時刻(s)- 1 - 0 50 0 0 0 0 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 s] [s] Ì&g < 1 2 3 図1...

4
- 1 - 0 50 100 150 200 250 300 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 pSv [cm/s] Period [s] 告示波 OS1 OS2 OS3 1 大阪圏における対象地域と簡略化スペクトル 1) -300 -200 -100 0 100 200 300 0 100 200 300 400 500 600 700 加速度(cm/s²) 時刻(s) -300 -200 -100 0 100 200 300 0 100 200 300 400 500 600 700 加速度(cm/s²) 時刻(s) -300 -200 -100 0 100 200 300 0 100 200 300 400 500 600 700 加速度(cm/s²) 時刻(s) 主要動区間 SZ1 CH1 OS1 長周期長時間地震動に対する免震建物の地震応答予測 -鉛プラグ挿入型積層ゴムの繰返し変形による特性変化を考慮した応答スペクトル法- 明治大学 谷本 満里菜 1. 研究背景および研究目的 2016 6 月に国土交通省より時刻歴応答解析を 用いた大臣認定ルートを対象として南海トラフ沿 いの巨大地震による長周期長時間地震動対策 1) (以 下,長周期通知)が公表された。図 1 に大阪圏の対 象地域および簡略化応答スペクトルを示す。 建設省告示第六の手法(以下,告示法)は,時刻 歴応答解析を行わずに長周期長時間地震動の影響 を考慮する手法が未整備であるため長周期通知の 対象外となっている。そのため,長周期通知の対象 地域で免震建物を設計する際には,設計方法によっ て要求性能に差が生じる恐れがある。 長周期長時間地震動が免震建物に与える影響の 一つに,免震部材の繰返し変形による耐力低下があ げられる。飯場らは告示法に対して繰返し変形を考 慮する手順を組み込んだ手法を提案している 2) 。し かし,応答スペクトル法に用いられる係数について, 長周期長時間地震動に対応した評価式を用いた検 討は行われていない。 以上より本研究では,免震部材の繰返し変形によ る特性変化を考慮し,長周期通知に記載される設計 用地震動(以下,基整促波)に対応した応答スペク トル法の提案を目的とする。 2.解析モデルおよび入力地震動 解析モデルは図 2 に示す一質点系モデルとする。 1 に解析モデルのパラメーターを示す。 免震部材は,支承材として鉛プラグ挿入型積層ゴム (以下,LRB)を用いる。免震層の復元力特性を示 す係数は, LRB 一基分の特性値を用いる。 LRB は繰 返し変形の影響を受けやすく 3) ,免震部材の繰返し 変形に関する文献で多く用いられている。 入力地震動は,基整促波より SZ1SZ2SZ3CH1CH2CH3OS1OS2OS3 9 波を用いる。KA1 は繰返し変形による特性変化の影響が極めて小さ いため,本研究では対象外とする。図 3 に特に繰返 し変形の影響が大きい SZ1CH1OS1 の加速度波 形および主要動区間を示す。主要動区間の算定は岡 野らの手法 4) を用いる。これは,加速度波形の二乗 累積値における接線の傾きの変化を用いた手法で ある。傾きの急変点を捉えるため,本研究では二乗 累積値の前後 5 秒間の平均値 を用いて平滑化す る。図 3 より,CH1 および OS1 は比較的主要動が 長いため,繰返し変形を受け特性が変化した後に大 きな加速度を受け,繰返し変形の影響を受けやすい と考えられる。 3 基整促波の加速度波形および主要動区間 3. 時刻歴応答解析を用いた地震応答評価 時刻歴応答解析を用いて繰返し変形による特性 変化を考慮した地震応答評価を行う。繰返し変形の 影響は,LRB の降伏荷重の低下率 LRBkmin として式 (1)を用いて考慮する 5) 1 0.06 1.25×exp × 360 p LRB min p W k V (1) ここで,WpLRB の吸収エネルギー,Vp:鉛プラ グ体積とする。 750 1000 1500 細径 120 150 250 標準径 150 200 300 太径 180 250 350 鉛径 (mm) 面圧(N/mm 2 ) 有効ゴム径(mm) 7.51015 1 解析パラメーター 2 一質点系モデル

Transcript of 時刻(s)- 1 - 0 50 0 0 0 0 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 s] [s] Ì&g < 1 2 3 図1...

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- 1 -

0

50

100

150

200

250

300

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

pSv

[cm

/s]

Period [s]

告示波OS1OS2OS3

図 1 大阪圏における対象地域と簡略化スペクトル 1)

-300

-200

-100

0

100

200

300

0 100 200 300 400 500 600 700

加速度

(cm

/s²)

時刻(s)

-300

-200

-100

0

100

200

300

0 100 200 300 400 500 600 700

加速度

(cm

/s²)

時刻(s)

-300

-200

-100

0

100

200

300

0 100 200 300 400 500 600 700

加速度

(cm

/s²)

時刻(s)

主要動区間 SZ1

CH1

OS1

長周期長時間地震動に対する免震建物の地震応答予測

-鉛プラグ挿入型積層ゴムの繰返し変形による特性変化を考慮した応答スペクトル法-

明治大学 谷本 満里菜

1. 研究背景および研究目的

2016 年 6 月に国土交通省より時刻歴応答解析を

用いた大臣認定ルートを対象として南海トラフ沿

いの巨大地震による長周期長時間地震動対策 1)(以

下,長周期通知)が公表された。図 1 に大阪圏の対

象地域および簡略化応答スペクトルを示す。

建設省告示第六の手法(以下,告示法)は,時刻

歴応答解析を行わずに長周期長時間地震動の影響

を考慮する手法が未整備であるため長周期通知の

対象外となっている。そのため,長周期通知の対象

地域で免震建物を設計する際には,設計方法によっ

て要求性能に差が生じる恐れがある。

長周期長時間地震動が免震建物に与える影響の

一つに,免震部材の繰返し変形による耐力低下があ

げられる。飯場らは告示法に対して繰返し変形を考

慮する手順を組み込んだ手法を提案している 2)。し

かし,応答スペクトル法に用いられる係数について,

長周期長時間地震動に対応した評価式を用いた検

討は行われていない。

以上より本研究では,免震部材の繰返し変形によ

る特性変化を考慮し,長周期通知に記載される設計

用地震動(以下,基整促波)に対応した応答スペク

トル法の提案を目的とする。

2.解析モデルおよび入力地震動

解析モデルは図 2 に示す一質点系モデルとする。

表 1 に解析モデルのパラメーターを示す。

免震部材は,支承材として鉛プラグ挿入型積層ゴム

(以下,LRB)を用いる。免震層の復元力特性を示

す係数は,LRB 一基分の特性値を用いる。LRB は繰

返し変形の影響を受けやすく 3),免震部材の繰返し

変形に関する文献で多く用いられている。

入力地震動は,基整促波より SZ1,SZ2,SZ3,CH1,

CH2,CH3,OS1,OS2,OS3 の 9 波を用いる。KA1

は繰返し変形による特性変化の影響が極めて小さ

いため,本研究では対象外とする。図 3 に特に繰返

し変形の影響が大きい SZ1,CH1,OS1 の加速度波

形および主要動区間を示す。主要動区間の算定は岡

野らの手法 4)を用いる。これは,加速度波形の二乗

累積値における接線の傾きの変化を用いた手法で

ある。傾きの急変点を捉えるため,本研究では二乗

累積値の前後 5 秒間の平均値 を用いて平滑化す

る。図 3 より,CH1 および OS1 は比較的主要動が

長いため,繰返し変形を受け特性が変化した後に大

きな加速度を受け,繰返し変形の影響を受けやすい

と考えられる。

図 3 基整促波の加速度波形および主要動区間

3. 時刻歴応答解析を用いた地震応答評価

時刻歴応答解析を用いて繰返し変形による特性

変化を考慮した地震応答評価を行う。繰返し変形の

影響は,LRB の降伏荷重の低下率 LRBkmin として式

(1)を用いて考慮する 5)。

10.06 1.25×exp ×

360

p

LRB min

p

Wk

V

(1)

ここで,Wp:LRB の吸収エネルギー,Vp:鉛プラ

グ体積とする。

750 1000 1500

細径 120 150 250

標準径 150 200 300

太径 180 250 350

鉛径

(mm)

面圧(N/mm2)

有効ゴム径(mm)

7.5,10,15

表 1 解析パラメーター

図 2 一質点系モデル

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- 2 -

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100

準詳細法による最大応答変位

(cm

)

繰返し変形非考慮の最大応答変位(cm)

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

準詳細法によるベースシア係数

繰返し変形非考慮のベースシア係数

020406080100

準 詳 細 法 に お… 繰返し変形非考慮の最大応答変位(cm)SZ1 SZ2 SZ3 CH1 CH2 CH3 OS1 OS2 OS3

0

100

200

300

400

500

0 100 200 300 400 500 600 700

降伏荷重

Qd(k

N)

時刻(s)

0

2

4

6

8

10

0 100 200 300 400 500 600 700

吸収エネルギー

Wp(×

10⁵k

N・

cm)

時刻(s)

0100200300400500

0 500 1000

降伏荷重

Qd(k

N)

時刻(s)

準詳細法

簡易法

準詳細法において最大応答変位となる時刻

簡易法において最大応答変位となる時刻

0

100

200

300

400

500

0 100 200 300 400 500 600 700

降伏荷重

Qd(k

N)

時刻(s)

0

2

4

6

8

10

0 100 200 300 400 500 600 700

吸収エネルギー

Wp(×

10⁵k

N・

cm)

時刻(s)

0100200300400500

0 200 400 600 800

降伏荷重

Qd(k

N)

時刻(s)

準詳細法

簡易法

準詳細法において最大応答変位となる時刻

簡易法において最大応答変位となる時刻

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100簡易法による最大応答変位

(cm

)

準詳細法による最大応答変位(cm)

020406080100

準… 繰返し変形非考SZ1 CH1 OS1

1500-250-7.5(OS1)

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

簡易法におけるベースシア係数

準詳細法におけるベースシア係数

020406080100

準…

繰返し変形非考SZ1 CH1 OS1

1500-250-7.5(CH1)

1500-250-7.5(OS1)

時刻歴応答解析を用いて繰返し変形を考慮する

手法は,詳細法,準詳細法,簡易法の 3 つが挙げら

れる。詳細法は熱伝導解析を用いるため,本研究で

は通常の時刻歴応答解析を応用した準詳細法およ

び簡易法を用いる。準詳細法は,時々刻々吸収エネ

ルギーより LRBkminを算出し,復元力特性を変更する

手法である。簡易法は設計時のモデルにおける時刻

歴応答解析より全履歴吸収エネルギーに対する

LRBkminを算出し,復元力特性を変更したモデルで再

び時刻歴応答解析を行う手法 3)である。

図 4に繰返し変形非考慮の時刻歴応答解析および

準詳細法による解析結果を示す。図 4 より,SZ1,

CH1,OS1 は準詳細法を用いて繰返し変形を考慮し

た応答値が特に大きくなった。

次に,準詳細法および簡易法による応答の比較を

行う。解析モデルは表 1 に示す全ケースとし,入力

地震動は SZ1,CH1,OS1 を用いる。図 5 に準詳細

法および簡易法より得られる最大応答を示す。最大

応答変位は 100cm 以下,ベースシア係数は 0.3 以下

の結果を示す。図 5 より,多くのケースで簡易法は

準詳細法と比較し大きな応答値となっている。これ

は,簡易法では繰返し変形非考慮時の全履歴吸収エ

ネルギーを用いて LRBkmin を算出しているのに対し,

準詳細法では最大応答変位時刻までの吸収エネル

ギーを用いているため,準詳細法の方が降伏荷重を

大きく評価しやすいからであると考えられる。

図 5において簡易法が準詳細法を下回るケースに

ついて,時刻歴応答波形の比較を行う。図 6 におけ

る降伏荷重 Qd は,設計時の降伏荷重に対しひずみ

依存による降伏荷重 の修正係数 CQdおよび LRBkmin

を乗じた値とする。図 6 より,CH1,OS1 のように

主要動が長い地震動では,準詳細法は LRB の吸収

エネルギーが増加し特性変化が生じた後に大きな

加速度が入力されるため,非常に大きな応答値とな

りやすい。一方簡易法は,一度目の時刻歴応答解析

結果を用いて LRBkminを評価するため,二度目の解析

では降伏荷重が一定となる。そのため急激なエネル

ギー吸収が降伏荷重に影響せず,準詳細法よりも小

さな応答となったと考えられる。すなわち,簡易法

が準詳細法と比較し過小評価となるケースは,主要

動の長い CH1,OS1 において生じやすい。しかし,

図 5より多くのケースで簡易法は準詳細法よりも大

きな応答となっている。安全側の評価とするため,

応答スペクトル法においても簡易法と同様に二度

応答計算を行う手法が適切であると考えられる。

図 4 繰返し変形考慮前後における最大応答の比較

(ゴム径 1000mm-鉛径 200mm)

図 5 準詳細法および簡易法による最大応答の比較

図 6 準詳細法および簡易法による時刻歴応答波形

4.応答スペクトル法における各係数に関する検討

応答スペクトル法を用いて繰返し変形の影響を

考慮する手法に関する,各係数について検討を行う。

繰返し変形非考慮の時刻歴応答解析結果を用いて,

基整促波に対しても適用できる評価手法を明らか

にする。

(a) ゴム径 1500mm-鉛径 250mm-面圧 7.5N/mm²(CH1)

(b) ゴム径 1500mm-鉛径 250mm-面圧 7.5N/mm²(OS1)

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- 3 -

免震層全体の吸収エネルギー

免震部材の耐力低下率

免震部材の特性を再設定

収束計算

免震層応答変位を設定

等価周期などを算定

減衰の効果を算定

免震層応答変位を計算

免震部材の特性を設定

地震力を参照

応答スペクトル法(手順Aとする)

変更した条件で手順A

各免震部材にエネルギー配分

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0 20 40 60 80 100

減衰定数

最大応答変位(cm)

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0 20 40 60 80 100

減衰定数

最大応答変位(cm)

-0.050.45

0 20 40 60 80 100減 衰 定 数 最大応答変位(cm)SZ1 SZ2 SZ3 CH1 CH2 CH3 OS1 OS2 OS3

プロット:履歴ループを用いて評価した減衰定数

0.000.100.200.300.40

0 20406080100

減…

最大応答変…

heq

低減法 0.8heq

0.000.100.200.300.40

020406080100減…

最大応答変…平均法平均法

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 10 20 30 40 50 60

Wp

/(W

p+

Wv

)および

hd/(

hd+

hv)

最大応答変位(cm)

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 10 20 30 40 50 60

Wp

/(W

p+

Wv

)および

hd/(

hd+

hv)

最大応答変位(cm)

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 10 20 30 40 50 60

Wp

/(W

p+

Wv

)および

hd/(

hd+

hv)

最大応答変位(cm)

オイルダンパー5%

オイルダンパー10%

オイルダンパー20%

0.40.50.60.70.80.91.0

W p/( W p+ W v)

お… 最大応答変位(cm)SZ1 SZ2 SZ3 CH1 CH2 CH3 OS1 OS2 OS3

0.40.50.60.70.80.91.0

0 10 20 30 40 50 60

Wp

/( Wp

+… 最大応答変位(cm)手法1 手法2 手法3

プロット:時刻歴応答解析より得られたLRBの吸収エネルギー割合

曲線 :各手法より得られる減衰定数の割合

4.1 最大応答変位時の減衰定数

履歴ループを用いて最大応答変位時の減衰定数

を算出し,評価式との対応を確認する。履歴ループ

による評価は,片ぶれの大きいケースでも有効であ

る平石らの手法 6)を用いる。LRB の最大応答変位の

定常ループに対する減衰定数 heq は式(2)より評価す

る 7)。免震部材の減衰定数の評価手法として,heqに

対し定常ループと非定常ループの減衰効果の差を

表す低減係数を乗じる手法(以下,低減法)や,最

大応答変位δまでの減衰定数を平均する手法(以下,

平均法)が挙げられる。告示法では低減法を採用し

ており,低減係数を 0.8 としている 7)。平均法によ

る減衰定数 は,応答変位 δ’の定常ループに対する

減衰定数 heq’(δ’)を用いて式(4)で評価される 8)。

1 12

1eq

ph

p p

(2)

×0.8d eqh h (3)

0

1d eqh h d

(4)

ここで,μ:塑性率,α:バイリニア係数とする。

図 7 に履歴ループおよび低減法,平均法より得ら

れる減衰定数を示す。左図より,低減法は,履歴ル

ープによる結果の傾向を概ね捉えている。しかし,

点線がプロットを上回っているケースも多い。その

ため,応答スペクトル法において最大応答変位に対

する減衰定数を 0.8heqとして応答予測を行った場合,

減衰を過大評価し,最大応答変位を小さく評価して

しまう可能性がある。

図 7 履歴ループと低減法とおよび平均法の比較

4.2 免震部材の吸収エネルギーの評価

履歴型ダンパーと流体型ダンパーを併用したケ

ースにおける各免震部材の吸収エネルギーは,10%

のエネルギースペクトル VE および各減衰定数を用

いて式(5)より評価する手法が提案されている 5)。

21× ×

2

d dp E

d v d v

h hW E MV

h h h h

(5)

ここで,M:建物質量,hd,hv:履歴型ダンパーお

よび流体型ダンパーの減衰定数とする。

吸収エネルギーは最終時刻までの累積値である

ため,最大応答変位時の減衰定数を用いて評価する

のは不適切であると考えられる。本節では,時刻歴

応答解析より得られる LRB の吸収エネルギー割合

Wp/(Wp+Wv)と,減衰定数の割合を比較する。解析モ

デルはゴム径 1000mm-鉛径 200mm の LRB に対し,

せん断ひずみ 200%における減衰定数 5%,10%,20%

のリニア型オイルダンパー(以下,OD)を併用する。

OD の減衰定数 hvは,一律で式(6)より評価する。

2

vv

eq

Ch

MK

(6)

LRB の減衰定数の評価式は,手法 1:式(2),手法

2:式(3),手法 3:式(4)とする。図 8 より,手法 3 が

最もよくプロットの傾向を捉えている。

図 8 吸収エネルギー割合と減衰定数割合の関係

5.基整促波に対応した応答スペクトル法

図 9 に基整促波に対応した応答スペクトル法(以

下,提案法)の手順を示す。最大応答の評価には,

減衰補正係数 Fh および疑似速度応答スペクトルと

速度応答スペクトルの比λが用いられる。告示に示

されるこれらの評価式は,基整促波を対象にした場

合応答を過大評価する傾向がある 9)。そこで,本研

究では基整促波に対応した片岡らの手法 9)および渡

邉らの手法 10)を用いる。免震部材の吸収エネルギー

の評価は,式(5)および 4.2 節に示す手法 3 を用いる。

図 9 基整促波に対応した応答スペクトル法手順

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- 4 -

0

100

200

300

400

500

600

0 100 200 300 400 500 600

提案法

Wp/V

p(N

/mm

²)

準詳細法 Wp/Vp(N/mm²)

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100

提案法

最大応答変位

(cm

)

準詳細法 最大応答変位(cm)

0

50

100

150

200

250

0 50 100 150 200 250

提案法

最大応答速度

(cm

/s)

準詳細法 最大応答速度(cm/s)

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

提案法

ベースシア係数

準詳細法 ベースシア係数

020406080100

準 詳 細 法 繰返し変形非考慮の最大応答変位(cm)SZ1 SZ2 SZ3 CH1 CH2 CH3 OS1 OS2 OS3

+50%

-50%

0

100

200

300

400

500

600

0 100 200 300 400 500 600

提案法

Wp/V

p(N

/mm

²)

準詳細法 Wp/Vp(N/mm²)

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100

提案法

最大応答変位

(cm

)

準詳細法 最大応答変位(cm)

0

50

100

150

200

250

0 50 100 150 200 250

提案法

最大応答速度

(cm

/s)

準詳細法 最大応答速度(cm/s)

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

提案法

ベースシア係数

準詳細法 ベースシア係数

+50%

-50%

図 10,図 11 に準詳細法および提案法より得られ

る鉛プラグ体積当たりの LRB の吸収エネルギー

Wp/Vpおよび最大応答を示す。Wp/Vpは,準詳細法で

は最大応答変位となる時刻,提案法では一度目の応

答スペクトル法より得られる値とする。解析ケース

は図 10はゴム径 1000mm-鉛径 200mmのLRBのみ,

図 11 は同 LRB にせん断ひずみ 200%における減衰

定数 5%の OD を併用したケースとする。

結果より,提案法における Wp/Vpは安全側であり,

繰返し変形の影響は考慮可能である。変位・速度・

ベースシア係数は+50%以内に収まった。また,危険

側となるケースもあったが,これは Fh およびλが

精度の向上を目的として提案されており 9)安全率が

考慮されていないためであると考えられる。

図 10 準詳細法と提案法による結果比較(LRB)

図 11 準詳細法と提案法による結果比較(LRB+OD)

6.まとめ

本研究より得られた知見を示す。

・ 簡易法と準詳細法より得られる最大応答値を比

較すると,多くのケースで簡易法の方が大きな

値となる。

・ 最大応答変位に対する減衰定数は,基整促波を

対象としても告示に示される手法が有効である。

・ 免震層に対する各免震部材の吸収エネルギー割

合は,減衰定数を用いて概ね評価可能である。

・ 応答スペクトル法に繰返し変形の影響を考慮す

る手順を組み込み,準詳細法による解析結果と

比較することで精度を確認した。

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