医学研究のCOIマネージメントガイドライン...

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医学研究のCOIマネージメントガイドラインについて 2)日本医学会ガイドライン改定版 曽根 三郎 日本医学会利益相反委員会委員長 JA高知病院長・徳島大学名誉教授) 日本医学会COIマネージメント研修セミナー 平成26228日(金)、日本医師会館 共催:全国医学部長病院長会議、

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医学研究のCOIマネージメントガイドラインについて

2)日本医学会ガイドライン改定版

曽根 三郎 日本医学会利益相反委員会委員長

(JA高知病院長・徳島大学名誉教授)

日本医学会COIマネージメント研修セミナー 平成26年2月28日(金)、日本医師会館 共催:全国医学部長病院長会議、

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利益相反(COI)状態の開示

筆頭発表者:曽根 三郎

私は、今回の演題に関連して COIを開示すべき企業などはありません。

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学術団体会員、成果発表

医療施設・機関:医学研究実施

産学連携活動

企業 研究者

医学研究における研究者と企業との利害関係と透明化

公的利益 (国民、患者等)

公明性 中立性

私的利益 企業利益 社会的責務

新規診断、治療、予防法の確立

SS-2011

研究者個人に利害関係が発生! 利益相反(COI)状態

謝金 研究費 寄附金 労務提供等

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○共同研究 ○受託研究 ○技術移転 ○技術指導 ○大学発ベンチャー ◎奨学寄附金 ○寄附講座 ◎講演謝金(企業共催、主催)

文科省ライフサイエンス関係の予算(2012) 約2300億円! 米国では、研究費の9割が国から提供され、日本はその10分の1!

日本での産学連携活動と製薬企業からの外部資金

2012年度透明性GL (70社公表HPまとめ) A研究費開発費等 2472億円(52%) B学術研究助成費 493億円(10%) C原稿執筆料等 260億円(6%) D情報提供関係費 1391億円(29%) Eその他の費用 110億円(2%) 総額 4726億円

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臨床試験にかかる Reporting bias (発表バイアス)

• 臨床研究論文、企業スポンサーはバイアスかかり易い! Rochon et al. Arch Intern Med 1994、 Lexchin et al. BMJ 2003

• FDA承認90新規医薬品、900臨床試験結果について、 • 論文発表率は43%と低い! ⇒出版バイアス PLOS Med. 2008;5:e191. doi: 10.1371

• RCT論文報告:50論文の内、80%にバイアス! (有効性過大評価、有害事象過小評価)があり ! Mcgauran et al Reporting bias in medical research - a narrative review. Trials. 2010 Apr 13;11:37.

⇒⇒⇒間違った根拠に基づく医療(EBM)へ

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学会、学術団体・会員

医科系施設・機関・研究者

製薬協の透明性ガイドライン (2011)

医療機関 (病院、医院)医師

企業主催・共催の講演会数 約10万回/年 講師・座長数 約30万人

製薬 企 業

¥¥¥

産学連携

診療ガイドライン策定 論文発表・講演など

A) 研究費開発費:臨床試験、治験、製造販売後臨床試験、副作用・感染症症例報告、調査等、共同研究 ・委託研究 にかかる年間総額 B) 学術研究助成費:奨学寄附金、学会寄附金など

C) 原稿執筆、講演料など、D)情報関連提供費:講演会説明会など

販売促進で 資金回収

投資 4726億円 (2012年)

医療レベルの 向上に寄与

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医師主導のバルサルタン臨床研究事案と問題点

バルサルタン臨床研究に参加した大学に見られた問題点

①国際的な規制や倫理指針に基づく被験者保護の視点が乏しい。 ②科学的な研究課題への動機、目的が不明確 ③適正な臨床試験実施のための手続きの計画や研究監視体制が不十分 ④施設・機関の倫理審査機能、COIマネージメントが不十分 ⑤医師主導の臨床試験実施のための資金源、スポンサーが不透明 ⑥臨床試験実施に精通した人材(特に統計解析)が不足 ⑦医師主導の臨床試験を実施するためのガイドラインが欠如 ⑧医師主導の臨床試験を管理する体制が施設・機関に乏しい ⑨研究結果の公表への責務と中立性確保が不十分 ⑩倫理指針違反や研究不正を行った者への懲罰措置が不透明 ⑪科学性、倫理性を確保した臨床研究実施のための教育・研修体制が不十分

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我が国の臨床研究の質と信頼性に関わるCOI 事例

ー2000年 ヘルシンキ宣言 ー2003年 厚労省 「臨床研究にかかる倫理指針」

• 2004年 バイオベンチャーアンジェス 株収入と臨床試験 • 2005年 イレッサ薬害 奨学寄附金と適正使用ガイドライン策定委員

• 2007年 タミフル薬害 奨学寄附金と調査研究班委員 • 2008年 国循センター部長 高額講演料と薬事審委員 • 2008年 大学教授 奨学寄附金と診療指針策定委員 • 2008年 リウマチ学会 米国学会発表で企業資金の開示違反

• 2013年 ディオバン臨床研究事案 奨学寄附金、労務提供開示の申告違反 + 人為的なデータ操作による研究不正 ⇒ 論文撤回 7編

ー2006年 文科省検討班「COI指針策定ガイドライン」公表ー

ー2011年 製薬協「透明性ガイドライン」 日本医学会「COIマネージメントガイドライン」公表ー

ー2013年 全国医学部長病院長会議「COIマネージメントガイドライン」公表ー ● 2014年 医師主導臨床試験への企業の労務提供問題、論文公表の所属記載疑いなど

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医療機関による臨床研究実施状況の調査 (厚労省 2013/9/27)

◉対象医療機関(大学病院、特定機能病院、基幹病院等) 117病院 ◉平成21年4月以後に開始した侵襲性のある介入研究数 24,414件

◉不適切な事案があった臨床研究 118件 その内、倫理指針を遵守しなかった研究 103件 データーベースへの登録ない研究 109件

研究の質と被験者の保護が確保されているか? 企業との関わりは?

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→COIマネージメントの基本として、 企業との関わり(資金提供、労務提供など)の透明化、 そして説明責任を果たす義務があり!

臨床研究でのCOI状態は、その現場の研究者が臨床研究を実施し、成果を発表するという特性から不可避的に発生する!

研究資金提供 労務提供など

企業

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COIマネージメントの必要性

潜在的に弊害があるCOI (Potential)

弊害が存在するように見えるCOI (Apparent)

弊害が実在するCOI (Actual)

軽減・改善の マネージメント

不正、ねつ造

自由な活動

企業との金銭関係

・研究結果解釈・発表へのバイアス ・被験者(ヒト)の生命の危険 ・研究の真実性、客観性、透明性の喪失 ・機関に対する社会からの信頼性の喪失

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Misconduct of research (研究不正)への対応 • ミスコンダクトの定義 (米国National Science Foundation) 研究資金申し込みや研究実施、申請計画の評価、研究結果の報告におけるねつ造、改ざん、盗用を意味する

• 考えられる原因 ◉昇進への実績評価圧力、成果主義:一流誌への発表・特許取得 ◉産学連携推進による利害関係の衝突(COI状態の深刻化) ◉研究予算減少、競争的資金の増加、国際競争のし烈化、 ◉探索的研究から橋渡し研究推進、大規模の臨床研究・共同研究の増加 ◉倫理観、特に生命倫理認識の低下など

Fang FC et al, PNAS 109:17028-17033, 2012 論文撤回の67%が研究不正。 国際一流雑誌で多く見られ、国別頻度は? 1位 アメリカ、 2位 ドイツ、3位 日本、4位 中国の順

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医学研究の COI マネージメントに 関するガイドライン改定版

日本医学会臨床部会 COI 委員会 (委員長)

徳島大学名誉教授 曽根 三郎

(委員)

旭川医科大学教授 高後 裕

大阪大学大学院教授 土岐祐一郎

慶應義塾大学大学院教授 河上 裕

東京医科大学名誉教授 J.Patrick Barron 東京医科歯科大学教授 水谷修紀 レックスウエル法律特許事務所所長 平井昭光

JAMS Guideline for Management of Conflict of Interest (COI) in Medical Research

平成26年2月公表

バルサルタン臨床研究等のCOI違反対応と再発防止⇒ 改定版

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COI 委員会

承認か条件付き承認

調査,審査

答申

就任時 COI 開示

不服申立て 審査委員会

役員等

理事会(理事長)

情報 提供 要請

会員(非会員含)

Websiteにて 登録時 COI自己申告

倫理委員会 違反者への措置

必要情報の

公開

発表時、 投稿時

COI開示

編集委員会

社会(マスコミ、マスメディアなど)

図 3 分科会におけるCOIマネージメントの例

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筆頭発表者のCO I開示 ①顧問: なし ②株保有・利益: なし ③特許使用料: なし ④講演料: なし ⑤原稿料: なし ⑥受託研究・共同研究費: ○○製薬 ⑦奨学寄附金: ○○製薬 ⑧寄附講座所属: あり(○○製薬) ⑨贈答品などの報酬: なし

図4 学術講演会にて申告すべきCOI状態の開示例

筆頭発表者: 演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある 企業等はありません。

或いは、

日本○○学会 CO I 開示

筆頭発表者名: ○○ ○○

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日本医学会 医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン改定 [2014(平成26)年2月改定] 平成22年4月に日本医学会臨床部会利益相反委員会を立ち上げ,

平成23年2月に「日本医学会 医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」公表

平成24年4月には日本医学会利益相反委員会と改称

平成25年5月24日開催の第8回日本医学会利益相反委員会にてガイドライン改定案の提示

平成25年11月15日開催の第4回日本医学会分科会利益相反会議にて、改訂案の議論を重ねた後,11月20日に同ガイドライン改定案を118分科会へ送付した。

平成25年12月25日までに回答を受けて,各委員から出された意見を反映して「日本医学会 医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」改定最終案は、その後,日本医学会協議会,第10回日本医学会幹事会に提出.

平成26年2月19日開催の第81回日本医学会定例評議員会にて承認

経緯

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定項目

Ⅳ.医学研究に係るCOIマネージメントの基本 1.医学研究を実施する各施設・機関 3.臨床研究,特に医師主導臨床試験に係る注意事項 4.臨床研究に係る回避事項とそのマネージメント Ⅴ.COI指針および細則の策定 6.対象者のCOIマネージメント (3)学術雑誌発表者 7.申告の対象期間 11.COI委員会の役割と責務 1)COI委員会の所掌事項 12.編集委員会の役割と責務 16.COI開示請求への対応 17.指針違反者への措置

ポイント 研究結果に影響を与える可能性がある、企業の研究資金提供、労務提供への対応法を追加!

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

(1)分科会が主催する学術集会などでの発表 (2)分科会発刊の学術雑誌・機関誌などでの発表 (3)診療ガイドライン,マニュアルなどの策定 (4)臨時に設置される調査委員会,諮問委員会などでの作業 (5)企業や営利団体主催・共催の講演会、ランチョンセミナー,イーブニングセミナーでの発表

すべての会員は、当該分科会の事業活動と関係のない学術活動(企業主催・共催など)においても,所属学会の COI指針に基づき、所定の様式にてCOI状態の開示が求められる.

研究者は、発表に際してCOI状態開示・公開の義務

ヘルシンキ宣言、臨床研究に関する倫理指針などの順守が大原則。 (1)臨床試験の実施には公的に登録し、試験結果は原則的に公開されるべきである。 (2)公表論文の作成には、著者資格を明確にし、著者資格の基準を満たさない場合、これらの人々の関与に 対し適切に謝意を表し、その身元、所属、資金源及びその他の利害関係を記載し公開する。 (3)各分科会の申告基準額以上であれば、資金源(unlimited grant of companyは明記されるべきである。 (4)臨床データ集計・管理、統計解析、データ解釈並びに論文作成においても スポンサー企業関係者が介入が全くないことを明記すべきである。

臨床研究、特に侵襲を伴う介入研究における注意点

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

(1)臨床研究の資金提供者・企業の株式保有や役員への就任 (2)研究課題の医薬品,治療法,検査法などに関する特許権ならびに特許料の取得 (3)当該研究に関係のない学会参加に対する資金提供者・企業からの旅費・宿泊費の支払い (4)当該研究に要する実費を大幅に超える金銭(寄付金を含む)の取得。 但し、正式な契約に基づく場合を除く。 (5)当該研究にかかる時間や労力に対する正当な報酬以外の金銭や贈り物の取得 (6)結果に影響を与えうる企業からの労務提供(例、データ管理、統計解析など)の受け入れ (7)結果が企業の利益(販売促進など)に直接的に結びつく可能性ある臨床研究では、当該企業の共同研究 者の受け入れ

介入研究の実施者としての回避事項

研究責任者、研究代表者としての回避事項

(1)臨床試験への被験者の仲介や紹介にかかる報賞金の取得 (2)ある特定期間内での症例集積に対する報賞金の取得 (3)特定の研究結果に対する成果報酬の取得 (4)研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して,資金提供者・企業が影響力の行使を可能とする契約の締結

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

◎論文発表に際しての和文例は「謝辞:XXX寄附講座は,YYY製薬の寄附金にて支援されている.」,英文例は「Acknowledgement: Department of XXX is an endowment department, supported with an unrestricted grant from YYY.」などの記載が明記されるべきである. ◎発表時には、施設。機関で使用されている職名(特任教授、特命教授など)を使用すべきである。

企業所属の派遣研究者、社会人大学院生、非常勤講師への対応 ◎派遣された企業所属の研究者が,派遣研究者,社会人大学院生,非常勤講師としてアカデミアに所属し,研究成果を講演あるいは論文発表する場合には,当該企業名を明記すべきである. また,企業所属の時に行った研究成果を,アカデミアに転職した後に発表する場合も,所属した企業名を明記すべきである.

寄附講座に所属する研究者の場合、COI開示への対応

◎特定の製薬企業からの資金を基金として運営されている法人組織の場合、ある基準以上の研究助成金を受ければ、当該企業名を記載すべきである。

NPOや公益法人(社団、財団)からの資金援助への対応

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

臨床研究に係る書類などの保管義務

論文発表代表者(corresponding author)は全責任負う ◎corresponding authorは、当該論文にかかる著者全員からのCOI状態に関する申告書を取りまとめて提出し,著者全員の所属名も含めて記載内容については全責任を負うことが明記されるべきである。特に、企業所属従業員が共同著者の場合、発表時にアカデミア所属名だけでなく所属企業名を開示すべきである。

COI違反者への懲罰規定や措置の明確化 ◎COIマネージメントを実効性あるものにするため,COI指針に従わなかった場合,各分科会の規則や規定などに基づいた適切な罰則規定や措置の仕方についても記載することが望ましい.

◎臨床試験登録義務化、当該研究にかかる資金源とその額、データ、審査記録、関連委員会議事録などを論文公表後、3年間の保管義務化 特に、臨床試験に関係する企業などからの奨学寄附金記録はデータの一部として記録保管されるべきである。

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

(1)COI状態にある会員個人からのあらゆる質問,要望への対応(説明,助言,指導を含む) (2)役員および発表者(非会員含む)の事業活動にかかるCOI状態の判断ならびに助言,指導 (3)産学連携にかかるCOIマネージメントの啓発活動および企画・広報に関すること (4)会員個人のCOI申告に関する疑惑が生じた時の調査活動,関係する施設・機関との情報交換, 改善措置の勧告に関すること (5)COI指針・細則の見直し,改訂に関すること

◎会員に重大なCOI指針違反の疑惑が生じた場合には,当該医学研究実施計画書に関する施設・機関でのCOI自己申告書を含めた倫理委員会の審議結果にかかる情報提供を求め,真相解明に向けての連携・協力が望まれる.各分科会の倫理委員会は日常的にCOI委員会および編集委員会と連携し,医学研究成果の発表にかかる質と信頼性の確保に向けて情報交換を行っておくべきである。

倫理委員会の役割

COI委員会の役割の明確化

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

◎分科会の長は,当該会員についての告発があれば、COI委員会に諮問し,個人情報の保護のもとに事実

関係の調査を含めて,できるだけ短期間に実施し,答申を受けた後,速やかに当該開示請求者へ回答することが望まれる。必要あれば、調査委員会設置による迅速かつ的確な対応と関係大学との連携を密にし、社会への説明責任を果たすべきである。

編集委員会の役割について ◎分科会の編集委員会は,例えば,①医学研究が侵襲性のある介入研究かどうか,②公的に登録をしているか,③企業依頼の研究かあるいは自主的な研究か,④研究資金が公的由来か,企業由来(財団助成金,非営利団体NPOも含めて)かどうかの確認が必須となる. ◎企業依頼の場合,著者は,スポンサー(資金提供者)が当該研究のデザイン,データ集計,解析などのマネージメント,解釈,論文執筆にどのように関わったかを本文末尾に明記すべきである.例として、「The sponsor had no role in study design, data collection, data analysis, data interpretation or writing of the report 」の記載をする.

COI委員会強化と製薬協の透明性ガイドラインへの対応

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日本医学会 COIマネージメントガイドラインの 改定ポイント

◎分科会は、所属する会員のCOI状態に関する開示請求が分科会外部(例、マスコミ、市民団体など)からなされた場合を想定して対応の手順を明文化しておくことが望ましい. ◎妥当と思われる請求理由であれば,分科会の長はCOI委員会に諮問し、個人情報の保護のもとに事実関係の調査を含めて,できるだけ短期間に実施し答申を受ける. ◎医学研究成果の論文公表後、疑義を指摘された場合、 ①編集委員会とCOI委員会とが連携して疑義の解明に努め、説明責任を果たすことが求められる。

②それぞれの委員会で対応できないと判断された場合、分科会の長は外部委員(有識者)を含めた調査 委員会を設置し、関係する当該大学にも協力を求めて情報収集し、迅速にかつ的確に対応し、事案 解決に向けて努力すべきである。

COI開示請求への対応

適切なCOIマネージメントは、産学官連携の健全化だけでなく、 研究の信頼性を確保し、被験者、研究者および組織を守る!

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学会、学術団体 成果発表

医科系施設・機関

医学研究の実施

研究者

日本の医学研究、COIマネージメントの取り組み状況

製薬協会員企業

・文科省 COI指針策定ガイドライン 2006 ・厚労省COI指針 2008 ・全国医学部長・病院長会議 COIマネージメントガイドライン 2013年12月19日公表

日本医学会ガイドライン 118分科会・COIマネージメント指針 2011⇒改訂2014/2

透明性ガイドライン 2011

日本学術会議

ゴール:医療イノベーション推進のもと、産官学連携による創薬、育薬への倫理性、科学性、中立性を確保した臨床研究の実施と、根拠に基づく医療(EBM)の質向上

¥ 臨床医学分科会 COI管理の提言 2013/12/20 臨床試験制度検討分科会 提言案策定中

◉厚労省 ・臨床研究倫理 指針2003 改訂版 2014 公表予定 ・臨床研究の法制度 化検討 2014 ?

日本医師会 医療の実践 医師の職業倫理指針(COI含)2008

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医師主導 臨床研究CASE-J

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市販後医薬品の医師主導臨床試験 企業の不適切な労務提供事例

• 研究企画、デザイン作成、プロトコール作成 • データ集計作業、データの統計解析作業 • 各種委員会開催案内、企業会議室の無償提供 • 論文執筆 • 事務局の事務手伝い • 印刷業務の代行 • その他

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製薬企業が抱える問題点および改革すべき課題 – 市販後医薬品を用いた介入研究支援を意図した高額な奨学寄附金提供と非開示 – 介入研究への企業の不適切な労務提供 – 企業雇用社員が当該企業名を伏せ、医療施設・機関の所属名(非常勤講師、派遣研

究員、社会人大学院生など)で当該医薬品の研究論文発表 – 製薬企業が関係する財団を経由した恣意的な研究助成金の提供 – 公正取引協議会における、製薬企業の過剰な販売促進活動を監視し適正化する機能

が不十分 – 商業ベースの医学情報雑誌社との金銭的関係の不透明性と発表内容のバイアス化、

関係医薬品の誇大広告 – 製薬協公表の透明性ガイドライン(2011年)に基づき、項目A(研究費開発費)にかかる

研究者名(所属名)は公開されず、研究者の産学連携活動への貢献度が不明 – 医師、医療施設・機関への支払額に関する情報の公表は、各企業独自に二段階法や

閲覧制限を設けるなど、国民目線に欠けた運用の可能性 わが国の医療イノベーションが成功するには、

産学官連携による臨床研究の質と信頼性の確保が大前提!

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日本医学会 COIマネージメント

◎施設・機関との連携にて、研究発表の質と信頼性確保への強化 ◎研究倫理とCOIマネージメントに関する啓発活動の強化 ◎日本医学会連合に倫理委員会の整備 ◎COI自己申告書(COI disclosure format)の国際標準化

(日本医学雑誌編集者組織委員会との連携にて、平成28年度を目標に作成)

◎健全な産官学連携の構築に向けた、関係施設・機関、団体等と の取り組み

今後の課題