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政治システム論平成22年度
•第五章 政治システム論
『政治分析の基礎』デヴィッド・イーストン;岡村忠夫訳。図書館『政治生活の体系分析』D.イーストン,薄井他,2002年岩崎,田中『公私領域のガバナンス』(2006年)岩崎編『ガバナンスの課題』(2005年)
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第3章 政治システム論
第一節 政治システム学説の起
源
第二節 定義
第三節 政治システム論に関係す
る基本的諸概念
第一項 システム-サブシステム、
環境
第二項 構造
① 政治社会political community② 体制regime③ 権威authorities
第三項 機能① 入力(インプット)と出力(アウ
トプット)概説とアーモンドの入力機能② アーモンドの出力機能
第四節 システムの能力(省略)
第一項 調達能力
第二項 規制能力
第三項 分配能力
第四項 象徴能力
第五項 応答能力
第六項 国内的国際的能力第五節 ガバナンス論
第一項 定義第二項 パブリック・ガバナンス論の系譜
1. ガバナンス論の20年2. 国家中心アプローチ3. 社会中心アプローチ
第三項 ガバナンス使用例-少子化社会と
ガバナンス1. 少子化社会の日本社会へ
の影響2. 地域育児支援ガバナンス3. 残された課題
第四項 ガバナンスとシステム論
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第1節 政治システム学説の起源
❒システム論は政治学固有のものではなく、もともと、生物学者フォン・ベ
ルタランフィにより1920年代に開拓され、これにウィーナーの「サイバ
ネティックス」理論が加味されて、自然科学、文化人類学、社会学
(パーソンズ:彼の社会学的システム論は、役割を基本的単位とする社
会行動フ系の構造・機能分析
❒複合構造・組織的全体を<システム>
❒イーストン(社会に対する価値の権威的配分という政治の全体としての
機能を問題とし役割理論よりも、もっとダイナミックな形で政治システム
論を具体化することが必要と考えた)
システム論はわが国では「体系理論」ともいわれ、また現実を分析する際の一つの接近方法を強調する意味では「システム(体系)分析」の用語が用いられる。
「体制」の訳語をさけて、なるべく「体系」を当てている
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第2節 定義
❒「相互に関係を持つ諸単位のセット」
❒「諸単位」とは何を指すか、あるいは諸単位間にいかなる「相互関係」があるかは、(84)システム論が利用されている諸学問、たとえば生物学、機械工学、社会科学などでそれぞれ異なるであろうが、少なくとも、事物の相互関係を全体として捉える
相互関係にあるものをまとまった全体として把握する概念
それは、政治に関係する諸行動・行為をその相互関連性において、しかも全体として捉えるばあいに用いられる。したがって、政治システムというばあいのシステムは、多くの行為から成るシステム、っまり「行為(行動)システム」である
政治システム
☞
行動論は個々の行動を実証的に研究し分析するという意味で、ミクロ的(微視的)接近方法であるが、そうした諸行動を全体として関連させて捉える「システム論」的アプローチは、まさにマクロ(巨視的)的接近方法である
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即ち、政治システムとは、政治に関係する諸行動・行為をその相互関連性において、しかも全体として捉える場合にもちいる。行動論はミクロ的接近法で、政治システム論はマクロ的接近法である。
政党制(party system)(議会制度parliamentaru system→選挙制度electoral system)等複合的組織(巨視的な社会全体レベルにおける政治行動の体系)のことを<政治体系paliticalsystem>または<政治システム>
(即ち、政治システムとは、政治に関係する諸行動・行為をその相互関連性において、しかも全体として捉える場合にもちいる。行動論はミクロ的接近法で、政治システム論はマクロ的接近法である。
例:政治の世界にも様々な組織や集団、つまり体系が存在している。これらは、直接的・間接的につながりあって、更に上位の一まとまり=上位体系を形作っていることが多い)。
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機能=社会全体が一つのシステムで、政治システムは経済システムや文化シス
テムとともに社会システムのサブシステムである。政治システムは、全体
としては「社会に対する価値の権威的配分」を最も大きな機能とする。
☟
「一定社会に対する価値の権威的配分」を内容とし、これに関連する人間の諸
行動を、相互に関係する一つのまとまりをもった全体として捉えるとき、
これを政治システム
☟
システムの基礎単位=政治システムの基礎的単位は政治行動である。政治行動
は、通常、政治的な役割と役割のセットとしての政治集団に組織されてい
る。政治行動以外の社会行動は、システムの外にあってシステムと相互作
用している<環境>に属する要因である。即ち、政治システム以外の全て
を政治システムを取り巻くものを環境という
第三節 政治システム論に関係する基本的諸概念
第一項 システム-サブシステム、環境
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第二項 構造
システムに対する支持であるが,それは細分すれば三つの「基本的政治客体」,つまり,「権威(当局)者」,「体制」,「政治社-会」
❒「要求」☞とは「特定の問題に関して,責任の座にある人びとによって権威的配分がなされるべきで」あるとか,なされるべきではないといった意見の表明」として理解されよう。つまり政策決定に影響を及ぼそうとする具体的要求
❒支持☞「AがBにかわって(Bのために),行動するか,あるいはBに好意的な態度をとる場合,AはBを支持するということができる。Bは個人でも集団でもよい。目標や理念や制度であってもよい」。
要求が満たされないという事態は「支持」の入力に重大な結果をもたらすことこなさらにそれは政治システムそれ自体の存続に重要な影響を及ぼすことになろう。したがって,,要求は制御さたり組み合わせられて,より処理がしやすいかたちにかえられたり,修正したりされなくてはならない
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イーストンのシステムの構造論は、古い国家論(領土、国民、政府)の枠を出ておらず、彼のシステム論の枠組みである入力から出力への流れという観点からいうと、不十分であった。その点、後述するアーモンドの構造論は、この流れに沿って機能する各構造を精密に特定したものとして高く評価
政治システムに3つの構造
①政治共同体political community
政治システムの土台。権威的決定にかかわる政治的分業のシステムを共有する人々の集団)
②体制regime:政治システム内で生起する政治行動の形態を規制する制度的枠組み)
支持にはこうした個々の要求の実現ゆえに与えられる「特殊的支持」と現存体制に対して一般的に与えられる「拡散的支持」
③権威authorities:公的権威の役割の担当者または権力保持者たちのこと。彼らは多くの場合、集合
的に機関として行動)
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第三項 機能
①入力(インプット)と出力(アウトプット)概説とアーモンドの入力機能
入力は環境から政治システムの中に入ってくる影響
入力の内容は「支持」と「要求」
出力の内容は、政策の実行、つまり社会に対する価値の権威的配分である。政治システムは、入力の及ぼす圧力に対応しながら適切な政策を形成・選択・実行することを通して、自己維持と環境への適応を図る。)
政治システムから環境へと放出される影響
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入力機能を精緻化
1)政治的社化政治システム会の中で人々が政
治的役割を果たし政治的態度を身に着けるべく、どの様に仕込まれ、躾られてゆくかという側面。
2)利益の表出 (イ)制度型利益集団:政党,立法部、行政部、軍隊、官僚機構、境界ETC。即ち、専門的職員を持つ公的機構。(ロ)非結社型利益集団:血族・血縁集団,人種集団,地域集団,宗教、身分、階級、集団。利益表出は、間欠的・非公式。(ハ)アノミー型利益集団:自発的・突発的行為で利益を表出する集団(暴力、デモ、暗殺...)その機能と構造が比較的変化しやすい。政治システムを変更することもある。(ニ)結社型利益集団:労組、商工団体、宗教宣伝団体、人種団体、市民団体など、利益表出につき専門化された構造を持つ3)利益の集約
表出された利益要求を関連のあるものを突き合わせて纏め上げるという過程)。この機能は、現実には政治の下位システム内で遂行されている--立法部、執行部、官僚機構、メディア、政党、圧力団体等--。集約された利益は、公共的言語に翻訳された政策選択肢。先進国では、この機能は主として政党によって担われ、イギリス、官僚により行われている例としてインド
4)政治的コミュニケーション①(政治システムの中を流れ、又システムの中へ入って来、外へ出て行く情報の流れに関連)②境界維持機能③メディア④(社会と政治システムとの間の交流)⑥自律性、中立性に依存する。⑤自律的コミュニケーションは利益表出の欲しいままな利益集団の規制力を規制し、政党、立法部ETCの諸機構の規制力を規制することができる
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2)規則適用機能行政(環境変革に対するシステムの能力に関連。
ルール適用の構造は、ルール実施の複雑性、階層的構造、自律性の程度、公平性で特徴化できる。例、インドはイギリス公務員制の遺制が存していたが故に、他の発展途上国を凌ぐものであった。アーモンドは、官僚機構のタイプをT分類する。❶代表制型官僚:政治的権威は、競争的政治過程により決定。❷政党国家型官僚:全体主義又一党支配型政治システム。❸軍部支配型官僚。❹支配者優位型官僚:自律的支配者が自己のルールを押し付ける。❺支配型官僚:官僚機構自身が政治システムで支配的要因となる
1)規則作成機能
②アーモンドの出力機能
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5)フィードバック政治システムは、政治シ
ステムの環境の状態についての情報を得ながら自己の行動を修正するなり維持するなりして、環境からの圧力を緩和する。その際の情報は、第一に、システムの権威は、政治システムに対する支持が維持されているかどうかに関する情報、第二に権威は、政。システムの構成員の要求に関する情報(支持の状況、対立の存否、反逆の存否、要求の内容)、第三に、既に出力されているものの結果についての情報、を必要とする)。
3)規則判定機能
ルール作成と適用と同じ地位・裁定には権威があり、裁定に関する争いを少なく
4)変換過程入力たる要求と
支持は、ある構成員の要求を満足させ、大部分の構成員の支持を確保する様な出力を産出できるように処理),(資源が物的なものの場合は、課税、命令、徴収などの出力で調達し、人的なものなら、集団の組織化・動員という人的調達をする。)
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第四節 システムの能力
第一項 調達能力(国内的および国際的
な環境から物的・人的な資源を引き出す能力・政府(中央政府,地方政府)へ流入する資源の量
第二項 規制能力
(個人や集団の行動に関わる政治システムのコントロールの実施能力。
第三項 分配能力
(個人や集団に対して、政治システムからの財、サービス、名誉、地位、機会などの分配に関わる機能
第四項 象徴能力(政治システムから社
会や国際的環境へ流入する効果的な象徴の割合。国旗の掲揚、軍隊の儀式・セレモニー、王室や高級官僚の訪問、政治指導者による政策や意向の表明
第五項 応答能力(インプットとアウト
プットとの間の関係についての能力。,官僚制的帝制国家と近代的な政治システムとで異なる。官僚的帝制国家では、応答能力は低く、近代的な政治システムでは高い
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第五節 ガバナンス論第一項 定義
統治を「舵取り」と位置づけシステム論の現代的発展型
アクターが多様化
ハイアラーキーとアナーキーとの間 公私領域の再編成
誰が行うかということよりも、何を行うか、
何を行うべきか,なぜ行うか,
政策の中身や政策の方向性にも焦点
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第二項 パブリック・ガバナンス論の系譜岩崎,田中『公私領域のガバナンス』(2006年)
1. ガバナンス論の20年(1)ガバナンス論の流行
・1980年代後半以降。国際学術誌『ガバナンス』・98年の日本の行政学会で「日本の行政改革―ガバ
メントからガバナンス」・「ガバナンス」は日本の行政学界でも完全に市民権
(2)ガバナンス論の多様性
八〇年代末に世界銀行やIMFなどの国際機関が用いるようになったこと
「ガバナンス」には、①コーポレート・ガバナンス、②NPM、③グッド・ガバナンス、④国際的相互依存、⑤ソシオ-サイバネティック・システム、⑥新政治経済学、⑦ネットワーク
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2. 国家中心アプローチ
・国家中心アプローチの特徴=国家が経済や社会をいかに「舵取り」をするのか、あるいはそれからどのような結果が生まれるのか
国家や政府のあり方に焦点を向けつつも、それらが果たす役割については限定的な見方をとる議論
公共部門の効率化を目指すNPMの視点からガバナンスを論じる
国家の役割を積極的
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(1)NPMとしてのガバナンス
政府の機能が低下 多くの国で政府の効率化を目的とした行政改革
『行政革命』で重視されるのは舵取り役としての政府の機能と構造であるが、この「舵取り」の理念はNPMに共通
『行政革命』=「漕ぐことから舵を取ることへ」
従来の行政は政策形成(舵を取ること)のみならず政策実施(漕ぐこと)をも主要な責務
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(2)「政府なきガバナンス」論批判
ガバナンス論の特徴を「国家中心アプローチ」
社会的な次元に目を向け、自己組織性やネットワークといった概念をもちだしてくる社会中心アプローチに対して、国家、政府の役割が依然として重要であることを主張
社会の諸課題に対処するにあたり、国家や政府という中心的なアクターによる一定方向への指導、調整が必要なことを含意
第一に、行政資源の不足状況
第二に,ネットワーク論者が主張するような非定型的な統治様式はむしろ政策の一貫性を失わせ、不信
第三に、国際競争の激化は国内での協調的なプログラムを政府が策定する必要性を増加
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3.社会中心アプローチ
(1)ネットワーク・ガバナンス
第三の道 国家と社会のネットワーク関係、両者の相互作用過程を強調
ローズ 第一に組織間の相互依存=境界線が不明瞭
第二に、ネットワーク・メンバー間の持続的な相互作用
第三に,ゲーム状の相互作用
最後に、ガバナンスの、国からの相当程度の自律性
ネットワーク参加者の多様性
ネットワークに関与するアクターは量的に増加するだけでなく質的な多様性も増す
アクター相互の信頼関係と、忍耐強く冷静な交渉の積み重ねとしての「外交」が重要な調整手段
互恵性
1.少子化社会の日本社会への影響
(1)需要が無くなって行く
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少子化⇒
人口構造のいびつ化
大学全入輸送人員が低下コンビニエンスストアも、高齢者好みの商品経済の活力が失われていく社会保障制度の困難
一九四七年~四九年に生まれた「団塊の世代」が定年期を迎え、仕事から引退
2000年
2025年
2050年
岩崎編『ガバナンスの課題』(2005年)
(2)少子化対策とガバナンス
保育所の増設や多様な保育サービスの整備、育児休業制度の創設
政府 市場
育児サービスを購入できる高所得者層と、それを購入できない低所得者層とに格差
政府が企業,NPOなどといかに協力して,育
児支援体制を作り上げるか
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X.少子化対策の推進と拡張(補充)
育児の社会化
一九九〇年八月関係省庁連絡会議
一九九一年 育児休業法
一九九四年 エンゼルプラン一九九五年度 緊急保育対策等五か年事業一九九九年 新エンゼルプラン 保育所の拡充政策
育児休業制度の整備
二〇〇〇年 児童手当制度の拡充二〇〇四年 小学校三年生修了前
二〇〇二年九月少子化対策プラスワン2424
二〇〇三年三月次世代育成支援に関する当面の取組方針
「男性を含めた働き方の見直し」、「地域における子育て支援」、「社会保障における次世代支援」、「子どもの社会性の向上や自立の促進」
二〇〇三年 「少子化社会対策基本法」
「次世代育成支援対策推進法」次世代法の特徴は国や自治体だけでなく一般の会社も対象
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表1
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保育に欠ける児童
(注)
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2. 地域育児支援ガバナンス(1)社会福祉制度改革とガバナンス
「措置から契約へ」①、「官から民へ」②、
「国から地方へ」③
①措置制度から契約制度への移行
・福祉サービス利用者の自己決定権、主体性の確立
・「施しを受ける立場」から,契約により「サービスを自分で選べる立場」になること
・施設やサービス提供者を選んで個別に契約できるような仕組み
・まず市町村に希望する保育所の利用申し込み⇒市町村は、保育所入所の条件である「保育に欠ける児童(4ページ参照)」であるか否
か
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(3)官から民へ=供給体制の多元化
1.認可保育所
2.認可外保育所(無認可保育所)
3.第三の保育所=A 公立保育所の民営化」
企業の参入が認められた
例=東京都三鷹市の東台保育園
ベネッセコーポレーションが、保育園の管理運営B 認証保育所
・都から認証を受け施設整備や運営のための補助金=認可保育所よりは規制を緩和低年齢児保育の実施や三時間以上の開所
を義務づけ 二〇〇か所を超える
C 横浜市の「横浜保育室」「保育室ネスト」はNPOが運営
1.認可保育所 2.認可外保育所
3.第三の保育所
A B C・・・・・
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③国から地方へ=地域発の育児支援
社会福祉制度改革の三つめのキーワードは「国から地方へ」(③)、つまり地方分権
自治体はその調整役
・育児や介護などの人的サービスの提供
・自治体、ニーズに適合した福祉サービスを総合的な視点から提供すること
・多種多様なアクターが福祉事業
§次世代育成支援対策推進法(2003年)
「地域行動計画」を策定することが義務づけ
各地域住民のニーズを的確に把握し、行政と市民とが対話を重ねる中で、独自性のある行動計画
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◇厚生労働省の先行モデル=五三市町
埼玉県新座市
①公募で選ばれた保護者三人、②地域活動団体の代表九人、③校長、商工会、労働組合など関係機関代表七人、それに④学識経験者(大学教授)三人
協議の過程を経て、二〇〇四年三月に「新座市次世代育成支援行動計画」が完成し公表
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3.残された課題
地域行動計画の策定は都道府県や市町村の義務
地域住民とのコラボレーション
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政治システム
経済システム
社会システム
・・・・・・・・・・
現在のシステム論 ガバナンス導入後のシステム論
第四項 ガバナンスとシステム論
経済システム
社会システム
政治システム
・・・・・・・・・・
NPO民間企業
官僚
システム間の境界は各所で穴 投票はどこに