ベラルーシの歴史と文化 - rri.kyoto-u.ac.jp · かっていたのか、というとそうではない。日本人の間でベラルーシという国が、あまり知られていな
「食料・農業と米国の戦略」...TPPのところに話を進めたいと思います。これは、TPPで、トラ...
Transcript of 「食料・農業と米国の戦略」...TPPのところに話を進めたいと思います。これは、TPPで、トラ...
《第二部 : 個別報告》
司会:それでは、ただいまより連続的に第二部のご講演をいただきます。米、韓、日の順番でご報告
をいただきます。アメリカにつきましては本学兼任講師、元客員教授の山田先生から、韓国について
は、国際日本学部の金先生から、最後は北海道につきましては、北海道大学の東山先生からお願いし
ます。
それでは山田先生お願いいたします。
「食料・農業と米国の戦略」
山 田 優(明治大学農学部兼任講師)
食糧・農業と米国の戦略
食料・農業と米国の戦略!山田優 農業ジャーナリスト・兼任講師!
2016/11/12
アメリカを再
び偉大な国に!
Gage Skidmore!Gage Skidmore
トランプ氏の「公約」!
グローバリズムを激しく批判!
TPPからの脱退!
繰り返し続けたスローガン!
再び米国を偉大に!メキシコに壁を!厳密な移民政策を唱える!
ご紹介ありがとうございます。長い間、農業ジャーナリストとし
て活動してきましたが、6年前からご縁があって、明治大学でも教
えています。ジャーナリストとしての仕事の後半部分は海外で、特
にアメリカについて取材をする機会が多かったので、今日はこの後
行われるパネルディスカッションで1つの素材を提供してみたいと
思っています。
それと併せて、トランプ新大統領の下で、アメリカの農業政策やアメリカの通商政策がどういうふ
うに変わるのか。現時点では非常に不透明なところがあるのですけれども、それについても話してみ
たいと思います。
非常にびっくりしました。私も、新聞記事やいろいろな講演でヒラリー・クリントンさんが当選を
することを念頭に置いて話してきたわけです。それが覆ってしまうわけですから、今日もあまり断定
的なことを言わないようにしようと思っています。
アメリカを再び偉大な国に
食料・農業と米国の戦略!山田優 農業ジャーナリスト・兼任講師!
2016/11/12
アメリカを再
び偉大な国に!
Gage Skidmore!Gage Skidmore
トランプ氏の「公約」!
グローバリズムを激しく批判!
TPPからの脱退!
繰り返し続けたスローガン!
再び米国を偉大に!メキシコに壁を!厳密な移民政策を唱える!
選挙の結果、トランプさんが勝ったということで、非常にショッ
クは大きいのですけれども、よくよく票を見ると、実は圧勝ではな
いのです。投票総数でいくと、どうもヒラリーさんのほうが多い。
それはアメリカの独特の選挙制度の中で、トランプさんが勝利をす
るわけです。
この先トランプ政権が発足して4年間、少なくとも大統領として
第55巻第2号 2017年3月
-200-
の仕事をするうえで、圧勝していないということから、彼の政治的な基盤はそれほど強くないという
ことで、議会や産業界との妥協が必要になってくるだろうと思います。
ここ1、2日を見ていると、トランプさんは、自分の閣僚にウォールストリートのビッグネームを
出すなり、従来自分が強く批判してきたエスタブリッシュメントの人たちともある程度擦り寄るよう
に動いている気がします。彼の公約との矛盾は当然出てきます。彼は、白人の労働者層を中心に、彼
らの不満を吸い上げるかたちで大統領選挙を勝ち抜いたわけです。そういった層の支持を受けていな
がら、結果的にはウォールストリートや、大企業寄りの政治をするということは、どこかの時点で破
綻、あるいは矛盾が出てくると私は思っています。
新聞をご覧のとおり、世界中が驚いたわけです。一番驚いたのは、当然のことながらアメリカの国
民です。
TPPをめぐるトランプ氏の発言
食料・農業と米国の戦略!山田優 農業ジャーナリスト・兼任講師!
2016/11/12
アメリカを再
び偉大な国に!
Gage Skidmore!Gage Skidmore
トランプ氏の「公約」!
グローバリズムを激しく批判!
TPPからの脱退!
繰り返し続けたスローガン!
再び米国を偉大に!メキシコに壁を!厳密な移民政策を唱える!
TPPのところに話を進めたいと思います。これは、TPPで、トラ
ンプさんがどういう話をされていたのかをまとめたものです。
「TPPは米国の製造業を壊滅するだけではなく、米国を外国政
府の支配下に置く」「悪い貿易協定には決して署名しない」と、オ
ハイオ州で7月に話をされています。10月にはペンシルベニアで、
TPPの枠組みからの離脱を就任直後に表明するということまで、踏
み込んで言っているわけです。そのほかにも、「TPPは最もひどい合意の1つ」「TPPは、日本に為
替操作をやめさせることもできない」と強くおっしゃっています。
トランプ氏の「公約」
食料・農業と米国の戦略!山田優 農業ジャーナリスト・兼任講師!
2016/11/12
アメリカを再
び偉大な国に!
Gage Skidmore!Gage Skidmore
トランプ氏の「公約」!
グローバリズムを激しく批判!
TPPからの脱退!
繰り返し続けたスローガン!
再び米国を偉大に!メキシコに壁を!厳密な移民政策を唱える!
この中で特に私が注目しているのは、オハイオとペンシルベニア
です。ここは、今回の選挙でも激戦州ということで関心が集まっ
て、結果的にはトランプさんがそこの州の票を取るわけですけれど
も、ここは白人労働者が職を失ってきたところです。トランプ氏の
公約は、グローバリゼーションの中で白人の労働者が職をどんどん
失ってきた。国内でもメキシコや中南米から来る移民労働者に職が
奪われてきている。そういった人たちの声を受けて、再びアメリカを偉大な国にするんだ。職を取り
戻すんだというのが、たぶんトランプさんのロジックだと思います。
白人労働者が今回の選挙で見せた不満は、非常に強いものがありました。
2009年に、私はカメラマンと2人で、アメリカ各地を取材して回りました。デトロイトのGM本社
の写真を見てお分かりのとおり、非常に立派な本社のわずか数百メートル離れた所にスラム街が広
がっています。この写真を撮るにあたって、カメラマンに車の外に出て写真を撮ってくれと言った
明治大学社会科学研究所紀要
-201-
ら、出るのが怖いからと車の窓から手を出して写真を撮りました。わずか数百メートル離れるだけで
社会が大きく分断されているわけです。
GM、あるいは大手の金融機関は、困難に直面すると、政府の公的な支援があってまたよみがえる
わけですけれども、一般の労働者たちは、中流からどんどん転がり落ちていく現実があるわけです。
4つのポイント
4つのポイント!
米国はホントに!世界最強の農業国?!
農業団体に足並みの乱れも!
ほしいのは黄金律! グローバル化への疑問!
1! 2!
3! 4! 1. 米国農業は最強か?!
Praesent Luptatum!
世界最強だったのは間違いない!
潤沢な農政による支援!
!"#$%&'( )**+ )
TPPをめぐって、トランプさんの政権がどのようなかたちで進
めていくのかを話す前に、4つのポイントから、今のアメリカの農
業、あるいはアメリカのTPP戦略を考えるうえでの素材に触れてい
きたいと思います。
①アメリカは本当に世界最強の農業国なのか。
②アメリカの農業団体はどういう立場なのか。
③アメリカがTPPの中で何を欲しているのか。
④グローバル化に対するアメリカ国内での疑問。この4つのポイントで話を進めたいと思います。
米国農業は最強か?
4つのポイント!
米国はホントに!世界最強の農業国?!
農業団体に足並みの乱れも!
ほしいのは黄金律! グローバル化への疑問!
1! 2!
3! 4! 1. 米国農業は最強か?!
Praesent Luptatum!
世界最強だったのは間違いない!
潤沢な農政による支援!
!"#$%&'( )**+ )
アメリカ農業は最強でしょうか。世界最強は間違いないと思いま
す。私たちのイメージにあるのは、この写真にあるように、広大な
農地に最新鋭の農業機械が走り回って、最高のテクノロジーを投入
することによって安い農産物をつくって世界に供給する。
世界最強だったのは間違いない
4つのポイント!
米国はホントに!世界最強の農業国?!
農業団体に足並みの乱れも!
ほしいのは黄金律! グローバル化への疑問!
1! 2!
3! 4! 1. 米国農業は最強か?!
Praesent Luptatum!
世界最強だったのは間違いない!
潤沢な農政による支援!
!"#$%&'( )**+ )
インフラストラクチャーがアメリカの農業を支え、さらにアメリ
カ政府が補助金というかたちで支援する。世界最強であることは間
違いないと思います。
米国の穀物輸出エリアとトウモロコシ産地
4つのポイント!
米国はホントに!世界最強の農業国?!
農業団体に足並みの乱れも!
ほしいのは黄金律! グローバル化への疑問!
1! 2!
3! 4! 1. 米国農業は最強か?!
Praesent Luptatum!
世界最強だったのは間違いない!
潤沢な農政による支援!
!"#$%&'( )**+ )
アメリカ農業が最強だというときに、一番大切なのは、インフラ
ストラクチャーが整っていることを挙げたいと思います。農業地帯
は緑色で描いた部分で内陸部にあります。ここから海外に輸出する
には、当然のことながら、川を下っていったり、トラックや鉄道で海辺
に持っていったりするわけです。
この中で、例えばミシシッピ川を下った右下に「ガルフ輸出」と
第55巻第2号 2017年3月
-202-
ありますが、ニューオリンズから日本を含めた海外に運ぶわけです。その運ぶシステムがもう何十年
も前から整備されている。それを担当しているのはアメリカ陸軍工兵隊で、そこをきちんと整備し、
物流を支えるわけです。
そして、はしけです。はしけというと、隅田川を走っているようなものを思い浮かべるかもしれま
せんが、60mぐらいの長さで、幅が10mで、1隻に1000tとか2000tの穀物、石炭を積めるのです。そ
れを10隻とか20隻束ねて川を双方向に移動するのです。そういう物流インフラが、アメリカの農業の
信頼性や低コストを支えていたわけです。それで、アメリカがずっと強い競争力を持っていたのです。
農業生産額の推移
1000Int.$
India
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)UnitedStatesofAmerica
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)China
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)EuropeanUnion
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)
1970 1980 1990 2000 2010
0
200M
400M
600M
800M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業生産額の推移!
1000US$
Brazil
ExportValue
Agricult.Products,Total
China
ExportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ExportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ExportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸出額の推移!
1000US$
Brazil
ImportValue
Agricult.Products,Total
China
ImportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ImportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ImportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸入額の推移! 米国の農業貿易の推移!
4つのポイント!
米国はホントに!世界最強の農業国?!
農業団体に足並みの乱れも!
ほしいのは黄金律! グローバル化への疑問!
1! 2!
3! 4! 1. 米国農業は最強か?!
Praesent Luptatum!
世界最強だったのは間違いない!
潤沢な農政による支援!
!"#$%&'( )**+ )
幾つかグラフを見てみましょう。
世界の農業生産額を国別に見ると、1960年代、1970年代のアメリ
カの農業生産額は、圧倒的に大きかったわけです。ところが、1980
年代半ば以降、中国に抜かれます。最近ではインドにも抜かれてし
まいます。
アメリカは圧倒的な農業生産大国だったというイメージがあるの
ですが、それは1980年代ごろまでで、現在は幾つかある農業生産大国の中の1つです。実際の額で見
ても、中国と比べれば極めて小さいのです。
農業輸出額の推移
1000Int.$
India
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)UnitedStatesofAmerica
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)China
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)EuropeanUnion
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)
1970 1980 1990 2000 2010
0
200M
400M
600M
800M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業生産額の推移!
1000US$
Brazil
ExportValue
Agricult.Products,Total
China
ExportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ExportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ExportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸出額の推移!
1000US$
Brazil
ImportValue
Agricult.Products,Total
China
ImportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ImportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ImportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸入額の推移! 米国の農業貿易の推移!
農産物の輸出で見ると、比較的よくとどまっています。アメリカ
は農業大国、強国と言えるかもしれません。1980年代、あるいは
1990年代は圧倒的に、アメリカは農産物輸出の世界ではナンバー1
だったわけですが、20世紀に入るとだんだん話が変わってきます。
アメリカも輸出を増やします。それ以上に、ブラジルはものすごい
勢いで迫ってくるわけです。中国もそうですし、インドも農産物の
輸出を増やしてくるわけです。アメリカの農業輸出は強いけれども、かつてのような独占的な強みで
はなくなってきています。
農業輸入額の推移
1000Int.$
India
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)UnitedStatesofAmerica
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)China
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)EuropeanUnion
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)
1970 1980 1990 2000 2010
0
200M
400M
600M
800M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業生産額の推移!
1000US$
Brazil
ExportValue
Agricult.Products,Total
China
ExportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ExportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ExportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸出額の推移!
1000US$
Brazil
ImportValue
Agricult.Products,Total
China
ImportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ImportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ImportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸入額の推移! 米国の農業貿易の推移!
1000Int.$
India
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)UnitedStatesofAmerica
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)China
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)EuropeanUnion
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)
1970 1980 1990 2000 2010
0
200M
400M
600M
800M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業生産額の推移!
1000US$
Brazil
ExportValue
Agricult.Products,Total
China
ExportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ExportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ExportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸出額の推移!
1000US$
Brazil
ImportValue
Agricult.Products,Total
China
ImportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ImportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ImportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸入額の推移! 米国の農業貿易の推移!
一方で、アメリカは輸入も増やしています。中国が農産物輸入大
国になっているという話は、皆さんもよく聞くことがあると思いま
す。確かにこのグラフを見れば、中国がものすごい勢いで農産物の
輸入を増やしています。しかし、アメリカも農産物の輸入を増やし
ています。
明治大学社会科学研究所紀要
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米国の農業貿易の推移
1000Int.$
India
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)UnitedStatesofAmerica
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)China
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)EuropeanUnion
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)
1970 1980 1990 2000 2010
0
200M
400M
600M
800M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業生産額の推移!
1000US$
Brazil
ExportValue
Agricult.Products,Total
China
ExportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ExportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ExportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸出額の推移!
1000US$
Brazil
ImportValue
Agricult.Products,Total
China
ImportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ImportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ImportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸入額の推移! 米国の農業貿易の推移!
アメリカの農産物貿易は、21世紀に入ると輸出入がほぼ拮抗する
ようになって、ここ最近は、特にドル高の中で、逆転する可能性を
言われるようになっています。
小麦輸出
米国農業の!
競争力が低下!
新興国の追い上げ
!
•! 広大な農地=コストは新興国の方が安い!
•! 最新農機=メーカーは新興国を最重視!
•! インフラ=急ピッチで港湾、道路を整備!
2. 農業団体に足並みの乱れ!
Praesent Luptatum!
5/16付日本農業新聞1面!
8月に主流派と協調!
奇抜な発言で農業団体は不安視していたが、とりあえず支持の方向へ!
伝統的な農業政策支持!
オバマ政権と同様の農業政策を志向。しかし、農家の支持は望み薄?!
農家は共和党支持が大半!
2012年の大統領選挙!
伝統的に穀倉地帯は共和党が強い。民主党は東西が強く、共和党をサンドイッチ!
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2012/president/obama_vs_romney_Þnal_results_map.html!
1000Int.$
India
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)UnitedStatesofAmerica
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)China
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)EuropeanUnion
GrossProductionValue(constant2004-20061000I$)
Agriculture(PIN)
1970 1980 1990 2000 2010
0
200M
400M
600M
800M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業生産額の推移!
1000US$
Brazil
ExportValue
Agricult.Products,Total
China
ExportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ExportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ExportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸出額の推移!
1000US$
Brazil
ImportValue
Agricult.Products,Total
China
ImportValue
Agricult.Products,Total
UnitedStatesofAmerica
ImportValue
Agricult.Products,TotalIndia
ImportValue
Agricult.Products,Total
1980 1990 2000 2010
0
50M
100M
150M
200M
Source:FAOSTAT(Oct30,2016)
農業輸入額の推移! 米国の農業貿易の推移!
アメリカが農業大国と言えなくなった1つの例を示してみたいと
思います。アメリカの小麦輸出量は、3000万トンぐらいで上に行っ
たり下に行ったりしているわけですけれども、来年ロシアはアメリ
カを抜いて世界最大の小麦輸出国になる見通しです。かつてはゼロ
でした。この会場にいる世代は、私と同じように1970年代初めの食
糧危機をご存じの方もいらっしゃると思うのですけれども、あのと
きに引き金を引いたのは、旧ソ連がアメリカから小麦や大豆を輸入した。これが世界の食糧危機を引
き起こしたのですけれども、現在では逆に旧ソ連のロシアがアメリカを追い越す小麦の輸出国になり
ます。そこまで世の中は変わってきています。
米国農業の競争力が低下
米国農業の!
競争力が低下!
新興国の追い上げ
!
•! 広大な農地=コストは新興国の方が安い!
•! 最新農機=メーカーは新興国を最重視!
•! インフラ=急ピッチで港湾、道路を整備!
2. 農業団体に足並みの乱れ!
Praesent Luptatum!
5/16付日本農業新聞1面!
8月に主流派と協調!
奇抜な発言で農業団体は不安視していたが、とりあえず支持の方向へ!
伝統的な農業政策支持!
オバマ政権と同様の農業政策を志向。しかし、農家の支持は望み薄?!
農家は共和党支持が大半!
2012年の大統領選挙!
伝統的に穀倉地帯は共和党が強い。民主党は東西が強く、共和党をサンドイッチ!
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2012/president/obama_vs_romney_Þnal_results_map.html!
かつてアメリカの農業の強みだったとされる広大な農地、最新農
機、インフラの全てが、新興国に入ってきているということです。
そういうふうに世の中が変わってきています。アメリカは農業強国
ではあるけれど、唯一のとはもう既に言えなくなってきていると思
います。
農業団体に足並みの乱れ
米国農業の!
競争力が低下!
新興国の追い上げ
!
•! 広大な農地=コストは新興国の方が安い!
•! 最新農機=メーカーは新興国を最重視!
•! インフラ=急ピッチで港湾、道路を整備!
2. 農業団体に足並みの乱れ!
Praesent Luptatum!
5/16付日本農業新聞1面!
8月に主流派と協調!
奇抜な発言で農業団体は不安視していたが、とりあえず支持の方向へ!
伝統的な農業政策支持!
オバマ政権と同様の農業政策を志向。しかし、農家の支持は望み薄?!
農家は共和党支持が大半!
2012年の大統領選挙!
伝統的に穀倉地帯は共和党が強い。民主党は東西が強く、共和党をサンドイッチ!
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2012/president/obama_vs_romney_Þnal_results_map.html!
アメリカの農業団体が、TPPにどういう態度なのかを見てみま
しょう。ことしの4月に『日本農業新聞』で書いた記事です。アメ
リカの農業団体全てにインタビューしました。基本的には賛成が多
いのですけれども、反対や保留のところもあります。この内容は後
で説明してみたいと思います。
第55巻第2号 2017年3月
-204-
農家は共和党支持が大半
米国農業の!
競争力が低下!
新興国の追い上げ
!
•! 広大な農地=コストは新興国の方が安い!
•! 最新農機=メーカーは新興国を最重視!
•! インフラ=急ピッチで港湾、道路を整備!
2. 農業団体に足並みの乱れ!
Praesent Luptatum!
5/16付日本農業新聞1面!
8月に主流派と協調!
奇抜な発言で農業団体は不安視していたが、とりあえず支持の方向へ!
伝統的な農業政策支持!
オバマ政権と同様の農業政策を志向。しかし、農家の支持は望み薄?!
農家は共和党支持が大半!
2012年の大統領選挙!
伝統的に穀倉地帯は共和党が強い。民主党は東西が強く、共和党をサンドイッチ!
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2012/president/obama_vs_romney_Þnal_results_map.html!
アメリカの農家はどういう政治的なスタンスなのかと考えたとき
に、この左の地図は前回の大統領選挙のものですが、今回のものと
それほど大きく変わりません。ざっくり言うと、西海岸と東北部が
民主党で、そのほかが共和党です。こういう地域の構造になってい
るわけで、アメリカの農家は、基本的に共和党の支持者です。
民主党 vs 共和党(2015年)
vs 2015
,-./001'23#$45#6789:;0.:5(<97=:>=.2:>'77(:$70($3'?8,4;5
3.黄金律こそが一番大事!
絶対に負けない分野を広げておくTPP!
“This TPP sets the gold standard in trade agreements to open free, transparent, fair trade, the kind of environment that has the rule of law and a level playing field” -Hillary Clinton (2013 in Australia)!
クリントンはかつて「TPPが法の支配と同じ競争条件に基づく透明で公平な貿易のためのゴールド・スタンダード(黄金律)となる」と主張していた!
米国の知財輸
出額は13兆円!
TPPは協定文30の中で貿易に関わるのが5つ。残りはルールに関するもの。自由な貿易をめざす協定と言うよりも、企業に都合の良いルールで管理された貿易をめざすもの!
米国農業の!
競争力が低下!
新興国の追い上げ
!
•! 広大な農地=コストは新興国の方が安い!
•! 最新農機=メーカーは新興国を最重視!
•! インフラ=急ピッチで港湾、道路を整備!
2. 農業団体に足並みの乱れ!
Praesent Luptatum!
5/16付日本農業新聞1面!
8月に主流派と協調!
奇抜な発言で農業団体は不安視していたが、とりあえず支持の方向へ!
伝統的な農業政策支持!
オバマ政権と同様の農業政策を志向。しかし、農家の支持は望み薄?!
農家は共和党支持が大半!
2012年の大統領選挙!
伝統的に穀倉地帯は共和党が強い。民主党は東西が強く、共和党をサンドイッチ!
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2012/president/obama_vs_romney_Þnal_results_map.html!
それを分かりやすく示したものが、この円グラフです。これは
面白い資料で、僕も探していてあれ?と思いました。2015年に選挙
で献金した人の職業別のデータを基に円グラフに加工しました。
例えば、飛行機の前にいるパイロットは共和党支持で、後ろで働
いているスチュワーデスなどの航空乗務員は民主党支持です。一つ
一つは説明しませんが、社会の勝ち組、お金を持っている側は共和
党支持で、お金をあまり持っていなさそうなところが民主党支持ということが分かります。
農家の支持割合は、基本的には企業経営者と同じです。つまり、アメリカの農家は、もちろん形態
としては家族農業ですけれども、気分としては企業経営者であり、そういった視点から共和党支持が
多い。さらに牧畜、ウシやブタを飼育している人に限れば、ほとんどが共和党を支持していると思い
ます。
トランプに立ちふさがるのは議会だという部分は、割愛します。
TPPがアメリカ経済にどういう影響を与えるのでしょうか。先ほど作山さんが報告されたので、簡
単にします。アメリカのGDPに対する影響は極めて限定的です。ただ、農産品の輸出は2.6%増えるだ
ろうということで、米国の農業はTPPによって恩恵を受けると言われています。その半分ぐらいが日
本に行くのではないかという試算が、アメリカ農務省から出ています。
これは時点が違うので一概には言えないのですが、その前の年にアメリカ農務省が出した内容で
は、アメリカの農産物輸出が増える半分は日本が買うという試算もあります。ですから、アメリカの
農家にとってみれば、TPPは決して悪い話ではないわけです。
丸めて言えば、農業団体は前向きですが、一つ一つを見ると微妙な違いがあります。例えば、AFB
(American Farm Bureau Federation:米国農業連合会)というアメリカ最大の農業団体は、前向き
です。全米養豚業の団体も前向きです。全米牧畜牛肉協会も強硬です。先ほど作山さんが説明したよ
うに、今、オーストラリアに対してアメリカの牛肉輸出業界は大変不利な競争条件でやっているわけ
です。それを何とか改善してほしいと、彼らは思っているわけです。
一方で、家族農業に重きを置くファーマーズユニオン、全国農民連合は、反対の立場です。ここは
伝統的に民主党との関係が強いので、そういったこともあって反対です。コメの生産者団体は反対し
明治大学社会科学研究所紀要
-205-
ています。これはちょっと説明します。
アメリカのコメの農業団体はTPPに反対しているのです。違和感を持つ方がいるかと思いますが、
簡単に言うと、アメリカのコメ生産は、大きく2つに分かれています。日本でアメリカのコメという
と、西海岸のカリフォルニア米という印象があると思うのですが、全体の2割に過ぎません。8割は
ミシシッピ沿いの南部でコメの生産が行われています。
アメリカ国内でも、カリフォルニアとアーカンソーとの間で利害の対立があり、これがTPPの中で
非常に明らかになってきています。
アメリカにとって、最大のコメの輸出先はかつては日本だったのだけれど、いまやメキシコなので
す。メキシコには、日本の2倍以上のおコメを輸出しています。1994年に発効したNAFTA(北米自
由貿易協定)で、アメリカから輸出する際に関税がどんどんなくなって、今は0になりました。メキ
シコは最高で20%の関税をコメに掛けているのですが、アメリカにはそれがなく、物理的にも近いこ
ともあって、アメリカから大量のおコメがメキシコに入っているわけです。
ところが、TPPが発効すると、メキシコはコメの関税を直ちに0にします。アメリカ以上に競争
力の強いベトナムからのコメが、当然のことながらメキシコに入ってくるわけです。南部のコメ生産
者にとってみれば面白くないわけです。日本の市場はみんなカリフォルニアが取ってしまいましたの
で、アメリカ南部から日本にコメは入って来ません。つまりTPPによって彼らが得られるものは、日
本市場の開放・拡大ではなくて、メキシコ市場を失ってしまうことです。コメの業界の中で圧倒的に
南部のほうが政治力が強いので、当然のことながら、アメリカのコメ業界全体としては、TPPに反対
しています。そういった態度の違いみたいなものがあるわけです。
絶対に負けない分野を広げておくTPP
vs 2015
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3.黄金律こそが一番大事!
絶対に負けない分野を広げておくTPP!
“This TPP sets the gold standard in trade agreements to open free, transparent, fair trade, the kind of environment that has the rule of law and a level playing field” -Hillary Clinton (2013 in Australia)!
クリントンはかつて「TPPが法の支配と同じ競争条件に基づく透明で公平な貿易のためのゴールド・スタンダード(黄金律)となる」と主張していた!
米国の知財輸
出額は13兆円!
TPPは協定文30の中で貿易に関わるのが5つ。残りはルールに関するもの。自由な貿易をめざす協定と言うよりも、企業に都合の良いルールで管理された貿易をめざすもの!
3つ目のポイントとして、「ほしいのは黄金律」という話をしま
す。今回のTPPの中でアメリカが何を狙いにしているのか。作山さ
んが幾つか説明していたのですが、僕は、アメリカ主導でルールを
つくって、それを広げていくことが、アメリカがTPPを進めようと
している真の狙いではないかと考えています。
すべてを律する標準(黄金律)を打ち立てよ
vs 2015
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3.黄金律こそが一番大事!
絶対に負けない分野を広げておくTPP!
“This TPP sets the gold standard in trade agreements to open free, transparent, fair trade, the kind of environment that has the rule of law and a level playing field” -Hillary Clinton (2013 in Australia)!
クリントンはかつて「TPPが法の支配と同じ競争条件に基づく透明で公平な貿易のためのゴールド・スタンダード(黄金律)となる」と主張していた!
米国の知財輸
出額は13兆円!
TPPは協定文30の中で貿易に関わるのが5つ。残りはルールに関するもの。自由な貿易をめざす協定と言うよりも、企業に都合の良いルールで管理された貿易をめざすもの!
vs 2015
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3.黄金律こそが一番大事!
絶対に負けない分野を広げておくTPP!
“This TPP sets the gold standard in trade agreements to open free, transparent, fair trade, the kind of environment that has the rule of law and a level playing field” -Hillary Clinton (2013 in Australia)!
クリントンはかつて「TPPが法の支配と同じ競争条件に基づく透明で公平な貿易のためのゴールド・スタンダード(黄金律)となる」と主張していた!
米国の知財輸
出額は13兆円!
TPPは協定文30の中で貿易に関わるのが5つ。残りはルールに関するもの。自由な貿易をめざす協定と言うよりも、企業に都合の良いルールで管理された貿易をめざすもの!
クリントンさんは、国務長官のときに、「TPPが法の支配と同じ
競争条件に基づく、透明で公平な貿易のためのゴールドスタンダー
ド、黄金律となる」と主張していました。
第55巻第2号 2017年3月
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米国の知財輸出額は13兆円
vs 2015
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3.黄金律こそが一番大事!
絶対に負けない分野を広げておくTPP!
“This TPP sets the gold standard in trade agreements to open free, transparent, fair trade, the kind of environment that has the rule of law and a level playing field” -Hillary Clinton (2013 in Australia)!
クリントンはかつて「TPPが法の支配と同じ競争条件に基づく透明で公平な貿易のためのゴールド・スタンダード(黄金律)となる」と主張していた!
米国の知財輸
出額は13兆円!
TPPは協定文30の中で貿易に関わるのが5つ。残りはルールに関するもの。自由な貿易をめざす協定と言うよりも、企業に都合の良いルールで管理された貿易をめざすもの!
TPPの協定文は、貿易に関わるものよりも、むしろルールに関わ
るものが多いのです。これは、こういうことなのかなと僕は理解し
ています。簡単な例でスマホを考えると、ご承知のとおりAppleと
AndroidのGoogleが市場を支配しているわけです。極言すれば、彼ら
にとってモノはどこでもいいわけです。自分たちのOSの下で機械が
つくられていれば、Samsungであろうと、ソニーであろうと、中国
のXiaomiであろうと、どこでも構わないわけです。
つまり、OSを抑えている限り、そのルールに基づいて広告、著作権、あるいは決済の手数料が入っ
てくればモノは重要ではありません。一番大切なのは、そこのルールを彼らが長い期間押さえておけ
ることです。ゴールドスタンダードとして押さえていることが大切なわけで、TPP協定の中でも、そ
ういったルールが中心になっているのではないでしょうか。
相手国の「非科学的な態度」が貿易の混乱をもたらすという論理
相手国の「非科学的な態度」が貿易の混乱をもたらすという論理!
BSEで輸出が激減! 過去の食品安全をめぐる対立の一例!
•! 家畜の成長ホルモンをめぐって、米国は日本や欧州とは異なる基準!
•! 日本が独自の規制をすることを強くけん制した!
成長ホルモン! BSE(牛海綿状脳症)! 遺伝子組み換え!2003年末にワシントン州でBSEが発生。その後、米国政府は重ねて日本側に規制の緩和を要求。輸入できる月齢をめぐり、政府間交渉が繰り返された!
•! 飼料用GMトウモロコシ品種が食用に混入(2000年)!
•! 遺伝子耐性のあるGM米が混入。日本政府は直ちに輸入停止。再び解禁後も検査!
•! 日本の義務表示!
BSE(牛海綿状脳症)
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相手国の「非科学的な態度」が貿易の混乱をもたらすという論理!
BSEで輸出が激減! 過去の食品安全をめぐる対立の一例!
•! 家畜の成長ホルモンをめぐって、米国は日本や欧州とは異なる基準!
•! 日本が独自の規制をすることを強くけん制した!
成長ホルモン! BSE(牛海綿状脳症)! 遺伝子組み換え!2003年末にワシントン州でBSEが発生。その後、米国政府は重ねて日本側に規制の緩和を要求。輸入できる月齢をめぐり、政府間交渉が繰り返された!
•! 飼料用GMトウモロコシ品種が食用に混入(2000年)!
•! 遺伝子耐性のあるGM米が混入。日本政府は直ちに輸入停止。再び解禁後も検査!
•! 日本の義務表示!
BSE(牛海綿状脳症)
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農業についても同じです。アメリカからの牛肉の輸出は、2003年
に下がっています。2003年12月にアメリカのワシントン州でBSE、
牛海綿状脳症、あるいは狂牛病といわれる病気が出ました。それに
よって、アメリカの牛肉をどこも買わなくなってしまったわけで
す。当時のアメリカ最大の輸出先は日本だったのですが、一夜にし
てゼロになるわけです。それが長い間続いて、少しずつ回復するわ
けですけれども、こういった状態は、アメリカの農業にとって非常
に大きな痛手となるわけです。
彼らは、「相手国の規制が悪い」「日本が不必要に規制するから
私たちの牛肉が売れないんだ」と考えて、TPPの中では、科学的な
根拠を示さなければ規制をするなという思想が貫かれています。ア
メリカとしては、そのための仕組みをTPPの中に盛り込みたかった
わけです。経済全体、あるいは農業の分野についても、アメリカに有利なルールを組み込んで、それ
を広げていくことが大きな狙いだったと思います。
明治大学社会科学研究所紀要
-207-
米国金融・産業界の巻き返しも
相手国の「非科学的な態度」が貿易の混乱をもたらすという論理!
BSEで輸出が激減! 過去の食品安全をめぐる対立の一例!
•! 家畜の成長ホルモンをめぐって、米国は日本や欧州とは異なる基準!
•! 日本が独自の規制をすることを強くけん制した!
成長ホルモン! BSE(牛海綿状脳症)! 遺伝子組み換え!2003年末にワシントン州でBSEが発生。その後、米国政府は重ねて日本側に規制の緩和を要求。輸入できる月齢をめぐり、政府間交渉が繰り返された!
•! 飼料用GMトウモロコシ品種が食用に混入(2000年)!
•! 遺伝子耐性のあるGM米が混入。日本政府は直ちに輸入停止。再び解禁後も検査!
•! 日本の義務表示!
BSE(牛海綿状脳症)
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相手国の「非科学的な態度」が貿易の混乱をもたらすという論理!
BSEで輸出が激減! 過去の食品安全をめぐる対立の一例!
•! 家畜の成長ホルモンをめぐって、米国は日本や欧州とは異なる基準!
•! 日本が独自の規制をすることを強くけん制した!
成長ホルモン! BSE(牛海綿状脳症)! 遺伝子組み換え!2003年末にワシントン州でBSEが発生。その後、米国政府は重ねて日本側に規制の緩和を要求。輸入できる月齢をめぐり、政府間交渉が繰り返された!
•! 飼料用GMトウモロコシ品種が食用に混入(2000年)!
•! 遺伝子耐性のあるGM米が混入。日本政府は直ちに輸入停止。再び解禁後も検査!
•! 日本の義務表示!
BSE(牛海綿状脳症)
•!%
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相手国の「非科学的な態度」が貿易の混乱をもたらすという論理!
BSEで輸出が激減! 過去の食品安全をめぐる対立の一例!
•! 家畜の成長ホルモンをめぐって、米国は日本や欧州とは異なる基準!
•! 日本が独自の規制をすることを強くけん制した!
成長ホルモン! BSE(牛海綿状脳症)! 遺伝子組み換え!2003年末にワシントン州でBSEが発生。その後、米国政府は重ねて日本側に規制の緩和を要求。輸入できる月齢をめぐり、政府間交渉が繰り返された!
•! 飼料用GMトウモロコシ品種が食用に混入(2000年)!
•! 遺伝子耐性のあるGM米が混入。日本政府は直ちに輸入停止。再び解禁後も検査!
•! 日本の義務表示!
BSE(牛海綿状脳症)
•!%
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これから先の話に触れます。トランプになって、しっちゃかめっ
ちゃかで破滅的になるのかというと、必ずしもそうではないでしょ
う。過去の例を見ると、リベラルで登場したジミー・カーター、ビ
ル・クリントン、バラク・オバマは、既存のエスタブリッシュメン
トとの間で妥協して、任期の途中で企業寄りの政策にどんどんかじ
を切っていきました。
カーターさんにしても、クリントンさんにしもて、オバマさんに
しても、たぶん非常にいい人です。いい人は周りに流されやすい。
トランプは、もしかしたらいい人ではないから、流されないのかも
しれないけれど、基本的にトランプの政治的基盤はそんなに強いも
のではないので、どこかの段階で行き詰まりは出てくると思います。
その時点で、政権内にいるエスタブリッシュメント、政権の幹
部、議会の幹部といった人たちが、アメリカの既存の政治・経済へかじを切ろうとする大きな力が働
いてくるだろうと考えています。具体的にどういうかたちで出るかは、まだ今の段階では分かりませ
んけれども、そうなるでしょう。
自由貿易への反発が広がる
4. 自由貿易への反発が広がる!
2011年ウォールストリートで! ,-./00@#62('5AB"9;#$8'"0C5'70D#'BE"9;#$)*FG8.3>,-./00@#62('5AB"9;#$8'"0C5'70D#'BE"9;#$)*FG8.3>
0.1% 2
さて、どうなるか?!
•! 12カ国の批准で発足!
•! 一定の条件で限られた国だけで発足!
•! アジアに広がる可能性も!
カ国の批准で発足
一定の条件で限られた国だけで発足
• アジアに広がる可能性も
• 12
最後に、自由貿易の反発が広がるということです。
今回の大統領選挙で、普通の国民と、エスタブリッシュメントと
呼ばれる中核的に国の進め方を担っている人たちの間の利害の対立
軸がはっきりしたと思います。トランプさん、民主党で最後までク
リントンを苦しめたバーニー・サンダースさんが支持された根っこ
には、国民の既存層に対する非常に強い反発のマグマがあったと思
います。
金融に関する規制を緩和して、自由に企業が活動することが、世の中を悪くしたという思いがあり
ました。これは、2011年に起こったウォールストリートの占拠活動を取材に行ったときに撮った写真
です。いろいろな人に話を聞くと、ごく普通の人たちが、従来の国の在り方に非常に強い不満を持っ
ているのが印象的でした。
第55巻第2号 2017年3月
-208-
トップ0.1%の人が米国の富の2割を持っている
4. 自由貿易への反発が広がる!
2011年ウォールストリートで! ,-./00@#62('5AB"9;#$8'"0C5'70D#'BE"9;#$)*FG8.3>,-./00@#62('5AB"9;#$8'"0C5'70D#'BE"9;#$)*FG8.3>
0.1% 2
さて、どうなるか?!
•! 12カ国の批准で発足!
•! 一定の条件で限られた国だけで発足!
•! アジアに広がる可能性も!
カ国の批准で発足
一定の条件で限られた国だけで発足
• アジアに広がる可能性も
• 12
アメリカの富をどの層が所有しているかを示すグラフがありま
す。これは、トップ0.1%の人が、どれぐらいのアメリカの富を握っ
ているのかを示したものです。
第二次世界大戦の前は、トップ0.1%の人が比較的多くの富を握っ
ていました。それが、戦争から戦争直後にかけて下がってきて、
1950年代、1960年代は安定して、彼らは10%ぐらいの富を持ってい
ました。それが少し下がってきて、民主党のカーター政権の時代になって規制緩和が始まり、レーガ
ノミクスと呼ばれるロナルド・レーガンさんの就任時期に花開いて、再びトップの人に急速にお金が
集まり始めます。その後の大統領は、民主党、共和党といろいろ入れ替わるのですが、基本的な方向
として、トップ0.1%の人が持つ富の割合は上がってきています。
トランプはもう一度アメリカを偉大な国にしようと言っていました。彼の頭の中、あるいはそれを
聞いている人の頭の中は、たぶん1950年代、1960年代の古きよき時代をイメージしたと思います。誰
もが中流階級であった時代への回帰を言っているわけです。しかし、現実の政策は、金持ちを優遇す
る、金持ちに富を集中していくことになるわけですから、どこかの時点で摩擦が起きるでしょう。
さて、どうなるか? 4. 自由貿易への反発が広がる!
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0.1% 2
さて、どうなるか?!
•! 12カ国の批准で発足!
•! 一定の条件で限られた国だけで発足!
•! アジアに広がる可能性も!
カ国の批准で発足
一定の条件で限られた国だけで発足
• アジアに広がる可能性も
• 12
4. 自由貿易への反発が広がる!
2011年ウォールストリートで! ,-./00@#62('5AB"9;#$8'"0C5'70D#'BE"9;#$)*FG8.3>,-./00@#62('5AB"9;#$8'"0C5'70D#'BE"9;#$)*FG8.3>
0.1% 2
さて、どうなるか?!
•! 12カ国の批准で発足!
•! 一定の条件で限られた国だけで発足!
•! アジアに広がる可能性も!
カ国の批准で発足
一定の条件で限られた国だけで発足
• アジアに広がる可能性も
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先週末に資料をつくったときには、TPPが通ってどうなるかを考
えていました。12カ国の批准でTPPが発足して、中国、フィリピ
ン、韓国なども関心を持っているから広がる可能性がありますよと
言おうと思ったけれども、結局のところ、混迷・漂流・崩壊・雌伏
になってしまいました。
では、この先どうなるのでしょう。ここに来た人は、当然それを
知りたくて来たのだと思うのですが、分かったような顔で何かを言うと外れて恥ずかしい思いをする
ので、きょうは「混迷・漂流・崩壊・雌伏、どうなるのでしょうかね」という話で締めくくりたいと
思います。
この先はいろいろなオプションが考えられます。日米のFTAもそうです。アメリカを外してTPPが
動くと言っている人もいます。新たに中国を入れたRCEPをやるとか、さまざまなオプションがあり
ますが、現時点で言えるのは、「混迷・漂流・崩壊・雌伏」です。いろいろなキーワードがあります
けれども、そういったことしか言えません。
締まらない話で申し訳ないのですけれども、私の報告を終わらせていただきます。ありがとうござ
いました。
明治大学社会科学研究所紀要
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