているが、中でもヨーロッ

パとの交易の増大が際立っており、アフリカ全体の貨物流動の約 50%を占めている。コン

テナ貨物の輸出入動向をみると輸入が輸出を大きく上回っている傾向が見られる。アンゴ

ラにおいてはこの傾向はいっそう強いと考えられ、輸出型産業の進展はまだ先のことと考

えられることから、輸入中心の貨物構成は今後も当分は変化しないと考えられる。

図1-1 アフリカのコンテナ貨物動向 (単位,000TEU)

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アンゴラには4つの主要商業港が存在する。ルアンダ、ロビト、ナミベ、カビンダであ

る。これらのうち下表に示すように最初の3港湾においてコンテナが取り扱われているが、

その量はルアンダが群を抜いて多く、90%のコンテナ貨物が扱われている。

表1-1 アンゴラの港湾におけるコンテナ取扱量 (box)

ルアンダ港では極度の待船状況が発生しており、平均バース待ち日数は 25日、またバー

スでの着岸時間も約8日であり、アジアや西アフリカの港湾と比較しても状況が深刻であ

る。その原因はヤードからコンテナが引き取られないために、岸壁での荷役が1時間に 10

個以下と効率が低いこと、倉庫不足のために港湾から貨物を引き取ることができない状況

などが背景にある。ナミベ港にはまだ大量の貨物がないので待船は少ないが、適切なクレ

ーンがないため貨物の積み下ろしには時間がかかっている。JICA無償による復興作業が計

画されているので、完成後は能力が増強されることと考えられる。

(3)対象地域の状況

ナミベ州内の道路、全長 2,182km のうち、幹線道路5路線、529km がアスファルト舗装

された道路であり、その他の2次幹線以下の道路は簡易舗装か未舗装の状態にある。

ナミベ港の背後圏はモサメデス鉄道の沿線に位置するナミベ、ウイラ、キュネネ、クア

ンドクバンゴの4州である。4州の土地面積は 42万 km2、国土面積の 32.8 %を占めてい

る。背後圏4州の人口は 2005 年で約 2.4 百万人、全国人口の 15.5 %に相当する。人口増

加率 15.5 %は全国平均とほぼ同じとなっている。4州の中で最大の人口を抱えているのは

ウイラ州で、1.2百万人である。ナミベ州は人口が最小で、約 30万人である。

表1-2港湾背後圏の土地面積と人口

項目 面積(㎢)

人口(千人)

1995 2000 2005 成長率

(2005/2000)

全国計 1278305 11,350.5 13,139.0 15,252.0 1.161

背後圏 4州計 419530 1,780.4 2,062.1 2,368.7 1.149

全国値に対するシェア 32.8% 15.7% 15.7% 15.5%

港名 2002 2003 2004 2005 2006 2007

ルアンダ 191,750 207,096 222,442 237,788 253,134 268,480

ロビト 30,924 23,909 28,950 25,954 24,967 23,980

ナミベ 3,784 4,273 6,158 8,096 10,966 13,192

計 226,458 235,278 257,550 271,838 289,067 305,652

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背後圏4州は、いまの所ビジネスが活発におこなわれている状況ではない。しかし漁業

活動は全国の中でもナミベにおいて最も盛んである。州の漁業生産高は 2007 年実績で約

16,000トンである。農業活動は4州の中ではウイラ州で園芸、果樹と野菜、穀物、根菜類

及び牧畜などが盛んに行なわれている。ナミベ州とキュネネ州では小規模な耕作地の開発

が行なわれている。またウイラ州には多くの製造業が立地しており、その数はルアンダ、

ベングエラ州に続き、全国で3番目に多い。

ナミベ港の入港船舶席数は毎月 20隻前後である。船舶の種類としてはコンテナ船、在来船

(Ro/Ro船含む)及び油・ガスタンカーがそれぞれ 1/3の構成となっており、2/3が商業港、

1/3 がサコマルを利用している。ウォルビスベイ港とはコンテナのフィーダサービス、ま

たロビト港とはコンテナのシャトルサービスが行なわれている。長距離サービスのコンテ

ナ船はシンガポール、リスボンからである。コンテナ船および在来船の多くは西アフリカ

向けである。油・ガスタンカーに関しては、大部分が国内での動きである。

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第2章 調査方法

(1)調査内容

本調査の内容は以下に示すとおりである。

1. 新コンテナターミナルの建設に関する調査

コンテナ貨物の需要予測、船舶動向調査、自然条件調査、環境調査等の結果をもとに、

技術面、経済性、将来性、環境面について、新コンテナターミナル建設プロジェクトの実

行可能性を検討する

2. 既存のサコマル港鉄鉱石積出桟橋の復旧に関する調査

既存の桟橋及び積出荷役機械の老朽度について、目視による現地調査を実施し、それら

の補修の可能性と妥当性、新規建設との比較検討を行ったうえで、サコマル港復旧計画案

を提案する。

(2)調査方法・体制

1. 調査方法

主要項目の調査方法をフロー図に示す。

図2-1 調査フロー図

2. 調査の実施体制

本調査団は、港湾開発プロジェクトの計画・設計・施工管理を専門とする㈱日本港湾コ

ンサルタントと、アンゴラ国内に営業拠点を置き、同国のインフラ開発事情に精通する豊

田通商㈱により選抜された総括者とそれぞれの分野を分担する専門家の合計 12 名により

実施された。

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(3)調査スケジュール

本調査は、下記3回の現地調査を含む約5ヶ月間(2008年8月 29日から 2009年1月 30

日)に実施された。

現地調査-1(2008年9月 18日から 10月 11日): ルアンダ、ロビト、ナミベ

現地調査-2(2008年 11月 21日から 12月6日): ルアンダ、ナミベ

現地調査-3(2009年1月 16日から1月 26日): ルアンダ、ナミベ

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第3章 プロジェクトの内容および技術実行可能性

(1)プロジェクトの背景・必要性

アンゴラには大小様々な港湾が 20港存在するがその内6つが公共港である。コンテナ貨

物を扱う主要港湾であるルアンダ、ロビト、ナミベの3港の概要を示すと次表の通りであ

る。

表3-1 主要3港の概要

港湾

コンテナ貨物量

(千 TEU)

(2007)

岸壁延長 (m)

最大岸壁

水深

(m)

利用

開始

位置

ルアンダ 400.0

1950

(沖合いのターミナ

ルは含まず)

-10.5 1576 ルアンダ島によって外洋から遮蔽され

たルアンダ湾内に位置する自然港湾

ロビト 36*

1122

(タンカーターミナ

ルは含まず)

-10.6 1903 長さ 4.8kmの砂州によって形成された

ロビト湾内に位置する自然港湾

ナミベ 20*

680

(サコマル港の桟橋

は含まず)

-10.5 1958 ナミベ湾の南岸に位置する

注:* はコンテナボックス当たりの取扱個数を 1.5倍して推計した値である。

アンゴラの国家交通政策の中で示されている主要な目標は、全国の統合された交通ネッ

トワークを確立すること、SADCが提唱する地域輸送回廊との統合及び交通機関の経営の民

営化を促進することなどであり、港湾の開発政策もこれに沿って取組がなされている。

主要3港に対するアンゴラ政府の整備方針は次の通りである。

ルアンダ港: 既存ターミナルの民営化の継続、ルアンダ湾が手狭なことから、新規港湾

開発は現ルアンダ港外で対応、開発業者などの民間資金活用

ロビト港: アフリカ中部の東西回廊の拠点として育成。中国の支援によるインフラ整

備を期待。

ナミベ港: アンゴラ南部開発の拠点、内陸国、内陸地域の海の玄関口及び資源輸出基

地として育成。海外からの資金援助を期待。

ナミベ港はアンゴラ第三の港湾であり、アンゴラ南部地域開発の拠点港である。その一

方、現状の港湾施設は荷役を効率的に行なう上で不十分な状態に置かれている。我国無償

による緊急修復事業は地域経済を支える上で不可欠なものであるが、2010年の貨物需要を

目標として整備される予定である。ナミベ港の急激に増大する貨物量に対処するためには

2010年以降のできるだけ早い機会に新たなターミナルの整備が必要となる。

(2)相手国政府機関のプロジェクト実施内容に対する基本方針

アンゴラ運輸省はナミベ港の将来の機能と役割について下記の 3点を考えている。

- アンゴラ南部地域開発の拠点港

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- 内陸国及び隣国の内陸地域の海の玄関港

- 西アフリカ沿岸の中核的なトランシップ港湾

新ターミナルは上記で示した3つの役割を担うことを前提として規模を決定している。

西アフリカにおける海上交通のコンテナ化は今後さらに普及し、そのスピードが一層速ま

るものと考えられる。パナマックス級のコンテナ船はコンテナ貨物の増大にしたがって今

後更に西アフリカ沿岸に投入されることが予想される。海上コンテナ輸送は定時制を最も

重視する傾向にあり、一定レベルの荷役効率のもとに定時性が確保されなければならない。

このため荷役の効率と定時制を確保するため新ターミナルはコンテナ貨物専用にオペレー

ションされなければならない。

コンテナ船の多くは新ターミナルで運用され、既存のターミナルは雑貨と RO/RO貨物の

ターミナルとして運用される。石油製品などの液体貨物はサコマル地区で引き続き取扱わ

れる。将来サコマル港は鉄鉱石の積み出しが再開されることになるが、この地区は今後と

も鉄鉱石及び油・ガス等の大量のバラ貨物を扱うターミナルとして運営される。

図3-1 ターミナル別の将来の機能分担

(3)プロジェクトの計画概要

1.コンテナターミナルの建設計画

a. 需要予測

ベースカーゴとして消費物資や経済成長に伴う貨物の増加と、トランシップメントなど

港湾の容量に誘引されて発生する貨物などさまざまな条件を総合すると下記のように推計

される。他国の港湾のようにトランシップメント貨物に利便を図り、事業者の活動を活性

化する方向で法改正を近代化することも経済発展のために重要と考えられる。

商業港

サコマル港

コンテナ

RO/RO

ドライバルク

雑貨

石油製品

ガス

商業港

RO/RO

ドライバルク

雑貨

コンテナ

石油製品

ガス

鉄鉱石

コンテナタ

ーミナル

サコマル港

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-

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030

表3-2 ナミベ港のコンテナ貨物需要予測

(TEU)

2015 2016 2018 2020 2025 2030

Laden-Import 20,421 97,893 157,275 243,981 592,477 585,157

Laden-Export 3,184 15,522 25,790 42,089 103,998 112,043

Empty 11,204 53,541 85,465 131,230 199,200 199,200

Transhipment 0 60,000 199,200 199,200 298,800 298,800

Total (TEU) 34,809 226,955 467,730 616,500 1,194,475 1,195,200

図3-2 コンテナ貨物の需要予測

b. 自然条件調査

ナミベ港湾公社でのインタビュー及び過去に実施されたJICA調査の報告書より得た

情報によれば、プロジェクト実施地域の自然条件の概要は以下のとおりである。

プロジェクト実施地域は、厳しい乾燥地帯に位置しており、近年の月平均降雨量は最大

でもわずかに 20 mm程度である。ナミベ湾の潮位変化は、大潮時の干潮と満潮でおよそ 1.2

mであり湾内の波浪は、SSW方向から吹く約 10 m/sの風により、常時 1.0 m程度に達して

いる。外洋から来襲するうねりは、岸壁に停泊する船舶を過度に動揺させる原因となって

いる。湾内の潮流は、南側と北側でそれぞれ 1.0 m/sと 2.0 m/s程度である。プロジェク

ト実施地域では、地震とサイクロンによる被害は報告されていない。

既存の港湾施設が位置するナミベ湾の北端と南端では、海岸線から約 MSL+30 mまで切り

立った風化岩の斜面が見られる。一方海底では、ナミベ湾の中心に水深が CDL-15 m から

-500 mまで変化する海溝と、湾口南側に水深が CDL-1.0 mの浅瀬が確認される。

トランシップメント

空コンテナ

輸出入コンテナ

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c. 計画条件

アフリカ地域と世界における将来の海運動向より、港湾の計画に考慮する船舶の形状は

以下のとおりとした。

- 船長:250 mから 280 m - 船幅:32.3 m

上記の船舶を受け入れ、効率的な港湾運営を行うため、新コンテナターミナルの必要規

模は以下のとおりとした。

- 岸壁延長:350 m - ターミナル奥行き:350 m

- 水深:CDL-14 m(将来 CDL-15 m) - 面積:12.3 ha

新コンテナターミナルの建設地点としての適性について、右の図に示す5地点を自然、

建設(技術)、運営、環境等の観点から比較・検討を行った。その結果、図に示す④の位置

が新コンテナターミナルの建設地点に最も適していると考えられる。

図3-3 建設候補地の選定地点

Namibe Port Saco Mar Port

Recommended Location

d. コンテナターミナルの設計条件

日本の港湾の施設の技術上の基準・同解説(2007年版)と PIANCの航路設計ガイドライン

に準拠し、港湾施設の概略設計を行った。

設計対象船舶として以下に示す船舶諸元を設定した。

- 船舶の種類:コンテナ船 - 積載量:4,000 TEU

- 排水トン数:50,000 DWT - 船長:274 m

- 船幅:32.3 m - 満載喫水:12.7 m

設計に用いた波浪条件は、JETRO調査団が数値シミュレーションを行い設定したが、

土質条件については既存のJICA調査報告書より推定した。

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e. 港湾施設配置計画

上述の諸条件を考慮し、港湾施設の配置を3期に分けて右図のとおり計画した。コンテ

ナターミナル前面の水域で、波高がコンテナ荷役作業の限界とされる 0.5 m以下となる日

数を、年間で 97.5 %以上確保するためには防波堤の建設が必要となる。コンテナターミナ

ルと陸域は渡橋によって結ばれる。

図3-4 港湾施設の段階別配置計画

第 III 期 第 II 期 第 I 期

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f. ターミナル配置計画

ターミナル内の施設配置を、運営効率、利便性を考慮し計画した。ターミナルは右図に

示すとおり、必要なコンテナ荷役機械と上屋を有している。基本的に、各ターミナル(各期)

には、2台の QCC(岸壁コンテナテナクレーン)と6台の RTG(ヤードコンテナクレーン)が配置

されている。

図3-5 ターミナルレイアウトのイメージ

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g. 港湾施設の概略設計

第I期で計画された港湾施設の概略設計を、下表と下図に示すとおり行った。設計上最

も重要な条件は、防波堤とコンテナ岸壁を比較的高い波浪条件において迅速に施工する必

用があることである。

各施設の構造形式は、事業の実施地域における建設材料の調達、現地の施工条件等を考

慮し、技術、経済性、環境面で最も優位なものを選択した。

表3-3 設計対象港湾施設

施設名称 構造形式

① コンテナ岸壁 (-14 m) プレハブ鋼矢板セル式

② 護岸 (1) 石材基礎+消波ブロック被覆式

③ 護岸 (2) 石材基礎式

④ 防波堤 石材基礎+ 消波ブロック被覆式

⑤ 渡橋 コンクリート単純桁+鋼管杭基礎式

⑥ アクセス道路 片側2車線+アスファルト舗装

図3-6 コンテナ岸壁(-14m)の標準断面

図3-7 護岸(1)の標準断面図

① コンテナ岸壁 (-14 m)

② 護岸 (1)

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図3-8 防波堤の標準断面図

h. 施工計画

コンテナターミナルは、下図に示すとおり、3期に分けて建設される。第 I、II、III

期はそれぞれ4、3、3年で完成する。

図3-9 建設スケジュール

項目 プロジェクト実施期

第 I 期 第 II 期 第 III 期

累積年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 10 年

1 詳細設計

2 工事入札

3 建設(第 I 期)

1) 防波堤

2) ターミナル

3) 渡橋

4) アクセス道路

5) 浚渫

6) コンテナ荷役機械

4 建設(第 II 期)

1) 防波堤

2) ターミナル

3) 浚渫

4) コンテナ荷役機械

5 建設(第 III 期)

1) 防波堤

2) ターミナル

3) 渡橋

4) アクセス道路

5) 浚渫

6) コンテナ荷役機械

④ 防波堤

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i. 建設及び調達費用

上述のコンテナターミナルの概略設計、施工計画をもとに、各期の施工、調達費の概略

積算を下表に示すとおり行った。表に示す金額は、10 %の予備費を含むが、税金、物価上

昇を含んでいない。

表3-4 建設工事費用及び機材等調達費用の概算

期 建設及び機材等調達費用

(百万円)

外貨・内貨の割合

外貨 内貨

Ⅰ 40,650 77% 23%

Ⅱ 23,164 79% 21%

Ⅲ 23,927 82% 18%

合計 87,741

日本からの調達が予想される鋼材(鋼矢板、鋼管)、ゴム防舷材 、鋼矢板用の FRP製カバ

ー、コンテナ荷役機器(QCC、RTG、トラックシャーシ)及び港湾オペレーション用のボート(タ

グ及びパイロットボート)は第Ⅰ、Ⅱ及びⅢ期で、それぞれの合計費用のうち 32%、47%及

び 51%を占める。

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2. サコマル港復旧調査

本調査の目的は、休止しているサコマル桟橋での鉄鉱石積み出しを再開するため、現存

施設の概略復旧計画を作成することである。調査の結果、2台のスタックリクレマ、1台

のシップローダー、ベルトコンベアを含む全ての既存の荷役運搬設備は老朽化が著しく、

新しい設備と入れ替える必用があり、既存桟橋はその前面に新しい桟橋を建設することが

望ましいことが明らかとなった。

新桟橋の建設案を下図に示す。

図3-10 復旧方法の概略図(対象船舶 200,000DWT)

配置一般図

標準断面図

200,000 DWT 鉱石運搬船

新桟橋

新桟橋

200,000 DWT 鉱石運搬船 15,000 DWT 油類運搬船

シップローダー軌道

既設桟橋

既設桟橋

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復旧工事は、下図に示すとおり、2年間で完了する。

表3-5 復旧スケジュール

工 種 1年目 2年目

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24

1. 既設構造物撤去工

2. 既設桟橋補修・補強工

3. 新設桟橋工

4. 油、ガス受け入れ施設移設工

5. 荷役運搬設備の製作

6. 荷役運搬設備の運搬・設置

上述の復旧計画に必要な費用を以下のとおり算出した。表に示す金額は、10 %の予備費

を含むが、税金、物価上昇を含んでいない。

表3-6 復旧費用

項目 復旧費用(百万円)

1. 既設構造物撤去工事 237

2. 既設桟橋補修・補強工事 90

3. 新設桟橋工事 2,659

4. 油、ガス受け入れ施設移設工事 369

5. 荷役運搬設備の運搬・設置工事 331

6. 荷役運搬設備の製作 6,000

小計 9,685

予備費 (小計の 10% ) 969

合計 10,653

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第4章 環境社会的側面の検討

(1)環境社会面における現状分析

1.自然環境

ナミベ湾沿岸部は、アフリカ沖の南大西洋を北上するベンゲラ海流1(寒流)の一部を成し、

プランクトン等の生物が豊富な湧昇地帯となっている。このため、同海域は、極めて豊か

な生物多様性を有しており、海流周辺では、鯨、イルカ、アザラシ等の水生哺乳類、海鳥、

ウミガメ等の生息が確認されている。特に、ナミベ湾周辺はアンゴラ海流とベンゲラ海流

の合流点近隣でもあり、豊かな漁場、高生産域となっている。またナミベ周辺には、ナミ

ベ国立公園(4,450km2)、イオナ国立公園(15,150km2)の保護区がある。

2.社会環境

ナミベ市の人口の多くが漁業生産活動に従事している。同州は、アンゴラ沿岸州6州の

中で「artisanal(零細)」漁業における水揚げ量が最も多い2。小・中規模漁業以外の主要

産業が十分に育成されていないナミベでは、雇用創出及び貧困削減が生活水準向上のため

の喫緊の課題となっている。また、上下水道等の社会インフラの欠如も深刻な問題となっ

ている。

(2)プロジェクトの実施を通しての環境改善効果

本プロジェクトを通じて、a. 経済活動活性化による雇用創出効果、b. 社会的弱者に対

する生計向上・回復プログラムを通じた生活水準の向上、c.適切な環境管理計画の下、海

洋汚染防止策を講じることによる海洋環境改善効果、d.海上交通の安全航行のための体制

強化を通じた事故防止等海上交通の安全確保等の環境改善効果が期待される。

(3)想定される環境影響及びその緩和策

本プロジェクトを通じて予見される環境影響及び緩和・対応策は下記の通りである。

表4-1 予見される環境影響及び緩和・対応策の検討

予見される影響 緩和・対応策

1. 汚染対策

水質 工事に伴う水質への影響

船からの排水・廃棄物等による水質悪化

工事中の汚濁防止策の検討(ex.土砂拡散の少ない浚渫方法の検討等)。適切な排水システムの検討

大気 船・車両数増加による大気質の悪化 工事用車両の保守管理、防塵壁、グリーンベルトの設置、散水等。

騒音・振動 工事用車両等の市街地通過による発生 低騒音機材の使用、工事時間の制限、適切な交通管理システムの実施。

1 ベンゲラ海流圏は、環南極海流から分岐して、アフリカ沖の南大西洋を北上する寒流域であり、南は東

喜望峰(南アフリカ)から北はアンゴラの Cabinda あたりまでの流域を指す。 2 アンゴラ沿岸部においても、「artisanal(零細)」漁業が全漁獲高の 84%を占めている。

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底質 浚渫地点における底質の汚染、土砂投棄による底質への影響。

適切な浚渫方法、浚渫土砂の廃棄場所の検討、底質調査の実施。

2. 自然環境

生態系 埋立、浚渫等による生態系への影響 汚濁発生防止のための工法の検討、定期的な水質モニタリング。生物実態調査の実施 (保護種、貴重種の特定等)。

保護区 ナミベ部分的保護区、イオナ国立公園沿岸部の海洋生態系への影響。

排水処理システム、油濁防止策、環境整備船配備等を通じた海洋汚染対策の実施。

地形・土地利用 自然海浜等地形の改変の可能性 埋立場所、規模等の検討

水象 埋立て、浚渫による水系への変化、特に防波堤による海水交換の悪化、漂砂の可能性。河川、地下水への影響。

数値シュミレーション等による潮流・潮位等の海流変化の定量分析の実施。河川地下水への影響にかかる調査。

3. 社会環境

住民移転 サイト C では、住民移転発生する見込みなし。但し、漁民等の生計手段の喪失が予見される。

最小化のためのルート検討。被影響漁民に対しては、適切な漁業補償、支援策の実施。

生活・生計 本事業を通じた新しい労働機会の提供。

漁業活動エリアへの影響に伴う経済活動への制限3。

効果的な雇用創出機会の検討、地域活性化策の検討。漁業活動へ影響がある場合は適切な補償・支援の検討。

文化遺産・観光資源 (サイト C)文化遺産等は確認されていない。

EIA 実施時に再度、文化遺産(含む墓)の有無の確認を行う。

景観・土地利用 サイト C 周辺の塩田への影響 塩田所有者との協議

社会的弱者への影響 女性含む零細漁業従事者や露店商等への影響。労働者流入による HIV 感染の危険性。

生計向上支援活動の検討。HIV 感染予防策の実施。

地域における利害の対立

港湾関連の商業活動拡大による漁業活動への影響。

地域住民、コミュニティリーダー等ステークホルダーとの継続的な意見交換、合意形成。漁業施設の建設等商業活動と漁業活動の共存・融和のための配慮策の検討。

海上安全 船舶事故増加の可能性 海上交通安全確保のための体制強化

(4)アンゴラ国における環境社会配慮関連法規の概要

同国における本プロジェクトに関連する主な環境関連法として、a. 環境基本法 (The

Environmental Framework Law , Law No. 5/98, June 19th )、b. 環境影響評価法 (Decree on

Environmental Impact Assessment, Decree No.51/04, July 23rd )、c.環境ライセンス法

(Decree on Environmental Licensing, Decree 59/07, July 13th )、d. 土地法 (Land Law, Law

No. 5/98, November 9th )、e. 生物的水資源保護法 (Biological Water Resource Law, No.

6-A/4, October 8th )等が挙げられる。

(5)プロジェクトの実現のために当該国がなすべき事項

計画段階における次のステップとして、事業実施者は、環境影響評価(EIA)を実施し、ア

国環境省の承認を得る必要がある。EIA における調査項目については、特に下記項目が含

まれることを提案する。

3湾内では漁業活動が禁止されているものの、自給用・生活水準維持のための小規模漁業活動は認められ

ており、サイト候補地周辺(ベロ川河口)にて零細漁民が漁を行っている。

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a.汚染対策

工事・供用時における汚染対策(大気質、水質、廃棄物、底質等)。

湾内・外、ベロ川河口における水質調査の実施。底質調査(含む重金属濃度)の実施。

b.自然環境

サイト周辺における海洋生態系実態(ベースライン)調査の実施。

埋立て・浚渫による水系変化、海流変化、浮遊物質量濃度分布等の数値シュミレー

ションの実施。

本事業による自然海浜等地形・地質構造が改変される可能性の検討。

c.社会環境

サイト周辺における社会経済調査の実施。漁業ベースライン調査の実施。また被影

響漁業従事者への負の影響が発生する場合は、被影響住民に対する社会経済調査、

意識調査等の実施。また、(被影響住民に対する)補償・支援計画の策定。

d.環境管理計画、モニタリング計画策定

当該事業における緩和策、モニタリング項目・体制の検討。

e.当該事業における地球規模の環境問題、派生的・二次的、累積的影響、プロジェクト

のライフサイクルへ対応の検討

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第5章 財務的・経済的実行可能性

新コンテナターミナル建設の全体事業費については下記ように概算できる。

表5-1 全体事業費の内訳

(単位:百万円)

内訳 外貨分 内貨分 合計

港湾施設の建設工事 47,290 16,944 64,234

機材調達 15,530 0 15,530

エンジニアリング・コンサルティングサービス 6,282 1,695 7,977

管理費・予備費・税金等 6,910 4,591 11,501

合計 76,012 23,230 99,242

プロジェクトの財務評価

プロジェクトの内部収益率(IRR)は 8.0 % と計算され、これは政府系ローンの金利水準

を上回っていることから、プロジェクトとして実施可能性があるといえる。感度分析はコ

ストの上昇や収入の減少が 10%変化しただけでも採算が取れなくなることから、このプロ

ジェクトは脆弱なものであるということができる。

経済便益

アンゴラ南部地域の中心都市はルバンゴに産業の集積があり、現在ナミベと隣国ナミビ

アのウォルビス・ベイ港から貨物が輸送されているが、ナミベは全体の3分の1しかない。

今後の需要の増大にナミベ港が対応できれば輸送コストの大幅な軽減に貢献する。

また、港湾開発を実施すれば増大する貨物需要を受け入れることが可能となり、経済発

展を支え、ひいてはトランシップメント貨物の荷役も可能となる。産業を支える公共のイ

ンフラストラクチャーとしてコンテナターミナルは重要な社会資本投資であり、交通コス

トの改善と経済発展の支援効果という2つの観点から評価することができる。 投資と経済

便益による経済的収益率(ERR)の計算結果は、以下のようになる。

陸上輸送費用の節減効果 47%

GDPへの支援効果 22%

融合した経済便益 56%

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第6章 プロジェクト実施スケジュール

工事期間については第Ⅰ期から第Ⅲ期まで、おおむね 10年間で完了する。建設工事に取

り掛かるまでには詳細設計の実施及び建設業者の選定が必要であり、これには 2年の期間

が必要と考えられる。また工事完了後の瑕疵担保期間1年を加えると全体工程としては 13

年のプロジェクトになる。

図6-1 プロジェクトの実施スケジュール

1styear

2nd 3rd 4th 5th 6th 7th 8th 9th 10th 11th 12th 13th

(計画決定)計画原案の決定自然条件調査の実施EIAの実施関係機関との調整住民説明会の実施ファイナンスの調整・決定(建設工事)実施設計入札図書・業者決定防波堤の建設浚渫工事ターミナルの建設道路・橋梁の建設機材の調達瑕疵担保期間

ターミナルの供用開始

第Ⅱ期 第Ⅲ期実施段階

準備段階

項目第Ⅰ期

▲第1バースオープン

▲第2バースオープン

▲第3バースオープン

建設工事は、第2期及び第3期の防波堤の建設工事を分割でなく継続して実施すれば、

全体工程はそれぞれ1年ずつ短縮が可能となり、建設工事の工程は2年間は短縮可能とな

る。貨物の伸びに応じて柔軟に工程を短縮することも実施段階で検討すべき課題である。

また、事業を早期に進めるためには早い段階でコンサルタント契約を締結し、必要な手

続き、現地調査などの支援を受けることが必要と考えられる。特に EIAの手続きには関係

するデータの取得と解析、それらの関係者への説明などの時間が必要であり、コンサルタ

ントを活用した支援が重要である。

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第7章 相手国側実施機関の実施能力

アンゴラ国の実施機関は、運輸省、IMPA及びナミベ港湾公社の三つの機関であるが、政

策の決定は運輸省が行なっている。IMPAは開発計画の内容を検討するものの、決定権は持

っていない。ナミベ港湾公社は実施機関であり、計画原案を作成する立場にあるが、計画

作成の経験もなく組織的にもリハビリテーション室が窓口で、室長と秘書の2名で対応し

ているだけである。また、政策決定権限を有する運輸省でも、職員数は非常に限られてお

り、省内で政策内容に関する実質的な討議をする組織体制にはなっていない。

このため計画立案に当たっては民間コンサルタントによる EIAに係るステークホルダー

ミーティングなどの諸手続、ファイナンスに係る支援など関係機関との調整等を含めて全

面的なバックアップが必要とされる。したがって、アンゴラ国実施機関への支援策として

は、状況を踏まえて下記の内容が考えられる。

a. 港湾政策に係る大臣アドバイザーを派遣する。

b. IMPAへ港湾開発の実質的な業務支援のため、港湾専門家を派遣する。

c. 港湾管理者、実施機関幹部の研修としてコンテナターミナルのオペレーションについ

て、管理・運営をテーマに日本への派遣研修を実施する。

d. 港湾荷役研修所を設立し、クレーンなど荷役機械のオペレータを長期展望で養成する。

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第8章 我が国企業の技術面等での優位性

ターミナル建設の土木工事に関しては、直線鋼矢板を使ったプレファブセル工法は、わ

が国で発達し、わが国の高炉メーカーの高い技術によって、安全性、環境への配慮、工期

短縮などに優れた、他に類を見ない技術である。

荷役機器に関しては、コンテナクレーンとターミナルでの荷役用 RTGクレーンのいずれ

においても、日本のメーカーの技術・製品・経験は世界のトップレベルの信頼性を有し、

故障の少なさは維持管理費削減とサービスレベルの向上に寄与している。RTG の場合、故

障による 1基当たりのブレークダウン数は中国製に比較して 14分の1となっている。

そこで、日本企業の高い技術力、プロジェクト開始後の技術支援、また日本政府の金融

支援などを、つぎのような方法で強調する必要が考えられる。

1. 相手国政府への技術力・実績の説明:アンゴラ政府側の理解及び協力を高める。

①日本企業のプロジェクト遂行能力 ②供給機器の技術力・実績 ③過去の日本政府

の資金援助案件の実績

2. 建設中及び建設後の技術支援の提案:高度な技術を要する設備・機器について、プロ

ジェクト中及び完工後の技術支援を提案する。①JICA 専門家(短期及び長期)派遣 ②

日本及びアンゴラでのトレーニングなど、技術支援を含めた日本政府としてのパッケ

ージ支援であることを強調する。

3. 日本政府の金融及び技術支援:日本政府の金融支援スキームの説明を行う。プロジェ

クト本体を日本政府のファイナンスにて実施し、完工後のオペレーションについても

JICAなどが技術支援を行ない、物・技術・資金の3面から支援を提供する旨を説明す

る。

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第9章 プロジェクトの資金調達

アンゴラには過去に国際協力機構(JICA)の無償資金援助が供与された実績はあるが、円借

款の実績は無い。2008年2月に、アンゴラは債務問題を解決し、日本貿易保険(NEXI)は条

件を緩和した。これにより、日本政府の関係機関、国際協力銀行(JBIC)は、条件を満たし

ているプロジェクトに対しては輸出金融などの制度金融の適用が可能となった。

アンゴラ政府側は本件につき迅速な金融支援スキームとともに実施計画の形成を希望し

ている。しかし、中国のようにクレジット枠を設定しアンゴラ側の要求に迅速に対応する

方法は、アンゴラ政府の選挙対策など目的からくる短期的な目標に翻弄される危険性があ

り、日本の援助は真の国づくりの観点から、インフラ整備の需要を長期的な観点から見据

え、質の高い成果物を構築することを目標に、アンゴラ国政府関係者への説明を継続して

行ない、理解を求めることが重要であると考えられる。

支援の迅速化の観点からは、通常の開発金融としての円借款よりもむしろ国際協力銀行

の輸出金融(バイヤーズクレジット)を可能なオプションとして提案することを考えたい。

円借款と輸出金融の条件比較(アンゴラ向け)

ファイナンス・スキーム 輸出金融 (バイヤーズクレジット) 円借款

1.ファイナンス提供者 日本政府(JBIC) および市中銀行

による協調融資

日本政府(JICA)

2.通貨 日本円

(米ドルでも可能)

日本円

3.カバー率 契約金額の最大 85%まで。 契約金額の 70%から 85%

4.返済期間 最長 14年間

(建設期間/猶予期間最大4年間プ

ラス返済期間 10年間)

最長 40 年間、うち最長 10 年

間の猶予期間(OECD 及び JICA

の国別ガイドラインによる)

5.金利 現状約 3.4%p.a.(Libor 1% p.a.

plus 2.4% p.a.)

下記を含む全体コストベース: 返済金利(含む:リスクプレミアム), ローン保険,コミットメント・チャージ,アップフロントフィー ただし、リーガルコストは含まず別途発生。

基準金利 0.7%から 1.7%

p.a.

(OECD 及び JICA の国別ガイ

ドラインによる)

6.特長 円借款に比較して手続きが早い 金利/期間が非常にソフト

7.その他条件等 ①ローンの趣旨に沿うか審査によ

る。

②為替リスクを借り手が負担する。

①手続きが時間かかる

②アンゴラ向け供与未確定

③為替リスクによる返済額変

動リスクが大きい。

(出典:JICAホームページ、本邦民間銀行及びジェトロ調査団資料)

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第 10章 円借款要請に向けたアクションプランと課題

今後、円借款の要請に向けて必要となる措置はアンゴラ政府の関連機関、すなわちOD

A窓口の外務省、ファイナンス借り入れ窓口の財務省、政府計画作成の計画省、そして本

件の実施機関の海運港湾公社及びナミベ港湾局及び監督省の運輸省への案件説明及び今後

の連携が必要である。アンゴラ政府は日本のODAは時間がかかるという印象を持ってい

るようであるが、政府間援助の仕組みをよく理解し、日本政府に対して円借款供与の対象

となる具体的な要請案件を十分検討し、政府間の合意形成への努力をおこなう必要がある。

2009-2010:アンゴラ政府とプロジェクト詳細検討。日本国内で円借款に準備協議。

2009:アンゴラ政府の本計画実施に向けた意思表明と、本計画の進展を長期計画に組込む。

2009:運輸省及び実施機関(海運港湾公社とナミベ港湾公社)での計画詳細の立案及び予算化

2010:円借款要請の手続き開始。EIAなど必要な手続き(SAPROF相当)の実施。