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技術部報告 金沢大学理工研究域技術部 Vol.14 2014

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技術部報告

金沢大学理工研究域技術部

Vol.14

2014

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技術部報告書 巻頭言

理工研究域技術部運営雑感

理工研究域 技術部長 加納 重義

昨年 11 月 13 日に山崎光悦理事(研究・国際担当)・副学長を,学内意向投票

の結果を承けた学長選考会議の合議により,次期(第 11 代)学長候補者とする

ことが決定されたことは記憶に新しい。山崎先生は前技術部長であり,私ども

技術部にとっても記念すべき出来事になった。本報告書巻頭を割いて技術部一

同衷心お慶びを申し上げると共に,次年度からのご活躍を祈念するところであ

る。

技術部は,一昨年 11 月に人事選考会議内規を一新すると共に,業務内容の在

り方についても抜本的な見直しを図った。その後1年有余が経ったが,技術職

員がコースや系を超えて理工研究域全体への教育研究支援や研究資産の維持管

理に貢献して戴く姿を目にするに付け,実に頼もしく映る。

政府は平成 25 年度からの 3年間を国立大学の改革加速期間と位置付け,選択

と集中による大学の研究力,国際化,教育力の飛躍的な強化を重点施策として

推進している。昨年末に閣議決定された平成 26 年度予算案の大学関連の項目を

見ても,国立大学の機能強化に重点を置く内容となっている。国立大学改革プ

ランの実行などに必要な経費が措置されており,いよいよ大学改革の加速が求

められている。

こうした学外情勢に呼応して本学でも,昨年 12 月開催の第 112 回教育研究評

議会に,領域融合的なイノベーション機能強化,グローバル化の加速・拡充,

学内資源配分の重点化,人事・給与制度の改革の4つを基本的方向性とする「金

沢大学改革基本方針中間まとめ」が上程された。技術部においても,従前通り

一定の教育支援に任(あ)たるのは言うまでもないが,研究分野の集中と特色

化が叫ばれる中で限りある人的資源を以てリーディング・エッジ分野に焦点を

絞った研究支援が一層重要視されるのは必至となる。今後も法人からは,技術

部が弛まず自律的な改革を重ねていく姿勢を求められるだろう。加えて今後の

2年間は,技術部にとっても第2期中期計画を総括すると共に,第3期中期目

標の策定を開始する極めて重要な時期となる。これらの諸課題への対応は,技

術部全員の力を結集してこそ達成し得るものと確信している。

グローバル化の加速・拡充の一環として,国立(旧)六大学包括連携協定に

基づく JICA 支援の「ミャンマー(緬甸)工学教育拡充プロジェクト」が昨年か

ら始動した。理工研究域からは既に複数の教員が緬国ヤンゴン工科大学等へ赴

いて現行の工学教育カリキュラム体系を事前視察して来たが,ここに至って幹

事校の長崎大学工学部長から,本年3月には工学実習設備の充足状況の視察と

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補充提言の為に技術職員の訪緬の可否について打診された。過去には技術職員

が大学のミッションを担って海外出張するような機会はなかったと認識してい

るが,これが実現すると画期的な事例となり,改めて大学グローバル化の波の

大きさが実感される。日緬間の友誼と交流に大きな成果を挙げて,後進技術職

員の海外雄飛の範として戴くことを希求する。

北陸の地にもゆかりの深い大伴宿禰家持による伝世最後の詠歌とされる

新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰

(新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事)

があります。萬葉大巻の掉尾(ちょうび)を飾るこの歌の如く,2014 年が理工

研究域技術部並びに技術職員お一人おひとりに取りまして安寧の甲午(こうご)

年となることを祈念しながら擱筆(かくひつ)します。

平成甲午泰月中澣

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目 次

Vol.14 2014年

技術報告

1) 「流れ」の簡易可視化シミュレーション -学生実験における Microsoft Excel 教材の開発-

化学工学技術室 杉山博則・・・・1 2) 石灰石骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性の評価

環境デザイン系技術室 山戸博晃・・・・9

研修・出張報告

平成24年度 愛媛大学総合技術研究会出張報告

環境デザイン系技術室 小川福嗣・・・・15

平成25年度 東海・北陸地区国立大学法人等技術職員合同研修(情報処理コース)報告

技術支援センター 松井大樹・・・・17

平成25年度 東海・北陸地区国立大学法人等技術職員合同研修(情報処理コース、部分聴講)報告

機械系技術室 第一技術室 正角 豊、倉谷知宏・・・・22

学会参加報告 第21回プラスチック成形加工学会秋季大会

化学工学技術室 大澤六合豊・・・・29

平成24年度 技術部学内研修 アナログ電子回路の基礎

電子情報系第一技術室 蟹屋敷祐介・・・・31

技術部各委員名簿・編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33

表紙写真

写真は電界放出形走査電子顕微鏡です。

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技術報告

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「流れ」の簡易可視化シミュレーション

-学生実験における Microsoft Excel 教材の開発-

化学工学技術室 杉山博則

【背景】昨年度、3年生対象の学生実験のテーマの一つ「管路内の流動およびプロセスシミュレータ(空

気系)」を担当していた。今年度は実験日程の変更のため空気系の実験は開講されていない。実験時間

を有効に利用することを目的に 2011年度の実験からMicrosoft Excelを用いた流れの可視化シミュレ

ーションの時間を設けていた。その際、学生にとって負荷とならない程度の内容を心がけていたが、

当時のシミュレーションはモデルが不十分であり、流れの可視化には至らなかった 1)。このことが、学

生にとって負荷となっている感があり、さらにシミュレーションの改良を要するものであった。

昨年度の実験では、「流れ」の可視化がより明瞭になるように、シミュレーションのモデルを改良し、

学生実験で実施を試みたので、本報告にて詳細を発表する。なお、本報告の内容は、平成 24年度愛媛

大学総合技術研究会にて発表した。その際、発表を聴講した他大学の技術職員の意見などについても

報告する。

【IT機器の浸透と学習環境の変化】近年、必携 PCなどの施策により、学生の PC保有率は 100%とな

っている。また、PC の性能が飛躍的に向上しており、授業で使用する程度の負荷では PC がハングア

ップすることはほとんど起こらなくなってきた。これらの背景を踏まえると、PCを実習などで積極的

に利用することが可能であると考えられる。また、学生の PC には Microsoft Office が標準でインスト

ールされており、これらを用いた実験・実習の体系を構築する必要があると考えた。具体的には、単

なる実験データの整理やグラフの描画のみの利用にではなく、一歩進んだ学習ツールとしての利用で

ある。その一つとして、シミュレーションがある。

【学生実験「管路内の流動(空気系)」について】2)、3) 本テーマで扱う実験系は、流体の流れである。

「流れ」は、化学工学の学問体系の一つ「移動現象」で扱われる事象である。本実験では、移動現象

で扱われる管路や化学装置内の流体の流れについて簡易的な装置を用いて、管内流れの速度分布につ

いて理解することを目的と

している。図 1に実験装置を

図 2 に圧力測定部を示した。

ブロワーを起動することで

円管内に流れを発生させる。

その際の管壁部とピトー管

部との差圧をマノメーター

にて測定をする。班単位で実

験を行うため、これらの操作

を数人で行う。実験では、得

られたデータから速度分布図等を作図する。さらに、作成した速度分布図が円管内流れの理論と同一

の傾向であることおよび、カルマン-プラントルの 1/7乗則で実測値がほぼ近似できることを確認する。

レポートの作成は、別の日に行うため、実験してはレポートのネタとなる図等を作成して終了となる。

図 1 実験装置

図 2 圧力測定部(ピトー管および管壁部分)

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【Microsoft kata Excel を使ったシミュレーションについて】流れの可視化シミュレーションには、

Microsoft Excel を用いた。Excelでは、加減乗除の計算のみ使用できる。よって、微分方程式などの高

度な数式や演算子などが含まれる数式を計算するときには工夫が必要になる。また、Excelではマクロ

を設定することで簡易に計算を進めることが可能である。以上のように、使い方次第では科学的な簡

易計算などにも適用できると考えられる。

【理論】4)今回の「流れ」の可視化シミュレーションは、二次元移流拡散方程式をモデルとして用い

た。解析対象である物理量 ϕの二次元移流拡散方程式は(1)式のように表される。

2

2

2

2

yxD

yv

xu

t

(1)

D は拡散係数である。左辺第 2項および第 3項が x方向および y方向における移流項である。uおよ

び vは、移流係数であり、流体の速度に相当する。Excelでは四則演算しか行えない為、基礎方程式を

各微小領域について成り立つ代数近似式に書き換える必要がある。式の書き換えを離散化という。

ここで二次元座標を(xi,yj)と表して ϕi,j= ϕ(xi,yj)と略記する。テイラー展開により(1)式の離散化を行う。

右辺について物理量 ϕi,jの点(xi,yj)周りでテイラー展開をすると

3

3

32

2

2

,,16

1

2

1x

xx

xx

xiii

jiji

(2)

3

3

32

2

2

,,16

1

2

1x

xx

xx

xiii

jiji

(3)

(2)式及び(3)式の辺々を加えて 2次の精度で整理すると

2

,,1,1

2

2 2

xx

jijiji

i

(4)

となり、同様に yについても

2

,1,1,

2

2 2

yy

jijiji

j

(5)

また、(2)式及び(3)式の辺々を相減じて整理すると

xx

ii

i

2

11 (6)

同様に yについても相減じて整理すると

yy

jj

j

2

11 (7)

となる。これにより拡散項および移流項が離散化された。移流項は、ϕが x 方向に u、y 方向に v で

伝播することを示している。したがって、x方向に着目すると u > 0の時は左から右へ、u < 0の時には

逆に右から左へ伝わることになる。これより u > 0 (< 0)の時は着目しているメッシュ点はそれより左

(右)の点の影響を受けると考えられる。差分近似も左(右)側のメッシュ点に重みを置いたものを採用す

るのが、式の性質にかなった近似方法であると考えられる。このような考え方から得られた移流項に

対する差分法を風上差分という。ここで移流項の風上差分処理を行う。x方向のみに着目し風上化を行

うと以下のようになる。

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0

0

1

1

ux

ux

x ii

ii

i

(8)

よって

x

ux

ux

u iiiii

i

2

2

2

1111 (9)

となり、現在は 2次元平面を考慮しているので

x

ux

ux

ujijijijiji

i

2

2

2

,,1,1,1,1 (10)

同様に y方向も風上差分処理を行うと

y

vy

vy

vjijijijiji

j

2

2

2

,1,1,1,1, (11)

となる。ここで、左辺について時間項を離散化する。

Eulerの陽解法を用いると

tt

n

ji

n

ji

,

1

, (12)

と表される。nおよび n+1は、時間に関する上添字であり、n+1は nより 1ステップ先を示す。

更に(2)、(3)、(10)、(11)式を(1)式に代入し整理すると

2

,1,1,

2

,,1,1

,1,1,

,

1,1,

,

,,1,1

,

,1,1

,

,

1

,

22

2

2

2

2

2

2

yxD

yv

yv

xu

xu

t

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

ji

n

ji

n

ji

ji

n

ji

n

ji

n

ji

ji

n

ji

n

ji

ji

n

ji

n

ji

(13)

となる。ここで、Δxおよび Δyはそれぞれ、x軸および y軸におけるメッシュを示している。変数軸

に等間隔 hのメッシュを取ることとし、(13)式を整理すると、

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

ji

Dh

t

vvh

t

uuh

t

,1,1,,1,12

,1,1,,1,1,,

,,1,1,,1,1,,

1

,

4

22

22

(14)

となり、右辺はすべて既知の値を用いることで容易に時間を更新できるようになる。また、移流係

数である uおよび vについては、円管であれば速度分布を示す式(カルマンープラントルの 1/7乗則等)

から算出することで決定することができる。ここで∅𝑖,𝑗(𝑛+1)

の収束条件を検討する。

(14)を展開して整理すると

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n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

jiji

n

jiji

n

ji

n

jiji

n

ji

n

jiji

n

ji

Dh

tD

h

t

vh

tvv

h

t

uh

tuu

h

t

,,21,1,,1,12

,,1,1,,1,1,,

,,,1,1,,1,1,

1

,

4

2

(15)

(15)のようになる。

本実験では、円管内の流体の流れを考えるため、次の条件を適用する。

① y方向の移流無し。(v(i,j) = 0) ② x方向の移流は、上流から下流へ起こる。 (u(i,j) > 0)

この二つの条件を適用すると(15)は、以下のようになる。

Dh

tu

h

t

Dh

tu

h

t

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

ji

n

jiji

n

ji

2,,

1,1,,1,12,1,

1

,

41

(16)

濃度等の物理量を扱う場合、∅𝑖,𝑗(𝑛+1)

は常に正である必要がある。従って、

0412,

D

h

tu

h

tji (17)

となり、Δtについては

Duh

ht

ji 4,

2

(18)

という制限内でパラメータを設定する。

【Excelにおけるシミュレーションワークシートの作成および計算の実行】

1. ワークシートの準備

シミュレーションでは、さまざまな

物質が円管内を移動することを想

定する。後述するパラメータを変更

することで物質の種類などを決定

できる。なお、管壁はなめらかな状

態であり、また、移流する物質は円

管後部に接続されたポンプにより、

吸引されている状態である。それら

状況を反映させたシートを作成し

た。図 1 にシートの一部を示した。

時間項の離散化を Euler の陽解法

(14)式を用いているため時間 n+1

の状態を計算するためには、時間 n

の状態が必要になるため、エクセル

のワークシート中に、n 及び Δt後の n+1 それぞれのレイヤーを作成する。図 1 では、上のレイヤーが

図 3 ワークシート内の計算レイヤー

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n+1で下のレイヤーが nである。n+1を計算するために、nから数値を参照するという数式を組む必要

があり、壁等の境界における条件等や初期条件等を検討する必要がある。図 1 では、それらの識別が

容易になるように、セルに色を付けた。紫の着色されている部分は管壁を示す。また、青系の色の部

分(円管の先端)は、移流する物質が発生する位置である。

2. 初期条件等の参照セル準備

常に絶対参照する初期条件などのパラメータ

を記述した参照セルを準備する。図 2 は参照

セルである。図 2 には参照には用いない数値

も記述されている。シミュレーションを行う

ために最低限必要なパラメータは、(14)式中の

Δt、h、D(拡散係数)、u(移流係数)および各種初

期の条件である。また、流体を細かく設定す

る場合は、流体の密度及び粘度のデータが必

要になる。移流係数については、カルマン-

プラントルの 1/7 乗則から算出して決定する。

ただし、最大流速 Umaxの値を決定する必要が

ある。その他の数値については、現時点では

計算に影響を与えない数値として記述のみに

とどめている。シミュレーションが収束するための条件については、紫のセルが影響を与えるのでそ

の値を調節して決定する。収束条件は、(18)式を適用している。

3. セルへの数式入力

n+1 のレイヤー(図 1 の上)に数式を

入力する。(14)式に従って数式を組

む。その際、Δt、h、Dは絶対参照と

し、それ以外のセルを指定する場合

は通常の参照とする。図 3を例にす

ると n+1レイヤーの座標(5,6)に入力

する数式は、次式のようになる。な

お、移流係数は、図 2中のパラメー

タ「移流項」を参照する。

図 4 各種パラメータを記述したセル

図 5 n及び n+1レイヤー

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図 6 マクロの設定

nnnnn

nnnnn

nnnnnnn

Dh

t

vvh

t

uuh

t

6,57,57,56,46,62

6,55,57,55,57,5

6,56,46,66,46,66,5

1

6,5

4

22

22

(19)

また、管壁(シート上で紫に塗りつぶされたセル)の条件は物理量を反射する(完全弾性衝突)と仮定して

条件を考慮し、数式を変形する必要がある。

4. マクロの設定によるステップ計算の実行

マクロを設定することによりステップ計算を簡易に行うことができる。最も簡単なマクロの設定方

法を記す。設定するマクロは、初期値の入力および次ステップの入力である。

まず、初期値の入力には、初期値をすでに入力したレイヤーが必要になるので、初期値レイヤーの準

備を行う。初期値レイヤーが完成したら、図 4に示すリボン内のマクロを選択し、「マクロの記録」を

クリックする。マクロの記録をクリックするとマクロの記録ウインドウが表示される。その中のマク

ロ名、ショートカットキーを設定する。マクロ名は、「初期値入力」等分かりやすいものが良い。また

ショートカットキーは Ctrlキーとの組み合わせになるので押しやすいキーを設定する。設定では、Ctrl

+ iとしている。OKをクリックすることでマクロの記録がスタートされる。「初期値入力」のマクロ記

録中での操作は、初期値レイヤー全体をコピーし、nレイヤーに数値のみの張り付けを行うことである。

この操作が終了したら、再びリボン内のマクロを選択すると、今度は「記録終了」が表示されるので

「記録終了」をクリックする。これで初期値入力マクロの設定が完了である。次に同様の方法で次ス

テップの入力マクロの設定を行う。マクロ名を「次ステップ」、ショートカットキーを「Ctrl + s」のよ

うに利用できやすいように設定した後マクロの記録を行う。「次ステップ」マクロでは、n+1レイヤー

の数値を n レイヤーにコピーして数値を張り付ける操作を記録させれば完成である。さらに、流体を

管内に導入するマクロを設定する。このマクロを設定することで、流体を流したままの状態または、

流体をパルスで流した状態のステップ計算を実行することが可能となる。設定方法は前述のマクロと

同様であるが、nレイヤーに張り付けるデータが異なる。まず、n+1レイヤーからは、青系で塗りつぶ

された部分以外をコピーしてレイヤーに張り付け、初期レイヤーからは青系で塗りつぶされた部分を

張り付ける。貼り付けの順番は、初期レイヤーの青系部分、n+1 レイヤーの青系以外の部分である。

以上でマクロの設定は完了である。

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5. 等圧線図として出力

シミュレーションの結果は、等圧線グラフで表示することで可視化できる。Excel 2007以降では、立体

的な表現が可能となっている。図で表されている部分は、円管の縦断面である。X、Y軸は円管内の位

置、Z軸は濃度などの物理量を示す。作図に用いるデータは n+1レイヤーを使用する。図 5および図 6

はシミュレーションの結果である。本ワークシートでは、流体の注入部分を可変式にしてある。図 1

で示した青系の色で塗りつぶされた部分がそれにあたる。例では注入口が管中心付近の場合(濃い青)

と管全体の場合(青系色全体)を示した。円管内を物質が拡散しながら移動していく様子がおおよそ再現

できる。

【実験時間内での実施】実験データの測定・データ整理後に PCによる「流れ可視化シミュレーション」

を行った。実験時間内での時間配分は、35~40%程度とした。そのため、シミュレーションに関する理

論やワークシートの作成についての説明などを大幅に省いて実施した。即ち、基本事項は別資料とし

て学生が事前に閲覧できるように学生実験 HP に PDF 形式でアップロードした。また、ワークシート

は、入力する数式が前回のものより長大で複雑化しているため、ほぼ完成しているワークシートを HP

にアップロードし学生に実験当日までにダウンロードするように指示を出した。よって当日行った内

容は、図 4に示したパラメータの設定および『4.マクロの設定によるステップ計算の実行』以下の作

図 7 円管中心部分に流体を注入した場合

図 8 円管全体に流体を注入した場合

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業を行った。 今回のシミュレーションでは、移流係数を決定すればさまざまな速さの「流れ」を表

現することが可能となっており、実際に計算を行うとパラパラ漫画のように図が変化していく様子を

描画できる。しかしながら、移流拡散方程式を用いているため、表現される「流れ」は、一様な流れ

であり、実際の実験結果を完璧な形で再現することはできない。学生には、この点についてより精度

よくシミュレーションするためには、別の式をモデルとして設定する必要があることを補足説明した。

シミュレーションを実施したところ学生の反応は良く、積極的な姿勢が見られた。特に、学生の間

では、Excelは表計算しかできないと思われているようで、簡易なシミュレーションのツールとして利

用できることに驚きをもっている様子でもあった。

【総合技術研究会での発表と他大学の技術職員の反応】平成 24年度愛媛大学総合技術研究会にて本報

告の内容を発表した。流体力学、数値計算、学生実験など様々な分野の技術職員が発表を聴講し、多

くの意見やアドバイスをいただいた。Microsoft Excelでここまでのことができるということに興味・関

心を持ってもらえたと思う。また、実際にやってみたいという声も聞かれた。さらに、学生実験を行

っている技術職員からは、3年生の内容としては難しすぎるという趣旨の意見をいただいた。本教材を

作成してみて、PC を利用した教材の実験・実習などに対する適用可能性は、十分にあると考えるが、

作成する側には、相応の能力を要求されるということを感じた。また、学生の学習水準も相応にない

と学習にたいする PC教材の効果を評価することができないと考える。発表を通して他大学の技術職員

と意見交換をすることで、さまざまなことを再確認できたと考える。このような発表の場は、自らの

技術研鑽のためにも必要であると感じた。

【まとめ】前回の技術報告で報告した教材のモデルチェンジを行い、学生実験の教材として実際に学

生実験にて使用した。モデルチェンジにより「流れ」の可視化に近いシミュレーションを学生実験内

に組み込むことができた。時間の制限などがあり、Microsoft Excelで行うことができるシミュレーショ

ンの紹介程度の内容ではあったが、学生には新たな刺激を与えることができた。PCを利用した教材の

実験・実習などに対する適用可能性は十分にあることが分かった。なお、現在では本シミュレーショ

ンは学生実験では行われていないが、シミュレーションの改良は続ける予定で考えている。最終的な

目標としては、「カルマン渦」の表現ができるレベルのシミュレーションまで精度を高めたいと考えて

いる。

【参考文献】

1) 技術部報告編集委員会 技術部報告 Vol.12、金沢大学理工研究域(工学系)技術部(2012)

2) 岡崎守男、荻野文丸、佐田榮三、橋本健治、牧野和孝 化学工学概論、産業図書株式会社(1979)

3) 大竹伝雄 化学工学概論、丸善株式会社(1988)

4) 臼田昭司、伊藤敏、井上祥史 Excelで学ぶ理工系シミュレーション入門―表計算ソフトを使

った分析・解析の実践テクニック、CQ出版社(2003)

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(左:コア,右:コアの薄片試料)

写真-1 石灰石骨材の隠微晶質石英による ASR 事例

石灰石骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性の評価

環境デザイン技術室 山戸 博晃

要旨:本研究では,わが国で製造されている石灰石骨材の岩石・鉱物学的特徴を調べるとともに,ASTM C1260

による石灰石骨材のアルカリシリカ反応性の評価の適合性を検討した。その結果,モルタルバーを作製する

際の骨材の粒度調整に注意を払うことにより,ASTM C1260 により石灰石骨材のアルカリシリカ反応性の評

価が可能であることが明らかになった。また,石灰石骨材の化学成分分析より,シリカ量が 5%の閾値で,石

灰石骨材の不純物(隠微晶質石英や頁岩,チャートなどのはさみの混入)の1次的なスクリーニングが可能

であった。

キーワード:ASR,石灰石骨材,遅延膨張型骨材,ASTM C1260,偏光顕微鏡観察

1. まえがき

従来,わが国の石灰石骨材は不純物が少なく,アルカ

リシリカ反応(ASR)が発生しないものとされてきたが,

採掘場の切羽により石灰石の品質が変動することもあり,

そのアルカリシリカ反応性を適切な試験法で判定する必

要がある。その一方で,アメリカやカナダ,中国などで

は,写真-1(カナダ・ケベック州,鉄塔基礎コンクリート)

に示すように,石灰石骨材中の隠微晶質石英による遅延

膨張による ASR 劣化が発生している。また,沖縄では,

石灰石骨材に混入した安山岩(石灰岩への貫入岩)が鉄

筋破断をともなう,深刻な ASR 劣化を発生した事例があ

る。さらに,石灰岩鉱山の周囲には,頁岩やチャート,砂岩

などの堆積岩の互層があり,これらの岩石が混入する石

灰石骨材は ASR が発生する可能性がある。最近の AAR

国際会議では,Katayama 1)の研究により,これまでアル

カリ炭酸塩岩反応(ACR)とされてきた AAR 劣化の形態

が隠微晶質石英による遅延膨張型のASRによるものであ

ることが明らかになっている。

一方, コンクリート標準示方書や JASS 5 の改定(2009

年)以後,石灰石骨材はコンクリートの乾燥収縮の低減

効果があり,ASR の問題もないとされており,一般のコ

ンクリート構造物だけでなく,とくに長期の供用期間が

要求される原子力発電所や放射性廃棄物の処理施設など

へ使用される機会が増えてきている 2)。また,わが国で

は,石灰石骨材にも JIS A1145(化学法)および JIS

A1146(モルタルバー法)が無批判に適用されている現状

がある。しかし,隠微晶質石英による遅延膨張性を有す

る石灰石骨材にそれらの試験法は適用できないのは自明

なことである 3)。このため, 石灰石骨材の品質管理の一

環として,わが国でも石灰石骨材に適した ASR 試験法の

規格が必要とされている。近年,欧州では,RILEM AAR-5

の活動の中で,石灰石骨材の ASR 試験法(マイクロコン

クリートバー法)が提案されている 4)。しかし、その試験

はドロマイト質石灰石を対象としたものであり,かつ実

績は中国の石灰石骨材に限られており,試験法の適用範

囲は十分には確認されていない。これまでの石灰石骨材

の ASR 試験法の議論の中では,ASTM C1260 は骨材の粒

度調整の段階で軟質の反応性鉱物が流出するので,石灰

石骨材の ASR を適切に評価できないとの指摘があった。

しかし,前述したように,わが国の石灰岩骨材の ASR は,

石灰石そのものに含まれる隠微晶質石英だけでなく,安

山岩や頁岩,チャートなどの他の岩石の混入によるもの

も想定されるので,実際に,わが国の石灰石骨材に対して

の ASTM C1260 による適用性とその課題を明らかにする

ことが重要であると考えられる。

そこで本研究では,わが国の石灰石骨材の ASR 試験法

を確立することを目的として,わが国で産出する 9 種類

の石灰石骨材を対象にして,それらの化学成分分析,X

線回折分析,偏光顕微鏡観察と化学法(JIS A1145),促

進モルタルバー法(ASTM C1260)を実施し,その結果

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表-1 石灰石骨材の産地と物理的性質

産出地 石灰石骨材の略号 最大寸法(mm) 密度(g/cm3) 吸水率(%) 備考

信越 A 5 2.62 1.5 同一産地、純度の高い石灰岩

信越 B 20 2.70 0.6

信越 C 25 2.64 1.2 同一産地、純度の高い石灰岩

信越 D 40 2.67 1.4

東海 E 20 2.71 0.5 同一産地、はさみが存在

東海 F 20 2.71 0.4

東海 G 20 2.66 1.5 若干のはさみが存在

近畿 H 20 2.70 0.3 純度の高い石灰岩

東北 I 20 2.69 0.4 不純物を比較的多く含有

表-2 石灰石骨材の化学成分(%)

石灰石 Ig.loss SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O TiO2 P2O5 MnO

A 43.62 0.28 0.10 0.10 55.31 0.43 0.00 0.00 0.01 0.01 0.01 0.01

B 43.64 0.06 0.04 0.16 55.48 0.55 0.00 0.00 0.00 0.00 0.01 0.01

C 43.54 0.15 0.12 0.50 54.96 0.67 0.00 0.00 0.01 0.01 0.02 0.04

D 44.47 1.55 0.15 0.93 42.86 10.27 0.00 0.00 0.01 0.01 0.02 0.03

E 43.09 1.17 0.15 0.08 53.60 1.52 0.01 0.01 0.03 0.01 0.06 0.03

F 35.31 15.95 2.67 0.66 41.46 2.76 0.02 0.23 0.64 0.09 0.04 0.03

G 40.89 5.20 0.77 0.58 50.42 1.88 0.01 0.05 0.11 0.06 0.02 0.02

H 43.63 0.06 0.05 0.06 55.62 0.44 0.00 0.00 0.01 0.00 0.14 0.01

I 39.68 6.02 1.60 1.15 48.31 2.34 0.69 0.12 0.14 0.08 0.02 0.04

を岩石鉱物学的試験により検証した。

2. 実験概要

2.1 使用材料

本研究に使用した石灰石骨材は,中部地方,近畿地方

および東北地方から集めた,9 種類の石灰石骨材(コン

クリート用骨材として使用されているもの(路盤砕石用

(F)を含む))である。石灰石骨材の産地および物理的性

質を表-1 に示す。石灰石骨材 A(信越地方,密

度:2.62g/cm3、吸水率:1.5%)と石灰石骨材 B(信越地方,

密度:2.70 g/cm3,吸水率:0.6%)は同一の産地のものであ

り,純度の高い石灰岩から製造されている。石灰石骨材

C(信越地方,密度:2.64 g/cm3,吸水率:1.2%)と石灰石

骨材 D(信越地方,密度:2.67 g/cm3,吸水率:1.4%)は

石灰岩骨材 A および B と同一の産地であり,製造会社が

異なるものである。また,石灰石骨材 E(東海地方,密

度:2.71 g/cm3,吸水率:0.5%)と石灰石骨材 F(東海地方,

密度:2.71 g/cm3,吸水率:0.4%)は岐阜県と三重県とで

近接する産地であるが,この採掘場では石灰岩に頁岩や

チャートなどのはさみが存在しているのが特徴である。

さらに,石灰石骨材 G(東海地方,密度:2.66 g/cm3,吸水

率:1.5%)にも若干のはさみが存在する。石灰石骨材

H(近畿地方,密度:2.70 g/cm3,吸水率:0.3%)は純度の

高い石灰岩から製造されている。石灰石骨材 I(東北地方,

密度:2.69 g/cm3,吸水率:0.4%)はシリカ質の不純物を

石灰岩中に比較的多く含有するのが特徴である。なお,

骨材の粒度調整に関しては,粉砕方法の異なる 2 種類の

骨材粉砕機を使用して,原石の粉砕および水洗の工程を

丁寧に実施した。一方,ASTM C1260 に使用したセメン

トは普通ポルトランドセメント(セメント協会,密度:

3.16g/cm3,等価アルカリ量:0.68%)である。

2.2 試験方法

(1)石灰石骨材の岩石・鉱物学的試験

石灰石骨材の粉末試料(90μm 以下)を使用して,蛍

光X線分析により化学成分を測定するとともに,X 線回

折分析により含有する鉱物組成を調べた。また,薄片試

料(20μm)を作製し,偏光顕微鏡観察により石灰石骨材の

反応性鉱物の同定や不純物の含有形態の確認を行った。

(2)石灰石骨材のアルカリシリカ反応性試験

現行の化学法(JIS A1145)により骨材のアルカリシリカ

反応性を調べるとともに,外部よりアルカリが常に供給

される,より厳しい養生条件であり,遅延膨張型骨材に

も適用できるとされる促進モルタルバー法(ASTM

C1260,温度 80 度の 1N・NaOH 溶液への浸せき)を実

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0 10 100 10000

100

200

300

400

500

アル

カリ

濃度

減少

量R

c (

mm

ol/

l)

溶解シリカ量Sc (mmol/l)

無害でない

無害

● 石灰石骨材A○ 石灰石骨材B● 石灰石骨材C○ 石灰石骨材D● 石灰石骨材E○ 石灰石骨材F■ 石灰石骨材G□ 石灰石骨材H■ 石灰石骨材I

図-2 石灰石骨材の化学法(JIS A1145)による判定結果

0 10 20 30 40 500

500

1000

1500

2000

C

M:ドロマイト

C:カル サ イトQ:石 英

M

C

C

C

C

MC

CP

S

2θ degrees(Cu-Kα )

石 灰 石 骨 材 D

0 10 20 30 40 500

500

1000

1500

2000

C

Q

M

M

Q

Q:石 英

M:ドロ マ イ ト

C

CCCC:カ ル サ イ ト

C

CP

S

2θ degrees(Cu-Kα )

石 灰 石 骨 材 F

0 10 20 30 40 500

500

1000

1500

2000

C

MQ

C

M

C

C

C

C

M:ドロマイトC:カル サイトQ:石 英

Q

CP

S

2θ degrees(Cu-Kα )

石 灰 石 骨材 G

0 10 20 30 40 500

500

1000

1500

2000

M

C

M:ドロマイトC:カルサイトQ:石英

M

Q

Q

C

C

C

C C

CP

S

2θ degrees(Cu-Kα)

石灰石骨材I

図-1 石灰石骨材のX線回折結果

施した。判定方法は,14 日材齢にて 0.1%未満(無害),

0.1~0.2%(無害と有害の両者が存在する),0.2%以上(有

害)と判定する。また,促進モルタルバー試験終了後,

破断面の ASR ゲルの生成状況を酢酸ウラニル蛍光法に

より調べるとともに,偏光顕微鏡により薄片研磨試料

(20μm)の ASR の発生状態を観察した。

3. 実験結果および考察

3.1 石灰石骨材の岩石・鉱物学的特徴

(1)化学成分および鉱物組成

石灰石骨材の化学成分を表-2に示す。わが国の石灰石

には,高純度なものが多く,骨材として使用されるもの

についても構成鉱物は方解石(CaCO3)が 90%以上であ

るものが多い。その一方で,石灰石鉱山の切羽での品質

管理が不十分であると,前述したように,石灰岩以外の

堆積岩や火山岩が混入する場合があることが知られて

いる。したがって,石灰石骨材の不純物量が多くなると,

化学成分分析においてシリカやアルミナ,鉄などの含有

成分が増大することになる。本測定の結果において,石

灰岩以外の堆積岩(はさみ)が混入していると想定され

た石灰石骨材 F,G および I では,シリカ分,アルミナ

分,アルカリ分の含有量が他のものよりも増大していた。

その一方で,石灰石骨材 D はマグネシウム分を多く含有

していることから,ドロマイト質石灰石である可能性が

あった。以上の結果より,石灰石骨材の品質管理では,

カ ナ ダ な ど で 実 施 し て い る ド ロ マ イ ト 質 骨 材

(CaMg(CO3)2)の判定方法と同様に,骨材の ASR 試験

を実施する前の1次スクリーニングとして化学成分の

シリカ分(Si02)やアルミナ分(Al203)を指標とするこ

とが有効であると考えられた。

石灰石骨材のX線回折分析の結果を図-1に示す。石灰

石骨材 F,G および I には頁岩やチャートにより石英

(α-Quartz)の大きなピークが存在した。また,石灰石骨材

D は方解石(CaCO3)とドロマイト(CaMg(CO3)2)とが混

在しているのが確認できた。

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0 2 4 6 8 100

100

200

300

400

500ア

ルカ

リ濃

度減

少量

(m

mol/

l)

酸化マグネシウム (mass%)

● 石灰石骨材A○ 石灰石骨材B● 石灰石骨材C○ 石灰石骨材D● 石灰石骨材E○ 石灰石骨材F■ 石灰石骨材G□ 石灰石骨材H■ 石灰石骨材I

0 5 10 150

10

20

30

40

50

溶解

シリ

カ量

(m

mol/

l)

シリカ (mass%)

● 石灰石骨材A○ 石灰石骨材B● 石灰石骨材C○ 石灰石骨材D● 石灰石骨材E○ 石灰石骨材F■ 石灰石骨材G□ 石灰石骨材H■ 石灰石骨材I

図-3 化学法のアルカリ濃度減少量と酸化マグネシウム 図-4 化学法の溶解シリカ量とシリカ含有量の関係

含有量の関係

0 7 14 21 28

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

無害

不明確

有害○ 石灰石骨材F■ 石灰石骨材G□ 石灰石骨材H■ 石灰石骨材I

膨張

率 (

%)

材齢 (日)

● 石灰石骨材A○ 石灰石骨材B● 石灰石骨材C○ 石灰石骨材D● 石灰石骨材E

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

0

5

10

15

シリ

カ (

%)

モルタルバーの膨張量 (%)

● 石灰石骨材A○ 石灰石骨材B● 石灰石骨材C○ 石灰石骨材D● 石灰石骨材E○ 石灰石骨材F■ 石灰石骨材G□ 石灰石骨材H■ 石灰石骨材I

図-5 促進モルタルバー法(ASTM C1260)における膨張挙動 図-6 シリカ含有量とモルタルバーの膨張量

(14 日材齢)の関係

3.2 石灰石骨材のアルカリシリカ反応性の評価

(1)化学法(JIS A1145)による判定結果

石灰石骨材の化学法(JIS A1145)による判定結果を図

-2 に示す。石灰石やドロマイト骨材(構成鉱物の方解石

(CaCO3)やドロマイト(CaMg(CO3)2))は,化学法に

より適切に判定できないもの(アルカリ溶液と反応する

ので,化学法そのものが適用できない)の 1 つである。

このことは,現行の化学法(JIS A1145)の基になった

ASTM C289 に適用できない岩種の1つとして明確に記

載されている。今回の石灰石骨材の判定結果でも,不純

物をほとんど含有しない石灰石骨材 A,B,C,D および

H は,化学法の溶解シリカ量(Sc)が 10mmol/l 以下となり,

その判定結果は「判定規格外」となった。同様に,それ

ら以外の石灰石骨材も化学法によりいずれも「無害」と

判定された。その中で,同一の産地である石灰石骨材 E

と F を比較すると,不純物(シリカ分)を多く含むもの

ほど,溶解シリカ量(Sc)が大きくなる傾向が明確に認め

られた。

化学法(JIS A1145)のアルカリ濃度減少量(Rc),溶解

シリカ量(Sc)と化学成分分析からのマグネシウム分

(MgO),シリカ分(SiO2)との関係を図-3および図-4に示

す。ドロマイトを含有する石灰石骨材 D は,化学法にて

アルカリ濃度減少量(Rc)が非常に大きな値になった。こ

れは,ドロマイト(CaMg(CO3)2)と水酸化ナトリウム

(NaOH 溶液)との反応により,化学法の試験中にアルカ

リが炭酸ナトリウム(Na2CO3)となり消費されたことに

よるものである。また,石灰石骨材の化学成分のシリカ

分が多いものほど化学法の溶解シリカ量(Sc)も大きく

なる傾向があり,化学法(JIS A115)の溶解シリカ量(Sc)

は ASR の判定の目安として使用できる可能性が認めら

れた。

(2)促進モルタルバー法(ASTM C1260)による判定結果

促進モルタルバー法(ASTM C1260)における石灰石骨

材含有モルタルの膨張挙動を図-5に示す。化学成分分析

より不純物を含有しないと判定された石灰石骨材 A, B,

C, D,E および H は 28 日材齢までの測定期間中にまっ

たく膨張が発生しなかった(当然ながら反応がまったく

生じていないと想定できる)。それに対して,石灰石骨

材 F,G および I は測定材齢 7 日以後にモルタルバーの

膨張が発生し,とくに石灰石骨材 F は ASTM C1260 の判

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石灰石骨材 F

写真-2 酢酸ウラニル蛍光法による

蛍光発色状況(25mm×25mm)

定基準により「不明確」と判定された。石灰石骨材 F,

G および I は化学成分分析よりシリカ分を多く含んでい

るものであり,図-6に示すように,石灰石骨材のシリカ

分の含有量と促進モルタルバー法の膨張量(14 日材齢)

との間には比例関係が認められた。今後さらに実際に

ASR が発生した石灰石骨材を含めて,石灰石骨材の試料

数を増やす必要があるが,本研究の範囲内では,化学成

分分析におけるシリカ分が 5 %以上であるものを「要注

意」として,次の段階での促進モルタルバー法を実施す

る際にシリカ分の閾値として用いることは妥当である

と考えられた。

3.3 酢酸ウラニル蛍光法による観察結果

促進モルタルバー試験終了後の破断面(25mm×25mm)

の酢酸ウラニル蛍光法による蛍光発色状況を写真-2 に

示す。促進モルタルバー法(ASTM C1260)の判定結果

で「不明確」となった石灰石骨材 F では石灰石骨材とそ

の周囲が緑色に発色しており,ASR ゲルの発生が確認で

きた。その一方で,ASTM C1260 による判定結果が「無

害」となった石灰石骨材 G および I は蛍光発色がまった

く観察されなかった。これは,石灰石骨材 G および I で

は促進モルタルバーの膨張量が小さく,酢酸ウラニル蛍

光法で識別が可能である ASR ゲルの生成量にまで至っ

ていなかったことによるものと考えられた。

3.4 偏光顕微鏡によるモルタル薄片の観察結果

モルタルバー試験終了後(28 日材齢)の薄片試料の偏

光顕微鏡観察の結果を写真‐3 に示す。促進モルタルバ

ー法により膨張が発生しなかった石灰石骨材では,骨材

およびその周囲の微細なひび割れの発生が観察されな

かった。一方,促進モルタルバー法により膨張が発生し

たものでは,膨張量が大きくなるとともにモルタルバー

内部のひび割れの数及びその幅が増大した。また,偏光

顕微鏡観察を通して,促進モルタルバー法により実際に

反応している骨材の岩種を明確に特定することも可能

になった。すなわち,石灰石骨材 F および G では,石灰

石骨材に混入したチャート粒子がもっとも反応してお

り,チャート粒子から微細なひび割れ(ASR ゲルが充填)

がセメントペーストへ進展していた。これらの石灰石骨

材の ASR はチャートや頁岩にのみ発生しており,石灰岩

には ASR が発生していなかった。このため,石灰岩に混

入した堆積岩(チャートや頁岩)が ASR の発生の原因で

あることから,石灰岩鉱山での品質管理(チャートや頁

岩などの選別と除去)が対策として求められた。それに

対して,石灰石 I は石灰石粒子そのものから微細なひび

割れが多数発生しており,石灰石に含有される隠微晶質

石英が ASR の発生原因であると推定された。しかし, 隠

微晶質石英の量は多くはないので,実際に有害な ASR が

発生するかは不明である。以上より,偏光顕微鏡による

モルタルバーの観察を併用すると,石灰石骨材の ASR

の程度と反応性を有する岩種が特定できるので,石灰石

骨材の ASR 判定に有効であった。

3.5 石灰石骨材の ASR 評価法の提案と今後の課題

石灰石骨材の ASR 判定のフローチャート(案)を図-7

に示す。最初に,石灰石骨材の化学成分分析によるマグ

ネシウム分(2%)の含有量および偏光顕微鏡による観察

結果に基づいて,石灰石骨材かドロマイト質石灰石骨材

かの判定を実施する 5)。この際に,ドロマイト質石灰石

骨材と判定された骨材は岩石・鉱物学的試験として,カ

ナダの骨材品質試験(CSAA 23.2-15A)を実施すると良い。

一方,石灰石骨材と判定された骨材では,シリカ分の含

有量(5%)によりさらに 1 次的なスクリーニングを実施し,

シリカ分を 5%以上含有するものは,促進モルタルバー

法(ASTM C1260)またはマイクロコンクリートバー法

(RILEM AAR-5)により骨材の ASR の可能性を詳しく調

べる。また,骨材の ASR 試験において「有害」と判定ま

たは重要な構造物(厳しい使用・環境条件を含む)ものは,

さらに促進コンクリートバー法(RILEM AAR-4,温度

60℃)を実施し,コンクリートの実際の配合で ASR の可

能性を判定する。

4. 結論

石灰石骨材の岩石・鉱物学的特徴と ASTM C1260 によ

る ASR 判定の確立を目的として,わが国で産出する 9

種類の石灰石骨材を対象にして石灰石骨材の各種 ASR

試験を実施した。

本研究で得られた主要な結果をまとめると以下のよ

うである。

(1) モルタルバー作製の際の粒度調整時に隠微晶質石英

を流失させないように注意することにより,ASTM

C1260 により石灰石骨材のアルカリシリカ反応性の

評価が可能であった。

(2)化学法(JIS A1145)において,不純物を含有しない石灰

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石灰石骨材 F 石灰石骨材 G 石灰石骨材 I

写真-3 モルタルバー試験終了後(28 日材齢)の薄片試料の偏光顕微鏡観察の結果

図-7 石灰石系骨材の ASR 判定のフローチャート(案)

石骨材は,溶解シリカ量が 10mmol/l 以下で「判定規

格外」となった。また,シリカ質の不純物を含む石

灰石骨材は溶解シリカ量が大きくなる傾向が認めら

れた。

(3) 促進モルタルバー法(ASTM C1260)において,シリカ

質の不純物を含む石灰石骨材はいずれも膨張が発生

し,化学成分のシリカ含有量が多いものほど促進モ

ルタルバー法の膨張量が大きくなる傾向が認められ

た。

(4)化学成分分析値のシリカ量(5%)の閾値を設定するこ

とにより,石灰石骨材の ASR の可能性を判断するた

めの 1 次スクリーニングが可能となった。

(5) 偏光顕微鏡の観察より,石灰石骨材のASR発生には,

石灰石に含まれるはさみ(頁岩およびチャートなど)

が反応するもの(石灰石骨材 F および G)と,石灰石

中のシリカ質不純物(隠微晶質石英)が反応するもの

(石灰石骨材 I)の両者が存在した。

本研究では,不純物を多く含む石灰石骨材を全国的に

収集することに努めてきたが,大学機関による骨材採取

およびその調査には限界があり,今後,石灰石鉱業協会

やセメント協会による全国を網羅した本格的な詳細調

査が待たれる。

謝辞:本研究は,平成 23 年度科学研究費助成事業(奨

励研究:23920013)により実施したものである。

参考文献

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–Its mineralogical and geochemical details, with special

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会の活動―,コンクリート工学, Vol.50, No.7,

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3) 多田克彦,高尾昇,山田一夫,河野広隆:石灰石骨材

がコンクリートの諸特性に及ぼす影響―微粒分量,乾

燥収縮,ASR,硫酸塩劣化,圧縮強度―,コンクリー

ト工学,Vol.50, No.10, pp.904-911, 2012.

4) RILEM AAR-5: Rapid preliminary screening test for

carbonate aggregates, Alkali-reactivity and prevention-

Assessment, specification and diagnosis of

alkali-reactivity,RILEM TC 191-ARP, pp.787-792, 2005.

5) 石灰石鉱業協会:石灰石骨材とコンクリート, 2005.

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研修・出張報告

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平成 24 年度 愛媛大学総合技術研究会出張報告

環境デザイン系技術室 小川福嗣

平成 25 年 3 月 8,9 日に,愛媛大学にて総合技術研究会が開催された.全国の大学,高

専,大学共同利用研究機関から技術職員が集まり,日々の業務や研鑚で得られた知見や教

育に関する取組み,研究成果などについて発表,活発な議論が行われた.本学からは 8 名

が参加した.

会場 愛知県県民文化会館(ひめぎんホール),愛媛大学

日程 1 日目(3/8)特別セッション,ポスター発表,研究交流会 2 日目(3/9)ポスター発表,大学内施設見学

参加者 全国から 86 機関,計 712 名参加 金沢大学からは 8 名参加(松井,濱,蟹屋敷,杉山,北山(弘),斎藤,下野,小川)

内容 1 日目

愛媛大学の方の開会宣言のあり,続いて主催者の愛媛大学学長から全国の技術職員が一

堂に会する機会で失敗なども含めた様々なことを議論・共有してほしいと開会挨拶が行われた.

引き続き,特別セッションとポスター発表が行われた. 1)特別セッション

大災害における技術職員の役割と題し,兵庫県南部地震,東日本東北地方地震で被害

を受けた,神戸大学と東北大学の技術職員から,経験に基づいた特別セッションが行われ

た。上記 2 つの地震は幸いにも学期外れの時期に発生したため,大学内で被災した学生

は多くはなかったが,学期中に発生することも十分考えられ,今後の対策,対応について活

発な討論が行われた。 2)ポスターセッション

多様な分野の職員から,研究や教育,社会貢献活動に関して得た知見について,200以上の発表が行われた.他分野の発表を聞くことで,全国の技術職員の取り組みにいて知

る良い機会であった.本学からは松井さん,杉山さんが発表を行った. 3)その他

研究会終了後,建築・土木系の職員グループでは,この機会を利用して交流を深める場

が設けられ,日常の業務や取り組みについて情報交換を行なった.日常の取り組みについ

て掘り下げて聞くことができる貴重な機会であった.

2 日目 口頭発表が行われ,主に土木・建築・資源分野を聴講した。土砂の転動と堆積を把握する

ための実験研究や,AMeDAS よりメッシュの細かい気象マップの作成の試みについて発表

があった。この分野の技術職員は少ないため,発表数は少なかったが,全国の同様な分野で

働いている職員の取り組みについて知ることができ,参考になった。また,研究だけでなく,教

育や社会貢献分野も多く,防災訓練や出前授業を行った時の苦労,工夫したこと,反省点に

ついての発表も行われた.他機関と協力し,ワシントン D.C.さくら祭りで水をテーマにした実

験・展示を行っている発表は大変興味深かった.それぞれが仕事の中でどのように工夫して

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行っているかは,今後の活動の参考になると感じた。 総合技術研究会に参加して 今回初めて,技術職員を中心とした研究会に参加した.総合技術研究会の名前の通り,実

験・実習に関することから,ICT 技術を活用した学内システムの運用に関することなど全国の

技術職員の多様な仕事内容について発表,議論,情報の共有が行われ非常に貴重な機会で

あった.特に同様の分野の職員の仕事内容や取り組みについて情報の共有,意見交換でき

たことは刺激を受け,有意義であった.今回は聴講参加だったため,次回は発表にて参加で

きるように日々励みたいと感じた. 最後に,本研修の実施に当たって会場設営など,お世話くださった愛媛大学総合技術研究

会実行委員会の皆様に,この場を借りて感謝いたします.

特別セッションの様子 ポスター発表

ポスター発表(松井さん) ポスター発表(杉山さん)

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平成25年度東海・北陸地区国立大学法人等技術職員合同研修(情報処理コース)

技術支援センター 松井大樹

平成 25 年 10 月 30 日から 11 月 1 日にかけて東海・北陸地区国立大学法人等技術職員合同研修(情報処理コース)

が開催された。以下にその参加報告を記す。本研修の研修日程を表 1 に示す。

・研修期間 平成 25 年 10 月 30 日(水) ~ 11 月 1 日(金)

・研修会場 北陸先端科学技術大学院大学

・受講者 北陸先端科学技術大学院大学(2 名)、福井大学(2 名)、静岡大学(1 名)、名古屋大学(3 名)、

名古屋工業大学(1 名)、豊橋技術科学大学(2 名)、三重大学(2 名)、自然科学研究機構(2 名)、

富山高等専門学校(2 名)、石川工業高等専門学校(1 名)、

金沢大学からの参加者 池畑芳雄、松井大樹、正角豊(部分聴講)、倉谷知宏(部分聴講)

計 11 機関 22 名

◯研修目的

東海・北陸地区の国立大学法人等に所属する技術職員に対し、その職務遂行に必要な専門的知識及び技術等を修

得させ、技術職員としての資質の向上を図るとともに職員相互の交流に寄与することを目的とする。

◯研修内容

30 日

・学内見学

北陸先端科学技術大学院大学(以下 JAIST)が所有するスーパーコンピュータ室(図 1)、研修で使用する CAVE

(多面立体視表示システム)(図 2)、図書館(図 3)などについての施設説明をうけた。

図 1 スーパーコンピュータ室 図 2 CAVE 図 3 図書館

・学内情報システム紹介

北陸先端科学技術大学院大学 技術サービス部

二ツ寺政友

JAIST の学内ネットワークについて説明を受けた。JAIST で使用されている PC の端末はすべて学内ネットワーク

に接続されており、データもすべてサーバ上に保存されている。そのため、学内で作業をする際にはネットワーク

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に繋がっていれば端末問わずに作業をすることができるとのこと。

・研修会参加者職場紹介 参加者プレゼン

本研修に参加する 11 機関、20 名の職場紹介及び自己紹介プレゼンテーションが行われた。東海・北陸地区から

受講生が集まっているため、普段は接することのない愛知県や、三重県、静岡県等の機関についての説明を聞くこ

とができ参考になった。

・講義(1)可視化の楽しさ

サイバネットシステム(株)

宮地英生

宮地さんの自己紹介および可視化に関わることになった経緯などの説明をされた後に、本研修で学ぶ『可視化』

についての導入的な説明を受けた。数値計算結果や実権計測情報、観測情報はそのままではただの数字だが、画像

化(視覚化)をすることによって現象をわかりやすく捉えることができる。

31 日

・講義(2-1)AVS ソフトウェア実習

サイバネットシステム(株)

宮地英生

可視化に使用するソフトウェア AVS(Application Visualization System)についての実習を行った。AVS は様々

な数値情報を視覚化することができるソフトウェアで、本講義では AVS の機能の中でも 3D モデルを作成する実習

を行った。

・講義(3)可視化のすばらしさ

海洋開発研究機構

グループリーダー 荒木文明

可視化を行うことで専門外の人間にも情報を発信できるようになる。本講義では『プレゼンテーションのための

可視化』にスポットをあて様々な場面での可視化について説明を受けた。気象や海洋についての紹介が多く、非常

にきれいな画像が多く紹介された。

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・講義(2-2)AVS ソフトウェア実習

海洋開発研究機構

グループリーダー 荒木文明

サイバネットシステム(株)

宮地英生

午前中の AVS 実習に引き続き、AVS についての実習を行った。AVS は様々な数値情報を可視化するためのソフト

ウェアで、本実習では班ごとに分かれて与えられた数値データについて AVS を用いて処理を行って、そのデータが

どういった現象であるかについて発表を行った。

図 4 発表風景

11 月 1 日

・講義(4)生体内流れのシミュレーション -可視化と CAVE-

北陸先端科学技術大学院大学

教授 松澤照男

本講義では医療現場においての可視化について紹介された。医療用画像から以下の様な流れで可視化までが行わ

れる。

MRI/CT などの画像データ(2D データ)

↓ データ変換、スムージング処理等

3D モデル

↓ 数値シミュレーション(スーパーコンピュータなどで処理)

計算結果の可視化(CAVE)

生体流れを可視化することによって、3 次元的に見ることができ流れの様相をより理解しやすくなる。

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実習(1-1)、(1-2)CAVE 実習

北陸先端科学技術大学院大学

サイバネットシステム(株)

宮地英生

海洋開発研究機構

グループリーダー 荒木文明

CAVE とは、米国イリノイ大学 EVL(Electronic Visualization Laboratory, Illinois at Chicago)で開発され

た4面の没入型システムである。図 5 のように4面(前・右・左・下)のスクリーンに4台のプロジェクターで投

影します。観察者は立体視用のメガネをかけて CAVE 内に入り、可視化されたものを立体かつ内部に入ったような

状態で観察することができる。この CAVE をつかって本研修で製作した 3D モデルや気象、海洋モデルなどの観察を

行った。

図 5 CAVE 図 6 地球の海流のシミュレーションを可視化

図 7 日本上空の風の流れと台風、立体視メガネがない

ので 2 重に見える。

図 8 図 7 をメガネを通して見ると立体に見える。

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◯まとめ

仕事柄あまり馴染みのない情報処理の研修ということで不安もありましたが、参加してみれば、通常ではなかな

か目にすることの出来ない珍しい装置や美しいシミュレーション画像の数々を見ることが出来非常に有意義でし

た。また視覚化について多くのことを学ぶことが出来ました。このような研修に参加させていただきありがとうご

ざいました。

表1.タイムスケジュール

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部分聴講 『平成 25 年度 東海・北陸地区国立大学法人等技術職員合同研修(情報処理コース)』

報告

機械系第一技術室 正角 豊、倉谷 知宏 ■期 間:平成 25 年 10 月 30 日(水)~11 月 1 日(金) ■会 場:国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 ■日 程:別紙のとおり ■受講者:金沢大学(4 名:部分聴講 2)、北陸先端大学(2 名)、福井大学(2 名)、

静岡大学(1 名)、名古屋大学(3 名)、名古屋工業大学(1 名)、 豊橋技術科学大学(2 名)、三重大学(2 名)、自然科学研究機構(2 名)、 富山高等専門学校(2 名)、石川工業高等専門学校(1 名)

― はじめに ―

今年の東海北陸地区の技術職員研修の情報処理

コースが能美市にある北陸先端科学技術大学院大

学で行われました。同じ県内にあるにもかかわらず、

恥ずかしながら、私(正角)は北陸先端科学技術大学

院大学に行ったことがなかったので、北陸先端科学

技術大学院大学で東海北陸が行われると聞いたと

き、行きたいと思っていました、しかしながら開催

時期が 10 月 30 日~11 月 1 日であったため、学生

実験や研究室行事と重なってしまい部分聴講での参加となりました。 【1 日目】 開講式が情報科学研究科棟 5 階の部屋で行われました。開講式では情報社会基盤研究セ

ンター長の金子峰雄教授から研修開催の挨拶と近年

の技術職員をとりまく環境が厳しくなってきている

こと、それにともない求められる技術も広範囲にな

ってきていることが述べられ、この研修を通して技

術向上を願う旨の挨拶がありました。 右の写真は講義会場からの風景です。松任方面が

とてもきれいに見える、見晴らしの良い場所でした。

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開講式の後、2 班に分かれての学内見学がありました。北陸先端科学技術大学院大学の学

内はとても入り組んでいるのですが、2 階で全てつながっているので初日は雨だったのです

が、濡れることなく見学できました。 最初に並列計算機が置かれている部屋を見学

しました。右の写真のように並列計算のための大

型計算機が並んでいて、このような光景を見るの

は初めてなので、計算機の大きさに驚きました。

学内の研究者がこの計算機を使ってシミュレー

ションなどの研究をするそうです。

その後、ネットワークシステム FRONTNET が置かれた部屋

を見学しました。ここのネットワーク機器はコンパクトにまと

め、冷却のための風をボックスの上部から流入させ、下部から

排出し、これをエアコンに取り入れることで、局所的に冷却し

電気代の大幅な削減に成功し、とてもエコなシステムを実現し

たそうで、表彰もされたそうです。

そして、図書館へ。ここはゲートを通ると3階の吹き抜けに

なっており、壁面はイタリア産の大理石でできたきれいな図

書館でした。 24時間利用可能とのことでした。天

井には地元の九谷焼作家が大学開学を記

念して作った作品がありました。 入って右手に、イギリスの哲学者フラ

ンシス・ベーコンの著書である「ノヴム・

オルガヌム」の表紙が飾られていました。 これは“世界の果てヘラクレスの門”か ら科学の帆船が未知の世界へ旅立つ場面を描いたも のだそうで、日本で最初の大学院大学である北陸先 端科学技術大学院大学をイメージしたものだそうで す。

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最後に、ナノマテリアルテクノロジーセンター

を見学しました。ここには色々な分析装置や顕

微鏡が置かれており、学内外からの分析依頼に

対応しているそうです。 学内見学後、再び情報科学研究棟 5 階で、情報社会基盤研究センターの敷田幹文教授か

ら学内情報システムと技術職員の関わりについての紹介がありました。北陸先端科学技術

大学院大学では、中央集中型のシステムを導入しているそうで、学生や教職員はクラウド

システムにログインして使用するそうで、このようにすることでメンテナンスの費用を削

減できるそうです。また、北陸先端科学技術大学院大学は留学生が3割ほどで英語しか話

せない学生もいるそうで、そのような学生のために、システ

ムにログインして OS を英語か日本語かのどちらかを選べる

そうです。これで各学生ごとの設定が不要なためメンテナン

スが容易だそうです。また、教員も研究室で使っている環境

を教室で再現出る為、授業にノートパソコンを持ち歩く必要

がないそうです。このようなクラウドシステムや通信システ

ムのメンテナンスを技術職員が行っているそうです。 そして、研修参加者による職場紹介が行われました。1人 3 分の予定が参加者の皆さん

の力の入ったすばらしいプレゼンテーションにより、時間が押してしましましたが、色々

な機関の仕事の様子がわかり、特に、私は機械系なので情報系の技術職員の仕事の様子は

わからなかったので、とても有意義な時間となりました。 【3 日目:午後】

午前中は参加できなかったのですが、午後から参加させていただきました。残念ながら、

可視化ソフトである CAVE の実習は前日と当日の午前で終わっていたため、可視化の概要

を聞くことができませんでした。 情報科学研究棟 1 階の CAVE が置かれた部屋に移動し、研修参加者が作成したものを実

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際に CAVE に取り込んで 3D を体験しました。 下の写真のように CAVE に取り込んだ物を実際に 3D メガネをつけて、専用のコントロ

ーラーで拡大・縮小・回転などして 3D 体験をしました。本当に 3 次元に見えるのが楽しか

ったです。

CAVE での 3D 体験の合い間に、可視化の歴史や

これまで可視化に使われた機器の説明が行われ

ましたが、私には少し難しかったです。 モーションキャプチャなどもありました。

CAVE での 3D 体験のあと、北陸先端科学技術大学院大学さんのご厚意により、希望する施

設の見学が追加でありました。 最初はファイルサーバーが置かれた部屋の見学がありました。

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私のような無知な者にはすごさは私にはわかりませんが、情報系の技術職員にはわかる

そうです。とにかく機器の多さに驚きました。 最後に、機械系の私が昔から興味のあったナノマテリアルテクノロジーセンター(工作

室)の見学がありました。 写真の様に工作機械が並んでいました。

現在は学生が授業で工作機械を使うこと

はないそうで、学内からの依頼を受けて

センター職員 2 名で装置の作成をしてい

るそうです。 とてもきれいに整頓されているなとい

う印象でした。2 階にセンター職員の居室

がありました。 学内見学後、情報科学研究科棟 5 階の部屋で閉講式が行われました。閉講式では、情報

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社会基盤研究センター長の金子峰雄教授から修了証の授与があり、次いで、本研修で学ん

だことを今後の仕事に活かしてほしいなどのお話がありました。 ― 最後に ―

今回は都合があり部分聴講しかできませんでしたが、なかなかできない 3D体験ができた

ことはとても良い経験でした。なにより、機械系の私が情報系の技術職員の仕事内容に触

れられたのはとても良かったです。 そして、昨年の平成 24 年度の石川県地区の研修報告でも述べたのですが、同じ県内にあ

りながらなかなか訪問する機会のない大学の一つであった北陸先端科学技術大学院大学を

見学でき、とても勉強になりました。 私は全ての研修を受けていないので、申し訳ないのですが、部分聴講をしただけでこれ

だけの濃い内容を経験する事ができました。このような研修を企画・運営するのは大変だ

ったと思います、この研修を担当された北陸先端科学技術大学院大学の教職員の方々に深

く感謝いたします。 追記: 北陸先端科学技術大学院大学からの景色が

とてもきれいだったので、写真を撮らせてい

ただきました。 大学院大学ということや4学期制というこ

ともあってか、初日は学生が少なかったので

すが、3 日目は学生の姿がありましたが大学と

は違った雰囲気を味わうことができました。

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別紙(研修日程表)

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学会参加報告 第 21回プラスチック成形加工学会秋季大会

化学工学技術室 大澤六合豊 はじめに

2013 年 11 月 7 日ならびに 8 日に倉敷市の倉敷市芸文館で開催された,第 21 回プラス

チック成形加工学会秋季大会に参加し,発表を行った。 成形加工シンポジアは主にプラスチック材料の開発や製造工程に関係する研究を行な

っている研究者が研究成果を発表する場となっている。今回の学会は,導電性高分子に微

粒子を充填した導電性高分子複合材を作製し,微粒子が導電性高分子複合材の導電性に与

える影響を検討した内容で研究発表を行うために参加した。 1 日目:参加者は事前参加登録と当日参加者で 500 人超となる参加者となった。 ・ポスター発表「導電性高分子複合材料の導電性への有機ナノ粒子表面修飾基の効果」

参加件数は 111 件,そのほか地域セッションという,岡山県内の企業からのポスター発表

が 14 件行われ,活発な発表と討議が行われた。自身もポスター発表を行い,参加者から

の質疑応答を行い,今後の研究の参考となるよう活発に討議を行った。 ・特別講演 文化講演:「「文化の力」を考える」 公益財団法人 大原美術館理事長 大原 謙一郎先生

倉敷は江戸時代の商家の町並みや倉庫群,運河の景観が美しいこととして知られている

が,この倉庫群や商家の街並みは美観地区として設定され,現在も往時の様子を留めてい

る。倉敷はこのような美観の都市だけでなく,倉敷紡績株式会社や株式会社クラレの発祥

の地でもあり,水島コンビナートもあるという,プラスチックや繊維材料の発展に関して

大変歴史が深くつながりがある都市でもある。そのような中で美術などの芸術が非常に大

事にされていること,また,美術などの芸術・文化の発展がその国の科学技術の発展やそ

の国の国際社会での立ち位置を左右することが,この講演により紹介された。 ・特別講演 学術講演:「ノーベル化学賞を受賞して」 北海道大学名誉教授 鈴木 章 先生

2010 年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章先生の,受賞してからの変化や受賞時のエ

ピソードなどを授賞式の様子や表彰状などを示して講演された。 今回の講演は学会参加者だけでなく,一般市民も参加した講演会だったため,受賞理由

の「クロスカップリング反応」に関する詳細な紹介は省略されていたが,授賞式の様子や

表彰状に描かれていた絵などもあって分かりやすい講演となった。 2 日目:口頭発表「導電性高分子複合材料の導電性への有機ナノ粒子表面修飾基の効果」 筆者が行った研究の口頭発表を行った。発表後に質疑応答が行われた。質疑応答を通じ

て,これまでの研究内で十分に検討できていなかった分析や測定に関して改めて認識し,

今後の研究進行について大きな指針を得ることができた。

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発表はポスターと口頭の二種類の形式で行ったが,それぞれの発表形式について最適な

発表の技術があるように感じた。ポスター・口頭いずれの発表でも質疑応答で不十分な応

答しかできないと実りある質疑応答の時間となりにくいため,応答できるような裏打ちが

必要であることを改めて感じた。また,このような一連の研究発表を経験することにより,

学生に対する教育・研究支援の中で「発表」という観点でのアドバイスが可能になると思

われる。 そのほかの研究発表も聴講し,今後の研究の進め方に関連しそうな情報を得ることがで

きた。成形加工学会秋季大会は主にプラスチック成形に関係する技術や研究の発表が主で

あったが,発表中で今後の自身の研究に役に立ちそうな情報を得た。 ・まとめ 今回は学会で研究発表を行った。自身が取り組んでいる研究に関連しての質疑応答で,

今後の研究に関して方針や課題が明らかとなった。今後の研究に関して大いに参考になる

意見・見解も得ることができた。今後の研究や教育支援などに生かしていきたいと考えて

いる。

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平成 24 年度 金沢大学技術部学内研修参加報告 「アナログ電子回路の基礎」

電子情報系第二技術室 蟹屋敷 祐介 1. はじめに 平成 25 年 3 月 14 日(木)~15 日(金)に開催された技術部学内研修に参加したので報告する。 講師は正角研修委員が務められた。今回の研修は初心者の方を対象としており、基礎から

学び今後に役立ててもらうことを目的としている。私個人としては電子情報系であり初心

者の対象から外れてしまうが、研修委員ということもあり参加した。 2. 研修内容 1 日目 ・アナログ回路の基礎と実習 アナログ回路の基礎知識として、今回使用する抵抗、コンデンサ、トランジスタ等の説明

がされた。その後、実習としてオシロスコープ、ファンクションジェネレータの使い方の

確認を行い、ブレッドボード上でそれぞれ回路を作成し、動作確認をした。 基本的な回路として RC 積分・微分回路がフィルタとして機能していることを確認し、LED点灯回路でダイオードを用いての LED の点灯を確認、反転増幅回路ではオペアンプを用い

ての電圧の増幅を確認することができた。 2 日目 ・ブレッドボードによるアナログ回路実習 ブレッドボードによるアナログ回路実習では次の回路を作成した。 ・LED 表示トランジスタ式導通センサ ・トランジスタ式タイマ ・フォトトランジスタを使用した光センサ

1 日目はオペアンプでの波形を見ていたが、2 日目ではブレッドボード上でそれぞれの回路

が動作することを確認できた。 LED 表示トランジスタ式導通センサではセンサ部分をショートさせることにより導通して

LED が点灯する。トランジスタ式タイマはトランジスタの特性とコンデンサの充放電によ

りタイマとして電流を流しブザーが鳴る。フォトトランジスタの特性を用いて光があった

っているときは導通し、LED が点灯する。これらのようにブレッドボード上に組んだ回路

が実際に目に見える形で動作するのは達成感があり、初心者に対する実習としては効果的

だと感じた。

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・ハンダコテ実習 研修の最後はハンダコテ実習としてハンダ付けを行い、ライントレーサーを作成した。 まず、ハンダ付けの基本から説明があった。次にライントレーサーの原理が説明された後

作成を開始した。 ライントレーサーの原理としては赤外線センサを用い、色の違いによる赤外線の反射率か

ら白色、黒色を判断しライン上を走らせるということだった。 実際に作成してみると、自分も普段ほとんどハンダ付けは行っていないので不安だったが

なんとか作成し、うまく動作しているのを見るとうれしく思った。 3. おわりに 今回の研修は初心者を対象としており、わかりやすく回路を組み動作を確認できた。また、

自分も含め普段あまりすることがないハンダ付けも良い経験となった。初心者を対象とし

たものとしてブレッドボードは簡単に何度も回路を組み直せるので特に良かったのではな

いかと思う。今回は参加者にブレッドボード、ハンダコテ、ライントレーサーキットを持

ち帰ってもらったので、興味を持った方はいろいろな回路を作ることができるため初心者

向けの研修としては大変有意義であった。最後に今回の研修の主な準備を行い、講師も務

めていただいた正角研修委員に深く感謝いたします。

図 1. ブレッドボードキット 図 2. ライントレーサー

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《平成25年度 技術部支援部門委員名簿》

研修委員 北山 外志夫 松井 大樹 杉山 博則 小川 福嗣

技術部報告編集委員 山戸 博晃 蟹屋敷 祐介 下野 慎也

技術交流委員 大屋 寿美江 酒井 利昌 齊藤 裕司

HP委員 新井 美和子 杉本 修一 正角 豊 北山 弘樹

安全衛生環境委員 大澤 六合豊 恒川 隆樹 井原 朋美 倉谷 知宏

会計担当委員 大屋 寿美江

東海・北陸地区研修代表者会議

北陸地区および大学代表 ;浅野 久志

電気・情報コース連絡委員:池畑 芳雄

機械コース連絡委員 :正角 豊

《編集後記》

金沢大学理工研究域「技術部報告 Vol.14」をお届けいたします。

何卒ご一読をお願い申し上げます。

技術部報告の発行にあたって、ご多忙の中、巻頭言をご執筆下さった加納重義理工研究域技術

部長はじめ投稿者の皆様、ご協力いただいた方々に厚く御礼申し上げます。

技術部報告編集委員

平成25年度 金沢大学理工研究域 技術部報告 Vol.14

発行日 2014年2月5日

発 行 金沢大学理工研究域技術部

編 集 技術部報告編集委員(山戸 博晃、蟹屋敷 祐介、下野 慎也)

所在地 〒920-1192 石川県金沢市角間町

連絡先;

技術部統括技術長 浅野 久志 電話:076-234-4733

E-mail:[email protected]

技術部HP:http://www.t.kanazawa-u.ac.jp/etech/