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「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業 主のコラボヘルスによる健康課題の可視化 2015 3 31 東京海上日動健康保険組合

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「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業

主のコラボヘルスによる健康課題の可視化

2015 年 3 月 31 日

東京海上日動健康保険組合

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目次

1.本事業の背景と目的 ..............................................................................................................4

1.1「健康経営」の枠組みとは ..................................................................................................4

1.2「健康経営」の枠組みに基づくコラボヘルスとは ..............................................................5

(1)健康保険組合と企業の健康管理の現状 .......................................................................5

(2)健康保険組合と企業の連携(健康経営の推進) ........................................................5

1.3 本事業の目的 ......................................................................................................................7

(1)当健保組合における現状および課題 ..........................................................................7

(2)本事業の目的 ..............................................................................................................7

1.4 本事業の推進体制 ...............................................................................................................8

1.5 事業実施スケジュール ........................................................................................................9

2.レセプト・健診データに基づくデータヘルス計画 .............................................................10

2.1 分析対象とその属性 ..........................................................................................................10

2.2 分析結果および対策の方向性 ...........................................................................................11

3.「健康経営」の枠組みに基づく健康課題の可視化手法 ......................................................12

3.1 健康経営に関する海外の取組み ........................................................................................12

(1)アメリカにおける健康経営の捉え方 ........................................................................12

(2)アメリカにおける労働生産性への着目 .....................................................................13

3.2 健康関連コストの評価手法 ...............................................................................................14

(1)最終アウトカムの貨幣換算 ......................................................................................14

(2)アブセンティーズムによる損失コストの算出 ..........................................................14

(3)プレゼンティーズムによる損失コストの算出 ..........................................................15

3.3 健康リスクの評価手法 ......................................................................................................17

(1)概要 ..........................................................................................................................17

(2)健康リスク評価に着目した分析手法 ........................................................................18

(3)健康リスク評価に着目した分析手法 ........................................................................19

3.4 疾病リスク評価の方法 ......................................................................................................19

4.健康関連コストと健康リスクの分析結果 ............................................................................20

4.1 分析対象とその属性 ..........................................................................................................20

(1)対象 ..........................................................................................................................20

(2)属性 ..........................................................................................................................20

4.2 健康関連コストに関する項目 ...........................................................................................21

(1)健康関連コストの比率 ..............................................................................................21

(2)アブセンティーズムの状況 ......................................................................................21

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(3)プレゼンティーズム損失の状況 ...............................................................................22

4.3 健康リスクと疾病の分析から導かれる対策の方向性(男性) .........................................25

(1)健康リスク評価と健康関連コストとの関係 .............................................................25

(2)健康リスクの各項目と健康関連コストとの関係 ......................................................28

(3)健康リスクランクと健康関連コストとの相関 ..........................................................31

(4)疾病と健康関連コストとの相関 ...............................................................................33

(5)男性の健康関連コスト縮小対策の方向性 .................................................................40

4.4 健康リスクと疾病の分析から導かれる対策の方向性(女性) .........................................41

(1)健康リスク評価と健康関連コストとの関係 .............................................................41

(2)健康リスクの各項目と健康関連コストとの関係 ......................................................44

(3)健康リスクランクと健康関連コストとの相関 ..........................................................47

(4)疾病と健康関連コストとの相関 ...............................................................................49

(5)女性の健康関連コスト縮小対策の方向性 .................................................................55

5.まとめ .................................................................................................................................56

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1.本事業の背景と目的

1.1「健康経営」の枠組みとは

東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニットの研究資料によれば、健康

経営とは、従業員の健康を重要な経営指標と捉え、健康増進に積極的に取り組む企業経

営のスタイルである。

企業にとって、従業員の健康問題に関連するコストとは医療費だけではなく、医療費

の他に労働生産性に係わる損失としてアブセンティーズム(病欠)やプレゼンティーズ

ム(何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状況)による損失もコストと考え

られる。したがって、健康経営の枠組みにおいては、従業員の健康向上のアウトカムを

医療費だけにおくのではなく、労働生産性の評価も加え、健康施策について検討してい

くことが重要とされている。

図表 1 健康関連コストの割合と目指すべき方向性

(資料元:東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット ホームページより抜

粋)

当健保では、「従業員の働き方の多様化を支え、活き活きと働くことができる職場環

境の実現」に向け、従来から事業主との連携・協業による健康施策を推進しているが、

PDCAサイクルを回し、更に効果的・効率的な健康施策を実現していくために、東大

の研究内容を活用・検討していくこととした。

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1.2「健康経営」の枠組みに基づくコラボヘルスとは

(1)健康保険組合と企業の健康管理の現状

「データヘルス計画」を推進し、実効性の高い保健事業を行っていくためには、保

険者と事業主との連携・協業(コラボヘルス)が不可欠であるとされている。(出典:

厚生労働省「データヘルス計画作成の手引き」2014年 12月)

しかしながら、保険者と事業主との関係は、業種・規模・事業主側の推進体制(産

業保健スタッフの人数、会社としての注力度合い)などによって大きく異なると考え

られ、最適な連携のあり方が確立しているとは言い難い現状にある。

保険者と事業主の保健事業に対する考え方・目的についても、一般的に保険者は、

医療費適正化(健康保険組合の財政安定化)を目的として保健事業を行うものと考え

られるのに対して、事業主は企業業績に直結する被保険者(従業員)の生産性維持・

向上を保健事業の主目的と捉えているという相違点が存在するものと考えられる。

保険者と事業主の保健事業の取り組みをみると、健康施策の策定・計画段階におい

て、その施策の効果(アウトカム)が明確に設定されていないことから、効果的な施

策の振り返り・計画修正を実施できていないケースが多い。また、目標値の設定を行

っていても、保険者と事業主の保健事業の目的の相違から、双方の目的を十分踏まえ

た目標値となっていない。

その結果として、コラボヘルスも進まず、効果的なPDCAサイクルに基づく最適

な資源配分を実現できていない可能性がある。更にいえば、健康施策の効果を評価す

ることが困難であることから、具体的な取組み内容に関しても、法令に基づく健康管

理業務内に留まり、積極的な健康施策の実施につながっていない可能性が示唆される。

(2)健康保険組合と企業の連携(健康経営の推進)

近年、事業主側の健康施策を推進する取組みとして、「健康経営」の考え方が推奨

されている。「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的

に実践するものであり、企業理念に基づき、従業員への健康投資を行うことは、従業

員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価

向上につながると説明されている。(図表 2)

事業主(経営レベル)のリーダーシップのもと、人事部署、産業保健スタッフ、健

康保険組合等が連携して、従業員の健康保持・増進に関する自社の取組みや健康保険

組合等の取組みなどの全体を把握した上で、取組みの重複や不足などを整理・検討し、

それぞれの役割に応じた取組みを行うことで、事業の効率化を図ることが可能となる。

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健康経営の取組みを促進するにあたっては、「健康経営の理念・方針の明確化」、

「従業員に向けた健康経営のメッセージ発信」、「投資家等に向けた健康経営のメッ

セージ発信」、「保険者の取組み支援」といった体制整備を行うことが重要とされて

いる。また、体制整備に加え、保険者と事業主双方の目的に合致した定量的な目標設

定を行い、健康施策のPDCAサイクルを効果的に回していくことが重要となる。

そのためには、取組みの効果を可視化するための目標値の設定が必要不可欠である

が、現在はいまだその評価手法等が確立されている状況にはない。複数の学術機関や

研究会等において、その手法開発に向けた研究が行われているところであり、「健康

経営」の更なる普及に向け、今後の成果が期待される。

図表 2 従業員の健康関連総コストの割合

(出典:経済産業省 企業の「健康投資」ガイドブック 2014年 10月)

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1.3 本事業の目的

(1)当健保組合における現状および課題

当健保組合では、「保健事業に対する基本的な考え方」として、事業主との連携を

根幹に据え、従来から事業主とも連携し、保健事業の推進・施策の見直しを行ってき

た経緯にある。その一環として、レセプト・健診データを活用した分析を 2011年度

に着手し、健康課題の特定、保健事業の計画策定に役立てるべく継続的に実施してき

た。

一方で、コラボヘルスの更なる推進には、保険者・事業主が有する各種関連データ

を統合し、一元的に分析することで、共通の課題認識、課題・目標設定を行っていく

ことが必要と考えられる。当健保組合においては、今般のデータヘルス計画策定に際

して、特に本課題認識への継続的な対応を目指していくことを想定している。

(2)本事業の目的

本事業では、上記(1)を踏まえ、以下取組みを通じて、従来の医療費のみに着目

した健康課題の可視化ではなく、従業員の生産性も含めた健康課題の可視化が可能と

なる枠組みの構築を目指すことを主目的としている。

① 健診・レセプト・生産性関連データ等の一元化

② 一元化データの分析に基づく健康課題の抽出

③ 保険者・事業主の継続的な論議に基づく計画策定

本取組みを継続的に実施、発展させていくことによって、効果的・効率的な健康施

策を実践することが可能となると考えられる。更には、保険者と事業主の連携・協業

(コラボヘルス)を基盤として、最終的な目標である「従業員の働き方の多様化を支

え、活き活きと働くことができる職場環境の実現」を目指していく。

保健事業に対する基本的な考え方(東京海上日動健保組合)

事業主の「重要な経営資源である人材を大切にする」という考え方を

踏まえ、加入者の健康維持・増進を第一義とした保健事業を運営して

いきます。

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1.4 本事業の推進体制

本事業の推進主体は当健保であるが、事業主との連携が必要不可欠であり、主要事

業所との定期的な論議・検討の場を設定し、従来以上に密接な関係を構築することと

した。

一方で、当健保組合および事業主だけでは、先進的な分析等の実施は困難であるこ

とから、健康経営の枠組みおよびその評価手法について、海外の事例を基に先進的な

研究を行っている「東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット」の協

力を得ることとした。具体的には、当健保組合および事業主の有する各種健康関連デ

ータを統合したのち、統計的な分析処理・生産性に着目した課題抽出を東大の協力の

もと実施した。

なお、分析に必要な追加データの取得・データの一元化・加工処理等に際しては、

一部、外部事業者への委託を実施している。(図表 3)

図表 3 事業推進体制

東京海上日動健保組合(事業実施主体)

事業主連携

(株)東京海上日動メディカルサービス

(生産性関連データ追加取得)

(株)メディアラート(各種データの突合・クレンジ

ング)

東京大学政策ビジョン研究センター

健康経営研究ユニット(データ分析・課題検討)

外部委託

研究委託

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1.5 事業実施スケジュール

本事業全体の実施スケジュールは図 4 の通りであり、STEP1「レセプト・健診

データに基づく計画策定」、STEP2「生産性関連データを加えた分析・課題抽出」

の 2 段階に分けて実施している。STEP1は従来から実施してきたレセプト・健診

データを活用した分析・計画策定であり、本事業においてはSTEP1を基盤として、

先進的な取組としてSTEP2を実施したものである。

STEP1において策定したデータヘルス計画の概要については、以下「2.レセ

プト・健診データに基づくデータヘルス計画」に示す。

図表 4 実施スケジュール

3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

データヘルス計画策定の基本方針策定

外部委託事業者の選定

データ分析に関する個人情報の取り扱い整理

レセプト・健診データの突合・整備

レセプト・健診データ分析

分析結果に基づく健康課題・対策検討

データヘルス計画策定

生産性関連データ取得方法の検討・開発

生産性関連データの取得

生産性関連データの突合・整備

生産性関連データを含めた分析

分析結果を踏まえた健康課題の抽出

2014年 2015年

<全体>

<STEP1>

<STEP2>

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2.レセプト・健診データに基づくデータヘルス計画

2.1 分析対象とその属性

データ分析に基づく計画策定(データヘルス計画)に際しては、事業所毎の特性・

産業保健体制等に留意することが必要不可欠となるが、当健保においても、所属する

41 事業所の規模・業種・従業員構成は大きく異なっていることから、段階的に事業

主との連携を進めていくことしている。

本事業における先進的な取組み(生産性データも一元化した分析・課題抽出)につ

いては、主要事業所において実施することとしており、以下 2.2 についても当該事業

所の結果を示す。

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2.2 分析結果および対策の方向性

データ分析および現状施策の評価に基づく対策の方向性は図表 5 に示す通りであ

る。一般的な課題として認識される生活習慣病に関する課題が中心であり、その解決

に向けた方向性をまとめ、データヘルス計画として取りまとめた。

一方で、本分析からも特に女性については、生活習慣病以外の疾病(女性固有疾患)

の医療費・罹患者が大きくなっていた。これらの疾病は従業員の生産性にも影響を及

ぼす可能性があると考えられることから、更なる分析の必要性が確認されている。

図表 5 現状分析から見える課題および対策の方向性

受診中にもかかわらず、血圧・血糖値のコントロール不良者が存在する。(⇒将来の脳梗塞・虚血性心疾患等につながっている可能性が高い)

新たにメタボ該当となる者が多いため、メタボ該当者率の改善が進まない。

(生活習慣病以外に、生産性に強く影響を及ぼす疾病・健康リスクが存在する可能性。)

現状分析から見える課題 課題解決に向けた方向性

高リスク

・高血圧、高血糖にもかかわらず、未受診の者が存在する。・高リスク(複合リスク)にもかかわらず、未受診の者が存在する。(⇒将来の脳梗塞・虚血性心疾患等につながっている可能性が高い。

中リスク

若年層(20~30代)男性の生活習慣の悪化が、40~50代の高血糖・高血圧につながっている可能性がある。

低リスク

その他

(生産性関連データを加えた分析結果に基づき、対策の方向性を検討する。)

就業措置(残業規制等)を行うことにより、受療コンプライアンスの向上を図る。(高血圧については、開始済みであり、糖尿病についても検討する。)

・終了者の割合、改善率を維持するため、引き続き、特定保健指導の経年対象者に対するプログラム変更の工夫を行う。・若年層社員研修の場などを通じた健康リテラシーの向上、健康チャレンジの参加率向上など。

・就業措置(残業規制等)を行うことにより、受療コンプライアンスの向上を図る。(高血圧については、開始済みであり、糖尿病についても検討する。)・Ⅰ度高血圧で複合リスクを有する対象者への積極的な介入を図る。

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3.「健康経営」の枠組みに基づく健康課題の可視化手法

3.1 健康経営に関する海外の取組み

(※本章は東京大学健康経営研究ユニット提供資料からの抜粋)

(1)アメリカにおける健康経営の捉え方

アメリカにおける先行研究によれば、健康に関連する企業の総コストのうち、医療

費や薬剤費の直接費用は 24%を占めるに過ぎず、労働生産性の損失(間接費用)は、

4分の3 を占めるといわれている。

労働生産性の損失(間接費用)の占める割合は 30~60%くらいと幅はあるが、最

大のコストはプレゼンティーズムだという研究が多数である。つまり、事業の費用対

効果を考え、効果的な健康管理事業を展開していく上で、医療費だけに着目した取組

みは「部分最適」の追求であり、企業の経営という観点から従業員の健康関連コスト

を捕えた場合、「全体最適」にはつながらない可能性がある。

図表 6 従業員の健康関連総コストの割合

医療費

長期障害

短期障害

アブセンティーズム

プレゼンティーズム

間接費用

直接費用

企業視点

保険者(健保)視点

個人の健康問題だけでなく、周囲へ及ぼす影響も大きい。

【用語説明】

アブセンティーズム

病欠、病気休業している状態

プレゼンティーズム

何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し業務遂行能力や労働生産性が低下している

状態

(参考)直接・間接費用の割合は、アメリカ大手金融サービス会社従業員 16,651 人データ結果を参考に図式化した。 Edington DW, Burton WN. Health and productivity. In: McCunney, RJ: A Practical Approach to Occupational and Environmental Medicine. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. 3rd ed. 2003:140-152;

医療費

長期障害

短期障害

アブセンティーズム

プレゼンティーズム

間接費用

直接費用

企業視点

保険者(健保)視点

個人の健康問題だけでなく、周囲へ及ぼす影響も大きい。

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(2)アメリカにおける労働生産性への着目

① 健康リスクと労働生産性

アメリカの先行研究によると、健康リスク数が増えるほど労働生産性(アブセンテ

ィーズム・プレゼンティーズム)の損失割合は上昇する。特に、プレゼンティーズム

で顕著に労働生産性が損失することにつながっている。

図表 7 健康リスク数別労働生産性損失の平均割合 (n=2,264)

1.32.8 3.2

4.8

6.98.5

13.514.5

25.9

0.00.8 0.8

1.7 1.62.3

4.02.9

6.3

0

5

10

15

20

25

30

0リスク 1リスク 2リスク 3リスク 4リスク 5リスク 6リスク 7リスク 8リスク

プレゼンティーイズム アブセンティーイズム

Boles, M., Pelletier, B., & Lynch, W. (2004). The relationship between health risks and work productivity. JOEM, 46(7), 737-745.

※健康リスク項目① 栄養バランス不良② やせ・肥満③ 高コレステロール④ 運動不足⑤ 高ストレス

⑥ 予防ケア未受診⑦ 生活不満足⑧ 高血圧⑨ 喫煙⑩ 糖尿病⑪ 飲酒

② 労働生産性と医療費の関連

医療費(医療費+薬剤費)の大きい疾病と労働生産性低下によるコストの大きい疾

病は順位が異なる。そのため、医療費のみで考えるか、労働生産性まで含めて考える

かによって、ターゲットとなる疾患が異なってくる可能性がある。

図表 8 労働生産性と医療費の関係

順位 医療費+薬剤費 生産性(※) 合計

1 がん(皮膚がん以外) けん怠感 肩こり・腰痛

2 肩こり・腰痛 抑うつ 抑うつ

3 冠動脈性心疾患 肩こり・腰痛 けん怠感

4 慢性疼痛(肩こり、頭痛、片頭痛以外)

睡眠障害 慢性疼痛(肩こり、頭痛、片頭痛以外)

5高コレステロール 慢性疼痛

(肩こり、頭痛、片頭痛以外)睡眠障害

6 逆流性食道炎 関節炎 高コレステロール

7 糖尿病 高血圧 関節炎

8 睡眠障害 肥満 高血圧

9 高血圧 高コレステロール 肥満

10 関節炎 不安神経症 不安神経症

Loeppke et al. Health and Productivity as a Business Strategy, JOEM 49(7), 2007.

※生産性は、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムの合計

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3.2 健康関連コストの評価手法

(1)最終アウトカムの貨幣換算

医療費と労働生産性に係わるアウトカムを一元的に可視化するため、すべての項目を

貨幣換算(コスト換算)した。対象とした項目は以下となる。

1. 医療費:対象企業の従業員が 1年間に使った医療費の総額

2. 傷病手当金:対象企業の従業員のうち、ケガや病気で長期休業したものに健保か

ら支払われる手当金の 1年分の総額

3. 労災給付金:対象企業の従業員のうち、労災認定されたものに支払われる労災給

付金の 1年分の総額

4. アブセンティーズムコスト: 1年間の病休(欠勤)日数×賃金(円)

(アブセンティーズムとは病欠、病気休業のこと)

5. プレゼンティーズムコスト:プレゼンティーズム損失割合×賃金(円)

(プレゼンティーズムとは何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能

力や生産性が低下している状態)

※項目によっては、健保・企業がデータ化している近しい値で代用

(2)アブセンティーズムによる損失コストの算出

アブセンティーズムコストは、病欠・病気休業により本来企業側が提供されるべき労

働が提供されなかった分のコストである。企業における休暇は、病気の場合のみならず、

従業員が自分の生活の質向上のために、取得を積極的に推奨される位置づけでもある。

したがって、特に有休休暇については、一般的には、企業側が休暇取得の目的(病気の

ための休暇であるかどうか)を把握していることが少ない。

算出に使用する休暇日数に使用する定義をどういった形としていくかは、企業側の実

態等に応じて今後更なる研究が望まれるところであるが、今回の算出においては、便宜

上、有休休暇をアブセンティーズムとしてカウントしない方法で、損失コストを算出す

ることとした。

また、全従業員の平均賃金を活用した海外研究とは異なり、より実態に即した分析を

行うため、総報酬月額を活用して個別賃金に近いコスト計算をしている。

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(3)プレゼンティーズムによる損失コストの算出

労働生産性に関するコストの可視化には、プレゼンティーズムの測定が必要となる。

プレゼンティーズムとは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や

労働生産性が低下している状態である。東大では測定方法として「WHO-HPQ スケ

ール」の 3 項目を使用し検証・検討を開始している。

スケールの評価方法の分析への活用は東大でも検討中であるが、今回の分析では分

析の目的に合わせて「絶対的プレゼンティーズム」と「相対的プレゼンティーズム」

を使い分けている。健康リスクとの相関分析においては「絶対的プレゼンティーズム」

を、損失コストを計算する場合には「相対的プレゼンティーズム」を使用した。

<WHO-HPQ スケール>

◆WHO-HPQ スケールの 3 項目

WHO Health and Work Performance Questionnaire (short form) Japanese edition

(WHO 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(短縮版)日本語版

http://www.hcp.med.harvard.edu/hpq/info.php)

(HPQ Short Form (Absenteeism and Presenteeism Questions and Scoring Rules

http://www.hcp.med.harvard.edu/hpq/ftpdir/absenteeism%20presenteeism%20scoring%20050107.pdf)

【問 B9】0 があなたの仕事において誰でも達成できるような仕事のパフォーマンス、10 がもっ

とも優れた勤務者のパフォーマンスとした 0 から 10 までの尺度上で、あなたの仕事と似た仕事

において多くの勤務者の普段のパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?

【問 B10】 同じ 0 から 10 までの尺度上で、過去 1-2 年のあなたの普段のパフォーマンスをあ

なたはどのように評価しますか?

【問 B11】同じ 0 から 10 までの尺度上で、過去 4 週間(28 日間)の間のあなたの勤務日における

あなたの総合的なパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?

<WHO-HPQ の評価方法>

① 絶対的プレゼンティーズム(Absolute presenteeism)

・絶対的プレゼンティーズム=問 B11*10 (範囲=0-100%)

② 相対的プレゼンティーズム(Relative presenteeism)

・相対的プレゼンティーズム=問 B11/問 B9 (範囲=0.25-2.0)

※0.25>は 0.25 に、2.0<は 2.0 にレンジ修正

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<評価スケールの説明>

プレゼンティーズムの定量評価について、現時点においては国内では学術的に確立し

たものは存在しないためコストの算出が難しい状況である。一方、海外においては、図

表 26 に示すとおりいくつかの先行研究がある。東大において主に使われている HPQ

は設問数が少なく分かりやすいことから、最も実用的な選択肢と考えられる。

図表 9 プレゼンティーズムの評価スケール例

事例 評価に関する設問項目例

WLQ

(Work Limitations

Questionnaire)

○過去 2 週間において、あなたの身体健康や精神的問題は、以下の作業を

行うことのどのくらいの時間、困難にしましたか

・休憩や休養を取らずに仕事をし続けること

・ルーティンやスケジュール通りに仕事を行うこと

・仕事に集中すること

・人に直接会ったり、会議や電話で話したりすること

・仕事量を管理すること など

HPQ

(Health and Work

Performance

Questionnaire)

○過去 4 週間の自分の仕事のパフォーマンスをどのくらい評価しますか(範

囲:0~10、0:最低のパフォーマンス、10:最高のパフォーマンス)

○あなたのいつもの仕事のパフォーマンスは、同じような仕事をしている

多くの人と比べてどのくらいですか(範囲:0~10)。

SPS

(Stanford

Presentism Scale)

○過去 4 週間において、あなたの健康状態で仕事にどのくらいのパフォー

マンス達成レベルが可能であったか自己評価してください(%)。

※プレゼンティーズム低下による損失コストは、「プレゼンティーズム損失割合×賃金」

が考えられる。

※アブセンティーズムによる損失コストは、「欠勤×賃金」が考えられる。

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17

3.3 健康リスクの評価手法

(1)概要

東大の研究によれば、健康関連コストのうち、労働生産性(プレゼンティーズムやア

ブセンティーズム)と生活習慣や身体データの健康リスクとなる項目の間に一定の相関

があることを示す研究蓄積がある。海外の研究においては、健康リスク項目が 1 つ増え

るごとに労働生産性が有意に悪化していることが明らかにされている。

また、医療費については、健康リスクとの関連があることは日本における研究でも証

明されているが、労働生産性との関係については明らかにされていない。今回は、東大

が研究を開始している健康リスク評価指標を活用してコストとリスクの関係を分析す

ることとした。

図表 10 健康関連コストと健康リスクの相関

生活習慣健診(身体)データ

医療費、長期・短期障害コスト労働生産性コスト

健康関連コスト

健康リスク

資料元:東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット資料より

図表 11 アウトカム評価と介入の考え方

職場環境

医療費

長期障害短期障害

アブセン

ティーズ

プレゼン

ティーイズ

ム健康経営

中リスク

低リスク

介入

職場環境

中リスク

低リスク

関連

②健康リスク評価

①健康関連総コスト

【2014年度】 【2015~2017年度】

現状把握・ベンチマーク

効果測定・評価

経年変化のモニタリング

資料元:東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット資料より

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18

(2)健康リスク評価に着目した分析手法

実際に健康施策のPDCAを回す際において、最終アウトカムの設定だけでは、短期

間における変化を見ることができないこと、医療費や労働生産性は多くの因子が関係す

る指標であることから、課題の明確化が難しいと考えられる。したがって、最終アウト

カムに係わると思われる中間アウトカム指標を確立し、それを活用することで、介入施

策を検討することが望ましい。

中間アウトカムとしては、健康リスク評価の指標が考えられる。具体的には、生活習

慣(喫煙、運動、アルコール、睡眠、食事)、身体データ(血圧、BMI、HDL・LDL

コレステロール値、中性脂肪、血糖値、既往歴)、心理的データ(ストレス、健康意識、

生活満足度)が挙げられる。

日本の企業においては、本分析で活用する、生活習慣(喫煙、運動、アルコール、睡

眠、食事)、身体データ(血圧、BMI、HDL・LDL コレステロール値、中性脂肪、血

糖値、既往歴)、心理的データ(ストレス、健康意識、生活満足度)のほとんどの項目

が、企業における定期健診・特定健診およびストレスチェックによって取得できる環境

にある。

図表 12 健康リスク評価

高リスク

中リスク

低リスク

喫煙の有無

運動

生活習慣リスク 身体的リスク 精神的リスク

アルコール

食事

血圧・体重

コレステロール・HDL

既往歴

病気による欠席

健康観

生活・労働満足度

ストレス

集団のリスク評価(リスクランク人数分布) 個人の健康リスク評価(10~12項目)

資料元:東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット資料より

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19

(3)健康リスク評価に着目した分析手法

海外の先行研究では、健康リスクの該当数により健康リスクレベルを低・中・高リス

クに区分し、従業員の各リスク割合をベンチマークする手法も報告されている。(ミシ

ガン大学 HMRC)

個人および組織・集団全体の健康リスク評価を行うことで健康問題を可視化し、有効

な介入につなげることが可能となる。蓄積されたデータを、企業や保険者等、各組織の

現状分析により問題を明確化する手法である。

企業の健康施策においては、健康リスクの構造を可視化し、個人のリスクレベル間の

移動などに着目しながらターゲットを明確化することで有効な介入につなげることが

可能となると考えられる。

図表 13 健康リスク評価

中リスク

低リスク

資料元:東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット資料より

3.4 疾病リスク評価の方法

海外の先行研究によれば、医療費(医療費+薬剤費)の大きい疾病と労働生産性低下

によるコストの大きい疾病は順位が異なるとされている。そのため、医療費のみで考え

るか、労働生産性まで含めて考えるかによって、健康施策のターゲットとなる疾患が異

なってくる可能性がある。

今回は、健康保険組合が活用できるレセプト情報を活用し、疾病とプレゼンティー

ズム損失割合の増加の関係を分析することとした。

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20

4.健康関連コストと健康リスクの分析結果

4.1 分析対象とその属性

(1)対象

本事業の分析対象は、主たる事業所における 2014 年度 4 月 1 日時点在籍の被保険者

とし、分析データとしては、対象者の 2013 年度の健診データ・レセプトデータおよび

2014 年度実施の追加アンケート調査を利用している。したがって、2013 年分健診デー

タのない2014年4月以降に入社した被保険者を除外した16,502件を分析対象とした。

(2)属性

○ 平均年齢は 41.34 歳で、25~29 歳の年齢階級が最も多い。

○ 男女別に年齢分布が異なっている。

図表 14 平均年齢

度数 平均 標準偏差 最小値 最大値年齢(歳) 16502 41.34 11.75 21 71

平均 標準偏差性別 .000

男性 8652 52.4% 46.52 10.71

女性 7850 47.6% 35.64 10.10

2013年度受診 .464あり 15490 93.9% 41.33 11.80なし 1012 6.1% 41.61 11.01

n= 16502 度数 割合平均年齢(歳)

p値

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21

4.2 健康関連コストに関する項目

(1)健康関連コストの比率

健康関連の損失をコスト換算し、比率を確認した。プレゼンティーズム損失によるコ

ストについては、相対的プレゼンティーズム(3.2(3)参照)を使用して算出した。

図表 15 に示す通り、本分析においても、海外の先行研究と同じく、医療費に比して

プレゼンティーズム損失によるコストの割合が大きくなっており、プレゼンティーズム

向上の対策に意義がある、という可能性が示唆された。

図表 15 健康関連総コスト(相対的プレゼンティーズム)

※健康関連総コストには、傷病手当金、労災給付金を含むがその割合は小さい。

(2)アブセンティーズムの状況

○ アブセンティーズムとしては、有休休暇を除いた欠勤日数をカウントした。欠勤日

数は、便宜的に 10 日間刻みの 12 ランクにカテゴリ化し、各カテゴリの中央値を用

いた。(最小値は 0 とし、5.5、10.5…95.5、最大値を 101 とした。)その結果、

アブセンティーズム平均日数は 1.15 日であった。

図表 16 アブセンティーズム平均日数

度数 平均 標準偏差 最小値 最大値16502 1.15 9.60 0 101

相対的プレゼンティーズム

医療費 アブセンティーズム(欠勤コスト)

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(3)プレゼンティーズム損失の状況

○ プレゼンティーズム損失割合として、健康リスク等との関連を把握する場合には、

自己評価である絶対的プレゼンティーズム損失割合(100%-絶対的プレゼンティ

ーズム)を活用して検討することとした。

○ プレゼンティーズム損失割合の分布は、図表 17 の通りである。損失割合の平均値

は 39.2%であり、海外先行研究における 20~25%よりは高い値となっている。一

方で、比較可能な数は少ないが、日本における先行調査では損失割合が 40~50%

程度と高く、それと比較し当社は損失が少ない状況である。

○ プレゼンティーズムの評価は、「この 4 週間のパフォーマンスを 0~10 までのレン

ジで評価(自己評価)」するものである。したがって、仕事に関するセルフエフィ

カシーなどのバイアスが含まれると考えられるが、損失割合が 50%以上の対象者

が存在することも明らかとなっており、これらの対象者に対する詳細分析・介入検

討の必要性が示されたものと考えられる。

図表 17 プレゼンティーズム損失割合度数分布

116

468

1993

3370

2574 2677

856662

23498 58

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

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○ 男女別で見ると、プレゼンティーズム損失割合は女性の方が大きくなっている。こ

れは、女性特有の体調不良が影響している可能性もある。

○ 年齢別で見ると、男性、女性とも年齢が上がるごとにプレゼンティーズム損失割合

が低くなり、仕事への自信などが影響していることが考えられる。

図表 18 男女別絶対的プレゼンティーズム該当割合

1.3%

4.8%

19.1%

29.4%

19.3%

16.2%

4.7%3.5%

1.2% 0.4% 0.2%0.5%2.4%

11.4%

22.1%20.0%

24.6%

8.4%6.5%

2.4% 1.1% 0.7%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0

該当割合(%)

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

男性

女性

図表 19 年齢階級別平均絶対的プレゼンティーズム損失割合

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

50.0(%) 男性 女性

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属性および健康関連コストの分布から

健康関連コストのうち、プレゼンティーズム損失によるコストは医療費に比

して大きく出ており、プレゼンティーズム損失を小さくするための対策の重

要性が示されている米国の事例と同様の傾向が確認された。

プレゼンティーズム損失が生じている層が存在することが明らかとなった

ことからも、プレゼンティーズムに着目した分析・対策検討に意義があると

考えられる。

なお、本分析においては、性別によって、属性および健康関連コストの傾向

が違うことが明らかとなったため、詳細分析(健康コストと関連する健康リ

スク等の分析)は男女別で実施することとした。

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4.3 健康リスクと疾病の分析から導かれる対策の方向性(男性)

(1)健康リスク評価と健康関連コストとの関係

○ 健康関連コストと相関があると思われる健康リスクの評価をしたところ、生物学的

リスクにおいては肥満(リスクあり 44.8%)についてリスクありに該当する対象者

が多かった。

○ また、生活習慣リスクでは、運動(リスクあり 75.6%)でリスクありに該当する対

象者が数多く存在する。

図表 20 男性;健康リスク評価項目の該当割合

リスクあり リスクなし割合% 割合%

生物学的(Biological)リスク

血圧 32.4% 67.6%

血中脂質 29.2% 70.8%

肥満 44.8% 55.2%

血糖値 14.3% 85.7%

既往歴 4.6% 95.4%

生活習慣(Lifestyle)リスク

喫煙習慣 26.2% 73.8%

飲酒習慣 18.5% 81.5%

運動習慣 75.6% 24.4%

睡眠で十分休養が取れている 32.4% 67.6%

心理的(Psychological)リスク

生活満足度 9.0% 91.0%

仕事満足度 18.2% 81.8%

ストレス 9.2% 90.8%注)割合は無回答を除いて算出.

注)リスク基準は、メタボリックシンドローム判定基準(8学会策定新基準2005年4月)、日本循環器学会等の禁煙治療基準(第6版2014年4月)等により設定.注)ストレスは、「職業性ストレス簡易調査表」の簡易採点法による心理的・身体的ストレス反応の要チェックの該当の有無を用いた。

(男性) 健康リスク評価項目男性職員

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○ 健康リスク数は平均 2.98 個、2 個に該当する対象者が 22.9%と多い。該当数 5 個

以上の対象者も 20%近く存在する。

図表 21 男性;年齢階級別健康リスク該当数

n 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10100% 5.3% 15.5% 22.9% 21.1% 16.1% 10.6% 5.2% 2.4% 0.7% 0.2% 0.0%

年齢階級20-24歳 100% 16.7% 28.8% 35.6% 9.8% 5.3% 2.3% 0.8% 0.8% 0.0% 0.0% 0.0%25-29歳 100% 11.1% 29.1% 29.1% 18.1% 7.3% 3.6% 1.1% 0.5% 0.2% 0.0% 0.0%30-34歳 100% 7.4% 24.5% 28.0% 21.0% 10.9% 5.7% 1.7% 0.3% 0.3% 0.2% 0.0%35-39歳 100% 7.2% 19.5% 28.1% 19.2% 15.3% 6.1% 2.8% 1.3% 0.4% 0.1% 0.0%40-44歳 100% 4.1% 16.5% 25.5% 20.8% 16.1% 9.9% 4.9% 1.9% 0.2% 0.1% 0.0%45-49歳 100% 5.2% 14.3% 22.6% 22.8% 15.9% 11.2% 5.0% 2.3% 0.5% 0.2% 0.1%50-54歳 100% 4.0% 11.9% 19.3% 21.1% 19.6% 12.8% 7.2% 2.8% 1.0% 0.2% 0.0%55-59歳 100% 1.9% 8.4% 19.1% 22.3% 19.3% 15.6% 7.9% 4.1% 1.0% 0.5% 0.2%60-64歳 100% 4.9% 11.2% 16.8% 21.7% 19.1% 13.2% 7.0% 4.2% 1.4% 0.5% 0.0%

健康リスク数男性

図表 22 男性;健康リスク該当割合

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

健康リスク該当割合(%)

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27

○ 健康リスクの数が多くなるほど、プレゼンティーズム損失割合および医療費は大き

くなることがわかった。アブセンティーズムについては、リスク数との相関は見ら

れなかった。

図表 23 男性;健康リスク該当数別医療費・アブセンティーズム・プレゼンティーズム

リスク数(0-12)

0 5.3% 66.01 ± 15.57 0.94 ± 9.50 84,751 ± 271,7251 15.5% 66.35 ± 14.80 0.75 ± 7.77 98,030 ± 318,2202 22.9% 65.19 ± 14.59 0.52 ± 6.59 101,684 ± 241,9553 21.1% 64.68 ± 15.55 0.56 ± 5.93 134,569 ± 316,4904 16.1% 64.61 ± 16.08 0.63 ± 7.05 156,785 ± 388,8215 10.6% 62.98 ± 16.03 0.93 ± 7.82 223,323 ± 578,5876 5.2% 59.80 ± 19.79 2.01 ± 11.72 242,947 ± 502,5677 2.4% 57.50 ± 19.00 0.84 ± 8.06 247,109 ± 352,7498 0.7% 57.17 ± 17.80 0.00 ± 0.00 441,533 ± 1,041,3689 0.2% 44.50 ± 19.59 8.33 ± 26.26 311,525 ± 271,404計 100.0% 64.31 ± 15.93 0.75 ± 7.51 142,641 ± 374,489

絶対的プレゼンティーイズム割合(%)±SD

アブセンティーイズム(欠勤)日数(日)±SD

医療費平均(円)±SD

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

図表 24 男性;健康リスク該当数とプレゼンティーズム損失割合

33.99 33.6534.81 35.32 35.39

37.02

40.20

42.50 42.83

55.50

30

35

40

45

50

55

60

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

プレゼンティーイズム損失割合(%)

健康リスク該当数

図表 25 男性;健康リスク該当数別平均医療費

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

平均医療費(円)

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28

(2)健康リスクの各項目と健康関連コストとの関係

○ 健康リスク項目別に健康関連コストの 3 項目(プレゼンティーズム、アブセンティ

ーズム、医療費)との関係を分析した。

○ 男性のプレゼンティーズム損失との関係では、生活習慣リスク(喫煙、運動、睡眠)

および心理的リスク全般の項目がリスクありとなっている群はプレゼンティーズ

ム損失割合が有意に大きくなっていた。生物学的リスク(血圧・血糖値)は、リス

ク「あり」の群はプレゼンティーズム損失割合が小さくなっているが、これは年齢

による影響であるといえる。

○ アブセンティーズム(欠勤日数)については、生物学的リスク(血圧、肥満、既往

歴)および、生活習慣リスク(運動)および、心理的リスク(生活満足度)でリス

クありの群では有意に大きくなっている。

○ 医療費については、生物学的リスク全般および生活習慣リスク(アルコール)およ

び、心理的リスク(仕事満足度、ストレス)でリスクありの群で有意に高くなって

いる。

図表 26 男性;健康リスク項目該当の有無別 健康コスト項目の大きさ

血圧 血中脂質 肥満 血糖値 健康問題既往歴

平均値 平均値 平均値 平均値 平均値

リスクあり 34.47 35.35 35.27 34.18 36.06

リスクなし 36.24 35.80 35.99 35.94 35.59

リスクあり 1.10 0.85 0.92 1.05 2.08

リスクなし 0.53 0.66 0.55 0.66 0.64

リスクあり 211,806 189,638 173,894 273,445 448,758

リスクなし 109,371 123,145 117,071 120,761 131,111

喫煙 アルコール摂取 運動習慣 睡眠休養

平均値 平均値 平均値 平均値リスクあり 36.89 35.19 36.13 37.77

リスクなし 35.20 35.63 33.89 34.60

リスクあり 0.80 0.78 0.78 0.64

リスクなし 0.67 0.66 0.45 0.71

リスクあり 137,530 156,859 144,935 146,523

リスクなし 146,735 134,059 147,837 144,071

生活満足度 仕事満足度 ストレス 心理的ストレス 身体的ストレス

平均値 平均値 平均値 平均値 平均値リスクあり 42.66 45.64 44.57 50.27 42.63

リスクなし 35.00 33.48 34.79 35.08 35.14

リスクあり 0.81 0.77 0.94 0.48 1.18

リスクなし 0.54 0.52 0.53 0.57 0.52

リスクあり 133,456 171,463 166,950 169,606 175,091

リスクなし 138,487 130,614 135,109 136,709 135,105

※色付セルは平均値に有意差(5%水準)のあった項目「リスクあり」が損失大きい「リスクなし」が損失大きい

生物学的リスク

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

アブセンティーイズム(欠勤日数)

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

アブセンティーイズム(欠勤日数)

医療費(円)

生活習慣リスク

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

アブセンティーイズム(欠勤日数)

医療費(円)

医療費(円)

心理的リスク

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

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29

○ 年齢調整をした上で、健康リスク項目と健康関連コスト項目の相関関係を見てみる

と、プレゼンティーズムとの相関が見られるのは、生活習慣リスクのうち、喫煙習

慣、運動習慣、睡眠、心理的リスクの全項目である。

○ アブセンティーズムと相関があるのは生物学的リスクのうち、血圧と肥満、既往症、

生活習慣リスクのうち運動習慣である。

○ 医療費と相関が高いのは生物学的リスクの各項目、心理的リスク(仕事満足度、ス

トレス)となる。単年度の医療費と生活習慣リスクには相関が見られない。

図表 27 男性;健康リスク評価項目と医療費・アブセンティーズム・プレゼンティーズムの偏相関

分析

リスクあり割合% r p r p r p

生物学的(Biological)リスク血圧 32.4% .003 .788 .033 .002 .084 .000血中脂質 29.2% -.015 .234 .009 .419 .055 .000肥満 44.8% -.006 .637 .023 .034 .049 .000血糖値 14.3% -.010 .410 .014 .189 .099 .000既往歴 4.6% -.026 .038 .040 .000 .159 .000

生活習慣(Lifestyle)リスク喫煙習慣 26.2% -.052 .000 .007 .498 -.015 .164飲酒習慣 18.5% -.009 .494 .005 .674 .006 .635運動習慣:一回30分以上の軽く汗をかく運動週2日以上、1年以上

75.6% -.045 .000 .022 .049 .014 .213

睡眠で十分休養が取れている 32.4% -.084 .000 -.003 .766 .013 .244心理的(Psychological)リスク

生活満足度 9.0% -.132 .000 .012 .316 .003 .784仕事満足度 18.2% -.317 .000 .013 .299 .031 .013ストレス 9.2% -.179 .000 .018 .141 .028 .023注)割合は無回答を除いて算出.

注)偏相関分析は、年齢で調整した。

(男性) 健康リスク評価項目男性職員

絶対的プレゼンティーイズム

アブセンティーイズム 医療費

偏相関 偏相関 偏相関

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30

○ プレゼンティーズム損失割合はストレス関連の項目との相関が強いことが明らか

になったため、支援項目(家族等の支援:職業性ストレス簡易調査表の「家族や友

人からのサポート」の項目を活用)に関する詳細分析を実施した。

○ 家族等の支援の平均得点(範囲 3~12 点)は、男性 4.84 点、女性 4.78 点であり男

女差はなかった。家族等の支援についてリスクあり(支援が足りていない)の対象

者については、プレゼンティーズムの損失が有意に大きくなっていた。

○ 今後、心理的リスクの改善に向けた取組み(介入)として、家族等の支援に着目し

た施策を検討することも考えられる。

図表 28 家族等の支援の平均得点

平均 標準偏差

全体 13106 4.81 ± 1.91性別

男性 6495 4.84 ± 1.93 .105女性 6611 4.78 ± 1.89

平均得点(範囲3-12)N

p値

図表 29 男性;家族等の支援リスクの有無別平均医療費と生産性

平均 標準偏差 p値 平均 標準偏差 p値 平均 標準偏差 p値137,710 ± 305,588 .984 42.19 ± 17.82 .000 0.48 ± 5.87 .790138,057 ± 338,821 35.26 ± 15.71 0.57 ± 6.50

家族の支援リスク9点以上

医療費 絶対的プレゼンティーイズム アブセンティーイズム

男性リスクあり

リスクなし

健康リスク評価と健康関連コストの関係

プレゼンティーズムコストについては、喫煙習慣、運動習慣、睡眠習慣の改

善、および心理的リスク全般の改善により小さくなる可能性がある。

アブセンティーズムコストについて血圧、肥満、運動習慣を改善することに

よる影響を検討する必要がある。

医療費については生物学的リスクと相関があり、生物学的リスク(血圧、肥

満等)を改善することで医療費が小さくなる可能性がある。

心理的リスク改善の介入として、家族等の支援について検討することも考え

られる。

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31

(3)健康リスクランクと健康関連コストとの相関

○ 先行研究を参考に、当社のリスク数分布から対象者をリスク数によって3ランクに

分類した。低リスクは 0~2 個該当した場合、中リスクは 3~4 個該当した場合、高

リスクは 5 個以上該当した場合となる。

○ 年齢階級別で各ランクの分布を見ると、年齢が上がるにつれて高リスク対象者が多

くなっていることがわかる。

図表 30 男性;健康リスク評価のランク別分布

リスク数(0-12)

男性(%)

低リスク 43.7% 43.55 ± 11.13

中リスク 37.2% 47.90 ± 10.05

高リスク 19.1% 50.70 ± 8.90

計 100% 46.53 ± 10.71平均リスク数, 平均±標準偏差 2.98 ± 1.74注)健康リスク評価:低リスク0-2個、中リスク3-4個、高リスク5個以上。

平均年齢b,年齢(歳)±標準偏差

図表 31 男性;年齢階層別健康リスク評価

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 50-54歳 55-59歳 60-64歳 65-69歳

81.1%69.3%

59.9% 54.8%46.1% 42.1%

35.2% 29.3% 32.9%40.0%

15.2%25.4%

31.9%34.5%

36.9% 38.6%40.7%

41.5%40.7%

40.0%

3.8% 5.3% 8.2% 10.7%17.0% 19.3% 24.0% 29.1% 26.3%

20.0%

高リスク

中リスク

低リスク

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

男性

43.7%

37.2%

19.1%

高リスク

中リスク

低リスク

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32

図表 32 男性;健康リスクランクと平均健康関連コスト

注)プレゼンティーズムコストは相対的プレゼンティーズムコスト。アブセンティーズムコストは

欠勤コスト。

1.00

1.47

2.45

1.00

1.09

1.35

1.00

0.96

1.60

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

低リスク

中リスク

高リスク

医療費 プレゼンティーズムコスト アブセンティーズムコスト

1.00

1.14

コスト比1.51

健康関連コストと健康リスクのランク

年齢が上がると高リスクの割合が高くなっている。

高リスク者は低リスク者に比べ、健康関連コストが大きくなることが示唆さ

れた。(1.51倍)

集団の健康リスクのランク分布を改善することで、企業の健康管理関連コス

トが少なくなる可能性がある。

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33

(4)疾病と健康関連コストとの相関

○ 2013 年度に 19 傷病分類の疾病があった群となかった群に分け、健康コスト関連項

目のうち、プレゼンティーズムとアブセンティーズムとの関係を分析した。

○ 男性においては、疾患があることで有意にプレゼンティーズムが大きかったのは

「精神及び行動の障害」の分類だけであった。

○ アブセンティーズムについては、「眼および附属器の疾患」「耳および乳様突起の

疾患」「呼吸器系の疾患」「皮膚および皮下組織の疾患」など 6 分類を除いた分類

について有意に相関があった。

○ 医療費については、すべての項目で相関があった。(表からは割愛)

図表 33 男性;19 傷病分類の疾病有無別 健康コスト項目の大きさ ※色付セルは平均値に有意差(5%水準)のあった項目 リスクありが損失大きい リスクありが損失小さい

1_感染症及び寄生虫症

2_新生物 3_血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害

4_内分泌,栄養及び代謝疾患

5_精神及び行動の障害

絶対的プレゼンティーイズム あり 35.54 33.49 33.68 33.92 38.08 35.19 35.82 34.09 33.88 35.33

損失割合(%)    (n=6495) なし 35.74 35.84 35.74 36.35 35.52 35.75 35.62 35.80 36.24 36.10

アブセンティーイズム あり 1.24 2.97 3.99 1.71 8.32 4.58 0.88 1.61 1.98 1.00

(欠勤日数)(日)  (n=8652) なし 0.74 0.72 0.78 0.54 0.32 0.36 0.85 0.81 0.52 0.69

絶対的プレゼンティーイズム あり 35.10 34.90 34.69 34.70 33.08 34.77 35.24 34.67 33.82

損失割合(%)    (n=6495) なし 36.08 35.92 36.02 35.78 35.69 35.69 35.72 35.89 35.74 36.58 35.72

アブセンティーイズム あり 1.55 1.16 1.63 1.95 2.96 1.93 1.51 1.18 2.24

(欠勤日数)(日)  (n=8652) なし 0.41 0.77 0.61 0.76 0.86 0.86 0.83 0.62 0.78 0.57 0.84

19_損傷,中毒及びその他の外因の影

71_歯科 99_その他14_腎尿路生殖器系の疾患

15_妊娠,分娩及び産じょく

16_周産期に発生した

病態

17_先天奇形,変形及び染色体

異常

18_症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見

男性 病名

11_消化器系の疾患

12_皮膚及び皮下組織の疾患

13_筋骨格系及び結合組織の

疾患

9_循環器系の疾患

10_呼吸器系の疾患

6_神経系の疾患

7_眼及び付属器の

疾患

8_耳及び乳様突起の疾患男性 病名

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

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34

○ 2013 年度に ICD10 の 3 桁レベルの病名の有無別で群分けし、健康コスト関連項目

のうち、プレゼンティーズムとアブセンティーズムとの関係を分析した。

○ プレゼンティーズム損失との相関があったのは「うつ病エピソード」のみであった。

○ また、いくつかの疾病で、リスクあり群のプレゼンティーズム損失割合が有意に小

さくなっていたが、これは年齢が高い人がリスクあり群に偏ったことにより、年齢

が高いほどプレゼンティーズム損失割合が小さいことの影響を受けた結果と考え

られる。

図表 34 男性;ICD10 上位 55 疾病の有無別 健康コスト項目の大きさ

※色付セルは平均値に有意差(5%水準)のあった項目 リスクありが損失大きい リスクありが損失小さい

絶対的プレゼンティーイズム あり 34.67 36.05 35.35 35.36 35.33 35.39 33.94 33.72 35.61 35.43損失割合(%)    (n=6495) なし 36.58 35.56 35.81 35.80 35.80 35.76 36.09 36.10 35.70 35.73アブセンティーイズム あり 1.18 0.77 0.90 1.24 1.37 0.63 1.32 2.22 1.15 1.21(欠勤日数)(日)  (n=8652) なり 0.57 0.89 0.84 0.73 0.71 0.91 0.75 0.58 0.81 0.81

絶対的プレゼンティーイズム あり 35.99 33.94 34.15 33.32 34.65 35.53 32.73 34.90 36.03 34.18

損失割合(%)    (n=6495) なし 35.65 35.88 35.84 35.90 35.78 35.70 35.94 35.75 35.66 35.80

アブセンティーイズム あり 1.26 1.40 2.85 2.09 2.33 2.67 2.13 0.80 0.86 2.26

(欠勤日数)(日)  (n=8652) なし 0.81 0.80 0.67 0.74 0.73 0.70 0.75 0.86 0.86 0.75

絶対的プレゼンティーイズム あり 35.32 34.09 35.64 35.33 34.52 33.89 34.08 34.81 34.76 35.08

損失割合(%)    (n=6495) なし 35.71 35.80 35.69 35.71 35.75 35.78 35.77 35.73 35.73 35.72

アブセンティーイズム あり 7.22 2.07 0.67 0.54 1.17 1.58 0.50 0.46 2.29 1.33

(欠勤日数)(日)  (n=8652) なし 0.42 0.78 0.87 0.88 0.84 0.82 0.88 0.88 0.79 0.84

絶対的プレゼンティーイズム あり 34.74 35.47 35.96 34.58 33.71 34.13 31.67 32.86 34.04 36.30

損失割合(%)    (n=6495) なし 35.73 35.70 35.68 35.73 35.75 35.74 35.81 35.77 35.74 35.67

アブセンティーイズム あり 0.80 0.28 0.70 3.10 2.25 5.79 1.27 3.11 1.69 1.10

(欠勤日数)(日)  (n=8652) なし 0.86 0.88 0.86 0.78 0.81 0.70 0.85 0.79 0.83 0.85

絶対的プレゼンティーイズム あり 35.82 37.59 34.94 33.61 40.32 35.26 37.32 34.10 33.85 36.95

損失割合(%)    (n=6495) なし 35.69 35.64 35.71 35.75 35.58 35.70 35.65 35.73 35.73 35.66

アブセンティーイズム あり 1.24 3.61 1.69 1.65 17.00 0.07 2.15 0.86 3.31 4.79

(欠勤日数)(日)  (n=8652) なし 0.85 0.78 0.84 0.84 0.41 0.88 0.83 0.86 0.80 0.77

病名男性

病名男性

31

41

27 28 29 30G47_睡眠

障害H40_緑内

21 22 23 24 25 26

M54_背部痛

K25_胃潰瘍

E14_詳細不明の糖

尿病

J45_喘息 J03_急性扁桃炎

K76_その他の肝疾

17 18 19 20

男性 病名

A09_感染症と推定される下痢及び胃腸

L30_その他の皮膚

K21_胃食道逆流症

E79_プリン及びピリミジン代謝

障害

11 12 13 14 15 16

K29_胃炎及び十二指腸炎

J20_急性気管支炎

E78_リポたんぱく<蛋白>代謝障害及びその他

I10_本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)

J02_急性咽頭炎

H10_結膜炎

7 8 9 10

男性 病名

DEN_歯科 H52_屈折及び調節の障害

J06_多部位及び部位不明の急性上気道感染症

J30_血管運動性鼻炎及びアレルギー性鼻炎<

鼻ア

1 2 3 4 5 6

F32_うつ病エピソー

L20_アトピー性皮

膚炎

I20_狭心症

H53_視覚障害

M79_その他の軟部組織障害,他に分類され

R11_悪心及び嘔吐

47 48 49 50

男性 病名

E86_体液量減少(症)

M51_その他の椎間板障害

L50_じんま<蕁麻>

M75_肩の傷害<損

傷>

M10_痛風 E11_インスリン非依存性糖尿病<NIDDM>

K63_腸のその他の

疾患

J11_インフルエンザ,インフルエンザウイルスが

42 43 44 45 46

39 40T14_部位不明の損

J10_インフルエンザウイルスが分離さ

れたインフ

A49_部位不明の細菌感染症

R51_頭痛 G62_その他の多発

(性)ニューロパ

チ<シ>ー

K59_その他の腸の機能障害

M47_脊椎症

H16_角膜炎

32 33 34 35 36 37 38

J00_急性鼻咽頭炎[かぜ]<感冒>

J40_気管支炎,急性又は慢性と明示されないも

B35_皮膚糸状菌症

L85_その他の表皮

肥厚

J32_慢性副鼻腔炎

J01_急性副鼻腔炎

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

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35

○ 2013 年度において、19傷病分類の疾病名があった集団別に、健康関連コストを比

較検討した。(複数病名を有する対象者は、病名のついたすべての集団の一員とな

っている。)

○ プレゼンティーズム損失コストについては、疾患名によって大きく変わることはな

いが、「精神及び行動の障害」に該当する場合が一番大きくなっている。

図表 35 男性;19 傷病分類別の平均プレゼンティーズムコスト(複数回答)

注)最も低い傷病のコストを 1.00とした場合の比で表示。

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

その他

Ⅱ 新生物

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

歯科

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅹ 呼吸器系の疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

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○ アブセンティーズムコストについては、「精神及び行動の障害」に該当する場合が

他に比してかなり大きくなっている。

図表 36 男性;19 傷病分類別の平均アブセンティーズムコスト(複数回答)

注)最も低い傷病のコストを 1.00とした場合の比で表示。

0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00

Ⅹ 呼吸器系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

歯科

ⅩⅡ皮膚及び皮下組織の疾患

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

ⅩⅨ損傷,中毒及びその他の外因の影響

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

ⅩⅠ消化器系の疾患

ⅩⅢ筋骨格系及び結合組織の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

ⅩⅧ他に分類されないもの

その他

ⅩⅣ腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅦ先天奇形,変形及び染色体異常

Ⅱ 新生物

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅴ 精神及び行動の障害

○ 医療費については、「新生物」と病名がついた対象者が圧倒的に高い値となってい

る。

図表 37 男性;19 傷病分類別の平均医療費

注)最も低い傷病のコストを 1.00とした場合の比で表示。

0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅧ 他に分類されないもの

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

その他

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

歯科

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅱ 新生物

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37

○ 19 傷病分類を罹患率(x 軸)と健康関連コストの平均(y 軸)でマッピングするこ

とにより、各コストを改善するための対策を検討した。

図表 38 男性;19 傷病分類別の健康関連コストと罹患率の関係

傷病

支障大きい罹患率高い

支障小さい罹患率高い

支障大きい罹患率低い

支障小さい罹患率低い

健康関連コスト(大)

罹患率(大)

健康関連コスト(小)

罹患率(小)

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○ プレゼンティーズムコストが大きく、罹患率も高い疾病は、「呼吸器系の疾患」「眼

および付属器の疾患」「消化器系の疾患」などである。呼吸器系については、風邪、

インフルエンザ等の感染性疾患からアレルギーによる鼻炎や喘息が含まれており、

発症予防・重症化予防の対策等が考えられ、対策によるコストへの影響を今後分析

していくことが考えられる。

図表 39 男性;19 傷病分類の平均プレゼンティーズムコストと罹患状況

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅱ 新生物

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

歯科

プレゼンティーイズムコスト

罹患率 低 罹患率 高

医療費 低

医療費 高

○ アブセンティーズムについては、コスト、罹患率共に高い疾病は見当たらない。罹

患するとコストの高い「精神及び行動の障害への対応が考えられる。

図表 40 男性;19 傷病分類の平均アブセンティーズムコストと罹患状況

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅱ 新生物

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

歯科

アブセンティーイズムコスト

罹患率 低 罹患率 高

医療費 低

医療費 高

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39

○ 医療費については、コストおよび罹患率が共に高い疾病は見当たらないが、「新生物」

についは罹患した場合のコストが高いため、なにかしらの対処が考えられる。

図表 41 男性;19 傷病分類の平均医療費と罹患状況

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅱ 新生物

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響歯科

医療費

罹患率 低 罹患率 高

医療費 低

医療費 高

健康関連コストと疾病

疾患と労働生産性(プレゼンティーズム、アブセンティーズム)の相関を考

えると、罹患率は低いがコストの大きい「精神および行動の障害」への予防

が重要である可能性が高い。

また、医療費のみでは罹患率の割にコストが大きくないため着目しなかった

「呼吸器系の疾患」「眼および付属器の疾患」「消化器系の疾患」について

もプレゼンティーズムコストの縮小の観点では対策の候補となりうる。

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40

(5)男性の健康関連コスト縮小対策の方向性

○ 企業の健康関連コストに占める割合が大きく、単年度での効果がありそうなプレゼ

ンティーズムコストに着目し、特に生活習慣改善の介入を実施し、コストへの影響

を検討する。

○ プレゼンティーズムとストレス項目の関係については、今後、経年データを取得し、

ストレスリスクの変化によるプレゼンティーズムの変化について分析・検討を行な

い、ストレスリスクの改善がプレゼンティーズムに影響するか検討する。

○ また、家族・友人の支援との関係については、介入効果の検証を試行する。

○ 疾病との関係についてはメンタル関連疾患への対処が主なものとなるため、来年度

ストレスリスクの検討結果をみて検討の方向性を検討する。

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41

4.4 健康リスクと疾病の分析から導かれる対策の方向性(女性)

(1)健康リスク評価と健康関連コストとの関係

○ 生物学的リスクにおいては、全般的に女性は男性に比してリスク該当者数の割合が

小さい。既往歴(リスクあり 14.0%)以外の項目では該当率 10%を切っている状

況である。

○ また、生活習慣リスクでは、運動について男性のリスクあり 75.6%を大きく上回り、

91.2%がリスクありの状況である。また睡眠についても 42.1%がリスクありに該当

する。

○ 心理的リスクについては、仕事満足度が 34.7%リスクありと大きくなっている。

図表 42 女性;健康リスク評価項目の該当割合

リスクあり リスクなし割合% 割合%

生物学的(Biological)リスク

血圧 6.0% 94.0%

血中脂質 4.3% 95.7%

肥満 7.0% 93.0%

血糖値 2.6% 97.4%

既往歴 14.0% 86.0%

生活習慣(Lifestyle)リスク

喫煙習慣 5.0% 95.0%

飲酒習慣 2.5% 97.5%

運動習慣 91.2% 8.8%

睡眠で十分休養が取れている 42.1% 57.9%

心理的(Psychological)リスク

生活満足度 12.4% 87.6%

仕事満足度 34.7% 65.3%

ストレス 21.6% 78.4%注)割合は無回答を除いて算出.

注)リスク基準は、メタボリックシンドローム判定基準(8学会策定新基準2005年4月)、日本循環器学会等の禁煙治療基準(第6版2014年4月)等により設定.注)ストレスは、「職業性ストレス簡易調査表」の簡易採点法による心理的・身体的ストレス反応の要チェックの該当の有無を用いた。

(女性) 健康リスク評価項目女性職員

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○ 健康リスク数は平均 2.18 個、年齢が上がるごとに数が増えている。

○ 1 個に該当する対象者が 29.0%と多い。男性と違い、該当数 5 個以上の対象者は 7%

程度である。

図表 43 女性;年齢階級別健康リスク該当数

n 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10100% 7.5% 29.0% 28.0% 18.5% 10.2% 4.7% 1.5% 0.4% 0.2% 0.0% 0.0%

年齢階級20-24歳 100% 8.9% 43.0% 28.2% 12.4% 5.6% 1.6% 0.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%25-29歳 100% 10.1% 36.1% 27.1% 15.5% 7.8% 2.9% 0.4% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0%30-34歳 100% 11.4% 30.7% 27.2% 16.6% 9.0% 3.8% 0.9% 0.3% 0.0% 0.0% 0.0%35-39歳 100% 7.1% 28.8% 30.3% 17.6% 11.2% 3.8% 1.2% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%40-44歳 100% 3.1% 24.0% 31.7% 22.2% 11.7% 5.2% 1.6% 0.5% 0.1% 0.0% 0.0%45-49歳 100% 3.3% 17.6% 26.0% 26.6% 13.9% 8.7% 2.2% 1.1% 0.5% 0.0% 0.1%50-54歳 100% 1.7% 13.5% 28.6% 24.0% 15.7% 9.2% 4.9% 1.7% 0.7% 0.0% 0.0%55-59歳 100% 3.5% 13.9% 23.0% 23.9% 15.9% 10.6% 6.8% 1.8% 0.3% 0.0% 0.3%60-64歳 100% 7.9% 7.9% 30.3% 23.7% 14.5% 10.5% 3.9% 0.0% 1.3% 0.0% 0.0%

健康リスク数女性

図表 44 女性;健康リスク該当割合

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○ 健康リスクの数が多くなるほど、プレゼンティーズム損失割合および医療費は大き

くなることがわかった。アブセンティーズムについては、リスク数との相関は見ら

れなかった。

図表 45 女性;健康リスク該当数別プレゼンティーズム・アブセンティーズム・医療費

リスク数(0-12)

0 7.5% 60.97 ± 15.65 1.02 ± 9.52 92,748 ± 212,8491 29.0% 60.52 ± 15.08 0.75 ± 7.82 88,225 ± 221,9422 28.0% 58.25 ± 16.48 1.45 ± 10.34 118,920 ± 289,9703 18.5% 55.36 ± 17.94 0.83 ± 8.25 125,695 ± 294,5664 10.2% 52.86 ± 19.21 1.20 ± 9.43 121,569 ± 263,3695 4.7% 51.97 ± 19.22 1.88 ± 11.84 158,291 ± 248,6206 1.5% 49.82 ± 21.22 2.40 ± 12.94 201,876 ± 228,6737 0.4% 56.18 ± 14.15 3.13 ± 17.32 170,973 ± 163,1998 0.2% 49.17 ± 28.43 4.63 ± 16.02 306,459 ± 221,5989 0.0% - - -10 0.0% 25.00 ± 35.36 0.00 ± 0.00 162,335 ± 120,17311 0.0% - - -12 0.0% - - -計 100.0% 57.39 ± 17.22 1.12 ± 9.33 113,210 ± 262,082

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)±SD

アブセンティーイズム(欠勤)日数(日)±SD

医療費平均(円)±SD

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

図表 46 女性;健康リスク該当数とプレゼンティーズム損失割合

図表 47 女性;健康リスク該当数と平均医療費

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(2)健康リスクの各項目と健康関連コストとの関係

○ 健康リスク項目別に健康関連コストの 3 項目(プレゼンティーズム・アブセンティ

ーズム、医療費)との関係を分析した。

○ プレゼンティーズム損失との関係では、男性と同じく生活習慣リスク(喫煙、運動、

睡眠)および心理的リスク全般の項目がリスクありとなっている群はプレゼンティ

ーズム損失割合が有意に大きくなっていた。生物学的リスクについては、どの項目

もプレゼンティーズム損失割合との相関が認められなかった。

○ アブセンティーズム(欠勤日数)については、生活習慣リスク(睡眠)および、心

理的リスクの全項目でリスクありの群が有意に大きくなっている。生活習慣リスク

(喫煙、アルコール)についてはリスクありの群のアブセンティーズムが有意に小

さくなっているが、年齢調整した偏相関分析では、有意な相関が見られなかったこ

とから、年齢による差異と思われる。

○ 医療費については、生物学的リスク全般および生活習慣リスク(睡眠)および、心

理的リスク(ストレス、既往歴)でリスクありの群で有意に高くなっている。

図表 48 女性;健康リスク項目該当の有無別 健康コスト項目の大きさ

血圧 血中脂質 肥満 血糖値 健康問題既往歴

平均値 平均値 平均値 平均値 平均値

リスクあり 41.57 40.91 42.53 41.14 42.18

リスクなし 42.74 42.75 42.68 42.71 42.53

リスクあり 1.81 1.93 1.76 2.84 1.11

リスクなし 1.03 1.04 1.03 1.04 1.10

リスクあり 198,752 205,782 154,880 228,311 158,051

リスクなし 107,499 108,971 109,881 110,096 107,661

喫煙 アルコール摂取 運動習慣 睡眠休養

平均値 平均値 平均値 平均値リスクあり 45.05 43.73 42.64 43.52

リスクなし 42.48 42.65 41.13 41.78

リスクあり 0.53 0.04 1.17 1.62

リスクなし 1.10 0.99 0.69 0.73

リスクあり 123,172 91,398 116,468 133,999

リスクなし 113,276 108,805 107,911 101,225

生活満足度 仕事満足度 ストレス 心理的ストレス 身体的ストレス

平均値 平均値 平均値 平均値 平均値リスクあり 47.45 48.63 49.02 51.75 47.55

リスクなし 41.92 39.40 40.85 41.06 41.85

リスクあり 1.32 0.89 1.37 1.49 1.62

リスクなし 0.51 0.46 0.40 0.47 0.46

リスクあり 104,732 104,111 121,545 112,369 134,470

リスクなし 104,246 104,411 99,566 102,940 99,669

※色付セルは平均値に有意差(5%水準)のあった項目「リスクあり」が損失大きい「リスクなし」が損失大きい

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

アブセンティーイズム(欠勤日数)

医療費(円)

心理的リスク

医療費(円)

生物学的リスク

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

アブセンティーイズム(欠勤日数)

絶対的プレゼンティーイズム損失割合(%)

アブセンティーイズム(欠勤日数)

医療費(円)

生活習慣リスク

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

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○ 群間差の分析においては、年齢の影響が出ることが考えられるため、年齢で調整し

た偏相関分析で年齢の影響を取り除いた相関を確認した。

○ 女性の場合、プレゼンティーズム損失との相関が見られるのは、生活習慣リスク(喫

煙習慣、睡眠)であり図表 48 では有意に群間差のあった運動習慣では相関が見ら

れなかった。心理的リスクの全項目については相関があることが確認できた。

○ アブセンティーズムと相関が高いのは生物学的リスク(血糖値)、生活習慣リスク

(睡眠)、心理的リスクの全項目である。

○ 医療費と相関が高いのは肥満を除いた生物学的リスクの各項目となる。女性におい

ては、生活習慣リスク(睡眠)および心理的リスク(ストレス)についても医療費

と相関が見られている。

図表 49 女性;健康リスク評価項目と健康関連コスト項目の偏相関分析

リスクあり割合% r p r p r p

生物学的(Biological)リスク

血圧 6.0% .013 .291 .008 .482 .040 .000

血中脂質 4.3% -.004 .778 .012 .288 .049 .000

肥満 7.0% .017 .174 .012 .286 .015 .197

血糖値 2.6% .007 .599 .023 .045 .041 .000

既往歴 14.0% .006 .639 -.005 .645 .046 .000

生活習慣(Lifestyle)リスク

喫煙習慣 5.0% .043 .001 -.018 .115 -.007 .530

飲酒習慣 2.5% .019 .203 -.021 .125 -.026 .060

運動習慣 91.2% .019 .145 .018 .141 .020 .097

睡眠で十分休養が取れている 42.1% .073 .000 .039 .001 .028 .017

心理的(Psychological)リスク

生活満足度 12.4% .108 .000 .039 .001 -.002 .903

仕事満足度 34.7% .257 .000 .030 .013 -.002 .856

ストレス 21.6% .195 .000 .061 .000 .041 .001

注)割合は無回答を除いて算出.

注)偏相関分析は年齢で調整した。

医療費

偏相関 偏相関 偏相関

アブセンティーイズム(女性) 健康リスク評価項目

女性職員絶対的プレゼンティーイズム損失

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○ 女性においても、家族等の支援(家族等の支援:職業性ストレス簡易調査表の「家

族や友人からのサポート」の項目を活用)に関する詳細分析を実施した。

○ 図表 28(P30)にあるように、家族の支援の有無は男女差のない回答となっている。

○ 家族等の支援についてリスクあり(支援が足りていない)の対象者については、プ

レゼンティーズムの損失が有意に大きくなっていた。他のコスト関連項目では群間

差は見られなかった。

図表 50 女性;家族等の支援リスクの有無別平均医療費と生産性

平均 標準偏差 p値 平均 標準偏差 p値 平均 標準偏差 p値48.76 ± 19.51 .000 1.24 ± 9.74 .189 111,816 ± 170,288 .51942.24 ± 17.01 0.57 ± 6.41 103,851 ± 236,154

絶対的プレゼンティーイズム 医療費

女性

家族の支援リスク9点以上

リスクあり

リスクなし

アブセンティーイズム

健康リスク評価と健康関連コストの関係

プレゼンティーズムコストについては、女性では年齢の影響を除くと運動習

慣との相関は見られず、喫煙習慣、睡眠習慣の改善、および心理的リスク全

般の改善がコストに影響を与えることが考えられる。

アブセンティーズムコストについては生活習慣リスク(睡眠)と心理的リス

クとの相関が見られ、改善による影響を検討することが考えられる。生物学

的リスクにおいては血糖を改善することによる影響を検討する必要がある。

医療費については肥満以外の生物学的リスクと相関があり、生物学的リスク

(血圧、血糖等)を改善することで医療費が小さくなる可能性がある。

心理的リスク改善の介入として、家族等の支援について検討することも考え

られる。

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(3)健康リスクランクと健康関連コストとの相関

○ 男性と同じく、対象者をリスク数によって3ランクに分類した。低リスクは 0~2

個該当した場合、中リスクは 3~4 個該当した場合、高リスクは 5 個以上該当した

場合となる。

○ 男性と比べ、高リスクの割合が小さいことがわかる。

○ 年齢階級別で各ランクの分布を見ると、年齢が上がるにつれて高リスク対象者が多

くなっていることがわかる。

図表 51 女性;健康リスク評価のランク別分布

リスク数(0-12)

女性%

低リスク 64.5% 33.76 ± 9.29中リスク 28.7% 38.14 ± 10.50高リスク 6.8% 42.71 ± 10.73

計 100% 35.63 ± 10.12平均リスク数, 平均±標準偏差 2.18 ± 1.41注)健康リスク評価:低リスク0-2個、中リスク3-4個、高リスク5個以上。

平均年齢b,年齢(歳)±標準偏差

図表 52 女性;年齢階層別健康リスク評価

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図表 53 女性;健康リスクランク別の健康関連コスト比(低リスクを 1.00)

注)プレゼンティーズムコストは相対的プレゼンティーズムコスト。アブセンティーズムコストは

欠勤コスト。

1.00

1.22

1.69

1.00

1.51

1.66

1.00

0.97

2.11

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

低リスク

中リスク

高リスク

医療費 プレゼンティーズコスト アブセンティーズムコスト

1.00

1.45

コスト比1.68

健康リスクランクと健康関連コストの関係

女性については男性と比して、高リスクランクの割合が低いが、男性と同じ

く年齢が上がると高リスク割合が大きくなっている。

高リスク者は低リスク者に比べ、健康関連コストが大きくなることが示唆さ

れた。(1.68倍)

集団の健康リスクのランク分布を改善することで、企業の健康関連コストが

少なくなる可能性がある。

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(4)疾病と健康関連コストとの相関

○ 2013 年度に 19 傷病分類の疾病があった群となかった群に分け、健康コスト関連項

目のうち、プレゼンティーズムとアブセンティーズムとの関係を分析した。

○ 女性においては、疾患があることで有意にプレゼンティーズムが大きかったのは

「精神及び行動の障害」「神経系の疾患」「症状、兆候、および異常臨床所見・・・」

の3つとなり、男性よりも相関がみられる分類が多い。

○ アブセンティーズムについては、「眼および附属器の疾患」「呼吸器系の疾患」「腎

尿路生殖器系の疾患」など 6 分類を除いた分類について有意に相関があった。

○ 医療費については、すべての項目で相関があった。(表は割愛)

図表 54 女性;19 傷病分類の疾病有無別 健康コスト項目の大きさ

※色付セルは平均値に有意差(5%水準)のあった項目 リスクありが損失大きいリスクありが損失小さい

女性 病名

1_感染症及び寄生虫症

2_新生物 3_血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害

4_内分泌,栄養及び代謝疾患

5_精神及び行動の障害

6_神経系の疾患

7_眼及び付属器の疾患

8_耳及び乳様突起の疾患

9_循環器系の疾患

10_呼吸器系の疾患

絶対的プレゼンティーイズム あり 42.85 42.10 41.82 42.63 45.98 44.40 42.70 42.05 41.82 42.25

損失割合平均値(%) なし 42.51 42.70 42.67 42.60 42.38 42.42 42.49 42.66 42.67 43.16

アブセンティーイズム あり 2.21 3.69 3.69 2.86 13.96 9.37 1.46 2.55 4.68 1.60

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.15 1.06 1.26 1.09 0.50 0.57 1.48 1.37 1.18 1.26

女性 病名

11_消化器系の疾患

12_皮膚及び皮下組織の疾患

13_筋骨格系及び結合組織の疾患

14_腎尿路生殖器系の疾患

15_妊娠,分娩及び産じょく

16_周産期に発生した病態

17_先天奇形,変形及び染色体異常

18_症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見

19_損傷,中毒及びその他の外因の影響

71_歯科 99_その他

絶対的プレゼンティーイズム あり 42.75 42.35 41.85 42.30 41.88 40.77 40.90 43.40 42.33 42.35 42.41

損失割合平均値(%) なし 42.53 42.77 42.79 42.73 42.63 42.61 42.63 42.37 42.65 42.88 42.61

アブセンティーイズム あり 2.66 2.09 3.52 2.69 1.98 2.64 3.70 3.00 2.50 1.53 1.64

(欠勤日数)平均値(日) なし 0.75 1.10 0.94 0.92 1.44 1.46 1.44 0.97 1.33 1.40 1.46

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

○ 2013 年度に ICD10 の 3 桁レベルの病名の有無別で群分けし、健康コスト関連項目

のうち、プレゼンティーズムとアブセンティーズムとの関係を分析した。

○ プレゼンティーズム損失との相関があったのは、「感染症と推定される下痢および

胃腸炎」「その他の腸の機能障害」「悪心および嘔吐」「体液量減少」「睡眠障害」

と男性より多い。さらに女性生殖器系の疾患にも有意ではないがリスクありの場合

にコストが大きくなる傾向が見られた。

○ また、男性と同じく、いくつかの疾病で、リスクあり群のプレゼンティーズム損失

割合が有意に小さくなっていたが、これは年齢が高い人がリスクあり群に偏ったこ

とにより、年齢が高いほどプレゼンティーズム損失割合が小さいことの影響を受け

た結果と考えられる。

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図表 55 女性;ICD10 上位 55 疾病の有無別 健康コスト項目の大きさ

※色付セルは平均値に有意差(5%水準)のあった項目 リスクありが損失大きい リスクありが損失小さい

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

女性 病名

DEN_歯科 H52_屈折及び調節の障害

J06_多部位及び部位不明の急性上気道感染症

J30_血管運動性鼻炎及びアレルギー性鼻炎

K29_胃炎及び十二指腸炎

J20_急性気管支炎

H10_結膜炎 J02_急性咽頭炎

A09_感染症と推定される下痢及び胃腸炎

L30_その他の皮膚炎

絶対的プレゼンティーイズム あり 42.35 42.99 42.26 41.72 42.24 42.69 42.23 42.79 43.72 41.94

損失割合平均値(%) なし 42.88 42.23 42.78 42.98 42.72 42.58 42.72 42.57 42.38 42.74

アブセンティーイズム あり 1.53 1.37 1.66 1.93 2.73 1.79 2.12 1.24 2.47 1.92

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.40 1.56 1.37 1.27 1.07 1.37 1.29 1.52 1.25 1.38

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

女性 病名

H16_角膜炎 J45_喘息 L70_痤瘡<アクネ>

E28_卵巣機能障害

L85_その他の表皮肥厚

J03_急性扁桃炎

M54_背部痛 N86_子宮頚(部)のびらん及び外反(症)

J00_急性鼻咽頭炎[かぜ]<感冒>

N76_腟及び外陰のその他の炎症

絶対的プレゼンティーイズム あり 42.23 42.84 43.67 41.19 42.48 41.90 43.02 40.95 42.37 42.01

損失割合平均値(%) なし 42.66 42.58 42.49 42.74 42.62 42.67 42.58 42.73 42.63 42.65

アブセンティーイズム あり 1.38 1.57 2.48 3.00 2.40 1.52 4.64 2.76 3.14 2.04

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.48 1.45 1.36 1.32 1.38 1.46 1.19 1.36 1.33 1.42

21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

女性 病名

K59_その他の腸の機能障害

J01_急性副鼻腔炎

J40_気管支炎,急性又は慢性と明示されないもの

H04_涙器の障害

L20_アトピー性皮膚炎

K25_胃潰瘍 J32_慢性副鼻腔炎

D25_子宮平滑筋腫

D50_鉄欠乏性貧血

K21_胃食道逆流症

絶対的プレゼンティーイズム あり 46.02 41.12 41.14 42.22 42.93 42.70 41.91 42.49 41.03 41.80

損失割合平均値(%) なし 42.39 42.72 42.72 42.63 42.59 42.60 42.65 42.62 42.69 42.66

アブセンティーイズム あり 6.71 1.69 1.74 0.92 2.62 4.51 2.41 3.79 3.07 5.44

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.04 1.45 1.45 1.50 1.39 1.27 1.40 1.32 1.37 1.23

31 32 33 34 35 36 37 38 39 40

女性 病名

R51_頭痛 N30_膀胱炎 R11_悪心及び嘔吐

E78_リポたんぱく<蛋白>代謝障害及びその他の

L50_じんま<蕁麻>疹

E86_体液量減少(症)

L81_その他の色素異常症

G47_睡眠障害

L25_詳細不明の接触皮膚炎

T14_部位不明の損傷

絶対的プレゼンティーイズム あり 43.72 41.78 44.44 42.28 41.60 46.46 42.36 46.64 41.39 43.44

損失割合平均値(%) なし 42.55 42.66 42.51 42.63 42.66 42.43 42.62 42.46 42.66 42.57

アブセンティーイズム あり 3.57 2.16 4.31 3.60 2.02 3.30 2.99 20.10 2.06 2.33

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.35 1.43 1.31 1.35 1.44 1.38 1.39 0.66 1.44 1.43

41 42 43 44 45 46 47 48 49 50

女性 病名

H40_緑内障 N94_女性生殖器及び月経周期に関連する疼痛及び

H00_麦粒腫及びさん<霰>粒腫

B37_カンジダ症

J10_インフルエンザウイルスが分離されたインフ

N92_過多月経,頻発月経及び月経不順

H01_眼瞼のその他の炎症

J11_インフルエンザ,インフルエンザウイルスが

D27_卵巣の良性新生物

H60_外耳炎

絶対的プレゼンティーイズム あり 39.96 42.21 40.87 41.38 42.39 43.07 41.35 41.44 41.68 42.92

損失割合平均値(%) なし 42.72 42.63 42.69 42.65 42.62 42.59 42.65 42.65 42.64 42.60

アブセンティーイズム あり 2.20 4.16 1.18 2.49 0.81 2.44 0.85 2.23 2.58 1.68

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.44 1.36 1.48 1.43 1.49 1.43 1.49 1.44 1.43 1.46

51 52 53 54 55

女性 病名

K76_その他の肝疾患

R10_腹痛及び骨盤痛

J04_急性喉頭炎及び気管炎

O20_妊娠早期の出血

N80_子宮内膜症

絶対的プレゼンティーイズム あり 42.40 44.29 40.84 41.20 43.38

損失割合平均値(%) なし 42.62 42.56 42.67 42.63 42.59

アブセンティーイズム あり 4.55 4.52 1.37 2.56 2.57

(欠勤日数)平均値(日) なし 1.37 1.37 1.47 1.43 1.43

※アブセンティーズム(欠勤日数)の定義は 4.2(2)参照(P22)

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51

○ 2013 年度において、19 傷病分類の疾病名があった集団別に、健康関連コストを比

較検討した。(複数病名を有する対象者は、病名のついたすべての集団の一員とな

っている。)

○ プレゼンティーズム損失コストについては、疾患名によって大きく変わることはな

いが、「精神及び行動の障害」に該当する場合が一番大きくなっている。

図表 56 女性;19 傷病分類別の平均プレゼンティーズムコスト(複数回答)

注)最も低い傷病のコストを 1.00とした場合の比で表示。

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50

ⅩⅥ 周産期に発生した病態

ⅩⅤ 妊娠,分娩及び産じょく

Ⅸ 循環器系の疾患

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

その他

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

歯科

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

ⅩⅧ 他に分類されないもの

Ⅱ 新生物

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52

○ アブセンティーズムコストについては、「精神及び行動の障害」および「神経系の

疾患」に該当する場合が他に比してかなり大きくなっている。

図表 57 女性;19 傷病分類別の平均アブセンティーズムコスト(複数回答)

注)最も低い傷病のコストを 1.00とした場合の比で表示。

0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00

歯科

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

その他

ⅩⅥ 周産期に発生した病態

ⅩⅤ 妊娠,分娩及び産じょく

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

Ⅱ 新生物

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

○ 女性の医療費については、「新生物」だけでなく「妊娠、分娩及び産じょく」と病

名がついた対象者が圧倒的に高い値となっている。

図表 58 女性;19 傷病分類別の平均医療費

注)最も低い傷病のコストを 1.00とした場合の比で表示。

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

その他

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

ⅩⅥ 周産期に発生した病態

Ⅸ 循環器系の疾患

歯科

Ⅱ 新生物

ⅩⅤ 妊娠,分娩及び産じょく

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○ 男性と同様、19 傷病分類を罹患率(x 軸)と健康関連コストの平均(y 軸)でマッ

ピングすることにより、各コストを改善するための対策を検討した。

○ プレゼンティーズムコストについては多くの疾患がコストが高いところに位置づ

けられる。そのうち、罹患率も高い疾病は、「呼吸器系の疾患」および「眼及び附

属器の疾患」などである。呼吸器系については、風邪、インフルエンザ等の感染性

疾患からアレルギーによる鼻炎や喘息が含まれており、男性と同様に発症予防・重

症化予防の対策によるコスト軽減の可能性がありうる。

図表 59 女性;19 傷病分類の平均プレゼンティーズムコストと罹患状況

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅱ 新生物

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患Ⅶ 眼及び付属器の疾患

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅤ 妊娠,分娩及び産じょく

ⅩⅥ 周産期に発生した病態

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

ⅩⅧ 他に分類されないものⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

歯科

プレゼンティーイズムコスト

罹患率 低 罹患率 高

医療費 低

医療費 高

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○ アブセンティーズムについては、コスト、罹患率共に高い疾病は見当たらない。罹

患するとコストの高い「精神及び行動の障害への対応が考えられる。

図表 60 女性;19 傷病分類の平均アブセンティーズムコストと罹患状況

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅱ 新生物Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患

Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患

Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅤ 妊娠,分娩及び産じょく

ⅩⅥ 周産期に発生した病態

ⅩⅦ 先天奇形,変形及

び染色体異常

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

歯科

アブセンティーイズムコスト

罹患率 低 罹患率 高

医療費 低

医療費 高

○ 医療費については、コスト・罹患率共に高い疾病は見当たらない。コストの高い疾

病として、男性と違い「妊娠、分娩及び産じょく」があがっている。

図表 61 女性;19 傷病分類の平均医療費と罹患状況

Ⅰ 感染症及び寄生虫症

Ⅱ 新生物

Ⅲ 血液,造血器の疾患,免疫機構の障害

Ⅳ 内分泌,栄養及び代謝疾患Ⅴ 精神及び行動の障害

Ⅵ 神経系の疾患

Ⅶ 眼及び付属器の疾患Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患

Ⅸ 循環器系の疾患

Ⅹ 呼吸器系の疾患

ⅩⅠ 消化器系の疾患

ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の疾患

ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患

ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の疾患

ⅩⅤ 妊娠,分娩及び産じょく

ⅩⅥ 周産期に発生した病態

ⅩⅦ 先天奇形,変形及び染色体異常

ⅩⅧ 他に分類されないもの

ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響

歯科

医療費

罹患率 低 罹患率 高

医療費 低

医療費 高

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(5)女性の健康関連コスト縮小対策の方向性

○ 男性と同様、割合が大きく、単年度での効果がありそうなプレゼンティーズムコス

トに着目し、特に生活習慣改善の介入を実施し、コストへの影響を検討する。

○ プレゼンティーズムとストレス項目の関係については、今後、経年データを取得し、

ストレスリスクの変化によるプレゼンティーズムの変化について分析・検討を行う。

○ また、家族・友人の支援との関係については、介入効果の検証を試行する。

○ 疾病との関係については女性については、メンタル関連疾患以外での受診も多くあ

り、今後疾病ごとの事情を確認していくことなどを通じた検討などが考えられる。

疾病と健康関連コストの関係

疾患と労働生産性(プレゼンティーズム、アブセンティーズム)の相関を

考えると、コストの大きい「精神および行動の障害」への予防が重要であ

る可能性が高い。

また、医療費のみでは罹患率の割にコストが大きくないため着目しなかっ

た「呼吸器系の疾患」「眼および付属器の疾患」「消化器系の疾患」につ

いての対策も考えられる。

さらに、男性に比してプレゼンティーズムと相関のある疾病が多いことか

ら、これらに対処することのコストへの影響を今後検討していくことが考

えられる。

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5.まとめ

本事業を通じて、レセプト・健診のみからは見えない従業員の「労働生産性」の観

点から、健康施策のあり方を検討することができた。従来から取り組んでいる各種健

康施策が「労働生産性」の観点からも効果的な施策である可能性が示唆されたこと、

現在健康施策には盛り込んでいない課題の可能性が見えたことにより、より実効性の

高いデータヘルス計画の策定、PDCAの実施につなげられる可能性があると考えら

れる。

単年度のみのデータであり、健診・レセプト・生産性関連データの取得年度にずれ

があることなどから、すべての課題が明らかとなったとは考えにくいが、今後、継続

的にデータ取得・分析を行っていくことで、引き続き施策の効果検証、課題抽出に向

けた取組みを進めていく予定としている。(今年度の取組みによって明らかとなった

健康関連コストや健康リスクをアウトカム指標として、各種健康施策の実施データを

取得していくことで、多方面からの分析につなげることが可能と考えられる。)

なお、上記分析から得られた結果・示唆に加え、本検討を通じて、保険者と事業主

の関係者が同じ目的のもと、同じデータを見ながら、課題および対策の方向性を論議

することで、これまでとは異なる次元で密接な関係を構築することができたと考えら

れる。