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LIGAプ ロ セ ス 研究開発センター 兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所

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LIGAプロセス研究開発センター

兵庫県立大学高度産業科学技術研究所

2 LIGAプロセス研究開発センター

1 設立

趣旨

・組

織図

LIGAプロセス研究開発センター

設立趣旨

近年、「高度情報通信」、「環境・エネルギー」、「医療・バイオ」等の主要先端分野において、集積化した微細機能デバイスである「マイクロシステム」の応用が急速に進んでおり、より微細で高アスペクト比(加工幅に対する高さの比)の構造体の作製が鍵となっています。高アスペクト比微細構造は、比表面積(体積に対する面積の比)が大きく、静電引力や表面張力、化学反応収率等のマイクロ構造体の機能発現に有利な構造です。この構造体を形成する技術として最も有力とされているのが、LIGAプロセス技術です。この技術は、X線を用いたフォトリソグラフィ(Lithographie)によって作製した微細構造体をマスターとして電鋳(Galvanoformung)を行い、これをモールドとして成形(Abformung)を用いて量産を行う微細加工プロセス技術であり、 1 9 8 2年にドイツのカールスルーエ技術研究所のBeckerとEhrfeldらによって開発され、その歴史も30年の長きにわたっています。感光性有機材料に、シンクロトロン放射光装置から発生する直進性の良いX線を用いて所定の微細パターンを種々の手法で転写することにより、多様な数~数百μmレベルの立体超精密部品の製造が一括して可能です。X線を用いることで形状や寸法精度の高い立体構造体が複製できるため、これまでに、ウランの濃縮ノズルや超精密機器の歯車、医療、認証用高分解能光学素子などの特殊用途を中心に根強い需要が続いてきました。これまでの歴史の中で、大面積X線ビームライン及び多軸スキャンリソグラフィー装置の開発、高精度X線マスク、高靱性・高強度電鋳技術、高精度成形技術などの要素技術が大きく進展し、最近では、光学部品、バイオデバイス、エネルギーデバイス、メディカル部品を中心に、従来見られな

兵庫県立大学特色化事業

かった新たな応用展開が始まっています。またアジア各国や日本国内においても、先端産業技術イノベーションのきっかけの一つとしてX線加工用の新たな放射光ビームラインやスキャナーを建設、開発する動きも見られています。兵庫県立大学高度産業科学技術研究所、

ナノマイクロシステム分野では、有数の中型放射光施設“ニュースバル”からの高エネルギーX線(3~12 keV)と低エネルギーX線(1~2 keV)を構造体の仕様に応じて選択できる、波長可変型の大面積X線微細加工システムを世界で初めて実現しました。その用途は、メディカル機器の光学素子、分離フィルタやマイクロ流路部品、二次電池電極、LED照明部品、立体イメージ像素子、ミリ波回路部品など多岐に渡っています。

以上のように、LIGAプロセスの開発と実用化を進めることによって、新たに掘り起こされる潜在市場創成の動きは急速に高まっていると期待されます。これらの応用の多くが日本のものづくりの根幹をなしてきた機械加工分野の延長線上として求められていることは特筆すべきことであり、個々の製品の想定市場規模も数十億から数百億と極めて大きくなることが予想されます。LIGAプロセス技術とその関連技術の高度化と新たな先端産業技術基盤プラットフォームの創出、及びこの産物としての新機能部材の研究開発をリードしてゆく学術的拠点として、2012年4月1日に高度産業科学技術研究所内に「LIGAプロセス研究開発センター」を設立しました。

2012年4月LIGAプロセス研究開発センター長内海 裕一

設立

趣旨

・組

織図

3

組織図

LIGAプロセス研究開発センター(高度産業科学技術研究所)研究開発センター長 内海 裕一

線マシニング研究開発部門

ナノマイクロ複次構造研究G工学研究科 奥田 孝一

高エネルギープロセス研究GProf G.S.RodhaDr.S.V.Dhamgaye (RRCAT,India)

光反応素過程研究G高度研 山口 明啓工学研究科 持地 広造

バイオマイクロデバイス研究開発部門

マイクロ流体システム研究G高度研 内海 裕一北陸先端大 浮田 芳昭

超高感度センシング研究G高度研 山口 明啓高度研(客員) 福岡 隆夫

バイオデバイス研究G工学研究科 武尾 正弘

高周波バイオデバイス研究G岡山県立大 岸原 充佳

ナノマイクロ構造科学研究センター(工学研究科)研究センター長 山崎 徹

ナノ結晶材料研究G工学研究科 山崎 徹工学研究科 三浦 永理

ナノ・マイクロ機械システム研究G工学研究科 生津 資大

3次元構造化プロセス研究G高度研 内海 裕一高度研(客員) 岡田 育夫

バイオマテリアル研究G工学研究科 遊佐 真一

UV・X線融合プロセス研究G

兵庫県立工業技術センター 才木 常正

人 MEMS研究G

兵庫県立工業技術センター 瀧澤 由佳子

UV-LIGA

プロセス研究開発部門

4 LIGAプロセス研究開発センター

2 LIG

Aプ

ロセ

ス研

究関

連施

エンドステーション実験ハッチ内部電子リングとの遮蔽壁と差動排気部

露光チェンバー内部5軸露光ステージと210mm幅の放射光パターン

LIGAプロセス研究関連施設

DXL(DeepX-rayLithography)ビームラインニュースバルシンクロトロン放射光施設

大面積波長可変型LIGAビームラインBL02

BL02の特長

BL02

5

LIG

Aプ

ロセ

ス研

究関

連施

1) Y. Utsumi, et al., “Large area and wide dimensions X-ray lithography using energy variable synchrotron radiation”,Microsyst Technol 13, 417–423(2007).2) Y.Utsumi, et al., “Large area and wide dimension range x-ray lithography for lithographie, galvanoformung, and abformung process using energy variable synchrotronr adiation", J. Vac. Sci. Technol. B23(6), 2903-2909(2005)3) Y. Ukita,et al., “Fabrication of Poly(tetrafluoroethylene)Microparts by High-Energy X-ray-Induced Etching", Jpn. J. App. Phys., 47(1), 337-341(2008)

兵庫県立大学高度産業科学技術研究所

光応用・先端技術大講座ナノマイクロシステム分野

バイオマイクロシステム研究室

参考文献

Tel : 0791-58-0245E-MAIL : [email protected]

連絡先

BL02は大面積ディープX線リソグラフィ(DXL)用のビームラインです。このビームラインは露光するエネルギー帯域が変えられ、高アスペクト比加工とサブミクロン加工を同時に行うことができます。2~12keV及び2keV以下の両光エネルギー帯域を任意に選択できるX線露光システムです。新規開発のマスクを用いたマイクロ構造体の放射光加工を行った結果では、深さ2000μmレベルのアスペクト比加工と、従来の世界トップデータの15倍というA4サイズの加工に成功し、産業応用、並びに学術研究への広範な応用が期待されます。

① 世界最大のA4サイズの露光面積が得られます。

② 多軸露光ステージで3次元加工が可能です。

③ X線エネルギー帯域の任意な選択が可能です。

④ 雰囲気ガスの導入が可能な高効率差動排気システムを有しています。

当分野では、製造産業、高度情報通信、医療・バイオ、環境・エネルギーの各先端産業において幅広い用途が期待されているμm~mmサイズの「ナノマイクロシステム」の研究を行っています。現在の機械加工技術では到達できていないμmレベルの微細加工が可能で、量産可能な技術であるLIGAプロセスを用いて高アスペクト比(高さ/幅)構造の3次元構造体の作製を行っています。LIGAプロセスとはX線リソグラフィ、電気鋳造を用いた精密金型の作製、樹脂成形による大量生産する技術を統合したプロセスです。

波長可変LIGAを用いた機能付加型ナノ・マイクロプロセスの開発や、3次元マイクロ流路ネットワークによる全自動マイクロ化学システムの開発、並びにナノ構造を用いた超高感度センシング手法の研究を行っています。

6 LIGAプロセス研究開発センター

3 LIG

Aテ

クノ

ロジ

3次元マイクロ流路プラットフォーム

試薬導入平面展開

分注・混合垂直展開

免疫リアクタ垂直展開

検出垂直展開

放射光での作製方法

X線マスク

感光性樹脂

露 光

微細高アスペクト比(高さ/幅)構造

シンクロトロン放射光

構造体写真

ワンチップ上にマイクロポンプやバルブ、リア

クタ等の流体素子を組み合わせた化学システムを“Lab on a chip”と称し、臨床診断、遺伝子解析、創薬、環境・食品分析等、さまざまな分野への応用が展開されています。しかし従来のシステムは単位化学操作が平面内に展開されているため、各種の流体素子を高度に集積化するには限界がありました。我々は放射光による微細加工と樹脂の成形・積層技術とを組み合わせた実装プロセスを提案し、3次元的な集積流路構造の作製とLab on a chip化実装技術の開発を行って来ました。

75µm105µm

75µm105µm

400µm400µm

クロスリンク構造のSEM写真

40µm

通常露光構造のSEM写真 放射光加工の垂直流路 平面流路 (1層目)

キャピラリ構造のSEM写真 平面流路 (3層目)

3次元L

ab on a chip

放射光で作製した3次元微細構造体をLab on a chipに用いるメリットは、集積化のみならず、構造に起因する特異な流体挙動を利用した高効率な混合素子や比表面積の大きさを利用した反応素子が実現できること、光学検出系を設計する上で自由度が高いことが挙げられます。3次元流路構造は、放射光リソグラフィーと電鋳によって作製した金型を用いて成形した各種の樹脂構造体を、表面処理の後に積層接合することによって得ることができます。

クロスリンク構造の作成方法

3次元Lab on a chipの概念図

0.1 1 10 100 1000 10000

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Abso

rbance a

t 450 [

nm

]

Mouse IgG conc. [ng/mL]

7

LIG

Aテ

クノ

ロジ

酵素免疫測定法の一種である ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay )へ

適応可能なデバイスの作製及び送液実と、ELISA法を用いマウス IgG(Immuno globulin

G)の検出

B BBA

AA

AA

A B

A

A

B

A

B

A

AA

AA BB

BB

AA

抗体

被検物質

酵素標識抗原

発色基質

反応後の発色基質

B BBA

AA

AA

A BB BBA

AA

AA

A B

A

A

B

A

B

A

AA

A

A

B

A

B

A

AA

AA BB

BB

AA

抗体

被検物質

酵素標識抗原

発色基質

反応後の発色基質

3次元CD型マイクロ分析システム内でのELISA

第1送液

(三次元流路部上で保持)

被検物質及び酵素標識抗原

洗浄液

発色基質

反応停止液

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

三次元流路部上で溶液を保持

第4送液

(3rdリザーバからの送液)

第5送液

(4thリザーバからの送液)

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

多検体同時送液制御実験結果 マウスIgGの検出

垂直方向への単位化学操作が3次元システムのキーとなるが、これを実現するためのキャピラリ集合型の多機能流体フィルタを提案、性能検証し、機能集約システムとしての積層型の酵素免疫測定法(ELISA)用のCDシステムを開発しました。これにより、前処理、流体の逐次的送液、免疫反応、光学検出の全機能を効率的に3次元集積するフルプロトコルのLab on achipプラットフォームが実現しました。

第2送液

(三次元流路透過)

第3送液

(2ndリザーバからの送液)

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

第1送液

(三次元流路部上で保持)

被検物質及び酵素標識抗原

洗浄液

発色基質

反応停止液

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

三次元流路部上で溶液を保持

遠心送液による利点• 単純な駆動方式と構造

→正確な多検体同時送液制御

• 遠心分離(前処理)との複合化

→分析のフルプロトコルをオンチップ化

三次元化(積層構造)による利点

• 立体構造による高集積化

• 高効率な光学設計による高感度化

• 三次元ネットワークの利用

• 多機能流体フィルタの利用

(比表面積拡大、バルブ、ミキサー、反応場)

酵素免疫測定への応用

第2送液

(三次元流路透過)

第3送液

(2ndリザーバからの送液)

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

第4送液

(3rdリザーバからの送液)

第5送液

(4thリザーバからの送液)

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

被検物質及び酵素標識抗原

発色基質

洗浄液

反応停止液

ELISA用デバイスを用いた送液実験第1送液(三次元流路部上で保持)

第2送液(三次元流路透過)

第3送液(2ndリザーバからの送液)

第4送液(3ndリザーバからの送液)

第5送液(4ndリザーバからの送液)

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4 LIG

Aテ

クノ

ロジ

ナノプラズモニックセンサー

マイクロ流体デバイスの微小領域に適した検出法として、表面増強ラマン

散乱(SERS: Surface Enhanced Raman Scattering)が新規検出法として注目されており、本研究では、SERSとオプトフルイディクスデバイスとの統合を目的としています。従来流体デバイスを用いたSERS測定では、コロイド型が主流であるが、流路内のコロイド粒子を制御することが困難であるため、定量性に問題が生じる。そこで、あらかじめコロイド凝集体である三次元ナノ構造体を作製し、それを検出部に使用することで、オプトフルイディクスデバイスとの統合化を図りました。

構造体作成法

金とポリスチレン(PS)の混合液滴下

乾燥

構造体完成

PS粒子除去

SER

S

とは、貴金属コロイドの凝集体のような

ナノ構造体の表面上で局在プラズモン共鳴に

よる増強電場が発生し、ナノ構造体の近傍に

あるラマン活性分子からのラマン散乱強度が、

数万倍~数百万倍に増強される現象です。

貼り付け

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LIG

Aテ

クノ

ロジ

流体デバイス

• 1 nMの4,4’-Bipyridineの超高感度検出に成功しました。

• 通常のラマン分光に比べ107 倍以上の感度向上を得ました。

• 流体デバイスを使用した高感度化はAu3Dの吸着効果であると考えられます。

・金粒子径

・PS粒子径

・金濃度など

• 1 nMの4,4’-Bipyridineの超高感度検出に成功しました。

• さらに、通常のラマン分光に比べ107 倍以上の感度向上を得ました。

• また、1 時間以上の連続測定でも、SERSシグナルの劣化がない状態で測定可能です。

流路断面

最適化条件

10µm最適化条件下の三次元構造体

最適化条件でのS

ER

S

測定

構造作製の

最適化

SERS測定

測定結果

兵庫県立大学高度産業科学技術研究所

〒678-1205 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-1-2

Tel : 0791-58-0245 Fax : 0791-58-0463 E-MAIL : [email protected]

http://www.lasti.u-hyogo.ac.jp/NS/liga_center

Laboratory of Advanced Science and Technology, University of Hyogo

LIGA Process Research and Development Center

兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所LIGAプロセス研究開発センター

BL02BL11