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「例題で学ぶはじめての

塑性力学」

サンプルページ

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i

はじめに材料に力を加えた後に,材料から力を取り除きます.材料が元の形に戻ると

いう材料の性質を弾性とよび,材料が元の形に戻らないという材料の性質を塑

性とよびます.塑性力学は材料の塑性を力学の面から勉強する科目です.

機械系の高専,短大そして大学において塑性力学を学ぶためには,まず材料

力学を学ぶ必要があり,さらに弾性力学をある程度学ぶ必要があります.すな

わち,塑性力学を学ぶためには,あらかじめ複数の他の力学を勉強する必要が

あります.したがって,塑性力学は一般に難しいと思われています.そのため,

必要最低限の事柄のみを書いた入門書が必要ですが,そのような初学者に適し

た塑性力学の入門書はありません.

一方,材料の塑性を利用して様々な形状の物を作ることを塑性加工とよびま

す.塑性加工は,いま注目を浴びている “ものづくり” のための加工法の一つ

です.塑性加工を学ぶためには,かならずしもあらかじめ他の科目を勉強する

必要はありません.

しかし,塑性加工に関する様々な知識を理解するために,塑性力学の知識は

非常に役に立ちます.また最近では,機械系の技術者は市販の汎用有限要素解

析ソフトを用いて,塑性加工の数値シミュレーションを盛んに行っています.

この有限要素解析を正しく行うために,また,解析結果が正しいことを確かめ

るために,塑性力学の知識は欠かせません.

以上のような状況をふまえて,本書は,はじめて塑性力学を勉強する方々の

ために書かれました.1章から 3章では,必要最低限の塑性力学の基礎的な事

柄を説明しました.4章および 5章では,塑性力学の代表的な解析法である初

等解法を用いた塑性加工の解析法を説明しました.6章では,1次元弾塑性有限

要素法を説明することにより,塑性加工の有限要素解析を紹介しました.

本書の特徴はつぎのように要約できます.

•必要最低限の事柄のみを書きました•式を導く過程を詳しく書きました•例題とそれに関連した問題を一緒に示しました•使用した数学公式をコラムで示しました•初等解法による解析解と有限要素法による数値解を比べました

本書を読むことにより,難しいと思われている塑性力学をより身近に感じて

ii

頂きたいと思います.また,本書を読んだ後に,より専門的な塑性力学の本を

読んで頂きたいと思います.本書の最後には,さらに勉強するための,いくつ

かの本を紹介しています.

本書がより多くの高専,短大そして大学において教科書として採用されるこ

とを期待致します.また,より多くの技術者が,本書をきっかけとして塑性力

学の勉強を始めることを希望致します.

本書は塑性力学および塑性加工の分野で活躍されている方々によって執筆さ

れました.ここに,執筆者の方々に感謝致します.また,本書の企画から出版

までの長期間にわたり大変お世話になった,日本塑性加工学会の出版事業委員

会および森北出版に感謝致します.

2009年 4月

著者代表 小森和武

執筆者一覧(執筆順)

神 雅彦/日本工業大学工学部機械工学科

湯川伸樹/名古屋大学大学院工学研究科附属材料バックキャストテ

クノロジー研究センター

早川邦夫/静岡大学工学部機械工学科

桑原利彦/東京農工大学大学院共生科学技術研究院先端機械システ

ム部門

小森和武/大同大学工学部機械工学科

岡田達夫/理化学研究所 VCADシステム研究プログラム

iii

目 次

1章 塑性という現象 神 雅彦

1.1 弾性と塑性 ····································································· 1

1.2 公称応力と公称ひずみ(1次元)·········································· 2

1.3 真応力と真ひずみ(1次元)················································ 5

1.4 応力 –ひずみ曲線 ··························································· 10

章末問題 ·············································································· 14

2章 応力とひずみ 湯川伸樹

2.1 応力成分 ······································································· 15

2.2 任意の面における応力 ···················································· 18

2.3 主応力および最大せん断応力 ············································ 21

2.4 平均垂直応力,偏差応力 ·················································· 32

2.5 応力の不変量 ································································· 33

2.6 ひずみ成分 ···································································· 37

2.7 平面応力状態,平面ひずみ状態および軸対称状態 ················· 40

章末問題 ·············································································· 43

3章 降伏条件と応力 –ひずみ関係式 早川邦夫

3.1 降伏条件 ······································································· 44

3.2 弾塑性体における応力とひずみの関係(構成式)·················· 54

3.3 特別な変形状態における降伏条件と塑性構成式 ···················· 65

3.4 摩擦の取り扱い—クーロン摩擦とせん断摩擦— ···················· 71

章末問題 ·············································································· 73

4章 初等解法による板成形の解析 桑原利彦

4.1 曲げの初等解法 ······························································ 74

4.2 円筒絞り成形の初等解法 ·················································· 85

章末問題 ············································································ 100

iv 目 次

5章 初等解法による鍛造・引抜き・押出しの解析 小森和武

5.1 ブロックの平面ひずみ圧縮 ············································· 101

5.2 円柱の軸対称圧縮 ························································· 107

5.3 丸棒の引抜き・押出し ··················································· 115

章末問題 ············································································ 125

6章 有限要素法入門 岡田達夫/小森和武

6.1 有限要素法とは ···························································· 126

6.2 棒要素を用いたトラスの弾性解析 ···································· 128

6.3 棒要素を用いたトラスの弾塑性解析 ································· 142

6.4 さらに勉強するために ··················································· 152

問題の解答 ················································································· 154

索 引 ······················································································· 168

[本書で使用する単位について]

本書でおもに使用する単位を,つぎの表に示す.基本的に国際単位系(SI単

位系)を使用するが,角度については,初学者にとって親しみやすい度数法で

表示している.計算の際には,単位換算に注意してほしい.

量本書でおもに使用する単位

換算

長さ [m] —

角度 [◦ ] = π/180 [rad]

力 [N] —

応力・圧力 [MPa] (= 106[Pa]) = [N/mm2]

モーメント [N · m] —

接頭語 読み 大きさ

m ミリ × 10−3

k キロ × 103

M メガ × 106

G ギガ × 109

1

1 章 塑性という現象

この章では,はじめに,弾性と塑性について説明し,引張試験の例を参考に

公称応力と公称ひずみについて学ぶ.つぎに,塑性力学において基礎となる 1

次元の真応力と真ひずみに関して,その定義およびいくつかの重要な特徴につ

いて学ぶ.最後に,真応力 –真ひずみ線図の単純化と加工硬化指数について学

ぶ.この章は,塑性力学の土台に相当する部分である.塑性変形をどのように

数式で表すのかを深く考えながら,しっかりと学んでほしい.

1.1 弾性と塑性

材料を変形させた後に力を除荷したときに,ただちに変形前の形状に復元す

る性質を弾性とよぶ.それに対して,変形後に力を除荷しても,変形前の形状に

復元しない性質を塑性とよぶ.金属材料の変形には,弾性と塑性の両方の性質

が含まれている.図 1.1に示すように,一端が固定された金属丸棒をAまで引

き伸ばし,つぎに,荷重を除荷する変形を考える.Aまで引き伸ばされた丸棒

は,わずかに Bまで縮み,OB間が最終的に伸びた長さとなる.このとき,AB

間の変形を弾性変形とよび,OB間の変形を塑性変形または永久変形とよぶ.

一般的な金属材料では,弾性変形の大きさは変形前の長さの 0.2%程度と小さ

い.それに対して,塑性変形の大きさは変形前の長さの数%~数十%程度にお

よび,弾性変形に比べて大きい.材料が塑性変形できる能力のことを変形能と

図 1.1 弾性変形と塑性変形

2 1 章 塑性という現象

よぶ.塑性変形において,材料の変形前後の体積変化は 1%以下とごくわずか

である.そのため,塑性力学では,変形前後の体積は一定であると仮定し,そ

の仮定を体積一定則とよぶ.

1.2 公称応力と公称ひずみ(1次元)

1.2.1 金属材料の引張試験

金属材料の変形特性は,引張試験や圧縮試験などの材料試験より調べられる.

図 1.2は,日本工業規格 10号試験片に相当する直径12.5 mmの軟鋼丸棒の引張

試験の様子である.図 (a)は変形前であり,はじめの標点間距離は l0 = 50 [mm]

である.図 (b)は,l1 = 56 [mm] 時点の様子を表しているが,初期の引張段

階では,試験片は標点間でほぼ一様に伸びる.この伸びを一様伸びとよぶ.一

様伸びの限界を超えると,図 (c)のように,直径が局部的に著しく減少するくびれの現象が発生する.くびれが発生する伸びを局部伸びとよぶ.図の引張試

験では,l2 = 66 [mm] 時点でくびれが発生し,最終的に,図 (d) のように,l3 = 70 [mm]時点で,くびれ発生箇所において破断した.軟鋼のように変形能

の大きい延性材料では,図 (d)のように,おわん形状のカップアンドコーン型の破断面となる.

図 1.2 実際の引張試験の例(材質:軟鋼丸棒)

1.2.2 公称応力と公称ひずみの定義

材料試験における寸法の影響を除くために,公称応力 sと公称ひずみ eとが

定義されている.図 1.3のような試験片の変形において,公称応力は,荷重 P

を,変形前の断面積A0で割った単位断面積あたりの力であり,式 (1.1)のよう

1.2 公称応力と公称ひずみ(1 次元) 3

図 1.3 試験片の変形

に表される.公称ひずみは,変形前の長さ l0を基準にしたひずみの増加分 dl/l0

を,変形前の長さ l0から変形後の長さ lまでの間で積分した値であり,式 (1.2)

のように表される.ひずみは,変形後に伸びた長さの変形前の長さに対する比

率であり,単位のない無次元の量である.

s =P

A0(1.1)

e =∫ l

l0

dl

l0=

[l

l0

]l

l0

=l − l0

l0(1.2)

例題 1.1 図 1.2(b)における公称応力と公称ひずみを計算せよ.解 引張荷重は P = 28.4 [kN] = 28.4 × 103 [N] であり,試験片の断面積 A0 は

A0 = (π/4) × (12.5 [mm])2 = 122.7 [mm2] = 122.7 × 10−6 [m2]である.公称応

力は式 (1.1)より,公称ひずみは式 (1.2)より

s =P

A0=

32.4 × 103 [N]

122.7 × 10−6 [m2]= 264 × 106 [Pa] = 264 [MPa]

e =l − l0

l0=

56.0 [mm] − 50.0 [mm]

50.0 [mm]= 0.12

と求められる.応力の単位は,国際単位系ではMPaで表記されることが多い.図 1.2における引張試験では,荷重を kNで,断面積をmm2 で計測している.Pa(パス

カル)は,Pa = N/m2 であり,M(メガ)は 106,k(キロ)は 103,およびm(ミ

リ)は 10−3 を表すそれぞれ接頭語である.計算においては,単位換算に十分注意

しなければならない.多くの金属材料では,塑性変形時の応力はMPa単位で 3桁

程度の大きさの値となる.

【問 1.1】 図 1.2(c)における公称応力と公称ひずみを計算せよ.

4 1 章 塑性という現象

1.2.3 公称応力–公称ひずみ線図

一般的な金属材料の引張試験における公称応力–公称ひずみ線図を,図 1.4中の実線で示す.原点 Oから点 Aの手前までは弾性変形であり,式 (1.3)

s = Ee (1.3)

で表されるフックの法則に従う.E は縦弾性係数またはヤング率とよばれ,弾

性変形における材料の強さの指標となる.点 Aは塑性変形開始点であり,降伏

点とよばれる.点Aでの応力 Y を,降伏応力とよぶ.多くの金属材料では,降

伏点がはっきりしないため,公称ひずみがある値に達したときを塑性変形開始

点とみなし,この応力を耐力とよぶ.たとえば,公称ひずみが 0.2%に達した点

を用いた場合は,0.2%耐力とよぶ.

塑性変形を続けると,ひずみの増加とともに応力が増加していく.この現象

を加工硬化とよぶ.塑性変形の途中で引張試験を中断し除荷すると,応力とひ

ずみは,図 1.4中の点線で示したように,縦弾性係数 E の傾きとほぼ平行の

経路で減少する.材料には,弾性ひずみを除いた塑性ひずみのみが残る.再度,

引張試験を開始すると,応力とひずみは,縦弾性係数E の傾きで増加し,除荷

点からふたたび塑性変形を開始する.公称応力の最大点Bでの応力は引張強さ

とよばれ,金属材料の強度の指標に用いられる.点 Bまではほぼ一様伸びであ

り,点 Bを超えると,くびれが発生し局部伸びとなる.最終的に変形能が尽き

ると点 Cで破断する.点 Cでの応力を破断応力とよぶ.

図 1.4 応力–ひずみ線図

1.3 真応力と真ひずみ(1 次元) 5

1.3 真応力と真ひずみ(1次元)

1.3.1 真応力と真ひずみの定義

体積一定則にもとづく塑性変形においては,図 1.3に示したように,変形後の断面積 Aは,変形前の断面積 A0 と比較して小さくなる.そこで,式 (1.4)

に示すように,変形後の断面積 Aを用いる真応力が定義されている.

σ =P

A(1.4)

ひずみについては,式 (1.5)に示すように,変形後の長さ lを基準としたひず

みの増加分 dl/lを,l0 から lまでの間で積分する真ひずみまたは対数ひずみが

定義されている.

ε =∫ l

l0

dl

l= [ln l]ll0 = ln l − ln l0 = ln

l

l0(1.5)

変形前後の体積一定条件Al = A0l0から,変形後の断面積Aは式 (1.6)のよ

うに求められる.式 (1.6)を式 (1.4)に代入し,さらに式 (1.1)と式 (1.2)を用

いることにより,一様伸びにおける公称応力と真応力との関係は,式 (1.7)の

ように求めることができる.

A =A0l0

l(1.6)

σ = P · l

A0l0=

P

A0· l

l0= s · l0 + l − l0

l0= s

(1 +

l − l0l0

)= s(1 + e)

(1.7)

一様伸びにおける公称ひずみと真ひずみとの関係は,式 (1.5)を変形し,式 (1.2)

を用いることによって,式 (1.8)のように求めることができる.

ε = lnl

l0= ln

(l0 + l − l0

l0

)= ln

(1 +

l − l0l0

)= ln (1 + e) (1.8)

真応力–真ひずみ線図を,図 1.4中の一点鎖線で示す.真応力 –真ひずみ線

図と,公称応力 –公称ひずみ線図とを比較すると,ひずみが小さい範囲では,

式 (1.7)からもわかるように,公称応力と真応力との差は小さい.それに対し

て,大きなひずみになると,真応力が公称応力を上回るようになる.公称応力

では点 B以降で減少してくるのに対し,真応力では破断点まで増加し続ける.

6 1 章 塑性という現象

ひずみに関しては,式 (1.8)からわかるように,小さなひずみの範囲では,公称

ひずみと真ひずみとの差は小さい.それに対して,大きなひずみになると,公

称ひずみと真ひずみとの差が大きくなる.

例題 1.2 公称ひずみが e1 = 0.01, e2 = 0.001および e3 = −0.01と小さいと

きの真ひずみ ε1, ε2 および ε3 を求め,小さなひずみにおいては,公称ひずみと真

ひずみとの差が小さいことを確かめよ.

解 式 (1.8)より,つぎのようになる.

ε1 = ln(1 + e1) = ln(1 + 0.01) = 0.00995

ε2 = ln(1 + e2) = ln(1 + 0.001) = 0.0009995

ε3 = ln(1 + e3) = ln(1 − 0.01) = −0.01005

【問 1.2】 公称ひずみが e1 = 0.10, e2 = 1.00, e3 = −0.10および e4 = −1.00のと

きの真ひずみ ε1, ε2, ε3 および ε4 を求め,大きなひずみにおいては,公称ひずみと

真ひずみとの差が大きいことを確かめよ.

1.3.2 真ひずみの特徴

真ひずみは,塑性変形を取り扱ううえで有効である.その特徴を述べる.

(1) ひずみの加算が可能である

図 1.5(a)に示すように,長さ l0の棒を l1まで引張り,さらに l2まで引張っ

たときのひずみの加算を考える.真ひずみでは,l0から l1までのひずみを ε0→1

と表すと,その値は,式 (1.5)を利用して式 (1.9)のようになる.同じように,

l1から l2までのひずみ ε1→2は,式 (1.10)のようになる.式 (1.9)と式 (1.10)

のひずみの和は,式 (1.11)のように計算できる.すなわち,ε0→1 と ε1→2 の

和が,l0 から l2 までのひずみ ε0→2 と一致し,ひずみの加算が可能である.

図 1.5 各種の変形

1.3 真応力と真ひずみ(1 次元) 7

ε0→1 = ln(

l1l0

)(1.9)

ε1→2 = ln(

l2l1

)(1.10)

ε0→1 + ε1→2 = ln(

l1l0

)+ ln

(l2l1

)= ln l1 − ln l0 + ln l2 − ln l1

= ln(

l2l0

)= ε0→2 (1.11)

それに対して,公称ひずみでは式 (1.2) を利用して,l0 から l1 までのひずみ

e0→1と l1から l2までのひずみ e1→2との和を計算しても,式 (1.12)のように,

l0 から l2 までのひずみ e0→2 と一致せず,ひずみの加算ができない.

e0→1 + e1→2 =l1 − l0

l0+

l2 − l1l1

�= l2 − l0l0

= e0→2 (1.12)

例題 1.3 l0 = 50 [mm] の金属丸棒を,l1 = 60 [mm] に伸ばし,さらに,

l2 = 80 [mm] まで伸ばしたときの公称ひずみ e0→1 + e1→2, e0→2 と真ひずみ

ε0→1 + ε1→2, ε0→2 を求め,e0→1 + e1→2 �= e0→2 および ε0→1 + ε1→2 = ε0→2 で

あることを確かめよ.

解 公称ひずみは式 (1.2)より,

e0→1 =l1 − l0

l0=

60 [mm] − 50 [mm]

50 [mm]= 0.20

e1→2 =l2 − l1

l1=

80 [mm] − 60 [mm]

60 [mm]= 0.33

e0→2 =l2 − l0

l0=

80 [mm] − 50 [mm]

50 [mm]= 0.60

e0→1 + e1→2 = 0.20 + 0.33 = 0.53 �= e0→2 = 0.60

となる.真ひずみは式 (1.5)より,つぎのようになる.

ε0→1 = ln(

l1l0

)= ln

(60 [mm]

50 [mm]

)= 0.18

ε1→2 = ln(

l2l1

)= ln

(80 [mm]

60 [mm]

)= 0.29

ε0→2 = ln(

l2l0

)= ln

(80 [mm]

50 [mm]

)= 0.47

ε0→1 + ε1→2 = 0.18 + 0.29 = 0.47 = ε0→2 = 0.47

44

3 章 降伏条件と応力 –ひずみ関係式

本章では,組合せ応力状態下で弾性状態から塑性状態に移行するときの条件

である降伏条件のうち,等方材料において塑性変形における体積一定則を満た

すトレスカの降伏条件とミーゼスの降伏条件について学ぶ.さらに,弾性およ

び弾塑性状態における応力とひずみの関係式(構成式)について,弾性ではフッ

クの法則,塑性では塑性ひずみ増分と偏差応力の関係を表したひずみ増分理論

(または流れ理論)について学ぶ.最後に,摩擦の取扱いについて学ぶ.

3.1 降伏条件

3.1.1 降伏条件とは

弾性変形状態にある材料が,塑性変形を生じるために必要な応力の条件を,降

伏条件という.

はじめに,簡単な例として,図 3.1のような薄肉円管を考えよう.図 3.1(a)のような単軸応力状態の場合,1.2節で学んだように,軸方向応力 σ が単軸降

伏応力 Y に達すると塑性変形が生じ始める.また,図 3.1(b)のようにねじる場合,薄肉円管にはせん断応力 τ が作用し,単純せん断状態となる.このせん

断応力 τ がせん断降伏応力 k を超えると,せん断による塑性変形が開始する.

これらの塑性変形が開始する条件,すなわち,降伏条件を式で表すと,つぎの

ようになる.

σ = Y(単軸応力), τ = k(単純せん断) (3.1)

たとえば,単軸応力とせん断応力が同時に作用するような,複雑な応力状態に

ある材料の降伏条件は,どのようになるだろうか.これは,次式のように,応力

図 3.1 薄肉円管に対する負荷

3.1 降伏条件 45

の関数 F がある値 C に達したときに降伏が生じるものとして定義すればよい.

F (σx, σy, σz, τxy, τyz, τzx) = C (3.2)

ここで,C は降伏に関する材料定数である.以下では,式 (3.2)の具体的な形

を,延性金属材料の塑性変形の性質を考慮しながら導いてみよう.

3.1.2 等方性材料の降伏条件

まず,簡単のため,材料の特性が特定の方向に依存しない場合を考える.こ

のような性質を等方性という.このとき,材料の応力状態は,2.3節で学んだ主

応力の三つの成分によって,次式のように表現できる.

F (σ1, σ2, σ3) = C (3.3)

また,材料に方向性はないので,主応力の三つの成分をどのように入れ換え

ても,式 (3.3)は同じでなければならない.そこで,2.5節で学んだように,座

標系によらず,応力状態が決まればただ一つに決まる量の応力の不変量 J1, J2

および J3 で表現しよう.すなわち,式 (3.3)は,次式のように書ける.

F (J1, J2, J3) = C (3.4)

さらに,1.1節で学んだように,塑性変形では体積変化は生じないので,降伏

条件に平均垂直応力の効果は寄与しない.したがって,降伏条件は,次式のよ

うに,偏差応力の不変量 J ′2 および J ′

3 で表現すればよいことになる.

F (J ′2, J ′

3) = C (3.5)

ここで,2.5節で学んだように,J ′1 = 0であることに注意しよう.

式 (3.5)の形を満足する降伏条件のうち,広く用いられているのはトレスカ

の降伏条件と,ミーゼスの降伏条件である.以下では,それらの降伏条件につ

いてみていこう.

3.1.3 トレスカの降伏条件

トレスカは,材料に作用する最大のせん断応力値が,ある限界に達すると降

伏するという考えを提案した.このトレスカの降伏条件は,最大せん断応力説

とよばれる.以下に,この考えを定式化してみる.

2.3節で学んだように,材料に作用する最大せん断応力 τmax は,次式のうち

最大のものである.

46 3 章 降伏条件と応力 –ひずみ関係式∣∣∣∣σ1 − σ2

2

∣∣∣∣ ,∣∣∣∣σ2 − σ3

2

∣∣∣∣ ,∣∣∣∣σ3 − σ1

2

∣∣∣∣ (3.6)

したがって,トレスカの降伏条件を適用するためには,主応力の大小を判断す

る必要がある.いま,主応力の大きさを σ1 ≥ σ2 ≥ σ3 とすれば,最大せん断

応力 τmax は,

τmax =σ1 − σ3

2(3.7)

と表されるので,トレスカの降伏条件は,次式で表現できる.

τmax =σ1 − σ3

2= C ′ (3.8)

ここで,C ′は材料定数である.トレスカの降伏条件を,あらゆる応力状態で適

用可能にするため,まず,図 3.1(a)および (b)のような,単軸応力および単純せん断状態における降伏を表現できるようにC ′ を定めよう.

単軸応力状態の場合,最大主応力 σ1 は単軸応力 σ であり,その他の主応力

σ2 および σ3 は 0である.式 (3.1)より σ = Y のとき降伏するので,式 (3.8)

より C ′ は次式となる.

C ′ =σ1 − σ3

2=

σ − 02

2=

Y

2, ∴ C ′ =

Y

2(3.9)

一方,図 3.1(b)の単純せん断状態の場合,2.3節で学んだようなモールの応

力円は図 3.2のようになり,したがって,このときの主応力は,

σ1 = τ, σ2 = 0, σ3 = −τ (3.10)

となる.式 (3.1)より τ = k のとき降伏するので,これを式 (3.8)に代入する

と,C ′ は次式となる.

C ′ =σ1 − σ3

2=

τ − (−τ)2

= τ = k, ∴ C ′ = k (3.11)

図 3.2 単純せん断状態におけるモールの応力円

3.1 降伏条件 47

式 (3.9)および (3.11)から,トレスカの降伏条件における重要な関係

Y = 2k (3.12)

が成り立つ.

トレスカの降伏条件は,一見すると式 (3.5)を満たしていないように見える

が,多少長い計算により,偏差応力の不変量 J ′2 および J ′

3 で表現されることを

示すことができる.

トレスカの降伏条件は,式 (3.8)のように式の形は単純だが,主応力間の大

小を決めなければならないのが多少面倒である.また,式 (3.8)には中間の主

応力 σ2 が含まれていないので,その影響は考慮されない.

3.1.4 ミーゼスの降伏条件

これは,ミーゼスにより提案された条件で,つぎのような形で表される.

F (J ′2, J ′

3) = J ′2 =

16

{(σ1 − σ2)

2 + (σ2 − σ3)2 + (σ3 − σ1)

2}

=12

{σ′2

x + σ′2y + σ′2

z + 2(τ2xy + τ2

yz + τ2zx

)}

=16

{(σx − σy)2 + (σy − σz)

2 + (σz − σx)2

+ 6(τ2xy + τ2

yz + τ2zx

)}= C ′′ (3.13)

ここで,C ′′ は材料定数である.式 (3.13)は,式 (3.5)の形で表現できる等方

材料の降伏条件のうちの,もっとも単純な形である.

また,ミーゼスの降伏条件式 (3.13)は,偏差応力の不変量 J ′2 で表現できる

せん断ひずみエネルギー Us

Us =1

12G

{(σ1 − σ2)

2 + (σ2 − σ3)2 + (σ3 − σ1)

2}

=J ′

2

2G(3.14)

が,ある限界に達すると降伏が生ずるという解釈ができるので,せん断ひずみ

エネルギー説ともよばれている.

さて,トレスカの降伏条件で,式 (3.9)および (3.11)を導いたときと同様に,

ミーゼスの降伏条件式 (3.14)における限界値 C ′′ を,単軸応力状態および単純

せん断状態の場合について求めよう.

単軸応力状態の場合,式 (3.9)を導いたときと同じ条件を式 (3.13)に用いる

ことにより,C ′′ は次式となる.

48 3 章 降伏条件と応力 –ひずみ関係式

C ′′ = J ′2 =

16

{(σ − 0)2 + (0 − 0)2 + (0 − σ)2

}=

16· 2σ2 =

13Y 2

∴ C ′′ =13Y 2 (3.15)

一方,単純せん断状態の場合,式 (3.10)の主応力状態および τ = kを式 (3.13)

に代入すると,C ′′ は次式となる.

C ′′ = J ′2 =

16

{(τ − 0)2 + {0 − (−τ)}2 + (−τ − τ )2

}=

16· 6τ2 =k2

∴ C ′′ = k2 (3.16)

式 (3.15)および (3.16)から,ミーゼスの降伏条件におけるつぎの重要な関係が

導かれる.

C ′′ =13Y 2 = k2, ∴ Y =

√3k (3.17)

ミーゼスの降伏条件は,三つの主応力を用いるが,その大小関係を明らかに

しなくてもよい.さらに,式 (3.13)の 3行目の式を利用すると,主応力をかな

らずしも求めなくてもよいという特徴もある.

例題 3.1 単軸降伏応力が Y = 250 [MPa]の材料がある.この材料が,トレス

カおよびミーゼスの降伏条件に従うときのせん断降伏応力 k [MPa]を求めよ.

解 トレスカの場合,式 (3.12)より,つぎのようになる.

k =1

2Y =

250 [MPa]

2= 125 [MPa]

ミーゼスの場合,式 (3.17)より,つぎのようになる.

k =Y√3

=250 [MPa]√

3= 144 [MPa]

【問 3.1】 せん断降伏応力が k = 100 [MPa]の材料がある.この材料が,トレスカお

よびミーゼスの降伏条件に従うときの単軸降伏応力 Y [MPa]を求めよ.

3.1.5 軸方向応力とせん断応力が同時に作用するときの降伏条件

つぎに,より複雑な応力状態の例として,図 3.3(a)のように,薄肉円管に軸方向応力とせん断応力が同時に作用するときの,トレスカおよびミーゼスの

降伏条件を求めよう.

管の軸方向を x軸,円周方向を y 軸,半径方向を z 軸とすると,

101

5 章 初等解法による鍛造・引抜き・押出しの解析

4章では,板の変形を解析するための方法を学んだ.本章では,板ではない

もの,すなわち,かたまり(塊)の変形を解析するための方法を学ぶ.板の変形

を解析する場合,材料の弾性変形を考慮することが多い.一方,かたまり(塊)

の変形を解析する場合,材料の弾性変形を無視することが多い.本章において

も,材料の弾性変形を無視している.

5.1 ブロックの平面ひずみ圧縮

図 5.1に示すように,ブロック(直方体)を,上下にある一組の工具で圧縮することを考える.ここで,ブロックの奥行き bが,ブロックの幅 wやブロッ

クの高さ hよりも非常に大きい場合を考える.その場合,ブロックはブロック

の奥行き方向(z方向)に変形しない,とみなせる.言い換えると,z方向のひ

ずみ εz が 0である,とみなせる.これは,2.7節で学んだ平面ひずみ状態であ

る.そこで,z 軸に垂直な平面である,xy平面のみを考え,平面内のブロック

の変形を初等解法により解析しよう.4.2節で学んだように,初等解法ではま

ず,微小な要素を材料内部に考える.そこで,図に網掛けで示された微小要素

について考えよう.

図 5.2に xy 平面内のブロックを示す.網掛けは微小要素を表す.ブロック

の奥行き方向は,紙面に垂直な方向になるため,bは図に表れない.また,材料

図 5.1 ブロックの見取図

102 5 章 初等解法による鍛造・引抜き・押出しの解析

図 5.2 微小要素の平面図

と工具のあいだに,3.4節で学んだクーロン摩擦を仮定しよう.

5.1.1 微小要素の力のつり合い式

微小要素に働く応力を考える.x = x の面に働く垂直応力を σx と書けば,

x = x + dxの面に働く垂直応力は σx + dσxと書ける.この dσxを求めること

が最終的な目標となる.微小要素の長手方向(y方向)に応力が一様である,と

仮定することが初等解法の特徴である.言い換えると,σxは xのみの関数であ

ると仮定する.この仮定により,解析を容易にすることができる.一方,上工

具および下工具から,圧力 pが作用する.さらに,圧力 pに比例した摩擦応力

μpが作用する.ここで,μはクーロンの摩擦係数である.摩擦応力の方向は,

材料の変形を妨げる方向,すなわち,x = 0に向かう方向である.

微小要素に働く力のつり合いを考える.y 方向の力はつり合っているため,

x 方向の力のつり合いを考える.微小要素の奥行きが b であることを考えれ

ば,x方向の力のつり合い式はつぎのようになる.ここで,(σx + dσx)h · bはx = x + dxの面に働く力,σxh · bは x = xの面に働く力,そして 2μp · dx · bは工具接触面に働く力である.なお,応力あるいは圧力に,それらが働く面積

をかければ,力が得られることに注意しよう.

(σx + dσx)h · b−σxh · b−2μp · dx · b = 0

→ dσxh · b = 2μp · dx · b, ∴ dσx

dx=

2μp

h(5.1)

5.1.2 微小要素の降伏条件式

式 (3.61)より,平面ひずみ状態の相当応力は,次式で与えられる.

5.1 ブロックの平面ひずみ圧縮 103

σ̄ =

√12

{32

(σx − σy)2 + 6τ2xy

}(5.2)

式 (5.2)を簡略化するために,τxy = 0と仮定する.もちろん,摩擦応力 μp

があるため,厳密には τxy �= 0であるが,初等解法では,解析を容易にするため

にこのような大胆な仮定がなされる.その結果,上式より次式が得られる.こ

こで,| |は絶対値記号である.

σ̄ =

√12

{32

(σx − σy)2}

=√

32

|σx − σy| (5.3)

したがって,平面ひずみ状態におけるミーゼスの降伏条件は,つぎのように

なる.

Y =√

32

|σx − σy|,あるいは, k =12|σx − σy| (5.4)

絶対値記号があると解析が煩雑になる.そこで,絶対値記号を消すために,

σx > σy であるか,σx < σy であるかを,工学的な感覚により判断する.材料

は y方向に圧縮されるが,x方向に圧縮されない.したがって,σx > σy であ

り,ミーゼスの降伏条件はつぎのようになる.

2√3Y = σx − σy,あるいは, 2k = σx − σy (5.5)

応力状態が圧縮の場合,応力 σy は負であり圧力 p は正である.すなわち,

p = −σy であり,ミーゼスの降伏条件はつぎのようになる.

2√3Y = σx + p,あるいは, 2k = σx + p (5.6)

ミーゼスの降伏条件を,力のつり合い式である式 (5.1)に組み合わせるため

に,式 (5.6)を xで微分すると,次式が得られる.

dσx

dx+

dp

dx= 0 (5.7)

5.1.3 圧力分布

力のつり合い式 (5.1)と,微分形式で表されたミーゼスの降伏条件である式

(5.7)より,圧力 pに関する微分方程式が得られる.

2μp

h+

dp

dx= 0 → dp

p= −2μ

hdx (5.8)

104 5 章 初等解法による鍛造・引抜き・押出しの解析

式 (5.8)を解くために,圧力 pに関して積分する.ここで,C, C ′ は積分定

数であり,表示を簡潔にするため,expC を C ′ に置き換えた.∫dp

p= −2μ

h

∫dx → ln p = −2μ

hx + C → p = exp

(−2μ

hx+C

)

∴ p = expC · exp(−2μ

hx

)= C ′ exp

(−2μ

hx

)(5.9)

積分定数 C ′ を求めるために,境界条件を使おう.材料の側面 (x = +w/2)

は,自由表面であり,応力 σx = 0である.そのとき,ミーゼスの降伏条件であ

る式 (5.6)より,p = 2kである.すなわち,境界条件は次式のようになる.

p = 2k(x = +

w

2

)(5.10)

境界条件である式 (5.10)を式 (5.9)に代入することにより,積分定数 C ′ を

求める.

2k = C ′ exp(−2μ

h· w

2

), ∴ C ′ = 2k exp

(μw

h

)(5.11)

式 (5.11)を式 (5.9)に代入することにより,圧力 pが求まる.

p = 2k exp(μw

h

)exp

(−2μ

hx

)=

2√3Y exp

(μw

h

)exp

(−2μ

hx

)

(5.12)

式 (5.12)において,式 (3.17),すなわち,引張降伏応力 Y とせん断降伏応力

kの関係である Y =√

3kを利用している.

例題 5.1 幅が 100 [mm],高さが 20 [mm],引張降伏応力が 400 [MPa]のブロッ

クがある.摩擦係数を 0.1とした場合,最大圧力を求めよ.

解 式 (5.12)より,幅中央 (x = 0)で圧力が最大になる.式 (5.12)より,つぎの

ようになる.

p =2√3Y exp

(μw

h

)exp

(−2μ

hx)

=2√3×400 [MPa]×exp

(0.1×100 [mm]

20 [mm]

)×exp

(− 2 × 0.1

20 [mm]×0 [mm]

)= 762 [MPa]

【問 5.1】 幅が 30 [mm],高さが 10 [mm],引張降伏応力が 200 [MPa]のブロックが

ある.摩擦係数を 0.2とした場合,幅中央から 5 [mm]の位置の圧力を求めよ.

5.1 ブロックの平面ひずみ圧縮 105

図 5.3に,初等解法による圧力分布と,有限要素法による圧力分布を示す.圧力分布をより理解しやすくするために,圧力 pを 2kで割った,無次元化され

た圧力 p/2kで表示している.両解析法の圧力分布はおおむね一致する.ただ,

材料の幅中央 (x = 0)において,初等解法による圧力は,有限要素法による圧

力よりも若干高い.

図 5.3 圧力分布 (μ = 0.1, w/h = 5)

図 5.4に,圧力分布に及ぼす摩擦係数の影響を示す.摩擦係数 μ = 0の場

合,圧力 p = 2k になる.そして,摩擦係数 μ の増加とともに,材料の側面

(x = ±w/2)を除く領域において,圧力 pが増加する.また,圧力 pは,材料

の幅中央 (x = 0)において最大になる.

図 5.4 圧力分布に及ぼす摩擦係数の影響 (w/h = 1)

5.1.4 荷重および平均圧力

圧力 p を,材料と工具の接触面にわたり加え合わせると,荷重 P が得られ

る.仮定した摩擦応力の向きから,圧力 pは,x = 0に関して左右対称である.

そして,式 (5.12)の pは,0 ≤ x ≤ +w/2の領域でのみ有効である.そこで,

0 ≤ x ≤ +w/2の領域の荷重を倍にすることにより,荷重 P を求める.

106 5 章 初等解法による鍛造・引抜き・押出しの解析

P = 2b

∫ +w/2

0

pdx = 2b

∫ +w/2

0

2k exp(μw

h

)exp

(−2μ

hx

)dx

= 4kb exp(μw

h

)⎡⎢⎢⎣

exp(−2μ

hx

)

−2μ

h

⎤⎥⎥⎦

+w/2

0

= 4kb exp(μw

h

)(− h

){exp

(−μw

h

)− 1

}

= −4kbh

2μexp

(μw

h

){exp

(−μw

h

)− 1

}

= −2kbh

μ

{1 − exp

(μw

h

)}=

2kbh

μ

{exp

(μw

h

)− 1

}

=2Y bh√

{exp

(μw

h

)− 1

}(5.13)

式 (5.13)の荷重 P を,材料と工具の接触面積 bwで割ることにより,平均圧

力 p̄が得られる.

p̄=P

bw=

2kh

μw

{exp

(μw

h

)− 1

}=

2Y h√3μw

{exp

(μw

h

)− 1

}(5.14)

摩擦がない場合,すなわち,クーロンの摩擦係数 μ = 0の場合,平均圧力 p̄

は,式 (5.14)から求まらない.しかし,式 (5.12)より,座標 xの値にかかわら

ず,μ = 0の場合,圧力 p = 2k =(2/√

3)Y である.したがって,平均圧力 p̄

は,次式で与えられる.

p̄ = 2k =2√3Y (μ = 0) (5.15)

例題 5.2 幅が 100 [mm],高さが 20 [mm],奥行きが 600 [mm],引張降伏応力

が 400 [MPa]のブロックがある.摩擦係数を 0.1とした場合,荷重 P および平均

圧力 p̄を求めよ.

解 荷重は,式 (5.13)より,つぎのように求まる.

P =2Y bh√

{exp

(μw

h

)− 1

}

=2 × 400 [MPa]×600 [mm]×20 [mm]√

3 × 0.1×{

exp

(0.1×100 [mm]

20 [mm]

)−1

}

168

索 引

英字先頭

n 乗硬化塑性体 11

n 値 11

あ 行

圧縮試験 2

一様伸び 2

応力の不変量 34

応力ベクトル 15

押出し 115

押出し圧力 122

押出し荷重 123

か 行

加工硬化 4

加工硬化係数 63

加工硬化指数 11

完全塑性体 64

極限曲げモーメント 80

局部伸び 2

くびれ 2

くびれ発生条件 13

クーロン摩擦 71

クーロン摩擦係数 71

剛完全塑性体 10

公称応力 2

公称応力 –公称ひずみ線図 4

公称ひずみ 2

構成式 54

剛塑性有限要素法 152

降伏応力 4

降伏曲線 52

降伏条件 44

降伏点 4

コーシー応力 17

固着摩擦 72

さ 行

最小主応力 27

最大主応力 27

最大せん断応力 24, 31

最大せん断応力説 45

軸対称 41, 69

絞り加工 85

主応力 24

主応力方向 24

主せん断応力 24

主せん断応力方向 24

しわ抑え板 85

しわ抑え力 90

真応力 5

真応力 –真ひずみ線図 5

真ひずみ 5

垂直応力 16

垂直ひずみ 37

スプリングバック 82

接線係数 144

節 点 126

節点変位 127

節点力 127

線形硬化剛塑性体 10

線形硬化弾塑性体 11

全体剛性方程式 127

全体剛性マトリックス 128

せん断応力 16

せん断弾性係数 55

せん断ひずみ 38

せん断ひずみエネルギー説 47

せん断摩擦 72

せん断摩擦係数 72

相当応力 50

相当応力増分 64

相当塑性ひずみ 60

相当塑性ひずみ増分 59

索 引 169

塑 性 1

塑性曲線 61

塑性係数 10

塑性仕事増分 59

塑性接線係数 63

塑性ひずみ 4

塑性変形 1

た 行

対数ひずみ 5

ダイス半角 115

体積一定則 2

耐 力 4

縦弾性係数 4, 55

弾完全塑性体 10

単軸応力 44

単純せん断 44

弾 性 1

弾性回復 82

弾性ひずみ 4

弾性変形 1

弾塑性有限要素法 152

断面減少率 121

中間主応力 27

中立面 75

等方性 45

トラス 128

トレスカの降伏条件 45

な 行

流れ理論 56

は 行

破断応力 4

パンチ荷重 95

引抜き 115

引抜き応力 119

引抜き荷重 120

ひずみ増分 56

ひずみ増分理論 56

引張試験 2

引張強さ 4

フックの法則 4, 55

不変量 33

プラントル –ロイスの構成式 58

平均垂直応力 32

平面応力 21, 40, 68

平面ひずみ 40, 66

変形能 1

偏差応力成分 32

偏差応力の不変量 36

ポアソン比 55

ま 行

曲げモーメント 76

摩擦せん断応力 71

摩擦抵抗 71

ミーゼスの降伏条件 47

未定乗数 57

モールの応力円 23

や 行

ヤング率 4, 55

有限要素法 126

有効応力 50

要 素 126

要素剛性方程式 127

要素剛性マトリックス 127

横弾性係数 55

ら 行

レビー –ミーゼスの構成式 58

ロイスの構成式 57

社団法人 日本塑性加工学会(The Japan Society for Technology of Plasticity)〒 105–0012 東京都港区芝大門 1–3–11 Y・S・K ビル 4F

電話 03–3435–8301 / FAX 03–5733–3730

執筆者略歴(執筆順)神 雅彦(じん・まさひこ)1986年 宇都宮大学工学部精密工学科卒業2002年 工学博士(日本工業大学)2005年 日本工業大学工学部機械工学科准教授

現在に至る

湯川 伸樹(ゆかわ・のぶき)1982年 名古屋大学工学部鉄鋼工学科卒業1987年 工学博士(名古屋大学)2008年 名古屋大学大学院工学研究科附属材料

バックキャストテクノロジー研究センター准教授現在に至る

早川 邦夫(はやかわ・くにお)1991年 名古屋大学工学部機械および機械工学

第二学科卒業1996年 工学博士(名古屋大学)2004年 静岡大学工学部機械工学科准教授

現在に至る

桑原 利彦(くわばら・としひこ)1982年 東京農工大学工学部生産機械工学科卒業1987年 工学博士(東京工業大学)2004年 東京農工大学大学院共生科学技術研究

院先端機械システム部門教授現在に至る

小森 和武(こもり・かずたけ)1981年 東京工業大学工学部機械工学科卒業1990年 工学博士(東京工業大学)2009年 大同大学工学部機械工学科准教授

現在に至る

岡田 達夫(おかだ・たつお)1986年 広島大学工学部第一類(機械系)卒業1991年 工学博士(大阪大学)2002年 理化学研究所研究員

現在に至る

例題で学ぶはじめての塑性力学 C© 社団法人 日本塑性加工学会 2009

2009 年 5 月 14 日 第 1 版第 1 刷発行 【本書の無断転載を禁ず】

著 者 社団法人 日本塑性加工学会 編発 行 者 森北博巳発 行 所 森北出版株式会社

東京都千代田区富士見 1–4–11(〒102–0071)電話 03–3265–8341/ FAX 03–3264–8709

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印刷/エーヴィス・製本/協栄製本組版/ウルス

Printed in Japan/ISBN978–4–627–66721–1