周術期におけるポンプの安全管理ＴＣＩポンプ・ＩＰＣポンプ

日本臨床工学技士会の立場から

帝京大学医学附属溝口病院ＭＥ部

宮地 哲也

平成19年4月に厚生労働省から改正医療法

『医療安全関連通知』

Ⅰ．医療機器の安全使用を確保するための責任者の設置

Ⅱ．従事者に対する医療機器の安全使用にための研修の実施

Ⅲ．医療機器の保守点検に関する計画の策定及び保守点検の適切な実施

Ⅳ．医療機器の安全使用のために必要となる情報の収集、その他医療機器の安全を確保を目的とした改善の方策の実施

｢医療機器の保守点検計画と適切な実施に関する解説書｣

Ⅰ．医療機器管理に関しての策定すべき事項

Ⅱ．医療機器安全管理責任者の業務と医療機器の範囲

Ⅲ．医療機器管理台帳の整備

Ⅳ．保守点検（日常・定期点検）計画策定と実施

Ⅴ．医療機器の安全使用のための情報収集と改善策の実施

Ⅵ．教育・研究

保守点検（日常・定期点検）計画策定と実施

• 日常点検① 始業時点検② 使用中点検③ 終業点検

• 定期点検1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年・適宜

始業点検

• 外観点検目や手で機器やコード類などの外観の傷や破損などを確認します。

他の医療機器と組み合わせて使用される場合には、組合せ状況（取り付け状況）を確認します。

• 機能点検使用前に機器の基本性能や安全確保のために行う点検で、各種安全装置・警報装置の確認、動作点検を行います。

使用中点検

• 使用中の医療機器の作動が正常であることを確認する点検です。

投与量や、警報、動作設定が正常であることを時間ご

と（３０分・１時間・適宜）に確認するための点検です。

• 医療機器の種類や機能により点検項目は異なりますので、添付文書や指示項目により点検項目を設定し、使用中点検表（使用中チェックリスト）を用いて点検を行います。

終業点検

• 医療機器の使用後に安全性・部品の劣化や性能等の問題がないことを確認するための点検です。

• 主に外観・作動点検や診療を受けていた患者の状態に変化がないこと、安全に実施できたことを終業時点検表（終業時チェックリスト）で確認します。

定期点検

日常点検と異なり一定の期間（１ヶ月・3 ヶ月・6 ヶ月・1 年・適宜）使用された医療機器を詳

細に点検し、機器の性能を確認すると共に、製造販売業者が推奨する消耗部品を交換することで、次回の定期点検まで性能の維持を確保するために行われる点検です。

定期点検項目

• 電気的安全性

• 外観点検

• 機能点検

• 性能点検

• 定期部品の交換（バッテリー等）

シリンジポンプ定期点検計画書

平成 年１月～１２月 作成者： 医療機器安全管理責任者：

１月 ２月 ３月 ４月 ５月 ６月 ７月 ８月 ９月 １０月 １１月 １２月

(管理コード)

(機器名)

１ヶ月

定期

３ヶ月

定期

６ヶ月

定期

１年

定期

(1234‐5678)

(シリンジポンプ)

１ヶ月

定期

３ヶ月

定期

６ヶ月

定期

(1234‐5679)

(シリンジポンプ)

１ヶ月

定期

３ヶ月

定期

６ヶ月

定期

始業・使用中・終業・定期点検

ＴＣＩ ポンプ（target controlled infusion pump）

ＩＰＣポンプ(間欠的空気圧迫装置）

TCIポンプとは？

・ ディプリバン製剤のTCI（Target Controlled Infusion）投与を目的に開発

・ ディプリフューザーTCIソフトウエアを内蔵し、目標血中濃度を設定することにより、予測血液濃度を計算しながら、シリンジポンプの流量を自動的に注入するポンプ

・ シリンジポンプの操作を簡便にし、麻酔深度の調節を容易にする

全静脈麻酔法（TIVA）

日本で使用されているＴＣＩポンプ

Terumo TE 372 TCI pump

Greaseby 3500 TCI IVAC P6003 TIVA / TCI

シリンジポンプの送液原理

距離

断面積

流量（mL/h）＝時間

断面積×移動距離

シリンジポンプがゆっくり押す

シリンジポンプの送液原理

ﾓｰﾀｰ

ｸﾗﾝﾌﾟｽﾗｲﾀﾞｰ

送りネジ

送りナット

シリンジ押し子を保持し、シリンジ側に移動することにより押し子を押します

各ポンプの名称

クランプ

バッテリインジケータ

スリット

フランジ押さえ（識別タグ）

電 源

機能スイッチ 動作インジケータ 設定ダイアル

スライダースライダーフック

作動中のＴＣＩポンプ

スリット

フランジ押さえ（識別タグ）

機能スイッチ 動作インジケータ 設定ダイアル

スライダースライダーフッククランプ

バッテリインジケータ

電 源

シリンジポンプ始業時点検表(外観・作動点検)

点検個所 点検事項 評価

外装(傷・ワレ・変形） シリンジポンプ本体と電源コードの外観に、機能に影響する傷、ワレ、変形がないこと 合・否

押子スライダー(動作) 押子スライダーを手で押したとき、スムーズに動く 合・否

表示 電源をONにした時、セルフチェックで各LEDが点灯するか 合・否

シリンジサイズ シリンジサイズが正しく検出されるか 合・否

バッテリー駆動電源コードを電源に接続し定格電源で駆動中、電源コードを抜いたときにバッテリー駆動に切り替わるか

合・否

押子外れ警報送液開始時にシリンジの押子クランプを外し、スタートさせ警報音が鳴るか

輸液中に押子のクランプを外し警報音が鳴るか合・否

シリンジ外れ警報送液中にシリンジの外筒をクランプしている外筒クランプを外すと警報音が鳴り停止す

るか合・否

残量警報 ポンプの押子押さえを左側に移動させ、残量警報がでるか 合・否

過負荷警報輸液中にポンプの押子押さえをシリンジ後端方向へ手で力を加え、過負荷警報を出し停止するか

合・否

使用日： 年 月 日

使用機種名： 管理番号： 実施者：

シリンジポンプ使用中点検表

時間 電源動作インジケーター

輸液ラインの確認

設定流量 注入流量 積算量 輸液残量 点検実施者

時 分バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

時 分 バッテリー/電源

OK/NG OK/NG mL/hr mL/hr mL mL

使用日： 年 月 日

使用機種名： 管理番号： 実施者：

シリンジポンプ終業時点検表(外観・作動点検)

点検個所 点検事項 評価

外装(傷・ワレ・変形） シリンジポンプ本体と電源コードの外観に、機能に影響する傷、ワレ、変形がないこと 合・否

押子スライダー(動作) 押子スライダーを手で押したとき、スムーズに動く 合・否

表示 電源をONにした時、セルフチェックで各LEDが点灯するか 合・否

シリンジサイズ シリンジサイズが正しく検出されるか 合・否

バッテリー駆動電源コードを電源に接続し定格電源で駆動中、電源コードを抜いたときにバッテリー駆動に切り替わるか

合・否

押子外れ警報送液開始時にシリンジの押子クランプを外し、スタートさせ警報音が鳴るか

輸液中に押子のクランプを外し警報音が鳴るか合・否

シリンジ外れ警報送液中にシリンジの外筒をクランプしている外筒クランプを外すと警報音が鳴り停止す

るか合・否

残量警報 ポンプの押子押さえを左側に移動させ、残量警報がでるか 合・否

過負荷警報輸液中にポンプの押子押さえをシリンジ後端方向へ手で力を加え、過負荷警報を出し停止するか

合・否

患者状態 患者に安全に実施できたか 合・否

使用日： 年 月 日

使用機種名： 管理番号： 実施者：

シリンジポンプ定期点検項目

交換部品／備考交換部品／備考

合 ・ 否合 ・ 否バッテリー動作バッテリー動作

合 ・ 否合 ・ 否ACACコードを抜いた時、バッテリーのインジケーターが表示されているかコードを抜いた時、バッテリーのインジケーターが表示されているか

合 ・ 否合 ・ 否LEDLEDの表示が正確に点灯表示されているかの表示が正確に点灯表示されているか

kPakPa閉塞検出圧閉塞検出圧

合 ・ 否合 ・ 否残量警報発生時のシリンジの目盛は適切か残量警報発生時のシリンジの目盛は適切か

合 ・ 否合 ・ 否警報発生及びブザー音の確認警報発生及びブザー音の確認

%%注入量の精度注入量の精度

性能点検性能点検

合 ・ 否合 ・ 否フックが正常に動作するかフックが正常に動作するか

合 ・ 否合 ・ 否使用するシリンジをセットした場合、シリンジサイズが正常に表示されるか使用するシリンジをセットした場合、シリンジサイズが正常に表示されるか

合 ・ 否合 ・ 否動作中・異常発生時のランプが点灯または点滅するか動作中・異常発生時のランプが点灯または点滅するか

合 ・ 否合 ・ 否開始・停止・早送り等のスイッチが正常に点灯するか開始・停止・早送り等のスイッチが正常に点灯するか

合 ・ 否合 ・ 否電源を入れた際にセルフチェックが行われるか電源を入れた際にセルフチェックが行われるか

合 ・ 否合 ・ 否スライダーが左右へ移動できるかスライダーが左右へ移動できるか

機能点検機能点検

合 ・ 否合 ・ 否ACAC電源の破損がないか電源の破損がないか

合 ・ 否合 ・ 否部品の緩み、ネジ・ナット等の緩みがないか部品の緩み、ネジ・ナット等の緩みがないか

合 ・ 否合 ・ 否操作パネルシートの傷、剥離等がないか操作パネルシートの傷、剥離等がないか

合 ・ 否合 ・ 否装置に汚れ、ひび割れ、破損等がないか装置に汚れ、ひび割れ、破損等がないか

外観検査外観検査

ΩΩ接地線抵抗（接地線抵抗（0.10.1ΩΩ以下）以下）

μμAA単一故障状態（単一故障状態（10001000μμAA以下）以下）

μμAA正常状態（正常状態（500500μμAA以下）以下）接地漏洩電流検査接地漏洩電流検査

μμAA単一故障状態（単一故障状態（500500μμAA以下）以下）

μμAA正常状態（正常状態（100100μμAA以下）以下）外装漏洩電流検査外装漏洩電流検査

電気的安全性点検電気的安全性点検

シリンジポンプ定期点検報告書シリンジポンプ定期点検報告書

（日本臨床工学技士会（日本臨床工学技士会 医療機器の保守点検計画と適切な実施に関する解説書より抜粋）医療機器の保守点検計画と適切な実施に関する解説書より抜粋）

ＴＣＩポンプ使用時の注意点

押し子が外れていない場合でも流量に影響を与えます。

注意が必要な事例患者との落差によるサイフォニング現象で、薬液が急速注入される危険性があります。

拡大図外れに注意！外れに注意！

外れのないよう外れのないよう確実に固定！確実に固定！

万が一シリンジの固定がなされていなかった場合も大量注入しないように患者の高さにあわせる

サイフォニングを防止する

プレフィルドシリンジ製剤使用時の注意点

プレフィルドシリンジ製剤使用時の注意点

医薬品医療機器総合機構 PMDA 医療安全情報 No.17 2010.5 引用

拡大図

押し込まない！

ガスケットが押し子に押されて歪む！

押し子とガスケットが外れてしまった！ ガスケット 押し子

押し子とガスケットが外れ

押し子を回転させながらねじ込むこと

a)

b)

外筒 押し子正しい組み立て方

ガスケット

押し子

少しぐらい薬液がポンプに垂れても、どうせすぐ汚れるから、後で拭けばいいか

問 題 1

薬液には、すぐに固まるものやポンプの劣化につながるものもあります。汚れたままにせず、ぬるま湯に浸したガーゼ等で拭きとってください。

ポンプの清掃上の注意• アルコール、シンナー等の有機溶剤では拭か

ないで下さい。

使用後は清掃を行い、正しく保管してください。消毒液を使用した後は、水またはぬるま湯に浸したガーゼ等で拭き取ってください。

成分名 清掃消毒液例

グルコン酸

クロルヘキシジン

5％ヒビテン液 住友製薬㈱

マスキン液（5ｗ/ｖ％） 丸石製薬㈱

塩化ベンザル

コニウム

オスバン液 武田薬品工業㈱

消毒剤の使用にあたっては、各消毒液の添付文書（希釈濃度）に従ってください。

問 題 2

シリンジポンプで微量投与していたら三方活栓を開け忘れていたのに閉塞警報が鳴らなかった。

ポンプの故障だ！

微量で投与している場合は、閉塞圧が高まり警報を発報するまで時間がかかりますポンプ開始後はこまめに確認をお願いします

問 題 3

流量設定をキチンと確認して開始を押したので、後は完了するまでポンプに任せておけば大丈夫。

定期的に輸液状態を観察して下さいポンプは機械ですので過信は禁物です

ポンプを正しく使えば安全に正確に安心して輸液できます。

しかし、ポンプは機械です。使い方次第でエラーは発生します。

ＩＰＣポンプ

間欠的空気加圧法Intermittent Pneumatic Compression : IPC

足底・脚全体あるいは脹脛の周囲に間欠的に圧力を加えて深部静脈の血液促進を目的とした装置です。

継続的に使用できることにより手術中の深部静脈塞栓症の予防には非常に有用である。

注意！深部静脈血栓症(DVT)存在下でのIPCの使用は、

肺血栓塞栓症(PTE)を誘発する危険性があるため

禁忌とされています。

ＩＰＣポンプの構成

スリーブ

ポンプ本体

スリーブ

接続チューブ

スリーブの種類

下腿スリーブ（カーフポンプタイプ）

足底用スリーブ（フットポンプタイプ）

ＩＰＣポンプ始業時点検表(外観・作動点検)

点検個所 点検事項 評価

外装(傷・ワレ・変形） ＩＰＣポンプ本体と電源コードの外観と機能に影響する傷・ワレ・変形がないこと 合・否

ネジの緩みがないか ポンプ振動により固定ネジの緩みやネジ取れがないこと 合・否

表示 電源をONにした時、セルフチェックで各ランプが点灯するか 合・否

電源 ＡＣ電源ケーブルに確実に接続できるか 合・否

バッテリー駆動電源コードを電源に接続し定格電源で駆動中、電源コードを抜いたときにバッテリー駆動に切り替わるか

合・否

接続部チューブ接続チューブが確実に接続されているか、チューブから空気漏れがないか

合・否

スリーブ カーフポンプ・フットポンプに空気漏れがないか 合・否

使用日： 年 月 日

使用機種名： 管理番号： 実施者：

使用可

修理依頼

スリーブ/接続チューブの確認

接続チューブは換えずにスリーブのみ

交換してください。まだアラームは鳴りますか？

YES YESYES

NO NONO

アラームは鳴りますか？

新しい接続チューブに交換しても

アラームは鳴りますか？

使用可使用可

接続チューブ及びスリーブの接続は正常ですか？

始業時（空気漏れ）点検接続チューブ・スリーブ

接続チューブ

片足だけ接続 接続不備

各スリープのリークテスト

下腿スリーブの点検（カーフポンプタイプ）

足底用スリーブ（フットポンプタイプ）

腕に巻いて下腿スリーブ点検（カーフポンプタイプ）

患者入室前の準備

チューブのネジレ

折れ曲がり 本体スリーブ スリーブ

手術台

使用中点検（消毒前）

使用中点検（手術中）

ＩＰＣポンプ終業時点検表(外観・作動点検)

点検個所 点検事項 評価

外装(傷・ワレ・変形） ＩＰＣポンプ本体と電源コードの外観と機能に影響する傷・ワレ・変形がないこと 合・否

外装（汚れ） 薬液や体液等が付着していないか 合・否

ネジの緩みがないか ポンプ振動により固定ネジの緩みやネジ取れがないこと 合・否

表示 電源をONにした時、セルフチェックで各ランプが点灯するか 合・否

電源 ＡＣ電源ケーブルに確実に接続できるか 合・否

バッテリー駆動 電源コードを電源に接続し定格電源で駆動中、電源コードを抜いたときにバッテリー駆動に切り替わるか

合・否

接続部チューブ 接続チューブが確実に接続されているか、チューブから空気漏れがないか 合・否

スリーブ カーフポンプ・フットポンプに空気漏れがないか 合・否

使用日： 年 月 日

使用機種名： 管理番号： 実施者：

ＰＣＩポンプの清掃上の注意• アルコール、シンナー等の有機溶剤では拭か

ないで下さい。

使用後は清掃を行い、正しく保管してください。消毒液を使用した後は、水またはぬるま湯に浸したガーゼ等で拭き取ってください。

成分名 清掃消毒液例

グルコン酸

クロルヘキシジン

5％ヒビテン液 住友製薬㈱

マスキン液（5ｗ/ｖ％） 丸石製薬㈱

塩化ベンザル

コニウム

オスバン液 武田薬品工業㈱

消毒剤の使用にあたっては、各消毒液の添付文書（希釈濃度）に従ってください。

交換部品/備考

ACコードを抜いた時バッテリーのインジケーターが表示されているか性能点検

合 ・ 否AC電源の破損がないか

製造販売業者名

製造番号

合 ・ 否バッテリーの動作

合 ・ 否

合 ・ 否警報発生およびブザー音の確認

％圧縮圧力

合 ・ 否動作中・異常発生時のランプが点灯または点滅するか

合 ・ 否電源を入れた際にセルフチェックが行われるか

合 ・ 否本体と接続チューブを接続しぐらつきやガタがないか 容易に外れないか

機能点検

合 ・ 否部品の緩み、ネジ、ナット等の緩みがないか

合 ・ 否捜査パネルシートの傷、剥離等がないか

合 ・ 否装置に汚れ、ひび割れ、破損等がないか

外観検査

Ω接地線抵抗(0.1Ω以下)

μＡ単一故障状態(1000μＡ以下)

μＡ正常状態(500μＡ以下) 接地漏洩電流検査

μＡ単一故障状態(500μＡ以下)

μＡ正常状態(100μＡ以下)外装漏洩電流検査

電気的安全性点検

評 価点 検 内 容項 目

合格 ・ 再点検総合評価院内の管理番号

印実施者名年 月 日購入年月日

医療機器名

点 検 （ 3ヶ月 ・６ヶ月・１年目）実施する内容

ＰＣＩポンプ定期点検報告書

日本臨床工学技士会ホームページ

http://www.jacet.or.jp/cms/index.php