No. 「国際社会と医療政策」 平成...

( 1 )第 1357 号 〔昭和 42 年 3 月 4 日第 3 種郵便物認可〕平成 30 年 3 月 20 日 〒1138621 東京都文京区本駒込22816 電話 0339462121(代) FAX 0339466295 E-mail [email protected] http://www.med.or.jp/ 発行所 毎月2回 5日・20日発行 定価 2,400円/年(郵税共) 日本医師会キャラクター 「日医君」 No. 1357 2018. 3. 20 日本医師会 ハーバード大学 武見太郎記念国際 シンポジウム2~ 3面 「第30回日本医学会総会 2019中部」記者発表会 ………………… 4面 第1回「生命を見つめる フォト&エッセー」 表彰式 …… 6~ 7面 29 20 20 Global Society and ‘The Health Gap’ 調45 54 Adverse Childhood Experiences 調; 寿平成 29 年度医療政策シンポジウムが 2 月16 日、「国際社会と医療政策」をテ ーマとして日医会館大講堂で開催された。 当日は、サー・マイケル・マーモット元世界医師会長を始めとした 3 名による 講演の後、横倉義武会長も加わってパネルディスカッションが行われ、活発な 議論がなされた。 姿21 調16 ※1UHC( Universal Health Coverage: ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ) とは、全ての人が適切な予防、治療、 リハビリ等の保健医療サービスを、必 要な時に支払い可能な費用で受けられ る状態。 ※2マーモット・レビューとは、2008 年に 最終報告を出したWHO「健康の社会 的要因」委員会(CSDH:Commission onSocialDeterminantsofHealth )の 委員長だったマーモット氏が、イギリ スの保健省の援助の下に設置された委 員会から 2010 年 2 月に発表した新たな レポート。

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Page 1: No. 「国際社会と医療政策」 平成 29年度医療政策シンポジウムmed.or.jp/nichiionline/paper/pdf/n1357.pdf · 務理事と共に、文部科学副会長)、弓倉整同会専道永麻里常任理事(同会

(1)第1357号 日 医 ニ ュ ー ス 〔昭和42年3月4日第3種郵便物認可〕平成30年3月20日

〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16電話 03-3946-2121(代)FAX 03-3946-6295E-mail [email protected]://www.med.or.jp/

発行所

毎月2回 5日・20日発行 定価 2,400円/年(郵税共)

日本医師会キャラクター

「日医君」No. 13572018. 3. 20

●日本医師会ハーバード大学 武見太郎記念国際 シンポジウム… 2~ 3面●「第30回日本医学会総会 2019中部」記者発表会 ………………… 4面●第1回「生命を見つめる フォト&エッセー」 表彰式 …… 6~ 7面

シンポジウムは、石川

広己常任理事の司会で開

会。冒頭あいさつした横

倉会長は、少子高齢化が

進行し、財源や人口減の

問題もあるわが国で、国

民皆保険を堅持し、各地

域で過不足のない医療を

提供するためには、「か

かりつけ医」の担う役割

が重要であると指摘する

とともに、「医療の問題

ん・生活習慣病・心血管

疾患」そして「メンタル

ヘルス・認知症」へと主

要疾病が変化する中で、

特に認知症については、

「ビッグデータとAI」

「社会的ロボット」「脳研

究とデジタル技術の最先

端」の活用を考えるべき

だとした他、「認知症対

策の産官学などの協力プ

ラットホーム」の提案を

行っていることを紹介し

た。最

後に、医師・医療人

の社会的責任として、

(1)医師は医師会員と

なる、(2)医師会のあ

り方、(3)医師の働き方、

数、分布、労働基準法な

ど、(4)医療人、医療

職の連携へ、(5)将来

の医師

─について言

及。医師会はもっと責任

を持って医師に関わるべ

きだとするとともに、自

律した組織として存在し

ていけるよう、変化して

いくことを求めた。

パネルディスカッショ

ン「国際社会と医療政

策」そ

の後は、渋谷健司東

京大学大学院医学系研究

科国際保健政策学教室教

授が座長を務め、3名の

演者に横倉会長が加わっ

た4名によるパネルディ

スカッションが行われ

た。議

論の中で、グローバ

ルヘルスを通して国内医

療政策に役立つことは何

かを問われた横倉会長

「国際社会と医療政策」をテーマに開催

平成29年度医療政策シンポジウムめ

にマザー・テレサが創

設した〝死を待つ人々の

家〟での自身の経験や、

2000年を境にグロー

バルヘルスに対する援助

が始まった経緯などを紹

介するとともに、保健医

療援助資金の流れと、G

Fの資金供与とインパク

ト(救済した命)、20年

間で成果をもたらした要

因等を説明した。

また、今後のグローバ

ルヘルスの課題として、

①未解決な課題(エイズ、

結核、マラリア他)②公

衆衛生上の緊急事態、薬

剤耐性③非感染性疾患

(NCD)、高齢化社会に

伴う課題

─を挙げた。

更に、持続可能な開発

目標(SDGs)の3番

目にある「保健医療」の

中には、「目標3:感染

症の終

しゅうえん焉

」が挙げられて

いるが、その達成のため

には、資金を確保し、最

貧困層、最脆

ぜいじゃく弱

層を第

一に、各国主体の計画、

戦略の実践を支援するこ

とが必要だと指摘。具体

的な戦術として、(1)

インパクトと効率を最大

化、(2)保健システム・

UHC(※1)への支援、

(3)森を診ながら、木

を診る

─ことを挙げ、

「グローバルヘルスは20

年前から大きく動いてい

る。我々は海外から何が

できるのか、じっくり考

えていかなければならな

い」と結んだ。

講演2「グローバル社

会と健康格差(Global

Society and ‘The Health Gap’

)」

マーモット元世界医師

会長は、冒頭、自著『健

康格差 

不平等な世界へ

の挑戦』の中で「せっか

く治療した人をそもそも

病気にした環境になぜ返

すのか」という疑問を呈

していることを紹介。シ

カゴとイングランド及び

ウェールズの殺人犯の性

別・年齢別調査を例に、

生物学的に若い男性の方

がより暴力的であること

や銃の入手の可否の影響

等を示し、暴力・犯罪・

健康は緊密な関係にある

とした。

また、健康格差には濃

淡があり、教育水準・失

業といった要因の累積的

な影響も指摘。45~54歳

の総死亡率が多くの国で

同じように下がっている

中、アメリカの非ヒスパ

ニック系白人の死亡率だ

けが上がっている理由と

して、①ドラッグ、アル

コール②自殺③アルコー

ル性慢性肝疾患

─を挙

げ、社会的要因によって

差がついていると説明し

た。更

に、〝マーモット・

レビュー〟(※2)で、

公平な社会、健康な生涯

のために、六つの目標を

提唱したことに触れ、健

康な大人の始まりは幼児

期にあるので、子ども時

代の悪あ

しき体験(ACE

s:Adverse

Childhood

Experiences

)をなくし、

全ての子どもに最良のス

タートを与えるべきであ

るとして、教育の重要性

を強調した。

講演3「日本の医療;

課題と将来」

黒川清日本医療政策機

構代表理事は、世界はグ

ローバル化している一方

で各国は内向きとなって

おり、パラダイムは大き

く変化し、デジタルテク

ノロジーは幾何級数的な

変化を遂げていると指

摘。また、日本について

は、①国内経済の停滞②

経済・健康格差の拡大③

科学技術の進歩と長寿・

高齢社会による医療・年

金等の社会コストの増加

─によって社会不安が

起きているとした。

更に、「感染症」から「が

 平成29年度医療政策シンポジウムが2月16日、「国際社会と医療政策」をテーマとして日医会館大講堂で開催された。 当日は、サー・マイケル・マーモット元世界医師会長を始めとした3名による講演の後、横倉義武会長も加わってパネルディスカッションが行われ、活発な議論がなされた。

は多様で、国境を越えた

協力も必要となっている

が、その問題を解決する

ためには、困難を乗り越

え、広範囲な課題にも取

り組む姿勢が重要にな

る」とした。

続いて、中川俊男副会

長を座長として講演に入

った。

講演1「グローバルヘ

ルスの潮流:これから

どこへ行くのか?」

國井修世界エイズ・結

核・マラリア対策基金

(グローバルファンド、

以下GF)戦略・投資・

効果局長は初めに、アフ

リカ・ソマリアの難民キ

ャンプやインドのカルカ

ッタで、尊厳ある死のた

は、東日本大震災の際に

初めて医療資源の乏しい

地域と同様の環境下での

災害対応を行ったこと

や、中国を訪問した際に

〝一帯一路〟政策の一環

で「健康中国2030」

というプランを日本の

「健康日本21」を参考と

してつくったと聞いたこ

とを紹介し、「自国の医

療政策と海外での経験を

共に役立てていくこと

が、国際保健と地域保健

を連結する際のキーポイ

ントと考えている」と述

べた。

更に、グローバルヘル

ス分野における日医の役

割として、「UHCを広

めること」と「子どもが

しっかり育つような社会

づくりに貢献すること」

を挙げ、その取り組みを

推進していくとした。

国際環境変動の中での

日本の関与について、マ

ーモット氏は気候変動や

格差拡大等に対しては主

要国が協力し合うべきで

あり、日本は開発支援の

面で一層重要な役割を果

たせるのではないかとの

考えを示した。

また、國井氏は、「今

年の国連総会のハイレベ

ル会合のテーマに〝結核〟

が取り上げられており、

日本が医師を中心として

地域の連携を構築した成

功例をPRできるチャン

スだ」と述べるとともに、

グローバルヘルスは〝教

え合うこと〟であると強

調した。

黒川氏は、高齢社会の

最先端国である日本がど

う知恵を絞ってくるか、

世界が注目しており、ア

ジェンダ(行動計画)の

作成に取り組んでいるこ

とを紹介した。

最後に、中川副会長が、

「いつも以上に視野の広

い話とディスカッション

を聞くことができた」と

総括し、シンポジウムは

盛会裏に終了となった。

参加者は、16道府県医

師会におけるテレビ会議

システムでの視聴者を含

めて、合計416名。

※1:�UHC( Universal Health Coverage:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とは、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態。

※2:�マーモット・レビューとは、2008年に最終報告を出したWHO「健康の社会的要因」委員会(CSDH:Commission�on�Social�Determinants�of�Health)の委員長だったマーモット氏が、イギリスの保健省の援助の下に設置された委員会から2010年2月に発表した新たなレポート。

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日 医 ニ ュ ー ス 第1357号(2)平成30年3月20日〔第3種郵便物認可〕

横倉義武会長(日本学

校保健会長)は2月22日、

道永麻里常任理事(同会

副会長)、弓倉整同会専

務理事と共に、文部科学

省を訪れ、林芳正文科大

臣に中央教育審議会にお

ける学校保健の更なる充

実に向けた対応につい

て、謝意を表した。

横倉会長は、昨年2月

に学校医の代表として中

教審の委員に就任してか

ら1年が経過したことを

踏まえ、「第3期教育振

興基本計画においては、

健康教育の内容を充実し

て頂いた。また、教職員

の働き方について、医療

界から意見を取り入れる

考えがあることをお示し

頂き、深く感謝している」

と述べた。

また、弓倉専務理事は、

いじめや不登校、性の問

題行動、アレルギー疾患、

ネット依存など、さまざ

まな学校保健の課題に養

護教諭が一人で対応して

いる現場の厳しい実態を

訴え、養護教諭の複数配

置基準の引き下げを求め

た。更に、教員の働き方

を改革する大前提とし

て、教員の定数を増やし

ていくことも要望した。

これに対して林文科大

臣は、「部活が教員の大

きな負担になっている。

先生は生徒のために頑張

っているが、緊急的な対

応が必要」と応じた。

更に、西欧諸国に比べ

て学校の事務職員の割合

が低いことも教師の仕事

を増やす要因になってい

るとの認識を示し、「教

師が対応すべきこと、〝チ

ーム学校〟として、関係

者の連携で対応すべきこ

と、給食費の回収など、

外部に委託できることな

どは業務を仕分けしてい

く」と述べ、その一環と

して来年度予算において

は部活指導員の配置等を

盛り込んでいると説明し

た。

「日本医師会

ハーバー

ド大学

武見太郎記念国

際シンポジウム」〔主催

者(共催):日医、ハー

バード大学T.H.Chan

公衆

衛生大学院(HSPH)、

東京都医師会、武見記念

生存科学研究基金〕が2

月17日、「地域医療シス

あった点を強調したこと

に触れ、「今後、世界が

経験したことのない高齢

社会を〝安心〟へと導く

モデルもまた〝国民皆保

険〟であり、世界中に広

めていく必要がある」と

した。

また、昨年12月に、日

本政府、世界保健機関(W

基調講演

中谷比呂樹WHO執行

理事の座長の下、三題の

基調講演が行われた。

基調講演1「社会正義

と保健政策」では、サー

マイケル・

マーモット元

WMA会長が、諸国間に

存在する健康に関する不

平等の原因となっている

健康の社会的決定要因

(SDH)について講演

を行った。

マーモット氏は、健康

における不平等は、医療

に対するアクセスの差で

はなく、社会的・経済的

格差によって生じるもの

であると指摘し、「格差

の是正には、社会的な取

り組みが必要である」と

述べた。

また、WMA会長時代

を振り返り、「〝科学的根

拠に基づく政策〟〝社会

日本医師会 ハーバード大学 武見太郎記念国際シンポジウム

「地域医療システムとイノベーション: UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の基盤を築く」をテーマに

テムとイノベーション:

UHC(ユニバーサル・

ヘルス・カバレッジ)の

基盤を築く」をテーマに、

日医会館大講堂で開催さ

れた。

当日は、日医役職員、

日医国際保健検討委員会

委員、日医総研研究員、

東京都医師会役職員、医

師会関係者、武見フェロ

ー、医学生、日医ジュニ

アドクターズネットワー

ク(JMA─

JDN)の他、

海外から、世界医師会(W

MA)、韓国医師会、台

湾医師会、タイ医師会等、

約350名が出席した。

道永麻里常任理事の司

会で開会。冒頭、日医会

長並びにWMA会長とし

てあいさつした横倉義武

会長は、昨年10月のWM

Aシカゴ総会における第

68代WMA会長の就任あ

いさつにおいて、日本の

健康寿命を世界トップレ

ベルにまで押し上げたわ

が国の医療システムの背

景には、UHCとしての

〝国民皆保険〟の確立が

正義の精神〟という考え

の下、健康の社会的要因

に対する働き掛けを通じ

て〝健康の公正〟を推進

することが、会長として

の、そして人生における

使命であるとの思いで活

動してきた」とした上で、

公平な社会、健康な生涯

のための六つの政策目標

を紹介した。

HSPH武見国際保健

プログラムのマイケル・

ライシュ主任教授は、基

調講演2「ユニバーサ

ル・ヘルス・カバレッジ

をめざして:一歩一歩の

進歩」で、(1)UHC

が世界と日本の政策アジ

ェンダとなった、(2)

UHCをどのように達成

するか、(3)UHCを

目指した二カ国の経験

(日本とメキシコ)、(4)

UHCを目指すための教

─について講演。

(1)では、「UHCフ

ォーラム2017」にお

いて、横倉WMA会長や

安倍総理を始めとする世

界の保健分野のリーダー

がUHCを達成するため

に、その支援を行う考え

を表明したことに触れ、

UHCが世界の政策アジ

ェンダになるために日本

が果たしてきた功績を称

えた。

基調講演3「世界

HO)、世界銀行、ユニ

セフ、国際協力機構(J

ICA)等の主催で開催

された「UHCフォーラ

ム2017」で、安倍晋

三内閣総理大臣が、「途

上国のUHCの推進に向

けて日本も大きく支援し

ていく」と述べたことに

言及。「UHCの推進に

向けたグローバルな課題

について議論していく場

として、『地域医療シス

テムとイノベーション:

UHCの基盤を築く』を

テーマとした本シンポジ

ウムは、大変意義がある」

と期待感を示した。

続いて、武見敬三参議

院議員(実行委員会委員)

が主催者あいさつを、加

藤勝信厚生労働大臣が来

賓あいさつをそれぞれ行

った。

マーモット元世界医師会長

ライシュハーバード大学大学院主任教授

中教審における

学校保健の充実への対応に謝意

横倉会長・道永常任理事

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(3)第1357号 日 医 ニ ュ ー ス 〔第3種郵便物認可〕平成30年3月20日

交通事故による死亡者

数は年々減少している

が、死亡事故件数のうち

高齢運転者の割合は、増

加傾向である。その対策

として、75歳以上の認知

機能検査を強化すること

を柱とした改正道路交通

法が昨年3月に施行され

た。当

初、認知機能検査で

第一分類と判断され、診

断書を求められる高齢者

が急増すると予想され、

認知症専門医のみでは対

応できないことから、か

かりつけ医にも診断書記

載の協力が求められた。

法改正後1年を経

過したが、大きな

混乱なく手続きが

進められているよ

うに見える。

日頃、専門医として診

断書記載を求められるこ

とが多い。結果の重大性

を考え情に流されて判断

することはないが、個々

の生活の背景を知ると苦

慮することが少なくな

い。

「軽トラックで数百メ

ートル先の田んぼに行く

だけ」「長年、無事故・

無違反で運転に

問題はない。免

許証を取り上げ

られると家族が

困る」などと運転継続を

懇願される。一方、付き

添いの家族などから「運

転が荒い。車のキズ、ヘ

コミが絶えない。運転を

やめて欲しいけど、言う

と怒る」などと言われる

こともある。時間をかけ

て話しているうちに、自

主返納される方が少なく

ないのも事実である。

認知症の症状・経過の

多様性を考えると実車テ

ストの実施等、今後見直

さなければならない点は

決して少ないわけではな

い。今回の法改正の高齢

運転者による死亡事故対

策としての実効性、及び

処分を受けた高齢者のそ

の後の生活が気になる。

(榮)

高齢者の自動車運転に思うこと

医師会の貢献」で横

倉会長は、WMAは最高

水準の医の倫理を推進す

る組織として、ジュネー

ブ宣言、ヘルシンキ宣言

やリスボン宣言等、20

0を超える宣言・声明を

採択し、公表しているこ

とを紹介するとともに、

「グローバル化の進展に

より、医療界を取り巻く

多くの問題が国境を越え

て立ちはだかっており、

健康の不平等、格差の問

題等、喫緊の課題への取

り組みが急務となってい

る」と指摘した。

また、「WMA会長と

して、途上国における公

衆衛生の確立、安定した

医療の確保と維持、UH

Cの推進と支援に向けた

取り組みを展開していき

たい」と述べるとともに、

「WMAのプレゼンス、

機能を可能なかぎり高

め、その活動を更に充実

させていく」とした。

また、武見参議院議員

は、高齢化社会において

アジア諸国と日本がどの

ようなパラダイムで互恵

関係をつくっていけるか

考察するとともに、世界

的な規模への発展の可能

性について言及した他、

近藤達也医薬品医療機器

総合機構(PMDA)理

事長は、「レギュラトリ

ーサイエンス」の概念、

イノベーションの取り組

みや国際協力活動につい

て説明した。

特別講演

尾﨑治夫東京都医師会

長が座長を務め、(1)「オ

リンピック・パラリンピ

ック準備における保健問

題:価値はあるのか? 

2012年ロンドンから

の教訓」(ブライアン・

マクロスキー英勲爵士/

大規模イベントと地球規

模健康危機管理に関する

WHO協力センター)、

(2)「リオオリンピッ

ク・パラリンピックの経

験から学ぶ:オリンピッ

クの全体的な健康への影

響」(マルシア・カスト

ロHSPH准教授)

の二つの講演が行われ

た。

総括講演とまとめ

道永常任理事の座長の

下、永井良三自治医科大

学長が総括講演として、

生存科学の多文化性と統

合への思し

ぼ慕の理解がUH

Cの基盤であり、ポスト

近代医学を考える上で重

要であることを論じた後、

三つのセッションの座長

による総括が行われた。

武見プログラム

設立35周年フォーラム

翌18日午前には、「少

子高齢社会における健康

格差是正」をテーマとし

て、武見プログラム設立

ディネーターからは、武

見プログラムの歴史、将

来展望、現在のフェロー

についてそれぞれ説明が

あった。

その後のセッションで

は、「地球規模課題に挑

む武見フェローの活躍と

今後の展望─少子高齢社

会における健康格差是正

の成功事例」をテーマに、

日本、韓国、台湾のフェ

ローによる講演が行われ

た。

35周年フォーラムが東京

都医師会館講堂で開催さ

れた。

本フォーラムは、武見

プログラムの設立35周年

を記念し、フェローの連

携の強化、将来展望を議

論することを目的として

行われたものである。

横倉会長はあいさつ

で、国際保健における武

見フェローの更なる活躍

を期待するとともに、武

見プログラムはハーバー

ド大学でも高い評価を得

ているとして、日医とし

ても継続して支援してい

く考えを示した。

引き続き行われた基調

講演で、武見参議院議員

は、医療分野の人的資源

に投資することの意義を

指摘し、「今後はその効

果を定量的に示すことが

重要になる」と述べた。

また、ライシュ主任教

授、バンプ事務局長、エ

ミリー・コールズ

コー

セッション1「地域医

療と健康長寿:少子高

齢社会、日本の経験」

武見参議院議員の座長

の下、後藤あや福島県立

医科大学教授は、地域と

共に歩むチーム保健活動

を原動力とした「少子高

齢社会におけるライフサ

イクル・アプローチ」を、

また、磯博康大阪大学大

学院教授は、「生活習慣

病に立ち向かい大きな成

果を上げたわが国の公衆

衛生の展開と課題」を論

じた。

鈴木邦彦常任理事は、

日本の公的医療保険の三

つの特長(国民皆保険、

フリーアクセス、現物給

付)や医療提供体制など

について講演した。

団塊の世代が75歳以上

になる2025年に向け

た医療提供体制の構築の

ポイントとしては「地域

包括ケアシステム」と「地

域医療構想」を挙げ、「行

政と医師会が車の両輪と

なる必要があり、多職種

連携のまとめ役として医

師会とかかりつけ医の役

割が重要になる」と強調。

スジャータ・ラオ前イ

ンド保健家族福祉省次官

は、「インドにおけるU

HC実現のためのプライ

マリ・ヘルス・ケア」に

ついて説明した。

セッション2「地域と

世界をつなぐイノベー

ション」

笠貫宏早稲田大学特命

教授を座長として、宮田

裕章慶應義塾大学医学部

教授は、ITと関連社会

のイノベーションによ

り、患者・国民を中心に

した保健医療情報をどこ

でも活用できるオープン

な情報基盤の可能性につ

いて、大田秀隆厚生労働

省老健局認知症施策推進

室認知症対策専門官は認

知症をめぐる技術・社会

革新、包括的支援認知症

施策推進総合戦略の取り

組みについて報告。高橋

泰国際医療福祉大学教授

は、ICTやハイテク機

器を用いた介護現場のあ

るべき姿や老い方につい

て、また、ジェシー・バ

ンプHSPH武見プログ

ラム事務局長は、地域医

療の課題におけるイノベ

ーションの影響の歴史的

展望についてそれぞれ説

明した。

セッション3「地域医

療の国際展開を支える

枠組み」

ライシュ教授を座長と

して、ミッキー・チョプ

ラ世界銀行保健サービス

課長は、医療制度の未来

を変革させるために新た

に実現すべきイノベーシ

ョンについて解説。

2020年東京オリンピック・パ

ラリンピックのレガシーとしての

健康・タバコフリー社会づくりに

関する国際会議

同日午後からは、「2

020年東京オリンピッ

ク・パラリンピックのレ

ガシーとしての健康・タ

バコフリー社会づくりに

関する国際会議」が同会

場で開催され、小池百

合子東京都知事のあい

さつの後、ロンドン、

リオでのオリンピッ

ク・パラリンピックの

経験から得た教訓、ス

ポーツによる健康長

寿、健康増進の効果や

影響が論じられた。

尾﨑都医会長は基調

講演で、「運動により

健康になる」という意

識を国民全体に広げ、一

体感を得ることが、未来

に続くこの大会の健康面

でのレガシーとなり、本

大会を開催する重要な意

義ともなると強調した。

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日 医 ニ ュ ー ス 第1357号(4)平成30年3月20日〔第3種郵便物認可〕

メンタルヘルスの支援が

必要な妊産婦のスクリー

ニングとケアを行う取り

組みを進めているとし、

「行政や精神科など多職

種の連携で早期介入し、

長期に支援していく体制

づくりが課題である」と

述べた。

「発達障害幼児の支援

─健診での気づきとその

後の対応─」について講

演した小枝達也国立成育

医療研究センターこころ

の診療部長は、「発達に

問題がある子どもは叱ら

れることが多いため自信

がなくなり、学童期後半

から学校不適応、思春期

以降に社会への不適応を

引き起こす」として、発

達障害の早期発見のため

にも、就学前の5歳で健

診を行うことが有効であ

ると提唱した。

また、5歳児健診は、

社会性発達や行動統制力

が弱い子どもに気づき、

子育て相談・心理発達相

談・教育相談へつなげる

ことで、育児支援と就学

に向けた心構えを喚起す

る場にもなると強調し

た。当

日の出席者は205

名であった。

いくとした。

続いて、五十

嵐隆国立成育医

療研究センター

理事長/日医母

子保健検討委員

会委員長を座長

として、基調講

演2題が行われ

た。

「子育て世代

包括支援センタ

ーの目指すも

の」について講

演した北澤潤厚

生労働省子ども

家庭局母子保健

課長は、地域のつながり

の希薄化等によって子育

てが孤立化し、負担感も

増していることを指摘。

妊娠期から子育て期にわ

たり切れ目なく支援する

「子育て世代包括支援セ

ンター」を平成32年度末

までに全国展開すること

を目指しているとした

他、同センターでは、全

ての妊産婦、乳幼児と保

護者を対象に、保健師、

助産師、看護師、ソーシ

ャルワーカーなど多職種

が支援台帳を用いて情報

共有しつつ、継続的に関

わっていることを説明し

た。

「周産期メンタルヘル

ス支援を目指して」と題

して講演した岡野禎治三

重大学保健管理センター

/大学院医学系研究科教

授は、妊産婦の自殺事例

と精神既往歴との相関を

データで示した上で、「重

症のうつ病」「産褥精神

病」「双極性障害」は産

後の再発率が高いと強

調。妊娠期からこれらの

既往歴を把握し、精神科

と連携する重要性を訴え

るとともに、産後におけ

るうつ病の包括的なスク

リーニングには、(1)

過去一カ月の間に、気分

が落ち込んだり、元気が

なくて、あるいは絶望的

になって、しばしば悩ま

されたことがあるか(抑

うつ気分)、(2)過去一

カ月の間に、物事をする

ことに興味あるいは楽し

みをほとんどなくして、

しばしば悩まされたこと

があるか(興味や喜びの

喪失)

─の二つの質問

が有用であると述べた。

引き続き、「多職種連

携による子育て支援を目

指して」(座長:福田稠

熊本県医師会長/日医母

子保健検討委員会副委員

長)をテーマに講演三題

が行われた。

講演「米国の小児の健

診体制(Bright Futures

と本邦への応用の検討」

では阪下和美氏(国立成

育医療研究センター総合

診療部総合診療科)が、

米国小児科学会が作成し

たガイドライン「Bright

Futures

」を紹介し、出

生から21歳まで月齢・年

齢ごとに確認すべきポイ

ントなどが示されてお

り、かかりつけ医が継続

的に保健指導を行う指標

となっていることを説

明。次回指導までに起き

うるリスクに対してもア

ドバイスできるものであ

り、日本で思春期世代へ

の保健指導に応用する際

には、地域の医療者が学

校・学校医・スクールカ

ウンセラーと連携しつ

つ、予防的に介入してい

くことが必要になるとの

考えを示した。

「周産期のメンタルヘ

ルス~多職種連携の現状

と課題~」と題して講演

した相良洋子日本産婦人

科医会常務理事/さがら

レディスクリニック院長

は、東京都における周産

期の自殺件数として、2

005年から10年間の異

常死89例のうち63例が自

殺であることを報告。心

理社会的支援が必要な妊

産婦の存在が広く認識さ

れてきたことから、同医

会では、産科医療機関で

「第30回日本医学会総

会2019中部」記者発

表会が2月28日、日医会

館で行われた。

本総会は、「医学と医

療の深化と広がり~健康

長寿社会の実現をめざし

て~」をメインテーマと

して、学術集会(平成31

年4月27~29日、名古屋

国際会議場など)、学術

展示(4月26~29日、名

古屋国際会議場など)、

市民展示(3月30日~4

月7日、ポートメッセな

ごや)、医学史展(3月

2日~4月28日、名古屋

大学博物館)などがそれ

ぞれ開催される

他、今後の医学会

を活性化するた

め、医学上、優れ

た業績を上げた若

手研究者を表彰す

る日本医学会総会

奨励賞が新設され

ることになってい

る。今

回の記者発表

は、開催までおよ

そ1年となること

から、その概要を

説明するために行

われたものであ

る。冒

頭あいさつし

た横倉義武会長

は、医学会総会が

一世紀以上にわた

り、日本の医学・医療の

発展に貢献してきたこと

に謝意を示した上で、今

回の総会のプログラムに

「グローバル化する日本

の医療」が取り上げられ

たことに言及。「医療の

グローバル化は避けては

通れない問題となってお

り、総会での議論が、現

在日本が直面している多

くの問題の再認識と、そ

の解決の糸口になること

を期待している」と述べ

た。門

田守人日本医学会長

は、「医療を取り巻く問

題が時々刻々と変わる中

で、今回の総会の四つの

柱は今の時代に合致した

ものになっている。日本

医学会としても、総会を

成功させるため、全力で

協力していきたい」とし

た。引

き続き、今回の総会

の会頭である齋藤英彦名

古屋大学名誉教授が、総

会の基本構想である四つ

の柱(①医学と医療の新

展開②社会とともに生き

る医療③医療人の教育と

生き方④グローバル化す

る日本の医療)や、学術集

会・学術展示に3万人、

市民展示・医学史展に30

万人を参加目標に掲げて

いること等を概説した。

その後は、

橋雅英準

備委員長(名大理事)が

総会の概要、門松健治プ

ログラム委員長(名大教

授)が学術講演、若林俊

彦展示委員長(名大教授)

が展示会事業、長谷川好

規総務委員長(名大教授)

が日本内科学会総会・講

演会との連携について、

それぞれ説明した。

「多職種連携による

子育て支援を目指して」をテーマに

平成29年度母子保健講習会

平成29年度母子保健講

習会が2月18日、日医会

館大講堂で開催された。

温泉川梅代常任理事の

司会で開会。冒頭のあい

さつで横倉義武会長(中

川俊男副会長代読)は、

国において、「子ども・

子育て支援新制度」(平

成27年4月)の施行や、

安倍内閣の掲げた「新・

三本の矢」(同年9月)

の一つに「夢をつむぐ子

育て支援」が盛り込まれ

るなど、少子化対策が進

められていることを挙

げ、日医としても、妊娠

期から子育て期にわたり

切れ目なく支援を受けら

れる体制整備に向け、積

極的に政策提言を行って

「医学と医療の深化と広がり ~健康長寿社会の実現をめざして~」をテーマに開催

「第30回日本医学会総会2019中部」記者発表会

日 

本 

医 

師 

ダイヤルイン

総務課(人事・労務)

03―3942―6493・総務課

03―3942―6481/

03―3942―6477・施設課

03―3942―7027・経理課

03―3942―6486・広報課

03―3942―6483・情報システム課

03―3942―6135・医療保険課

03―3942―6490

介護保険課

03―3942―6491・年金・税制課

03―3942―6487・生涯教育課

03―3942―6139・編集企画室

03―3942―6488・日本医学会

03―3942―6140・情報サービス課 03―3942―6482・医学図書館

03―3942―6492・国際課

03―3942―6489

総合医療政策課

03―3942―6514・医事法・医療安全課

03―3942―6506/03―3942―6484・地域医療第一課

03―3942―6137・地域医療第二課

03―3942―6138・地域医療第三課

03―3942―8181・感染症危機管理対策室

03―3942―6485

医賠責対策課

03―3942―6136・日医総研

03―3942―7215・女性医師バンク

03―3942―6512・治験促進センター

03―5319―3781・電子認証センター

03―3942―7050(防災センター

03―3942―6516・日本医師連盟

03―3947―7815)

Page 5: No. 「国際社会と医療政策」 平成 29年度医療政策シンポジウムmed.or.jp/nichiionline/paper/pdf/n1357.pdf · 務理事と共に、文部科学副会長)、弓倉整同会専道永麻里常任理事(同会

(5)第1357号 日 医 ニ ュ ー ス 〔第3種郵便物認可〕平成30年3月20日

第14回男女共同参画フォーラム

◆メインテーマ:次世代

がさらに輝ける医療環境

をめざして~超高齢社会

で若者に期待する

◆主催:日医

◆担当:高知県医師会

◆日時:5月26日(土)

午後1時~5時15分

◆場所:ザ 

クラウンパ

レス新阪急高知(高知市

本町4─

2─

50 

088─

873─

1111)

◆参加費:無料

◆申込方法:日医ホーム

ページ(http://www.med.

or.jp/doctor/female/

forum/006626.html

ら参加申込書をダウンロ

ードし、必要事項を記入

の上、所属している都道

府県医師会宛てにFAX

または郵送にて申し込み

願いたい。

◆申込締切:4月20日

(金)

◆主なプログラム

・基調講演「次世代につ

ながる生命科学とは」(高

橋淑子京都大学大学院教

授)

・報告(①日本医師会男

女共同参画委員会②日本

医師会女性医師支援セン

ター事業)

・シンポジウム

1「偶然と集いの医療環

境マネージメント:高知

の試み」(倉本秋一般社

団法人高知医療再生機構

理事長)

2「若手医師が考える少

子高齢時代のキャリア形

成」〔児玉佳奈氏、岡村徹

哉氏(いずれも研修医)〕

3「女性医師の現状、米

国オレゴン健康科学大

学、家庭医療科の現場か

ら」(大西恵理子オレゴ

ン健康科学大学助教授)

4「高知県医師会・高知

県女医会の活動につい

て」(計田香子高知県医

師会常任理事)

・総合討論

・第14回男女共同参画フ

ォーラム宣言採択

◆問い合わせ先:日医総

務課〔

03─

3942─

477(直)〕

※なお、当日は会場に保

育室を設置する予定。利

用希望者は、保育室利用

申込書に記入の上、申し

込み時に連絡願いたい。

平成29年度女性医師支

援事業連絡協議会が2月

14日、日医会館大講堂で

開催された。

今村定臣常任理事の司

会で開会。冒頭のあいさ

つで横倉義武会長

は、「少子高齢化、

人口減少という大き

な課題に直面してい

るわが国において、

『女性の力』が十分

に発揮され得る環境

を整備していくこと

は必要不可欠であ

る」と述べた。その

上で、女性医師の活

躍支援は、「医師の

働き方」改革の重要

な論点の一つでもあ

るとして、これまで

以上に注力していく

とするとともに、都

道府県医師会と連携

を図り協力しなが

ら、女性医師バンク

事業等の一層の活性化を

目指していく考えを示し

た。議

事では、6ブロック

(北海道・東北、関東甲

信越・東京、中部、近畿、

中国四国、九州)から7

府県医師会(岩手、山形、

長野、石川、大阪、徳島、

大分)が女性医師支援セ

ンター(以下、支援セン

ター)事業ブロック別会

議の総括や特徴的・先進

的な取り組み等を紹介し

た。北

海道・東北ブロッ

ク:梅邑明子岩手県医女

性医部会幹事は、北海

道・青森・秋田・宮城・

福島・岩手の各道県医の

取り組みについて報告。

神村裕子山形県医常任理

事は、同県医の取り組み

を概説した上で、医師が

就労の問題に直面した時

に一番力になるのは医師

会であり、そのためにも

医師会加入率を上げるこ

とが重要だと指摘した。

関東甲信越・東京ブロ

ック:飯塚康彦長野県医

常任理事は、主に病児保

育施設について意見交換

を行ったことを報告。茨

城県医が、県や関係市町

村及びファミリー・サポ

ート・センターと連携し

て行っている、子どもの

一時預かり等、女性医師

の就業を支援している医

師保育支援事業について

解説した。また、黒川由

美長野県医勤務医委員会

委員は、長野県の病児等

送迎及び病児等ベビーシ

ッターサービス支援事業

等を紹介した。

中部ブロック:轟千栄

子石川県医理事は、富山

県医の富山大学医学部3

年生への講義や岐阜県医

の医学生のための在宅医

療体験学習事業等が好評

であること、三重県の「女

性が働きやすい医療機

関」認証制度の実績など、

各県医の特徴ある取り組

みの成果を説明した上

で、今後は、各県医担当

理事の情報共有・連携等

の強化を図る意向を示し

た。近

畿ブロック:笠原幹

司大阪府医理事は、兵庫

県医の施設長・勤務医へ

の意識及び環境調査、滋

賀県の医学生・研修医サ

ポート事業や育児支援事

業、奈良県の県立医科大

学の女性医師支援の取り

組み、和歌山県医の女性

医師メンター制度や「研

修医レター」の発行、京

都府医の「医師のワーク

ライフバランス委員会」

の設置や子育て支援等に

関する取り組み状況調

査、大阪府医の院内保育

所・託児施設の現況等に

関するアンケート調査な

どについて説明した。

中国四国ブロック:岡

田博子徳島県医男女共同

参画委員会委員長は、ま

ず医師会員の関わる介護

問題への同県医の取り組

みについて報告。育児と

介護に関するアンケート

を実施し、その結果を受

け、「介護と仕事の両立

に関する講演会」を複数

回開催し成果を上げてい

ること等を説明した他、

各県医の取り組みを紹介

した。

九州ブロック:中田健

大分県医男女共同参画委

員会委員は、宮崎県の「未

来の医療を語る全員交流

会」に宮崎大学医学部医

学科5年生の約9割が参

加していること、熊本県

では無理なく復職をした

い人のために、かかりつ

け医が訪問診療に行く間

の外来業務を担ってもら

う「お留守番制度」を設

けていることや、キャリ

アサポートブックの作

成・配布によりキャリア

支援に前向きな病院が増

えていることなど、各県

医の取り組みを概説し

た。そ

の後の質疑応答・総

合討論では、「女性が働

きやすい医療機関」認証

制度や、病児の送迎支援

など「病児保育」に関す

る質疑が多く出された

他、「『お留守番制度』は、

在宅医療を支える意味で

も、女性医師を支援する

ためにも、大変有意義な

制度である」との意見や

「医師の働き方」につい

てなど、活発な意見交換

が行われ、協議会は盛会

裏に終了となった。

参加者は148名であ

った。

ブロック別に 「女性医師支援」の取り組み等を報告

平成29年度 女性医師支援事業連絡協議会

にご活用下さ

い。

〈販売方法〉

◆価格:一枚5

00円。

◆申込方法:郵便、FA

Xまたはメールにて、郵

便番号・住所・氏名・電

話番号を記入し、購入枚

数(一人合計10枚以上)、

種別(ブルーまたはピン

ク)を明記の上、日医広

報課宛てにお申し込み下

さい。

入金方法(銀行振込)

のご案内をお送りしま

す。

※なお、図書カードは、

代金の振込(入金)の確

認ができ次第の発送とな

ります。

◆申し込み・問い合わせ

先:日医広報課

〔〒113─

8621 

東京

都文京区本駒込2─

28─

16

03─

3942─

64

83(直通)、

03─

394

6─

6295、

kouhou@

po.med.or.jp

「日医君」図書カード

販売

│日医会員限定│

にちいくん

このたび、「医療に関

する専門家集団」である

日医を、医師だけではな

く国民にも、より身近で

親しみのある団体として

認知してもらうことを目

的として作成した、日本

医師会新キャラクター

「日に

い医君く

」の図書カード

を、日医会員限定で販売

することになりました。

プレゼント、御礼など

日 

本 

医 

師 

ダイヤルイン

総務課(人事・労務)

03―3942―6493・総務課

03―3942―6481/

03―3942―6477・施設課

03―3942―7027・経理課

03―3942―6486・広報課

03―3942―6483・情報システム課

03―3942―6135・医療保険課

03―3942―6490

介護保険課

03―3942―6491・年金・税制課

03―3942―6487・生涯教育課

03―3942―6139・編集企画室

03―3942―6488・日本医学会

03―3942―6140・情報サービス課

03―3942―6482・医学図書館

03―3942―6492・国際課

03―3942―6489

総合医療政策課

03―3942―6514・医事法・医療安全課

03―3942―6506/03―3942―6484・地域医療第一課

03―3942―6137・地域医療第二課

03―3942―6138・地域医療第三課

03―3942―8181・感染症危機管理対策室

03―3942―6485

医賠責対策課

03―3942―6136・日医総研

03―3942―7215・女性医師バンク

03―3942―6512・治験促進センター

03―5319―3781・電子認証センター

03―3942―7050(防災センター

03―3942―6516・日本医師連盟

03―3947―7815)

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日 医 ニ ュ ー ス 第1357号(6)平成30年3月20日〔第3種郵便物認可〕

第1回「生い

ち命を見つめ

るフォト&エッセー」(日

医・読売新聞社主催、厚

生労働省後援、東京海上

日動火災保険株式会社、

東京海上日動あんしん生

命保険株式会社協賛)の

表彰式が2月24日、都内

の受賞者に、それぞれ賞

状・副賞が授与された。

その後の審査講評で

は、フォト部門審査員を

代表して熊切圭介日本写

真家協会長が、「カメラ

の機能が多彩になり、よ

り豊かな表現ができるよ

うになったことで写真の

面白さを多くの人が感じ

られるようになってい

る」とした上で、今回の

入賞作品については、「面

白いもの、魅力的なもの、

表現力豊かなものと実に

さまざまで、写真の世界

が広がっていると感じ

た。本日はこれらの写真

をどのような方が撮った

のか、会えるのを楽しみ

にしてきた」と述べ、受

賞者を祝福した。

また、エッセー部門審

査員を代表して養老孟司

東京大学名誉教授は、「テ

ーマがいかに読む側に伝

わってくるかを重視し

た。どなたが受賞しても

差し支えなく、正直、審

査をしたくはなかった」

と選考を振り返るととも

に、「メールやSNS等

相手の見えないデータの

みが行き交う時代。手書

きの原稿は審査員として

は読みにくいが、相手を

感じることができるのが

いい。次回も楽しみにし

ている」と述べた。

なお、今回の入賞作品

は日医ホームページに掲

載している他、冊子とし

てまとめ、『日医雑誌』

5月号に同梱して全会員

に送付する予定。

で開催された。

本事業は長年にわたり

実施してきた「『生い

ち命を

見つめる』フォトコンテ

スト」と「『心に残る医

療体験記』コンクール」

を統合、リニューアルし

て、今年度より開始した

ものである。

冒頭、主催者を代表し

てあいさつした横倉義武

会長は、多数の応募があ

ったことに謝意を示した

上で、「それぞれの入賞

作品を拝見し、改めて生

命や絆の大切さに気づか

され、深く感動した」

と述べ、受賞者への

祝意を表した。

また、今後、高齢

になっても元気で健

やかに暮らしていく

ためには、若い時か

ら健康を意識し、日

頃から何でも相談で

きる「かかりつけ医」

をもつことが重要で

あるとした上で、国

民の信頼を得るた

め、医師の側にも「か

かりつけ医」として

の意識を高めてもら

うよう、引き続き働

き掛けていくと述べ

た。加

藤勝信厚労大臣

(代読)他の祝辞に

続いて、道永麻里常

任理事が、フォト部

門2206点、エッ

セー部門1115編

という多数の応募が

あったことを始め、

審査の詳細等も含め

た経過報告を行った。

引き続き表彰に入

り、まず、フォト部門

の厚生労働大臣賞、

日本医師会賞、読売

新聞社賞、審査員特

別賞各1名、入選5

名の受賞者に、それ

ぞれ賞状・副賞が授

与された後、エッセー部

門「一般の部」の厚生労

働大臣賞、日本医師会賞、

読売新聞社賞、審査員特

別賞各1名、入選6名の

受賞者、続いて、「中高生

の部」並びに「小学生の

部」の最優秀賞、優秀賞

第1回「生命を見つめるフォト&エッセー」表彰式い の ち

Page 7: No. 「国際社会と医療政策」 平成 29年度医療政策シンポジウムmed.or.jp/nichiionline/paper/pdf/n1357.pdf · 務理事と共に、文部科学副会長)、弓倉整同会専道永麻里常任理事(同会

(7)第1357号 日 医 ニ ュ ー ス 〔第3種郵便物認可〕平成30年3月20日

今から17年前。父が66

歳の時に脳腫瘍が見つか

った。父はその6年前に

脳出血で倒れ、何度も危

機を乗り越えながら、よ

うやく平穏な日常が戻っ

てきた矢先のことだっ

た。総

合病院で緊急手術を

したのだが、患部を取り

除いても、月単位でまた

別の場所に腫瘍ができ、

父は1年の間に4回もメ

スを入れた。

その度に父の身体機能

や意識レベルが衰え、最

後の手術の後は、排は

いせつ泄の

感覚も麻ま

ひ痺してしまい、

母や私のことも分からな

いようだった。

父は日頃から、自分が

認知症になったり、意識

障害に陥ったら、自分の

哀れな姿を他人には絶対

に見せないでほしいと言

っていた。私達は父の意

思を尊重してあげよう

と、友人、知人には一切

知らせていなかった。

母は病室に折りたたみ

の簡易ベッドを持ち込

み、毎日泊まり込んでい

た。そして何かに取り憑つ

かれたように一日中父の

そばに張り付き、時々ド

アを開けては人の気配を

うかがっている母の行為

は、周りから見ても異常

だった。私は正直言って、

父よりも母の方が心配だ

った。

主治医のA先生は、頻

繁に病室を訪ねてくれ

た。穏やかで、ちょっと

間延びした口調で、「ど

うですか~? 

変わりな

いですか~?」って、声

をかけながら入ってく

る。今から思えばA先生

のその言葉は、父だけで

はなく、私たちにも向け

られていたのかも知れな

い。母は回診の度に、「絶

対に治りますよね?」っ

て、すがるような目でA

先生を問い詰めた。A先

生から父の病状や余命を

全て知らされていた私

は、いたたまれない気持

ちになった。A先生は母

から目をそらさず、優し

いまなざしで大きくうな

ずいてくれた。あの時の

母に、父の身体に忍び寄

る現実を冷静に受け止め

られるとは、到底思えな

かった。私はA先生の思

いやりに、いつも救われ

ていた。

そしてあの出来事は、

父が他界する1カ月ほど

前だったろうか。私たち

はほんの15分、売店に行

くために病室を空けた。

買い物袋をぶら下げて部

屋のドアを開けた時、私

たちはぼうぜんと立ちす

くんだ。中では父の無二

の親友だった寛吉さん

が、父の両頬をなでなが

ら、何か語り掛けていた。

すると次の瞬間、父が

突然「グワー」っと、唸う

り声を上げた。普段はう

つろな目で、天井を見上

げているだけだった父

が、ベッドから起き上が

ろうとする仕し

さ草を見せ

た。そして顔をくしゃく

しゃにして、大粒の涙が

流れ出した。そして寛吉

さんが父の両手を握り締

め、「友ちゃん、会えて

よかった」と言った時、

父は確かに首を縦に振っ

た。その時の父は、喜び

の感情を全身で表現して

いるように思えた。

午後の回診にA先生が

現れた時、私はさっきの

光景の一部始終を打ち明

けた。

「夫との約束を、守っ

てあげられなかった」母

は顔を覆い、その場に泣

き崩れてしまった。3人

の間につかの間の沈黙が

流れた。A先生は、「後

から、改めて伺います」

と言い残して、部屋を出

て行った。

それから5時間ほど経

った、夜の8時過ぎ、ド

アをノックする音がし

た。母と私は顔を見合わ

せ、恐る恐るドアを開け

ると、私服姿のA先生が

立っていた。

「今、勤務が終わって、

帰りに寄りました」A先

生は椅子に座って、静か

に語り始めた。

「僕の父は、住職でし

てね。僕が医学部を卒業

した時に、父に言われた

言葉があるんです。『病

巣を発見するだけの人間

ロボットになるなよ。常

に患者と家族の心に寄り

添え』って。西洋医学を

志す僕としては、父のう

んちくを聞くのが鬱う

っとう陶し

い時期もありました。で

も、今では僕の、貴重な

羅針盤になっています」

「で、先ほどのお父様

の件なのですが……」

A先生は、急に姿勢を

正した。

「これは、『ここだけの

話』ですが……、お父様

が元気な時に言われた言

葉は、真実です。そして

今日のお父様の姿も真実

です。人間の気持ちは、

日々移り変わっていきま

す。お父様は、そのお友

だちに会いたかったので

す。お父様は、きっとう

れしかったと思います

よ」「で

も、夫からあれだ

け言われてたのに……」

また涙を浮かべた母に、

A先生はほほ笑んだ。「遺

言書と同じですよ。遺言

書は日付の一番新しいも

のが有効です。だから今

日のお父様のメッセージ

の方が有効です」

その言葉に、母の顔か

ら笑みがこぼれた。

「今の夫に家族ができ

ることって何ですか」母

の質問に、A先生は神妙

な顔でこう答えた。

「お父様に、ご家族の

幸せそうな笑顔を見せて

あげてください。意識が

混濁している状態でも、

相手の表情だけはわかる

んですよ」

A先生は帰り際に、私

たちに念を押した。

「今の話、医学では証

明されてないですから、

絶対に『ここだけの話』

ですからね」って。

間もなく父は、家族の

笑顔をリュックにいっぱ

い詰めて、天国に旅立っ

ていった。

あれから長い歳月が経

ったが、今でも白衣を脱

いで駆け付けてくれたA

先生を思い出す。

今後の自分の人生にお

いても、ぜひ「ここだけ

の話」を参考にさせても

らいたいと思う。

第1回 生い の ち

命を見つめるフォト&エッセー 入賞者名簿フォト部門

厚生労働大臣賞 「愉快なひと時」 逵中美知子(三重県)日本医師会賞 「負けない」 大野  武(徳島県)読売新聞社賞 「おしゃぶり」 富士本 晃(北海道)審査員特別賞 「愛おしい…」 柴  侑貴(沖縄県)入選 「母さんお肩をたたきましょう~コンコンコン♪」

伊藤  孝(北海道) 「60回目の結婚記念日」 金指 栄一(神奈川県) 「じいちゃんの長芋」 丹羽 賢一(宮城県) 「順番ですよ」 戸崎 安司(千葉県) 「輝く」 西本 睦子(滋賀県)

エッセー部門

【一般の部】… ……………………………………………………………………………………厚生労働大臣賞 「寄り添う眼差しに」 重信 雅美(東京都)日本医師会賞 「A先生の『ここだけの話』」 渡辺 惠子(徳島県)読売新聞社賞 「大きなお地蔵さんのような病院」

小川かをり(東京都)審査員特別賞 「がらんどうの生」 馬場 広大(鹿児島県)入選 「みいちゃんへ」 坂口有美子(東京都) 「あなたには、時間がない」 平井 真帆(埼玉県) 「ビールで乾杯」 御代田久実子(東京都) 「心の交流」 森田 欣也(愛媛県) 「共感」 八木 房子(愛媛県)

【中高生の部】… …………………………………………………………………………………最優秀賞 「笑顔の力」 河野 未実(東京都)優秀賞 「患者の家族として」 穴田 未優(千葉県) 「幸せに『生きる』ということ」 古泉 修行(新潟県) 「ベッドで散歩」 下萩 南耀(東京都)

【小学生の部】… …………………………………………………………………………………最優秀賞 「おじいさんのお手つだい」 横山 紗来(兵庫県)優秀賞 「私はNICU卒業生」 石野 美宙(東京都) 「わたしがうさぎに伝えたい気持ち」

新池谷 悠(群馬県)

「A先生の『ここだけの話』」

徳島県徳島市

58歳・主婦

渡わたなべ辺

 惠け

こ子

「負けない」

大お

の野  武た

けし

徳島県板野郡

73歳・無職

エッセー部門 日本医師会賞

フォト部門 日本医師会賞

Page 8: No. 「国際社会と医療政策」 平成 29年度医療政策シンポジウムmed.or.jp/nichiionline/paper/pdf/n1357.pdf · 務理事と共に、文部科学副会長)、弓倉整同会専道永麻里常任理事(同会

日 医 ニ ュ ー ス 第1357号(8)平成30年3月20日〔第3種郵便物認可〕

新専門医制度と医師の働き方改革東京慈恵会医科大学客員教授/東京都医師会理事/日医勤務医委員会委員

落合和彦

地域支援病院で島医者を育てる沖縄県立中部病院総合診療科 本村和久

本年4月から新専門医

制度が開始されることに

なっている。既に一次登

録は終了し、二次登録を

待つばかりであるが、お

おむね8300名程度が

新専門医制度の「専攻医」

となると想定されてい

る。新

専門医制度について

は、専攻医の都市部への

集中によって、地域医療

への影響が懸念されたた

め、5都府県の14の基本

領域については、過去5

年間の採用実績を超えな

いことが条件とされた。

現時点では正確な数字が

公表されていないもの

の、ある程度予想された

結果となった。

新専門医制度では、地

域偏在を解消する対策を

講じたにもかかわらず、

都道府県格差あるいは診

療科間の格差はむしろ広

がっており、地域偏在の

流れを食い止めるどころ

か更に加速させるような

勢いであると指摘する声

も聞かれる。

一次の登録数で言え

ば、あくまでも基幹施設

への登録数であるが、内

科においては東京が52

0名であるのに対して、

高知県5名、宮崎県9名、

福井県11名、島根県12名

であったという。

小児科では徳島県、佐

賀県において希望者がな

く、岩手県、山形県、富

山県、山梨県も希望者が

1名しかいないという。

産婦人科においても、た

った1名しか希望者がい

ない県が、7県もある(岩

手県、福井県、鳥取県、

徳島県、香川県、大分県、

宮崎県)。

いずれにしても重要な

ことは、現在に至るまで、

地域において使命感を持

って、地域医療を担いな

がら研修医教育に情熱を

傾けてくれた指導医達の

士気を奪ってはならない

ことである。

今回の新専門医制度で

は、施設基準のハードル

が上がり、初期臨床研修

病院であっても基幹病院

とはなれず、後期研修医

を採用できなくなる医療

機関が思いの外多いこと

も問題点として挙げられ

ている。後期研修医を採

用できなかった病院では

有能な「指導医」のモチ

ベーションが低下するこ

とは、想像に難くないか

らである。

地域の中小病院が都会

の基幹施設の連携施設と

なっても、常時専攻医の

派遣を受けられる担保が

なく、このことは地域医

療を支える医師の確保に

多大な影響が生じること

を意味している。

加えて、専門医の資格

取得を念頭に初期臨床研

修病院を選ぶことが想定

されるため、基幹施設に

なれない地方の病院は、

これまで研修医を十分に

育成していた病院であっ

たとしても、研修医が確

保できないといった事態

も十分に考えられるので

ある。

専攻医数が極めて少な

くなった県における地域

偏在の解消策として、厚

生労働省が検討している

のが医師少数区域への医

師派遣制度である。

この施策に対しては、

当然、医療界から「医師

の自由を損なう」といっ

た異論が噴出している

が、地域医療をいかにし

て守るのか、国民的な議

論の必要性が叫ばれてい

ることは間違いないだろ

う。ま

た、厚労省からは、

「医師少数区域」での一

定期間以上の勤務経験を

有する医師を同省が認定

し、認定医師であること

を広告可能とすること

や、地域医療支援病院な

どの病院の管理者になる

際に評価することなどが

提案されているという。

この問題に関して日医

では、医師の地域偏在な

ど、地域医療への影響が

明らかになった場合、都

道府県協議会の議論を踏

まえて対応していく必要

性を強調するとともに、

日本専門医機構との連携

を一層強化し、対応する

方針を掲げ、厚労省の「医

療従事者の需給に関する

検討会」の「医師需給分

科会」において、実効性

のある具体策が検討され

るよう主張していくとし

ている。

一方、ここにきて全国

の基幹病院への労働基準

監督署の立ち入り調査が

増えているとの指摘もあ

り、「医師の働き方改革」

が話題になっている。医

師も労働者として捉える

風潮が一般的になり、多

くの病院で「工夫を凝ら

しながら」これらを実践

している現状がある。

研修医の労働上の身分

は各病院によってさまざ

まであるが、2年の有期

契約職員としている例が

多く、当然のことながら、

労働者としての勤務体制

が順守されている場合が

多い。

午後5時以降はカンフ

ァレンスや抄読会を行わ

なくなったり、患者さん

への病状説明も日中に行

うなど、勤務時間外の研

修医の業務は以前に比べ

格段に軽減している。

一方、指導医であって

も、勤務時間の制限につ

いては当然配慮されるべ

きではあるものの、指導

医クラスの医師が育って

きた文化的な背景から、

研修医や専攻医のやり残

した業務を肩代わりする

といった風潮が常態化し

ているとの指摘もある。

近年、「医師でなくて

もできる仕事は、医師以

外に移譲するタスクシフ

ト」の実践が叫ばれては

いるものの、要員、経費、

質の担保などの課題が多

いことも事実である。

まして研修医、専攻医

共に減少した地方の中小

病院における「働き方改

革」は、タスクシフトす

るべき人材もいなけれ

ば、手当てする財源もな

く、殊の外深刻である。

機構側では、たとえ大

学病院が基幹施設の場合

でも、基本領域の研修期

間である3年間全てを大

学病院で研修するわけで

はなく、地方の症例数が

豊富な連携施設に行くこ

とも全く問題ないとして

いるが、それが医局人事

になり、いわゆる「先祖

返り」してしまい、地域

ニーズと外れることにな

るのではないかとの懸念

があることも事実であ

る。全

国の地域医療支援セ

ンターの実効性を高める

ことや、地域枠・地元出

身枠の拡充、医師需給の

「見える化」などは、長

期的には医師の地域偏在

の解消に貢献するものと

思われるが、喫緊の課題

としての地域医療体制の

維持という面において、

「新専門医制度」に加え

て「医師の働き方改革」

も含めて、国民的な議論

を深めてもらいたいと痛

感している。

当院は、沖縄県の二次

医療圏、中部医療圏(人

口46万人)にある550

床の地域支援病院である。

第二次大戦後の混乱期

に設立、その後、196

7年より医師研修事業を

開始、1000名以上の

卒業生を送り出している

のも特徴である。

当初は病院で働く医師

養成が中心であったが、

1978年より自治医科

大学の卒業生を受け入

れ、卒後3年目から医師

一人が勤務する県立離島

診療所に送り出してい

た。1996年からは自

治医科大学以外の大学に

も枠を広げ、2006年

からは日本プライマリ・

ケア学会認定の後期研修

プログラムとなり、その

後の卒業生は70名を越え

ている。

今年度は、16ある県立

離島診療所全てが当院プ

ログラムに関係する医師

でカバーされている。2

018年からは、日本専

門医機構が認定する総合

診療研修プログラムが始

まることとなる。

当院のプログラムの特

徴は、「島医者養成」に

ある。後期(専攻医)研

修中に、離島診療所での

単独診療(専攻医3年目)

がプログラムされている。

「単独診療が研修と言

えるのか?」と議論にな

るところだが、専門医機

構が定める「指導医によ

る週に1回の直接対面ま

たは遠隔テレビ会議等に

よる振り返りと、3カ月

に1回の研修先訪問を必

須とする」条件をクリア

しての赴任となる。

急性疾患に関わるもの

に関しては当院で十分な

研修を行うことができる

が、離島診療所で必要な

家族全体、地域全体を診

る能力は、赴任前の離島

診療所での短期間研修な

どで土台をつくり、離島

診療所に赴任して、実地

でその能力を身につける

ことになる。

「島医者は島が育てる」

という言葉が指導医で語

り継がれている。離島で

医療に関わるさまざまな

職種や住民との協働を離

島診療所医師は行ってい

る。医

師として成長してい

く過程を、遠隔テレビ会

議や離島への直接訪問で

実感できるのが、指導す

る医師の仕事の醍醐味で

ある。

「医師の証明が できます」

日本医師会 電子認証センター

─採用時に使える医師の身分証─

医師採用時、医師資格証(HPKIカード)を、医師免許証の代わりとすることができるようになりました。詳しくは、当センターホームページの2017年12月22日付News欄をご覧下さい。

詳しくはホームページをご覧ください。日本医師会 電子認証センター 検索

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