石炭灰の土木・建築資材への利用拡大 に向けて ~北海道の事例 … ·...

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石炭灰の土木・建築資材への利用拡大 に向けて ~北海道の事例から~ 北電興業株式会社 土木環境部石炭灰事業室 小野寺 2017年11月21日 石炭灰シンポジウム

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石炭灰の土木・建築資材への利用拡大に向けて

~北海道の事例から~

北電興業株式会社

土木環境部石炭灰事業室

小野寺 収

2017年11月21日石炭灰シンポジウム

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1.全国の状況(石炭灰発生量)

4,782

6,931

10,673

11,522

12,466

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1995 2000 2005 2010 2015

石炭灰発生量(千t)

電気事業 一般産業 有効利用量

出典:石炭灰全国実態調査報告書(石炭エネルギーセンター)

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全国の石炭灰有効利用の内訳

69.3%13.7%

4.9%

1.1%

11.1%

セメント分野

土木分野

建築分野

農林・水産分野

その他

セメント原材料68.0%セメント混合材 0.6%コンクリート混和材 0.6%

2015年度 12,466千t

出典:石炭灰全国実態調査報告書(石炭エネルギーセンター)

土木・建築分野20%

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2.北海道の状況

海外炭

国内炭

国内炭合計225万kW (全発電設備容量の28%)(原子力を除く電源の38%)

北海道電力の石炭発電所

3

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北海道電力の石炭灰発生量推移

508 443

395 437 473

412 373

449 459 475 440 457

83

61 90

165

348

157 184

224 289 229

237 267

118

108 115

136

167

133 86

148

194

180 181

180

86.9

97.8 97.8 97.4 98.3 98.2 95.9

97.3 98.6 98.6 97.6

96.3

50

55

60

65

70

75

80

85

90

95

100

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1100

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

有効

利用

率(%

石炭

灰発

生量

(千

t)

苫東厚真 奈井江 砂川 有効利用率4

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苫東厚真発電所の石炭灰有効利用の内訳

セメント原材料54.3%

フライアッシュ

コンクリート7.8%

路盤材26.3%

その他建設用5.9% 農業用

3.1%

その他2.6%

2015年度 424千t土木・建築分野40%

石炭灰の長期的な安定処理のため、多用途での利用の確保を志向5

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土木・建築分野での有効利用内訳(2015年度)

利用区分 利用量(t) 種類

①フライアッシュコンクリート

セメント混合材

ダム工事向け 8,1799,947

フライアッシュ(JISⅡ種)

生コン向け 1,768

コンクリート混和材

生コン向け 11,538

23,133コンクリート二次製品向け 2,587

トンネル吹付け向け 9,008

②路盤材 石炭灰混合材料 111,590 111,590 フライアッシュ(原粉)

その他建設用

建設汚泥再生 8,810

24,963

スラリー材 2,634 フライアッシュ(JISⅡ種)アスファルトフィラー 381

③地盤改良材 6,577 フライアッシュ(原粉)他

凍上抑制層材 4,832クリンカアッシュ

建材 1,729

計 169,633 169,633

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①フライアッシュコンクリート

石炭灰の も付加価値の高い利用方法

特徴

・単位水量の低減(ボールベアリング作用)

・水和熱の抑制→収縮ひび割れの低減

・長期強度発現(ポゾラン反応)

・水密性の向上

・アルカリシリカ反応の抑制

品質規格~JIS A6201 コンクリート用フライアッシュ

分級やブレンディング等により製造

品質適合炭種の制約等から、製造量は石炭灰発生量の一部

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フライアッシュコンクリート向け出荷内訳の推移

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

40000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

フライアッシュ出

荷量

(t)

ダム(セメント混合材)

トンネル吹付け(混和材)

生コン(セメント混合材)

二次製品(混和材)生コン(混和材)

ダム、トンネル等のプロジェクト需要は変動大

生コン、二次製品等の恒常需要底上げが重要

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フライアッシュコンクリート出荷可能生コン工場、フライアッシュ使用コンクリート二次製品工場の分布

生コン工場 40コンクリート二次製品工場 18

苫東厚真発電所

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石炭灰有効利用の必要条件

安定供給石炭灰は、発電に伴う副産物→需給バランスをとる仕組み

品 質燃料炭種の多様化→要求品質を満足する石炭灰をいかに確保するか。要求品質外の石炭灰をいかに処理するか

価 格既存資材に対する価格競争力をいかに確保するか

どれが欠けても有効利用は進まない

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JISフライアッシュ製造上の課題

JIS適合品質のフライアッシュの量的制約

燃料コスト低減のため、多種多様な燃料炭が利用されるようになってきており、JIS適合品質のフライアッシュが製造できない場合が増えてきている。

○特に重要な品質項目~強熱減量

コンクリートの空気量確保のために使用されるAE剤をフライアッシュの未燃カーボンが吸着するため、空気量の管理上強熱減量(メチレンブルー吸着量)は低く安定しているのが理想。

JISⅡ種の上限は5% ⇒ 実際には、2~3%以下

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フライアッシュの固着

電気式集じん装置(EP)の主流=低低温EP

○低低温EP~排煙処理システムの従来より下流側の

低温部(ガス温度約90℃)にEPを設置。

集じん性能高くEP容量を小さくでき、

様々な炭種への適用性が高い。

課題:フライアッシュ表面にSO3が付着。このSO3が

水分を吸着することでフライアッシュ固着の要因

となる。⇒ フライアッシュ固着によるサイロ詰り

対策:固着しずらい炭種(高CaO炭)の選択

⇒ フライアッシュ製造炭種に制約が生じる。

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JISフライアッシュ安定確保に向けた取組み(北海道電力)

ブレンディングサイロの活用

JISフライアッシュ製造におけるブレンディングサイロ( 2,500t×2基)の活用。

○ブレーン比表面積の調整⇒分級細粉と原粉を混合

○強熱減量の調整⇒高Ig.loss灰と低Ig.loss灰を混合

○製品の均質化⇒2,500t/ロット単位で混合・均質化

分級装置 ブレンディングサイロ 13

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製品サイロによる貯灰

JISフライアッシュの安定供給を図るため、発電所構外

に大型の製品サイロ(6,500t×2基、2,500t×1基)を確

保して、需要に応じて製品を在庫することで需給バランスをとっている。

製品サイロ

発電所(製造) 製品サイロ(貯蔵) 顧客

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フレコンによる製品貯蔵

発電所定期検査時等、貯灰量が

大型サイロでも不足する場合は、

事前にフレコンパック詰めして貯蔵

することで対応。(平成29年度定期

検査時14,304袋製造) フレコン養生状況

フレコン製造状況 フレコン貯蔵状況

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石炭灰貯蔵サイロの新設

既存の製品サイロの老朽化に対応するため、発電所構内に石炭灰貯蔵サイロ(鉄筋コンクリート製、7,500t×2基、5,000t×1基)を新設する(北電興業)。

2018年12月~7,500t×1基完成

2019年8月~7,500t×1基、5,000t×1基完成

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②路盤材(石炭灰混合材料)

フライ・クリーンフライアッシュ・セメント・水を主原料とする

固化体造粒材

・RC材同等品質

(北海道開発局、北海道の品質基準適合)

・土壌環境基準適合

・用途~下層路盤材、凍上抑制材、基礎砂利

・製造・販売~越智建設(株)

・事業開始~2003年

・北海道認定リサイクル製品、エコマーク認定製品

※使用する石炭灰の品質制約が少なくJIS適合外のフライアッシュが利用できるため、石炭灰の大量利用が可能。

※製品貯蔵による石炭灰需給調整の効果が期待できる。

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フライ・クリーンの品質試験結果

北海道開発局、北海道のRC規格

再生路盤材 フライ・クリーン

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フライクリーンの施工例

フライクリーン施工状況 アスファルト舗装状況

・舗装用下層路盤材

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フライ・クリーンの主な利用実績

公共工事(2007年~2014年)

北海道開発局発注工事 3件 道路、岸壁舗装路盤材 約2,800t

北海道発注工事 5件 道路路盤材 約800t

苫小牧市発注工事 16件 道路路盤材、建築外構等 約4,400t

苫小牧港管理組合発注工事 6件 埠頭ヤード造成 約16,100t

札幌市、北広島市、厚真町、安平町発注工事11件 道路路盤材等 約4,900t

民間工事(2007年~2014年)

店舗、工場、倉庫の外構等 年間約22,000t(2007)~約166,000t(2014)

石炭灰使用実績2006:4.1万t、2007:3.4万t、2008:3.4万t、2009:4.0万t、 2010:6.8万t2011:7.1万t、2012:8.0万t、2013:9.6万t、2014:11.5万t、2015:11.2万t

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③地盤改良材

港湾岸壁の耐震化工事への利用

・苫小牧港で多数の実績

・浚渫土砂にフライアッシュとセメントを混合したスラリーを水中打設して改良土地盤を構築

・フライアッシュを分離低減剤とした事前混合処理工法

・フライアッシュの水中不分離性とポゾラン反応によるセメント量低減効果を活用

標準配合:

改良土1m3=浚渫土+フライアッシュ300kg+セメント40kg+海水

(設計強度:材齢28日一軸圧縮強度 qu=200kN/㎡)

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苫小牧港西港区岸壁西-9.0m(耐震)標準断面図 改良土打設状況(西港区)

年 度2003 2009 2010 2012 2013 2014 2015 2016H15 H21 H22 H24 H25 H26 H27 H28

石炭灰使用量(t) 28,140 10,410 11,360 14,740 8,920 11,000 3,880 11,270

苫小牧港西港区

苫小牧港東港区

石炭灰利用実績

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改良プラント・水中打設 計画図

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石炭灰による土砂改良プラント 全景

浚渫土砂 振動篩装置 混合撹拌装置 石炭灰サイロ

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石炭灰による土砂改良プラント図

浚渫土砂

振動篩装置 高圧圧送ポンプ

石炭灰サイロ 混合撹拌装置

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石炭灰改良土の水中打設状況

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石炭灰による港湾地盤改良の利点

発電所は一般に港湾に隣接して立地しており、需要地が近いことによるコストメリットが活かせる。

使用する石炭灰の品質制約が少なく、大量利用が可能。

石炭灰の特徴である分離抵抗性を活かし、港湾浚渫土砂の有効利用が図れる。

石炭灰の特徴であるポゾラン反応を活かし、セメント量の低減が図れる。

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3.土木・建築資材としての石炭灰利用拡大に向けて

コンクリート用JISフライアッシュの需要拡大

石炭灰の特徴を も活かせる高付加価値用途

それでも、製造量に限界があり、一部の石炭灰しか利用できない!

フライアッシュセメント・グリーン調達品目・混合セメントの大半は高炉セメントであり、生産量はわずか。(2015販売シェア)高炉セメント~20%フライアッシュセメント~0.2%

コンクリート混和材・使用目的に応じて配合の自由度が高い・コンクリートの耐久性確保のために求められる水セメント比の上限規定で、フライアッシュセメントと同等に扱われない。

品質確保と安定供給の努力は、必須条件

W/C≦60% ⇒ W/(C+F)≦60% への読替え

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品質制約が少なく大量利用可能な需要の拡大

石炭灰安定処理には必須!

土木学会「石炭灰混合材料の利用拡大に向けた設計・施工指針小委員会」(2017~2019)の検討成果に期待しています。

石炭灰混合材料、石炭灰地盤改良土 ⇒ 地盤材料としての利用・リサイクル材活用による天然資源の枯渇防止・コンクリート再生材の補完・港湾工事において大量に必要となる土質材料の確保

普及促進のためには 公的認知(リサイクル製品認定等)

現状~使用環境によらず土壌環境基準適合が条件(普及の阻害要因)

合理的な環境安全性評価法の確立が望まれる。

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