クローズアップ ゛火災″(4) 一消防統計からのアプローチー...連 講 載...

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クロ ー ズ ア ップ ゛火災″(4) 一 消防統計からのアプローチー 消防活動と時間(その2) 前回の「消防活動と時間(その1)」では。 「 8分 消防 」 及 び 「 通 報 時 間 ( 出 火 か ら覚 知 までの所要時間)」についてみたが,今回は「か けつけ放水時間(覚知から放水開始までの所 要時 間)」,「 火勢鎮圧 時間(放水開始 から火勢 拡大の危険がなくなるまでの所要時間)」, 「鎮 火時間(放水開始から鎮火までの所要時間)」 。 に つ い て み て ゆ く こ とに し よ う。 1。かけつけ放水時間について かけつけ放水時間を時間区分別にみると、 4 ~ 6分 が 最 も 多 く、 次 い で 6 ~ 8 分 とな っ て いる(図 1)。 O~2分 2 ~ 4分 4~6分 6~8分 8 ~10 分 20 ~30 分 30 ~60 分 60分~ 図1 財団法 人 消防科学 総合セ ン ター 主任研究員 ( 放水建物火災,N=20940 ,昭和60年中) かけつけ放水時間(覚知から放水開始 まで の 所 要 時 間 ) また,同じくかけつけ放水時間を用途地域 指定の有無別(都市的地域か否か別)にみる と,用途地域指定のない地域(非都市的地域) の方が用途地域指定されている地域(都市的 地域)よりも約3,3分遅くなっている(図2)O ( 出 火から60分以 内に放 水を受け た建物 火災, 昭 和60年巾 ) 図2 用途地域指定の有無 とかけつけ放水時間 (平均値) 2の ような傾向 を示 すのは, 署所の 度が市街 (都市的 地域) で高 く,非 的地域で低 いこ とが理由 と考 えられ る。 とを もう少し詳 しくみたの が図 3、 4で ある。 3 は, 人 口35 万 以 上100 以下の 消防本部 (人口が多い とい って も中 には組合 消防 もあ るこ とから必ず しも純都市的 な消防 本部ばか とは限 ら な い。)に つ い て, ―署所 あた りの 管轄面積 を人口密度 との関係 でみ ものであ る。この場 合, 人口密度は 市街 (都市化) の程度 を表わし, その数値が きい程, 市街 (都 市 化 )は進 んでい ると考え ることがで きる。 3からは, 人口密度が増 大す るにつれ, 一署所あ りの管轄 面積は急 激に小 くな (署所 の配置密度 は大 きくなる)が, 人口密 度 が2000 人/k �イ寸近 を境 にほぼ ばい 向に じてい るこ とが読み とれ る。 -36 りjJ 途地域指定 り( 柵市的 5.5( N=12005) 娘) 14f6 8.8( N==8398) "

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  • クロ ー ズアップ 火゙災″(4)

    一消防統計からのアプローチー

    消防活動 と時間(その2)

    前回の「消防活動と時間(その1)」では。

    「8分消防」及び「通報時間(出火から覚知

    までの所要時間)」についてみたが,今回は「か

    けつけ放水時間(覚知から放水開始までの所

    要時間)」,「火勢鎮圧時間(放水開始から火勢

    拡大の危険がなくなるまでの所要時間)」,「鎮

    火時間(放水開始から鎮火までの所要時間)」 。

    についてみてゆくことにしよう。

    1。かけつけ放水時間について

    かけつけ放水時間を時間区分別にみると、

    4~6分が最も多く、次いで6~8分となっ

    ている(図1)。

    O~2分

    2~ 4分

    4~6分

    6~8分

    8 ~10分

    20 ~30分

    30 ~60分

    60分~

    図 1

    財団法人 消防科学総合センター

    主任研 究員  日  野  宗  門

    ( 放水建物火災,N=20940 ,昭和60年中)

    かけ つけ放 水時 間 (覚 知か ら放 水開始

    まで の所 要時 間)

    また,同じくかけつけ放水時間を用途地域

    指定の有無別(都市的地域か否か別)にみる

    と,用途地域指定のない地域(非都市的地域)

    の方が用途地域指定されている地域(都市的

    地域)よりも約3,3 分遅くなっている(図2)O

    (出火から60分以内に放水を受けた建物火災, 昭和60年巾)

    図 2  用 途 地 域 指 定 の 有 無 と か け つ け 放 水 時 間

    ( 平 均 値 )

    図 2 の よ う な 傾 向 を 示 す の は , 署 所 の 配 置

    密 度 が 市 街 地 ( 都 市 的 地 域 ) で 高 く , 非 都 市

    的 地 域 で 低 い こ と が 理 由 と 考 え ら れ る 。 こ の

    こ と を も う 少 し 詳 し く み た の が 図 3 、 図 4 で

    あ る 。

    図 3 は, 人 口35 万 以 上100 万 以 下 の 消 防 本 部

    ( 人 口 が 多 い と い っ て も 中 に は 組 合 消 防 も あ

    る こ と か ら 必 ず し も 純 都 市 的 な 消 防 本 部 ば か

    り と は 限 ら な い。 )に つ い て , ― 署 所 あ た り の

    管 轄 面 積 を 人 口 密 度 と の 関 係 で み た も の で あ

    る 。 こ の 場 合 , 人 口 密 度 は 市 街 化 ( 都 市 化 )

    の 程 度 を 表 わ し , そ の 数 値 が 大 き い 程 , 市 街

    化 (都 市 化 ) は 進 ん で い る と 考 え る こ と が で

    き る 。

    図 3 か ら は , 人 口 密 度 が 増 大 す る に つ れ ,

    一 署 所 あ た り の 管 轄 面 積 は 急 激 に 小 さ く な る

    ( 署 所 の 配 置 密 度 は 大 き く な る ) が , 人 口 密

    度 が2000 人/k�イ 寸近 を 境 に ほ ぼ 横 ば い 傾 向 に

    転 じ て い る こ と が 読 み と れ る 。

    -36 -

    b        川 りjJ

    途地域指定り(柵市的         5.5( N=12005)娘)

    壮 言二

    14f6 市               8.8(N==8398)

    "

  • (k�/署所)

    140

    (分)

    署所あ

    たり

    の管

    轄面積

    10

    かけ  9

    つけ放水  8

    時間

    値-

    1000 2000 3000 4000 5000 6000

    図3

    7000 8000 9000 10000 11000

    人 口 密 度

    一署所あたりの管轄面積と人口密度(人口35万

    以上100万以下の消防本部を対象)

    0 1000 2000 3000

    ( 人/k � )

    4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000 11000

    人口密度(人/k�)

    図4 かけつけ放水時間と人口密度(人口35万

    以上100万以下の消防本部を対象)

    -37 -

  • また,図4からは,人口密度の増大に伴い,

    かけつけ放水時問は急激に減少しているが,

    同じく2000人/k�を境に横ばい傾向になって

    いることがわかる。

    以上の比較から,かけつけ放水時間の短縮

    には署所の配置密度の増大が大きく影響して

    いるが,人口密度2000 人/k�を過ぎたあたりか

    ら,配置密度は横ばい傾向に転じ,それとと

    もにかけつけ放水時間の短縮も頭打ちとなる

    ことがわかる。

    2。火勢鎮圧時間について

    放水建物火災について火勢鎮圧時間(平均

    値)を建物構造別にみると,木造建築物,簡

    易耐火建築物,耐火建築物ではほぽ同程度で

    あるのに対し,防火木造建築物では他の構造

    物より5分程度多くの時間を要している((ヌ1

    5 )。

    火勢鎮圧時間(平均値)

    木造建築物

    防火木造建築物

    簡 易耐 火建築物

    耐 火建 築物

    ( 鎮圧時問100時 間以 内の放水建物 火災,昭 和60年巾)

    図 5  建 物 構 造 別 火 勢 鎮 圧 時 間

    ま た , 放 水 開 始 か ら 火 勢 鎮 圧 ま で に20 分 以

    上 要 し た 放 水 建 物 火 災 の 比 率 を 建 物 構 造 別 に

    み た 場 合 も , 防 火 木 造 建 築 物 の 方 が 他 の 構 造

    火勢鎮圧時間ヵQO分以.hの放水建物火災の比率

    (放水建物火災.昭和60年中)

    図 6  火勢鎮 圧時 間が20 分 以上 の放 水建 物火災

    の 比率

    物よりも明らかに高率となっていることがわ

    かる(図6)。

    3。鎮火時間について

    鎮火時間を建物構造別にみると,この場合

    も防火木造建築物が他の構造よりも大きくな

    っていることがわかる( 図7)。

    鎮火時間(平均値)

    〈鎮火時間l(X)吟間以内の放水建初火災, 昭和60年巾〉

    図 7  建 物 構 造 別 鎮 火 時 間

    ま た , 放 水 開 始 か ら 鎮 火 ま で に60 分 以 上 を

    要 し た 放 水 建 物 火 災 の 比 率 を み る と 。 や は り

    防 火 木 造 建 築 物 が 他 の 構 造 物 よ り 大 幅 に 高 率

    と な っ て お り , 防 火 木 造 建 築 物 か ら 出 火 し た

    火 災 が 鎮 火 し に く い こ と が わ か る ( 図 8 )。

    図 5 ~ 図 8 の よ う な 傾 向 を 示 す 理 由 は 定 か

    で は な い が , 防 火 木 造 建 築 物 の 木 造 と し て の

    燃 え 易 さ (他 か ら の 延 焼 に は 強 く て も , 火 元

    と な っ た 場 合 は 木 造 建 築 物 同 様 , 燃 え 易 い と

    考 え ら れ る 。)と 防 火 木 造 建 築 物 の 特 徴 で あ る

    外 壁 の モ ル タ ル 等 が 放 水 効 果 を 減 殺 す る こ と

    や 防 火 建 築 物 は 密 集 地 域 に 多 く , そ の た め 延

    焼 拡 大 し や す い ( と 推 測 さ れ る ) こ と も 要 因

    と は 考 え ら れ な い で あ ろ う か ? 。 図 5 ~ 図 8

    は , き わ め て 興 味 深 い 結 果 で は あ る が , 詳 し

    い 考 察 は 別 の 磯 会 に 譲 り た い と 思 う 。

    (以 下 次 号 )

    鏑火時間が60分以上の放水建物火災の比率

    (牧水建紬火災,昭和60年中)

    図8  鎮 火時 間が60 分以 上 の放 水 建物 火災 の比 率

    -38 -

    10  20  30 40  50(分)

    木遣建羅勧          33.5

    U 木“          50.7

    簡易剛火建             3

    百 封

    耐火建築物          32.8

    木造建築物

    防火木造建築特

    簡易耐火建築物

    耐火建餐柚

    木造建築物

    防火木遣建築物

    簡帖耐火建築物

    耐火建築軸

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