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13
memo 249 E2 薬理・病態・薬物治療 1.1 糖尿病とその合併症─治療薬の薬理及び病態・薬物治療 【概念】 インスリンの分泌不全あるいは作用不全によって、高血糖をはじめとする代 謝異常を生じる慢性疾患。特有の慢性合併症や、昏睡などの急性合併症を起こ す。 【分類】 1型 2型 発症機構 主に自己免疫を基礎とした膵B β細胞破壊、HLAなどに何 らかの誘因・環境因子が加わっ て起こる インスリン分泌低下インスリン抵抗性 (肥大脂肪細胞からのアディポネクチン↓、 TNF‒α↑、遊離脂肪酸↑が原因)をきたす 複数の遺伝因子に環境因子が加わって、イ ンスリン作用不足を生じ発症する 家族歴 家系内糖尿病は 2 型より少ない 家系内にしばしば糖尿病歴がある 発症年齢 小児~思春期に多い 中高年でも認められる 40 歳以上に多い。若年者にも増加している 肥満度 ケトーシス 傾向 やせ型が多い ケトーシス傾向あり 肥満又は肥満の既往が多い ケトーシス傾向はほぼなし 自己抗体 膵ラ島抗体、抗 GAD 抗体などの 陽性率が高い 自己免疫機序との関連が少ないため陰性と なる 代謝系・内分泌系の疾患と薬 1 代謝系疾患の薬、病態、治療 【到達目標】 E2- (5) -1-1 1.糖尿病とその合併症について、治療薬の薬理(薬理作用、 機序、主な副作用)、及び病態(病態生理、症状等)・薬物 治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2- (5) -1-2 2.脂質異常症について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主 な副作用)、及び病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬 品の選択等)を説明できる。 E2- (5) -1-3 3.高尿酸血症・痛風について、治療薬の薬理(薬理作用、機 序、主な副作用)、及び病態(病態生理、症状等)・薬物治 療(医薬品の選択等)を説明できる。 sample sample sample

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249

E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

代謝系疾患の薬、病態、治療

1.1 糖尿病とその合併症─治療薬の薬理及び病態・薬物治療

【概念】

 インスリンの分泌不全あるいは作用不全によって、高血糖をはじめとする代

謝異常を生じる慢性疾患。特有の慢性合併症や、昏睡などの急性合併症を起こ

す。

【分類】

1型 2型

発症機構

主に自己免疫を基礎とした膵B(β)細胞破壊、HLAなどに何らかの誘因・環境因子が加わって起こる

インスリン分泌低下やインスリン抵抗性(肥大脂肪細胞からのアディポネクチン↓、TNF‒α↑、遊離脂肪酸↑が原因)をきたす複数の遺伝因子に環境因子が加わって、インスリン作用不足を生じ発症する

家族歴 家系内糖尿病は2型より少ない 家系内にしばしば糖尿病歴がある

発症年齢小児~思春期に多い中高年でも認められる

40歳以上に多い。若年者にも増加している

肥満度ケトーシス傾向

やせ型が多いケトーシス傾向あり

肥満又は肥満の既往が多いケトーシス傾向はほぼなし

自己抗体膵ラ島抗体、抗GAD抗体などの陽性率が高い

自己免疫機序との関連が少ないため陰性となる

代謝系・内分泌系の疾患と薬5

1 代謝系疾患の薬、病態、治療【到達目標】

E2-(5)-1-1 1. 糖尿病とその合併症について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、及び病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。

E2-(5)-1-2 2. 脂質異常症について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、及び病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。

E2-(5)-1-3 3. 高尿酸血症・痛風について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、及び病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。

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250

医療薬学

【膵臓ホルモン】

           A(α)細胞 → グルカゴン

膵臓ランゲルハンス  B(β)細胞 → インスリン

           D(δ)細胞 → ソマトスタチン

A. グルカゴンの作用

分泌 血糖値の低下により促進され、血糖値の上昇によって抑制される

生理作用肝細胞のアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMP濃度上昇を介してグリコーゲン分解を促進する → 血糖上昇

B. インスリンの作用

分泌 血糖値の上昇により分泌は促進され、血糖値の低下により抑制される

生理作用

①グルコースの細胞内取り込み促進(主に骨格筋、脂肪組織) グリコーゲン合成促進、グリコーゲン分解抑制(主に肝)②脂肪組織でのトリグリセリド合成促進③タンパク質合成促進、タンパク質分解抑制

血糖低下作用

インスリンの分泌と作用

膜電位依存性Ca2+チャネル

インスリン

インスリン

インスリン分泌顆粒

分泌

ATP依存性K+チャネルグルコース

グルコースGLUT2

グルコース

ATP

口開口閉 脱分極

TCAサイクル

〔膵B(β)細胞〕

Ca2+

Ca2+K+

〔血管〕

チロシンキナーゼ

細胞膜上へ移動

*glucose transporterの略

α:αサブユニットβ:βサブユニット

〔組織〕

GLUT*

αα

β

β

P

P

インスリン受容体

C. ソマトスタチンの作用

分泌 ランゲルハンス島D(δ)細胞で産生、分泌

生理作用 グルカゴン、インスリン、ガストリンの分泌抑制

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251

E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

1代謝系疾患の薬111111

【病態と症状】

病態生理(2型)

遺伝素因

インスリン追加分泌低下

食後高血糖膵B(β)細胞オーバーワーク

インスリン抵抗性増大

肥満・高脂肪・運動不足

アポトーシスの進行 膵B(β)細胞減少

インスリン基礎分泌低下

高血糖 /糖毒性出現

症状

急性期症状 口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感、昏睡合併症 網膜症、腎症、神経障害、易感染性、糖尿病性壊疽

【合併症】

1. 三大合併症

 高血糖の持続により起こる血管障害、特に細小血管障害が重要である。

 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害を三大合併症という。

糖尿病網膜症最終糖化反応物(AGES)による微小血管の周囲細胞や内皮細胞の障害により、最終的には網膜剥離を起こし失明の原因となる

糖尿病腎症透析導入原因疾患の約40%を占める(最も多い)微量アルブミン尿検査により早期発見が可能

糖尿病神経障害末梢神経障害(下肢のしびれ、痛み、冷感)自律神経障害(起立性低血圧、排尿障害、胃腸障害)が生じる

2. その他の合併症

大血管障害 動脈硬化症により脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こす

糖尿病性昏睡1型糖尿病はケトーシス傾向が強く、ケトン性昏睡を起こしやすい2型糖尿病は高浸透圧性昏睡(非ケトン性昏睡)を起こしやすい

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252

医療薬学

【検査】

1. 血糖値の測定

検査項目 診断基準 特徴

①早朝空腹時血糖値 126 mg/dL以上 インスリン分泌不全状態を示す

②随時血糖値 200 mg/dL以上 食事の影響を受けやすい

③75gブドウ糖負荷試験2時間値(75g OGTT)

200 mg/dL以上 75 gのブドウ糖を経口投与し、2 時間後に血糖値を測定するインスリン抵抗性の度合いを調べる上で有用

④HbA1c(糖化ヘモグロビン)

6.5%(NGSP 値)以上 過去1~2ヶ月間の血糖値と相関

①~④のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」と判定する。ただし①~③のいずれかと④が確認された場合は「糖尿病」と診断してよい(ただし、HbA1c のみで診断は不可)。

2. その他の検査

検査項目 基準値 特徴

グリコアルブミン(糖化アルブミン)

11~16% 過去1~2週間の血糖値と相関

C─ペプチド(CPR) 0.8~2.5 ng/mL インスリン分泌能の指標

【治療】

 血糖値のコントロールによる合併症の予防を目的とする。近年ではメタボリッ

クシンドロームが問題になっており、場合によっては同時に血清脂質値も十分

な管理を行い、動脈硬化症による冠血管イベントの防止に努める。

A. 1型糖尿病の治療インスリンが絶対適応 ・ 軽症例: 中間型又は持続型インスリンの1回/日投与、混合型インスリン

の2回/日投与

 ・重症例:強化インスリン療法

B. 2型糖尿病の治療a. 食事療法・運動療法

 ・ 食事療法・運動療法などのライフスタイルの改善を初期治療とする ・ 体格指数(BMI)が28以上の場合は減量(25以上を肥満とする)が推奨される ・効果不十分の場合は薬物治療を開始する

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253

E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

代謝系疾患の薬、病態、治療

b. 薬物治療糖尿病治療薬の作用部位

刺激

速効型インスリン分泌促進薬

インスリン

インスリン分泌顆粒

GLUT2

GLUT4SGLT2

〔骨格筋、脂肪細胞など〕

移動

刺激

刺激

抑制

抑制

抑制

抑制

〔毛細血管〕

アディポネクチン分泌↓

抑制 抑制

スルホニル尿素薬(SU薬)

α―グルコシダーゼ阻害薬

ビグアニド系薬インスリン抵抗性改善薬

GLP―1作動薬

GLP―1ソマトスタチン

ジペプチジルペプチダーゼ―4(DPP―4)

分解ATP感受性K+チャネル

K+

GLP―1受容体

アデニル酸シクラーゼ

ATP cAMP

Aキナーゼ

SU受容体

Gs

ソマトスタチン受容体

膜電位依存性Ca2+チャネル

Gi

〔膵臓 B(β)細胞〕

〔小腸〕

糸球体ろ過

〔近位尿細管〕

デンプン

食物

グルコース グルコース

グルコース再吸収

グルコース 解糖系・TCA回路↑

ATP↑

吸収

二糖類

DPP―4阻害薬

Ca2+Ca2+

α―グルコシダーゼ

脱分極

チロシンキナーゼ

小型脂肪細胞(正常脂肪細胞)

大型脂肪細胞(肥大化脂肪細胞)

TNF―α分泌↑

アディポネクチン分泌↑

アポトーシス

・肥満・運動不足・過食

抑制

SGLT2阻害薬

尿

再吸収抑制

C. インスリン製剤(注射)インスリンリスプロ(超速効型) インスリングラルギン(持効型)

薬理作用・ 血糖低下作用:グリコーゲン合成促進・分解抑制、グルコースの細胞内取り込み促進

・トリグリセリド、タンパク質合成促進

特徴

・ インスリンは、51個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、経口投与不可

・1型糖尿病及び2型糖尿病に用いられる・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人にも使用可・ 超速効型の特徴:インスリンの追加分泌を補う目的で使用する(食直前に注射)

・ 持効型の特徴:作用持続時間は約24時間のため、インスリンの基礎分泌を補う目的で使用する

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254

医療薬学

インスリン注射の例

超速効型

朝食

中間型

持効型

昼食 夕食 就寝

朝食 寝就食夕食昼寝就

超速効型超速効型速効型

射注

速効型

射注

射注

射注

①速効型又は超速効型インスリンを毎食前 3回注射

果効ンリスンイ

②中間型又は持効型溶解インスリンを就寝前に注射

果効ンリスンイ

速効型

D. その他の糖尿病治療薬及び糖尿病合併症治療薬a. スルホニル尿素薬(SU 薬):-SO2NHCONH-の構造をもつ

・トルブタミド※ ・アセトヘキサミド ・クロルプロパミド

・グリベンクラミド ・グリクラジド ・グリメピリド ※現在適応なし

作用機序膵B(β)細胞膜のSU 受容体に結合 → ATP依存性K+チャネルを閉口 → 膜電位依存性Ca2+チャネル開口 → インスリン分泌促進(1型糖尿病に無効)

特徴 グリメピリドは、インスリン抵抗性改善作用も有する

副作用 低血糖、光線過敏症、無顆粒球症

b. 速効型インスリン分泌促進薬

・ナテグリニド ・ミチグリニド

作用機序スルホニル尿素(SU)構造を有さないが、膵B(β)細胞のSU受容体に結合 → インスリン分泌促進

特徴 食直前に服用

c. ビグアニド系薬

・メトホルミン ・ブホルミン

作用機序AMP活性化プロテインキナーゼの活性を亢進→ インスリン作用増強 → 糖新生抑制、糖利用促進 → 血糖低下

特徴 体重増加が見られず、血清脂質改善作用もある

副作用 乳酸アシドーシス、低血糖

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255

E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

代謝系疾患の薬、病態、治療

d. インスリン抵抗性改善薬

・ピオグリタゾン

作用機序

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ*(PPARγ)に作用→ TNF-α産生抑制、アディポネクチン産生促進→ インスリン抵抗性を改善*ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γとも表記される

副作用 心不全、浮腫、肝障害、体重増加

e. α-グルコシダーゼ阻害薬

・アカルボース ・ボグリボース ・ミグリトール

作用機序α -グルコシダーゼ(二糖類分解酵素)阻害→単糖類(グルコース等)の吸収を抑制※アカルボースは、α-アミラーゼ阻害作用も有する

特徴 食直前に服用

副作用 腸閉塞様症状(腹部膨満感、放屁)

f. ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬

・シタグリプチン ・ビルダグリプチン ・アログリプチン

作用機序

DPP-4阻害 → インクレチン分解抑制 → インクレチン濃度上昇 → 血糖依存的にインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制※インクレチンとは、血糖依存的にインスリン分泌を促す消化管ホルモンの総称

g. グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)作動薬

・リラグルチド ・エキセナチド

作用機序膵B(β)細胞のGLP-1受容体刺激 → 血糖依存的にインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制

h. 糖尿病合併症治療薬

h─1 糖尿病末梢神経障害治療薬

・エパルレスタット

作用機序 アルドース還元酵素阻害 → 神経細胞のソルビトールの蓄積防止

副作用 血小板減少

・メキシレチン

作用機序 知覚神経Na+チャネル遮断 → 知覚神経の自発性活動電位発生を抑制

h─2 糖尿病腎症治療薬

・イミダプリル

作用機序アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害 → アンギオテンシンⅡ産生抑制 → 腎血管拡張 → 腎保護作用

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256

医療薬学

・ロサルタン

作用機序 アンギオテンシンⅡAT1受容体遮断 → 腎血管拡張 → 腎保護作用

1.2 脂質異常症─治療薬の薬理及び病態・薬物治療

【概念】

 血清脂質[コレステロール(Cho)、トリグリセリド(TG)、リン脂質]のうち

コレステロールとトリグリセリドのいずれか、又は両方が増加する疾患であ

る。基準値の1つが異常値を示す場合には、脂質異常症と診断される。

【分類】

 増加するリポタンパク質によって分類される。

脂質異常症の表現型分類

表現型 増加するリポタンパク質 特徴 原発性

Ⅰ キロミクロン TG↑薬物治療の効果が低い

先天性LPL欠損症先天性アポCⅡ欠損症

Ⅱa LDL Cho↑↑ LDL受容体欠損症

Ⅱb LDLVLDL

TG↑、Cho↑─

Ⅲ レムナント TG↑、Cho↑ アポE欠損症

Ⅳ VLDL TG↑ ─

Ⅴ キロミクロンVLDL

TG↑、Cho↑─

 リポタンパク質は比重やアポタンパク質の違いにより5種類に分類される。

リポタンパク質の種類

リポタンパク質 特徴 比重

キロミクロン(CM)

食事由来のTGを運搬する 低い

高い

超低比重リポタンパク質(VLDL)

肝臓で合成されたTGを運搬する血管内皮細胞のもつLPLによりLDLに変換される

VLDL

LPL

IDL(血管内皮細胞)

HTGL

脂肪酸+

グリセロール

脂肪酸+

グリセロール

LDL(肝性TGリパーゼ)

中間型リポタンパク質(IDL) VLDLとLDLの中間体

低比重リポタンパク質(LDL)

Choを末梢に運搬する動脈硬化を誘発するため悪玉コレステロールとよばれる

高比重リポタンパク質(HDL)

末梢由来のChoを肝臓へ運搬し、動脈硬化症を抑制する効果があるため善玉コレステロールとよばれる

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E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

代謝系疾患の薬、病態、治療

【病態と症状】

検査血中LDLコレステロール値:140 mg/dL以上(高LDL‒C血症)血中トリグリセリド値:150 mg/dL以上(高TG血症)血中HDLコレステロール値:40 mg/dL未満(動脈硬化症の発症リスク)

症状自覚症状はほとんどない高コレステロール血症:動脈硬化症、黄色腫*1

高トリグリセリド血症:急性膵炎*2、脂肪肝

【治療】

 治療の目的は動脈硬化症を予防し、冠血管イベントの発生を抑制することに

ある。

A. 食事療法 脂質異常症の第一選択。一定期間の食事療法で改善しない場合には薬物治療

を開始する。

B. 薬物治療脂質異常症治療薬の作用部位

遊離脂肪酸

アセチルCoA

HMG―CoA* VLDL

血管肝臓

肝外組織

IDL

LDL

HDL

LDL

LDL受容体

エステル型コレステロール

HTGL

遊離脂肪酸

リポタンパク質リパーゼ(LPL)

VLDL

エステル型コレステロール

HDL受容体

LDL受容体

胆汁酸異化促進

収吸再

収吸

TG(中性脂肪)

メバロン酸

遊離型コレステロール

小腸コレステロールトランスポーター

HMG―CoA還元酵素

ニコチン酸系薬

HMG―CoA還元酵素阻害薬

プロブコール

エゼチミブ

フィブラート系薬阻害

阻害

抑制

抑制

コレスチラミン

胆汁酸と吸着

排泄

乳化

排泄

胆汁酸

小腸

脂肪組織

コレステロール

活性化

a. スタチン系薬

・プラバスタチン ・シンバスタチン ・フルバスタチン 

・アトルバスタチン ・ピタバスタチン

・プラバスタチンナトリウム      ・シンバスタチン

▶*1 家族性高コレステロール血症で見られる(アキレス腱黄色腫)。▶*2 TG≧1000 mg/dLの場合に生じることがある。

▶* HMG─CoA:3─ヒドロキシ─3─メチルグルタリルCoA

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258

医療薬学

HOH

HOH

H

H

HHO

CH3

CO2Na

HH3C

OHHH3C

O

H

H

HO

HH

H

CH3

H3C

CH3

O

OHOH

O

H3CH3C

   プラバスタチンナトリウム           シンバスタチン

作用機序 HMG─CoA還元酵素阻害作用 → メバロン酸合成阻害

特徴

・ 肝コレステロール合成阻害により、肝細胞膜LDL受容体数増加 → 血中から肝へのLDLコレステロール取り込み促進 → 血中コレステロール低下

・血中HDL上昇・弱いトリグリセリド合成阻害作用も有する

副作用 横紋筋融解症

b. 陰イオン交換樹脂製剤

・コレスチラミン ・コレスチミド

作用機序腸内で胆汁酸を吸着・排泄を促進し、外因性コレステロール吸収を抑制→ コレステロールの排泄促進

特徴

肝へ腸肝循環されるはずの胆汁酸が不足し、肝内コレステロールから胆汁酸への合成が促進 → 肝細胞膜LDL受容体数増加 → 血中LDLの取り込み促進→ 血中コレステロール低下

副作用 便秘

c. 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

・エゼチミブ

作用機序小腸壁細胞に存在するタンパク質(NPC1L1)を介して外因性コレステロールの吸収を選択的に阻害

d. コレステロール異化促進薬

・プロブコール

作用機序肝におけるコレステロールから胆汁酸への異化排泄促進 → LDL受容体に依存しない機構で血中コレステロール低下

特徴・LDLの酸化変性を抑制 → 抗動脈硬化作用・血中HDLを減少させる

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259

E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

代謝系疾患の薬、病態、治療

e. フィブラート系薬

・クロフィブラート ・ベザフィブラート ・フェノフィブラート

作用機序

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)に結合 → ①、②① 肝細胞内で脂肪酸のβ酸化促進 → 脂肪酸含量低下 → トリグリセリド合成抑制

②リポタンパク質リパーゼ活性化 → トリグリセリドの加水分解促進

特徴・コレステロール合成阻害作用・LDL受容体活性化作用(ベザフィブラート)

副作用 横紋筋融解症

f. ニコチン酸系薬

・ニコモール ・ニセリトロール

作用機序・ニコチン酸受容体に結合し、脂肪組織からの遊離脂肪酸動員の抑制 → 肝でのトリグリセリド生成抑制・リポタンパク質リパーゼ活性化 → トリグリセリドの加水分解促進

副作用 皮膚紅潮、過敏症発疹

g. リポタンパク質リパーゼ活性化薬

・デキストラン硫酸エステル

作用機序 リポタンパク質リパーゼ活性化 → トリグリセリドの加水分解促進

h. エイコサペンタエン酸(EPA)製剤

・イコサペント酸エチル

作用機序血清リポタンパク質に取り込まれ、リポタンパク質代謝を活性化→ コレステロール、トリグリセリド減少

1.3 高尿酸血症・痛風─治療薬の薬理及び病態・薬物治療

【概念】

 血中尿酸値が持続的に高い状態をいう。尿酸は核酸塩基(アデニン、グアニ

ン)などのプリン体の最終代謝産物であり、その約2/3は腎臓から、約1/3は

消化管から排泄される。

 この尿酸の産生と排泄のバランスが崩れ、体内に尿酸が蓄積すると高尿酸血

症をきたす。また、高尿酸血症が持続すると関節内に尿酸塩が析出し、痛風を

引き起こす。

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260

医療薬学

【病態と症状】

成因

プリン体代謝異常

プリン体 キサンチンヒポキサンチン

キサンチンオキシダーゼ

尿酸

プリン塩基増加:骨髄増殖疾患、白血病など尿酸排泄障害:腎障害などプリン塩基高含有食品の摂取

疫学 男性に多い

症状

激痛を伴う急性関節炎発作(痛風)→ 第一母趾関節に好発腎障害(痛風腎)皮下結節(痛風結節)尿酸結石

検査 血清尿酸値上昇:7.0 mg/dL以上で高尿酸血症と診断

痛風発作機序と痛風治療薬の作用部位

結晶の貪食

・血管透過性亢進・白血球遊走・組織傷害

リソソーム

滑膜細胞

尿酸塩結晶

腎臓

尿酸排泄

好中球

好中球遊走

関節腔

骨 骨

コルヒチン

アロプリノール

オキシプリノール(アロキサンチン)

ベンズブロマロンプロベネシドブコローム

腎近位尿細管で尿酸再吸収

NSAIDs

炎症反応痛風発作

高尿酸血症

尿酸

キサンチンキサンチン

オキシダーゼ

好中球の破壊

化学物質漏出(PG、ロイコトリエン、活性酸素など)

抑制

阻害

阻害

ヒポキサンチンイノシンアデノシン(プリン塩基)

阻害

抑制

【治療】

薬物療法のポイント・急性痛風発作極期に対してNSAIDsを大量に、できる限り早期に短期間投与

する

・急性発作はアルコール摂取、血中尿酸値の急激な変動により誘発される

 → 尿酸値を下げる薬物は発作初期には使用しない

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E2 薬理・病態・薬物治療

代謝系・内分泌系の疾患と薬

代謝系疾患の薬、病態、治療

・血中尿酸値を下げる際は尿酸産生亢進型には尿酸生合成阻害薬を、尿酸排

泄低下型には尿酸排泄促進薬を使用する

A. 高尿酸血症治療薬

薬物 作用機序 ・ 特徴

アロプリノール キサンチンオキシダーゼ阻害 → 尿酸生成阻害

フェブキソスタット 非プリン型の選択的キサンチンオキシダーゼ阻害薬※他の主要なプリン・ピリミジン代謝酵素の活性に影響を及ぼさない〈禁忌〉メルカプトプリン又はアザチオプリン投与中の患者

プロベネシド 尿酸の再吸収抑制 → 尿酸排泄促進※近位尿細管での管腔側からの尿酸再吸収に働く有機陰イオントランスポーター(輸送担体)の一種であるURAT1を尿酸と競合する※ペニシリン、NSAIDs の尿細管分泌を阻害 → 併用薬の作用増強

ベンズブロマロン 尿酸の再吸収抑制 → 尿酸排泄促進※尿細管分泌を阻害しない → 併用薬との相互作用が起こらない〈副作用〉劇症肝炎

ブコローム ・ 尿酸の再吸収抑制 → 尿酸排泄促進・ 毛細血管透過性抑制作用・ 抗炎症作用、抗リウマチ作用

ラスブリカーゼ 尿酸分解酵素薬※血中の尿酸を水溶性のアラントインに変換し、尿中へ排泄することにより、血中尿酸値を低下させる〈適応〉がん化学療法に伴う高尿酸血症

B. 痛風発作抑制薬

薬物 作用機序 ・ 特徴

コルヒチン ・顆粒球細胞のチュブリンと結合 → 微小管形成阻害 → 炎症部位への白血球遊走を抑制・好中球の走化性因子(LTB4、IL─8)に対する反応性を著明に低下・発作前兆期に用いる

インドメタシンナプロキセン

・酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・短期間に大量投与(NSAIDsパルス療法)する・発作初期~極期に用いる

プレドニゾロン ・副腎皮質ステロイド性薬・NSAIDsが使用できないときや無効のときに用いられる

C. 酸性尿改善薬(尿アルカリ化薬)クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合薬

作用機序代謝物のHCO3-が尿をアルカリ化し、痛風や高尿酸血症の酸性尿を改善する

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