地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf ·...

8
地域緩和ケアサポートセンターだより 第7号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日 発行所 財団法人三友堂病院 山形県米沢市中央6丁目1-219 TEL 0238-24-3700 FAX 0238-24-3709 2011年11月1日 (平成23年)火曜日 第7号 トピックス DoNotAttempttoResuscitate:DNAR)NPO三友堂病院 終末期医療ガイドライン 日本緩和医療学会 認定研修施設認定 東日本大震災による災害のお見舞い 3月11日の東日本大震災により被災された皆様に心からお見舞い申し上げますと共に、お亡くなりになられた方々 のご冥福をお祈り申し上げ、ご遺族の皆様に対し深くお悔やみ申し上げます。 また、大変困難な状況の中にもかかわらず、被災者への医療に携わっている皆様に心から感謝申し上げます。 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンターは、被災地域の一日でも早い復興と皆様のご健康をお祈り申し上げます。 平成23年11月 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター ★三友堂病院 終末期医療ガイドラインの発行 ★モルヒネ友の会 NPO法人認証 ★三友堂病院 がん治療認定研修施設ならびに日本緩和医療学会認定研 修施設に認定される。 ★東日本大震災による災害のお見舞い、★トピックス(一面) ★三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター活動報告 平成23年1月~10月(二面) ★緩和ケアミニ講座(六面)、★モルヒネ友の会(六面)、★スタッフ紹介(七面) ★緩和病棟紹介(八面) 日本がん治療認定医機構ホームページ http://www.jbct.jp/index.html 日本緩和医療学会ホームページ http://www.jspm.ne.jp/

Transcript of 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf ·...

Page 1: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

地域緩和ケアサポートセンターだより

第7号(1) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

発行所 財団法人三友堂病院 山形県米沢市中央6丁目1-219 TEL 0238-24-3700 FAX 0238-24-3709

2011年11月1日

(平成23年)火曜日

第7号

トピックス

一.平成二三年四月一日、三友堂病院終末期医療ガイドラインを発行しま

した。本ガイドラインは、終末期医療の決定プロセスに関するガイドダイ

ン、診療方針決定ガイドライン、セデーションに関するガイドライン、人

工呼吸や心臓マッサージなどの蘇生措置の拒否(D

oNot

Attempt

to

Resuscitate:DNAR)

に関するガイドライン、リビング・ウィル(尊厳死の

宣言)ガイドラインの五つのガイドラインから構成されます。

二、三友堂病院が事務局を務めるモルヒネ友の会は、平成二三年七月九日、

モルヒネ友の会総会を開催し、NPO法人化を決議し、九月二八日に正式

にNPO法人の認証を受け、N

PO

法人モルヒネ友の会として発足しました。

(関連記事六面にあり)

三、平成二三年九月三友堂病院は、がん治療認定医機構認定研修施設に認

定されました。また、平成二三年十月一日本緩和医療学会認定研修施設に

認定されました。さらに地域緩和ケア支援医療機関に登録されました。日

本がん治療認定医機構並びに日本緩和医療学会ホームページをご覧下さい。

三友堂病院

終末期医療ガイドライン日本緩和医療学会

認定研修施設認定

東日本大震災による災害のお見舞い

3月11日の東日本大震災により被災された皆様に心からお見舞い申し上げますと共に、お亡くなりになられた方々

のご冥福をお祈り申し上げ、ご遺族の皆様に対し深くお悔やみ申し上げます。

また、大変困難な状況の中にもかかわらず、被災者への医療に携わっている皆様に心から感謝申し上げます。

三友堂病院地域緩和ケアサポートセンターは、被災地域の一日でも早い復興と皆様のご健康をお祈り申し上げます。

平成23年11月

地域緩和ケア支援医療機関

三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

★三友堂病院 終末期医療ガイドラインの発行

★モルヒネ友の会 NPO法人認証

★三友堂病院 がん治療認定研修施設ならびに日本緩和医療学会認定研

修施設に認定される。

★東日本大震災による災害のお見舞い、★トピックス(一面)

★三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター活動報告 平成23年1月~10月(二面)

★緩和ケアミニ講座(六面)、★モルヒネ友の会(六面)、★スタッフ紹介(七面)

★緩和病棟紹介(八面)

日本がん治療認定医機構ホームページhttp://www.jbct.jp/index.html

日本緩和医療学会ホームページhttp://www.jspm.ne.jp/

Page 2: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(2) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

このたびの震災ならびに福島原発事故

が、当置賜地域に大きな被害を幸いにも

与えなかったとはいえ、地域の方々の日

常生活、また、地域医療・福祉活動には

少なからず影響があったことは事実です。

多くの被害者の方々が置賜地域へと避難

され、異郷での生活を余儀なくされてお

りますことに対して、微力ながらも支え

にならなければならないと考えています。

三月十一日は三友堂病院地域緩和ケアサ

ポートセンター活動報告会が予定されて

いましたが、急遽中止し、その後は宮城、

福島からの緩和ケア対象の患者さんや化

学療法施行中の患者さんの相談や問い合

わせに対応しました。地域緩和ケア活動

に関しましても、置賜地区緩和医療研究

会の開催日程がなかなか決まらないこと

など些細な影響がありました。しかしな

がら、皆様におかれましては、いつも通

りに坦々と日々の業務を遂行されて今日

に至っていることと存じます。

地域緩和ケア、緩和ケア連携について

は、全国的には本年、地域緩和医療推進

プロジェクトの

後の年となり、学会等

で様々な報告がされています。当地域に

おいては地域連携については一歩一歩進

んできている感触を持っておりますが、

地域医療機関、介護・福祉関係者、地域

住民の皆さんにさらに多くの関心を寄せ

ていただき、その必要性について啓発を

図るべき重要な時期を迎えているのでは

ないかと考えています。

今後とも皆様のご理解、ご協力をお願

い申し上げます。平成二三年前半の当セ

ンターの活動について報告させていただ

きます。

一、平成二二年度

三友堂病院

地域緩和ケアサポートセンター

活動報告

—地域緩和ケアサポートセンター活動実績

と今後の課題—

三友堂病院では、平成二一年度には地域緩和ケアサポー

トセンターを設立し、患者さん・ご家族の在宅療養支援

をより一層充実させた地域連携の強化を進めるため、置

賜地域緩和ケアネットワーク「愛のネットワーク」構築

を進めてきました。当サポートセンターの調査では、在

宅移行が困難となる原因として、一、家族の自宅での介

護や看取りへの不安、介護力不足、在宅医が決まらず在

宅死を希望しても実現できないこと、二、在宅死につい

て理解していても状態の悪化や臨死期に際し、家族が動

揺して救急搬送を依頼すること、三、医療者の誤解・偏

見による臨死期での入院などが挙げられました。それら

に対して、三友堂病院緩和ケアの五つの理念を柱に対策

を行ってきました。

平成二二年度における三友堂病院地域緩和ケアサポー

トセンターの活動実績並びに現状と課題について報告い

たします。

地域緩和ケアサポートセンター活動実績

平成二二年四月から平成二三年三月までの緩和ケア外

来の初診患者数は百七名で、そのうち在宅診療に関する

意思を確認した患者さんは九九名でした。患者さん・ご

家族の多くが在宅療養を希望されています。

平成二二年度、同期間の緩和ケア病棟入院患者数は九

五名、うち、二週間以内に亡くなられた患者数は四八名、

在宅移行数は三三名でした。在宅移行率は三四.七%、

症状緩和を行って、在宅移行が可能となった患者さん四

七名うちの七一.七%が在宅へ移行しました。平成二二

年度の平均在院日数は十二日であり、過去五年間と比べ

ると大幅な短縮が見られました。当サポートセンター

が診療を行った患者さんのうち、九名が在宅で亡くな

られました(直接在宅支援と看取りを行った患者さん

が七名、在宅療養支援診療所での看取りが二名)。在

宅死を実現できた患者さんの数は過去

高でした。患

者さんの意思を尊重した在宅療養と看取りの実現が徐々

に達成されつつあります。

平成二二年度に露呈した問題として、一、施設入所

中にがんと診断された患者さんが増加しており、看取

りまで同じ施設での療養が困難なこと、二、状態悪化

や臨死期に際しての入院やご家族が動揺し救急搬送し

た例が依然として見られていること、三、訪問看護ス

テーションやケアマネージャーとの情報交換や連携不

足が挙げられました。

その対策として、地域連携の強化が必要であると考

えられました。一、退院前カンファレンスの開催を徹

底し、患者さん、ご家族の状態についての情報共有を

強化し、在宅ケアの方向性を一致させておくこと、二、

地域の病院や施設への緩和ケアの普及と啓発、三、ご

家族を支える地域連携と人材の育成が考えられました。

平成二三年度に向けて

がん患者さんの多くが、医療・ケア・療養場所など

に関して、自分の納得のいく選択や自己決定ができ、

その希望をできるだけ実現できるよう、患者さん・ご

家族を支える地域の連携と緩和ケアの普及・啓発活動

の強化に取り組んでいきたいと思います。

(木口久美子)

三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター活動報告 平成23年1月~10月

三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

電話

0二三八ー二四ー八三五五

ファックス

0二三八ー二四ー八三五五

Page 3: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(3) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

さらに昨年には、医師・看護師・理学療法士・作業療

法士が「がん患者のリハビリテーション研修会」を受

講し、がんに関する知識・がん患者の身体的・精神的

特徴などの専門的知識を習得し、平成二二年二月から

「がんリハビリテーション料」を算定しております。

がんのリハビリテーションは、患者さんのQOL

(生活の質)向上のための手段として、除痛やADL

の拡大、精神的な支えなどの目的で実施されます。緩

和ケア病棟で行われている多職種による合同カンファ

レンスが充実することにより、多角的視点を持った評

価と情報共有が行え、異なる職種がそれぞれの専門性

を活かし、質の高い医療を提供することに繋がります。

今大会では、緩和ケア病棟で勤務する看護師とリハ

ビリ室のスタッフに対し、「がん患者のリハビリに対

する認識」、「それぞれの職種の役割をどのように捉

えているのか」等についてアンケート調査した結果を

発表しました。その結果を通し、今後の課題を明確に

しながら、緩和ケアチームの一員としてがん患者に対

するリハビリテーションがより効果的な治療となるよ

う活動していきたいと締めくくりました。リハビリス

タッフの積極的参加が緩和ケアチームの活動をさらに

充実させていくことでしょう。

第七回

置賜地区緩和医療研究会

日時:平成二三年七月十六日

会場:置賜文化ホール「伝国の杜」

当番世話人:米沢市立病院

若月裕子看護部次長

当院地域緩和ケアサポートセンターの木口久美子緩

和ケア認定看護師が「置賜地域におけるがん患者の在

宅療養と看取りの現状」について、また、黒田美智子

副センター長が、「介護保険施設におけるがん患者の

療養の現状と課題」について発表しました

。ディス

カッションでは、参加された地域の医療・介護・福祉

第二十回山形県理学療法学術大会

日時:六月十一日~十二日

会場:山形県立保険医療大学

シンポジウムにおいて当院リハビリテーション

部の後藤忠幸理学療法士が「がんのリハビリテー

ション:緩和ケア病棟における、がんリハの現

状と今後の課題」について発表しました。

近年、がん医療に関する医療技術の進歩によ

り、リハビリ部門においてもがん患者に対する

専門性が求められています。三友堂病院では平

成十七年の緩和ケア病棟開設を機に、検診から

緩和ケアまでの一貫した体制の中、患者さんが

がん医療を受けることが可能となっています。

に携わる多職種の皆さんとの情報交換、共有化を図るこ

とができました。特別講演のがん・感染症センター都立

駒込病院看護部看護コンサルテーション室次席

群由起

子さんによる「当院における緩和ケアチームの活動:

患者・

家族・スタッフの笑顔を支える」では、緩和チームの活

動運営に関する仕組みや具体的な活動内容について知る

ことができました。

※置賜地区緩和医療研究会とは平成十六年四月一日に設

立(会長

当院麻酔科

加藤滉部長)。誰もが住み慣れ

た地域で適切な医療を受けられるよう、また、がん治療

や緩和医療に関する調査、研究、教育及び情報交換を図

り、その結果を医療従事者はじめ一般市民の方へ情報を

発信することを目的に置賜地区のがん診療病院が中心と

なり発足しました。専門研修・地域連携支援など、地域

緩和ケア推進の取り組みと一般市民の方に「緩和ケア」

をよりよく利用していただくための情報発信を行なって

おります。

二、学会・研究会活動

第三五回日本ペインクリニック学会

東北地方会

日時:二月十九日

会場:仙台市情報・産業プラザ

当院地域緩和ケアサポートセンターの加藤佳

子センター長が、「地域の緩和医療充実のため

の三友堂病院の取り組み」と題して発表を行い、

緩和ケア病棟の役割は

穏やかな

期の看取り

の実現ばかりではなく、

苦痛症状を短期間でコ

ントロールして、それ

まで生活していた場所

での療養へ再びつなげ

ることであり、その意

味で、緩和ケア病棟は

地域緩和ケアの拠点と

して位置づけられると

説きました。

若月当番世話人特別講演 郡先生

フロアからの質問、意見が多数

あり、白熱した議論が展開され

ました。

Page 4: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(4) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

第十六回

日本緩和医療学会

学術集会

日時:七月二九日~三0

会場:北海道のさっぽろ芸術文化の館ほか

大会テーマ:「いのちをささえ

いのち

をつ

なぐ

緩和ケア~病院から地域へ

~」

大会長:蘆野吉十和田市立中央病院長

大会では、ワークショップで、川村博司緩和ケア

病棟長が「地域における切れ目のない緩和ケアをめ

ざして~地域医療機関における症状マネージメント

の重要性~」と題して、置賜地域の緩和ケアの現状

と課題について発表を行い、地域の医療機関が症状

マネージメントを的確に行って在宅移行と在宅療養

の継続に積極的に関わっていくことが重要であると

主張しました。全国各地で地域緩和ケア推進のため

活動している九名の演者とフロアの間で、地域緩和

ケアの推進に向けて、現在の課題について、また解

決策について、活発な討論が行われました。また、

川村病棟長は「消化器症状の緩和」のセッションで

も、「消化器癌に対するステント留置術の緩和的治

療としての意義に関する検討」を報告し、三友堂病

院の外科的治療による積極的緩和医療を紹介しまし

た。また、「チーム医療」のセッションで、木口久

えながら活発な意見交換が行われました。「尊厳死」

を実現するためにしておくべきことを考える機会とな

り、学びの多い会となりました。

美子緩和ケア認定看護師が、「がん患者の在宅療養

と在宅看取りに伴う課題への取り組み」について発

表しました。在宅医療に携わるスタッフ同士の連携

や情報の共有化など課題が見えてきました。更なる

地域とのネットワーク構築の推進を図っていかなく

てはならないと思います。

第十五回日本尊厳死協会

東北支部

米沢大会

日時

:平成二三年九月三日

会場

:置賜文化ホール「伝国の杜」

テーマ:「らくらく往生」

大会長:仁科盛之三友堂病院理事長、

加藤佳子三友堂病院地域緩和ケ

アサポートセンター長

三友堂病院が主管した今大会には、尊厳死協会会

員や米沢市、山形市などから参加者二百名の出席が

ありました。

特別講演では、山形大学医学部附属病院緩和ケア

チームリーダー

山川真由美医師による「らくらく

往生のための痛みからの解放」が行われました。痛

みは我慢するものではないこと、痛みや苦しみから

解放されないと「らくらく往生」はできないこと、

「痛みと上手に付き合うために、強い痛みにはモル

ヒネ内服をしましょう。痛みから解放されたら、自

分の人生を振り返り、愛する人に手紙を遺すことも

『尊厳ある死』を迎えるよい方法です。」と話され

ました。大切な知識をとてもわかりやすく解説して

いただきました。

また、「尊厳死できる終の往処を考えましょう」

をテーマに加藤佳子医師が司会を務め、会場とのざっ

くばらんなディシカッションが行われました。加藤

医師から介護の支援体制が紹介され、病気になった

時や介護をする立場になった時に、上手に支援を受

けていく方法などについて、会場の方の体験談を交

木口演者

ワークショップの川村演者

仁科大会長挨拶 特別講演 山川先生加藤座長

活発な討論

Page 5: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(5) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

第十五回東北緩和医療研究会

日時

:平成二三年九月二三日

会場

:青森市民ホール

テーマ:「支えあう心」

大会長:

馬場祥子医療法人ときわ会

ときわ会病院緩和ケア病棟長

渡部芳紀がん性疼痛看護認定看護師が「介護施設

における終末期がん患者の療養の現状と課題」につ

いて発表しました。

置賜地域の介護施設二八施設を対象に調査を行い

ました。「独居がん患者」が施設を看取りの場の一

つとして選択できるようにしていくためには、施設

職員の緩和ケアや看取りに対する知識・技術を高め

る必要があります。施設との情報交換を行いながら、

患者さんの希望に沿える看取りを一緒に考えていく

ことが大切になります。

よりよい看取りが行えるような、地域医療機関と

施設の連携が求められています。

三、季節の行事(夏祭り)

緩和ケア病棟では療養されている患者さんがご家

族と一緒に季節感を感じていただきながら、リフレッ

シュしていただくために季節の行事を行っています。

八月六日の土曜日には『夏祭り』を行いました。

緩和ケア病棟に入院されている患者さんだけでな

く、在宅療養されている患者さんとそのご家族にも

招待状をお渡ししました。残念ながら、体調が優れ

ない、都合がつかない等の理由で参加いただくこと

ができなかった方もおられましたが、参加された入

院患者さん、ご家族には、スタッフの企画したゲー

ムやスイカ割りを存分に楽しんでいただきました。

とても大きなスイカを目の前に「スイカを割るぞ!!」

と気合の入った姿はとても生き生きとされていまし

た。またスタッフ手作りの焼きそばやカキ氷を一緒に

味わいました。なかなかの好評でした。そして山形の

夏の風物詩といえば「花笠音頭」です。参加された患

者さん、ご家族は、普段の白衣姿から浴衣やはっぴに

衣装を替えた病棟スタッフと一緒に、音楽療法士の演

奏に合わせて花笠音頭を踊りました。花笠を手に素敵

な笑顔を見せてくださった患者さん。とても和やかな

時間を過ごすことができました。

このあと、芋煮会やクリスマス会などの行事を予定

しています。患者さんやご家族の皆さんに楽しい時間

を過ごしていただいて、思い出の一ページにしていた

だければ幸いです。

四、訪問看護師・ケアマネージャー

との連携

平成二三年一月から十月まで訪問看護ステーション

およびケアマネージャーとの退院前カンファレンスを

四八回、平成二二年十月から平成二三年十月まで情報

交換会・研修会・勉強会を十五回(テーマ

:

カーフ

ティーポンプ・リンパマッサージ・在宅医療機器・C

Vポート・家族ケア)、地域緩和ケアサポートセンター

見学会を十一回(施設

:

山形大学麻酔科・きむらク

リニック・米沢市立病院緩和ケアチーム・東北福祉大

学学生・東北文化大学リハビリテーション学科学生・

安日医院・山形大学医学部看護学科学生・訪問看護ス

テーション「虹」・公立高畠病院)を行いました。大

学の学生さんたちも大勢訪れてくださいました。緩和

ケアや緩和ケアチーム医療、あるいは地域医療につい

て勉強する機会としていただけましたならば幸いです。

今後も互いを知る交流の場を持ち、居宅ケアの現場の

具体的な問題を解決しながら、連携を強化してまいり

たいと考えています。

五、論文、他

川村博司、横山英一、他:胃癌無治療症例の経過と

生存期間および終末期における緩和医療に関する検討、

三友堂病医誌、1

1:47-52

、2010

山下恵美、黒田美智子、他:皮膚浸潤を伴う進行乳

癌患者のQ

OL

の改善における全身化学療法およびモーズ

ペーストの効果、三友堂病医誌、1

1:59-64

、2010

黒田美智子、川村博司、加藤佳子:地域緩和ケアネッ

トワーク、『愛のネットワーク』の構築に向けた取り

組み、死の臨床、3

4:41-42

、2011

Page 6: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(6) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

緩和ケアミニ講座

今回から、緩和ケアの知識・技術に関

するミニ講座を掲載します。

症状の緩和に役立てていただくことが

できれば、幸いです。

第1回

症状マネージメント

その一、〈痛みの評価方法について〉

終末期にみられる痛みは急性の痛みと

は異なります。患者さんの身体的苦痛

(痛み)のほか,精神的苦痛、

社会的苦

痛、霊的苦痛などの全人的苦痛と言われ

る苦痛を総合的に評価します。痛みは本

人にしかわかりません。患者さんの訴え

を注意深く聞き、診察や観察を行なうこ

とで症状の程度を評価します。

痛みの症状は、スケールとして、原則的にはN

RS(Numeric

Rating

Scale)

を用いて、患者さん

自身にN

RS0/10

(痛みが全くない状態)~

NRS10

/10

(これから経験する痛みで想像できる

悪な

痛み)の十一段階で評価を行います。ケアにおけ

る記録についてもN

RS0/10

~10/10

の十一段階で統

一して記載を行います。

意識レベルの低下や、認知機能の低下のある患

者さんで、自分自身で痛みの評価が困難な場合に

ついては、フェイススケールを用いて、医療者側

で評価を行います。この場合、ケアにおける記録

についても、0

~5

の六段階でフェイススケールを

用いたことを記載します。痛みの評価については、

原則的には「一患者―一スケール法」による統一

した方法で、継続的に評価をします。

※三友堂病院は病院全体で原因疾患が、がんであ

ろうが、なかろうが、「痛みスケール」を統一し

て使用することとなりました。スケールを活用し

て痛みの評価をしっかりと行い、患者さんの痛み

をゼロにしましょう。決して、「痛みは自制内

です」などとカルテに記載してはいけません。

スケールで評価し、痛みをとる方法を、手際良

く判断し、できるだけ速やかに痛みを取り除く

ように心掛けましょう。

平成二三年七月九日、モルヒネ友の会は総会を開

催し、NPO法人化を決議しました。代表者に井淵

幸子さんを選出し、事務所を三友堂病院地域緩和ケ

アサポートセンター内に置くことなどを決定しまし

た。その後、九月二八日山形県知事より正式にNP

O法人として認定されました。モルヒネ友の会は、

これからも、正しい痛みの治療とモルヒネの安全性

を普及し、痛みに苦しむすべての人のクオリティー・

オブ・ライフの向上に寄与することを目的として活

動してまいります。

モルヒネ友の会に参加して

三友堂病院

音楽療法士

小笠原

未希

モルヒネ友の会モルヒネ友の会では、オートハープという楽器を使い、演

奏させていただく機会がありました。オートハープはあまり

馴染みのないもので、ご覧になった方はほとんどいらっしゃ

らないのではないかと思います。そこで、オートハープとい

う楽器をご紹介します。オートハープの音色はハープ(竪琴)

に近く、優しくきれいな音がでます。三七本の弦が張ってあ

り、ピアノと同じように左から右へ行くに連れて高音になり

ます。コード(和音)バーというボタンがついてあり、それ

を押して弦を弾くと和音が弾けるという楽器です。

今回はオートハープを

使って

一、浜辺の歌

二、愛の賛歌

三、知床

旅情

四、アメージング・

グレース

五、故郷

演奏させていただきまし

た。いつもとはまた違っ

た緊張感の中での演奏、

そしてモルヒネ友の会の

活動を知る機会となり、

貴重な経験をさせていた

だきました。

Page 7: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(7) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

スタッフ紹介

平成二三年度より日本看護協会認定

看護師の二人が本格的に認定看護師と

して活動を開始しました。二人が「認

定看護師の職務」と「抱負」を語りま

す。

◆緩和ケア認定看護師

木口久美子

緩和ケア認定看護師は患者さんとその家族の意思

や希望を支え、痛みだけでなく、様々な苦痛や苦悩

の早期緩和を目指してケアを提供します。また、他

のスタッフの指導や教育・相談活動を行い、質の高

い看護が継続して行われるよう努力しています。

緩和ケア認定看護師の特化技術には口腔ケア・リ

ンパマッサージ・エンゼルケア・呼吸理学療法があ

ります。その中で私は、ベッドサイドでできるリン

パマッサージに力を入れています。自宅で患者さん

が自分でできるスキンケアやリンパマッサージ指導

を行います。マッサージを通して患者さんと家族が

家族としての絆を再確認できるようなケアを目指し

ています。

また、緩和ケアは医師やリハビリテーションスタッ

フ、管理栄養士や薬剤師など様々な職種によるチー

ムによって行われています。チームメンバーの報告

や連絡・相談などの窓口となり、多職種が連携を図

りながらケアが提供されるよう調整を図ることも大

切な役割と考えています。

◆がん性疼痛看護認定看護師

渡部芳紀

患者さんは様々な苦痛を抱えています。地域緩和

ケアサポートセンターでは、積極的に苦痛緩和に努

めています。痛みを早期に軽減、消失することによ

り患者さんは初めて病気と向き合い、今後の人生を

どのように過ごしたいかを考えることができます。

患者さんとご家族が痛みと上手に付き合いながら生

活し、自分らしい毎日を過ごせるようにサポートさ

せていただくことが、がん性疼痛看護認定看護師の

役割です。

また、患者さん、ご家族、あるいは医療スタッフ

からの相談を受けております。例えば

一、がん性疼痛を緩和する方法の提案

二、鎮痛剤使用開始に伴う注意

三、鎮痛剤の変更、使用方法の変更

四、鎮痛剤増量・減量

五、鎮痛剤の副作用対策

六、服薬指導

七、痛みのケア以外の看護ケアの提供

に関することです。

痛みの緩和ができるように、患者さんやご家族、

担当医師や看護師、他の医療スタッフと相談しなが

ら一緒に考えてゆきます。また、緩和ケア:マッサー

ジ・罨法・ポジショニング・リラクゼーションなど

看護師ならではの援助を積極的に行います。

痛みで苦しんでいる患者さんに対して、患者さんに寄

り添って、

善を尽くすことが看護師の役割だと考えてい

ます。一人でも多くの患者さんの苦痛を和らげ、患者さん

とそのご家族が「自分らしさ」を保って過ごせるように、

がん性疼痛の知識・技術の向上に努めていきたいと思いま

す。

(財)三友堂病院ホームページ三友堂病院の新着情報が満載

http://www.sanyudo.or.jp

Page 8: 地域緩和ケアサポートセンターだよりhospital.sanyudo.or.jp/files/20111129090144.pdf · 地域緩和ケア支援医療機関 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター

第7号(8) 地域緩和ケアサポートセンターだより 平成23年11月1日

編集後記

患者さん、ご家族が安心して自宅や施設へ退院して

いただくために私たちができることは、早期から退院

後の生活を考えて支援していくことであると思います。

食事や入浴、内服薬管理など毎日行う一つひとつがそ

の人の生活をつくっていくものであると考えています。

今まで行えていたことができなくなったとき、何が

必要かについて考えることが在宅支援へ繋がると思い

ます。日々ケアにかかわる私たちが患者さん、ご家族

の声を大切にして、病院医療スタッフや地域ネットワー

クを活用し、在宅で生活しやすい環境を整え、支えて

いくことが大切になります。

「その人らしく生きる」ことを病院と地域がひとつ

となって支援できたときにこそ患者さん、ご家族が満

足できる在宅生活を実現できると確信し、日々取り組

んでまいります。

後まで読んでいただいた皆様に感謝いたします。

(吉田

美代子

記)

三友堂病院の緩和ケア病棟の特徴は

なんですか?

がん終末期の患者さんの苦痛を和らげ、穏やか

な看取りを行うことは、緩和ケア病棟の大切な役

割です。しかし、そればかりではなく、家族ケア

の一環としてのレスパイトケアと、患者さんが希

望する居宅療養の実現も重要な役割であると考え

ます。

そのために、緩和ケア病棟の明るく、静かで清

潔、安全な療養環境において、専門的知識を持っ

た多職種スタッフが、患者さんとご家族の身体的・

精神的・社会的、そして、スピリチュアルな側面

を支える活動を展開しています。そして、苦痛を

できるだけ早急に緩和すること、居宅での療養体

制を充実させることを目指しています。

さらに、地域緩和ケアサポートセンターが、居

宅サービス提供機関と連携し、地域の患者さんに

緩和病棟紹介

寄り添う居宅緩和ケアを積極的に支援しています。

平成二二年度、居宅療養移行を希望して緩和ケア病

棟へ入棟した患者さんの七十%で希望を叶えること

ができました。

どんな病気や状態で入院するのですか?

がんと診断された方が主に入院される病棟です。

緩和ケアを実践する緩和期は、病名が告知された時

からはじまる、と私たちは考えます。三友堂病院の

緩和ケア病棟はこのような考えから、がんの終末期

の方が入院するだけではなく、症状緩和の入院、息

抜き(レスパイト※)の入院、疼痛管理の入院、そ

して化学療法を目的とする入院など、様々な状態の

方が入院されます。

※病気の人がいると、家族はその人を支える必要

があるため、精神的負担や肉体的負担が生じます。

その負担を軽減するために、短期間の入院を実施し

ます。

入院するためには病名を知っている必

要がありますか?

自分自身のことをできるだけ正確に知ることはと

ても大事なことです。それが自分の命に関わること

であれば、なおさらです。私たちは、病名、病状、

予後について、現在わかり得るすべてのことを患者

さん本人へ伝えることが、ご本人の人生の生き方を

決めるために、また、緩和ケア病棟での様々な治療

を選択するために必要なことであると考えています。

もし、病名・病状について、説明を聞いていない患

者さんがいらっしゃれば、緩和ケア科を初診する時

に、ご自身の病名・病状を知りたいかどうかを確認

させていただきます。その上で、患者さんの意思を

尊重して治療にあたらせていただきます。

科長:加藤佳子

病棟長:川村博司

専任医師:横山英一

八木周

尾形貴史

病棟師長:黒田美智子

病棟主任看護師:吉田美代子

専任薬剤師:大石玲児

専任栄養士:二宮久美子

専任医療相談員:青木砂織