Operations and Management 2013–2014 - NCNPOperations and Management 2013–2014 32 National Center...

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Operations and Management 2013–2014 33 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 32 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) NCNP の活動 2013–2014 社会と NCNP をつなぐ広報活動、NCNP の資源を生かした 社会貢献や人材育成への取り組みをご紹介します。 教育研修棟内の大型会議室 “ ユニバーサルホール ”。約 200 席。 様々なシンポジウム、研修会等が開催されています。

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Operations and Management 2013–2014

33National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)32 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

NCNPの活動 2013–2014社会とNCNPをつなぐ広報活動、NCNP の資源を生かした社会貢献や人材育成への取り組みをご紹介します。

教育研修棟内の大型会議室“ユニバーサルホール”。約200席。様々なシンポジウム、研修会等が開催されています。

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34 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 35NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014

NCNPの活動 2013–2014広報活動

脳とこころの医療と研究に関するNCNPの総合的な取り組みや成果を、国民・患者さん、医療・研究開発関係者等の皆様にわかりやすく、的確にかつタイムリーに伝えることができるよう企画戦略室 広報グループが

「NCNPの見える化」として積極的な発信に努めています。

NCNP市民公開講座 http://www.ncnp.go.jp/general/symposium.html

NCNPでは、国民・患者さん、医療・研究開発関係者等の皆様に対して、私たちの取り組んでいる新しい医療や研究について、第一線にいる研究者や医師などの職員がテーマ別の対話型市民公開講座を開催しています。また、当日の様子について、公開用スライドと講演動画(YouTube動画配信)を掲載したWebサイトもイベント終了後に公開しています。

広報出版物 http://www.ncnp.go.jp/general/magazine.html

NCNPでは以下の広報出版物を制作し、Web公開も行っています。

『NCNP ANNUAL REPORT(センター年報)』(日本語版)

NCNPの最 新の活動の見える化として、新しい広報誌

『NCNP ANNUAL REPORT 2012–2013』(センター年報)を 初 発 刊 い た し まし た。NCNPの最新の医療・研究活動をご覧いただけます。

NCNPパンフレット(日本語版、英語版) 市民の皆様にNCNPという組織、NCNPのミッションとその活動を知っていただくために作成しています。病院や研究所他各施設の概要、沿革なども掲載しています。

NCNP病院「診療のご案内」 患者さんやそのご家族、あるいは医療関係者の方々などにNCNP病院で行われている診療について紹介をしています。

NCNP病院ニュース(年3回発行) 患者さんやそのご家族、あるいは医療関係者の方々などに、NCNP病院の活動を紹介しています。

NCNP病院看護部ニュースレター(月1回発行) 看護師、あるいはこれから看護師をめざす方々にNCNP病院看護部の活動を紹介しています。

NCNP病院医療連携ニュース(年数回の発行) 連携医療機関など医療関係者の方々にNCNP病院の活動を紹介しています。

『TMC NEWS』(年4回発行) 研究者や医療関係者の方々等にNCNPトランスレーショナル・メディカルセンターの活動を紹介しています。

報道メディア向け http://www.ncnp.go.jp/press/press_release.html

報道メディア向けには最新のタイムリーなプレスリリース配信を行うほか、より詳しい情報提供の場として記者会見やプレス説明会なども実施しています。2013年度は、26本のプレスリリース、4本の記者会見・プレス説明会を実施いたしました。

また、2014年度よりNCNPの第一線の研究者・医師たちとジャーナリストの皆様方が一同に集まり、新しい対話の場である「第1回NCNPメディア塾」をスタートさせました。NIH(アメリカ国立衛生研究所)の活動をモデルとして2014 年8月22日〜23日に合宿形式で開催し、最終的に27名のジャーナリストの方々と活発な議論も交わされました。

多様な情報発信手段

より多くの方々にNCNPの活動に関する情報をお届けできるよう、Webサイトの情報を補完するものとしてソーシャルメディアの活用も実施しています。(YouTube、Twitter等)

YouTube動画配信本数は60本を超え、今後も講演映像を中心に新たな配信を続けていきます。

NCNP主催 市民公開講座Webサイト

2013年11月4日開催「発達障害の子どもたちのために社会ができること〜最新研究からみえてきたもの〜」400名にご来場いただきました。

NCNP ANNUAL REPORT 2012–2013(センター年報)

第1回 NCNPメディア塾開講 (2014年8月22日〜8月23日)

http://www.ncnp.go.jp/press/mediaseminar.html

YouTube NCNP Channel(動画配信サイト)病院紹介映像や市民公開講座などの動画を掲載

http://www.youtube.com/user/NCNPchannel

四季を楽しむ植物マップ

田村憲久 厚生労働大臣による視察

病院の患者さんやご家族などにお配りしているフラワーマップです。東京ドーム約4つ分のNCNP敷地内には70種以上の植物があり、1年を通して四季折々に変化を見せる花や木々、そこに集まる鳥や虫などもお楽しみいただけます。

東京都小平市の「こだいら名木百選」に選定された桐の大木は、毎年美しい花を楽しませてくれています。また、NCNPホームページの「センター素描」コーナーでは、敷地内の季節の移り変わりを、スナップ写真でご紹介しています。

2014年1月23日(木)には、田村憲久厚生労働大臣、赤石清美厚生労働大臣政務官はじめ同省職員数名に加え、松本洋平衆議院議員が、当センターに来所され、樋口輝彦理事長によるセンター概要説明、糸山泰人病院長によるNCNPにおける神経難病等に対する取り組みの説明の後、病院及び研究施設を視察されました。※役職名等は当時のものです。

NCNPの医療・研究活動を広く知っていただきご理解いただくため、積極的な情報発信を行っています。

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36 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 37NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014

NCNPの活動 2013–2014

災害派遣精神医療チーム DPAT(ディーパット) http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/system.html

これまで災害が生じると精神科医、看護師、心理職、精神保健福祉士、事務職らから成る「心のケアチーム」が被災地からの要請に応えて派遣されてきました。このシステムは東日本大震災の後、DPAT

(Disaster Psychiatric Assistance Team)と名称を変え、災害前から組織し、研修や登録を行うことになっ

心理的応急処置 PFA(ピーエフエー) http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/who.html

災害時のいわゆる心のケア活動において、広範囲にわたる被災地を、急性期に限られたチームだけでカバーすることには限界があります。そこで災害前から、精神医療関係者以外の一般支援者にも基本的なケアのスキルを習得してもらう必要があります。そのために導入したのが、WHOなどが開発した、PFA(サイコロジカルファーストエイド:心理的応急処置)です。これは「見る」「聴く」「話す」という基本原則に則って、被災者を傷つけることを可能な限り回避しつ

ています。またこうした活動を支えるためには、被災地での活動実態をリアルタイムでモニタリングし、その結果からのフィードバックを受けて次の活動につなげていくことも必要です。従来は、活動記録が手書きで書かれており、被災地域各地に分散して保管されていたため、その集計には年余を要し、災害時の活動については何もフィードバックできないという状況が続いていました。災害時こころの情報支援センターでは、この目的のために災害時のメンタル情報システム(DMHISS)を開発、改良中です。このシ

ステムでは日々の活動をWeb上のデータベースに個人情報を除いて記録し、自動集計することによって、被災地のニーズ、活動実態が目で見て分かるようになっています。災害時の支援を、急性期から中長期まで切れ目無く提供できるようなシステム作りにも取り組んでいます。

つ、適切な支援をとどけるためのスキルです。災害後にPTSD※1を発症するリスクについての研究からは、社会的サポートと、二次的なストレスが強く関与していることが示されております。PFAはこうした研究の上に立って、効果的なサポートを被災者に届けることを目的としています。災害時こころの情報支援センターではWHO関係機関から講師を招聘して、日本国内で指導者を育成し、各地で研修を行うなどして、着実にPFAを普及させております。これまでに厚労省職員、都道府県政令市の精神保健福祉センター、自衛隊心理士、DMAT※2、警察、消防、臨床心理士などを対象に研修を行っています。※1  PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)心的外傷後スト

レス障害※2  DMAT(Disaster Medical Assistance Team)災害派遣医

療チーム

心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)

研修の様子

社会貢献活動 1

災害精神保健医療情報支援システム:Disaster Mental Health Information Support System(DMHISS)

平常時 有事に備えた事前準備 活動記録等の効果的な活用

集計による「報告書等の作成支援

傾向分析による施策立案等の支援

DPAT活動記録の蓄積

全国統一の相談・診療記録

派遣要請

派遣計画立案活動地域割当

派遣斡旋 派遣申入れ

被災地情報等の情報提供 保健師チーム、DMAT等

との情報連携

a

災害発生時(主に初動)b

随時(活動中・後)d

・厚生労働省・災害時こころの情報  支援センター

・都道府県等・都道府県等担当窓口・DPAAT体制 等の事前登録

活動記録情報掲示板 ・厚生労働省

・災害時こころの情報  支援センター

・都道府県等

DPAT

DPAT

DPAT保健師

被災者

情報掲示板

DMHISS

災害時健康支援システム EMIS

DMHISS

厚生労働省災害時健康支援システム(国立保健医療科学院)

厚生労働省災害時健康支援システム(国立保健医療科学院)

NCNP 災害時こころの情報支援センター 情報支援システム演習(2013年2月)

 災害時こころの情報支援センター<対象者>精神保健福祉センター長、精神科医、担当課職員<参加自治体>56都道府県・政令市(全67か所中)計 155人

DPAT

被災自治体厚生労働省

支援自治体

保健師チーム、DMATとの連携

活動記録の蓄積とフィードバック災害発生時(主に活動中)c

診察

被災地へのDPAT派遣

広域災害救急医療情報システム広域災害救急医療情報システムEMIS

(DMAT)

災害精神保健医療情報支援システム

被災都道府県

厚生労働省

DMHISS

DMHISS

DMHISSEMIS

②訓練●全国規模の訓練、先遣隊訓練 →災害時こころの情報支援センターで実施 ●自治体内の訓練 →都道府県等で実施

②被災地での統括 (被災都道府県DPAT調整本部)

①DPAT情報の登録 (都道府県等⇒災害時こころの情報支援センター)

平常時 有事に備えた事前準備 DPAT運用の基本方針

派遣斡旋派遣要請 派遣申入れ

DMAT・JMAT・保健師チーム等との連携

活動集計

活動報告

DMAT調整本部

診察・相談等

派遣医療本部

DPAT調整本部

DPAT調整本部の支援

災害対策本部(災害医療本部)

①総合調整と情報の収集と集約 (厚労省・災害時こころの情報支援センター)

災害発生時(主に初動)

災害時こころの情報支援センター

災害時こころの情報支援センター

被災自治体精神保健福祉センター

派遣都道府県等DPAT統括者

災害時こころの情報支援センター

災害時こころの情報支援センター

都道府県等担当窓口

先遣隊DPAT統括社

派遣都道府県等

災害時のこころのケアについてhttp://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/

主催 場所 日時 参加者職種 人数

1 2012 年度指導者一日研修 東京 2012.10.10 医師、心理士、看護師、保健師、NGO/NPO 団体職員、教育関係者、学生など 109

2 在東南アジア邦人精神保健専門家連携会議 シンガポール 2013.1.26 医師、心理士、看護師、教育関係者、大使館員 27

3 国立医療科学院/災害時こころの情報支援センター 共催 国立医療科学院 2013.2.1 地域保健所長、保健士 22

4 埼玉県臨床心理士会 さいたま市 2013.3.3 臨床心理士 505 東京大学医学部 東京大学 2013.5.9-10 看護学部生 136 東京医科歯科大学医学部 東京医科歯科大学 2013.7.22 看護学部生 277 東京医科歯科大学医学部 東京医科歯科大学 2013.7.23 看護学部生 27

8 ジャムズネット・アジア タイ日本大使館 2013.8.25 ジャムズネット会員、大使館員、教員、企業関係者 33

9 自衛隊 朝霧駐屯地 2013.8.29 全国の陸・海・空自衛隊に所属する臨床心理士 99

10 徳島県保健福祉部 徳島県 2013.9.20 臨床心理士 3211 さいたま市こころの健康センター さいたま市 2013.10.29 臨床心理士 2012 外務省 霞ヶ関 2013.11.13 領事、事務官 1813 外務省 霞ヶ関 2013.11.20 課長、課長補佐、事務官 18

14 沖縄県精神保健福祉センター 沖縄県 2013.12.5 県内精神科病院に勤務する医師、看護師、(臨床)心理士、精神保健福祉士等 30

15 NPO Green Project(国士舘大学) 国士舘大学 2013.12.8 大学生・留学生 21

16 2012 年度指導者一日研修 東京 2013.12.11 医師、心理士、看護師、保健師、NGO/NPO 団体職員、教育関係者、学生など 51

17 香川大学院 香川大学院 2014.1.11 大学院生 4018 浜松市精神保健福祉センター 浜松市 2014.2.6 保健師、psw、心理士 2019 埼玉県臨床心理士会 さいたま市 2014.2.11 臨床心理士 2320 日本集団災害医学会 東京医科歯科大学 2014.2.24 日本集団災害医学会員 3021 新潟市保健衛生部こころの健康センター 新潟市 2014.3.7 市役所職員、消防、学校関係者 2222 DMAT 災害医療センター 2014.4.27 DMAT 隊員 3923 埼玉県臨床心理士会 さいたま市 2014.2.11 臨床心理士 2324 NPO Green Project(国士舘大学) 国士舘大学 2014.6.28 大学生・留学生 2425 東京医科歯科大学医学部 東京医科歯科大学 2014.7.22 看護学部生 2626 東京医科歯科大学医学部 東京医科歯科大学 2014.7.23 看護学部生 2627 奈良市消防局 奈良 2014.7.27 奈良市消防局職員 27

28 千葉県精神保健福祉センター 千葉 2014.7.29 保健所・精神保健福祉センター・精神科医療センター等の精神保健福祉業務担当者 23

PFA一日研修会実施履歴

PFA活動原則

準備・危機的な出来事について調べる・その場で利用できるサービスや支援を調べる・安全と治安状況について調べる

見る・安全確認・明らかに急を要する基本的ニーズがある人の確認・深刻なストレス反応を示す人の確認

聞く・支援が必要と思われる人々に寄り添う・必要なものや気がかりなことについてたずねる・人々に耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする

つなぐ

・ 生きていく上で基本的なニーズが満たされ、サービスが 受けられるように手助けをする

・自分で問題に対処できるように手助けする・情報を提供する・人々を大切な人や社会的支援と結びつける

9 自衛隊 朝霧駐屯地 2013.8.29 全国の陸・海・空自衛隊に所属する臨床心理士 99

22 DMAT 災害医療センター 2014.4.27 DMAT 隊員 39

27 奈良市消防局 奈良 2014.7.27 奈良市消防局職員 27

12 外務省 霞ヶ関 2013.11.13 領事、事務官 18

13 外務省 霞ヶ関 2013.11.20 課長、課長補佐、事務官 18

● NCNP内に設置された「災害時こころの情報支援センター」は、DPATの情報支援システムの構築や研修・訓練の企画・実施、PFAの普及活動などを行っています。

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38 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 39NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014

NCNPの活動 2013–2014子どもの特性と心の発達に寄り添って

http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/社会貢献活動 2

自閉症の早期支援の実現に向けて http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/research.html

近年、自閉症への対応は世界各国で社会問題として注目され、わが国でもその早期発見と早期介入は発達障害対策の要として取り組みが始まったところです。私たちは、発達障害のある子どもさんとご家族が全国どの地域に暮らしていても、既存の地域資源を活用して早期から支援を受けることができる地域システムづくりをエビデンスにもとづいて提唱しています。

一つには、世界中で広く用いられている『乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(Modified Checklist for Autism in Toddlers; M-CHAT)』に改良を加え、1歳6ヵ月健診時にこれを用いることで、これまで

見落としがちだった乳幼児期の社会性の発達状態を確認することが出来、かつ自閉症の早期発見に有用であることを示しました。現在、M-CHATは国内多数の市町村で導入されており、私たちが作成した絵

(図1)は諸外国でも人気です。さらに、M-CHATの項目が2012年春に改正され

た母子健康手帳に掲載され(図2)、育児支援に関わる専門家が知っておくべき基礎知識として位置づけられました。現在、これらの最新知識に基づき、地域における発達障害支援のリーダーとなる人材の育成を目的に、各自治体の保健師や小児科医などを対象とした研修を行っています。(図3)http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/training/training.html

子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)

エコチル調査は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから13歳になるまでの健康状態を定期的に調べる、わが国ではかつてないほどの、大規模かつ長期的な環境省が企画・立案している調査です(図4)。2010年度に全国15地域を対象として立ち上がり、現在、10万組を超す親子のご協力を得て進行中です(図5)。

この調査の目的は、「胎児期から小児期にかけての化学物質暴露が子どもたちの成長や発達にどのよう

な影響を与えているのか?」という疑問にエビデンスにもとづいて答えを出すことです。子どもたちの健やかな成長にとって、精神・神経の発達における健康(心の健康)は大変重要な要素であり、エコチル調査では子どもたちの心の発達の軌跡をきちんと追跡できるような調査計画を立てています。そこで用いられる質問紙や面接検査法には、これまで私たちが行ってきた新しい研究成果(図6)も活用されます。子どもたちの心の健康についての評価を適切に行うことで、環境が健康に及ぼす影響が明らかになれば、次世代の子どもが健やかに育つ環境の実現に役立つものと信じています。

図1 �M-CHAT日本語版の保護者への質問に追加された絵

図2 �改訂後の母子健康手帳 保護者の記録【1歳の頃】のページ

全国の小中学校通常学級に通う一般児童集団(n=22,529)におけるSRS(対人応答性尺度:自閉症的特性を定量的に測る尺度)の得点分布を示す。SRS得点が高くなると自閉症的特性が強いことを意味する。男児は で、女児は で示した。(Kamio�et�al�(2013).�Acta��Psychiatrica�Scandinavicaより改変)

図3 �厚生労働省発達障害支援事業の発達障害早期総合支援研修の一風景(於NCNP)

7. 何なに

かに興味きょうみ

を持も

った時とき

、指ゆび

をさして伝つた

えようとしますか?

9. あなたに見み

てほしいモノがある時とき

、それを見み

せに持も

ってきますか?

17. あなたが見み

ているモノを、お子こ

さんも一緒いっしょ

に見み

ますか?

23. いつもと違ちが

うことがある時とき

、あなたの顔かお

を見み

て反応はんのう

を確たし

かめますか?

正ただ

しい例れい

違ちが

う例れい

×

部屋の離れたところにあるおもちゃを指差すと、その方向をみますか。(指さしの追従)

2012年春の母子健康手帳の改正:1歳の保護者記載欄の項目に追加されました。

男 n=11,455

女 n=11,074

0.3

0.25

0.2

0.15

0.1

0.05

05 15 25 35 45 55 65 75 85 95 105 115 125 135 145 155 165

SRS score

SRS score (保護者回答) n=22,529

比率(性別ごと)

図6 �日本の子どもの発達特性分布に関する研究知見の一例

図5 �エコチル調査の全国拠点(環境省エコチル調査パンフレットより引用)

図4 エコチル調査の流れ(環境省HPより引用)

1ヶ月時

6ヶ月から13歳になるまで

エコチル調査の流れ 全国の調査拠点

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40 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 41NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014

NCNPの活動 2013–2014臨床研究を支える医療者の育成

http://www.ncnp.go.jp/tmc/

2013年の参加者白熱の症例討議

切片の作製実習

多くの事例を学ぶ講義風景

人材育成

未来の医療をより良いものにしていくためには、研究が欠かせません。トランスレーショナル・メディカルセンターは、リサーチマインドを持つ人材の育成こそが、臨床研究を牽引し成功に導くための重要な基盤と考えています。私たちは若き初学者一人一人に丁寧に時間をかけて、医療や研究のABC、そして研究することの喜びを指導しています。そして研究における誠実さを考え直すことにも取り組んでいます。

伝統ある筋病理セミナー http://www.ncnp.go.jp/tmc/seminar/seminar06.html

「超」希少疾病である筋疾患は、専門的知識や技術を学べる機会が極めて限られています。私たちは、若手医師に対して筋疾患に関する学習の場を提供すべく、毎年夏に筋病理セミナーを開催しており、2014年には第50回を迎えました。例年7〜8倍の競争率となる人気のセミナーで、病院レジデントと全国から公募で集まった若手医師計10〜12名を対象に、一週間にわたって、筋疾患と筋生検・筋病理の実際に関する講義と実習を行います。筋疾患の知識を身に付けたこれまでの受講生約500名が医療の最前線で活躍し、日本の筋疾患医療を支えています。

臨床研究計画書ブラッシュアップ特訓セミナー http://www.ncnp.go.jp/tmc/seminar/seminar03.html

臨床研究を行うためには、正しい研究方法論に基づいて研究計画を立て、さらに研究を行うための研究費が必要となります。私たちは、臨床研究の方法論や研究費の獲得方法・利用方法を若き研究者に学んでもらうための段階的な教育システムを作っています。2013年度からは、参加者一人ひとりが文部科学省・学術振興会の科学研究費に応募できる水準の臨床研究計画書を実際に完成することを目標とした標題のセミナーを始め、成果をあげています。

研究不正の撲滅対策セミナー http://www.ncnp.go.jp/tmc/university_01.html

近時の研究不正事例の頻発を鑑みて、私たちも再度研究の倫理について研究者自身に再考してもらう機会を設けるべきと考えました。そこで、“Rethink Research Ethics”と題したセミナーを開始しました。外部の有識者(第1回大隅典子先生(東北大学)、第2回山崎茂明先生(愛知淑徳大学))をお招きし、「研究者としての高潔さ(integrity)とは何か?」、「公正な研究発表に必要なことは何か?」という普段の忙しい業務の中では見過ごされがちな問題を再度真剣に考える機会を提供し、多くの方々のご参加をいただきました。

真剣にワークに取り組む参加者たち 大隅典子先生(上段)と山崎茂明先生(下段)

公開セミナー 一覧▶ Meet the Expert

▶ 臨床研究入門講座ワークショップ

▶ 臨床研究実践講座ワークショップ

▶ 臨床研究計画書ブラッシュアップ特訓セミナー

▶ メタ・アナリシス入門講座

▶ 筋病理セミナー

▶ 遺伝カウンセリングセミナー

▶ その他セミナー

TMC-CRTキャラクター むさし君

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42 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 43NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014

NCNPの活動 2013–2014研究開発交流と、若い世代への発信教育活動

NCNPは、精神・神経・筋疾患、および発達障害分野における研究・医療のトップランナーとして、国内外のアカデミア、国際機関との連携による共同研究開発、研究交流を進めると共に、若い世代へ向けた教育活動にも取り組んでいます。

国内のアカデミアとの連携 http://www.ncnp.go.jp/staff/partner_school.html

国内の大学・研究機関等と教育研究協力に関する協定を締結し、NCNPの研究者が客員教員として大学等の学生への講義を行ったり、研究所に派遣された学生への指導、各機関と共同でのセミナー開催、共同での研究開発やガイドライン普及等の研究交流を図っています。

また、千葉大学、山梨大学、東京医科歯科大学には、連携大学院として本センター職員が在籍し、働きながら学位の取得を目指しています。

国内の主な連携機関早稲田大学

山梨大学

千葉大学

東京医科歯科大学

独立行政法人放射線医学研究所分子イメージングセンター

東京農工大学

医学系大学産学連携推進ネットワーク協議会(medU-net)

2013年度には山梨大学と合同シンポジウムを開催しました。

海外のアカデミア・国際機関との連携海外の大学等との研究協定等を締結し、研究者の

派遣や合同シンポジウムの開催等により、人材育成・研究交流を行っています。

また、世界保健機関(WHO)の会議への参加、国連大学グローバルヘルス研究所との連携により、世界の精神保健対策の発展に寄与する貴重な機会を得ました。

海外の主な連携機関メルボルン大学

マックスプランク研究所

ジョンズホプキンズ大学

ピエール・マリー・キュリー大学

国連グローバルヘルス研究所

 2013年度はメルボルン大学と「脳・こころ・社会を結ぶ研究の発展に向けて」をテーマに合同シンポジウムを開催しました。http://www.ncnp.go.jp/general/symposium_20130628.html

 2014年度は、マックスプランク研究所との合同シンポジウムを日本で、ピエール・マリー・キュリー大学との合同シンポジウムをパリで開催する準備を進めています。http://www.ncnp.go.jp/news/news_ 140210.html

海外からの研修生及び研究者の受け入れ精神・神経疾患等の医療における我が国の代表的機

関として、積極的に海外からの研修生や研究者を受け入れ、人材の育成・教育及び共同研究を行っています。

様々な国からの研究者たち

「世界脳週間」ポスター「世界脳週間」は、脳科学の科学としての意義と社会にとっての重要性を広く一般の皆さまに知っていただくことを目的として世界的な規模で行われているキャンペーンです。日本では2000年より特定非営利活動法人「脳の世紀推進会議」が主体となり参画しています。毎年各地で様々なイベントが開催されます。

051015202530

21年度 22年度 23年度 24年度 25年度(平成)

(人)

11

17 18 18

28

海外からの研修生及び研究者の受入数推移

※出身国別内訳中国8名、イギリス1名、フランス3名、オーストリア1名、韓国4名、コロンビア1名、インド1名、スリランカ1名、スイス2名、キルギス2名、イラン1名、スペイン1名、ドイツ1名、リトアニア1名

若い世代への教育活動 http://www.ncnp.go.jp/news/news_140728.html

NCNPでは、「世界脳週間」キャンペーンの一環として、若い世代の皆さまに脳科学の入門から最先端までの知見を分かりやすくご紹介し、脳研究の最前線の現場を体験していただけるイベントを開催しています。

2013年度からは主に高校生を対象に、脳科学に関するレクチャーとNCNP内各研究室の研究現場を見学・体験いただくラボツアーを開催しています。今年(2014年度)は、7月19日に約70名の生徒さんをお迎えし、半日にわたって開催いたしました。

参加した高校生からは「脳について教科書レベルのことから最新の研究のことまでとてもわかりやすかった」「最先端の研究を見学させて頂き、知識の幅が広がり、より広い視点から物事を考えていくヒントになりました」「将来研究職に就きたいと考えており、そのイメージがわいたので良かったです」などの感想が寄せられました。

今後も、未来を担う若い世代に向けて、研究・医療の最先端の現場から、情報発信を行ってまいります。

レクチャーとラボツアーの様子

脳週間

世 界

参加費無料World Brain Awareness Week

2014主催

共催

協力

特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議独立行政法人 理化学研究所脳科学総合研究センター/公益財団法人 ブレインサイエンス振興財団日本神経科学学会/日本神経化学会日本神経回路学会

脳を守る・育む

知る・創る

「世界脳週間」とは、脳科学の科学としての意義と社会にとっての重要性を一般に

啓蒙することを目的として、世界的な規模で行われるキャンペーンです。 アメリカでは神経科学者が中心となり、1992年から毎年3月に「脳週間」を設け、公開講演・討論、病院や研究所の公開、学校訪問などの公開行事を企画し、実施してきました。それに呼応して、1997年からヨーロッパにおいても「脳週間」が実施されています。この両者が連携して1999年には同時期に「脳週間」を開催、さらに2000年からは、国際脳研究機構やユネスコの後援を受け、アジア・南米・アフリカの各国にも呼びかけ「世界脳週間」と銘打って世界的な規模に拡大しました。 我が国もこの「世界脳週間」の意義に賛同し、本法人が主体となり、高校生を主な対象として2000年より参画してきています。 我が国においては、高校生が参加しやすいようにするため、各地の高等学校の既存行事と重ならないよう必要に応じ、3月15日を中心としてその前後を含めて企画されています。また、これらの行事には、高校の先生方にも参加をお願いしております。皆さまの積極的な参加を期待しております。

 主催者 特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議   理事長 伊藤 正男

開催趣旨

2月1日(土)

3月16日(日)

3月25日(火)

5月21日(水)

5月24日(土)

5月31日(土)

6月21日(土)

7月19日(土)

7月下旬(    )

7月後半(予定)

8月5日(火)

8月8日(金)

8月22日(金)

夏休み~秋にかけて

未定

未定

◆奈良女子大学附属中等教育学校 多目的ホール(奈良市)◇奈良女子大学附属中等教育学校◆松本中央公民館(M-Wing)(松本市)◇世界脳週間 in Matsumoto◆新潟大学脳研究所(新潟市)◇新潟大学脳研究所◆名古屋市立向陽高等学校(名古屋市)◇名古屋市立大学神経科学グループ◆岡崎げんき館(岡崎市)◇自然科学研究機構生理学研究所◆広島大学医学部第5講義室(広島市)◇広島大学神経科学研究会◆京都市立堀川高等学校(京都市)◇京都市立堀川高等学校/京都神経科学グループ◆群馬大学昭和キャンパス アメニティモール2階(前橋市)◇群馬大学神経科学グループ◆東北大学星陵キャンパス(仙台市)◇東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学研究センター◆国立精神・神経医療研究センター教育研修棟(予定)(小平市)◇国立精神・神経医療研究センター◆北海道大学医学部医歯学総合研究棟(札幌市)◇北大脳研究会、北大医学研究科◆理化学研究所大河内記念ホール(和光市)◇独立行政法人理化学研究所脳科学研究推進室◆玉川大学脳科学研究所(町田市)◇玉川大学脳科学研究所/玉川大学工学研究科/科研費新学術領域「予測と意思決定」◆大阪大学吹田キャンパス内(吹田市)◇大阪大学神経科学グループ◆東京学芸大附属高等学校(世田谷区)◇公益財団法人 東京都医学総合研究所◆未定(福岡市)◇九州大学大学院医学研究院

【総合事務局】〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3-11-15 UEDAビル6FE-mail: [email protected]

http://www.braincentury.org/

全国開催イベント全国開催イベント ◆開催会場 ◇主催団体

30日(水)or31日(木)

山梨大学との合同シンポジウム