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Instructions for use Title カーネル密度を用いた不均等割付における適応ランダム化のシミュレーション研究 Author(s) 大野, 浩太 Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第13431号 Issue Date 2019-03-25 DOI 10.14943/doctoral.k13431 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/74238 Type theses (doctoral) Note 配架番号:2445 File Information Kota_Ono.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Instructions for use

Title カーネル密度を用いた不均等割付における適応ランダム化のシミュレーション研究

Author(s) 大野, 浩太

Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第13431号

Issue Date 2019-03-25

DOI 10.14943/doctoral.k13431

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/74238

Type theses (doctoral)

Note 配架番号:2445

File Information Kota_Ono.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学位論文

カーネル密度を用いた不均等割付における

適応ランダム化のシミュレーション研究

(Adaptive Randomization with Unequal

Allocation Using Kernel Densities: A

Simulation Study)

2019年3月

北海道大学

大野 浩太

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学位論文

カーネル密度を用いた不均等割付における

適応ランダム化のシミュレーション研究

(Adaptive Randomization with Unequal

Allocation Using Kernel Densities: A

Simulation Study)

2019年3月

北海道大学

大野 浩太

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目次

発表論文目録および学会発表目録・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 頁

要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 頁

略語表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 頁

緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 頁

方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 頁

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 頁

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 頁

総括および結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 頁

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 頁

利益相反・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 頁

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 頁

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発表論文目録および学会発表目録

本研究の一部は以下の雑誌に投稿中である。

1. Kota Ono

Adaptive Randomization with Unequal Allocation Using Kernel Densities: A Simulation Study

Journal of Biopharmaceutical Statistics

本研究の一部は以下の学会に発表した。

1. Kota Ono, Hiroaki Iijima, Norihiro Sato

Adaptive randomization for balancing over continuous covariates in multi-arm trials with equal and

unequal allocation

The CEN-ISBS Vienna 2017 Joint Conference on Biometrics & Biopharmaceutical Statistics 2017

年8月28日-9月1日

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要旨 【背景と目的】ランダム化臨床試験を実施する上で、被験者登録の促進や倫理的制約とい

った理由から、割付比を 1:1に揃えない不均等割付が必要となる場合がある。また、一般的に臨床試験では群間の共変量分布のバランスを揃えることが比較可能性の担保と結果の

解釈のために重要となる。群間の周辺共変量分布を均衡させる割付方法に最小化法が存在

するが、最小化法を単純に不均等割付に適応すると、ランダム化に基づいた統計量の分布

が 0から離れる方向へシフトし、並べ替え検定などのランダム化に基づく検定の検出力が落ちることが分かっている。近年、その解決法である偽群法が提案されたため、現在では

カテゴリカルな共変量を用いた最小化法を用いる場合には偽群法を用いればよい。しか

し、臨床試験では連続変数も扱われ、通常の最小化法を用いる場合は連続変数をカテゴリ

化する必要があるため、情報の損失が生じる。現在までに連続変数をそのまま扱える最小

化法がいくつも提案されているが、その中でMaら (2013) の提案したカーネル密度最小化法が、均等割付の状況において最も群間の共変量分布のバランスを揃えることが彼らの

シミュレーションによって示された。これら連続変数をそのまま扱える最小化法が不均等

割付の状況において検討された報告はなく、不均等割付の状況における共変量分布の均衡

や統計的性能を検討することで、不均等割付における適切なランダム化法を選択すること

が可能となる。本研究では最も群間の共変量分布のバランスを揃えることが可能であるカ

ーネル密度最小化法に注目し、有限標本における群間の共変量分布の均衡性能とαエラー

や検出力といった統計的特性の評価をシミュレーションにより評価することとした。割付

調整変数がカテゴリカル変数のみの場合、本手法は最小化法の中で最も使用実績のある

Pocock and Simonの最小化法に一致するため、本研究により共変量分布の均衡性能や統計的特性が評価され、本手法の実試験への適用が進むことが期待される。 【対象と方法】本研究は実データを用いないシミュレーション研究である。不均等割付に

対応するため、Kuznetsovaら (2012) が提案した偽群法により不均等割付を行う。本研究で注目するカーネル密度最小化法は、次のとおりである。今、新たな被験者が試験に組

み入れられ、その時の割付前の群𝑗( 𝑗 = 1, … , 𝐿)における被験者数を𝑛 とする。また、

𝑗 ( 𝑗 = 1, … , 𝐿)を新規被験者が仮に割り付けられる群とする。この時、仮に新規被験者が

群𝑗 に割り付けられた時の群𝑗における被験者数を𝑛 とすると𝑗 = 𝑗′なら𝑛 = 𝑛 + 1、𝑗 ≠

𝑗′なら𝑛 = 𝑛 となる。𝑀 を連続変数の数、𝑀 をカテゴリカル変数の数、𝑀 = 𝑀 + 𝑀 と

し、𝑍 (𝑘 = 1, … , 𝑀)を被験者𝑖 𝑖 = 1, … , 𝑛 のベースライン変数、𝑧 を新たに組み入れ

られた被験者のベースライン変数とする。仮に新規被験者が群𝑗 に割り付けられた時、カ

ーネル密度を用いて推定される群𝑗の連続変数𝑍 の密度関数を𝑧 において評価した値は下

記となる。

𝑓 (𝑧 ) =1

𝑛 ℎ 𝑛𝐾

𝑧 − 𝑍

ℎ 𝑛

𝐾(. )は正規カーネル関数、ℎ 𝑛 はバンド幅である。また、新規被験者が仮に群𝑗′に割り

付けられた場合の群𝑗′における連続変数𝑍 に関するバランススコアを下記のとおりレンジ

で定義する。

∆𝑑 = Range𝑛

𝑛𝑓 (𝑧 )

なお、カテゴリカル変数の場合は𝑧 における被験者の割合を密度関数値の変わりに用いれ

ばよい。このバランススコアを共変量に関して和をとった総バランススコアを算出し、最

小の群に高確率を付与した割付を行う。このカーネル密度最小化法について、1. 群間の被験者数および共変量分布のバランス、2. 線形・ロジスティック・Coxモデルを用いた際のαエラーと検出力、3. 並べ替え分布のシフト、並べ替え検定のαエラーと検出力をシミュ

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レーションにより評価した。 【結果】群間の被験者数について、すべての割付比でカーネル密度最小化法と Pocock and Simonの最小化法が最もバランス性能がよく、両者とも同程度の性能であった。また、群間の共変量分布について、すべての割付比および共変量でカーネル密度推定法が最もバラ

ンス性能がよかった。割付時に考慮しなかった変数があった場合、単純ランダム化法と同

程度のバランス性能であり、考慮した共変量分布を揃えられる分、カーネル密度最小化法

が他の方法より優れていた。次に、各モデルを用いた際の各方法のαエラーと検出力を検

討した。すべてのモデルにおいて、未調整の場合に単純ランダム化法のαエラーは有意水

準付近であり、他の手法は保守的で、そのうちカーネル密度最小化法は最も保守的であっ

た。すべての共変量で調整した場合、共変量の関数形を正しく特定できれば、すべての方

法でαエラーは有意水準付近となった。しかし、共変量の関数形を正しく特定しなかった

場合、線形モデルおよびロジスティックモデルを用いた際に単純ランダム化法以外の方法

で若干保守的な結果となり、Coxモデルではすべての方法でαエラーが有意水準以上となった。検出力については、すべての共変量で調整した場合にすべての方法で最も大きな検

出力が得られた。単純ランダム化法以外の方法では、治療効果が大きくない場合に単純ラ

ンダム化法よりも検出力が若干低かったが、治療効果が大きくなると逆転し、共変量の関

数形を誤特定した場合ではカーネル密度最小化法で他の方法より 1~3%程度検出力が高くなった。最後に、並べ替え分布のシフトと並べ替え検定について、前者ではシフトは無視

できる程度であり、後者ではすべての状況でαエラーは有意水準付近となった。また、ほ

とんどの状況において、並べ替え検定の検出力はすべての共変量で調整した結果より大き

く下回ることはなかった。 【考察】群間の被験者数および共変量分布の均衡性能は、均等割付下でのMaらの先行研究 (2013) と整合する結果であり、不均等割付においてもカーネル密度最小化法の均衡性能は保たれると考えられた。線形モデルを用いた際のαエラーと検出力についてはMaら (2015) と Liら (2018) の先行研究に類似した結果が得られ、均衡性能と同様に不均等割付においても性能が保たれると考えられた。Coxモデルにおいて、共変量の関数形を誤特定した場合にすべての方法でαエラーの増大が生じていたが、これはポアソンモデルにお

ける Fanら (2018) の結果と類似していた。モデルの誤特定問題は共変量を考慮した割付における解析に限った問題ではないが、特に Coxモデルでの理論的検討を今後の検討課題としたい。最後に、カーネル密度最小化法の下でも統計量の並べ替え分布はシフトせず、

偽群法は有限標本においてカーネル密度最小化法を用いる場合にも機能することが確認で

きた。並べ替え検定は特にロジスティックモデルや Coxモデルにおいて、統計量の正規近似精度が悪くなる小~中標本において有用であると考えられた。 【結論】カーネル密度最小化法は他の割付方法よりも共変量のバランス性能に優れ、統計

的特性は同程度または若干優れていた。連続変数を割付時に考慮する場合、今後カーネル

密度最小化法を実際の臨床試験に適用していくことが望ましい。

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略語表

本文中または図中で使用した略語は以下のとおりである。

略語 英語 日本語

SR Simple Randomization 単純ランダム化法

SPBR Stratified Permuted Block Randomization 層別置換ブロックランダム化法

PS Pocock and Simon's Minimization Pocock and Simonの最小化法

KM Kernel Minimization カーネル密度最小化法

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緒言

Peckhamらは 2005年から 2014年までの不均等割付臨床試験を実施した論文を調査

し、不均等割付を実施した理由として主に倫理的制約、被験者登録の促進などを挙げ

ている(Peckham et al., 2015)。例えば、有益な効果のあることが分かっている実薬とプラ

セボを用いた市販後臨床試験を実施する場合に、プラセボに実薬と同数の被験者を割

り付けることは倫理上の問題があるため、仮に試験を行う場合は不均等割付を行うべ

きである。不均等割付を行う状況は決して多くはないが、被験者保護を第一に優先し

た上で、状況が許せば、費用や統計的効率を最適化するために不均等割付の実施を検

討することには意義があると考えられる。

不均等割付を行うか否かに関わらず、群間の重要な共変量分布を揃えることは群間

の比較可能性担保と試験の解釈を容易にするために必須である。ここで、群間の共変

量分布を揃えること自体は、必ずしも興味あるパラメータ推定の効率性の観点から最

適という訳ではない(Rosenberger and Sverdlov, 2008)。等分散・正規性を仮定した線形モ

デルの場合は分布を揃えること自体が分散を最小化することに相当するが、非線形モ

デルの場合はそうではない。しかし、臨床試験の目的は主要評価項目の解析だけでは

なく、副次評価項目を含む多くの項目を検討することにもあり、さらに同じ土俵で結

果を解釈できることからも、解析の効率性を重視することで群間の共変量分布の不均

衡が許容される訳ではない(Begg and Kalish, 1984; Kalish and Harrington, 1988)。そのため、

理論的には効率性が多少犠牲になるとしても、群間で共変量の分布を揃えることは依

然として重要な事項であると言える。共変量分布を群間で揃えるために不均等割付試

験でよく用いられる方法の一つは層別置換ブロックランダム化法である。この方法は

カテゴリカル変数の同時分布を群間で揃えることができるが、共変量の数が増えると、

組み合わせの層内の被験者数が少なくなり、群間の共変量の同時分布を揃えることが

困難となり得る。このような場合に、群間のカテゴリカル変数の周辺分布を揃えるこ

とを目的として、特に癌の臨床試験で広く用いられてきた方法に最小化法がある

(Pocock and Simon, 1975; Taves, 1974)。しかし、層別置換ブロックランダム化法は自然に

不均等割付に適用できるのに対し、最小化法は単純に不均等割付に適用すると問題が

あることが分かっている。Proschanらは、不均等割付に最小化法を適用すると、ランダ

ム化に基づいた統計量の分布が 0 から離れる方向へシフトし、並べ替え検定などのラ

ンダム化に基づく検定の検出力が落ちると指摘した(Proschan et al., 2011)。この問題の原

因について、Kuznetsova らは各割付段階における期待割付比が保たれていれば、分布

のシフトは漸近的に 0 となり、シミュレーションでは有限標本でもそのシフトは無視

できる程度であることを示した(Kuznetsova and Tymofyeyev, 2012)。

上記の結果により、最小化法を適切に用いれば、不均等割付を行う試験にも最小化

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法を適用できることが示された。しかし、最小化法はカテゴリカル変数しか扱うこと

ができず、年齢や腫瘍径といった連続変数をカテゴリ化する必要がある。連続変数を

カテゴリ化すると情報の損失が生じるため、可能な限り連続変数のまま使用すること

が望ましい。連続変数を扱うことのできる最小化法の派生法は今までにいくつか提案

されているが、不均等割付の状況へ拡張した報告はない(Endo et al., 2006; Frane, 1998; Hu

and Hu, 2012; Lin and Su, 2012; Ma and Hu, 2013; Nishi and Takaichi, 2003; Stigsby and Taves,

2010; Su, 2011)。不均等割付においてもこれらの手法が適用できれば、より適切なラン

ダム化法を選択することが可能となる。これらの方法の中で、カーネル密度最小化法

が群間の共変量分布を最も揃えられることが提案者らのシミュレーションによって示

されている(Ma and Hu, 2013)。本研究ではカーネル密度最小化法に注目し、有限標本に

おける群間の共変量分布のバランス能力や統計的特性をシミュレーションにより評価

することとした。なお、カーネル密度最小化法は Pocock and Simonの最小化法の自然

な拡張であるが、実際の試験において用いられた報告はない。これは割付機関が割付

システムに本手法を実装していないためと考えられるが、実装は Pocock and Simonの

最小化法と同様に容易である。割付調整変数がカテゴリカル変数のみの場合、本手法

は Pocock and Simonの最小化法に一致するため、本研究により共変量分布のバランス

性能や統計的特性が評価され、本手法の実試験への適用が進むことが期待される。

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方法

本研究ではカーネル密度最小化法の有限標本での性能をシミュレーションにより評

価する。比較対象として、最も基本的である単純ランダム化法、実際の試験で多くの適

用事例がある層別置換ブロックランダム化法および Pocock and Simonの最小化法を設

定する。

1. ランダム化の方法とパーミュテーション法

1.1. 単純ランダム化法

単純ランダム化法は、群間の被験者数や共変量のバランスを一切考慮せず、決めら

れた確率で被験者を群に割り付ける方法である。試験における各群の割付比を

𝑄 : 𝑄 : … : 𝑄 とすると、群𝑗への割付確率𝑝 を下記とした割付を行う。すなわち、確率

1を割付比に応じて配分していることに相当する。

𝑝 =𝑄

∑ 𝑄 (1)

1.2. 層別置換ブロックランダム化法

単純ランダム化法では、群間の被験者数や共変量分布の不均衡が大きくなる可能性

がある。共変量を考慮した上でこの不均衡を小さくする方法の一つが層別置換ブロッ

クランダム化法である。この方法では、カテゴリカル変数の組み合わせの層ごとに、割

付比の和のサイズの倍数となるブロックを組み合わせて割付表を作成し、それに基づ

いて割付を実施する方法である。例えば共変量として性を考え、割付比が 1:1 だとす

る。この時、ブロックサイズを 4 とし、ブロック内に必ず割付比の倍数に応じた数の

群が含まれるようにすると、図1のように、ブロックは全部で6通り存在する。この6

通りのブロックからランダムにブロックを選択して組み合わせることで男女ごとに十

分な人数分の割付表を作成し、組み入れられた被験者の性に応じて、割付表の順番に

割付を行っていく。この方法ではブロック内での群数のバランスが取れているため、

単純ランダム化法よりも群間の被験者数の不均衡が抑えられ、かつ共変量分布の不均

衡も抑えられる。しかし、共変量の数が多くなると共変量の組み合わせの層内の人数

が少なくなることによって、不均衡が大きくなる可能性があるという問題がある。

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図1. 割付比1:1でブロックサイズが4の場合の考えられるブロックパターン

1.3. Pocock and Simonの最小化法

1.2節の層別置換ブロックランダム化法の問題は、組み合わせの層の数が多くなると、

共変量の同時分布の均衡が取れないということであった。ここで、同時分布ではなく

周辺分布の均衡を積極的に取る方法が Pocock and Simonの最小化法である(Pocock and

Simon, 1975)。この方法では、新たに被験者が試験に組み入れられるたびに、それまで

の共変量分布を考慮して割付を行う方法である。図 2 に概略図を示す。新規被験者の

情報と組み入れ時までのデータに基づいて、共変量の水準ごとにバランススコアとい

うものを算出し、それを足し合わせた総バランススコアが小さい群に高い割付確率を

付与する。バランススコアとしては該当水準内の被験者数の差の絶対値がよく用いら

れる。この方法ではカテゴリカル変数のみしか扱うことができない。

図2. Pocock and Simonの最小化法における割付時のバランススコア算出イメージ

A群 B群 A群 B群

A群 A群 B群 B群

A群 B群 B群 A群

B群 A群 B群 A群

B群 B群 A群 A群

B群 A群 A群 B群

新規被験者組み入れ時までのデータ

仮にA群に割付

仮にB群に割付

A群 B群

性男

年齢

重症度IIIIV

新規被験者

性: 男年齢:

重症度: III

合計 合計

B群に割り付ける確率を高くする

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1.4. カーネル密度最小化法

本研究で性能を評価するカーネル密度最小化法は1.3節で述べたPocock and Simonの

最小化法の連続変数への自然な拡張となっている。この方法で用いられているカーネ

ル密度関数推定法は、連続変数の密度関数をカーネル関数でノンパラメトリックに推

定する方法である。ヒストグラムは本来連続であるデータを適当に区分することで得

られるが、この方法を用いると、図 3 のように本来の連続データの滑らかな形状が得

られる。カテゴリカル変数の場合は各水準内の被験者数を求めることができるが、連

続変数の場合は同一の値を持つ被験者はほぼ存在しない。そのため、カーネル密度関

数推定法で推定された密度関数の値を用いて最小化法を行うものがカーネル密度最小

化法である。

図3. ヒストグラムとカーネル関数を用いた時の推定密度関数のイメージ

今、新たな被験者が試験に組み入れられ、その時の割付前の群𝑗( 𝑗 = 1, … , 𝐿)における

被験者数を𝑛 とする。また、𝑗 ( 𝑗 = 1, … , 𝐿)を新規被験者が仮に割り付けられる群とす

る。この時、仮に新規被験者が群𝑗 に割り付けられた時の群𝑗における被験者数を𝑛 と

すると𝑗 = 𝑗′なら𝑛 = 𝑛 + 1、𝑗 ≠ 𝑗′なら𝑛 = 𝑛 となる。𝑀 を連続変数の数、𝑀 を

カテゴリカル変数の数、𝑀 = 𝑀 + 𝑀 とし、𝑍 (𝑘 = 1, … , 𝑀)を被験者𝑖 𝑖 =

1, … , 𝑛 のベースライン変数、𝑧 を新たに組み入れられた被験者のベースライン変

数とする。仮に新規被験者が群𝑗 に割り付けられた時、カーネル密度を用いて推定され

る群𝑗の連続変数𝑍 の密度関数を𝑧 において評価した値は下記のとおりとなる。

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𝑓 (𝑧 ) =1

𝑛 ℎ 𝑛𝐾

𝑧 − 𝑍

ℎ 𝑛 (2)

ここで、𝐾(. )は正規カーネル関数、ℎ 𝑛 は新規被験者が仮に群𝑗′に割り付けられた

場合の群𝑗における連続変数𝑍 の密度関数推定に用いられるバンド幅である。本研究で

は正規分布ではない連続変数にも対応するために、バンド幅として下記のSilvermanル

ールを用いる(Silverman, 1986)。

ℎ 𝑛 = 1.06 × 𝑚𝑖𝑛 𝜎 ,𝐼𝑄𝑅

1.349× 𝑛 . (3)

𝜎 と𝐼𝑄𝑅 はそれぞれ集団全体に関する𝑍 の標準偏差と四分位範囲である。次に、新規

被験者が仮に群𝑗′に割り付けられた場合の群𝑗′における連続変数𝑍 に関するバランス

スコアを∆𝑑 とする。本研究ではバランススコアとして、下記のとおり推定密度関数

値𝑓 (𝑧 )のレンジ(最大値-最小値)を用いる。

∆𝑑 = Range𝑛

𝑛𝑓 (𝑧 ) (4)

カーネル密度最小化法を提案したMaらの論文(Ma and Hu, 2013)では2群を想定してお

り、バランススコアとして𝑓 (𝑧 )の差を用いていたが、レンジは差の多群への自然な

拡張となっている。カテゴリカル変数については Pocock and Simonの最小化法と同様

であり、この場合、推定密度関数値として群𝑗におけるカテゴリ𝑧 に存在する被験者の

割合を用いればよい。ここまでで各群の共変量ごとのバランススコアが算出でき、そ

のバランススコアを重み𝑤 で重み付けした和を群𝑗の総バランススコアと定義すると

下記のとおりとなる。この総バランススコアを用いて、次節で述べる不均等割付を行

う。

𝐼𝑚𝑏 = 𝑤 ∆𝑑 (5)

1.5. パーミュテーション法

ランダム化に基づいた統計量の分布の検討にパーミュテーション法(以下、並べ替

え法)を用いる(Ernst, 2004; Hasegawa and Tango, 2009)。 最小化法を用いた場合の並べ

替え法では、被験者の登録順、共変量、結果変数、そして結果変数が生存時間の場合は

打ち切りの状態もすべて固定した下で、全被験者の割付を反復する。すなわち、治療群

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を確率変数とみなしていることに相当する。割り付けられる治療群以外のすべての情

報は固定されているため、元々対照群であった被験者でも、ある反復回では試験群に

割り付けられる可能性があるが、その場合でもすべての情報は固定されたまま、すな

わち対照群と試験群に違いはないと仮定して割付を繰り返していることになる。これ

は「対照群と試験群の結果に違いはない」という帰無仮説の下での分布を想定してい

ることに相当する。帰無仮説が真であれば、並べ替え法に基づく検定(以下、並べ替え

検定)はαエラーを有意水準以下に抑える妥当な検定となり、帰無仮説が真でない場

合は高い検出力を有する。並べ替え検定におけるp値の算出は単純であり、「統計量の

並べ替え分布のデータのうち、実際に観測された統計量よりも極端な値を持つデータ

の割合」となる。p値の定義が「帰無仮説の下で、実際に観察された統計量よりも極端

な値が得られる確率」であるため、p値の定義から自然に算出可能である。ただし、正

規分布などの具体的な分布を仮定する必要はないが、計算に時間がかかるという欠点

がある。

2. 不均等割付およびランダム化の手順

不均等割付に対処するため、Kuznetsovaらの方法を用いる(Kuznetsova and Tymofyeyev,

2012)。以下、この方法を偽群法と呼ぶ。この偽群法では、群の数𝐿に対して整数で表さ

れる割付比が𝑄 : 𝑄 : … : 𝑄 であり、𝑄 , 𝑄 , … , 𝑄 の最大公約数は1とする。この時、群

を𝑆(𝑆 = 𝑄 + 𝑄 + ⋯ + 𝑄 )個の偽群(fake arm)に分け、偽群に関する割付比を

1: 1: … : 1と均等割付にし、この偽群に関して割付を実施する。割り付けられる偽群が

確定した後、その偽群に対応した元の群に割付を行ったものとする。この不均等割付

法と 1.4 節のカーネル密度最小化法を用いて、ランダム化の手順は下記の 1)~4)とな

る。なお、Pocock and Simonの最小化法を用いた場合でも手順は同様であるが、その場

合2)から始めてよい。

1) カーネル密度最小化法は各群に 1 例ずつ被験者が割り付けられて初めて実行可能

であるため、最初の𝑛 例の被験者は置換ブロック法を用いて割付を行う。

2) 𝑛 (𝑛 ≥ 𝑛 )例の被験者が既に割り付けられ、𝑛 + 1例目の被験者が試験に組み入れ

られたとする。𝑛 + 1例目の被験者を割り付ける前に各偽群の総バランススコアを

算出する。

3) 最小の総バランススコアとなった群を高確率付与偽群とし、それ以外の群を低確

率付与偽群する。𝑊を高確率付与偽群の数、𝑝を高確率付与偽群へ割り当てる確率

(例:80%)とする。この時、高確率付与偽群の場合は各偽群に𝑝 𝑊⁄ 、低確率付与

偽群の場合は各偽群に(1 − 𝑝) (𝑆 − 𝑊)⁄ の確率で割付を行う。𝑆 = 𝑊の場合、低確

率付与偽群は存在せず、各偽群に1 𝑆⁄ の確率で割付を行う。

4) 𝑆個の偽群に対しての割付を終えた後、割り付けられた偽群に対応した元の群に

𝑛 + 1例目の被験者を割り付ける。

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5) 2)~4)を繰り返す。

3. シミュレーションの設定

有限標本でのカーネル密度最小化法の性能評価を行うため、単純ランダム化法、層

別置換ブロックランダム化法、Pocock and Simonの最小化法を比較対象に設定する。な

お、本研究では2群比較試験で不均等割付を行う状況を想定する。解析はすべてSAS

® Ver 9.4 (SAS Institute, Cary, NC)を用いて実施した。

3.1. バランス性能評価

バランス性能の評価には下記の二つの指標を用いる。

1) 群間の調整被験者数の差の絶対値(∆𝑁)

2) 連続変数についてはKolmogorov–Smirnov検定の p値、カテゴリカル変数につい

てはχ 検定のp値

ここで、各群の調整被験者数は下記となる。調整被験者数を用いる理由は、不均等割付

の場合、群間の被験者数をそのまま用いるとその違いを評価しにくいため、目標とす

る割付比で調整することで評価を容易にするためである。

∆𝑁 =𝑛

𝑄−

𝑛

𝑄 (6)

p値の評価にはその中央値(50パーセント点)と1パーセント点、∆𝑁の評価にはその

中央値と99パーセント点を用いる。

シミュレーションは次の設定で行う。Pocock and Simonの最小化法とカーネル密度最

小化法では、高確率付与偽群に割り当てる確率を0.8、総バランススコア算出時の重み

は1、バランススコアにはレンジを用いる。目標とする割付比は1:2、1:3および2:3と

する。層別置換ブロック法で用いるブロックサイズは偽群数の 2 倍、カーネル密度最

小化法で用いるブロックサイズは偽群数とし、総サンプルサイズは 180 例とする。検

討する変数は 4個とし、1個は標準正規分布𝑁(0, 1)、1個は指数分布𝐸𝑥𝑝(1)、2個は

ベルヌーイ分布𝐵𝑒𝑟𝑛𝑜𝑢𝑙𝑙𝑖(0.5)に従うものとする。連続変数はカーネル密度最小化法

以外ではそのまま扱えないため、カーネル密度最小化法以外ではそれぞれの変数の中

央値で 2 区分のカテゴリカル変数に変換する。4 個の変数すべてを割付時に考慮する

ものとし、反復回数は1万回とする。

割付時に考慮しない変数が存在した時に、その変数の群間の共変量分布バランスを

検討するため、標準正規分布およびベルヌーイ分布に従う変数のみを割付時に考慮し

た状況も検討する。考慮する変数以外の設定は上記と同様とする。

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13

3.2. αエラー、検出力

割付方法を適切に選択することで群間の共変量分布を揃えることは試験結果の解釈

に重要であるが、その割付方法を選択した時の解析性能評価を実施することも重要で

ある。ここでは臨床試験において結果変数が連続変数、二値変数、生存時間である場合

に頻用される線形モデル、ロジスティックモデル、Coxモデルを用いることとする。こ

れらのモデルを用いた時の結果変数𝑌 に対する治療効果の検定のαエラーと検出力を

検討する。今、𝐼 を被験者𝑖が群 1に割り付けられれば 0、群 2に割り付けられれば 1

を取る指示変数とする。この時、線形モデルを下記に設定する。𝛽 が治療効果を表す。

線形モデル: 𝑌 = 𝛽 + 𝛽 𝐼 + 𝛾 𝑍 + 𝛾 𝑍 + 𝜀 (7)

また、𝑍 は標準正規分布𝑁(0, 1)、𝑍 は指数分布𝐸𝑥𝑝(1)、𝜀 は標準正規分布𝑁(0, 1)

に従うと仮定する。式(7)の右辺で𝜀 を除いた部分を線形予測子と呼び、ロジスティッ

クモデルおよび Coxモデルにおいても同様の線形予測子を仮定する。パラメータ値に

ついては下表のとおりとする。𝛽 = 0の場合がαエラーの検討に相当する。

表1. 各モデルにおけるパラメータの真値

モデル 𝛽 𝛽 𝛾 𝛾

線形 0 0, 0.1, ..., 1 0.5 0.5

ロジスティック -1 0, 0.1, ..., 1 0.5 0.9

Cox -0.5 0, 0.1, ..., 1 0.5 0.5

Coxモデルでは生存時間が指数分布に従い、一様分布𝑈(0, 20)に従って打ち切られる

と仮定する。また、生存時間が20を越えた被験者も同様に打ち切りとする。Pocock and

Simon の最小化法とカーネル密度最小化法では、高確率付与偽群に割り当てる確率を

0.8、総バランススコア算出時の重みは1、バランススコアにはレンジを用いる。目標と

する割付比は1:2、層別置換ブロック法で用いるブロックサイズは偽群数の2倍、カー

ネル密度最小化法で用いるブロックサイズは偽群数とし、総サンプルサイズは60、120、

180、240 例とする。共変量の調整について、1. 未調整の場合、2. 𝑍 で調整した場合、

3. 𝑍 で調整した場合、4. 𝑍 と𝑍 で調整した場合の4パターンを設定する。𝛽 に関する

検定について、線形モデルでは t-test、ロジスティックモデルとCoxモデルではワルド

χ 検定を行う。反復回数は1万回とする。

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3.3. ランダム化に基づいた統計量の分布のシフトおよびランダム化に基

づく検定のαエラー、検出力

本節の検討には1.5節に記載した並べ替え法を用いる。一般化線形モデルの下ではブ

ートストラップ t検定を実施することも可能であるが(Shao and Yu, 2013; Shao et al., 2010)、

並べ替え法は非常に単純であることと、本研究では一般化線形モデルではない Coxモ

デルも検討対象としていることから、ブートストラップ法ではなく並べ替え法を用い

ることとした。本節のシミュレーション設定は次の点以外は3.2節と同様とする。総サ

ンプルサイズは 60、𝛽 = 0, 0.2, … , 1、シミュレーション反復回数は 1000回とし、並

べ替え法における反復回数を1000回とする。すなわち、シミュレーション反復回ごと

に並べ替え法が1000回反復される。また、検定統計量は各モデルから得られる𝛽 の推

定値をその標準誤差で除したものとし、この検定統計量の並べ替え分布を参照する。

並べ替え分布のシフトは並べ替え分布の平均値の 0 からの乖離で評価し、合わせて並

べ替え検定のαエラーと検出力を評価する。

3.4. 共変量の関数形を誤特定した場合の検討

カーネル密度最小化法は連続変数をカテゴリ化せず割付時に考慮できるが、連続変

数をモデル解析に使用する場合、どのような関数形でモデルに含めるかという問題が

ある。ここでは3.2節の式(7)を下記の式に置き換えたものを真実であると仮定するが、

正しいモデルではなく式(7)の誤ったモデルを用いて解析を行い、3.2節および3.3節と

同様の検討を行う。

線形モデル: 𝑌 = 𝛽 + 𝛽 𝐼 + 𝛾 exp 𝑍 + 𝛾 𝑍 + 𝜀 (8)

パラメータ値については下表のとおりとし、他の設定は3.2節および3.3節と同様とす

る。

表2. 各モデルにおけるパラメータの真値

モデル 𝛽 𝛽 𝛾 𝛾

線形 0 0, 0.1, ..., 1 0.5 0.5

ロジスティック -1 0, 0.1, ..., 1 0.3 0.2

Cox -1 0, 0.1, ..., 1 0.2 0.2

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結果

4.1. バランス性能評価

表 3 に各割付比における各割付方法での群間の調整被験者数の差を示した。すべて

の割付比において、Pocock and Simonの最小化法およびカーネル密度最小化法は優れた

バランス性能を示した一方、単純ランダム化では大きな差が認められた。

表3. 各割付比における群間の調整被験者数の差

方法 ∆N - 50パーセント点 ∆N - 99パーセント点

1:2 1:3 2:3 1:2 1:3 2:3

SR 6.0 5.3 3.3 24.0 20.0 13.3 SPBR 1.5 1.3 1.7 7.5 6.7 5.8 PS 0.0 0.0 0.8 3.0 2.7 1.7 KM 0.0 0.0 0.8 3.0 2.7 1.7

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。総症例数は180例。

表4に、4変数すべてを割付時に考慮した状況下で、各割付比における各割付方法で

の群間の共変量バランスを示した。すべての割付比において、カーネル密度最小化法

が共変量の型によらず最もバランス性能が高く、Pocock and Simonの最小化法は層別置

換ブロックランダム化法よりもわずかに良い結果であった。

表 5に、指数以外の 3変数を割付時に考慮した状況下で、各割付比における各割付

方法での群間の共変量バランスを示した。すべての割付比において、カーネル密度最

小化法が共変量の型によらず最もバランス性能が高く、Pocock and Simonの最小化法は

層別置換ブロックランダム化法よりもわずかに良い結果であった。また、割付時に考

慮しなかった指数変数について、すべての方法で同程度のバランス性能であった。

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表4. 各割付比における群間の共変量バランス - 4変数すべてを割付時に考慮

方法 共変量 p 値 - 50パーセント点 p 値 - 1パーセント点

1:2 1:3 2:3 1:2 1:3 2:3

SR 正規 0.55 0.55 0.56 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.74 0.74 0.73 0.10 0.10 0.09 PS 0.74 0.75 0.76 0.11 0.11 0.10 KM 0.94 0.91 0.91 0.32 0.29 0.30 SR 指数 0.55 0.55 0.55 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.74 0.74 0.73 0.10 0.10 0.09 PS 0.74 0.75 0.76 0.11 0.11 0.10 KM 0.94 0.93 0.92 0.38 0.36 0.30 SR ベルヌーイ 1 0.49 0.49 0.49 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.83 0.80 0.79 0.40 0.35 0.33 PS 0.88 0.86 0.86 0.48 0.48 0.40 KM 0.92 0.87 0.89 0.54 0.55 0.52 SR ベルヌーイ 2 0.51 0.50 0.51 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.83 0.80 0.79 0.41 0.34 0.31 PS 0.88 0.86 0.86 0.49 0.45 0.41 KM 0.92 0.87 0.89 0.53 0.54 0.50

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。連続変数とカテゴリカル変数の p値はそれぞれ Kolmogorov-Smirnov検定および

χ 検定に基づく。総症例数は180例。

表5. 各割付比における群間の共変量バランス - 指数以外の変数を割付時に考慮

方法 共変量 p 値 - 50パーセント点 p 値 – 1パーセント点

1:2 1:3 2:3 1:2 1:3 2:3

SR 正規 0.55 0.55 0.56 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.75 0.76 0.74 0.11 0.11 0.09 PS 0.75 0.76 0.76 0.11 0.11 0.09 KM 0.94 0.95 0.93 0.33 0.37 0.36 SR 指数 0.55 0.55 0.55 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.56 0.55 0.56 0.01 0.01 0.01 PS 0.56 0.56 0.56 0.01 0.01 0.01 KM 0.56 0.55 0.56 0.01 0.02 0.01 SR ベルヌーイ 1 0.49 0.49 0.49 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.88 0.86 0.85 0.55 0.50 0.47 PS 0.92 0.87 0.88 0.53 0.50 0.46 KM 0.92 0.92 0.90 0.60 0.60 0.54 SR ベルヌーイ 2 0.51 0.50 0.51 0.01 0.01 0.01 SPBR 0.88 0.86 0.85 0.56 0.50 0.46 PS 0.92 0.87 0.88 0.54 0.53 0.46 KM 0.92 0.92 0.90 0.60 0.60 0.54

脚注は表4と同様。

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4.2. αエラーと検出力 - 共変量の関数形が正しい場合

表 6および表 7に 3.2節の式(7)に基づく各モデルを用いた場合の各方法のαエラーを

示した。単純ランダム化法はすべての状況でαエラーが有意水準付近である一方、他

の方法では未調整または一部のみ調整の状況で保守的な結果であり、カーネル密度最

小化法が最も保守的であった。しかし、すべての変数を調整した場合ではαエラーは

有意水準付近となった。

表6. 線形モデルおよびロジスティックモデルでのαエラー

モデル 方法 被験者数 未調整 𝑍 のみ調整 𝑍 のみ調整 𝑍 と𝑍 を調整

線形 SR 60 5.37 5.14 5.39 5.28 120 5.01 5.04 5.01 4.75 180 4.91 4.87 4.84 4.71 240 4.82 4.67 4.77 4.44 SPBR 60 3.28 4.16 3.98 4.97 120 3.05 3.95 3.69 5.09 180 3.27 4.12 3.80 5.02 240 2.94 3.97 3.76 5.18 PS 60 3.35 4.14 3.89 5.28 120 3.11 4.20 3.75 4.97 180 3.07 4.24 3.93 5.17 240 3.19 3.99 3.61 5.06 KM 60 2.94 3.73 3.70 5.08 120 2.57 3.50 3.43 5.43 180 2.39 3.54 3.33 5.06 240 2.32 3.26 3.26 4.73

ロジス SR 60 4.68 4.81 4.88 4.94 ティック 120 5.00 4.92 4.99 4.95 180 4.63 4.90 4.81 4.81 240 4.98 4.69 5.05 4.75 SPBR 60 4.38 4.74 4.51 4.88 120 4.51 4.87 4.51 4.94 180 4.47 5.00 4.51 5.13 240 4.53 4.77 4.66 4.92 PS 60 4.30 4.80 4.26 4.79 120 4.21 4.75 4.47 4.91 180 4.43 4.99 4.55 5.13 240 4.48 5.02 4.65 5.12 KM 60 4.16 4.45 4.25 4.60 120 4.37 4.91 4.48 5.10 180 4.52 5.17 4.74 5.36 240 4.23 4.69 4.28 4.85

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。

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表7. Coxモデルでのαエラー

モデル 方法 被験者数 未調整 𝑍 のみ調整 𝑍 のみ調整 𝑍 と𝑍 を調整

Cox SR 60 5.35 5.59 5.61 5.45 120 5.04 5.41 5.15 5.12 180 5.34 5.36 5.63 5.23 240 4.88 5.06 5.15 4.75 SPBR 60 3.91 5.02 4.56 5.45 120 3.49 4.53 4.32 5.37 180 3.67 4.65 4.37 5.42 240 3.46 4.93 4.15 5.50 PS 60 3.75 5.01 4.41 5.81 120 3.29 4.24 4.12 5.02 180 3.51 4.76 4.02 5.43 240 3.57 4.54 4.43 5.55 KM 60 3.75 4.94 4.73 6.04 120 2.88 4.25 3.89 5.16 180 2.75 3.95 3.57 4.82 240 2.62 3.82 3.58 5.12

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。

図 4~図 6 に 3.2 節の式(7)に基づく各モデルを用いた場合の各方法の検出力を示し

た。症例数によって検出力の傾向は変わらないが、評価をしやすくするためにそれぞ

れ60例、180例、60例の結果を示した。すべての割付方法について、すべての変数で

調整した場合が最も検出力が高く、一部のみ調整した場合は未調整よりも検出力が高

かった。また、単純ランダム化法を除くすべての割付方法において、𝛽 が小さい時は

単純ランダム化法よりも検出力が小さいが、大きくなるに従って単純ランダム化法よ

りも検出力が高くなる傾向が見られた。

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図4. 線形モデルにおける各方法を用いた時の検出力曲線

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法、SR(a): パネル(a)におけるSR。総被験者数は60例。破線は有意水準5%を示す。

図5. ロジスティックモデルにおける各方法を用いた時の検出力曲線

総被験者数が180例であること以外、脚注は図4と同様。

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図6. Coxモデルにおける各方法を用いた時の検出力曲線

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法、SR(a): パネル(a)におけるSR。総被験者数は60例。

4.3. αエラーと検出力 - 共変量の関数形が誤っている場合

表 8および表 9に 3.4節の式(8)に基づく各モデルを用いた場合の各方法のαエラーを

示した。Cox モデル以外では、単純ランダム化法はすべての状況でαエラーが有意水

準付近である一方、他の方法では未調整または一部のみ調整の状況で保守的な結果で

あり、カーネル密度最小化法が最も保守的であった。また、すべての変数を調整した場

合ではαエラーは有意水準に近づいたが、保守的であった。Coxモデルにおいては、調

整をするにつれてαエラーの増大が認められたが、カーネル密度最小化法のαエラー

の増大が最も小さかった。未調整の状況では単純ランダム化法以外の方法が保守的で

あった。

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表8. 線形モデルおよびロジスティックモデルでのαエラー

モデル 方法 被験者数 未調整 𝑍 のみ調整 𝑍 のみ調整 𝑍 と𝑍 を調整

線形 SR 60 4.63 4.67 5.10 5.23 120 4.40 4.46 4.76 4.99 180 4.49 4.51 4.94 5.23 240 5.17 4.86 4.46 4.59 SPBR 60 2.42 2.90 2.99 3.98 120 2.63 3.23 3.15 3.98 180 2.46 2.96 2.61 3.74 240 2.64 3.01 3.04 4.12 PS 60 2.63 2.94 2.96 3.77 120 2.60 2.81 3.10 4.00 180 2.69 2.86 2.94 3.70 240 2.66 3.18 2.80 3.79 KM 60 1.24 1.34 1.82 2.63 120 0.83 1.01 1.34 2.08 180 0.92 1.08 1.46 2.17 240 0.59 0.84 1.22 1.96

ロジス SR 60 4.03 3.94 4.24 4.32 ティック 120 4.87 5.01 4.88 4.97 180 5.10 5.20 5.16 5.11 240 5.07 5.22 5.42 5.25 SPBR 60 4.11 4.45 4.17 4.65 120 3.99 4.51 4.14 4.77 180 4.48 4.95 4.78 5.23 240 4.25 4.77 4.26 5.01 PS 60 4.33 4.92 4.63 5.31 120 3.94 4.37 4.10 4.76 180 3.89 4.52 4.14 4.78 240 4.52 5.21 4.79 5.34 KM 60 3.97 4.40 4.14 4.65 120 3.79 4.35 4.10 4.86 180 3.88 4.35 4.19 4.81 240 3.76 4.40 4.05 4.83

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。

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表9. Coxモデルでのαエラー

モデル 方法 被験者数 未調整 𝑍 のみ調整 𝑍 のみ調整 𝑍 と𝑍 を調整

Cox SR 60 5.79 6.29 6.85 7.37 120 5.24 6.02 7.10 7.87 180 5.24 5.82 6.76 7.11 240 5.29 5.69 6.97 7.32 SPBR 60 3.02 3.91 5.06 6.99 120 2.85 4.11 4.96 7.21 180 2.93 3.88 5.31 7.15 240 3.00 3.95 5.40 7.06 PS 60 3.27 4.27 5.29 6.84 120 2.92 3.95 5.05 6.79 180 3.11 4.08 4.60 6.91 240 2.76 3.90 5.40 7.35 KM 60 2.83 3.86 4.69 6.53 120 2.56 3.45 4.30 6.18 180 2.51 3.03 4.28 5.87 240 2.19 3.06 3.86 5.66

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。

図 7~図 9 に 3.4 節の式(8)に基づく各モデルを用いた場合の各方法の検出力を示し

た。症例数によって検出力の傾向は変わらないが、評価をしやすくするためにそれぞ

れ180例、240例、120例の結果を示した。すべての割付方法について、すべての変数

で調整した場合が最も検出力が高く、一部のみ調整した場合は未調整よりも検出力が

高かった。また、単純ランダム化法を除くすべての割付方法において、𝛽 が小さい時

は単純ランダム化法よりも検出力が小さいが、大きくなるに従って単純ランダム化法

よりも検出力が高くなる傾向が見られた。𝛽 が大きい場合において、線形モデルでは

カーネル密度最小化法の検出力が他の方法より1~3%とわずかに検出力が高かった。

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図7. 線形モデルにおける各方法を用いた時の検出力曲線

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法、SR(a): パネル(a)における SR。総被験者数は 180例。破線は有意水準 5%を示す。

図8. ロジスティックモデルにおける各方法を用いた時の検出力曲線

総被験者数が240例であること以外、脚注は図7と同様。

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図9. Coxモデルにおける各方法を用いた時の検出力曲線

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法、SR(a): パネル(a)における SR。総被験者数は 120例。破線は有意水準 5%を示す。

4.4. 並べ替え分布のシフトおよび並べ替え検定のαエラー、検出力 - 共

変量の関数形が正しい場合

表10に3.2節の式(7)に基づく各モデルを用いた場合の各方法のαエラーと検出力、並

べ替え分布のシフトを示した。並べ替え分布のシフトはいずれの状況に置いても無視

できる程度であった。並べ替え検定のαエラーは有意水準付近であった。また、並べ替

え検定の検出力について、線形モデルと Coxモデルでは未調整とすべて調整の場合の

間に含まれていたが、ロジスティックモデルでは調整の影響が小さく、未調整および

すべて調整の場合と同程度の結果となった。

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表10. 各モデルにおけるαエラーおよび検出力、平均シフト、並べ替え検定のαエラ

ーおよび検出力

𝛽2 未調整 𝑍1と𝑍2で調整 平均シフト 並べ替え

SR SPBR PS KM SR SPBR PS KM (標準偏差) 検定

Linear

0.0 5.10 3.10 2.50 3.00 5.80 5.00 4.80 5.30 0.001 (0.028) 4.80

0.2 10.10 8.80 6.00 6.00 10.80 11.90 8.40 10.90 0.000 (0.030) 11.60

0.4 21.70 19.80 19.00 19.50 28.50 28.20 28.40 28.60 0.000 (0.029) 25.10

0.6 43.60 44.20 41.70 41.40 56.90 57.40 57.40 55.80 0.000 (0.030) 49.70

0.8 66.40 65.80 66.50 66.90 80.00 79.80 81.00 81.40 -0.001 (0.029) 72.70

1.0 81.10 85.70 85.40 85.20 93.10 94.50 94.40 93.60 0.001 (0.028) 90.40

Logistic

0.0 5.10 4.10 4.70 3.20 4.90 4.30 5.00 4.10 0.001 (0.030) 5.60

0.2 4.70 5.80 5.50 5.40 5.90 6.30 5.70 5.70 0.000 (0.030) 5.50

0.4 9.30 9.20 11.20 11.50 11.30 10.00 11.70 12.00 0.001 (0.030) 9.60

0.6 16.50 18.00 17.80 16.50 17.70 19.20 18.20 17.80 0.001 (0.029) 16.10

0.8 25.60 26.80 26.30 23.80 26.00 27.90 29.00 26.00 0.001 (0.031) 27.30

1.0 39.60 39.10 38.90 42.80 40.80 42.00 40.80 44.90 0.002 (0.029) 36.60

Cox

0.0 5.80 4.90 4.10 3.90 5.60 6.00 5.40 6.60 -0.032 (0.029) 4.10

0.2 8.30 7.00 5.80 6.60 10.50 9.90 9.60 11.60 -0.032 (0.030) 8.60

0.4 15.80 16.50 16.80 16.30 26.20 28.10 27.20 25.70 -0.035 (0.030) 21.90

0.6 36.70 33.50 34.30 34.00 50.60 49.90 53.60 52.60 -0.035 (0.031) 39.80

0.8 56.10 58.30 56.80 60.60 75.20 75.90 76.00 79.00 -0.037 (0.032) 60.60

1.0 73.20 77.50 77.30 75.10 88.20 90.40 91.20 90.90 -0.038 (0.031) 82.50

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。総被験者数は60例。並べ替え検定はカーネル密度最小化法実施時のもの。

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26

4.5. 並べ替え分布のシフトおよび並べ替え検定のαエラー、検出力 - 共

変量の関数形が誤っている場合

表11に3.4節の式(8)に基づく各モデルを用いた場合の各方法のαエラーと検出力、並

べ替え分布のシフトを示した。並べ替え分布のシフトはいずれの状況に置いても無視

できる程度であった。並べ替え検定のαエラーは有意水準付近であった。また、並べ替

え検定の検出力について、線形モデルと Coxモデルでは未調整とすべて調整の場合の

間に含まれていたが、線形モデルではすべて調整の場合に比べて大きく下回った。ロ

ジスティックモデルでは調整の影響が小さく、未調整およびすべて調整の場合で検出

力は同程度の結果となった。

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表11. 各モデルにおけるαエラーおよび検出力、平均シフト、並べ替え検定のαエラ

ーおよび検出力

𝛽 未調整 𝑍 と𝑍 で調整 平均シフト 並べ替え

SR SPBR PS KM SR SPBR PS KM (標準偏差) 検定

Linear

0.0 4.30 3.10 2.20 1.00 5.40 4.10 3.20 3.30 0.002 (0.026) 5.20

0.2 5.00 4.20 2.60 1.40 8.80 8.10 6.80 5.10 0.001 (0.026) 7.00

0.4 10.10 6.20 6.60 3.50 19.30 15.50 17.20 15.80 0.001 (0.026) 12.50

0.6 15.50 14.80 13.90 10.00 36.10 34.10 34.50 33.00 0.001 (0.026) 24.40

0.8 23.20 21.50 23.80 18.80 53.20 52.70 54.50 53.80 0.001 (0.026) 36.00

1.0 33.80 35.10 33.20 31.90 70.00 73.40 72.70 73.10 0.002 (0.027) 49.80

Logistic

0.0 4.10 4.50 5.30 3.20 3.40 4.90 5.20 3.80 0.000 (0.031) 4.90

0.2 5.90 6.20 5.60 5.40 6.90 6.30 6.20 6.10 0.000 (0.030) 6.50

0.4 10.80 9.30 9.60 9.30 10.80 10.10 10.80 10.00 -0.001 (0.031) 9.30

0.6 16.40 16.10 15.50 15.20 18.10 18.10 16.90 17.70 0.001 (0.031) 14.00

0.8 23.20 26.80 23.10 22.60 24.30 28.70 24.50 26.10 0.002 (0.031) 28.20

1.0 37.00 37.80 37.10 38.40 40.90 41.00 39.80 41.00 0.002 (0.030) 41.10

Cox

0.0 5.60 5.30 5.30 4.40 6.30 6.00 6.60 6.70 -0.034 (0.031) 4.30

0.2 8.60 9.20 6.70 7.60 9.90 11.60 9.80 10.90 -0.034 (0.031) 7.90

0.4 19.70 18.80 19.80 17.10 25.70 27.20 27.80 24.40 -0.036 (0.030) 23.00

0.6 40.20 39.90 41.70 37.60 47.20 50.40 50.20 49.30 -0.036 (0.031) 42.30

0.8 61.80 66.30 61.80 67.60 71.70 75.10 72.30 76.40 -0.038 (0.032) 64.00

1.0 78.70 80.50 82.40 82.20 86.40 88.40 89.20 87.70 -0.039 (0.032) 85.10

SR: 単純ランダム化法、SPBR: 層別置換ブロックランダム化法、PS: Pocock and Simon の最小化法、KM:

カーネル密度最小化法。総被験者数は60例。

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28

考察

本研究では、不均等割付の状況において、カーネル密度最小化法を用いた際の有限

標本における共変量バランス、並べ替え分布のシフト、検定のαエラーと検出力につ

いてシミュレーションにより検討を行った。まず、群間の被験者および共変量分布に

ついては、カーネル密度最小化法が検討手法の中で最も不均衡が小さく、この結果は

カーネル密度最小化法を提案した Ma らが彼らの論文で均等割付の状況下で検討した

結果と整合していた(Ma and Hu, 2013)。さらに、割付時に考慮していない共変量があっ

たとしても、その群間の不均衡はすべての方法で同程度であった。これは、層別置換ブ

ロックランダム化法、Pocock and Simonの最小化法およびカーネル密度最小化法を用い

れば、仮に調整しない変数があったとしても、単純ランダム化法と同程度に当該変数

の分布を群間でバランスさせることが可能であることを示している。よって、群間の

被験者および共変量分布のバランスを取る点については、カーネル密度最小化法が均

等および不均等割付のいずれにおいても最も優れていることが示された。

次に各モデルを用いた時のαエラーと検出力について考察する。近年、均等割付の

状況において、Ma らと Li らがそれぞれカテゴリカル変数のみを扱える方法と連続変

数を扱える方法のαエラーと検出力を検討した(Li et al., 2018; Ma et al., 2015)。彼らの結

果と本研究では次の 2点で類似していた。1. 単純ランダム化法以外の方法では、未調

整モデルで保守的な結果となった、2. ある治療効果以上から単純ランダム化法を用い

た時の検出力よりもカーネル密度最小化法を用いた時の検出力がわずかに高くなった。

共変量を考慮した割付を行うと群間の要約指標間に相関が生じるが、未調整モデルは

この相関を無視して解析していることで保守的となっている(Shao et al., 2010)。また、

2について、ランダム化試験では臨床的に意義のある差を設定するが、この差は一般的

に小さな値ではない。カーネル最小化法を含む共変量を考慮した割付で未調整モデル

は保守的な結果となるが、治療効果が小さくない場合、カーネル密度最小化法の検出

力は単純ランダム化法より大きくなるため、未調整モデルの適用も一つの選択肢にで

きると考える。ただし、検出力を最大にするためには、割付段階で考慮した共変量を解

析時に調整すべきである。カーネル密度最小化法の下でのロジスティックモデルとCox

モデルの適用は本研究が初めてであり、αエラーが有意水準に近くなった以外は線形

モデルと類似の結果であった。なお、ロジスティックモデルでは共変量調整を行って

も検出力の増加は軽微であり、ロジスティックモデルを用いる場合は未調整モデルを

用いることで問題ない可能性がある。また、Cox モデルでは共変量の関数形によって

は、関数形の誤特定によりαエラーが増大していた。Cox モデルにおけるこの結果は

ポアソンモデルにおけるFanらの結果と類似していた(Fan et al., 2018)。このαエラーの

増大を抑えるためには、未調整モデルまたは並べ替え検定を用いた方がよいと考えら

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れるが、Coxモデルにおける理論的な検討は今後の課題としたい。

次に並べ替え分布のシフトについて述べる。カーネル密度最小化法の下で適切な不

均等割付を行った場合、有限標本で分布のシフトは無視できる程度であり、線形モデ

ル、ロジスティックモデル、Coxモデルで偽群法が機能することが確認できた。最小化

法は小から中サイズの試験で用いられるが、この場合ロジスティックモデルや Coxモ

デルの検定統計量の正規近似精度が悪くなり、結果としてαエラーの増大を引き起こ

す可能性がある。そのような状況でも並べ替え検定は妥当な検定となるため、正規近

似精度が悪いと考えられる状況では並べ替え検定の使用が推奨される。

本研究の限界として、シミュレーション研究であるため、設定した状況以外の状況

でも同様の結果となることが保証されていない点が挙げられる。しかし、本研究で設

定した割付比や症例数等は実際の臨床研究において用いられる状況を含んでいること

から、実際の多くの状況に適用可能と考えられる。

最後に、Maらの論文(Ma and Hu, 2013)では、カーネル密度最小化法の説明に用いら

れている記法が若干不十分な部分があった。本研究でカーネル密度最小化法の実装が

可能となるように記法を明確化したため、シミュレーションの結果と合わせ、今後本

手法の実装および実試験への適用が期待される。

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30

総括および結論

本研究ではカーネル密度最小化法について下記の事項が明らかになった。

1) 群間の共変量分布を最も均衡させることができ、被験群間の被験者数について

もPocock and Simonの最小化法と同程度に均衡させることができる。

2) 共変量未調整の状況では、線形モデル、ロジスティックモデル、Coxモデルのい

ずれの場合においても保守的な結果となる。

3) 共変量をすべて調整した状況では、モデルが正しい場合、線形モデル、ロジステ

ィックモデル、Coxモデルのいずれにおいてもαエラーは有意水準付近となり、

検出力も高い。モデルが正しくない場合、線形モデルでは治療効果が小さくない

場合、他の割付法に比べて1~3%程度検出力が高くなる。また、すべての割付法

において、Coxモデルではαエラーの増大が確認される場合がある。

4) 偽群法を用いれば、統計量の並べ替え分布のシフトは有限標本でも無視できる

程度である。また、並べ替え検定はすべての状況でαエラーが有意水準付近とな

り、ほとんどの場合で共変量をすべて調整した際の検出力より大きく下回るこ

とはない。

1)より、連続変数も含めて群間の共変量分布のバランスを揃えたい場合、カーネル密

度最小化法が最も適している。また、2)および3)より、線形モデルとロジスティックモ

デルでは常に共変量をすべて調整することが推奨されるが、Cox モデルでは未調整で

の使用または並べ替え検定の使用が推奨されると考えられる。そして 4)より、カーネ

ル密度最小化法においても偽群法は有限標本で機能することから、他のランダム化法

についても同様に機能するであろうことが推察される。

今後の課題としては、共変量の関数形を誤特定した場合の調整 Coxモデルにおける

αエラー増大の理論的検討が挙げられる。これは共変量を考慮した割付に限った問題

ではないが、検討を進めることで結果的に共変量を考慮した割付を行った場合の解析

方法についてもより明確な指針を与えることができると考えられる。

また、もう一つの課題として、パラメータの推定に関する点が挙げられる。本研究で

は検定に限定したが、推定がより重要であり、パラメータ推定値のバイアスや推定精

度の検討も重要である。今後これらの検討を進め、現実の臨床試験で適切に割付や解

析が行われる一助としたい。以上から、連続変数を割付時に考慮する場合、均等割付と

不均等割付いずれの割付の下でも、カーネル密度最小化法を実際の臨床試験に適用す

ることが望ましいと考える。

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31

謝辞

本研究のきっかけとなった臨床試験に触れる機会を下さり、またご指導いただきま

した北海道大学病院臨床研究開発センターの佐藤典宏教授に感謝いたします。

また、英語論文執筆に際してエディテージ(https://www.editage.jp/)に校正に関して

感謝いたします。

最後に、単身赴任である私を遠くから支えてくださった家族に感謝いたします。

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32

利益相反

開示すべき利益相反状態はない。

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33

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