ポスターセッション 11 [ 運動器4 ] 11 1 女性骨盤底トレーニ...

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― 103 ― P11- 1 【 目的 】尿失禁症状を有する女性に対して骨盤底筋トレーニ ングを行うことにより症状が改善することはよく知られてい る。当院では 2014 年 4 月に女性泌尿器科を開設し、2016 年 7月より女性骨盤底リハビリ外来(骨盤底外来)を開始した。 近畿県内において当院のような骨盤底外来を実施している施 設は少なく、遠方から来院される症例も少なくない。また自 費診療であるため経済的な負担もある。そのため、継続した 通院が出来ない症例においては頻回な指導が困難であり、症 状を改善させるために必要な通院回数の設定に悩むことが少 なくない。これまで骨盤底筋体操の効果について調査した報 告は多数あるが、指導回数と効果の関係について調査した報 告はあまりない。今回、骨盤底筋トレーニングの指導が終了 した女性に対してアンケートを行い、指導回数の違いが効果 の有無にどのような影響を与えるかについて調査した。 【 方法 】当院女性泌尿器科を受診し、尿失禁症状に対する骨 盤底筋トレーニングの指導が終了した女性のうち、アンケー トによる調査が行えた症例53人(年齢:66.5±9.4歳)を対 象とした。アンケートの内容は 1) 骨盤底筋トレーニングの指導を受けた回数 2) 骨盤底筋トレーニングの効果の有無 3) 体操の内容理解 とした。骨盤底筋トレーニングの指導は 1 回 30 分とし、マ ンツーマンでホームセクササイズの指導を行った。得られた 結果から、骨盤底筋トレーニングの効果の有無、指導回数に よる効果の有無・体操の内容理解について調査した。また指 導回数と効果の有無・体操の内容理解の関係についてはカイ 二乗検定を用いて検討した(p < 0.05)。 【 説明と同意 】本研究の目的と内容、研究参加の同意表明の 任意性、利益と不利益、個人情報の管理などについて説明し 同意を得た。また、本研究は当院倫理委員会の承認を得て実 施した。 【 結果 】骨盤底筋トレーニングの効果があると答えた症例は 73.6% であり、効果が無かったと回答した症例は 26.4% で あった。効果が無かった症例の 86.0% は指導回数が 1 回もし くは 2 回のみであった。指導回数と効果の有無においては、 指導回数が多くなるに従い効果を実感する症例の割合が高く (1回:65%、2回:61.5%、3回:100%、4回60%、5回 100%、6回:100%)、3回以上の指導が行えた症例の方が2 回以下の症例に比べて有意に効果を実感していた(2 回以下: 63.6%、3 回以上:90%、p < 0.05)。指導回数と体操の内容 理解において、指導回数が多くなるに従い内容を理解した症 例の割合が高く、3 回以上では全ての症例で内容を理解して い た(1 回:90%、2 回:84.6%、3 回:100%、4 回 100%、5 回100%、6回:100%)。体操の内容理解と効果の有無につ いては、内容を理解出来た症例が理解出来ていない症例に比 べて有意に効果を実感していた(理解できた症例:79.6%、 理解出来なかった症例:0%、p < 0.05)。 【 考察 】今回、指導回数が多いほど骨盤底筋トレーニングの 効果を実感する症例が多く、体操の内容を理解できた症例も 多くなっていた。過去の報告では、骨盤底筋トレーニングの 効果が出現するまでには約 3 ヶ月の期間が必要であること、 医療従事者による定期的な指導を行うことが自覚的な尿失禁 症状の改善に有用であることが報告されている。これらのこ とと今回の結果を鑑みると、少なくとも月に 1 回の頻度で 3 回以上の通院を行うことにより骨盤底筋トレーニングの効果 を実感してもらえる可能性が高く、かつ骨盤底体操の内容を 十分に理解してもらうことが可能になると思われた。尿失禁 症状を改善するためのホームエクササイズは各症例に合わせ たカスタムメイドの内容になることが多いため、正確な収縮 や姿勢をしっかりと理解して自宅で継続してもらうためにも 指導回数は 3 回以上必要であると思われた。 【 理学療法研究としての意義 】指導回数の違いによる骨盤底 筋トレーニングの効果の有無についてアンケート調査を行っ たところ、少なくとも月に 1 回の頻度で 3 回以上の介入が必 要であると考えられた。これまで、骨盤底筋トレーニングの 効果を出すための通院回数について調査した報告が少なかっ たことから、今回の結果は一つの指針になるのではないかと 考えられた。 女性骨盤底トレーニングの効果と指導回数の関係 ○廣瀬 藍里 ( ひろせ あいり ) 1) ,保科 章子 1) ,竹山 政美 2) ,加藤 稚桂子 3) ,鍬田 知子 2) 1 )第一東和会病院 リハビリテーション科,2 )第一東和会病院 女性泌尿器科,3 )第一東和会病院 婦人科 Key word:アンケート,骨盤底筋トレーニング,指導回数 ポスターセッション 11 [ 運動器 4 ]

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Page 1: ポスターセッション 11 [ 運動器4 ] 11 1 女性骨盤底トレーニ …kinki58.umin.jp/pdf/abstract/P11-1.pdf― 103 ― P11-1 【目的】 尿失禁症状を有する女性に対して骨盤底筋トレーニ

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【目的】 尿失禁症状を有する女性に対して骨盤底筋トレーニングを行うことにより症状が改善することはよく知られている。当院では2014年4月に女性泌尿器科を開設し、2016年7月より女性骨盤底リハビリ外来(骨盤底外来)を開始した。近畿県内において当院のような骨盤底外来を実施している施設は少なく、遠方から来院される症例も少なくない。また自費診療であるため経済的な負担もある。そのため、継続した通院が出来ない症例においては頻回な指導が困難であり、症状を改善させるために必要な通院回数の設定に悩むことが少なくない。これまで骨盤底筋体操の効果について調査した報告は多数あるが、指導回数と効果の関係について調査した報告はあまりない。今回、骨盤底筋トレーニングの指導が終了した女性に対してアンケートを行い、指導回数の違いが効果の有無にどのような影響を与えるかについて調査した。

【方法】 当院女性泌尿器科を受診し、尿失禁症状に対する骨盤底筋トレーニングの指導が終了した女性のうち、アンケートによる調査が行えた症例53人(年齢:66.5±9.4歳)を対象とした。アンケートの内容は1)骨盤底筋トレーニングの指導を受けた回数2)骨盤底筋トレーニングの効果の有無3)体操の内容理解とした。骨盤底筋トレーニングの指導は1回30分とし、マンツーマンでホームセクササイズの指導を行った。得られた結果から、骨盤底筋トレーニングの効果の有無、指導回数による効果の有無・体操の内容理解について調査した。また指導回数と効果の有無・体操の内容理解の関係についてはカイ二乗検定を用いて検討した(p <0.05)。

【説明と同意】 本研究の目的と内容、研究参加の同意表明の任意性、利益と不利益、個人情報の管理などについて説明し同意を得た。また、本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】 骨盤底筋トレーニングの効果があると答えた症例は73.6% であり、効果が無かったと回答した症例は26.4% であった。効果が無かった症例の86.0% は指導回数が1回もしくは2回のみであった。指導回数と効果の有無においては、指導回数が多くなるに従い効果を実感する症例の割合が高く

(1 回:65%、2 回:61.5%、3 回:100%、4 回 60%、5 回100%、6回:100%)、3回以上の指導が行えた症例の方が2

回以下の症例に比べて有意に効果を実感していた(2回以下:63.6%、3回以上:90%、p <0.05)。指導回数と体操の内容理解において、指導回数が多くなるに従い内容を理解した症例の割合が高く、3回以上では全ての症例で内容を理解してい た(1回:90%、2回:84.6%、3回:100%、4回100%、5回100%、6回:100%)。体操の内容理解と効果の有無については、内容を理解出来た症例が理解出来ていない症例に比べて有意に効果を実感していた(理解できた症例:79.6%、理解出来なかった症例:0%、p <0.05)。

【考察】 今回、指導回数が多いほど骨盤底筋トレーニングの効果を実感する症例が多く、体操の内容を理解できた症例も多くなっていた。過去の報告では、骨盤底筋トレーニングの効果が出現するまでには約3ヶ月の期間が必要であること、医療従事者による定期的な指導を行うことが自覚的な尿失禁症状の改善に有用であることが報告されている。これらのことと今回の結果を鑑みると、少なくとも月に1回の頻度で3回以上の通院を行うことにより骨盤底筋トレーニングの効果を実感してもらえる可能性が高く、かつ骨盤底体操の内容を十分に理解してもらうことが可能になると思われた。尿失禁症状を改善するためのホームエクササイズは各症例に合わせたカスタムメイドの内容になることが多いため、正確な収縮や姿勢をしっかりと理解して自宅で継続してもらうためにも指導回数は3回以上必要であると思われた。

【理学療法研究としての意義】 指導回数の違いによる骨盤底筋トレーニングの効果の有無についてアンケート調査を行ったところ、少なくとも月に1回の頻度で3回以上の介入が必要であると考えられた。これまで、骨盤底筋トレーニングの効果を出すための通院回数について調査した報告が少なかったことから、今回の結果は一つの指針になるのではないかと考えられた。

女性骨盤底トレーニングの効果と指導回数の関係

○廣瀬 藍里(ひろせ あいり)1),保科 章子1),竹山 政美2),加藤 稚桂子3),鍬田 知子2)

1)第一東和会病院 リハビリテーション科,2)第一東和会病院 女性泌尿器科,3)第一東和会病院 婦人科

Key word:アンケート,骨盤底筋トレーニング,指導回数

ポスターセッション11 [ 運動器4 ]