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Guideline for resuscita0on in cardiac arrest a1er cardiac surgery
Eur J Cardio-‐thoracic Surgery 36 (2009) 3-‐28
はじめに
• 今回心臓手術後ICU入室直後に心停止となった症例を経験した
• 心臓マッサージによる弊害を指摘され、調べると明文化されたガイドラインが存在した
• この度、ガイドラインについて紹介するとともに、心臓手術後の心停止の対応について検討する
Introduc0on
• ヨーロッパでは毎年250,000人以上の患者が心臓手術を受ける
• その中で心停止を生じるものは0.7-‐2.9% • 心臓停止の多くは可逆的な原因によるものであり、予後は良好
• プロトコールに則ったマネジメントにより、再開胸までの時間を半減させ、再開胸による合併症を減らすことが出来る
Methods
• 2007年にヨーロッパ心臓外科学会の臨床ガイドライン委員会が心臓手術後に特化した蘇生ガイドラインの作成を開始 – 診療の指針を示すエビデンスとなる文献があれば、ICVTS (Interac0ve CardioVascular and Thoracic Surgery)上でレビューを行う
– CTSnet上で2008年1月〜6月の期間での心臓手術後の蘇生に関する内容に関して調査
– マネキンを用いて様々な心停止プロトコールを実践し、ビデオに録画して、その実用性を評価
Methods
• 心臓手術に関する研究が無ければILCOR (Interna0onal Liason CommiRee on Resuscita0on)の発行しているワークシートを用いて、本ガイドラインに関連する事柄に関してレビューを施行
Methods
• エビデンスレベルを評価 – LOE1:RCTまたは複数のRCTのメタアナリシス – LOE2:ランダム化されていない対照研究 – LOE3:後ろ向きコホート – LOE4:症例報告 – LOE5:特定の患者集団を対照としていない研究
• エビデンスの質を評価 – Good:多くまたは全てが価値のある質 – Fair:価値のある質を含む – Poor or unsa0sfactory:ほとんど価値がない
ICUにおける心停止プロトコール
• European Resuscita0on Council (ERC)のACLS改変版
• ICUでの使用を前提 • ICU以外では使えない!!
総論
1. カルディオバージョン 2. 心停止の確認 3. BLS:胸骨圧迫 4. BLS:気道確保 5. 持続静注 6. アドレナリン投与 7. IABP使用時の対応
カルディオバージョン
• 心臓手術後ではモニターが完備 – 心停止をすぐに把握できる
• 胸骨圧迫⇒手術部位への外傷 • 二相性を使用
胸骨圧迫の前に カルディオバージョン!!
心停止の確認
• 心電図モニターでVF or asystole
⇒すぐに心停止の宣言 • 心電図モニター上sinus ⇒脈を10秒確認 – 動脈圧波形・SpO2波形・CVP波形ともにflat
⇒心停止宣言
胸骨圧迫
• VT or pulseless VT
除細動器が1分以内に使える状況であれば、3回の除細動まで胸骨圧迫は行わない! ¡ 収縮期血圧が60mmHgを超えるように
⇒達成できない時は再開胸!
気道確保
• 直ちに酸素を100%へ! • 挿管されている場合はPEEPを外す! • できれば人工呼吸器は外す! • 両側肺野聴取・胸の上がりを確認 ⇒気胸・血胸を確認 • 気胸が疑われる!! ⇒太い静脈針を鎖骨中線前面・第2肋間に! • ⇒胸腔ドレーン・再開胸時に胸膜切開
持続静注
投与している薬物が原因で心停止となった報告は無かった
• 全て投与を中止 • 麻酔薬に関しては意識の回復があれば再開可能
• 他の薬剤は状況に応じて再開
アドレナリン投与
• 心臓手術後のアドレナリン投与 ⇒一貫した結果が得られていない • 心臓術後に緊張性気胸から心停止 – アドレナリンを投与⇒心拍再開 – その後胸腔ドレーンを留置⇒高血圧・大量出血!
アドレナリン・バソプレシンは 投与すべきでない!
(但し経験に富んだ医師による場合を除く)
IABP使用時の対応
• 圧トリガーへ変更 • 心臓マッサージをしない時間 ⇒内部同期設定へ変更し、100bpmに設定
Six key roles
①胸骨圧迫 ②気道確保 ③除細動 ④チームリーダー ⑤薬剤 ⑥ICU co-‐ordinator
VF/pulseless VT
• 前胸部叩打法 • 胸骨圧迫 VS 除細動/ペーシング • アミオダロン • AEDの使用 • パッド VS パドル • 自動胸骨圧迫装置
前胸部叩打法
• 心臓手術後の患者で前胸部叩打法で蘇生に成功したという報告は無い
• VF・pulseless VTが発生した後、10秒以内であれば有効かもしれない
• 除細動器によるカルディオバージョンの妨げになってはならない
胸骨圧迫 VS 除細動/ペーシング
• 5分以内:除細動/pacingの勝利 • 心臓手術後では1分以内に除細動/ペーシングを施行するべき! – Bohrerら:心臓手術後の胸骨圧迫で大量失血死 – Kempen&Allgood:右肺全摘後に右室穿孔
• 二相性除細動器: – 1回目 78%、2回目 35%、3回目 14%の成功率
⇒4回目以降では生存の確立低い!
アミオダロン
• ARREST trial (NEJM 1999;341:871-‐8) – 病院外心停止 – アミオダロンはプラセボに比較し病院到着時の生存率を上昇させる(44% vs 34%)
• ALIVE trial (NEJM 2002;346:884-‐90) – アミオダロンは病院到着時の生存率をリドカインに比べて上昇させる(22.8% vs 12.0%, p=0.009)
– 除細動後の心静止が少ない(18% vs 29%, p=0.04)
3回の除細動に失敗したら300mgのアミオダロン!
AEDの使用
• AEDでは熟練した医師に比べ、素早く除細動を3回施行することが出来無い!! ⇒再開胸の判断を遅らせることにつながる
パッド VS パドル • パッドとパドルを比較した研究はなし • ERCの勧告ではどちらでも良い • パドル・パッドの交換による除細動の遅延の可能性あり ⇒両者を揃えておく必要性はなし!
¡ 胸骨切開を施行した患者に対する施行なし ¡ 安全性が確保されるまでは使用は控える
ショック無効な心停止
• ペーシング • アトロピン • non-‐VF/VT心停止での緊急再開胸
ペーシング
• 除細動の適応となる症例は30〜50%程度 ⇒その他のうち、ペーシングの適応になるのは重症徐脈と心静止
• 心外膜ペーシングがあればすぐに装着 – DDD mode・rate 90bpmに設定! – outputは最大に!
• 無ければ経皮ペーシング – 根拠となる研究なし
• 既にペーシングされている状況での心停止 – 潜在性VFの除外の必要あり!
アトロピン
• 心停止時に用いられているが、有効性は確立していない(現にAHA Guidelines for CPR and ECC 2010では削除)
• 心臓手術後に関するエビデンスはなし • 大きな副作用もないため、心停止・血圧が出ない徐脈では使用を推奨
(心停止・)著しい徐脈では経中心静脈的に3mgのアトロピンを投与
non VF/VTでの緊急再開胸 • non VF/VT心停止では予後が悪い • 4Hs:Hypoxia、Hypovolemia、Hypo/Hyperkalemia、Hypothermia
• 4Ts:Tamponade、Tension pneumothorax、Thrombo-‐embolism, Toxins
• 心臓手術後ではTamponade、Tension pneumothorax、Hypovolemiaが多い ⇒緊急開胸で改善・良い予後を得られる!
アトロピン・ペーシングで改善しない場合には緊急開胸を直ちに施行すべき
緊急再開胸
• 開胸心臓マッサージ • 腹部圧迫 • 再開胸セット • 緊急再開胸の手順 • 緊急再開胸における抗菌薬投与 • 緊急再開胸における低体温療法
開胸心臓マッサージ
• 通常の心臓マッサージ:心係数 0.6l/min/m2 ⇒開胸心臓マッサージ:心係数1.3l/min/m2まで改善
開胸術後間もない患者で、蘇生に5〜10分以上要することが予測される場合には、開胸マッサージを施行するべき
開胸心臓マッサージ
• 危険な手技⇒トレーニングが必要 • 熟練者以外は施行すべきではない! • 両手法がより安全 – 片手法では右室破裂の危険性
• 僧帽弁術後では右手で心尖部を持ち上げないように!⇒右室破裂
腹部圧迫
腹部圧迫
• Geddesら – ブタで腹部圧迫により通常の心臓マッサージよりも腹部圧迫の方が冠血流が得られる
• 間欠的腹部圧迫 – 小規模メタアナリシスで自己心拍の再開に関して通常の胸骨圧迫よりも有意であるとの報告あり
• 再開胸施行時の全身の血流の確保に有用かもしれない?⇒さらなるエビデンスが必要
再開胸セット
• 開胸セットの準備 ⇒緊急再開胸を遅らせる原因 • 必要なものは5つだけ!! – 全身ドレープ – メス – ワイヤーカッター – ツイスター – 開胸器
再開胸セット
• 全てのICUに設置すべき • フルの開胸セットとは 別に用意! ⇒開胸でき次第用意 • 定期的に内容をチェックするべき
再開胸準備
• BLSを施行するスタッフ(気道確保・除細動・意思決定)以外は再開胸の準備をするべき – 心臓手術後患者の心停止 ⇒20〜50%が緊急再開胸となる
• 2〜3人は心停止宣言後直ちにガウン・手袋 – Closed-‐sleeve techniqueができれば手洗い不要
再開胸術者
• レジデント以上の心臓血管外科医 しかし…外科医がいつでも捕まるとは限らない
蘇生に関わるであろう医師は再開胸の技術に関して熟知・練習する必要あり!
再開胸の手順
1. ガウン・手袋の装着 2. ドレッシング材を除去し胸骨圧迫から離れてもらう 3. ドレープで覆う(全身を覆うドレープであれば消毒の必要はなし!)
4. 滅菌状態での胸骨圧迫再開(10秒以内!) 5. 再開胸セットが準備出来次第胸骨圧迫中止 6. 縫合糸を含め、ワイヤーに達するまでメスで切開 7. ワイヤー切断・除去⇒タンポナーデ解除 8. 血液・凝血塊の吸引 9. 開胸器の装着⇒心臓外科専門医の到着を待つ 10. 心拍出なし⇒開胸心臓マッサージ・除細動
再開胸の手順
ICU外では施行すべきではない!! ⇒予後不良との報告
心臓手術後何日目まで?
• 委員会の意見では10日まで – 癒着による危険性 – 10日までは癒着はほとんど無い
– 10日を過ぎたら上級医の判断次第
• 可逆的な心停止の要因がないと考えられても胸骨圧迫が持続した際には再開胸考慮
RISK BENEFIT
再開胸 癒着
人工心肺の使用
• 再開胸にも関わらず自己心拍再開せず ⇒人工心肺の使用を考慮 ① 30,000IUのヘパリンを投与 ② 10,000IUのヘパリンを人工心肺のリザーバーに投与 ・ACTはチェックする必要なし!
緊急再開胸における抗菌薬投与
• 抗菌薬投与による感染予防を示した報告はなし
• 7つの研究結果 – 再開胸後の敗血症の発生率⇒5%
緊急再開胸における清潔操作・洗浄・抗菌薬投与は一般的
特別に推奨されている抗菌薬のレジメンに関する記載はなし
緊急再開胸における低体温療法
• 病院外心肺停止では長期心停止に至った場合32〜34℃で12〜24時間冷却を施行するべきとされている
• 緊急再開胸時における低体温療法に関しては研究はされていない ⇒長期心停止あれば考慮してもよい?
特殊な状況(1)
• 肺移植・心肺移植後 ⇒当ガイドラインを適応、アトロピンは無効 • 小児 ⇒当ガイドラインを適応、薬剤投与量に注意!(体表面積で再計算必要)
• “Open chest” ⇒当ガイドラインを適応
特殊な状況(2)
• 心肺補助装置 ⇒ガイドライン適応せず!! ⇒機械的不良に起因する可能性あり ⇒胸骨圧迫は不適切か • 非開胸手術(MICS、MIDCABなど) ⇒当ガイドラインを適応 ⇒再開胸は上級医によって正中切開で行うべき!
批判的吟味
• 心臓手術後に関する研究が少ない ⇒病院外心停止しか根拠がないものあり • 心臓手術後心停止研究の多く ⇒ほとんどが症例報告・後ろ向きコホート ⇒エビデンスの質は低い • 根拠として挙げられている研究 ⇒動物実験が多い ⇒信頼性に欠ける? • AHA2010改編前⇒現在のstandardと解離 ⇒「本ガイドラインも改編の可能性あり」…
まとめ
• 胸骨圧迫よりもDefibrilla0on/Pacing! • 直ちに再開胸を考慮!