UDトラックス株式会社 EBS・ABS 電子制御式ブ...
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UDトラ ッ ク ス 株 式 会 社
EBS・ABS通 称 名 車 両 型 式 エンジン型式 適 用 時 期 出 典 資 料
クオン
LDG-CK系LDG-CV系LDG-CD系LKG-CD系LDG-CW系LKG-CW系LDG-CG系LKG-CG系LDG-GK系
GH11TAGH11TBGH11TCGH13TDGH13TE
2010.7~ 整備要領書2010 大型トラック(Ⅳ)No. S2000 3C78A
電子制御式ブレーキ・システム(EBS・ABS)
1 概 要
1) ABS
ABSとは,アンチロック・ブレーキ・システム(Anti-lock・Brake・System)の略称で,滑りやすい路面における制動時に,車輪ロックによるタイヤ・スリップを電子制御により防止することで制動力が確実に路面に伝わり安定した車両姿勢が得られる。また,摩擦係数の異なる路面でも車輪ごとに制動力がコントロールされるので車両の尻ふりが防止できる。制動時に車輪がロックしないのでハンドル操作が確保でき,障害物の回避が容易に行えると共に緊急制動時にはポンピング・ブレーキ操作が不要なため,ドライバの負担を軽減する。万一,ABSに異常が発生した場合にも系統単位で自動的に通常ブレーキに復帰させるほか,自己診断機能により異常警報を発し安全を確保する。2) EBS
EBSとはエレクトロニック・ブレーキ・システム(Electronic・Brake・System)の略称で,ブレーキ・システムに電気信号系を追加することによりブレーキ・レスポンス及びブレーキ・フィーリングを向上させたシステムである。制動操作に対するブレーキの応答性がよく,制動距離の短縮効果が得られる。また,積載量の大小にかかわらず同じペダルの踏み込み量で同じ減速度が得られるようにブレーキをコントロールするため,積載量に応じてペダルの踏み方を変える必要がなくドライバの負担を軽減する。万一,システムに異常が発生した場合でも,自動的に通常ブレーキに復帰させるほか,自己診断機能により異常警報を発し安全を確保する。なお,EBSはABSの機能も備えており,更にEHS※コントロール・ユニットからの制御信号(CAN通信)によりEHSとしても機能する。※:EHSとはイージ・ヒル・スタート(Easy・Hill・Start)の略称で,発進動作までの間,電磁バルブによりブレー
キ圧を保持することで,坂道発進を容易にする坂道発進補助装置のことである。
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2 構造・機能
1) 構成部品の構造・作動
⑴ コントロール・ユニット(図-1)
センタ・コンソール内にABS,EBSコントロール・ユニットが設置されており,システム全体の制御を行っている。コントロール・ユニットは自己診断機能をもち,コントロール・ユニット自身内部の状態を常にチェックすると同時に各ユニット及び配線の状態をチェックしている。システム異常時は,ウォーニング・ランプを点灯させる。なお,コントロール・ユニットへの電源系のコネクタにはショート・バーがあり,コネクタが緩むとABSの場合はABSウォーニング・ランプ,EBSの場合はEBSウォーニング・ランプが点灯する。注意 ABSコントロール・ユニットは車種及びシステムに
よって異なるため,識別ラベルが貼り付けされている。
間違った適用はシステムの故障の原因となる。 図-1 コントロール・ユニット
⑵ ABSコントロール・ユニット(図-2)
常時,車輪速センサからの電気信号により車輪速と推定車両速度を演算処理しており,必要に応じてABSを作動させる。ABS作動時は,制御信号を必要に応じた箇所のABSモジュレータに送り,ブレーキ空気圧を制御する。なお,ABS制御回路は2系統となっており,異常発生時には,異常があった箇所を含む系統の一部又は全部を通常ブレーキに復帰させるようになっている。車輪速センサを装着している4輪に対して4個のABSモジュレータを,前軸左右各1個と後軸左右各1個の2系統で管理,制御する。
図-2 ABSコントロール・ユニット
⑶ EBSコントロール・ユニット(図-3)
前軸側は左右の車輪速センサからの電気信号で,後軸側はアクスル・モジュレータとのデータ通信により常時,車輪速の監視及び推定車両速度を演算処理しており,ブレーキ・バルブからの電気信号入力に応じて最適な制動力を得られるようブレーキ系統の空気圧を制御する。トラクタはトレーラに供給するブレーキ空気圧も最適になるよう制御する。制動時,ブレーキ・バルブからペダルの踏み込み量を電気信号として受け取ると,そのときの車両速度をもとに踏み込み量に応じた要求減速度を演算し,最適なブレーキ空気圧を決定する。プロポーショナル・リレー・バルブ,アクスル・モジュレータ,EBSトレーラ・コントロール・バルブ(トラクタのみ)に制御信号を送り,必要に応じたブレーキ空気圧を発生させることによりブレーキを作動させる。また,制動中は実際の減速度と要求減速度を比較し,
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インフォメーション・モジュール(図-5)
インフォメーション・モジュールは内部にリレーと自己保持回路をもち,ABSジャンパ・ケーブルとトレーラ側ABSプラグの連結により,トレーラにABSが装着されているか確認する働きをする。ABS付きトレーラを連結したときは,インフォメーション・ランプの消灯によりABS付きトレーラであることを示し,またABSなしトレーラを連結したときは,インフォメーション・ランプの点灯によりABSなしを知らせる。
要求減速度となるようブレーキ空気圧を制御し続ける。ABS機能作動時,前軸側ブレーキはABSモジュレータに制御信号を送り直接制御する。後軸側ブレーキはアクスル・モジュレータに制御信号を送り,アクスル・モジュレータがブレーキ空気圧を制御する。
図-3 EBSコントロール・ユニット
⑷ リレー類
インフォメーション・モジュール・リレー(トレーラ・ストップ・ランプ・リレー)(図-4)
ストップ・ランプ点灯時にストップ・ランプ回路からの電流によって励磁され,インフォメーション・モジュールにストップ・ランプ点灯(ブレーキの作動)を知らせると同時に,トレーラ側のストップ・ランプを点灯させる。
図-4 インフォメーション・モジュール・リレー
図-5 インフォメーション・モジュール
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⑹ ABSモジュレータ(図-8)
ABSモジュレータはコントロール・ユニットからの電気信号により制御される2個のソレノイド・バルブにより構成されている。ソレノイド・バルブそれぞれの開,閉状態の組み合わせにより,ブレーキ・チャンバ(フルエア)へ送られるブレーキ空気圧を制御する。
⑸ 車輪速センサ及びパルス・ホイール
車輪速センサ及びパルス・ホイールは,各車輪に設置されている。 車輪速センサ(図-6)
車輪速センサはブレーキ・ブラケット又はアクスル・チューブにセンサ・ブラケット及びホルダを介して取り付けてある。センサ本体は,永久磁石コアにコイルを巻いた電磁ピックアップである。車輪が回転してパルス・ホイールのセンシング・ホールがセンサの磁束を通過するとき,センサ・コア外周のコイルに生じる電位差(パルス信号)を車輪速信号としてコントロール・ユニットに送る。
図-6 車輪速センサ
パルス・ホイール(図-7)
パルス・ホイールはハブ側に圧入された非分解部品で,100個のセンシング・ホールが車輪速センサのコアに対して垂直に均等配列されており,センサの磁束に反応する鉄材を用いている。なお,パルス・ホイールの交換はハブAss'yで行う。
図-7 パルス・ホイール
図-8 ABSモジュレータ
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⑻ EBSウォーニング・ランプ(図-10)
EBSウォーニング・ランプ(赤色)はコンビ・メータ内にありコントロール・ユニットに接続されている。コントロール・ユニットが自己診断機能によりABS機能に異常があると判断した場合に点灯して,ドライバに警告する。なお,点灯時はEBSウォーニング・ブザーも鳴る。このときEBSは作動不可になる。
⑺ ABSウォーニング・ランプ(図Ⅰ-9)
ABSウォーニング・ランプ(黄色)はコンビ・メータ内にあり,コントロール・ユニットに接続されている。コントロール・ユニットが自己診断機能によりABS機能に異常があると判断した場合に点灯し,ドライバに警告する。
図Ⅰ-9 ABSウォーニング・ランプ
図-10 EBSウォーニング・ランプ
⑼ トレーラABSウォーニング・ランプ(図-11)
トレーラABSウォーニング・ランプ(黄色)はコンビ・メータ内にある。トレーラにABSが装着されており,トレーラのコントロール・ユニットが自己診断機能によりシステムに異常が発生したと判断した場合に点灯し,ドライバに警告する。
図-11 トレーラABSウォーニング・ランプ
⑽ トレーラABSインフォメーション・ランプ(図-12)
トレーラABSインフォメーション・ランプ(黄色)はコンビ・メータ内にある。ABSなしトレーラを連結した場合に,インフォメーション・モジュールにより点灯してドライバにABSが装着されていないトレーラを牽引していることを知らせる。
図-12 トレーラABSインフォメーション・ランプ
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⑾ EBS仕様ブレーキ・バルブ(図-13)
EBS仕様のブレーキ・バルブは,通常のブレーキ・バルブと同様にペダルの踏み込み加減に応じた空気圧信号を発生するだけでなく,踏み込みタイミング及び踏み込み量を電気信号としてコントロール・ユニット及びEBSストップ・ランプ・リレーに送るスイッチ及びストローク・センサを内蔵している。スイッチ及びストローク・センサはそれぞれ二つ内蔵されており,万一どちらか一方が故障しても残り一つの回路の電気信号をもとにコントロール・ユニットはEBSを作動させることができる。
図-13 EBS仕様ブレーキ・バルブ
⑿ プロポーショナル・リレー・バルブ(図-14)
プロポーショナル・リレー・バルブは,トラクタはセカンド・クロス・フレーム前方,トラックはサード・クロス・フレーム後方に設置されており,前軸側ブレーキのEBS制御を行う。プロポーショナル・ソレノイド・バルブ,リレー・バルブ,圧力センサを内蔵している。制動時,コントロール・ユニットからの電気信号がプロポーショナル・ソレノイド・バルブを作動させ,電気信号を空気圧信号に変換してリレー・バルブに送る。リレー・バルブはエア・リザーバからの空気圧を,プロポーショナル・ソレノイド・バルブからの空気圧信号及びブレーキ・バルブからの空気圧信号に比例したブレーキ空気圧として出力する。この出力圧は圧力センサが電気信号に変換してコントロール・ユニットに送る。電気信号が失陥(EBS非作動)時は,通常のリレー・バルブと同様にブレーキ・バルブからの空気圧信号だけで作動する。
図-14 プロポーショナル・リレー・バルブ
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⒀ アクスル・モジュレータ(図-15)
アクスル・モジュレータはエア・リザーバから後軸ブレーキへの配管途中に設置され,後軸側ブレーキのEBS制御及びABS機能制御を行う。アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットが一つと,左右のブレーキ空気圧を独立して制御するためにソレノイド・バルブが4個,出力圧センサ,リレー・バルブが,それぞれ2個ずつ内蔵されている。アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットは,車輪速センサからの電気信号により後軸側左右の車輪速を,圧力センサからの電気信号により後軸側ブレーキ空気圧を監視している。また,コントロール・ユニットとデータ通信することにより,コントロール・ユニットからの指示に従い後軸側のブレーキを制御する。ソレノイド・バルブは片側2個で構成されており,アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットの制御により作動し,リレー・バルブへ空気圧信号を送る。出力圧センサは左右それぞれのブレーキ空気圧をアクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットに電気信号として送る。リレー・バルブは,ソレノイド・バルブからの空気圧信号に比例した空気圧をそのまま後軸側ブレーキに送る。制動時,ブレーキ作動開始信号及びドライバの要求する減速度データをコントロール・ユニットからアクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットが受信する。アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットはソレノイド・バルブを制御し,エア・リザーバからの空気圧を必要な圧力に調整してブレーキに送る。制動中は実際の車輪速及びブレーキ空気圧とコントロール・ユニットから受信した減速度データを演算処理し,要求減速度になるよう調整し続ける。制動中にいずれかの後輪がロック傾向にあるとコントロール・ユニットが判断した場合,アクスル・モジュレータがロック傾向にある車輪へのブレーキ空気圧をABSモジュレータと同様に制御して,効率的な制動を行う。(ABS機能の作動)
図-15 アクスル・モジュレータ
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⒁ ソレノイド・バルブ(図-16)
ソレノイド・バルブは,後軸用ブレーキ空気圧のバックアップ回路中に設置されている。通常(EBS作動状態)は,ブレーキ・ペダルを踏むとコントロール・ユニットがソレノイド・バルブを“ON”(通電)状態にして,ブレーキ・バルブからの後軸用ブレーキ空気圧信号がアクスル・モジュレータに伝わるのを遮断している。万一,異常が発生したEBSが非作動状態になった場合,ソレノイド・バルブは“OFF”(非通電)状態になり,ブレーキ・バルブからの後軸用ブレーキ空気圧信号がそのままアクスル・モジュレータに送られる。
図-16 ソレノイド・バルブ
⒂ EBSトレーラ・コントロール・バルブ(図-17)
EBSトレーラ・コントロール・バルブはトレーラへのブレーキ配管直前に設置されており,トレーラ側ブレーキ(コントロール・ライン,サプライ・ライン共)への供給空気圧の制御を行う。ソレノイド・バルブ,リレー・バルブ,セーフティ・バルブ,圧力センサを内蔵している。ソレノイド・バルブはコントロール・ユニットからの電気信号を空気圧信号に変換してリレー・バルブに送る。リレー・バルブはエア・リザーバからの空気圧を,ソレノイド・バルブからの空気圧信号及びブレーキ・バルブからの空気圧信号又はハンド・ブレーキ・バルブからの空気圧信号に比例したブレーキ空気圧としてサービス・ラインに出力する。圧力センサは出力圧を電気信号に変換してコントロール・ユニットに送る。サプライ・ラインに失陥があった場合,セーフティ・バルブが作動しエア・リザーバのエア損失速度をおさえる。電気信号が失陥(EBS非作動)時は,ブレーキ・バルブ又はハンド・ブレーキ・バルブからの空気圧信号のみに比例したブレーキ空気圧をサービス・ラインに出力する。
図-17 EBSトレーラ・コントロール・バルブ
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増圧(通常)モード
ソレノイド・バルブ1,2とも非通電状態で,入力空気圧をそのまま出力する。入力空気圧がそのままエア・チャンバへ送られるので,入力空気圧の増減がそのまま制動力の増減となる。 減圧モード
ソレノイド・バルブ1,2とも通電状態で,入力空気圧を遮断し,出力側空気圧を大気中に排出する。入力空気圧と関係なくエア・チャンバ内の空気圧が減圧され,制動力が減少する。 保持モード
ソレノイド・バルブ1が通電,ソレノイド・バルブ2が非通電状態で,入力空気圧を遮断し,出力側空気圧も遮断(保持)する。入力空気圧と関係なくエア・チャンバ内の空気圧が保持されるので,制動力も保持される。
⒃ ABS(EBS)ジャンパ・ケーブル(図-18)
トラクタ側とトレーラ側の電気回路を連結するためのカプラ付きのケーブルである。ABS付きトレーラへのABS用電源,アース及びウォーニング回路,更にEBS付きトレーラの場合はEBS用通信回路(EBS付きのトラクタのみ)を接続する。
図-18 ABS(EBS)ジャンパ・ケーブル
2) ABS制御
コントロール・ユニットは車輪速センサからの回転(電気)信号により各車輪の回転速度を常に監視している。制動中に車輪速が規定の減速度(減速パターン)を超えたとき,コントロール・ユニットはその車輪がロックする恐れがあると判断し,制御信号をABSモジュレータに送りエア・チャンバ内の空気圧を減圧することで制動力を加減して車輪のロックを防止する。その後,車輪速が復帰すると,コントロール・ユニットは車輪ロックの恐れがないと判断し,再び制御信号をABSモジュレータに送り,エア・チャンバ内を増圧して制動力を増す。このサイクルを繰り返すことにより滑りやすい路面での車輪のロックを防止し,安定した制動力を確保する。制動中,上記のような制動力の減少,増加というサイクルを繰り返すことにより,滑りやすい路面での車輪ロックを防止し,安定した制動力を確保する。⑴ ABSモジュレータの動作(図-19)
ABSモジュレータは,コントロール・ユニットからの電気信号により制御される2個のソレノイド・バルブの組み合わせで以下の三つのモードに動作し,エア・チャンバへのブレーキ空気圧を制御する。
図-19 ABSモジュレータの動作
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3) EBS制御
コントロール・ユニットはブレーキ・バルブからの電気信号によりペダルの踏み込みタイミング及び踏み込み量を検知し,踏み込み量に応じた減速度を得られるようにプロポーショナル・リレー・バルブ,アクスル・モジュレータ,EBSトレーラ・コントロール・バルブ(トラクタのみ)に制御信号を送る。プロポーショナル・リレー・バルブはコントロール・ユニットからの電気信号及びブレーキ・バルブからの空気圧信号に比例した空気圧を,ブレーキ・チャンバ(フルエア)へ送り,ブレーキを作動させる。アクスル・モジュレータはコントロール・ユニットからのデータ信号から必要と判断される空気圧を,後軸用のブレーキ・チャンバへ送り,ブレーキを作動させる。EBSトレーラ・コントロール・バルブはコントロール・ユニットからの電気信号及びブレーキ・バルブからの空気圧信号に比例した空気圧を,トレーラのブレーキ系統に送る。また,コントロール・ユニットはABSと同様に車輪速センサからの電気信号により各車輪の回転速度を常に監視しており,実際の減速度をペダル踏み込み量から算出した目標減速度と比較し,異なる場合には目標減速度と一致するようプロポーショナル・リレー・バルブ及びアクスル・モジュレータを制御して制動力を調整する。⑴ 通常制動時
ドライバがブレーキ・バルブのペダルを踏み込むと,ブレーキ・バルブ内部のスイッチ及びストローク・センサがペダルの踏み込みタイミングと踏み込み量(角度)を電気信号としてコントロール・ユニットに送る。コントロール・ユニットは常時,前輪側の車輪速センサ及び後輪側のアクスル・モジュレータ内蔵のコントロール・ユニットとのデータ通信により車両速度を推定,監視しており,ブレーキ・バルブからの電気信号を受け取ると,踏み込み量とその時点での推定車両速度から要求減速度を演算し,要求減速度に応じた制動力を発生するよう各ユニットに制御信号を送る。前軸側はコントロール・ユニットがプロポーショナル・リレー・バルブを電気信号で制御し,適切なブレーキ空気圧を発生させる。後軸側はコントロール・ユニットがアクスル・モジュレータ内蔵のコントロール・ユニットとデータ通信しており,コントロール・ユニットからの指示にしたがってアクスル・モジュレータが適切なブレーキ空気圧を発生させる。トラクタの場合,コントロール・ユニットがEBSトレーラ・コントロール・バルブを電気信号で制御し,適切なブレーキ空気圧を発生させトレーラ側に送る。なお,制動中は常時,実際の減速度と要求減速度との比較演算を行い,要求減速度どおり減速するようにブレーキ空気圧を調整し続ける。電気信号でブレーキ空気圧を制御するため,ブレーキ・バルブからの空気圧信号よりもレスポンス良くブレーキ空気圧を制御できる。また,要求減速度で減速するようにブレーキ空気圧を制御するので,積載量にかかわらず同じペダルの踏み込み量で同じ減速度が得られる。⑵ EBS非作動時
電気系統の故障又はコントロール・ユニットが重大故障を検出しEBS機能の作動を中止した場合は,従来のブレーキ・システム同様,空気圧回路のみでブレーキは作動する。前軸側はプロポーショナル・リレー・バルブが,ブレーキ・バルブからの空気圧信号のみでリレー・バルブとして作動し,空気圧信号に比例したブレーキ空気圧を発生させる。後軸側は空気圧バックアップ回路上のソレノイド・バルブが,ブレーキ・バルブからの空気圧信号でリレー・バルブとして作動し,空気圧信号に比例したブレーキ空気圧を発生させアクスル・モジュレータに送る。ア
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②キー・スイッチが“OFF”になっているときは,“ON”にする。③キー・スイッチを“ON”にした場合は3秒以上間をあけ,ダイアグ・チェック・ハーネスを0.5~3.0秒間ボデー・アースする。注意 3.0秒以上ボデー・アースさせると,過去の故障コー
ドが消去される。また,ABS故障コードが出力され
ないことがあるので,ボデー・アースは,必ず時間内
で行うこと。
④ABSウォーニング・ランプ(EBSはASR作動ランプ,又はUDSC/ASR作動ランプ)が点滅し,故障コードを出力する。
クスル・モジュレータはブレーキ空気圧をそのまま通過させブレーキを作動させる。トラクタの場合はEBSトレーラ・コントロール・バルブがブレーキ・バルブからの空気圧信号のみでリレー・バルブとして作動し,空気圧信号に比例したブレーキ空気圧を発生させトレーラ側に送る。⑶ ABS機能作動時
ABS機能作動時はABSと同じく,車輪をロックさせずに効率よく制動できるようにコントロール・ユニットが前軸側はABSモジュレータを,後軸側はアクスル・モジュレータを制御してブレーキ空気圧を制御する。更にABSと同じく補助ブレーキを一時的に解除する。
3 点検・整備
1) 故障診断
⑴ 診断方法(図-20,21)
故障診断はコントロール・ユニットの自己診断機能により出力される故障コードで行う。故障コードは,ABSウォーニング・ランプ(EBSはASR作動ランプ,又はUDSC/ASR作動ランプ)の点滅によって表示され,故障箇所及び故障内容の特定をすることができる。また,ABS(含むASR機能)のコントロール・ユニットにはメモリ機能が内蔵されており,過去の故障を取り出して確認することができる。参考 ・ウォーニング・ランプの点灯を伴わない異常は,構成部品の機械的な故障が考えられる。コントロール・
ユニットの自己診断で故障箇所を特定するのは難しいので各構成部品を点検し,異常が確認されたら処置
を行うこと。
・EBSは現在故障のみ出力可能なため,EBS又はABSウォーニング・ランプが点灯又はEBSウォーニング・
ランプが点滅している状態でなるべくキー・スイッチを“OFF”にせず処置を行うこと。
①運転席前方,ステアリング・コラム横にあるハーネス・クリップより,ABS故障診断用ギボシ“B”を取り出し,ギボシ端子部に専用工具のダイアグ・チェック・ハーネス(99731 Z0007)を接続する。
図-20 診断方法⑴
図-21 診断方法⑵
⑤故障コードを読み取り,故障コード一覧表を参照して故障箇所の特定を行う。
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2) 故障コードの表示
故障コードは,点滅するランプの点灯回数で表示され,2桁(けた)の数値の組み合せで1件の故障を表わす。故障コードは,アースに短絡1.5秒後に出力され,出力中はランプが0.5秒間隔で点滅する。1桁目と2桁目の間は1.5秒の消灯で表し,1件目と2件目の間は,4秒の消灯で表す。(最大4件の故障コードを記録)ABS(含むASR機能)の故障コードは,故障のない場合,現在故障のある場合,過去の故障を出力している場合で出力パターンが異なる。EBSは,現在の故障状況のみ出力し,過去の故障出力はない。参考 ・故障コードの意味は故障コード一覧表を参照すること。
・エンジン回転が高い状態でキーOFFするとCAN系の故障コードが過去故障で出力する場合がある。
⑴ ABS
イ 故障のない場合(図-22)
現在故障がなく,過去においても故障の記録がない場合は,正常時コード(故障コード「1-1」)を出力する。故障コード出力は1回のみで,出力後4秒で自動的に終了し,ランプは消灯したまま(条件によっては点灯したまま)になる。注意 故障のない場合は,故障コードは1回しか出力されないので見落としのないように注意すること。
図-22 故障のない場合
ロ 現在故障のある場合(図-23)
自己診断時に故障が発見された場合は,その故障コードを繰り返し出力する。2件以上の故障がある場合は,最後に発見された故障のコードを繰り返し出力する。出力を終了するにはキー・スイッチを“OFF”にする。注意 故障が2件以上ある場合は,最後に発見された故障以外の故障コードは出力されない。故障診断時に故障件数
を特定するのは困難なので,出力されている故障コードに対応する故障の処置後,必ず再度故障診断を行い,
ほかの故障がないか確認すること。
図-23 現在故障のある場合
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ハ 過去の故障出力(図-24)
現在は故障がないが過去に故障があった場合は,最新の故障コードから1回ずつ最大4件の出力を行う。すべての故障コードを出力後,自動的にランプが消灯又は点灯する。注意 故障コードは1回ずつしか出力されないので,見落としのないように注意する。また,1桁目と2桁目を間違
えないように注意する。
図-24 過去の故障出力
⑵ EBS(図-25)
現在の故障状況のみ出力する。故障のない場合は正常時コード「1-1」,故障のある場合はその故障を表すコードを1回出力する。参考 故障コードに従って処置を行った後,再度故障診断を行い正常時コード「1-1」が出ることを確認する。
図-25 EBS
3) 故障コードの消去(ABSのみ)
⑴ 消去方法(図-26,27)
故障箇所確認後,故障コードを消去する場合は以下の方法で行う。参考 故障コードの消去を行うと,コントロール・ユニット内に記憶している故障コードをすべて消去する。消去
された故障コードは再度取り出すことができないので,消去前に十分確認してから作業を行うこと。
①故障診断用ギボシ端子“B”に専用工具のダイアグ・チェック・ハーネス(99731 Z0007)を接続する。②キー・スイッチを“ON”にする。③キー・スイッチを“ON”にした後3秒以上間をあけ,ダイアグ・チェック・ハーネスを3.0~6.3秒間ボデーにアースする。参考 故障診断用ギボシ端子を15秒以上ボデー・アースさ
せると,コントロール・ユニットがランプ球切れと判
断してしまい故障コードの消去は行われないので,ボ
デー・アースは必ず時間内に行うこと。
図-26 消去方法⑴
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⑤故障コード出力操作を行い,故障コード“1-1”(正常)を確認する。⑵ 消去確認
システム・コードの応答時間で確認する。イ 消去完了の場合(図-28)
故障コードの消去が完了すると,約8秒後にシステム・コードを出力する。出力を終了するにはキー・スイッチを“OFF”にする。その後,故障コード出力を行い,故障コード“1-1”(正常)を確認すること。
図-28 消去完了の場合
ロ 消去不可の場合(図-29)
現在故障箇所がある場合,故障コードは消去できない。この場合は最初からシステム・コードを出力する。システム・コードは,キー・スイッチを“OFF”にするまで繰り返す。消去不可が確認されたら再度故障診断を行い,故障箇所を修理する。
図-29 消去不可の場合
参考 〈システム・コード表示回数〉
区 分 表示回数
フルエア・ブレーキ車 2
④故障コードが正常に消去された場合,約8秒後にシステム・コードが表示される。現在故障箇所があり,故障コードを消去できない場合は,直ちにシステム・コードが出力される。参考 ・現在故障がある場合は故障コードを消去することは
できない。
・ABS(含むASR機能)は,故障コードの消去作業を
行うとASR作動ランプが点灯し,ASRは非作動に
なる。キー・スイッチを“OFF”にすれば消灯する。
図-27 消去方法⑵
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4) 故障コード一覧表
故障診断により出力された故障コードを故障コード一覧表と照らし合わせ,故障箇所を特定する。また,故障コード一覧表に記されている「点検記号」は,次項の「点検のヒント」に対応しているので参照し処置を行う。⑴ ABS
1桁目 2桁目 故 障 内 容 点検記号 備 考1 1 正常 ―
2
1 全ABSモジュレータ・ソレノイドの長時間作動,又は前輪右側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
B,C,E,F,G
2 前輪左側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
C,E,F,G
3 後輪右側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
C,E,F,G
4 後輪左側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
C,E,F,G
3
1 前輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B2 前輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B3 後輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B4 後輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B
4
1 前輪右側車輪速センサ断線,ショート A2 前輪左側車輪速センサ断線,ショート A3 後輪右側車輪速センサ断線,ショート A4 後輪左側車輪速センサ断線,ショート A
5
1 前輪右側車輪速センサ信号異常 B2 前輪左側車輪速センサ信号異常 B3 後輪右側車輪速センサ信号異常 B4 後輪左側車輪速センサ信号異常 B
6
1 前輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B2 前輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B3 後輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B4 後輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B
71 CAN通信ライン断線,ショート,信号異常,極度のスリップ E,F,G,
K,L4 ABSウォーニング・ランプ断線,ショート,球切れ E,J
8
1 コントロール・ユニット電源低電圧,断線 I,E2 コントロール・ユニット電源過電圧 H3 コントロール・ユニット内部異常 M4 コントロール・ユニット内部異常 M5 コントロール・ユニット・アース断線,ショート F,G
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⑵ ABS(ASR機能付き)
1桁目 2桁目 故 障 内 容 点検記号 備 考1 1 正常 ―
2
1 全ABSモジュレータ・ソレノイドの長時間作動,又は前輪右側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
B,C,E,F,G
2 前輪(CV系は前前軸)ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
C,E,F,G
3 後輪右側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
C,E,F,G
4 後輪左側ABSモジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
C,E,F,G
3
1 前輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B2 前輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B3 後輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B4 後輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ B
4
1 前輪右側車輪速センサ断線,ショート A2 前輪左側車輪速センサ断線,ショート A3 後輪右側車輪速センサ断線,ショート A4 後輪左側車輪速センサ断線,ショート A
5
1 前輪右側車輪速センサ信号異常 B2 前輪左側車輪速センサ信号異常 B3 後輪右側車輪速センサ信号異常 B4 後輪左側車輪速センサ信号異常 B
6
1 前輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B2 前輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B3 後輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B4 後輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B
7
1 CAN通信ライン断線,ショート,信号異常,極度のスリップ E,F,G,K,L
2ディファレンシャル・ブレーキ・バルブ断線,ショート,作動時間異常,又は後々軸ブレーキ・カット・マグネチック・バルブ断線,ショート,作動時間異常(CD車のみ)
C,E,F,G
4 ABSウォーニング・ランプ断線,ショート,球切れ E,J5 ASRシステム異常 E
8
1 コントロール・ユニット電源低電圧,断線 I,E2 コントロール・ユニット電源過電圧 H3 コントロール・ユニット内部異常 M4 コントロール・ユニット内部異常 M5 コントロール・ユニット・アース断線,ショート F,G
- -17
U D
⑶ EBS(UDSC(スタビリティ・コントロール)機能付き)
1桁目 2桁目 故 障 内 容 点検記号 備 考
11 正常 ―2 故障コードでは未定義の故障 ―
2
1 前輪右側ABSモジュレータ・バルブの異常 A2 前輪左側ABSモジュレータ・バルブの異常 A4 UDSCコントロール・ユニットの異常 P,R,S UDSC付き車のみ*5 SAS/SACの異常 Q,R,T UDSC付き車のみ*6 UDSCコントロール・ユニット/SACへの供給電圧の異常 R UDSC付き車のみ*
3
1 前輪右側車輪速センサ・ギャップの異常 B2 前輪左側車輪速センサ・ギャップの異常 B3 後輪右側車輪速センサ・ギャップの異常 B4 後輪左側車輪速センサ・ギャップの異常 B
4
1 前輪右側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート A2 前輪左側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート A3 後輪右側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート A4 後輪左側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート A
5
1 前輪右側車輪速センサ信号異常 B2 前輪左側車輪速センサ信号異常 B3 後輪右側車輪速センサ信号異常 B4 後輪左側車輪速センサ信号異常 B
6
1 前輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B2 前輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B3 後輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B4 後輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常 B
7
1 CAN通信ライン断線,ショート N2 ブレーキ・カット・マグネチック・バルブの異常 D CD車のみ4 ウォーニング・ランプ又はパイロット・ランプの異常 C5 ブレーキ・バルブの異常 E6 EBSトレーラ・コントロール・バルブの異常 F トラクタ7 アクスル・モジュレータの異常 G8 プロポーショナル・リレー・バルブの異常 F
8
1 コントロール・ユニット電源低電圧 H,L,D,G
2 コントロール・ユニット電源過電圧 I3 コントロール・ユニット内部異常 J4 コントロール・ユニット設定不良 K
5 コントロール・ユニット又はABSモジュレータ・アース(戻り側)の異常 A
6 コントロール・ユニット電源(a.7,8,9番端子)の異常 L7 センサ供給電圧の異常 M8 アクスル・モジュレータ供給電圧の異常 D9 前輪速度の異常 B10 後輪速度の異常 B
9
1 ソレノイド・バルブ接続ハーネスの断線,ショート D2 ソレノイド・バルブの異常 D
3アクスル・モジュレータとの通信異常 NUDSCコントロール・ユニットとの通信異常 P,R UDSC付き車のみ*SACとの通信異常 Q,R UDSC付き車のみ*
- -18
U D
1桁目 2桁目 故 障 内 容 点検記号 備 考
9
4 タイヤ・サイズ違い B7 トレーラEBSとの通信異常 O トラクタ8 ESCOT又はEHSとの通信異常 N11 ACC/CMS,ESCOTとの通信異常 N CD車のみ
*:UDSC付き車は,キャリブレーション・ツールを用いてPC用故障コードで故障内容を確認すること。
5) 点検のヒント
⑴ ABS(ASR機能付き)
点検記号 不良内容 点 検 の ヒ ン ト
A 車輪速センサ系統のハーネス断線又はショート
・センサ本体(内部コイル),ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット側コネクタの接触不良,断線,ショートを点検
・センサの抵抗値を測定(温度により抵抗値が変わることに注意)
B 車輪速信号の異常
・センサの出力電圧を測定し,定格値と照合・センサ本体(内部コイル),ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット側コネクタの接触不良,断線,ショートを点検
・パルス・ホイールの損傷及びセンサ・ホルダの固定,センサ・ギャップ,ハブ・ベアリングの遊びを点検
CABSモジュレータ,ディファレンシャル・ブレーキ・バルブ又は後後軸ブレーキ・カット・マグネチック・バルブ異常
・対象部品の導通,抵抗値測定・対象部品の内部エア通路に異物混入・対象部品単位での作動確認
D エキゾースト・ブレーキ・カット・リレー,リターダ・カット・リレー異常
・リレー内部励磁コイルの断線,ショート・シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット側コネクタの接触不良,断線,ショートを点検
E ハーネスの断線
・フューズの不良・コントロール・ユニットと構成部品間の接続が,一時的又は断続的に切れている
・各コネクタ(シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット)の接触不良を点検
・各ハーネスの断線点検:ハーネスを揺さぶって,抵抗変化の有無を点検
F アースにショート・コントロール・ユニットの出力が,一時的又は断続的にアースにショート
・抵抗値の測定,ハーネスの点検
G プラス電源にショート ・コントロール・ユニットの出力又は接続されている構成部品がときどきプラス電源にショート
H 過電圧 ・車両側の回路電圧が32V以上・ジェネレータ,バッテリを点検
I 低電圧・車両側の回路電圧が18V以下・ジェネレータ,バッテリを点検・抵抗値の測定,ハーネスの点検
J ランプ球切れ ・抵抗値測定
K CAN通信ライン異常・ASRのエンジン制御系の点検・ABS+ASRコントロール・ユニットとエンジン・コントロール・ユニット間のCAN通信ハーネス断線点検
L 極度のスリップ
・長時間の駆動輪スリップ(ダイナモ・テスタ・チェック時)・タイヤ・サイズの違い・パルス・ホイールの歯数を点検・ABSモジュレータ,ディファレンシャル・ブレーキ・バルブの機能点検
- -19
U D
点検記号 不良内容 点 検 の ヒ ン ト
M コントロール・ユニット設定不良又は内部異常
・コントロール・ユニットを適用外車両に接続したことによるコントロール・ユニット内部設定エラー
・故障コード消去及びASR再設定ができれば外部要因による異常(継続使用可能)
・故障コード消去及びASR再設定ができない場合は,コントロール・ユニットを交換
⑵ EBS(UDSC機能付き)
点検記号 不良内容 点 検 の ヒ ン ト
A ABSモジュレータ・バルブの異常
・コネクタの接触不良の点検・ハーネスの断線又はショートを点検・モジュレータ・バルブ戻り側グランド・ラインの断線を点検・ソレノイド・バルブの抵抗値を測定し,定格値と照合
B 車輪速信号の異常
・センサの出力電圧,抵抗値を測定し,定格値と照合・タイヤ・サイズの違い・センサ本体,ハーネス及びセンサ・ホルダの固定,センサ・ギャップ,ハブ・ベアリングの遊びを点検
・センサ本体,ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・パルス・ホイールの損傷を点検
C ランプ類の異常
・各コネクタ(シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット)の接触不良を点検
・各ハーネスの断線,ショートを点検・ランプの点検
D 後後軸ブレーキ・カット・マグネチック・バルブ,ソレノイド・バルブの異常
・コントロール・ユニットと各バルブ間のハーネスの断線又は各バルブ本体が一時的もしくは断続的なショート又は断線
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検。ハーネスなど確認後,不良が継続する場合は各バルブ本体を交換
・ソレノイド・バルブの抵抗値を測定し,定格値と照合
E ブレーキ・バルブの異常
・ハーネスの断線又はショートを点検・コントロール・ユニットとブレーキ・バルブ間の接続が一時的もしくは断続的に断線又はショート
・コネクタの接触不良の点検・ブレーキ・バルブ内蔵スイッチの作動点検
F EBSトレーラ・コントロール・バルブ,プロポーショナル・リレー・バルブの異常
・ハーネスの断線又はショートを点検・コントロール・ユニットと各バルブ間の接続が一時的もしくは断続的なショート又は断線
・コネクタの接触不良の点検・バルブ内蔵圧力センサの点検・ソレノイド・バルブの抵抗値を測定し,定格値と照合
G アクスル・モジュレータの異常
・ハーネスの断線又はショートを点検・コネクタの接触不良の点検・コントロール・ユニットからアクスル・モジュレータへの供給電圧を点検
・アクスル・モジュレータのグランド・ライン点検
H 低電圧
・コントロール・ユニットへの供給電圧が16V以下・ジェネレータ,バッテリを点検・車両側の供給電圧に異常がない場合,コントロール・ユニット内部の異常
I 過電圧 ・コントロール・ユニットへの供給電圧が32V以上・ジェネレータ,バッテリを点検
J コントロール・ユニット内部異常・キー・スイッチを“OFF”にし,再度“ON”にして不具合を確認。リセットされていれば外部要因による異常。リセットできない場合はコントロール・ユニットを交換
- -20
U D
点検記号 不良内容 点 検 の ヒ ン ト
K システム構成の不具合
・コントロール・ユニットと構成部品の接続関係を確認・ハーネスの誤接続を点検・コントロール・ユニットとアクスル・モジュレータ間の接続ハーネス及び各部品の適合を確認
・EHSの有無,適合を確認・UDSCの有無の確認及びUDSCコントロール・ユニット,SACの接続の確認
・EBSコントロール・ユニット,UDSCコントロール・ユニットの仕様の確認
L コントロール・ユニット供給電圧の異常・コントロール・ユニット電源ラインのハーネス及び電圧を点検・コントロール・ユニット電源ラインのフューズを点検・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
M センサ供給電圧・プロポーショナル・リレー・バルブ,トレーラ・コントロール・バルブの圧力センサ,ブレーキ・バルブのストローク・センサの電源ラインのハーネス及び電圧を点検
N 通信異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検・コントロール・ユニットとアクスル・モジュレータ間通信ラインのハーネス点検。ハーネスに異常がない場合は,コントロール・ユニットとアクスル・モジュレータを交互に交換して異常を確認
・CAN通信ラインのハーネス及び信号電圧点検。EBSコントロール・ユニットとエンジン・コントロール・ユニット,EHSコントロール・ユニット,ESCOTコントロール・ユニット,トラフィックアイ・ブレーキ・コントロール・ユニット,クラスタ・メータ,エアサス・コントロール・ユニット,VECU,NICUを交互に交換して異常を確認
O トレーラEBSとの通信異常
・トラクタ側ハーネス:ABSジャンパ・ケーブルの点検・トレーラ側:ABSジャンパ・ケーブル・コネクタ6,7番端子の点検(トレーラEBS以外のハーネスが付いていないこと)
・EBSコントロール・ユニット,トレーラEBSコントロール・ユニットの点検
P* EBS,UDSCコントロール・ユニット間ローカルCAN異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検・EBSコントロール・ユニットとUDSCコントロール・ユニット間通信ラインのハーネス点検。ハーネスに異常がない場合は,EBSコントロール・ユニットとUDSCコントロール・ユニットを交互に交換して異常を確認
Q* EBSコントロール・ユニット,SAC間ローカルCAN異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検・EBSコントロール・ユニットとSAC間通信ラインのハーネス点検。ハーネスに異常がない場合は,EBSコントロール・ユニットとSACを交互に交換して異常を確認
R*EBSコントロール・ユニットからUDSCコントロール・ユニットとSACへの電源供給異常
・EBSコントロール・ユニットからUDSCコントロール・ユニットとSACへの供給電圧を点検
・ハーネスの断線又はショートを点検・コネクタの接触不良の点検・UDSCコントロール・ユニットのグランド・ラインを点検・SACのグランド・ラインを点検
S* UDSCコントロール・ユニット固有の異常(取り付け)
・UDSCコントロール・ユニットの取り付け位置,向き,ガタの有無を点検
・UDSCのキャリブレーション
T* SAC固有の異常
・SAC及びSASの異常・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検・SAC又はSASへの供給電圧及びグランド・ラインを点検・SACのCAN通信ラインのハーネス点検。ハーネスに異常がない場合は,SACとEBSコントロール・ユニット,メータを交互に交換して異常を確認
・SASの取り付け位置,方向,舵角中立位置を合わせて点検
*:UDSC付き車は,キャリブレーション・ツールを用いてPC用故障コードで故障内容を確認すること。
- -21
U D
6) 重点部位の点検・整備
⑴ 車輪速センサの点検(一部を抜粋して紹介)
イ 準 備
・サーキット・テスタ,配線図,リード線ロ 点検項目
・車輪速センサ本体・ハーネス(導通,ショート,絶縁)・車輪速センサのセット状態(ギャップ)・パルス・ホイール・最終確認ニ 作業手順(図-30)
図-30 作業手順
- -22
U D
③下表の各端子間で抵抗値を測定する。また,各端子間の絶縁状態を点検する。(図はABS前輪右側を測定)注意 コントロール・ユニットからコネクタを外す場合(EBS:18ピン,ABS:15ピン)又は,電源ラインのフュー
ズを抜く場合はキー・スイッチ“OFF”後3秒以上経過の後抜くこと。
システム端 子 位 置 標準抵抗値
〔kΩ〕前輪右 前輪左 後輪右 後輪左ABS,ABS(含むASR機能) a-10~a-13 a-12~a-15 a-17~a-18 a-11~a-14 1.0~1.3
EBS c-4~c-5 d-7~d-8 62*-1~62*-2 63*-1~63*-2 1.0~1.3
*:62,63はアクスル・モジュレータの番号
図-32 車輪速センサとハーネス組での抵抗点検⑵
④良否判断・測定値が標準値内の場合は,点検 [2](点検記号:B-6)を実施する。・抵抗値が標準値以外又は断線,ショートなどの場合は,点検 [3](点検記号:B-4)を実施する。 ハーネスのGNDショート(点検記号:B-2)(図-33,34)
点検 [1-2]車輪速センサとハーネス組での導通点検①キー・スイッチを“OFF”にする。②下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・コネクタの接続を取り外す。ただし,EBSの後輪側車輪速センサからの配線はアクスル・モジュレータに接続されているので,アクスル・モジュレータからコネクタを取り外す。
ハーネスの断線(点検記号:B-1)(図-31,32)
点検 [1-1]車輪速センサとハーネス組での抵抗点検①キー・スイッチを“OFF”にする。②下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・コネクタの接続を取り外す。ただし,EBSの後輪側車輪速センサからの配線はアクスル・モジュレータに接続されているので,アクスル・モジュレータからコネクタを取り外す。
図-31 車輪速センサとハーネス組での抵抗点検⑴
図-33 ハーネスのGNDショート⑴
- -23
U D
③コントロール・ユニット部のコネクタを取り外したままの状態でキー・スイッチを“ON”にし,各端子とアースの電圧を測定し,電源との絶縁状態を点検する。(図はABS前輪右側を測定)注意 コントロール・ユニットからコネクタを外す場合(EBS:18ピン,ABS:15ピン)又は,電源ラインのフュー
ズを抜く場合はキー・スイッチ“OFF”後3秒以上経過の後抜くこと。
③下表の各端子間で抵抗値を測定する。また,各端子間の絶縁状態を点検する。(図はABS前輪右側を測定)注意 コントロール・ユニットからコネクタを外す場合(EBS:18ピン,ABS:15ピン)又は,電源ラインのフュー
ズを抜く場合はキー・スイッチ“OFF”後3秒以上経過後抜くこと。
システム端 子 位 置 標準抵抗値
〔kΩ〕前輪右 前輪左 後輪右 後輪左
ABS,ABS(含むASR機能)
a-10~アース a-12~アース a-17~アース a-11~アース∞ (絶縁)
a-13~アース a-15~アース a-18~アース a-14~アース
EBSc-4~アース d-7~アース 62*-1~アース 63*-1~アース
∞ (絶縁)c-5~アース d-8~アース 62*-2~アース 63*-2~アース
*:62,63はアクスル・モジュレータの番号
図-34 ハーネスのGNDショート⑵
④良否判断・測定値が標準値内の場合は,点検 [2](点検記号:B-6)を実施する。・抵抗値が標準値以外又は断線,ショートなどの場合は,点検 [3](点検記号:B-4)を実施する。 ハーネスの24Vショート(点検記号:B-3)
点検 [1-3]車輪速センサとハーネス組での導通点検(図-35,36)①キー・スイッチを“OFF”にする。②下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・コネクタの接続を取り外す。ただし,EBSの後輪側車輪速センサからの配線はアクスル・モジュレータに接続されているので,アクスル・モジュレータからコネクタを取り外す。
図-35 車輪速センサとハーネス組での導通点検⑴
- -24
U D
システム端 子 位 置 標準測定値
〔V〕前輪右 前輪左 後輪右 後輪左
ABS,ABS(含むASR機能)
a-10~アース a-12~アース a-17~アース a-11~アース0
a-13~アース a-15~アース a-18~アース a-14~アース
EBSc-4~アース d-7~アース 62*-1~アース 63*-1~アース
0c-5~アース d-8~アース 62*-2~アース 63*-2~アース
*:62,63はアクスル・モジュレータの番号
図-36 車輪速センサとハーネス組での導通点検⑵
④良否判断・測定値が標準値内の場合は,点検 [2](点検記号:B-6)を実施する。・抵抗値が標準値以外又は断線,ショートなどの場合は,点検 [3](点検記号:B-4)を実施する。 センサ出力電圧異常,信号異常〔高周波入力〕(点検記号:B-6)(図-37)
点検 [2] 車輪速センサ出力電圧の点検①各車輪を回せるようにジャッキ・アップする。警告 ジャッキ・アップ時は安全のため車体をスタンドで支え固定すること。
②キー・スイッチを“OFF”にする。③下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・コネクタの接続を取り外す。ただし,EBSの後輪側車輪速センサからの配線はアクスル・モジュレータに接続されているので,アクスル・モジュレータからコネクタを取り外す。③テスト車輪を前進方向に最大8km/h又は,1秒間に1/2回転回しながら,各車輪速センサの出力電圧を測定する。(図はABS前輪右側を測定)
システム端 子 位 置
前輪右 前輪左 後輪右 後輪左ABS,ABS(含むASR機能) a-10~a-13 a-12~a-15 a-17~a-18 a-11~a-14EBS c-4~c-5 d-7~d-8 62*-1~62*-2 63*-1~63*-2*:62,63はアクスル・モジュレータの番号各車輪標準電圧値〔mV-AC〕:100以上
図-37 センサ出力電圧異常,信号異常〔高周波入力〕
- -25
U D
④良否判断・測定値が正常な場合は,コントロール・ユニットの異常が考えられるためコントロール・ユニットを交換する。・測定値が異常な場合は,[5](点検記号:B-7)を実施する。参考 測定値が正常範囲でも各センサの出力電圧値に大きな差がある場合は,車輪速センサの取り付け調整を行う
こと。
⑤確認コントロール・ユニットの交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がないことを確認すること。 コイルの短絡(点検記号:B-4)(図-38)
点検 [3]車輪速センサ本体の点検①キー・スイッチを“OFF”にする。②車輪速センサのコネクタを取り外す。③車輪速センサ・コネクタの端子間にテスタ・リードを当てて抵抗を測定する。標準抵抗値〔kΩ〕:1.0~1.3参考 測定は常温状態で行うこと。
図-38 コイルの短絡
④良否判断・測定値が正常な場合は 点検 [4]を実施する。・測定値が異常の場合はセンサに異常があると考えられるため,センサを交換する(センサ交換時は 点検 [5](点検記号:B-7)を参照して取り付け調整を行うこと)。参考 センサ先端が摩耗している場合は,センサ・ホルダ,センサ・ブラケットの不具合も考えられるので併せて
交換すること。
- -26
U D
コントロール・ユニット~車輪速センサ間ハーネス異常(図-39)
点検 [4]コントロール・ユニット~車輪速センサ間ハーネスの点検①キー・スイッチを“OFF”にする。②コントロール・ユニットからハーネス・コネクタを取り外す。③車輪速センサのコネクタから,ハーネス・コネクタを取り外す。④ハーネスの導通,絶縁,ショートを点検する。
〈EBS:CD,CW,CV,CG,CX車〉
図-39 コントロール・ユニット~車輪速センサ間ハーネス異常
⑤良否判断・点検の結果,異常のあったハーネスの修理又は交換を行う。・ハーネスに異常がない場合は,コントロール・ユニットに異常があると考えられるため,コントロール・ユニットを交換する。⑥確認車輪速センサ,コントロール・ユニットを交換,ハーネスの修理又は交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がないことを確認すること。 パルス・ホイールふれ大,センサ・ギャップ不良(点検記号:B-7)
点検 [5]車輪速センサ取り付け状態の点検車輪速センサの取り付け状態の点検は外部からできないので,タイヤAss'y及びハブAss'yを取り外して行う。ただし,点検後又は部品交換後のハブAss'y取り付け前に必ず取り付け調整を行うこと。なお,CG,CX系車の後輪以外は取り外さずにセンサ・ギャップの簡易確認が行える。取り付け状態の点検(図-40,41,42)①点検する車輪以外に輪止めをする。②タイヤAss'yを取り外す。③ドラム又はディスク・ロータ付きでハブAss'yを取り外す。
- -27
U D
注意 ・ドラム又はディスク・ロータ付きハブAss'yは重いので,デフ・ジャッキなどを使用して降ろすこと。
・取り外しはセンサへの衝撃が加わらぬようにハブ・プーラを使用して行うこと。
④センサ本体,センサ・ホルダ及びセンサ・ブラケットの状態を目視にて点検し,異常がなければレバーなどを使用して,センサ先端をブラケットより下記セット寸法まで突出させる。
センサ・セット寸法〔mm〕:5.5
図-40 取り付け状態の点検⑴
⑤セット後,センサ先端に徐々に力を加えて157~196N{16~20kgf}の力でセンサが押し込まれるかどうか点検する。
図-41 取り付け状態の点検⑵
⑥良否判断・目視にて,センサ・ホルダ及びセンサ・ブラケットに変形,損傷があれば新品と交換し,取り付け調整を行う。
・センサ先端に力を加えて,センサが157N{16kgf}以下で動いたとき,又は196N{20kgf}以上で動かないときは,センサ・ホルダを新品と交換し,取り付け調整を行う。
・取り付け状態に異常がなければ 点検 [6](点検記号:B-5)を実施する。
図-42 取り付け状態の点検⑶
注意 センサ先端が異常に摩耗している場合は,センサ・ホルダ及びセンサ・ブラケットとセンサ本体も併せて交
換すること。
参考 ・センサAss'yを取り外す場合は,センサ・ブラケットよりセンサをホルダごと取り外した後,ホルダからセ
ンサAss'yを取り外すこと。
・センサ・ブラケット取り付けボルトは,センサに衝撃が加わらないように手締めの後,レンチを使用して
締め付けること。(インパクトなどは使用しない)
取り付け調整(図-43)①センサ先端をセンサ・ブラケットよりセット寸法だけ突出させる。
センサ・セット寸法〔mm〕:5.5
図-43 取り付け調整
- -28
U D
②ハブAss'yを取り付ける。センサ・ギャップはハブ取り付け後,ハブ側のパルス・ホイールがセンサ先端に接触してセンサを押し込むことで,正規のクリアランスに自動的に調整される。
参考 ・センサは強い衝撃を与えると,コイルの断線などの内部の損傷を招く恐れがあるため,センサをハンマで
叩いたり,足まわり部品(パルス・ホイールを含む)を強くぶつけたりしないこと。
・ハブの装着時には,ハブをこじらないように注意し,センサがパルス・ホイール面に垂直に接するように
取り付けること。
③ハブ・ベアリングのプリロード調整を行う。(プリロード調整については,整備要領書の各シャシの項を参照すること)
参考 ハブ・ベアリングにガタがあるとセンサ・ギャップが変動し,車輪速センサ・エラーを発生する場合がある
ためプリロード調整は確実に行うこと。
④タイヤAss'yを取り付ける。車輪速センサ・ギャップの簡易確認(図-44,45,46)タイヤ及びハブAss'yを取り外さずにアクスルの内側から車輪速センサのギャップを確認することができる。車輪速センサの出力電圧を測定して正常範囲でも各センサ間で大きな差がある場合などは,以下の方法でセンサ・ギャップの確認を行う。
〈後輪:CG,CX系車〉CG系車の後輪は簡易確認ができない。タイヤ及びハブAss'yを取り外せない場合は,下記方法でギャップ確認を行うこと。①上側のブレーキ・ダスト・カバー(取り付けボルトM10:3本)を取り外す。上側のみの取り外しが困難な場合は,下側のダスト・カバーも取り外す。
参考 ダスト・カバーを変形させないように注意し作業をすること。
②ブレーキ・ブラケットとブレーキ・シューの間からドライバなどで車速センサを静かに押す。③確認後,ダスト・カバーを取り付ける。
図-44 車輪速センサ・ギャップの簡易確認⑴
- -29
U D
〈後輪:CG,CX系車以外〉①車輪速センサ裏側のボルト(M6)を取り外す。リヤ・アクスル内側の車輪速センサ取り付け位置にあたるボルトとそのほかのボルトでは,二面幅が異なる。車輪速センサ・ハーネスの貫通穴(ブレーキ・ブラケット)より上又は下45°の位置にあるM6のボルト部で確認する。
図-45 車輪速センサ・ギャップの簡易確認⑵
②取り外した位置のボルト穴の先が車輪速センサ後端にあたるので,その部分を首下110mm位の丸棒などで静かに押す。パルス・ホイールにつき当て感があればセンサ・ギャップは確保されている。
③取り外したボルトを確実に締め付ける。(前輪)バック・プレートに露出している車輪速センサを静かに押す。
図-46 車輪速センサ・ギャップの簡易確認⑶
④確認センサ・ホルダ,センサ・ブラケットの交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がないことを確認すること。
パルス・ホイール破損〔歯抜け〕(点検記号:B-5)(図-47)
点検 [6]パルス・ホイールの点検①点検 [5](点検記号:B-7)で取り外した状態のハブAss'yにあるパルス・ホイールを目視で点検する。②パルス・ホイールの歯のピッチ不良,凹みの有無,ライニングやドラムの摩耗粉の有無を点検する。摩耗粉があれば除去する。
図-47 パルス・ホイール破損〔歯抜け〕③良否判断・パルス・ホイールに異常がない場合は車輪速センサ本体に異常があると考えられるので車輪速センサを新品と交換し,点検 [5](点検記号:B-7)を参照して取り付け調整を行う。
- -30
U D
・パルス・ホイールに異常がある場合はハブAss'yで新品と交換し,点検 [5](点検記号:B-7)を参照して取り付け調整を行う。
④確認パルス・ホイール(ハブAss'y)の交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がないことを確認すること。
参 考
1) サービス・データ
〈整備基準値〉
項 目 整備基準 備 考
車輪速センサ抵抗値〔kΩ〕 1.0~1.3出力電圧〔mV-AC〕 100以上セット寸法〔mm〕 5.5
ABSモジュレータ・ソレノイド・バルブ〔Ω〕 13.9~15.6ディファレンシャル・ブレーキ・バルブ〔Ω〕 33~37ブレーキ・カット・マグネチック・バルブ〔Ω〕 33~37 CD車ソレノイド・リレー・バルブ〔Ω〕 33~37 EBS
プロポーショナル・リレー・バルブソレノイド・バルブ〔Ω〕 33~37
圧力センサ〔V〕d-9~d-3 5 EBSd-6~d-3 21.6~28.8
トレーラ・コントロール・バルブソレノイド・バルブ〔Ω〕 0.4~0.6
圧力センサ〔V〕b-13~d-3 21.6~28.8 EBS:トラクタ車b-14~d-3 0.4~0.6
コントロール・ユニット電源電圧〔V〕 21.6~28.8UDSCコントロール・ユニット,SAC供給電圧〔V〕 20.6~28.8 UDSC付き車SAS供給電圧〔V〕 9~16
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U D
2) 配置図
〈キャブ室内ユニット〉
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U D
3) 車外ユニット
〈CV,CG車以外〉
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U D
4) 回路図
〈EBS〉