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令和2年「情報通信に関する現状報告」 (令和2年版情報通信白書) ~5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築~ 2020年8月 総務省

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令和2年「情報通信に関する現状報告」(令和2年版情報通信白書)

~5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築~

2020年8月

総務省

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はじめに 2

● 新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、ICTは、国民生活や経済活動の維持に必要不可欠な技術となり、これまでデジタル化が進まなかった領域にもデジタル化の波が押し寄せている。

● 人の生命保護を前提に、感染症発生以前とはフェーズを異にする新たな社会・経済へと不可逆的な進化を遂げる。デジタル化・リモート化を最大限に活用することにより、個人、産業、社会といったあらゆるレベルにおいて変革が生まれ、新たな価値の創造へとつながっていく。

● これまでもデジタル基盤整備及びデジタル技術活用を通して、サイバー空間とリアル空間の融合が進んでいたが、感染症の発生を受けて、両空間が完全に同期する社会へと向かうとの指摘もある。今後は収束へ向けて、第5世代移動通信システム(5G)をはじめとするデジタル基盤や、IoT・ビッグデータ・AIといったデジタル技術の活用が、今まで以上に重要となる。

デジタル基盤とデジタル技術の活用を前提とした分散型社会

データの最大活用・オンライン化を前提とした柔軟かつ強靭な企業活動

新たな生活様式・多様な働き方の浸透

Before Corona With Corona

IoT

ビッグデータ

AI

4G → 5G

4K・8K

光ファイバ

デジタル基盤整備及びデジタル技術活用によりデジタル・トランスフォーメーションを推し進め産業の効率化や高付加価値化を目指してきた

デジタル技術

デジタル基盤

人の生命保護を前提にサイバー空間とリアル空間が完全に同期する社会へと向かう不可逆的な進化が

新たな価値を創出

新たな価値の創造

産業

個人

社会

新型コロナウイルス感染症の

世界的流行

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第1章 (1)移動通信システムの進展 3

(出典) 総務省資料

● 我が国の移動通信システムは、1979年の導入以降、約10年ごとの世代交代を経て、機能は大きく向上し、契約者数は飛躍的に増加。現在では、通信基盤から生活基盤へと進化。

● 我が国で本年から商用開始された5Gは、IoT時代の基盤として、様々な分野・産業で実装されることによって、従来以上の大きな社会的インパクトをもたらすものと期待。

● 2019年4月の米韓を皮切りとして、各国でも相次いで商用開始。

IoT時代の基盤としての5G

5G総合実証試験

クレーンの

安全確保

山岳登山者

の見守り

トラックの

隊列走行

酪農での

個体識別

ドローン&4Kカメラ

遭難者の状況把握

周波数帯 事業者 開始時期

日本3.7GHz帯,4.5GHz帯, 28GHz帯 4 2019年9月(プレサービスイン)

2020年3月

米国600MHz帯,2.5GHz帯,28GHz帯, 39GHz帯 4 2018年10月(固定系ネット接続用)

2019年4月から本格展開(スマートフォン)

中国700MHz帯,2.6GHz帯,3.5GHz帯, 4.9GHz帯 4 2019年11月(既存3社)

韓国 3.5GHz帯,28GHz帯 3 2018年12月(プレサービスイン)2019年4月から本格展開(スマートフォン)

欧州700MHz帯,3.6GHz帯, 26GHz帯

英国:4ドイツ:4

2019年5月以降、各国で順次開始2020年中の全加盟国における開始を目標

各国における5Gの商用開始状況

移動通信システムの進化

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第1章 (2)通信市場の構造変化 4

●IoTデバイス数は、IoT・AIの普及や5Gの商用開始等に伴い、特に産業用途やコンシューマ向けで大きく増加するものと予測(①)。他方、移動体通信サービスの契約数については、飽和状態に近づきつつあり、緩やかに成長していくものと予測(②)。

●世界の携帯電話端末市場は、この10年間で市場シェアを有する企業の顔ぶれが大きく変化。スマートフォンの販売台数においても中国企業が台頭して市場シェアを獲得する一方、日本企業の存在感は低くなっている(③)。

(出典) Informa4.3 4.5 4.7 4.9 5.0 5.1 5.1

20.7 20.8 21.5 21.9 22.3 22.7 23.0

37.7 39.6 39.9 41.2 42.5 43.6 44.5

1.64 1.68 1.76 1.82 1.88 1.94 1.98 6.0 5.8 5.8 5.8 5.8 5.9 5.9 70.4 72.4 73.6 75.7 77.5 79.1 80.5

0

20

40

60

80

100

2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022

(億契約)

中南米

日本

アジア太平洋(日本除く)欧州その他

北米

予測値

①世界のIoTデバイス数の推移及び予測

②世界の移動体通信サービス契約数の推移及び予測

(出典) Informa

(出典) Informa

③世界のスマートフォン販売台数シェア

89.2 97.7 104.6 107.9 110.9 113.7 116.4 120.6

22.1 27.0 33.6 40.9 51.3 61.5 72.4 87.0 21.3 22.2 22.4

22.4 22.3

22.3 22.3

22.9

26.4 32.0

37.6 44.0

53.9 64.8

77.3

92.7

165.6 187.3

208.7 227.8

253.5 280.4

309.8

348.3

0

100

200

300

400

2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022

自動車・宇宙航空

医療

産業用途

コンピュータ

コンシューマ

通信

(億台)

予測値

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第2章 (1)課題解決手段としてのICT/(2)2020年代を見据えた取組 5

● 我が国は課題先進国と称されるように、諸外国に先んじて人口減少・少子高齢化が進んでおり(①)、ICTを導入・利活用することで、雇用や生活の質、労働生産性の向上を積極的に進めて行くことがかねてから求められている。

● 2020年代を見据えた5G、キャッシュレス(②)、多言語音声翻訳(③)、顔認証等の新たな技術の導入、テレワークによる働き方の見直し、防災等の取組は、単に我が国のICTをショーケースとして世界に示すチャンスであるだけでなく、日本社会全体を変革するチャンスでもある。

①世界の高齢化率にみる課題先進国日本

(出典)①国際連合「世界人口予測2019年版」を基に作成②一般社団法人キャッシュレス推進協議会③総務省消防庁

0%

10%

20%

30%

40%

50%

1950

1957

1964

1971

1978

1985

1992

1999

2006

2013

2020

2027

2034

2041

2048

2055

日本

中国

韓国

シンガポール

インド

ドイツ

イギリス

アメリカ合衆国

予測値

②キャッシュレス化の推進

(ポイント還元事業開始前後におけるQRコード決済の利用頻度の変化)

8.2%

13.2%

8.0%

11.3%

事業開始前 事業期間中

1か月に1回以上利用1週間に1回以上利用

1.5倍

③多言語音声翻訳の活用

408

772

980

386

700

1071

12 24

364

0

400

800

1200

2017 2018 2019

救急ボイストラの使用実績(上位3言語)

英語中国語インドネシア語

(件)

【ポイント還元事業開始前】2019年8月30日~9月24日【ポイント還元事業期間中】2019年11月15日~12月2日 全国消防本部における2020年1月1日時点での使用実績

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遠隔授業を実施する67.7%

検討中31.2%

実施予定なし1.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

電子契約採用済み43.3%

電子契約の採用を検討中27.5%

採用していない・分からない

29.3%

電子契約の導入状況そう思う

24.3%

どちらかと言えばそう思う38.4%

どちらかと言えばそう思わない

26.9%

そう思わない10.4%

新型コロナウイルス収束後もテレワークを行いたいか

(n=346)

第2章 (3)新型コロナウイルス感染症が社会にもたらす影響 6

● 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、新たな生活様式への移行が求められている。

● 企業におけるテレワークの普及(①、②)の他、行政とシビックテック、民間企業との連携による人との接触リスクの可視化(③)、学校での遠隔授業(④)、遠隔医療の要件緩和などICTによる対面によらない生活様式への取組が一気に拡大している。

● 一方で、ICTの活用によるトラフィックの増加(⑤)、セキュリティリスクへの対応不足、電子契約への移行(⑥)等の業務内容の見直しの必要性、公衆衛生とパーソナルデータ活用のバランス等の課題が顕在化してきており、その解決の取組を推進していく必要がある。

②テレワーク実施者の継続希望

(出典)公益社団法人日本生産性本部

(出典)パーソル総合研究所

①テレワーク導入の増加

④大学・高等専門学校における今後の遠隔授業の活用に関する検討状況

17.2%

38.8%

8.5%13.8%

28.8%

53.3%

14.3%24.3%

2020年3月 2020年4月 2020年3月 2020年4月

緊急事態宣言対象7都府県 それ以外の地域

従業員のテレワーク実施率会社からのテレワーク推奨・命令率

⑤トラフィックの増加

(出典)NTTコミュニケーションズ

⑥電子契約への移行

(出典)JIPDEC(出典)文部科学省 (2020年5月12日現在)

③東京駅エリアの人口増減率緊急事態宣言前*との比較

(出典)NTTドコモ「モバイル空間統計」

100

120

140

160

平日

休日

緊急事態宣言期間

(2/25週を100とした通信量の比率)

-100

-80

-60

-40

-20

0

2020/5/1 2020/5/8 2020/5/15 2020/5/22 2020/5/29

(* 2020年4月7日 15時時点)

緊急事態宣言期間

(%)

※2020年5月時点

※2020年1月時点

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第2章 (4)5Gが促す産業のワイヤレス化① 7

● 5Gの実装が幅広い産業・分野で進むことによって、業務の効率化や新たな付加価値の創出といった効果をもたらすことが期待される(①~④)。

● 携帯電話事業者による全国向けサービスとは別に、地域や産業の個別ニーズに応じて、様々な主体が柔軟に利用可能な移動通信システムとして、ローカル5Gを創設。本年からローカル5G等を活用した課題解決モデルを構築するための開発実証を推進。

①農業(例:牛の遠隔モニタリング)

②インフラ・建設分野(例:クレーン作業の安全確保)

③安心・安全分野(例:山岳登山者見守り)

④モビリティ(例:高度な車両制御)

牛舎内の牛群から耳標を複数の4Kカメラで画像認識し、5Gで伝送することで、牛の位置特定や、搾乳量の減少した牛のモニタリングに係る負担を軽減。

クレーンの玉掛作業において死角となっている場所の4K高精細映像を5Gを用いて運転台に送信。映像を確認しながら安全に作業できる環境を実現。

ドローンからの4K映像を山岳救助本部及び救助隊員に5Gでリアルタイムで伝送し、現場の状況確認や登山者の状態把握を迅速に実施。

高速道路で実施したトラック隊列走行の実証試験において、5Gの超低遅延性を活用した10m間隔の車間距離制御を実現。

想定される5Gのユースケースの主な例

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第2章 (4)5Gが促す産業のワイヤレス化② 8

● 企業の5Gへの関心を尋ねたところ、いずれの業種も高い関心を示しているが、特に製造業の関心が高い。また、規模別では、大企業の関心がより高い(①)。

● また、産業用途における5Gとして、我が国と同様、ローカル5Gの制度を創設し、免許手続きを開始している国が存在(②)。

①企業の5Gへの関心 ②海外のローカル5G

24.2%32.2% 30.1%

22.7% 20.4% 16.4%

40.5%

11.3%

42.5%

42.6% 44.4%

39.7% 43.0%42.4%

45.9%

39.8%

21.2%15.1% 16.4%

22.4% 24.1%27.5%

7.6%

32.1%

12.0% 10.1% 9.1%15.2% 12.5% 13.6%

6.0%

16.8%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

全体 製造業 情報通信業 エネルギー・インフラ

商業・流通業 サービス業 大企業 中小企業

わからない 関心はない

関心がある(取り組み、検討はこれから) 関心がある(取り組み、検討を開始している)

ドイツ

2019年11月より3,700~3,800MHzでローカル5G免許の申請手続きを開始。2020年3月現在で、Siemens、Bosch、Lufthansa等が免許を取得。また、26GHz帯のローカル5G利用についても検討中。

英国

2019年7月より携帯キャリアの未使用

周波数を利用する「ローカルアクセス免許」の申請手続きを開始したほか、同年12月より既存免許人(公共業務、

衛星等)との共用を前提とする「共用アクセス免許」の申請手続きを開始。

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第3章 (1)デジタルデータ活用の現状と課題 9

● コンテンツの大容量化やIoTデバイスの普及などにより増大しているデータ流通は、5Gの普及により更に加速されると見込まれる(①、②)。

● IoTデバイスは5年前に比べ、4~7倍の高い伸びを示現している(③)一方、アメリカ及びドイツの企業に比べると、我が国のデジタルデータはさらに活用されることが望まれる(④)。

● 新型コロナウイルス感染症対策でシビックテックを中心としてオープンデータの活用が推進されており(⑤)、今後、多くの社会課題解決に役立てられることが期待される。

④企業によるデジタルデータの活用状況

0%

50%

100%

日本(n=600) アメリカ(n=100) ドイツ(n=100)

活用している検討中

⑤病床使用率の可視化

③企業が分析に活用しているデータ

(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」

①5Gによるデータ流通量の変化

0

100

200

2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025

(エクサバイト/月)

5G4G/3G/2G

(出典)Ericsson「Ericsson Mobility Visualizer」

0% 10% 20% 30%

POSデータ

eコマースでの販売記録データ

CTI音声データ

固定電話

携帯電話

アクセスログ

動画・映像視聴ログ

Blog、SNS等記事データ

GPSデータ

RFIDデータ

センサーデータ

交通量・渋滞情報データ

気象データ

防犯・遠隔監視カメラデータ

2015年

2020年

IoTデバイス約4~7倍

4 11 47

150

0

100

200

2020 2025

スマートフォン

モバイルPC・タブレット・ルーター

(エクサバイト/月)

約3倍

②モバイル経由のデータ通信量

(出典)「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」(4月7日時点)

※2020年3月調査実施

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第3章 (2)パーソナルデータ活用の今後/(3)5G時代のサイバーセキュリティ 10

● 日本においては情報銀行の認定などの取組が始まったこともあって、パーソナルデータの提供に不安を感じる消費者は3年前に比べ減少に転じている(①)。

● 今後、情報銀行・PDS(②)や匿名加工情報が更に活用されることが期待される。

● 併せて、5Gの普及に伴うリスクやサプライチェーンリスクなど、新たなサイバーセキュリティのリスクに対応することも重要。

0%

50%

100%

2017 2020 2017 2020 2017 2020 2017 2020

日本 アメリカ ドイツ 中国

既に利用している(利用したことがある)

利用したい

2017: n=1030、2020: n=1000

②消費者の情報銀行・PDSの利用意向

(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」

83% 78%61% 67% 61% 65% 73% 74%

0%

50%

100%

2017 2020 2017 2020 2017 2020 2017 2020

日本 アメリカ ドイツ 中国

不安を感じる

2017:n=1030、2020: n=1000

①サービスやアプリケーションを利用するに当たりパーソナルデータを提供することへの不安

(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」

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第4章 5Gのその次へ 11

● 2030年代に向けて、既に先進諸国では「5Gの次」(=Beyond 5G)の取組が始まっている(①)。

● 我が国でも官民が一丸となって国際連携のもとで戦略的に取り組むことが重要であることから、Beyond 5G推進戦略を今夏に策定(②)。

● 国際競争力の確保に向けて、我が国が強みを持つ又は積極的に取り組んでいる技術(テラヘルツ波、オール光ネットワーク、量子暗号、センシング、低消費電力半導体等)の研究開発力を重点的に強化。

①海外のBeyond 5G/6Gに関する取組の状況②Beyond 5G推進戦略~基本方針~