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ルート接続の解説 はじめに
これから説明する内容は、点滴ルート使用時に潜む危険性を再確認することを目的としています。改善策についても触れますが、あくまで1つの案であり、強制するものではありません。ルート接続について判断に困るような場合は、医師の指示に従ってください。皆様の施設では、ありえない環境も登場するかと思いますが、説明のための「たとえば・・・」の世界ですので、ご了承ください。
では、スタートします。
基礎編
三活などを使用して接続する場合に、
注意すべきポイントについて説明します。
まずはポンプを使用していない場合です
大きい点滴バック(例えばIVH)のルートに、もう一つ点滴を追加した場合をイメージしてください
この場合、どんな危険が潜んでいるでしょう?
バッグ間の薬液の逆流が発生することがあります
滴下数を正しく調整して
も、この接続方法では、
注入速度を正確にコント
ロールすることが難しい
場合があります。チャンバー内が薬液でいっぱい
液面が上昇
どうしたらいいか?①
ボトル内の液面をできるだけ同じにする。
※液面の高さが同じなら、薬液バッグ間の逆流現象は発生しません。
どうしたらいいか?②
逆流防止弁(1方向弁)を利用する。
※図の場所に入れるのがポイントです。
逆流防止弁の注意点
この場合は?
もし、逆流防止弁をこの場所へ入れた場合は、血液の逆流は防げますが、注入速度を正確にコントロールすることは、相変わらず難しい状態のままです。採血や血液のバックフロー確認もできません。
逆流防止弁は、使用目的と入れる場所をよく考えて使用しましょう。
次にポンプを併用した場合です
この状態をイメージしてください
この場合、どんな危険が潜んでいるでしょう?
大きいほうのバッグへ薬液の逆流が発生することがあります
液面が上昇
チャンバー内が薬液でいっぱい
ポンプを使用しても、
この接続方法では、
注入速度が正確にコント
ロールできません。
さらに・・・
×印の部分で閉塞があっ
ても、薬液が大きいバッ
グへ逃げるので、閉塞ア
ラームが発生しません。
×
つまりこの場合のポンプは・・・
オレンジ色のラインの
閉塞は監視できますが、
赤色のラインの閉塞を監
視できません。
どうしたらいいか①
残りのルートにもポンプをつける。
※ポンプを装着するチューブには、ポンプ用チューブを使用してください。
※交換作業は、ポンプの取り扱いやフリーフローなどに注意して、慎重に行ってください。
※あらかじめ、ポンプ装着を想定してルートを組み立てておくのも賢い方法と思います。
どうしたらいいか②
逆流防止弁(1方向弁)を利用する。
※図の場所に入れるのがポイントです。
逆流防止弁がこの場所の場合は?
この場合は?
血液の逆流は防げますが、注入速度が正確にコントロールできません。さらに閉塞アラームも発生しないため、危険です。採血や血液のバックフロー確認もできません。
ちょっと難しくなります・・・
ソリタT1のルートに、カタボンHIがつながっています。
輸液ポンプがあるので、もう一方のルートには逆流防止弁をつけて、接続はバッチリのはず・・・。
さて、危険は無いでしょうか?
T1 カタHI
カタHIの注入速度は常に一定か?
T1 カタHI
カタHIは、設定した流量でポンプから送り出されていますが・・・。
はたして、その速度で患者に注入されているのでしょうか?
体位変動によるT1の流量変化!
この接続の場合、T1は、患者の体位変動などで、流量が変化します。
その時、カタHIとT1が混合したラインの薬液はどうなっているのでしょうか?
T1 カタHI
!!
カタHIT1
この場合の危険とは・・・
T1 カタHIT1の流量変化に伴って、薬液が混合したラインに残っているカタHIも、一緒に流量が変化します。
カタHIが、一時的に過剰注入されたり、注入不足になったりします。
患者さんの状態によっては、影響がほとんど無いかもしれないし、重大な影響を及ぼすかもしれません。
どうしたらいいか①
T1 カタHI残りのルートにもポンプをつける。
※ポンプを装着するチューブには、ポンプ用チューブを使用してください。
※交換作業は大変です。重要薬剤を出来るだけ止めないように工夫して交換してください。
※あらかじめ、ポンプ装着を想定してルートを組み立てておくのも賢い方法と思います。
どうしたらいいか②
T1 カタHIカタHIを別ルートから投与する。
※微量投与の薬剤の単独ルートは、ルート閉塞の可能性が高かったり、投与速度が不安定性になりやすかったりするため、危険が伴います。
一定の速度で注入する必要がある大事な薬剤は、流速が一定に維持できるルートに接続するのがポイントです。
どうしたらいいか③
T1 カタHI薬剤が混合される部分のボリュームを減らす。
※チューブを細く、短くすることがポイントです。
※この部分が短いと使い勝手が悪くなります。
※チューブがあまりに細いとT1の落ちが悪くなる場合があります。
※限界があります。
ワンショットの指示がありました
ソリタT1のルートに、カタボンHIがつながっています。
全てのルートにポンプを使って、接続はバッチリです。
三活があるので、丸印の三活からワンショットします。
危険は無いでしょうか?
T1 カタHI
シリンジを押した瞬間・・・!!
T1 カタHI
!!
赤色のラインの薬液(T1+カタHI)が、ワンショットされます。
つまりカタHIがワンショットされることになります。
ワンショット終了・・・!!
T1 カタHIその後、後続の薬液に押されて、ワンショットした薬液が体内に入ります。
この間、カタHIは注入されていません。
もうちょっと解説を・・・
カタHI5ml/h
T125ml/h
5ml
30ml/h5ml
例えば、T1が25ml/ hr、カタHIが5ml/hrの流量とします。
赤色のラインの流量は、30ml/hとなります。
また、この部分のボリュームは5mlだったとします。
5mlの薬剤をワンショットすると、全量が患者さんの体内に注入されるまで、どのくらいの時間がかかるでしょうか?
この場合は10分かかります
しかも10分間、カタHIの注入も止まっている事になります。
何も考えずにワンショットをすると、患者さんの状態によっては、影響がほとんど無いかもしれないし、重大な影響を及ぼすかもしれません。 10分
カタHI5ml/h
T125ml/h
5ml
30ml/h5ml
ワンショットは・・・
カタHIワンショットした薬剤は、いつ体内に入るのか?
もともと接続されていた薬剤は、ワンショットによってどうなるか?
これらをよく考えて行う必要があります。
T1
ワンショットはどうしたらいいか①
T1 カタHI別ルートを確保して、ワンショットする。
ワンショットは、流量変化したら困るルートから投与しないのがポイントです。
ワンショットはどうしたらいいか②
T1 カタHIカタHIを別ルートにしておいて、T1のラインからワンショットする。
※微量投与の薬剤の単独ルートは、ルート閉塞の可能性が高かったり、投与速度が不安定性になりやすかったりするため、危険が伴います。
いずれにしても、この場合は2ルートあったほうがいいかもしれません。
ワンショットはどうしたらいいか③
フラッシュ
T1 カタHIさらに、生食を使用したり、T1を一時的に早くしたりして、フラッシュすることも必要です。
あらかじめ、ワンショットを想定してルートを確保し、組み立てておくのがポイントです。
「抗菌薬キット100mlを1時間で」点滴追加の指示がありました
ソリタT1のルートに、カタボンHIがつながっています。
全てのルートにポンプを使って、接続はバッチリです。
三活があるので、抗菌薬は丸印の三活に接続します。危険は無いでしょうか?
T1 カタHI
抗菌薬
点滴を追加した時・・・!!
赤色のラインは、「T1+カタHI」です。
抗菌薬を追加すると、この部分の流速が早くなります。
つまりカタHIが、赤色のラインの量だけ、一時的に高速で注入されることになります。 (100ml/h!)
T1 カタHI
抗菌薬
!!
安定しました・・・
しばらくすると、薬剤濃度が安定します。(オレンジ色になりました)
今、この部分は、「T1+カタHI+抗菌薬」です。
抗菌薬が終了するまでは、特に問題ありません。
T1 カタHI
抗菌薬
点滴が終わりました・・・!!
オレンジ色のラインは、「T1+カタHI+抗菌薬」です。
抗菌薬が止まると、この部分の流速が遅くなります。
オレンジ色のラインが、後続の薬液で置換されるまで、カタHIが遅くなることになります。
T1 カタHI
抗菌薬
一時的な点滴の追加に潜む危険
T1 カタHI
抗菌薬
この場合、何も考えずに点滴を追加すると、一時的に血圧コントロールが悪くなる可能性があります。
患者さんの状態によっては、影響がほとんど無いかもしれないし、重大な影響を及ぼすかもしれません。
一時的な点滴の追加は・・・
追加するルートに接続されている薬剤は、流量が変化しても大丈夫か?
追加する薬剤は、流量が変化しても大丈夫か?
仮につないだ場合、どの程度の流量変化になるか?
これらをよく考えて行う必要があります。
T1 カタHI
抗菌薬
どうしたらいいか①
T1 カタHI
抗菌薬
別ルートを確保して、抗菌薬を投与する。
一時的な点滴の場合、流量変化したら困るルートから投与しないのがポイントです。
どうしたらいいか②
カタHIを別ルートにしておいて、T1のラインから投与する。
※微量投与の薬剤の単独ルートは、ルート閉塞の可能性が高かったり、投与速度が不安定性になりやすかったりするため、危険が伴います。
いずれにしても、この場合は、2ルート確保しておいたほうがいいかもしれません。
T1 カタHI
抗菌薬
「ドルミカム2ml/hで」持続追加の指示がありました
ソリタT1のルートに、カタボンHIがつながっています。
全てのルートにポンプを使って、接続はバッチリです。
流量が微量で、持続する薬剤なので、ドルミカムは丸印の三活に接続します。
危険は無いでしょうか?
T1 カタHI
ドルミカム
「早送り」の指示がありました!
早送り
!!
T1 カタHI
ドルミカム
鎮静が浅いので、「早送り」の指示です。
「早送り」する度に、カタHIの速度も変化します。
ドルミカムの薬効上、血圧が不安定になるかもしれない状況ですが、さらに追い討ちをかけることがあります。
どうしたらいいか①
T1 カタHI
ドルミカム
別ルートを確保してドルミカムを投与する。
※微量投与の薬剤の単独ルートは、ルート閉塞の可能性が高かったり、投与速度が不安定性になりやすかったりするため、危険が伴います。
どうしたらいいか②
T1 カタHI
ドルミカム
あらかじめ薬剤が混合される部分のボリュームを減らして組み立てておく。
※チューブを細く、短くすることがポイントです。
※ただし、この部分があまりに短いと使い勝手が悪くなります。
※チューブが細く、流量が多い状態では、ポンプの閉塞アラームが多発する場合があります。
応用編
最後に多数の薬剤がある場合です。
ルート組立てのポイントを説明します。
こんな場合には・・・?
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
こんな感じでしょうか?
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
解説①
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
流量が変化したら困る薬剤をまとめます。
解説②
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
持続の追加などによって重要薬剤の流量が変化した場合でも、比較的早くフラッシュされるように、この中では一番早い流量で24時間持続されている、IVHをこの場所に接続しています。
解説③
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
ただしこの場合、IVHの流量設定が大幅に変化した場合には、注意が必要です。薬剤の配合変化にも注意してください。
解説④
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
このルートの総流量は、あまり早くなりません。また、早送りに備えておく必要があります。このため、混合部には細経のチューブを使っています。ただし長さは、使い勝手を考えてあまり短くしていません。
解説⑤
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
ここからワンショットは行いませんが、持続追加の場合は、この場所に接続することになります。
解説⑥
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
多少の流量変化は許容できる薬剤を別ルートにまとめます。逆流防止弁も、取りつけ位置を間違えないように、取りつけます。
解説⑦
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカムこちら側の混合部には、早い速度での注入に備えて、太経のチューブを使用します。
解説⑧
抗菌薬IVHカタHI
キシロカイン
ドルミカム
T1やプラズマネートカッター、またMAPなど、多少の流量変化は許容でき、しかも一時的な注入となる薬剤の場合は、この場所に接続します。この場合、配合変化と逆流に注意が必要です。必要に応じて、逆流防止弁を付けましょう。
ルート接続のポイント
これまで説明した危険性を理解し、予測してルートを組立てる。
使用されている薬剤の効果と使用目的を理解しておく。
使用するポンプやチューブの特徴や欠点を理解する。
安全で効果的な薬剤投与
製作
JA網走厚生病院臨床工学技術部門
國木 里見