栃木県シニアセンター · 栃木県栃木市 シニアを対象としたパソコン講座...

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栃木県栃木市 シニアを対象としたパソコン講座 代表者名…荒川恒昭 設立年月…1998 年7月 認証日…1999年9月8日 有給スタッフ数…常勤 / 1名、非常勤 /10 名 事業規模(09年度決算収入) …8,022,129 円 (内訳:事業収入 7,077,086 円、会費 310,690 円、その他 634,353 円) 所在地…〒328-005 栃木県栃木市片柳町2-2-2 サンプラザ・ゲストルームC TEL…0282-20-3322 FAX…0282-20-3355 URL…http://www.cc9.ne.jp/~tochi-senior/ E-Mail [email protected] 中高年齢者に対しての自助自立を支援する事業を行い、かつ、社会的機能の役割を果た すことを目的とし、もって中高年齢者の生きがいづくりとまちづくりに寄与することを目的 とする。 活動の 目的・趣旨 団体の設立経緯 1997年頃、当時、会社の役員をしていた荒川恒昭氏は、米国のNPO、AARPを紹介した記事に目 を留めた。AARP は、もと「全米退職者協会」といい、教員を退職したエセル・パーシー・アンドラス氏が、 米国で退職者が医療保険に入れない状況を「年齢差別ではないか」と訴えて立ち上げた。いまや50 歳以上の3,500万人が加入する米国最大のNPOに成長し、シニアの自立支援、生活の質を向上させる ためのさまざまな取り組みを行い、高齢者政策にも大きな影響力を持っている。 この記事に感銘を受けた荒川氏は、自分たちでもシニアのための団体をつくれないかと考え、AARP が発行する機関誌「Modern Maturity」の購読を始めた。そこには、退職者がボランティアで高齢者 にパソコンを教える話が、毎号のように特集されていた。その頃、荒川氏の会社でもパソコンを導入し ていて、便利で面白いものだと思っていたが、パソコンを退職後の高齢者に教えるような教室はほとん どなかった。 1998 年、荒川氏は友人とともに任意団体「モダンライフ社」(2001 年に「栃木県シニアセンター」 と改称)を設立し、シニアのためのタウンマガジン「モダンライフ」の創刊準備を始めた。また、「シニ アのためのネットワーク栃木フォーラム」として、シニア向けのパソコン講習会を企画した。新聞の折込 みチラシに受講生募集の広告を載せたところ、定員10名に対して30名以上の応募があり、想像以上 にニーズが多いことを実感した。 主な活動内容 ①シニアを含めた社会教育の推進事業 パソコン講座(シニア対象)、県立シルバー大学校南校PC講座、栃木市・壬生町・都賀町・西方町IT講習 等 ②シニアの自助自立を支援するための教育および訓練 シニア男性のための料理教室、NPO起業向け管理者養成講座、シニア情報生活アドバイザー講座、広 報誌区分け作業 等 ③ITを活用した地域活性化事業 映像による地域情報の発信 等 ④シニアのためのタウンマガジン「モダンライフ」発行 栃木県シニアセンターは、栃木市を中心に、シニアを対 象とするパソコン講座を実施している。 ここでいう「シニア」とは、高齢者に限らない。栃木県 シニアセンターでは、シニアを「先輩格世代」の人々ととら えている。具体的には、第一線を退いたサラリーマン、権 限を次世代に譲った個人事業主、子育てを終えた主婦な ど、いずれも相応の知識と経験を蓄え、余裕のある第二の 人生を送っている人々のことで、彼らの能力をまちづくりに 生かしたいと考えている。 し た が って 教 える 側 もシ ニ ア で あり、ここで 勉 強 し た 会 員 が MOUS(Microsoft Office User Specialist)やシニア情報生活アドバイザー((財)ニューメディア開発協会)の資格をとり、講師となっ て教えている。 2010年度は、入門から応用まで下記の内容で12コースを設け、それぞれ20時間(週1回2時間 ×10日間)の講習を行った。( )内はコース数。 • 講座名:パソコン入門(2)/ワード基礎(3)/実用ワード(1)/エクセル基礎(2)/ パソコン活用(1)/デジタル写真(2)/カメラ操作入門(1) • 受講料:各コース 8,000 円(テキスト代は別) •会 場:栃木市民会館、栃木県シニアセンターの教室 参加者は各コース10人。3期実施したので、延べ約360人(10人×12コース×3期)が受講し たことになる。 栃木シニアセンターは、設立当初からシニアの生きがいづくりとまちづくりを目標に掲げており、IT を 得意としながらも、多彩な活動を行っている。 1.パソコン講座 ――自分たちの力でシニアのデジタルデバイド(情報格差)を解消 2 主な教育関連事業の紹介 シニアを含めた社会教育の推進事業 事業名称 シニアの自助自立を支援するための教育および訓練 事業名称 団体の概要 1 栃木県シニアセンター 特定非営利活動法人 特定非営利活動法人 Vol 107 いきる Vol 3 106 教育関係NPO 事例集 あなたの好奇心と行動力こそ新たな価値を創造する!

Transcript of 栃木県シニアセンター · 栃木県栃木市 シニアを対象としたパソコン講座...

栃木県栃木市

シニアを対象としたパソコン講座

代表者名…荒川恒昭設立年月…1998年7月 認証日…1999年9月8日有給スタッフ数…常勤/1名、非常勤/10名事業規模(09年度決算収入)…8,022,129円(内訳:事業収入7,077,086円、会費310,690円、その他634,353円)

所在地…〒328-005 栃木県栃木市片柳町2-2-2 サンプラザ・ゲストルームCTEL…0282-20-3322 FAX…0282-20-3355URL…http://www.cc9.ne.jp/~tochi-senior/ E-Mail…[email protected]

中高年齢者に対しての自助自立を支援する事業を行い、かつ、社会的機能の役割を果たすことを目的とし、もって中高年齢者の生きがいづくりとまちづくりに寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

団体の設立経緯 1997年頃、当時、会社の役員をしていた荒川恒昭氏は、米国のNPO、AARPを紹介した記事に目

を留めた。AARPは、もと「全米退職者協会」といい、教員を退職したエセル・パーシー・アンドラス氏が、

米国で退職者が医療保険に入れない状況を「年齢差別ではないか」と訴えて立ち上げた。いまや50

歳以上の3,500万人が加入する米国最大のNPOに成長し、シニアの自立支援、生活の質を向上させる

ためのさまざまな取り組みを行い、高齢者政策にも大きな影響力を持っている。

 この記事に感銘を受けた荒川氏は、自分たちでもシニアのための団体をつくれないかと考え、AARP

が発行する機関誌「Modern Maturity」の購読を始めた。そこには、退職者がボランティアで高齢者

にパソコンを教える話が、毎号のように特集されていた。その頃、荒川氏の会社でもパソコンを導入し

ていて、便利で面白いものだと思っていたが、パソコンを退職後の高齢者に教えるような教室はほとん

どなかった。

 1998年、荒川氏は友人とともに任意団体「モダンライフ社」(2001年に「栃木県シニアセンター」

と改称)を設立し、シニアのためのタウンマガジン「モダンライフ」の創刊準備を始めた。また、「シニ

アのためのネットワーク栃木フォーラム」として、シニア向けのパソコン講習会を企画した。新聞の折込

みチラシに受講生募集の広告を載せたところ、定員10名に対して30名以上の応募があり、想像以上

にニーズが多いことを実感した。

主な活動内容①シニアを含めた社会教育の推進事業 パソコン講座(シニア対象)、県立シルバー大学校南校PC講座、栃木市・壬生町・都賀町・西方町IT講習 等

②シニアの自助自立を支援するための教育および訓練 シニア男性のための料理教室、NPO起業向け管理者養成講座、シニア情報生活アドバイザー講座、広

報誌区分け作業 等

③ITを活用した地域活性化事業 映像による地域情報の発信 等

④シニアのためのタウンマガジン「モダンライフ」発行

 栃木県シニアセンターは、栃木市を中心に、シニアを対

象とするパソコン講座を実施している。

 ここでいう「シニア」とは、高齢者に限らない。栃木県

シニアセンターでは、シニアを「先輩格世代」の人々ととら

えている。具体的には、第一線を退いたサラリーマン、権

限を次世代に譲った個人事業主、子育てを終えた主婦な

ど、いずれも相応の知識と経験を蓄え、余裕のある第二の

人生を送っている人々のことで、彼らの能力をまちづくりに

生かしたいと考えている。

 したがって教える側もシニアであり、ここで勉強した会員がMOUS(Microsoft Office User

Specialist)やシニア情報生活アドバイザー((財)ニューメディア開発協会)の資格をとり、講師となっ

て教えている。

 2010年度は、入門から応用まで下記の内容で12コースを設け、それぞれ20時間(週1回2時間

×10日間)の講習を行った。( )内はコース数。

•講座名:パソコン入門(2)/ワード基礎(3)/実用ワード(1)/エクセル基礎(2)/

     パソコン活用(1)/デジタル写真(2)/カメラ操作入門(1)

•受講料:各コース8,000円(テキスト代は別)

•会 場:栃木市民会館、栃木県シニアセンターの教室

 参加者は各コース10人。3期実施したので、延べ約360人(10人×12コース×3期)が受講し

たことになる。

 栃木シニアセンターは、設立当初からシニアの生きがいづくりとまちづくりを目標に掲げており、ITを

得意としながらも、多彩な活動を行っている。

1.パソコン講座――自分たちの力でシニアのデジタルデバイド(情報格差)を解消

2 主な教育関連事業の紹介

シニアを含めた社会教育の推進事業事業名称

シニアの自助自立を支援するための教育および訓練事業名称

団体の概要1

栃木県シニアセンター

特定非営利活動法人

特定非営利活動法人

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

Vol 107いきるVol 3106 教育関係NPO 事例集

あなたの好奇心と行動力こそ新たな価値を創造する!

栃木県NPO協会、関東ICT推進NPO連絡協議会など、NPO同士のネットワークが役立っている。同じような講座を開講するときに内容を教えてもらったり、新しい企画について相談したりしている。また、「NPO起業講座」のときには、いろいろなNPOの理事長の方に講師に来てもらい、ネットワークが広がった。

(ヒアリング応対者:代表理事 荒川恒昭氏)

代表の荒川恒昭氏

「蔵の街 栃木市」のCM

シニア男性のための料理教室

1.シニア男性のための料理教室 シニア男性の自立は自分で料理をすることからと、2000年に

「男性料理教室~男性厨房に入る会」を始めた。これは現在も

続いており、毎月1回(第2土曜日)、調理設備がある公民館

を借りて実施している。参加費は、1回1,200円。

 ホームページで告知するだけだが、毎回楽しみにしていて、

那須や足利からやってくる人もいる。

2.NPO起業向け管理者養成講座 栃木県より受託した「NPO起業講座 コミュニティビジネスコース」では、時間の2割ぐらいをIT関係

の講習にあて、基礎からホームページ作成、プレゼンテーションの仕方までを教えている。この講座の

修了生は県内各地で活躍しており、新しいつながりも生まれている。

 例えば、県北の湯西川温泉で地域活性化に取り組んでいる修了生からは、「湯西川から情報を発信し

たいので、まずは地元市民にパソコンを教えてほしい」という要望があり、09年に湯西川温泉でもパソ

コン講座を開講した。以降毎年、講師がパソコンを持って泊りがけで教えに行き、ブログなどでの発信

が始まっている。

3.その他の講座の企画・運営 上記に示した講座のほか、栃木県シニアセンターは、(財)ニューメディア開発協会の「シニア情報生

活アドバイザー資格取得講座」、セキュリティ対策推進協議会の「情報セキュリティサポーター講座・検

定試験」の実施団体となっている。

 また、企業・県・市との協働による視覚障がい者IT講習、栃木県との協働による「住民ディレクター

養成講座」「地域ITリーダー養成講座」「シニアの地域デビュー実践講座」「インターネット安全教室」、

栃木市教育委員会との協働による「親と子のパソコン分解講座」(小学4年~中学3年生の親子対象)

などを企画・運営している。

 1998年に行った最初のパソコン講習会では、荒川氏らが会社で

業務に使っているパソコン10台を、休日に借りてきた。当時はま

だノートパソコンは主流ではなく、重いデスクトップ型パソコンと

CRTモニターを会場まで運んでセッティングするのは大変だった。

 荒川氏の働きかけで、99年に東日本電信電話(株)(NTT東日本)と行政を巻き込んだ三者協働の

パソコン講座が実現する(行政は、栃木市・西方町・大平町・都賀町・藤岡町・壬生町・葛生町の

1市6町)。この講座は、NTT東日本がパソコンを用意し、各会場となった公民館まで臨時に2日間だ

けISDN回線を引くという、非常に恵まれた条件で実施することができた。

 各市町の広報に案内が載ると大きな反響があり、受講を申し込む人が列になるほどだった。このとき

は、まだスタッフも講師も数が少なく、ローテーションを組むのに苦労したことから、以降、その養成に

力を入れることにした。

 この事業が実績となり、のちに政府のe-Japan戦略に伴って行政が一斉に実施するIT講習事業を、

栃木市・壬生町から受託することになった。

 この少し前にNPO法人化し、それを地元紙が取り上げたことで、知名度が一気に上がった。2日間、

電話が鳴りっぱなしで、県内全域から参加したいという連絡があり、会員数は一時期、300名を超えた(現

在は約120名)。

 2000年、NTT東日本から融資を受けてパソコン20台を購入し、パソコン講座を本格化させる。また、

県立シルバー大学校に対してパソコン習得の必要性を訴え、初年度にはパソコンを持ち込んで出前講

座を始めた。そのときの卒業生たちが、いまは会員になってパソコン講座の講師をしている。また、自

分たちでグループをつくり、栃木県シニアセンターの教室を借りて10年以上パソコンの勉強を続けてい

る卒業生もいる。

栃木の魅力を映像で発信していきたい 栃木県シニアセンターでは、2005年に栃木ケーブルテレビと協働で市民

メディア事業を立ち上げ、「街の情報ステーション いきいき」という15分の

番組を毎日放送した。このときは、市民の目線から街の情報を集めて取材に行き、撮影、編集して、番

組に仕上げるところまでを担当した。自分たちが取材したところに、栃木ケーブルテレビが改めて取材に

行くなどの相乗効果があったが、人手不足から長く続けることができなかった。

 その後、大平町映像祭の共催団体として、デジタルカメラで大平町のCMを作成する「30秒CM部門」

を創設した。また、09年には「わがまちCMコンテスト」(関東ICT推進NPO連絡協議会主催)に参加し、

栃木市の見どころを30秒のCMにまとめた「蔵の街 栃木市」が最優秀賞に選ばれた。これからは映像

の時代だと考えており、今後はこの方向を推進していきたいと考えている。

 課題は、そのための人材確保と後継者育成である。パソコン講座のカリキュラムに、デジタルカメラ

とパソコンを使って動画をつくり、それをYouTubeにアップするところまでを組み込み、映像を担う人材

を育てていくことを考えている。

多彩な活動で修了生も地域貢献 修了生には、障がい者のための手織り工房からの紹介の人もいる。この工房には視覚障がいや知的

障がいを持つ人などが習いに来ているが、実に色あざやかな織物を素手で織りあげていく。栃木県シ

ニアセンターがその様子を映像に記録した作品は、栃木県教育委員会の第20回自作視聴覚教材コンク

ールで優秀賞に選ばれた。

 また、各種講座だけでなく、栃木県が主催した「祭囃子伝承フォーラム」にも共催団体として参加した。

 こうしたシニアの生きがいとまちづくりへの取り組みが評価されて、03年に「ふるさとづくり賞」振興

奨励賞(あしたの日本を創る協会・NHK・読売新聞社共催)、06年に総務省関東総合通信局局長賞

を受賞している。

三者協働で注目されたパソコン講座

4 今後の展望

3 事業の成果と課題

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

Vol 109いきるVol 3108 教育関係NPO 事例集

栃木県シニアセンター特定非営利活動法人

神奈川県横浜市

ふらっとステーション・ドリーム外観

代表者名…泉 一弘設立年月…2005年12月 認証日…2008年3月24日有給スタッフ数…常勤/0名、非常勤/0名事業規模(09年度決算収入)…13,106,777円(内訳:事業収入7,032,836円、会費182,000円、助成金3,650,000円、 寄付金461,090円、その他1,780,851円)

所在地…〒245-0067 神奈川県横浜市戸塚区深谷町1411-5TEL…045-307-3558 FAX…045-307-3558URL…http://www16.ocn.ne.jp/~furatto/index.html 

近隣住民に対して、必要とされる支えあい支援に関する事業を住民が主体となって行い、様々な関係者と共に、誰もが尊厳を持って生き生きと心豊かに暮らしていくことができる地域づくりを図り、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

 ふらっとステーション・ドリーム設立のきっかけは、戸塚区の地域福祉計画策定委員会が行った30回

以上に及ぶ懇話会にある。そのなかで、区役所まで足を運ばなくても、必要な情報が手に入る場所が

ほしい、日頃の悩みを相談できる場所がほしいなど、気軽に地域で集うことができる場所を要望する区

民の声が見えてきた。こうした要望を受け入れるべく、薬屋の空き

店舗を改装して、住民同士が交流し支え合う憩いの場「ふらっとス

テーション・ドリーム」がつくられた。

 「ふらっとステーション・ドリーム」という名称には、誰もがふらっ

と入れる場所であること、人間関係が対等(フラット)であること、

建物内外がバリアフリーであることへの思いが込められている。

●誰でも気軽に立ち寄れる交流サロン ふらっとステーション・ドリームは、月曜~土曜日の10時~ 17時、日曜・祝日は12時から17時ま

で運営している。現在は33名のボランティアで運営をしており、ドリームハイツエリアに住む住民を中

心に、月平均1,200人、年間約14,000人が訪れる。広さは約90㎡で、ガラス張りの店内は明るい。

約30席の客席は老若男女で賑やかである。予約が必要な集会所とは違い、お茶を飲みながら、皆で

おしゃべりをして仲良くなる場所である。

 ふらっとステーション・ドリームでは、火曜日から土曜日まで1食400円の日替わりランチを提供して

いる。ランチを目当てに、毎日通う一人暮らしの男性も多い。また、店内には地域住民が撮影した写真

などが飾られるギャラリーを開放しており、手づくりのアクセサリーや小物が販売される店頭コーナーも

ある。

 ドリームハイツエリアは高齢化が進み、一人暮らしの高齢者の割合はおよそ2割に及ぶ。日頃話す機

会が少ない一人暮らしの人にとっては、まわりの賑やかな声もBGMとなっている。

 一人で暮らしていると、不安になり、心配事が増えることも多いが、そんなときに誰かが手を握って、

ゆっくり話を聞いてくれることがとても大切で、安心につながる。

●サロンの運営を支えるボランティア ふらっとステーション・ドリームの運営を支えるのが、チーフをはじめ30数名のボランティアである。

団体の設立経緯 横浜戸塚区の南西に位置するドリームハイツエリアを中心に、高齢者を支援する3つの団体、ドリー

ム地域給食の会(高齢者向け給食サービス)、(特活)ふれあいドリーム(介護保険事業障害福祉サー

ビス事業)、(特活)いこいの家 夢みん(介護予防プログラムを実施する交流サロン)が中心となって、

2005年12月1日、「ふらっとステーション・ドリーム」を開設した。

 ドリームハイツは1972年に分譲が開始された大規模中高層団地で、現在の世帯数は2,270世帯、

6,000人弱が暮らしている。入居開始当初は30代から40代の子育て世代が多く入居したが、最短の

最寄り駅まで徒歩25分程度と交通の便が悪い場所のため、地域住民が自発的に、医療・福祉施設な

ど必要なサービスを共助の精神でつくり上げてきた。その活動は自主保育である「すぎのこ会」に始まり、

最近では団地住民の高齢化とともに、高齢者福祉などドリームハイツエリアに住む人々の要望に応える

15にも及ぶ活動へ広がっている。

  「ふらっとステーション・ドリーム」も地域住民の交流の場の提供を中心に、様々な地域づくり事業を

行い、08年にNPO法人格を取得した。

主な活動内容地域づくりの企画・運営および地域住民の交流に関する事業の実施。

①サロン事業 ふらっとステーション・ドリーム

 年齢・障がいの有無を問わず、皆が飲食を共にし、交流する場の運営。

②文化交流事業 

 落語、ジャズコンサート、童謡を歌う会、絵画教室、ピアノライブ、ギャラリー(写真・絵画等展示)など。

③よろず相談所

 医療福祉に関する情報の提供や健康相談など。

④地域運営支援事業

 自治会と市民活動団体が一緒に地域課題解決に取り組む「ドリームハイツ地域運営協議会」事務局

を支援する。

⑤マイショップ・セレクトショップ事業 

 地域の人たちが創作した小物・アクセサリーなどの展示・販売。地方色豊かな物品の販売。

1.サロン事業̶̶ ふらっとステーション・ドリーム

団体の概要12 主な教育関連事業の紹介

地域づくりの企画・運営および地域住民の交流に関する事業事業名称

ふらっとステーション・ドリーム特定非営利活動法人

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

111いきるVol 3110 教育関係NPO 事例集

地域福祉の妙味を生み出す居場所

(ヒアリング応対者:副理事長 島津禮子氏)

ふらっとステーション・ドリーム相談コーナー

柔らかな笑顔で来訪者を迎える島津副理事長

ボランティアの時給は250円、4時間制のシフトを組み、各人負担のかからない範囲で好きな曜日を

選択している。ボランティアの多くが、長年続けて参加している。

 ボランティアをすることで相手に喜んでもらえる。そのことに自分自身が喜びを見出し、楽しいと感じ

ることが地域福祉の妙味である。「地域福祉は楽しまなければならない。大変なことをつらいと思いなが

らやるのであれば手を出せない」と島津副理事長は語る。

2.文化交流事業・よろず相談所 ふらっとステーション・ドリームには交流サロンのほかに、定期的に開講される講座と情報相談コーナ

ーの機能がある。

 講座には、地域の高齢者が抱える不安を解消する一手段として、生の音楽を聴いて共に歌い童謡を

楽しむ講座、地域のアーティストを招いたコンサート、落語の講座などとともに、近くの薬科大学の教

授による教養講座があり、地域住民のニーズに合わせて定期的に開講している。

 また、情報相談コーナーでは、区役所まで足を運ばなくても必要な情報が入手できる。例えば、高齢

者の医療福祉に関する情報提供や、看護師による血圧測定や健康相談などが行われる。

 高齢者のなかには、病院には行けるが、区役所に何を相談し

ていいか分からず、漠然とした将来に対する不安を抱えるケース

が多い。お茶を飲みながらの、普段のおしゃべりを通じて解決

の糸口が見えるケースもある。実際、おしゃべりのなかから、ニ

ーズを汲み取り、ニーズに見合った地域の支援センターに連絡

をつないだケースもある。

3.地域運営支援事業 高齢者や子ども向けの福祉などの地域課題を住民が解決することを目指し、2007年に自治会、市民

活動団体など7団体が主体となって「ドリームハイツ地域運営協議会」を結成。ふらっとステーション・

ドリームがその事務局を担当している。

 ドリームハイツ地域運営協議会は、現在、横浜市のエリアマネジメントのモデル地区として採択され、市

民が主体的に地域課題を解決し、行政がその後押しをする、行政と市民の対等な関係が構築されている。

 地域運営協議会見守りネットセンターが取り組む活動には、全住民を対象に配布する「安心カード」

や、家庭の電力量変化で部屋の緊急性を感知する高齢者に対する見守りシステムの実施に向けた検証

などがある。

 ふらっとステーション・ドリームに通う常連同士の新たな交友関係が生まれている。ふらっとステーショ

ン・ドリームに集う参加者の意識の変化に関するアンケートによると、顔見知り程度の友人・知人が増

えた(88.7%)、道で挨拶する仲の友人・知人が増えた(86%)、会えば立ち話をする仲の友人・知人

が増えた(80.4%)が上位を占めている(複数回答)。

 また、ふらっとステーション・ドリームで、おしゃべりを楽しみ、まわりと協調することが、日頃の介護

予防や認知症の予防につながっている。

活動を長続きさせるための工夫 ふらっとステーション・ドリームの設立構想が立ち上がったとき、関係する団体の理事会の審議にか

けたが、新しい事業を始めるには利点・欠点を比較して、稟議書を回付し、1年をかけてあらすじをつ

くるべきだという意見もあり、理事会決議では設立構想が棄却された。

 それでも、中長期的な視点に立ち、住民の要望に応える憩いの場が必要であるとの強い思いから、

設立母体である3団体のなかで、設立構想の趣旨に賛同する方に依頼し、設立資金となる650万円を

借り入れた。いつ返済できるか収入のめどがたたないなかでの資金の借り入れだったが、約5年目で

4分の3を返済し、6年目で完済の見通しが立った。

 空き店舗を改築してふらっとステーション・ドリームとして活用しているが、家賃に加えランニングコス

トを賄うための収入を確保する必要がある。そのために2週間3,000円でギャラリーを地域に開放した

り、店頭コーナーの売上の一部を納めてもらったりという収入を確保するためのビジネス上の工夫が欠

かせない。

 また、ランチの食材費は地元の農家や商店、自家菜園からの採りたて野菜などの支援を受けて、安

価な価格を維持している。

全国に地域の憩いの場をつくりたい 地域の住民が協力して福祉活動を行う地域福祉のネットワークづくりが話

題になっているが、今後各地で、ふらっとステーション・ドリームのように気

軽に誰でも立ち寄っておしゃべりができる憩いの場を広げていきたい。

 現在は社会福祉協議会などをはじめとする行政が主催する、ふれあい・い

きいきサロンなども各地で広がりをみせている。しかし、開催頻度は月に1~

2回や週1回などに限定されており、高齢者が持つ不安の解消には不十分であると感じている。

 毎日訪れることができること、憩いの場に携わる人たちの顔が見えるフラットな関係を築けることが憩

いの場には必要だと実感している。憩いの場を利用する側も、場を支えるボランティアも、双方が楽しく

なる工夫を設けることが重要である。

行政と対等な関係を築く 誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせる安全な社会をつくるためには、市民と行政が対等な関係で

協働することが必要である。

 市民側の特徴は、地域社会の課題にきめ細やかに対応し、個別具体的なケースを把握できることに

ある。一方、行政は大きな情報のネットワークを活用し、行政の信頼性を利用して幅広く地域の協力を

得ることができる。横浜市とのモデル事業となった地域運営協議会の取り組みは両者の強みを活かした

一例である。

 地域ごとの課題を発見し、地域の実情に応じた課題解決のために足りないサービスを創出する取り組

みは、市民をはじめとする多くの関係者が活動に参加して初めて成り立つものである。地域運営協議会

との取り組みによって、高齢者に対する見守り、緊急対応などのサービスを広めることで、市民主体の

地域運営が可能となると考えている。

顔がつながる、新たな交流が生まれる

4 今後の展望

3 事業の成果と課題

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

113いきるVol 3112 教育関係NPO 事例集

ふらっとステーション・ドリーム特定非営利活動法人

愛知県名古屋市

「ライフステーション・あいち」前でのスタッフの皆さん

代表者名…藤枝靜次設立年月…2005年7月 認証日…2006年12月26日有給スタッフ数…常勤/10名、非常勤/2名事業規模(09年度決算収入)…20,356,786円(内訳:会費・入会金303,000円、事業収入17,834,740円、助成金1,890,000円、   寄付金123,922円、その他205,124円)

所在地…〒485-0845 愛知県名古屋市北区柳原4-2-2TEL…052-912-2311 FAX…052-912-2316URL…http://www.wa.commufa.jp/station/ E-Mail…[email protected]

高齢者や若者・障害者及びその家族、その他手助けを必要とする人々に対して、たすけあいの精神のもとに、介護サービスの提供及び障害者の自立支援のためのコミュニティビジネスの立上げに関する事業を行い、地域福祉の向上及び暮らしやすい地域市民生活の実現に寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

 ライフサポート事業は、社会の縮図(ミニ社会)を想定し、社会の矛盾に戸惑いを持ち、社会に馴

染めない人のサポートを基本にしている。若者を中心に少しでも夢や希望を持ち、社会に挑める力をつ

けることを目指している。そうした方向性を人々の信頼関係の中から各自が見いだしていければという想

いで、若者世代、子育て世代、団塊世代、高齢者世代などが共に自分たちの特技や、やりたいことを

実現できる場所を提供しており、地域の困りごと相談・助け合い事業、ひきこもりやニートの若者及び

障がい者の自立就労支援事業などを行っている。

 また、2006年度・愛知県「団塊世代提案型地域づくりモデル事業」への応募に際して、ライフステ

ーション・あいちが地元の柳原通商店街とその周辺の団塊世代に呼び掛けて、柳原通商店街団塊世代

活性化グループを結成した。このグループが中心となって、屋内の

家具の移動、電球の取り換え、掃除・草取り、簡単な買い物(食料品・

日用品)、通院・散歩の同行、パソコンでの簡単な書類作成、引

越の手伝い、犬の散歩など、子育て世代や高齢者世代の困りごと

に対して相談に乗り、助っ人(地域の団塊世代や愛知県町の達人

衆、元ニートの若者たちが中心)を派遣する事業を行っている。

パソコン教室や様々な講座・セミナーの開催 ひきこもりやニートの若者の自立就労支援事業の一環として、店舗内の開放的なスペースを活用して

パソコン教室を開催している。ひきこもりやニートの若者のほか、団塊世代の人たちも講師役となり、

高齢者などの初心者を対象にパソコンの基本をマンツーマンで教える。

 高齢者などの初心者がゆっくり学べる雰囲気づくりを心掛けており、自分のペースに合わせて学べると

好評である。

 これまでは若者と団塊世代が交流できる場がなかったが、パソコン教室を通じて、若者と団塊世代が

共に教え合ったり人生相談に乗ったりする機会が生まれ、お互いの社会参加意識が沸き、世代を超えた

意思の疎通が図られている。

「コミュニティカフェ」で居場所づくり 2009年9月に開催した「コミュニティカフェ・セミナー」をはじめ、地域のネットワークづくりにも取

団体の設立経緯       2003年9月に、副理事長の中川建彦氏が、自身が住んでいる名古屋市中村区で地域の一人暮らし

の高齢者を励ます場として「大正サロン」を始めた。そのときの経験から、多世代間の交流や地域コミ

ュニティの活性化の必要性を感じていた。そこで想いを同じくする仲間2人と共に、地域の人々が生き

がいを見つけるための交流の場を目指して、柳原通商店街の空店舗を改装して、周辺の多世代交流・

地域貢献事業を行う拠点を2005年7月に開設した。

 地域の人が、来て、休んだり、ボランティアをしたり、生きがいを持てることに参加して、展望を持て

るような「人生/生活の駅」にしたいとの想いから、「ライフステーション・あいち」と名づけた。

 また、ライフステーション・あいちの正面には、「リトルターン御土居下」という看板が掲げられている。

この看板は、出版社および翻訳者五木寛之氏の了解を得て、『リトルターン』(ブルック・ニューマン著、

五木寛之翻訳、集英社)の題名からとった。「突然飛べなくなってしまったリトルターン(コアジサシ)が、

ユウレイガニというカニに出会って、飛べなくなった自分のあるがままの姿を受け入れることができるよ

うになったとき、自然に空を飛べるようになった」という内容の短編小説である。

 「ライフステーション・あいち」での多世代間の交流を通じて、再び自分の目的に向かって飛び立っ

ていくための場所にしたいという想いを看板に込めている。

主な活動内容①ライフサポート事業

・地域の困りごと相談・助け合い事業  

・ひきこもりやニートの若者の自立就労支援事業 等

②地域の社会教育推進の事業

・高齢者等を対象としたパソコン教室

・インターンシップの受け入れ

・カルチャー教室(太極拳、サンバ、編み物等)

・心理カウンセラー・コミュニケーション講座 等

地域貢献を通じた多世代のためのライフサポート事業

団体の概要1

2 主な教育関連事業の紹介

ライフサポート事業事業名称

地域の社会教育推進の事業 事業名称

ライフステーション・あいち特定非営利活動法人

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

115いきるVol 3114 教育関係NPO 事例集

“元気な地域社会”をテーマに社会貢献型収益事業を推進

小さな地域(例えば小学校区単位による地域)からのボトムアップという形で、これまで必ずしも有効に活用されてこなかったコミュニティセンターや、自治会、公民館などの地域資源や施設を活用した社会教育のモデル事業に、行政とNPOが協働して取り組むことが大切である。     

(ヒアリング応対者:理事長 藤枝靜次氏、副理事長 中川建彦氏)

「コミュニティカフェ・セミナー」の講師を務める藤枝氏

柳原通商店街の夏祭りに参加した中学生と中川氏

り組んでいる。

 現代の社会環境の変化の中で、「コミュニティ」、つまり人と人とのつながりやその中での情報交換、

生きがいづくり等を実現させる「場」が少なくなっており、そう

した「場」を提供するものとして期待されているのがコミュニティ

カフェである。今後そうした活動が世間に認識され拡大していく

ことを願って「コミュニティカフェ・セミナー」を開催した。

 セミナーは、(社)長寿社会文化協会(WAC)との共催。この

セミナーをきっかけに、WACをはじめNPOや各種の団体と連携

してのネットワークづくりを進めている。

中学生のインターンシップの受け入れ 他団体とのネットワークづくりの中で実現したのが、中学生の体験学習やインターンシップ受け入れで

ある。

 (特活)パートナーシップ・サポートセンター主催の「社会的事業者育成科」の第1期インターンとして、

2008 ~ 10年の6月~7月に名古屋市内や三重県の中学校か

らの要請もあり12名を受け入れた。

 インターンでは、各事業の説明のほかに、福祉施設や市外も

含めて地域振興課への訪問、柳原通商店街との交流、若者と

の語らいなどを行った。インターンの中学生の考え方や今後に

ついての意見なども聞くことができ、ライフステーション・あい

ちのスタッフにとっても、新鮮で大変有意義な研修となった。

 非行少年への講話などの機会も多い理事長の藤枝氏には、将来のある若者に働くことの喜びや達成

感を知ってほしいという強い気持ちがある。ひきこもりやニートの若者は「自分は弱い人間だ」と思い

込んでしまう傾向がある。そうした気持ちを楽にさせるためには、父親のように親身になって接すること

が大切であると考える。

 最初はうまく会話ができず、伏し目がちであった若者たちが、商店街での見習い、高齢者世帯での家

事手伝い、パソコン教室の講師役などの経験を通じて自信を深めていき、今では本格的な就職活動を

開始したり、コンビニエンス・ストアでアルバイトを始めたり、農業実習に参加したりするまでに心を開

くようになっている。もちろん、実際に就職に行きついた若者もいる。

若者や団塊世代の活動継続への期待と課題 保護観察所のシンポジウムのパネラーや「社会的事業者育成科」体験学習での各インターン受け入

れを通じて、総合的な社会観を持つ優秀な中学生や若者もいることを中川氏は感じた。そのため、今

後も、教育委員会がインターン等を総合学習の時間に組み込むなど、職業教育の機会を増やすことが

地域活性化の観点でも必要であると考える。

 また、団塊世代の関心は、生きがい、社会参加、健康、地域づくりなどに向けられることが多いため、

余暇・趣味も含めた生涯学習の視点での取り組みとすることが大切である。団塊世代が継続的に講師

等の活動を続けられるようにするためにも、食事代・交通費の補助等の財政的支援が必要であり、その

ための運営費確保が急務である。

商店街活性化と他団体との連携を推進 ライフサポート事業を通じて、地域問題への理解は進んだが、地元の柳原通商店街の活性化にはま

だまだというのが現状である。そのため、商店主の一層の協力と理解が必要であり、これまで以上にラ

イフサポート事業に参加しやすい環境をつくり、まちづくりと一体となった参加者主体の企画づくりをし

ていきたいと考えている。

 藤枝氏と中川氏が中心となって他団体との連携を図ってきているが、イベントとして一過性のもので

終わってしまう場合も多い。そのため、コミュニティカフェに関する知見やインターン受け入れを通じて

得た商店街活性化への意見を、ライフステーション・あいちを支えている若者たちが主体的に受け継い

で事業活動に活かせるように、具体策に落とし込むための橋渡しを行う必要がある。

NPOとしての真の役割を目指して 団塊世代が、人生で培ってきた豊かな経験や貴重な知識、技能や得意分野を、地域住民のニーズに

応えて地域で発揮することを目指して、カルチャー教室の講師役といった“一人一役”を果たせる場づく

りから始め、それを社会貢献に結びつけてきた。

 団塊世代が共に活動していくことで、確かなつながりを地域で築いていき、そのつながりの中で、ひ

きこもりやニートの若者や高齢者との交流が図られている。若者は助け合い事業やパソコン教室へ参加

することで、自分でも人の役に立てると自信をつけ巣立っていき、高齢者も生きがいを見いだせる。

 このような「社会教育」の場を提供できる社会的組織がNPOである。「ワーキングプア」や「無縁社会」

などと言われているが、人が様々な社会的課題を一緒に解決していくために、つながりを見つけようと

すれば仲間づくりが必要になる。そして、地域の中で、どのように仲間づくりをしようかと考えると、自

然に行政とも結びついてくる。

 地域でのニーズや要望をもっと調べて情報発信するとともに、コミュニティビジネスにまで視野を広げ

て、行政ともスクラムを組んで、市民本位の協働に応えられる組織集団にならなければいけないと思う。

これまで培ってきた多世代の夢と生きがいを結びつけるライフサポート事業を通じて、地域交流の新し

い芽が出てきた。今後は、それを新事業として具体化して、事業を継続させながら、地域住民が主体

の暮らしやすく明るい地域づくりを目指していきたい。

ひきこもりやニートの若者の社会教育に寄与

4 今後の展望

3 事業の成果と課題

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

117いきるVol 3116 教育関係NPO 事例集

ライフステーション・あいち特定非営利活動法人

大阪府大阪市神奈川県横浜市 代表者名…齊藤 隆設立年月…1994年5月 認証年月…2002年9月有給スタッフ数…常勤0名、非常勤0名事業規模(09年度決算収入)…100,355,040円(内訳:受講料収入52,747,670円、事業収入36,412,281円、会費8,327,500円、 補助金580,000円、寄付金322,500円、その他1,965,089円)

所在地…〒553-0006 大阪府大阪市福島区吉野4-29-20 大阪NPOプラザ206号TEL…06-6469-8077 FAX…06-6469-8078URL…http://www.sizen-daigaku.com/ E-Mail…[email protected]

●シニア世代を対象とした教育講座の開催大阪教育大学と連携した「シニアCITYカレッジ」、自然環境を学ぶ「シニア自然大学」などの教育講

座を開催している。興味や学習の進度によって、様々なコースが選べる。

上級コースでは、高等科、マイスター、カレッジアドバンスもあり、より専門的な学習ができる。

専門コースでは、子供教室の指導者養成、エコツアー型の自然体験学習教室なども行っている。

調査研究コースでは、環境、自然に関してよりテーマを細かく設定したコースを設け、学習活動を行っ

ている。

●出前授業や自然学習活動等住友生命福祉事業団から受託した子どもエコ俳句大賞、鶴見緑地自然体験観察園いきいき地球館事

業、日曜工作教室、いこま棚田再生、菊炭クラブ、万博公園自然教室、ジュニア自然大学などを行って

いる。

子ども向けには、大阪教育大附属小学校の児童向けの農業体験学習、科学教室、交野市助成の「自

然探検隊」などの活動があり、出前教室も積極的に行っている。

シニアだけでなく、子どもから大人まで様々な教

育の場を提供している。大学や学校だけでなく、

行政、企業、新聞社からの受託事業も多数ある。

研究コースでは、幅広いテーマで活発な研究活

動が展開されている。

自然環境保全のための、普及啓発、調査研究、政策企画提案等の活動を国内外で行うと共に、子どもの健全な育成やまちづくり、更に地球環境問題にも積極的に取り組み、広く他団体との交流を深め、そしてこれらの活動を通じて社会の健全な発展に貢献することを目的とする。

活動の目的・趣旨

代表者名…松本和子設立年月…1995年9月 認証年月…2000年6月有給スタッフ数…常勤0名、非常勤9名事業規模(09年度決算収入)…5,600,438円(内訳:利用者負担金2,396,470円、その他1,464,768円、助成金1,289,600円、 会費収入449,600円)

所在地…〒245-0066 神奈川県横浜市戸塚区俣野町1403 ドリームハイツ11-104TEL…045-853-0480 FAX…045-853-0480URL…http://www.geocities.jp/ggjmp906/ E-Mail…[email protected]

横浜市の西部に位置する高層団地ドリームハイツ(約2,300戸)では、入居当初から住人の活動が盛

んであった。住人の高齢化が進む中、多くの人々が、利用者として、また様々なボランティアとして関わり、

集える場づくりを目指している。

●地域の交流サロンの運営と各種講座等の実施地域住民のため親密な仲間づくり・居場所としてのサロンを開設。月曜から土曜まで歌や楽器演奏、パ

ソコン、体操、ランチ、囲碁、パステル画、カルチャーサロンなど、14種類の介護予防プログラムを実

施している。

2000年~ 2006年、市の「通所型介護予防事業」を受託。以降も2007年には、市の「脳力向上プ

ログラム」、2009年には区の「健康ライフ講座」「脳を鍛えるウォーキング教室」、2010年には県の「す

まい・まちづくり担い手養成講座」など、行政からの委託事業も多く実施している。

● その他、救急法、食中毒予防などの各種講習会、車椅子の貸し出し 、福祉情報、文化情報などの収集・発信、地域住民の作品展示や、自主サークルへ場所の提供などを行っている。

県・市・区社協、市福祉局 、区福祉保健センター等の行政のほか、ドリームハイツ地域運営協議会、

戸塚区在宅福祉サービス団体連絡会、市民セクターよこはま等地域のNPO等と連携している。

都市近郊の高層団地の住民の高齢化が社会問題化するな

か、高齢者を孤立させず、生きがいを持って、健康で生活

できるよう、その手助けの場をつくっている。行政や地域の

NPOが一体となって取り組む活動は、高層団地等地域の高

齢化の問題を抱える他自治体でも注目されている。

住民が自由に集い、憩い、生きがいを生み出す場としてのサロンを運営することを通じて、地域の人々が住み慣れた街で、安心して、心豊かに暮らし続けていくために、お互いに助けあい、支えあうことのできるまちづくりの推進に寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

活動の紹介活動の紹介

ここに注目

活動の紹介活動の紹介

ここに注目

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

119いきるVol 3118 教育関係NPO 事例集

シニア自然大学校いこいの家 夢みんむー

特定非営利活動法人特定非営利活動法人

岡山県赤磐市和歌山県和歌山市代表者名…澤 健設立年月…2004年4月 認証年月…2004年4月有給スタッフ数…常勤4名、非常勤18名事業規模(09年度決算収入)…37,244,761円(内訳:事業収入36,818,859円、寄付金40,000円、会費10,000円、 その他375,902円)

所在地…〒709-0721 岡山県赤磐市桜が丘東4-4-467TEL…086-995-9678 FAX…086-995-9677URL…http://www.takenokonoie.com/ E-Mail…[email protected]

●高齢者・乳幼児親子の統合デイサービスセンター「たけのこの家」の運営子どもと高齢者の統合ケア事業を行い、地域で子どもからお年寄りまでが助け合って暮らすモデルケー

スとして運営。統合ケアを行うことで、高齢者の生きがいづくりと子育て支援の両方に貢献するとともに、

子育て中のお母さんもお年寄りと交流することで様々なことを学び、成長している。統合ケアでいえば、

子育て中のお母さんが常に交流し、お母さんが成長していることに特徴がある。

●学校支援地域本部事業山陽東小学校の学校支援地域本部として活動をしている。学校と地域社会の連帯感を高め、地域の活

性化を狙う。

●まちづくりの事業地域のまちづくり勉強会を開催。プロジェクトチームの活動など地域のコミュニティづくりを展開してい

る。

その他、市内のNPOや子育て支援団体等とネットワークを結び、地域ぐるみで子育て支援に取り組んで

いる。

地域と緊密に連携した活動を展開している。同団体が推進

する高齢者デイサービスと子育て支援センターの併設事例

は、これからの地域づくりのモデルとして注目されている。

高齢者デイサービスと子育て支援センターを併設し、子どもからお年寄りまでの統合ケア事業を行い、子育ての支援や高齢者の生きがいづくりを推進するとともに、地域の自発的コミュニティの形成に寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

代表者名…中村富子設立年月…2001年11月 認証年月…2001年11月有給スタッフ数…常勤0名、非常勤3名事業規模(09年度決算収入)…11,120,724円(内訳:会費241,500円、事業収入7,979,054円、 助成金170,000円、寄付金2,600,810円、雑収入129,360円)

所在地…〒641-0051 和歌山県和歌山市西高松2-1-4TEL…073-414-1189 FAX…073-418-2289URL…http://www.jtw.zaq.ne.jp/cfare601/wac-wakayama.htm E-Mail…[email protected]

●高齢者支援のためのプログラムの実施等の啓発活動特殊な装置や体におもりをつけて視力や体力の衰えた高齢者の身になってその状況を理解し、思いやり

を持って接することができるよう、疑似体験事業を行っている。小学校から高校、専門学校での体験授

業や、県や市の職員研修、PTAの学習会など、多方面で実施している。

体験事業だけでなく、学習会、講演会、映画会も開催している。

●人材育成活動7~8講座、4日間にわたる保育者育成講座を年1回、開催している。

また、主に保育サポートに関わる人たちを中心に、月1回のスキルアップの講座を行っている。様々な

問題点を話し合ったり、講師を招いて学習している。

●育児サポート委託保育、個人保育、グループ保育、ファミリーサポートなどの事業を行っている。

また、和歌山市委託事業として親子のつどいの広場「もうひとつのさとポピンズ」を運営。親子で参加

できる様々な場を提供している。

その他、食育、木製おもちゃの製作、保育者グループの交流促進事業などを行っている。

少子高齢化社会の中で、すべての年代が互いに支え合うことを

目指して、高齢者支援から育児支援まで、幅広い活動をしてい

る。「食育」に着目した三世代(こども・親・高齢者)の交流

事業の展開など、世代間の理解と交流をすすめる事業も行って

いる。行政との協働事業も多い。

長寿社会に関する効果的な活動を推進するとともに、これらに関する調査、啓発活動、高齢者の健康と生きがいづくり、少子高齢社会への支援活動とその人材育成、ならびに地域の総合扶助の活性化促進活動を行い、もって豊かで活力と思いやりのある社会の構築、発展に寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

活動の紹介活動の紹介

ここに注目

活動の紹介活動の紹介

ここに注目

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

121いきるVol 3120 教育関係NPO 事例集

元気交流クラブたけのこの家WACわかやま特定非営利活動法人特定非営利活動法人

山口県周南市 福岡県福岡市代表者名…濱崎和久設立年月…1998年12月 認証年月…1999年4月有給スタッフ数…常勤23名、非常勤61名事業規模(09年度決算収入)…189,851,291円(内訳:会費667,000円、寄付金100,000円、助成金等3,479,917円、 事業収入184,864,909円、その他739,465円)

所在地…〒816-0079 福岡県福岡市博多区銀天町2-2-37TEL…092-501-4656 FAX…092-502-7891URL…http://nposoyokaze.com E-Mail…[email protected]

歳をとっても住み慣れた地域で、元気に生きがいをもって生活できるコミュニティーづくりに取り組む。

訪問介護、家事支援、デイサービス、ケアプラン作成等の高齢者福祉関連サービスだけでなく、高齢

者支援のための様々な教育活動も行っている。

●社会教育講座「そよかぜまなび塾」の開催法律問題や福祉をテーマに、専門家による連続セミナーを無料で開催。福祉・高齢化問題に関する情

報の啓蒙普及に努めている。

●高齢者健康支援事業(2009年度事業)高齢者の健康維持増進に関わる講座を開催。受講者自身の健康維持増進に役立つとともに、受講後は

「元気サポーター」として地域の高齢者の健康増進に役立ててようとするもの。

●ホームヘルパー2級養成講座地域の介護力の向上と福祉の啓蒙を目的に、2000年1月に開講。2010年度までに24期745名の資

格者を輩出している。通信講座が多い中、現役の介護従事者を中心とした講師陣による対面式の授業

形態にこだわり続け、介護技術はもとより、「こころ」を育てることを重視した講座である。

高齢者が地域の中で心身共に健康に暮らすための活動を行

っている。生きがい、仲間、居場所の提供と地域の人々の

理解を促進するための事業を展開している。九州大学との

共催で公開講座開催の実績もある。

助けたり、助けられたりの互助精神に基づき、健康で安心して生活できる地域社会の実現と、愉しくて生きがいのある長寿社会構築のため、志を同じくする者が相集い、高齢者や障害者及び病気の人に対する家事援助、介護援助等の事業を通じ地域福祉の増進に寄与することを目的とする。

活動の目的・趣旨

代表者名…藤本賢司設立年月…2004年3月 認証年月…2004年12月有給スタッフ数…常勤0名、非常勤2名事業規模(09年度決算収入)…26,447,097円(内訳:会費・入会金1,999,000円、事業収入23,761,915円、 寄付金569,973円、雑収入116,209円)

所在地…〒745-0873 山口県周南市三田川5811-10 三田川ビル3FTEL…0834-32-8409 FAX…0834-32-8409URL…http://www.aysa.jp/ E-Mail…[email protected]

●子どもの健全育成に貢献する事業「環境学習講座」……小学生高学年を対象に自然観察をしながら地球温暖化など環境問題について学

習する講座

「ものづくり工作教室」……小学生向けの工作教室・工場見学

「周南おもちゃ病院」……壊れたおもちゃを子どもたちの目の前で分解して直すことにより、「使い捨て

意識の改善」に資するとともに子供たちの「科学する心」、「物を大切にする心」の育成を目指している。

●シニアの生涯現役推進支援事業「シニアセミナー」……シニアが生きがいを持って生活できるよう、各種のシニアセミナーを開催・実

施している。

「周南シニア人材マッチングパンク」……シニアに活躍の場を提供するためのコーディネート活動を行

っている。

●その他、環境の保全に関する事業や、地域の学生や企業等の人材育成事業、発展途上国への技術支援等の国際貢献事業なども行っている。

「周南おもちゃ病院」や「ものづくり工作教室」などの活動

が認められ、第3回ものづくり日本大賞の優秀賞を受賞

(2009年)。シニアが培ってきた知識や技術を生かして、

子どもの育成や環境保全などの活動を行うことで、シニアも

子どもも地域で共に学び暮らす環境をつくっている。

会員が各分野において培った豊富な知識、技術、経験及び人脈を活かし、その能力を地域社会及び発展途上国に還元することで、シニアの生きがいを創出し、地域社会の発展及び国際貢献に寄与すること。

活動の目的・趣旨

活動の紹介活動の紹介

ここに注目

活動の紹介活動の紹介

ここに注目

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

家庭教育支援、

男女共同参画活動

消費者教育

高齢者支援

障がい者支援

123いきるVol 3122 教育関係NPO 事例集

地域福祉を支える会 そよかぜ山口県アクティブシニア協会(アイサ)特定非営利活動法人特定非営利活動法人

いきる

Vol❸-4

障がい者支援