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プラスチックの特性とリサイクル 2010.2.26 日本プラスチック工業連盟 リデュース・リサイクル委員会 久保 直紀(中央化学)

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プラスチックの特性とリサイクル

2010.2.26

日本プラスチック工業連盟リデュース・リサイクル委員会

久保 直紀(中央化学)

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① プラスチックとは?

ギリシア語plastics=塑造 英語plasticity=塑性

日本では合成樹脂とも呼ばれ、人工的に作られた“可塑性”を有する物質のこと!

●塑性(そせい)とは・・・

物質に力を加えて変形させて、加えた力を

除いても変形したままの性質。

・・・反対に、力を除くと元に戻る性質は弾性(elasticity)

●石油を出発原料とした高分子材料が殆ど。

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② プラスチック 例えば!

ポリエチレン(ポリマー)エチレン(モノマー)

・・・・・

CC C C C

H HHHH

HHHHH

・・・・・

(ポリ=いっぱい)(モノ=ひとつ)

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③ 熱可塑性と熱硬化性

加熱すると柔らかくなり自由に変形する。冷却すると固まる。加熱すれば何度でも変形する。

熱可塑性プラスチック 熱硬化性プラスチック

加熱する前は自由に変形するが、加熱することで固まり、再度加熱しても柔らかくならない。

イメージはチョコレート

イメージはビスケット

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④ プラスチック製容器包装 特性と成形方法

容器包装の形態 成形方法ラップフィルム、袋(pe,pp,pvdc) インフレーション

食品トレー、弁当箱、卵パック等 熱成形(ps,pp,pet) (シート成形)

テーブルウェア、立体型容器、桶、 射出成形キャップ、蓋等 (pp,pe)

各種のボトル (pet,pp,pe) 中空成形

レトルト用、各種ラミネート品 ラミネーション

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⑤ フィルム・シート・パイプ

うどんを作る要領で薄く伸ばして巻モノを作っていきます!

パイプやシートなど長いものを連続的に作るのが得意です。

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⑥ ボトル・フィルム

溶けたプラスチックを筒状に押し出しながら空気で膨らませる!!

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⑦ 食品トレー・パック

板状に成形したプラスチックを再度加熱し、気圧の変化を利用して金型に密着させる!

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⑧ プラスチックの特性 リサイクルを考えた場合

プラスチックの材料リサイクルにおける障害(金属との差)

1>プラは、熱、紫外線により劣化する。修復はできない。ただ、新樹脂で劣化の影響を薄める事は出来る。(金属との最大相違点)

2>異種材質のプラを混ぜても、高度な加工をしない限り溶け合わず、多くの場合、強度等が著しく劣り、限られた加工しかできない。

3>異種材質混合プラの分離或いは異物の完全除去は現実的に不可能。4>同じ材質でも物理的性質に幅があり、混じると性質は劣化する。分離

精製は現実的に不可能。(PEにいろいろ種類がある)

新樹脂との混合利用

汚れのない単一材質毎に回収する事が高価値リサイクルの条件。

プラスチックは高いエネルギーを持つ炭化水素資源そのもの

A>石油由来の高い燃焼エネルギーを持っている。石油・石炭に比べて 硫黄などの不純物のない良質な燃料である。

B>石油由来の炭化水素資源としての性質を持っている。

燃料化

石油化学原料化

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⑨ リサイクルの目的は!

大量生産・消費・廃棄型社会資源の浪費による危機地球温暖化の危機生態系の危機

持続可能な社会

循環型社会低炭素社会自然共生社会

リサイクル

リサイクル手法の主要評価因子

・資源・エネルギー削減性・環境負荷低減性・廃棄物削減性・経済性・(地域特性/産業育成効果)

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⑨ リサイクルが成立するための5つの基本的条件

1>対象の廃棄物が大量に存在すること

2>有用な属性があること

3>リサイクル技術が存在すること

4>再生品への需要があること

5>経済的な整合性が取れていること

出展:週間循環経済新聞 2009.1.1 神戸山手大学教授 中野 加都子氏

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⑩ プラスチックのリサイクル

●リサイクル●リサイクル「「 RecycleRecycle」」 Re Re == 再び再びcycle cycle == 循環する循環する

~を再循環させる。~を再循環させる。 ~を再生利用する。~を再生利用する。

・プラスチックのリサイクル手法

①マテリアルリサイクル(材料リサイクル)プラスチック原料、製品に再利用

②ケミカルリサイクル(化学的手法)

化学原料化、高炉還元剤などに

③サーマルリサイクル(エネルギー回収)ごみ発電、RPF等エネルギー回収

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⑪ マテリアル・リサイクルプラスチックの固有の特性

①成形/使用時、物理的/化学的作用を受けて劣化し、物性が低下しやすい。修復は出来ない。

②異種材質のプラを混ぜると、相溶化剤活性のような高度な加工をしない限り溶け合わず、元の材料と別のものになり、高付加価値用途には使えない。異種材質の混合プラの分離或いは異物の完全除去は現実的に不可能。

③同じ材質でも物理的性質に幅があり、混ざると性質は低下する。分離精製は、現実的に不可能。

④異なる材質を複合化して使う事で、色々な要求機能を満たせる。

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⑫ マテリアル・リサイクルMRへの適合料の要件

① 単一の材質 ・・・・・・・ 混ざると価値は半減

② 分別が容易 ・・・・・・・ 形から簡単に見分けられる

③ 洗浄が容易 ・・・・・・・ 中身、構造上の特性

④ 纏まった量がある ・・ 資源としての価値

⑤ 再利用し易い性質 ・・ 劣化しても利用分野がある

例えば、PETボトル、食品トレーなど。

ただし、効果的、かつ単一に回収するルートが必要。

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⑬ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーのリサイクル

自主的回収・リサイクル

容器包装リサイクル法

一般廃棄物

スーパー店頭など 包材店・DCなど トレーメーカー

下取り行為として適法・白色及び色柄トレー

回収は自治体・白色トレーorその他プラ

自治体での回収 白色トレー分

その他プラ分

再商品化事業者

再商品化事業者

自治体での回収 白色トレー分 再資源化事業者

可燃 ごみ

不燃 ごみ

焼却工場・エネルギー利用

最終処分場

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⑭ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーの回収実績

20年度のPSPトレー出荷量(推定)43.7千t 推定回収量 37%

20年度のその他プラ回収量(容リ法)668.6千t 白色トレー除く

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⑮ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーの再商品化製品

スーパー・生協などの店頭に設置した<トレー回収ボックス>で回収された白色及び色柄トレーを、トレーメーカーが自ら、あるいは包装資材店を通じて回収し、再商品化しています。

再商品化した製品には、食品トレー、ベンチ・テーブル・チェア日用品・雑貨などのプラスチックの製品があり、それ以外にも油化還元やRDFなどへの再商品化事例も報告されています。

自主的回収・リサイクルに取り組んでいるトレーメーカーは、現在、10社程度と考えられます。

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⑮ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーの再商品化製品

食品トレー、ベンチ・テーブル、ボールペン、日用品、雑貨などがあります。

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⑯ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーのリサイクル

食品トレーを洗ってリサイクルするのと、焼却するのは、どちらが環境に優しいの?

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⑯ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーのリサイクル

食品トレーを洗ってリサイクルするのと、焼却するのは、どちらが環境に優しいの?

結論

1)ポリスチレン単一樹脂で製造されているPSPトレーを分別収集してマテリアルリサイクルしている現状は、仮にPSPトレーを分別収集せず各種処理・処分することに比較して、環境負荷削減効果が大きい。

2)リサイクル手法の選択は、リサイクル品の品質により決定される。水でさっとすすいできれいになる高品質なプラスチックは材料リサイクルが好ましいが、その品質が低い場合は、発電等のエネルギー回収によるリサイクルが好ましい。

3)使用済みプラスチック製容器包装(容リプラ)でも,単一樹脂で、かつ汚れがない状態で効率よく分別収集することにより,環境負荷削減効果の大きいマテリアルリサイクルが可能と言える。

4)具体的な製品としては,①ボトル(洗剤など),②レジ袋、③食品トレーなどが挙げられる。

5)ただし,単一樹脂で分別収集するには,消費者,小売業者などの協力が必要で,個別の制約条件,経済性などの考慮が必要なため,対象製品や実施方法で,個別・具体的な調査・検討が必要である。

6)回収・リサイクルに際しては、廃棄物処理に関する法の規定の従うなどの対応が必要である。

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⑰ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーのリサイクル

食品トレーにリサイクルは、廃棄物処理法では、販売者の下取り行為として位置付けられ、廃棄物を運ぶ許可が不要。⇒H12年9月29日の環境省産廃対策室長通知。販売者の下取り行為として、許可が不要と明記。

スーパー店頭での消費者から使用済み製品等の回収。⇒一般的には産業廃棄物を扱うため、許可が必要。

なお、スーパーや生協の店頭で回収されたトレーは、事業系一般廃棄物

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⑱ マテリアル・リサイクル事例:食品トレーの3R

プラスチック製食品トレーの3Rに取組んでいます。

リユース : 食品の衛生安全の観点から慎重な取り組

みが必要です。

リデュース: 07年度を基準年度に、10年度までに、原

単位で3%の軽量化・薄肉化を目指します。実 績 : 04~06の3年間で、6.1%。

07~08の2年間で、1.7%。

(07~08年・大手5社で2%)

これまでの軽量化の事例トレー:5~21%、納豆容器:8%、麺容器:5~10%

弁当・総菜容器:8~21% 透明容器:10~15%

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⑲ マテリアル・リサイクルプラスチック容器包装のリサイクルと課題

・容器包装の機能・特性。 暮らしの中の容器包装

・CO2削減と容器包装の環境負荷低減。

・食品包装のリユース・リサイクルと衛生安全。

・多角化するリサイクルと容器包装。

・各主体間での連携による循環型社会の構築。

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⑳ ケミカル・リサイクル化学原料化、モノマー化など

使用済みの資源を,そのままではなく,化学反応によって組成変換した後にリサイクルする手法。廃プラスチックの油化・ガス化・コークス炉化学原料化などがある。

マテリアル・リサイクルでは、樹脂の選別が必要ですが、ケミカル・リサイクルでは樹脂の選別を不要とする手法もある。

PETボトルの場合は,化学的に分解してPET樹脂原料の化学物質に戻し,再度PET樹脂を造る。

また、発泡ポリスチレンなどをモノマー化したうえで、再度ポリスチレンを造るなどの取り組み報告もある。