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1 タンパク質などを硬化させる ゲル化剤 香川大学 農学部 応用生物科学科 教授 小川 雅廣 博士2年 赤澤 隆志

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タンパク質などを硬化させるゲル化剤

香川大学 農学部 応用生物科学科

教授 小川 雅廣

博士2年 赤澤 隆志

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タンパク質のゲル化

A.-M. Hermansson, “Protein Structure-Function Relationships in Foods”

Eds. Yada, Jackman & Smith, pp. 22-42 (1994), Springer, NY, USA

加熱、pH変化

水中でのタンパク質

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ゲルの物性改良剤

• 増粘剤

• タンパク質架橋剤

• タンパク質架橋酵素

トランスグルタミナーゼ

ポリリン酸ナトリウム

グルタルアルデヒド

メチルセルロース

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従来技術とその問題点

既に実用化されているものには、リン酸塩、グルタールアルデヒド等の架橋剤やトランスグルタミナーゼなどの酵素による架橋剤を使用する方法があるが、

リン酸塩の過剰摂取はCa吸収阻害、腎臓疾患

グルタールアルデヒドは毒性強

トランスグルタミナーゼは温度制御に難

等の問題がある。

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茶葉のポリフェノールは卵白ゲルを硬くする

Hatanaka et al. Food Sci. Technol. Res. 15, 5-10 (2009)

他にも Wu et al. (2007) などで報告

茶のポリフェノール (カテキン類)

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●オレウロペイン

●ヒドロキシチロソール

●ベルバスコシドetc.

ポリフェノールを多量に含むオリーブ葉

乾燥葉中のポリフェノール量:7.3 ∼ 8.2 %

オリーブ葉特有のポリフェノール

大山ら (2016)

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茶葉ヤブキタ

ミカン葉ウンシュウ

ブドウ葉香大農R-2

オリーブ葉

抽出物の乾燥粉末

(抽出パウダー)

オリーブ葉ポリフェノール抽出物のタンパク質ゲルの物性を評価

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葉からの抽出パウダーを添加した卵白ゲル

90℃, 30 min

1%抽出パウダー添加

卵白ゲル

卵白溶液

≈オリーブパウダー 茶パウダー ミカンパウダー ブドウパウダー

抽出パウダー1%添加ゲル

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破断強度測定

レオメーター(YAMADEN)

③破断

歪率

歪率 [%]

応力

[N/m

2]

11

2倍

植物葉抽出物を添加したゲルの破断特性

3.1倍

植物葉抽出パウダー1%添加した卵白ゲルの応力歪み曲線

(+1.0% OLEx)

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クリープ回復測定

荷重

ゲルの弾性率・粘性率を評価Hadipernata et al., Poultry Sci. 95, 2120-2128, 2016

冷凍貯蔵したチキンソーセージのクリープ回復曲線

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OLEx添加卵白ゲルの粘弾性

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

1.8

2

0 60 120

コンプライアンス[10-4m2/N]

時間 [s]

Ct 0.1%_OLEx

0.5%_OLEx 1.0%_OLEx

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

0 0.5 1弾性率[10-4N/m

2]

OLEx 濃度 [%]

クリープ回復曲線

補足説明:粘性率もOLEx濃度依存的に増加

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ゲルの保水力測定

排出された水の割合[%]で保水力を評価

離水率

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OLEx添加ゲルの保水力(離水率)離

水率

(%)

OLEx濃度(%)

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卵白タンパク質とOLExの反応液のSDS-PAGE(還元処理をしている)

OLEx添加卵白タンパク質の化学的性質

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卵白ゲルをグルタルアルデヒド、四酸化オスミウム固定処理、脱水後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察(倍率 × 1000)

OLEx添加卵白ゲル表面の微細構造Ct 0.1% OLEx

0.5% OLEx 1.0% OLEx

OLEx無添加 0.1% OLEx添加

0.5% OLEx添加 1.0% OLEx添加

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倍率 × 1000

OLEx無添加 0.1% OLEx添加

固定処理なしで観察したゲルの微細構造

0.5% OLEx添加 1.0% OLEx添加

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OLEx添加したゼラチンゲル、かまぼこゲル

8.0%ゼラチン溶液

4℃, 12 hrs.

1.0% OLEx添加

真鯛すり身

40℃, 30 min

0.1% OLEx添加

90℃, 30 min

ゼラチンゲル かまぼこゲル

3% 食塩0.2% ポリリン酸5% ソルビトール

20

ゼラチンゲル

0

10

20

30

40

0 50 100

応力

[10

4 N

/m

2]

歪率 [%]

0

10

20

30

40

50

0 50 100

応力

[10

4N

/m

2]

歪率 [%]

かまぼこゲル

Ct

+0.1% OLEx

OLExを添加したゲルの破断特性

Ct

+0.1% OLEx

1% OLEx添加

Ct未添加

0.1% OLEx添加ゲル

Ct未添加

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 本ゲル化剤は食経験のあるオリーブ葉(天然物)からの抽出物なので安全であり、イメージがよい

• 比較的少量でゲルの物性を改良できる(特に、ゼラチン)

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想定される用途

• 本ゲル化剤は、タンパク質を多く含むゲル(ソーセージ、プリン、ゼリー等)の製造に適用することで、食感と安全性の面でのメリットが大きいと考えられる。また、コラーゲンケーシングの強度増強にも役立つと思われる。

• 上記以外に、非食品系のゲルへの応用により保水効果が得られることも期待される。

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実用化に向けた課題

• 現在、OLEx(パウダー)は開発済みで、葉っぱ原料の大量入手先も確保しているが、パウダーの大量生産方法が確立されていない。

• 今後、パウダーの幅広い用途を開発していくことが必要である。麺類、製パンなどにも試してみたい。

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企業への期待

• 植物からの抽出技術を持つ企業や食品添加物を製造販売する企業との共同研究を希望

• 新たなゲル化剤や物性改良剤の開発・販売展開を考えている企業には、本ゲル化剤の導入が有効と思われる。

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お問い合わせ先(必須)

香川大学

社会連携・知財センター

客員准教授

辻本 和敬(四国TLO)

TEL 087-864 - 2541

FAX 087-864 - 2537

e-mail [email protected]